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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120133
(43)【公開日】2024-09-04
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20240828BHJP
   E02F 9/08 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
E02F9/24 A
E02F9/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026792
(22)【出願日】2023-02-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅史
(72)【発明者】
【氏名】乘田 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】小山 直也
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015GA01
2D015GB04
(57)【要約】
【課題】 柱状体が保護部材に衝突するときの衝撃を逃がすと共に、柱状体が保護部材に擦れるのを防止することにより、柱状体や保護部材の損傷を防止できるようにする。
【解決手段】 旋回フレーム5の右前位置に立設され、柱状体としての丸太から外装カバー10を保護する保護部材11は、上部旋回体3の旋回中心Oを中心とする径方向で外装カバー10よりも外側に配置され、旋回フレーム5の周囲から上側に延びた支柱部14と、支柱部14の外周側を覆う円筒体からなり、支柱部14の周囲に回転可能に設けられた回転筒部15と、を備えている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前側に設けられ、柱状体を把持するための作業具を備えた作業装置と、からなり、
前記上部旋回体は、
支持構造体をなす旋回フレームと、
前記旋回フレームの左側に設けられた運転席と、
前記旋回フレームの右側に設けられ、前記旋回フレームに搭載された搭載機器を覆っている外装カバーと、
前記旋回フレームの右前位置に立設され、前記柱状体から前記外装カバーを保護する保護部材と、
を備えてなる建設機械において、
前記保護部材は、
前記上部旋回体の旋回中心を中心とする径方向で前記外装カバーよりも外側に配置され、前記旋回フレームの周囲から上側に延びた支柱部と、
前記支柱部の外周側を覆う円筒体からなり、前記支柱部の周囲に回転可能に設けられた回転筒部と、
を備えていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記回転筒部は、軸方向の両端が開口した円筒体からなり、
前記支柱部の上部には、前記支柱部と前記回転筒部との隙間を覆うカバー部が設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記回転筒部は、上側の端部が蓋体で閉塞された有蓋円筒体として形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記回転筒部は、上下方向で分割された複数の円筒体によって形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記回転筒部は、円弧状に湾曲した複数枚の円弧板を周方向に連結することにより円筒体として形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1に記載の建設機械において、
前記旋回フレームの左前位置には、前記柱状体から前記運転席の前側部分を保護する他の保護部材が設けられていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伐採した丸太等の柱状体を把持するグラップルやハーベスタを備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前側に設けられた作業装置と、により構成されている。
【0003】
上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、旋回フレームの左側に設けられた運転席と、旋回フレームの右側に設けられ、旋回フレームに搭載された原動機等の搭載機器を覆っている外装カバーと、を備えている。そして、標準仕様の油圧ショベルの作業装置には、掘削用のアタッチメントとしてバケットが備えられ、このバケットにより土砂等の掘削作業が行われる。
【0004】
また、油圧ショベルは、グラップル、ハーベスタ、プロセッサ等の林業用アタッチメントを作業装置のバケットに代えて装着することで、林業の現場でも使用されている。この林業の現場では、伐採した長尺な丸太を林業用アタッチメントで掴み、運搬車両(トラック等)への積込みや枝打ち等の加工を行っている。この場合、長尺な柱状体からなる丸太をグラップル等で掴んだ状態で作業装置を操作すると、上部旋回体の外装カバー等に丸太を接触させてしまう虞がある。
【0005】
このために、オペレータは、外装カバー等に丸太を接触させないように、注意して作業装置を操作する必要があり、作業効率が悪くなる虞がある。そこで、林業等の現場で用いられる油圧ショベルには、柱状体からなる丸太から外装カバーを保護する保護部材を備えたものがある(特許文献1)。
【0006】
この特許文献1の保護部材は、運転席に座ったオペレータから目視し難い外装カバーの右前位置を保護できるように、旋回フレームの右前位置に立設されている。また、保護部材は、上側に延びた棒状体と、この棒状体の外周側を覆うように弾性を有するゴム材料、ポリカーボネート等の高分子材料からなるカバー部材と、を備えている。これにより、丸太が保護部材に衝突しても、カバー部材の弾性力によって外装カバーや丸太の損傷を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-41310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の保護部材は、高分子材料を用いて形成しているから、鉄材料を用いて形成した場合に比較して、製造コストが嵩むという問題がある。また、特許文献1の保護部材は、カバー部材に弾性力を持たせることで、丸太が衝突したときの衝撃を緩和するようにしている。しかし、保護部材に丸太が衝突するときの角度や勢いによっては、商品となる丸太や保護部材が損傷する虞がある。しかも、丸太は、保護部材に擦れるだけでも損傷することがある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、柱状体が保護部材に衝突するときの衝撃を逃がすと共に、柱状体が保護部材に擦れるのを防止することにより、柱状体や保護部材の損傷を防止できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前側に設けられ、柱状体を把持するための作業具を備えた作業装置と、からなり、前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、前記旋回フレームの左側に設けられた運転席と、前記旋回フレームの右側に設けられ、前記旋回フレームに搭載された搭載機器を覆っている外装カバーと、前記旋回フレームの右前位置に立設され、前記柱状体から前記外装カバーを保護する保護部材と、を備えてなる建設機械において、前記保護部材は、前記上部旋回体の旋回中心を中心とする径方向で前記外装カバーよりも外側に配置され、前記旋回フレームの周囲から上側に延びた支柱部と、前記支柱部の外周側を覆う円筒体からなり、前記支柱部の周囲に回転可能に設けられた回転筒部と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柱状体が保護部材に衝突するときの衝撃を逃がすことができる上に、柱状体が保護部材に擦れるのを防止することができ、柱状体や保護部材の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態による保護部材を備えた油圧ショベルを示す右側面図である。
図2】上部旋回体の前側部分と保護部材とを示す平面図である。
図3】上部旋回体と保護部材とを右前側から示す斜視図である。
図4】旋回フレームの取付座を示す斜視図である。
図5】第1の実施形態による保護部材を示す斜視図である。
図6図5の保護部材の取付部、支柱部およびカバー部を示す斜視図である。
図7図5の保護部材の断面図である。
図8】本発明の第2の実施形態による保護部材を示す斜視図である。
図9図8の保護部材の取付部と支柱部とを示す斜視図である。
図10図8の保護部材の断面図である。
図11】本発明の第3の実施形態による保護部材を示す斜視図である。
図12図11の保護部材の取付部、支柱部およびカバー部を示す斜視図である。
図13図11の保護部材の断面図である。
図14】本発明の第4の実施形態による保護部材を示す斜視図である。
図15】分割筒部を分離した状態の保護部材を示す斜視図である。
図16】本発明の第1の変形例による他の保護部材と上部旋回体とを左前側から示す斜視図である。
図17】本発明の第2の変形例による保護部材を示す断面図である。
図18】本発明の第3の変形例による保護部材を示す断面図である。
図19】本発明の第4の変形例による保護部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、建設機械の代表例としての油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1ないし図7は、本発明の第1の実施形態を示している。図1において、油圧ショベル1は、林業仕様となっている。具体的には、林業仕様の油圧ショベル1は、木の根を掘り起こす抜根、林道などを整備する整地、生えている木を切り倒す伐倒、伐倒木の枝を取る枝払い、伐倒木を所定の長さ寸法に切る切断(玉切り)、山林内で切り倒した木を集める集材、切断した丸太を選別して並べたりトラックに積み込んだりする仕分けや荷役等、様々な作業に用いられる。本実施形態では、後述の作業装置4に、伐倒した木を切断した丸太(柱状体)を把持して移動させるグラップル4Cを装備した場合を例示している。
【0015】
油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に回動可能に設けられた作業装置4と、により構成されている。
【0016】
作業装置4は、基端側が旋回フレーム5に回動可能に連結されたブーム4Aと、ブーム4Aの先端側に回動可能に連結されたアーム4Bと、アーム4Bの先端側に回動可能に連結された作業具としてのグラップル4Cと、これらを回動させるブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、作業具シリンダ4Fと、を含んで構成されている。
【0017】
グラップル4Cは、図示しない油圧アクチュエータにより旋回可能(自転可能)に構成されている。グラップル4Cは、所定の長さに切断された柱状体となる丸太(図示せず)を把持することができる。作業装置4は、作業具として、伐倒、枝払い、切断を連続的に行うハーベスタ、枝払い、切断を連続的に行うプロセッサ等を備えることもできる。
【0018】
上部旋回体3は、支持構造体をなす旋回フレーム5と、旋回フレーム5の左側に設けられた運転席6と、運転席6を覆うように旋回フレーム5の左側に設けられたキャブ7と、旋回フレーム5の右側に設けられ、油圧アクチュエータに供給される作動油を貯える作動油タンク8と、作動油タンク8の右側に隣接して設けられ、燃料を貯える燃料タンク9と、を備えている。
【0019】
旋回フレーム5の後側には、エンジン、電動モータ等の原動機、油圧ポンプ、熱交換装置等(いずれも図示せず)の機器が搭載されている。旋回フレーム5に搭載された搭載機器は、旋回フレーム5に設けられた外装カバー10により覆われている。
【0020】
図1ないし図3に示すように、旋回フレーム5は、前後方向に延びるセンタフレーム5Aと、センタフレーム5Aを挟んで左右両側に配置され、前後方向に延びた左サイドフレーム(図示せず)、右サイドフレーム5Bと、を有している。また、旋回フレーム5の前部右側は、右サイドフレーム5Bの前部からセンタフレーム5Aに向けて左側に延びた横フレーム部5Cとなっている。さらに、右サイドフレーム5Bと横フレーム部5Cとの接続部分(右前角部)は、面取りするように傾斜した傾斜フレーム部5Dとなっている。
【0021】
図4に示すように、右前位置の傾斜フレーム部5Dには、後述の保護部材11を取り付けるための取付座5Eが設けられている。取付座5Eは、例えば、上下方向に2個のねじ孔5E1を有する2本の金属板からなり、横方向に並んだ状態で溶接等の手段を用いて傾斜フレーム部5Dに固着されている。各ねじ孔5E1には、後述する保護部材11の取付部12を取り付けるためのボルト13が螺着される。
【0022】
キャブ7内には、オペレータが着席する運転席6の前側に位置して、油圧ショベル1を走行させるための走行用操作レバー・ペダル装置(図示せず)が設けられている。また、運転席6の左右両側には、作業装置4等を操作するための作業用操作レバー装置(図示せず)が設けられている。
【0023】
図2に示すように、作動油タンク8は、キャブ7との間に作業装置4を挟んだ右側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。作動油タンク8は、油圧アクチュエータを駆動するための作動油を貯えている。また、燃料タンク9は、作動油タンク8の右側に並ぶように旋回フレーム5上に設けられている。燃料タンク9は、エンジンに供給する燃料を貯えている。
【0024】
外装カバー10は、キャブ7の後側で原動機、油圧ポンプ等を覆い、作動油タンク8、燃料タンク9の前側でコントロールバルブ(図示せず)等を覆っている。また、外装カバー10は、旋回フレーム5の右側に設けられ、旋回フレーム5に搭載されたコントロールバルブ(搭載機器)を覆う右前カバー部10Aを有している。
【0025】
次に、本実施形態の特徴部分となる保護部材11の構成および機能(動作)について説明する。
【0026】
保護部材11は、旋回フレーム5の右前位置に立設されている。これにより、保護部材11は、例えば長尺な柱状体からなる丸太から外装カバー10を保護している。保護部材11は、後述の取付部12、支柱部14、回転筒部15、カバー部16を含んで構成されている。ここで、保護部材11は、鉄材料を用いて形成されることで、安価に製造することができる。
【0027】
取付部12は、旋回フレーム5の取付座5Eに対面する縦板12Aと、縦板12Aの上部から屈曲して延びた横板12Bと、縦板12Aの前面と横板12Bの下面との間に設けられた補強板12Cと、を備えている。また、縦板12Aには、取付座5Eのねじ孔5E1に対応する位置に4個のボルト挿通孔12D(図7参照)が形成されている。
【0028】
そして、取付部12を旋回フレーム5に取り付ける場合には、縦板12Aを旋回フレーム5の取付座5Eに対面させ、この状態でボルト挿通孔12Dに挿通したボルト13を取付座5Eのねじ孔5E1に螺着する。これにより、取付部12は、旋回フレーム5の右前位置に取り付けることができる。さらに、取付部12は、旋回フレーム5の取付座5Eに取り付けられた状態で、横板12Bが水平状態となっている。
【0029】
支柱部14は、取付部12の横板12B上に設けられている。図2に示すように、支柱部14は、上部旋回体3の旋回中心Oを中心とする径方向で外装カバー10よりも外側、具体的には、旋回中心Oを中心として右前カバー部10Aの右前部位に接する円Cよりも外側に配置されている。この上で、支柱部14は、旋回フレーム5の周囲から上側に延びている。換言すると、支柱部14は、グラップル4Cで把持した丸太が前側から右前カバー部10Aに接近した場合でも、右側から接近した場合でも、丸太が右前カバー部10Aに衝突するのを遮ることができる位置に配置されている。
【0030】
図7に示すように、支柱部14は、一定の径寸法の円筒体として形成されている。支柱部14は、下端部が横板12Bの上面に、例えば、溶接手段を用いて固着されている。これにより、支柱部14は、強度を得つつ、軽量化することができる。また、支柱部14(保護部材11)は、保護対象となる右前カバー部10Aと同等の高さ寸法を有している(図1参照)。
【0031】
回転筒部15は、支柱部14の外周側を覆う円筒体として形成されている。回転筒部15は、支柱部14の周囲に回転可能に設けられている。具体的には、回転筒部15は、軸方向(上下方向)の両端が開口した円筒体からなり、その内径寸法は、支柱部14の外径寸法よりも僅かに大きな寸法に設定されている。これにより、回転筒部15と支柱部14との間には、隙間が形成されるから、回転筒部15は、支柱部14の周囲で回転することができる。この回転筒部15の回転は、当該回転筒部15に衝突した丸太(衝突時の衝撃)を中心軸と異なる他の方向に逸らすことができる上に、丸太が擦れるのを防止できる。結果として、回転筒部15の回転は、保護部材11と丸太の損傷を防止することができる。
【0032】
カバー部16は、支柱部14の上部に設けられている。カバー部16は、回転筒部15の外径寸法と同等の直径寸法をもった円板体として形成されている。カバー部16は、溶接、ねじ止め、ピン止め等の手段を用いて支柱部14の上部に取り付けられている。カバー部16は、支柱部14と回転筒部15との隙間を覆い、この隙間に土砂や木屑が浸入するのを防止することにより、回転筒部15の回転不良を防止している。また、カバー部16は、走行時や作業時に回転筒部15が上下方向に大きく跳ねて損傷するような事態も防ぐことができる。
【0033】
第1の実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作の一例について説明する。
【0034】
キャブ7内の運転席6に座ったオペレータは、走行用操作レバー・ペダル装置を操作することにより、下部走行体2を走行させて現場まで移動することができる。現場に着いたら、オペレータは、作業用操作レバー装置を操作することにより、上部旋回体3を旋回動作させたり、作業装置4を回動させたりしてグラップル4Cで把持した丸太を移動させることができる。
【0035】
ここで、グラップル4Cで把持した丸太を移動させる場合、丸太は長尺であるから、操作を誤ると、丸太が外装カバー10に衝突する虞がある。特に、上部旋回体3の右前位置は、運転席6と左右方向の反対側で、運転席6に座ったオペレータからは目視し難い。このために、丸太が外装カバー10の右前カバー部10Aに衝突する虞があり、慎重な操作が必要になって作業性が低下してしまう。
【0036】
そこで、旋回フレーム5の右前位置には、外装カバー10を保護する保護部材11が設けられている。これにより、外装カバー10の右前カバー部10Aに丸太が衝突しようとしても、丸太は、右前カバー部10Aよりも先に保護部材11に衝突するから、右前カバー部10Aの損傷を防ぐことができる。
【0037】
しかし、保護部材11に丸太が衝突するときの角度や勢い(衝撃の大きさ)によっては、保護部材11や商品となる丸太が損傷する虞がある。また、丸太は、木材であるから保護部材11に擦れるだけでも損傷し、商品価値が下がってしまうことがある。
【0038】
然るに、第1の実施形態では、旋回フレーム5の右前位置に立設され、柱状体としての丸太から外装カバー10を保護する保護部材11は、上部旋回体3の旋回中心Oを中心とする径方向で外装カバー10よりも外側に配置され、旋回フレーム5の周囲から上側に延びた支柱部14と、支柱部14の外周側を覆う円筒体からなり、支柱部14の周囲に回転可能に設けられた回転筒部15と、を備えている。
【0039】
従って、保護部材11は、丸太が回転筒部15に衝突しても、回転筒部15が回転することにより、衝突時の衝撃を保護部材11の中心(軸線)から他の方向に逸らして逃がすことができる。また、丸太の接触に合わせて回転筒部15が回転するから、丸太が擦れるのを防止することができる。この結果、保護部材11は、当該保護部材11と丸太の損傷を防止することができる。
【0040】
また、回転筒部15は、軸方向の両端が開口した円筒体から形成されている。この上で、支柱部14の上部には、支柱部14と回転筒部15との隙間を覆うカバー部16が設けられている。これにより、カバー部16は、支柱部14と回転筒部15との隙間に土砂や木屑が浸入するのを防止することができ、回転筒部15の回転不良を防止することができる。しかも、カバー部16は、走行時や作業時に回転筒部15が上下方向に大きく跳ねて損傷するような事態も防ぐことができる。
【0041】
次に、図8ないし図10は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、回転筒部は、上側の端部が蓋部で閉塞された有蓋円筒体として形成されていることにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0042】
図8において、第2の実施形態による保護部材21は、第1の実施形態による保護部材11と同様に、旋回フレーム5の右前位置に立設されている。保護部材21は、前述した第1の実施形態による取付部12、支柱部14(図9参照)と後述の回転筒部22とにより構成されている。
【0043】
第2の実施形態による回転筒部22は、第1の実施形態による回転筒部15と同様に、支柱部14の外周側を覆う円筒体からなり、支柱部14の周囲に回転可能に設けられている。しかし、第2の実施形態による回転筒部22は、図10に示すように、上側の端部が蓋体22Bで閉塞された有蓋円筒体として形成されている点で、第1の実施形態による回転筒部15と相違している。
【0044】
回転筒部22は、軸方向(上下方向)に延びた円筒状の筒体22Aと、筒体22Aの上側の端部を閉塞した蓋体22Bと、により形成されている。筒体22Aの内径寸法は、支柱部14の外径寸法よりも僅かに大きな寸法に設定されている。また、蓋体22Bは、その下面が筒体22Aの上端面に当接している。これにより、筒体22Aと支柱部14との間には、隙間が形成されるから、回転筒部22は、蓋体22Bが支柱部14の上端に摺接しつつ、支柱部14の周囲で回転することができる。
【0045】
かくして、このように構成された第2の実施形態による保護部材21においても、第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施形態による保護部材21の回転筒部22は、筒体22Aと蓋体22Bとにより形成しているから、蓋体22Bによって支柱部14と回転筒部22との隙間に土砂や木屑が浸入するのをより確実に防止することができる。
【0046】
次に、図11ないし図13は本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、回転筒部は、上下方向で分割された複数の円筒体によって形成されていることにある。なお、第3の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0047】
図11において、保護部材31は、第1の実施形態による保護部材11と同様に、旋回フレーム5の右前位置に立設されている。保護部材31は、前述した第1の実施形態による取付部12、カバー部16と後述の支柱部32、下側回転筒部33、中間回転筒部34、上側回転筒部35とにより構成されている。
【0048】
図12に示すように、第3の実施形態による支柱部32は、第1の実施形態による支柱部14と同様に、取付部12の横板12B上に設けられている。支柱部32は、同等の長さ寸法をもって上下方向に配置された下部の大径部32A、中部の中径部32B、上部の小径部32Cからなる。また、支柱部32は、大径部32Aと中径部32Bとの間が第1段部32Dとなり、中径部32Bと小径部32Cとの間が第2段部32Eとなっている。支柱部32は、大径部32Aの下端部が横板12Bの上面に、例えば、溶接手段を用いて固着されている。
【0049】
図13に示すように、回転筒部としての下側回転筒部33は、支柱部32の大径部32Aの外周側を覆う円筒体からなり、取付部12の横板12B上に回転可能に設けられている。下側回転筒部33は、大径部32Aの長さ寸法(上下方向の寸法)よりも僅かに短い寸法に設定されている。
【0050】
また、回転筒部としての中間回転筒部34は、支柱部32の中径部32Bの外周側を覆う円筒体からなり、支柱部32の第1段部32D上に回転可能に設けられている。中間回転筒部34は、中径部32Bの長さ寸法よりも僅かに短い寸法に設定されている。
【0051】
さらに、回転筒部としての上側回転筒部35は、支柱部32の小径部32Cの外周側を覆う円筒体からなり、支柱部32の第2段部32E上に回転可能に設けられている。上側回転筒部35は、小径部32Cの長さ寸法よりも僅かに短い寸法に設定されている。
【0052】
かくして、このように構成された第3の実施形態による保護部材31においても、第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。特に、第3の実施形態による保護部材31は、回転筒部を、上下方向で分割された下側回転筒部33、中間回転筒部34、上側回転筒部35によって形成している。これにより、回転部分の重量を軽減して回転動作性を向上することができる。また、損傷したときの交換コストを低減することができる。
【0053】
次に、図14および図15は本発明の第4の実施形態を示している。第4の実施形態の特徴は、回転筒部は、円弧状に湾曲した複数枚の円弧板を周方向に連結することにより円筒体として形成されていることにある。なお、第4の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0054】
図14において、第4の実施形態による保護部材41は、第1の実施形態による保護部材11と同様に、旋回フレーム5の右前位置に立設されている。保護部材41は、前述した第1の実施形態による取付部12、支柱部14(図15参照)と後述の回転筒部42とにより構成されている。
【0055】
第4の実施形態による回転筒部42は、第1の実施形態による回転筒部15と同様に、支柱部14の外周側を覆う円筒体からなり、支柱部14の周囲に回転可能に設けられている。しかし、第4の実施形態による回転筒部22は、図15に示すように、円弧状に湾曲した2枚の円弧板42Aによって円筒体として形成されている点で、第1の実施形態による回転筒部15と相違している。
【0056】
回転筒部42は、円筒体を軸方向(上下方向)に延びた分断線で分断した半円筒状の円弧板42Aを2枚用いて形成されている。具体的には、円弧板42Aは、周方向(湾曲方向)の一方に凸部42A1が形成され、他方に凸部42A1が嵌る凹部42A2が形成されている。そして、回転筒部42は、2枚の円弧板42Aによって支柱部14を挟み、それぞれの凸部42A1を凹部42A2に嵌め、溶接手段等を用いて固着することにより、支柱部14の外周側を覆う円筒体を形成することができる。これにより、2枚の円弧板42Aの位置ずれや分離を防止することができ、耐久性を向上することができる。
【0057】
かくして、このように構成された第4の実施形態による保護部材41においても、第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。特に、第4の実施形態による保護部材41の回転筒部42は、円弧状に湾曲した2枚の円弧板42Aを周方向に連結することにより円筒体として形成する構成としている。これにより、回転筒部42の交換作業を容易に行うことができる。
【0058】
次に、図16は本発明の第5の実施形態を示している。第5の実施形態の特徴は、旋回フレームの左前位置には、柱状体から運転席の前側部分を保護する他の保護部材が設けられていることにある。なお、第5の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0059】
図16において、第5の実施形態による他の保護部材51は、第1の実施形態による保護部材11と同様に、取付部12、支柱部14、回転筒部15、カバー部16により構成されている。しかし、第5の実施形態による他の保護部材51は、旋回フレーム5の左前位置に設けられている。これにより、他の保護部材51は、丸太から運転席6の前側部分、即ち、キャブ7の前側部分を保護することができる。
【0060】
かくして、このように構成された第5の実施形態においても、保護部材11によって第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。しかも、第5の実施形態では、他の保護部材51を旋回フレーム5の左前位置に設けているから、丸太からキャブ7の前側部分を保護することができる。
【0061】
なお、第2の実施形態では、保護部材21の支柱部14を一定の径寸法の円筒体として形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、図17に示す第1の変形例による保護部材61のように構成してもよい。即ち、保護部材61の支柱部62は、上端部を縮径してテーパ部62Aとし、このテーパ部62Aに回転筒部22の蓋体22Bを摺接させる構成としてもよい。この構成によれば、支柱部62と回転筒部22との間の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0062】
また、図18に示す第3の変形例による保護部材71のように構成してもよい。この保護部材71は、支柱部72の上端部を縮径してテーパ部72Aとし、回転筒部73の筒体73Aと蓋体73Bとの間にテーパ部72Aに沿うようにテーパ筒体73Cを設けている。この第3の変形例によれば、回転筒部73の角部を鈍角にすることができ、柱状体の損傷を抑えることができる。
【0063】
一方、第4の実施形態では、回転筒部42を、円弧状に湾曲した2枚の円弧板42Aを周方向に連結することにより円筒体として形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、図19に示す第4の変形例による保護部材81のように構成してもよい。
【0064】
即ち、保護部材81は、上下方向の中間部に支持鍔82Aを有する支柱部82と、取付部12と支持鍔82Aとの間に設けられ、円弧状に湾曲した2枚の円弧板83Aを周方向に連結することにより円筒体として形成された回転筒部としての下側回転筒部83と、支持鍔82Aとカバー部16との間に設けられ、円弧状に湾曲した2枚の円弧板84Aを周方向に連結することにより円筒体として形成された回転筒部としての上側回転筒部84と、により構成されている。この構成によれば、回転部分の重量を軽減して回転動作性を向上することができる。また、損傷したときの交換コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業装置
4C グラップル(作業具)
5 旋回フレーム
6 運転席
10 外装カバー
10A 右前カバー部
11,21,31,41,61,71,81 保護部材
14,32,62,72,82 支柱部
15,22,42,73 回転筒部
16 カバー部
22A,73A 筒体
22B,73B 蓋体
33,83 下側回転筒部(回転筒部)
34 中間回転筒部(回転筒部)
35,84 上側回転筒部(回転筒部)
42A,83A,84A 円弧板
51 他の保護部材
O 旋回中心
図1
図2
図3
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図5
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図19