(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120136
(43)【公開日】2024-09-04
(54)【発明の名称】照射制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/19 20200101AFI20240828BHJP
H05B 47/11 20200101ALI20240828BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20240828BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
H05B47/19
H05B47/11
B60Q1/04 E
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026799
(22)【出願日】2023-02-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 駿
(72)【発明者】
【氏名】野澤 優介
(72)【発明者】
【氏名】長川 研太
(72)【発明者】
【氏名】平中 貴士
(72)【発明者】
【氏名】小西 翔太
【テーマコード(参考)】
3K273
3K339
5H181
【Fターム(参考)】
3K273PA07
3K273QA07
3K273QA11
3K273QA36
3K273RA02
3K273SA03
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3K273TA03
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3K339MC43
3K339MC77
5H181AA02
5H181AA03
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5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL04
(57)【要約】
【課題】第1移動体における第2移動体の照明装置からの光の影響を適切に解消することである。
【解決手段】本照明制御システムにおいては、複数の移動体のうちの一台である第1移動体が、第1移動体とは別の移動体である第2移動体の照明装置からの光の影響を受けた場合に、第2移動体の照明装置が、それの能力が低下するように制御される。それにより、第1移動体における光の影響を適切に解消することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体のうちの1台である第1移動体が、前記第1移動体とは別の移動体である第2移動体の照明装置の光の影響を受けた場合には、前記第2移動体の照明装置を、能力が低下するように制御する照明制御部を含む照明制御システム。
【請求項2】
前記照明制御部が、前記照明装置からの光の到達距離が短くなるように、前記第2移動体の照明装置を制御するものである請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項3】
前記照明制御部が、前記第1移動体において、運転者によって眩惑スイッチが操作された場合と、光検出装置によって設定レベル以上の光が検出された場合との少なくとも一方の場合に、前記第1移動体が光の影響を受けたとして、前記第2移動体の照明装置を、能力が低下するように制御する請求項1または2に記載の照明制御システム。
【請求項4】
前記照明制御部が、少なくとも、前記第1移動体と、前記第1移動体の周辺に位置する1台以上の移動体の各々との相対位置関係に基づき、前記第2移動体を特定する請求項1または2に記載の照明制御システム。
【請求項5】
前記第2移動体の照明装置の能力が、第1状態から前記第1状態より低い第2状態に切り換えられた状態において、
前記照明制御部が、前記第1移動体において前記第2移動体の照明装置の光の影響が検出されなくなった場合と、前記光の影響が検出されなくなると推定される場合との少なくとも一方の場合に、前記第2移動体の照明装置を、能力を前記第1状態に切り換えるように制御する請求項1または2に記載の照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射装置を制御する照射制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば、交差点において、車両である自車両が右折する場合において、自車両の照明装置による光の照射により、交差点を対向して直進する別の車両である他車両の運転者が眩惑状態にあると推定される場合にはそうでない場合より、車間距離がより広い状態で自車両の右折の支援が行われることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、第1移動体における第2移動体の照明装置からの光の影響を適切に解消することである。
【課題を解決するための手段、作用および効果】
【0005】
本発明に係る照明制御システムにおいては、複数の移動体のうちの一台である第1移動体が、第1移動体とは別の移動体である第2移動体の照明装置からの光の影響を受けた場合に、第2移動体の照明装置が、それの能力が低下するように制御される。それにより、第1移動体における光の影響を適切に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態に係る照明制御システム全体を概念的に示す図である。
【
図2】上記照明制御システムにおける移動体、管制装置を概念的に示す図である。
【
図3】上記照明制御システムにおける移動体の照明装置の制御の一例を概念的に示す図である。
【
図4】上記照明制御システムにおける移動体の照明装置の制御の別の一例を概念的に示す図である。
【
図5】上記照明制御システムにおける移動体の照明装置の制御のさらに別の一例を概念的に示す図である。
【
図6】上記照明制御システムの管制装置の管制ECUにおいて実行される照明制御プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【
図7】上記移動体の移動体ECUにおいて実行される移動体照明制御プログラムを表すフローチャートである。
【
図8】上記管制ECUにおいて実行される照明復帰プログラムを概念的に表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態に係る照明制御システムを図面に基づいて説明する。本照明制御システムは管理システムでもある。
【実施例0008】
本実施例に係る照明制御システムは、
図1に示すように、例えば、鉱山等で作業を行う複数の移動体Vと通信可能な管理装置としての管制装置S、1つ以上のアンテナA等を含む。これら複数の移動体Vと管制装置Sとは、直接またはアンテナAを介して無線の通信を行う。
【0009】
複数の移動体Vは、少なくとも1台以上の大型移動体HVと、1台以上の小型移動体LVとを含む。本実施例において、これら大型移動体HV、小型移動体LV等を総称して、または、個別に単に移動体Vと称する場合がある。
【0010】
1台以上の大型移動体HVの各々は、重機としたり、大型ダンプとしたりすること等ができる。大型移動体HVは、本実施例においては、鉱山で作業を行う移動体である。また、大型移動体HVは、管制装置Sからの指令に基づいて自動で作動(移動を含む)させられる自動走行移動体である。
1台以上の小型移動体LVの各々は、大型移動体HVに比較して移動体自身の重量が軽い移動体である。小型移動体LVは、作業員を乗せたり、作業に要する荷物を載せたりして、走行することが多い。小型移動体LVは、運転者による運転操作が行われなくても走行可能な自動運転移動体(自動走行移動体)であっても、運転者による運転操作により走行可能なマニュアル運転移動体であってもよい。
【0011】
複数の移動体Vの各々は、それぞれ、
図2に示すように、移動体Vを駆動する駆動装置D、移動体Vを制動する制動装置B、移動体Vの操舵輪を転舵する転舵装置T、GPS(Global Positioning System)受信機10、周辺情報取得装置12、移動体通信装置14、照明装置16、眩惑スイッチ18、移動体ECU20等を含む。眩惑スイッチ18は、移動体Vがマニュアル運転移動体である場合に設けることができる。
【0012】
駆動装置D,制動装置B,転舵装置Tは、本発明とは関係がないため説明を省略する。
GPS受信機10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一例であるGPSからの信号(例えば、GPS信号)を受信するものであり、GPS信号に基づいて、移動体V自身である自移動体Vの位置が取得される。GPS信号に基づいて、自移動体Vの緯度、経度、高度の3次元の位置が取得されるようにしても、緯度、経度の2次元の位置が取得されるようにしてもよい。
【0013】
周辺情報取得装置12は、複数のカメラ、ライダ等を含み、当該周辺情報取得装置12が搭載された移動体Vである自移動体Vの周辺の物体を認識するとともに、その物体と自移動体Vとの相対位置関係等を取得する。
【0014】
また、周辺情報取得装置12に含まれるカメラは、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)カメラとすることができ、複数の画素を含むものとすることができる。画素の各々は、入射光の光量に応じた電圧(電気信号)を出力するものである。画素において、入射光の光量が飽和露光量に達すると、電圧は飽和出力電圧となり、それ以上高くならない。なお、光量は、光束の時間積分値であり、露光量は、撮像時に画素に入射された光量である。
したがって、画素の出力電圧が飽和出力電圧に達すれば、画素に飽和露光量以上の光量の光が入射したことが分かる。また、出力電圧が飽和出力電圧に達した画素の数が多い場合は少ない場合より、CCDカメラが受けた光の影響が大きいことが分かる。
【0015】
なお、眩惑スイッチ18は、運転者が、当該眩惑スイッチ18が搭載された移動体である自移動体とは別の移動体である他移動体Vの照明装置16の光が眩しいと感じた場合に操作するものである。そのため、眩惑スイッチ18の操作(ON操作)が行われた場合には、自移動体Vにおいて、運転者が眩しいと感じたことが分かる。また、眩惑スイッチ18は、複数段に操作可能なものとすることができる。運転者が、運転者の眩惑の程度に応じて眩惑スイッチ18の切換え操作を行った場合には、眩惑スイッチ18の状態に基づいて、運転者が眩しいと感じたレベルを取得することができる。なお、眩惑スイッチ18とは別に眩惑の程度に応じた値を示す操作部材を設けることができる。運転者が、眩惑した場合に、その眩惑の程度に応じて操作部材を操作することにより、眩惑のレベルを取得することができる。
【0016】
本実施例においては、例えば、周辺情報取得装置12において、入射光の光量が飽和露出光量に達した画素の数が設定数以上である(設定比率以上である)場合には、CCDカメラにより、自移動体Vの周辺の物体を精度よく認識することが困難になると考えられる。そのため、設定数以上(設定比率以上)の画素において入射光の光量が飽和露光量に達した場合には、CCDカメラが眩惑状態になった、CCDカメラが他移動体Vの照明装置16の光の影響を受けたと考えることができる。このように、周辺情報取得装置12(CCDカメラ)は、光検出装置としての機能を有すると考えることができる。
【0017】
本実施例においては、周辺情報取得装置12において、設定数以上の画素において飽和露光量以上の光量の光が入射した状態を、設定レベル以上の光を受けた状態と称する。設定レベル以上の光を受けたことは、光検出装置としての周辺情報取得装置12によって検出される。
また、周辺情報取得装置12によって設定レベル以上の光を受けたことが検出された場合と、眩惑スイッチ18のON操作が行われた場合との少なくとも一方の場合に、自移動体Vが他移動体Vの照明装置16の光の影響を受けたと称したり、自移動体Vが眩惑状態になったと称したりすること等ができる。
【0018】
さらに、周辺情報取得装置12において、入射光の光量が飽和露光量に達した画素の数が多い場合は少ない場合より、光の影響のレベル、換言すると、眩惑レベルが高いと考えることができる。また、眩惑スイッチ18または操作部材の操作状態に基づいて、眩惑レベルを取得することができる。影響レベル、眩惑レベルは段階的に切換え可能としても連続的に切換え可能としてもよい。
【0019】
なお、マニュアル運転移動体において、光検出装置は、運転者の顔とほぼ同じ高さに設けることもできる。
【0020】
照明装置16は、本実施例においては、移動体Vの前部に設けられたヘッドランプ(前照灯)を含む。照明装置16は、ヘッドランプとしてのハイ(Hi)ビームランプ30およびロー(Lo)ビームランプ32、これらの光軸を駆動するアクチュエータである光軸用モータ34等を含む。光軸用モータ34により、ヘッドランプの光軸がほぼ水平に延びた第1角度から光軸が水平線に対して設定角度(例えば、ほぼ45°)傾斜した第2角度まで、複数段でまたは連続して調節することができる。
【0021】
照明装置16において、Hiビームランプ30が点灯している場合には、Loビームランプ32が点灯している場合より、また、光軸の角度が第1角度に近い場合には第2角度に近い場合より、光がより遠くまで達する。移動体Vにおいて、通常、光軸の角度が第1角度に設定された状態で、Hiビームランプ30が点灯される。それにより、夜間での安全性が高まる。
【0022】
例えば、本実施例における小型移動体LVの照明装置16の一例において、光軸の角度が第1角度であり、Hiビームランプ30が点灯している状態で、Hiビームランプ30の光が到達する距離を80m(
図3では0.8と記載した)とし、Loビームランプ32が点灯している状態において、Loビームランプ32の光が到達する距離を40m(0.4と記載した)とすることができる。大型移動体HVの照明装置16の一例においては、光軸の角度が第1角度である場合において、Hiビームランプ30の光が到達する距離を100m(
図3では1.0と記載した)とし、Loビームランプ32の光が到達する距離を50m(0.5と記載した)とすることができる。
なお、これら光源であるヘッドランプ(Hiビームヘッドランプ30、Loビームヘッドランプ32)の光が到達する距離は、例えば、物体の認識が可能な距離とすることができる。
【0023】
本実施例において、「ヘッドランプの光が到達する距離」とは、CCDカメラにおいて、設定数以上の画素が飽和露光量に達するような明るさ、運転者が眩惑状態であると感じる明るさを維持可能な距離とする。換言すると、自移動体Vが、他移動体Vの照明装置16の上述のヘッドランプの光が到達する距離内に位置する場合には、自移動体Vは、他移動体Vの照明装置16の光の影響を受けた状態、眩惑状態になると考えることができる。また、ヘッドランプから、ヘッドランプの光が到達する距離、隔たった位置における明るさは、CCDカメラにおいて設定数以上の画素が飽和露光量に達するような明るさ、運転者が眩惑状態であると感じる明るさとなる。
以下、本明細書において、ヘッドランプの光(ヘッドライト)が到達する距離をヘッドライト到達距離と称する。
【0024】
そして、ヘッドライト到達距離は、大型移動体HVの照明装置16の方が小型移動体LVの照明装置16より長くなる。また、Hiビームランプ30についてはLoビームランプ32より長く、光軸の角度が第1角度である場合には第2角度である場合より長くなる。
以上のことから、大型移動体HVの照明装置16の方が小型移動体LVの照明装置16より能力が高い。また、Hiビームランプ30の方がLoビームランプ32より能力が高く、光軸の角度が第1角度にある場合は第2角度にある場合より能力が高いと考えることができる。
【0025】
一方、光源から、光源から照射した光が0.25ルクス(lx)となる点までの距離を到達距離(照射距離)という。到達距離を求める条件等は、ANSI(Approved American National Standard:米国国家規格協会)/NEMA(National Electrical Manufacturers Association:米国電気工業会) FL 1-2009に定められている。
それに対して、上述のヘッドライト到達距離はANSI/NEMA FL 1-2009で規格化された到達距離(以下、ANSI到達距離と称する場合がある)とは異なるが、ヘッドライト到達距離が長い場合はANSI到達距離も長くなる。
【0026】
移動体通信装置14は、移動体ECU20において作成された移動体情報を無線で送信したり、管制装置Sから無線で送信された情報である管制情報を受信したりするものである。
【0027】
移動体ECU20は、コンピュータを主体とするものである。移動体ECU20には、これら駆動装置Dの駆動回路、制動装置Bの押付力制御アクチュエータ、転舵装置Tの転舵アクチュエータ、GPS受信機10、周辺情報取得装置12、移動体通信装置14、照明装置16等が接続される。また、移動体ECU20は、識別情報等記憶部22、移動体情報作成部24、移動体照明制御部26等を含む。
【0028】
識別情報等記憶部22は、複数の移動体Vの各々に対して個別に設定された識別情報、移動体Vの各々について予め設定された作業計画に関する情報等を記憶するものである。
移動体照明制御部26は、管制情報に含まれる照明制御指令に応じて照明装置16を制御するものである。
移動体情報作成部24は、移動体位置情報、影響検出情報、影響レベル情報、識別情報等を含む移動体情報を作成するものである。移動体位置情報は、GPS信号に基づいて取得された自移動体Vの位置を表す情報である。影響検出情報は、自移動体Vが他移動体Vの照明装置16の影響を受けたことを表す情報である。影響レベル情報は、自移動体Vが他移動体Vの照明装置16の影響を受けた場合の、その影響の程度(レベル)を表す情報である。作成された移動体情報は、移動体通信装置14に出力され、移動体通信装置14が送信する。
【0029】
管制装置Sは、コンピュータを主体とする管制ECU40と管制ECU40に接続された管制通信装置42とを含む。管制ECU40は、照明制御部50、管制情報作成部52等を含む。
【0030】
管制通信装置42は、管制情報作成部52によって作成された管制情報を無線で送信したり、移動体Vから無線で送信された移動体情報を受信したりするものである。
【0031】
管制情報作成部52は、照明制御部50において作成された照明装置16の制御指令である照明制御指令、その制御対象の照明装置16を搭載した移動体である制御対象移動体Vを表す識別情報等を含む管制情報を作成するものである。
【0032】
照明制御部50は、複数の移動体Vの各々の照明装置16を制御するものである。本実施例において、照明制御部50において、照明装置16に対する照明制御指令が作成される。複数の移動体Vのうちの1台である第1移動体(例えば、第1移動体を
図1に示す小型移動体LV1とする)から送信された移動体情報に影響検出情報が含まれる場合には、第1移動体LV1と、第1移動体LV1の周辺に位置する1台以上の移動体(小型移動体LV2,大型移動体HV)の各々との相対位置関係等を取得する。そして、これら相対位置関係等に基づいて、第1移動体LV1が影響を受けた光を照射した照明装置16を搭載した制御対象移動体である第2移動体(例えば、
図1に示す場合において大型移動体HVとする)HVを特定する。なお、第1移動体LV1,第2移動体HVの位置は、それぞれの移動体情報に含まれる位置情報から取得することができる。
【0033】
なお、第2移動体HVを特定する場合には、これらの相対位置関係のみならず、第1移動体LV1の向きと,周辺に位置する1台以上の移動体HV、LV2の各々の向きとの関係、周辺に位置する1台以上の移動体HV、LV2の各々の照射装置16の能力、第1移動体LV1が受けた光の影響レベル等も考慮される。なお、上述の第1移動体LV1,周辺に位置する移動体HV、LV2の向きは、移動体の各々の位置の変化等に基づいて取得することができる。
【0034】
また、第1移動体の周辺は、例えば、複数の移動体のヘッドライト到達距離に基づいて決まる範囲とすることができる。複数の移動体のヘッドライト到達距離のうちの最大値に基づいて決まる範囲としたり、平均的な値に基づいて決まる範囲としたりすること等ができる。
【0035】
そして、第2移動体HVが特定された場合には、第2移動体HVに、照明制御指令としての能力ダウン指令を作成して送信する。能力ダウン指令は、例えば、照明装置16において、Hiビームランプ30からLoビームランプ32に切り換える制御指令と光軸を第2角度に近づける制御指令との少なくとも一方等を含む指令とすることができる。
【0036】
例えば、
図3(a)に示すように、小型移動体LV,大型移動体HVが、それぞれ、光軸が第1角度である状態でHiビームランプ30が点灯した状態で走行している場合について説明する。
図3(b)に示すように、小型移動体LV,大型移動体HVが互いに対向して接近し、これらの車間距離が1.0よりわずかに短くなった場合に、小型移動体LVにおいて、大型移動体HVの照明装置16からの光の影響を受けると考えられる。小型移動体LVにおいて、運転者によって眩惑スイッチ18がON操作されたり、光検出装置によって設定レベル以上の光が検出されたりする。小型移動体Vにおいて、影響検出情報等を含む移動体情報が作成されて、送信される。管制装置Sにおいて、影響検出情報を含む移動体情報を受信すると、小型移動体LVに対向して位置する大型移動体HVに対して、能力ダウン指令等を含む管制情報が作成されて、送信される。
【0037】
図3(c)に示すように、管制情報を受信した大型移動体HVの移動体照明制御部26により、能力ダウン指令に応じて照明装置16が制御される。例えば、Hiビームランプ30からLoビームランプ32に切り換えられたり、光軸の角度が第2角度に近づけられたりすることにより能力が低下させられ、ヘッドライト到達距離が短くなる。なお、ヘッドライト到達距離が短くなることにより、ANSI到達距離も短くなる。
【0038】
このように、照明装置16の能力が高い(ヘッドライト到達距離が長い)移動体と、能力が低い(ヘッドライト到達距離が短い)移動体とが対向した場合には、ヘッドライト到達距離が長い方の移動体Vの照明装置16の光が、先に、ヘッドライト到達距離が短い方の移動体に影響を与える。そのため、ヘッドライト到達距離が短い方の移動体が先に眩惑状態になり、影響検出情報を含む移動体情報を管制装置Sに送信する。管制装置Sは、先に、ヘッドライト到達距離が長い方の移動体に、照射制御指令(能力ダウン指令)を含む管制情報を送信する。そのため、2台の移動体が対向する場合、ヘッドライト到達距離が長い方の移動体の照明装置16が先に制御対象とされ、ヘッドライト到達距離が短くされるのである。
【0039】
図3(d)に示すように、車間距離が0.8よりわずかに短くなると、大型移動体HVが、小型移動体LVの照明装置16から照射された光の影響を受ける可能性がある。大型移動体HVにおいて光の影響を受けた場合には、大型移動体HVから影響検出情報を含む移動体情報が送信されて、管制装置Sにおいて受信される。管制装置Sは、能力ダウン指令を作成し、能力ダウン指令を含む管制情報を小型移動体LVに送信する。
図3(e)において、小型移動体LVにおいて、能力ダウン指令に応じて照明装置16が制御されることにより、Loビームランプ32に切り換えられたり、光軸が第2角度に近づけられたりする。
【0040】
本実施例において、
図3(b)に示す場合には、小型移動体LVが第1移動体に対応し、大型移動体HVが第2移動体に対応する。
図3(d)に示す場合には、大型移動体HVが第1移動体に対応し、小型移動体LVが第2移動体に対応する。
【0041】
次に、
図4(a)に示すように、複数の移動体Vが設定範囲内に位置する場合について説明する。
図4(b)に示すように、第1移動体としての小型移動体LVから影響検出情報を含む移動体情報が送信された場合には、管制装置Sにおいて、小型移動体LVの位置、小型移動体LVの周辺に位置する1台以上の移動体HV1,HV2の各々の位置等が取得される。そして、これら小型移動体LVの位置とその周辺に位置する1台以上の移動体HV1、HV2の各々の位置とに基づいて相対位置関係が取得される。また、小型移動体LVの向き、周辺に位置する1台以上の移動体HV1,HV2の各々の向きとの相対関係が取得される。さらに、周辺に位置する1台以上の移動体HV1、HV2の各々の照射装置16の能力、小型移動体LVにおける光の影響レベル等が取得される。そして、これらに基づいて、小型移動体LVが影響を受けた光の照射元となる移動体である第2移動体(大型移動体)HV1が特定される。
【0042】
そして、管制装置Sは、大型移動体HV1に、能力ダウン指令を含む管制情報を送信する。
図4(c)に示すように、大型移動体HV1の移動体照明制御部26は能力ダウン指令に応じて照明装置16を制御して、Loビームランプ32に切り換える。
【0043】
次に、
図5に示すように、Loビームランプ32に切り換えられている(Loビームランプ32が点灯している)移動体Vの照明装置16において、Hiビームランプ30に戻す場合について説明する。
図5(a)に示すように、小型移動体LVが眩惑状態となり、眩惑情報(影響検出情報)を含む移動体情報が送信された場合には、
図5(b)において、大型移動体HVにおいて、Hiビームランプ30からLoビームランプ32に切り換えられる。しかし、小型移動体LVの走行により、仮に、大型移動体HVの照明装置16においてHiビームランプ30に切り換えた場合であっても、小型移動体LVがそれの光の影響を受けなくなった場合、近い将来光の影響を受けなくなると推定される場合には、大型移動体HVに、Hiビームランプ30に切り換えるよう制御指令(能力アップ指令)を含む管制情報が送信される。
【0044】
例えば、小型移動体LVにおいて大型移動体HVの光の影響を受けているが、その影響レベルが設定影響レベル以下であり、かつ、その影響レベルが低下傾向にある場合には、小型移動体LVは、近い将来、光の影響を受けなくなると推定することができる。具体的には、小型移動体LVの位置および向きと大型移動体HVの位置および向きとの相対関係に基づき、小型移動体LVが、大型移動体HVの照明装置16の照射範囲から遠ざかっている場合等が該当する。
【0045】
なお、近い将来とは、例えば、「設定時間が経過した後」の意味である。設定時間は、例えば、眩惑状態になっても、その影響が小さい時間としたり、差し支えない時間としたりすること等ができる。
【0046】
なお、影響レベルは、管制装置Sにおいて取得されるようにすることができる。
図5に示すように、管制装置Sにおいて、Hiビームランプ30,Loビームランプ32が点灯された場合の光の強さの範囲が予め記憶されている場合には、小型移動体LVと照明装置16との相対位置関係に基づき、小型移動体LVの光の影響レベルを推定することができる。
【0047】
このように、大型移動体HVの照明装置16においてLoビームランプ32からHiビームランプ30に適切なタイミングで戻すことにより、走行安全性の低下を良好に抑制することができ、作業効率の低下を抑制することができる。
【0048】
以上のように構成された照明制御システムにおいて、管制装置Sの照明制御部50において、
図6のフローチャートで表される照明制御プログラムが設定時間毎に実行される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、移動体情報を受信したか否かが判定され、S2において、移動体情報に影響検出情報(眩惑情報)が含まれるか否かが判定される。S1,2の判定がYESである場合には、S3において、識別情報に基づいて、移動体情報を送信した移動体である第1移動体Vが特定されて、移動体情報に含まれる位置情報に基づいて、第1移動体Vの位置が特定される。S4において、その第1移動体Vの周辺に位置する1台以上の移動体Vが特定され、それぞれ、位置が取得され、これらの相対位置関係が取得される。また、第1移動体V,その周辺に位置する1台以上の移動体Vの各々の位置の変化方向(走行方向)等に基づいて、これら移動体Vの向きが取得される。そして、S5において、これら相対位置関係、向きの関係等に基づいて、第1移動体Vが眩惑状態になった(影響を受けた)光を照射した移動体である第2移動体Vが特定され、S6において、その第2移動体Vに対する能力ダウン指令を含む管制情報が作成される。作成された管制情報は管制通信装置52によって送信される。
【0049】
移動体Vの移動体ECU20においては、
図7のフローチャートで表される移動体照明制御プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。
S21において、管制情報を受信したか否かが判定される。判定がYESである場合には、S22において、管制情報に含まれる識別情報と自移動体において予め設定されている識別情報とが一致するか否かが判定される。判定がYESである場合には、S23において、管制情報から照明制御指令が取得され、S24において、照明制御指令に従って照明装置16が制御される。例えば、Hiビームランプ30からLoビームランプ32に切り換えられたり、Loビームランプ32からHiビームランプ30に切り換えられたり、光軸の角度が調整されたりするのである。
【0050】
管制装置Sの照明制御部50において、
図8のフローチャートで表される照明復帰プログラムが実行される。
S31において、光の影響を受けた第1移動体Vの移動体情報が受信されたか否かが判定され、S32において、影響検出情報が含まれるか否かが判定される。S31,32の判定がYESである場合には、S33において、影響レベル情報が表す影響レベルが低下傾向にあるか否かが判定される。判定がYESである場合、または、S32の判定がNOである場合には、S34において、第1移動体Vと、光を照射した移動体である第2移動体Vとの各々の位置等に基づいて相対位置関係等が取得される。そして、S35において、第2移動体Vの照明装置16の能力を高くする(復帰する)ことが可能であるか否か判定される。具体的には、第2移動体Vの照明装置16において、Hiビームランプ30に戻したり、光軸の角度を第1角度に戻したりした場合に、第1移動体Vが光の影響を受けないか否か、近い将来、光の影響を受けない状態になると推定されるか否かが判定されるのである。判定がNOである場合には、能力が低い状態が維持される。判定がYESである場合には、S36において、能力アップ指令を含む管制情報が作成されて、送信される。
【0051】
一般道において、自移動Vが、他移動体Vのヘッドランプにより眩惑状態になった場合には、自移動体Vのヘッドランプの切換、点滅等(パッシング)により、そのことを知らせるのが普通である。しかし、自移動体Vと他移動体Vとで照明装置16の能力が異なる場合、例えば、自移動体Vの方が他移動体Vよりヘッドライト到達距離が短い場合には、自移動体Vが眩惑状態にあることをパッシング等により他移動体Vに伝えるのは困難である。
また、移動体同士の通信による場合には、自移動体Vが影響を受けた光を照射した移動体を、自移動体において特定する必要がある。そのため、複数の移動体の各々において高い演算機能が必要となる。
【0052】
さらに、例えば、オートライト機能等により、自移動体Vの照明装置16で決まる設定範囲内に他移動体Vが位置する場合に、自移動体Vの照明装置16においてLoビームランプ32に切り換えるようにすることが考えられる。しかし、大きさが異なる移動体間において、仮に、設定範囲内に他移動体Vが位置しても、他移動体Vが眩惑状態にならない場合がある。例えば、大型移動体HVの照明装置16の設定範囲内に図示しない中型移動体MVが位置する場合には、眩惑状態にならない場合があるのである。また、移動体がマニュアル運転移動体である場合には、眩惑を感じる光のレベルは運転者によって差がある。
【0053】
それに対して、本実施例においては、第1移動体Vにおいて光の影響を受けた場合に、そのことが通信により管制装置Sに報知される。そのため、特許文献1に記載のように、第2移動体Vにおいて、第1移動体Vが眩惑状態にあるか否かが推定される場合より、正確に、眩惑状態になったことを検出することができる。
【0054】
そして、管制装置Sにおいて、第1移動体Vが影響を受けた光を照射した移動体である第2移動体Vが特定され、管制装置Sから第2移動体Vに、能力ダウン指令を含む管制情報が送信される。それにより、第2移動体において、照明装置16の制御により、良好に能力を低下させる(ヘッドライト到達距離を短くする)ことができ、第1移動体Vの眩惑状態を良好に解消することができる。また、第1移動体Vにおいて、眩惑状態であることに起因する走行速度の低下を抑制することができる等、作業効率の低下を抑制することができる。さらに、第1移動体Vにおいて、第2移動体を特定する必要がなくなり、コストアップを抑制することができる。
【0055】
また、第1移動体Vが眩惑状態になったタイミング、すなわち、適切なタイミングで、第2移動体Vの照明装置16の能力を低くすることが可能となり、第2移動体の安全性の低下を良好に抑制することができる。
さらに、第2移動体の照明装置16の光の影響が第1移動体に及び難くなった場合に、第2移動体の照明装置16の能力が高く(復帰)されるため、より一層、安全性の低下を抑制することができる。
【0056】
なお、移動体Vの各々において、光の影響を受けた場合に、その光を照射した移動体を特定することが可能である場合には、移動体Vの各々から、直接、光を照射した移動体に、能力ダウン指令を送信することができる。第1移動体において、第2移動体を容易に特定可能である場合もある。本実施例においては、管制装置Sは不可欠ではない。
【0057】
以上のように、本実施例においては、照明制御部50等により照明制御部が構成されると考えたり、照明制御部50、移動体照明制御部26等により照明制御部が構成されると考えたりすること等ができる。
【0058】
その他、本発明は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
10:GPS受信機 14:移動体通信装置 12:周辺情報取得装置 20:移動体ECU 24:移動体情報作成部 26:移動体照明制御部 40:管制ECU 42:管制通信装置 50:照明制御部 S:管制装置 V:移動体
(1) 複数の移動体のうちの1台である第1移動体が、前記第1移動体とは別の移動体である第2移動体の照明装置の光の影響を受けた場合には、前記第2移動体の照明装置を、能力が低下するように制御する照明制御部を含む照明制御システム。
光の到達距離はANSI到達距離としたり、ヘッドライト到達距離としたりすること等ができる。いずれにしても、ヘッドライト到達距離が長い場合は短い場合より、ANSI到達距離は長くなる。
(3) 前記照明制御部が、前記第1移動体において、運転者によって眩惑スイッチが操作された場合と、光検出装置によって設定レベル以上の光が検出された場合との少なくとも一方の場合に、前記第1移動体が光の影響を受けたとして、前記第2移動体の照明装置を、能力が低下するように制御する(1)項または(2)項に記載の照明制御システム。
設定レベル以上の光とは、光検出装置がCCDカメラである場合に、設定数以上の画素において入射光の光量が飽和露光量以上になる光をいう。眩惑スイッチが操作された場合と設定レベル以上の光が光検出装置によって検出された場合との少なくとも一方の場合には、第1移動体が第2移動体の照明装置の光の影響を受けた、第1移動体が眩惑状態になったと考えられる。
(4) 前記照明制御部が、少なくとも、前記第1移動体と、前記第1移動体の周辺に位置する1台以上の移動体の各々との相対位置関係に基づき、前記第2移動体を特定する(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の照明制御システム。
1台以上の移動体から第2移動体を特定する場合には、第1移動体の位置と周辺の1台以上の移動体の各々の位置との相対位置関係に加えて、第1移動体の向きと周辺の1台以上の移動体の各々の向きとの関係(例えば、互いに対向しているか否か)、第1移動体の光の影響のレベル、周辺の1台以上の移動体の各々の照明装置の能力等を考慮することが望ましい。
第1状態は、照明装置において、Hiビームランプ30が点灯している状態と光軸が第1角度である状態との少なくとも一方の状態であり、第2状態は、Loビームランプ32が点灯している状態と光軸が第2角度に近い状態との少なくとも一方の状態である。
第1移動体において光の影響が検出されなくなると推定される場合とは、例えば、影響レベルが設定影響レベルより低く、かつ、影響レベルが減少傾向にある場合が該当する。具体的には、第1移動体が第2移動体の光の影響が及ぶ範囲から遠ざかっている場合が該当する。