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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120151
(43)【公開日】2024-09-04
(54)【発明の名称】船舶に連結された1対の伸長アーム
(51)【国際特許分類】
   B63B 1/38 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
B63B1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023209863
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】202311012491
(32)【優先日】2023-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】523469548
【氏名又は名称】森元 信吉
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森元 信吉
(57)【要約】      (修正有)
【課題】船舶の抗力抵抗を低減することによって船舶の速度および燃費を向上させる、船首構造を提供する。
【解決手段】左舷側および右舷側を有する船首(100)と、1対の伸長アーム(101,102)であって、船首(100)の左舷側に動作可能に連結された左舷側伸長アーム(101)、および船首(100)の右舷側に動作可能に連結された右舷側延長アーム(102)を備える、1対の伸長アーム(101,102)と、を備え、1対の伸長アーム(101,102)は、台形ゾーンを構成し、船舶に向かう到来波を左舷側と、右舷側と、台形プール(103)内に向かう中央波と、の3つの方向に分岐させることで船舶への波抵抗の衝撃を軽減する。台形プール(103)は、船首(100)および1対の伸長アーム(101,102)と中央波との衝突によって気泡の生成を設備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(10)の船首部分に連結された1対の伸長アーム(101,102)であって、
前記1対の延長アーム(101,102)は、
前記船首(100)の左舷側に動作可能に連結された左舷側伸長アーム(101)と、
前記船首(100)の右舷側に動作可能に連結された右舷側延長アーム(102)と、
を備え、
前記1対の伸長アーム(101,102)は、台形プール(103)を構成して前記船舶(10)に向かう到来波を分岐させることで前記船舶(10)への波抵抗の衝撃を軽減する、1対の伸長アーム(101,102)。
【請求項2】
前記1対の伸長アーム(101,102)の各々が近位端および遠位端を有し、
前記左舷側伸長アーム(101)の前記遠位端が前記右舷側延在アーム(102)の前記遠位端に向けられて前記台形プール(103)を形成する、請求項1に記載の1対の伸長アーム(101,102)。
【請求項3】
前記1対の伸長アーム(101,102)は、前記船舶(10)に向かう到来波を、
前記船舶(10)の前記左舷側に向かう左舷側波と、
前記船舶(10)の前記右舷側に向かう右舷側波と、
前記1対の伸長アーム(101,102)の遠位端の間の隙間(G)を通って前記台形プール(103)内に向かう中央波と、
の3つの部分に分岐させるように構成されている、請求項2に記載の1対の延長アーム(101,102)。
【請求項4】
前記1対の伸長アーム(101,102)は、当該1対の伸長アーム(101,102)の長さに沿って伸長しまたは引き込まれ得る、請求項1に記載の1対の伸長アーム(101,102)。
【請求項5】
船舶(10)であって、
左舷側および右舷側を有する船首(100)と、
1対の伸長アーム(101,102)であって、
前記船首(100)の前記左舷側に動作可能に連結された左舷側伸長アーム(101)、および
前記船首(100)の前記右舷側に動作可能に連結された右舷側延長アーム(102)、
を備える、1対の伸長アーム(101,102)と、
を備え、
前記1対の伸長アーム(101,102)は、台形プール(103)を構成して前記船舶(10)に向かう到来波を分岐させることで前記船舶(10)への波抵抗の衝撃を軽減する、船舶(10)。
【請求項6】
前記船首(100)は、湾曲した底を有する単一凹み付球状船首または垂直船首、またはスライド形船首から選択される、請求項5に記載の船舶(10)。
【請求項7】
前記船首(100)は底に30°~90°の範囲の傾斜角(α)を有する、請求項6に記載の船舶(10)。
【請求項8】
前記1対の伸長アーム(101,102)は、当該1対の伸長アーム(101,102)の長さに沿って伸長しまたは引き込まれて前記船舶(10)の舵として機能し得る、請求項5に記載の船舶(10)。
【請求項9】
前記1対の伸長アーム(101,102)の各々が近位端および遠位端を有し、前記左舷側伸長アーム(101)の前記遠位端が前記右舷側伸長アーム(102)の前記遠位端に向けられて前記台形プール(103)を形成する、請求項5に記載の船舶(10)。
【請求項10】
前記1対の延長アーム(101,102)は、前記船舶(10)に向かう到来波を、
前記船舶の前記左舷側に向かう左舷側波(10)と、
前記船舶の前記右舷側に向かう右舷側波(10)と、
前記1対の伸長アーム(101,102)の遠位端の間の隙間(G)を通って前記台形プール(103)内に向かう中央波と、
の3つの部分に分岐させるように構成されている、請求項9に記載の船舶(10)。
【請求項11】
前記台形プール(103)は、前記船首(100)および前記1対の伸長アーム(101,102)と前記中央波との衝突による気泡(500)の生成を設備する、請求項10に記載の船舶(10)。
【請求項12】
前記船舶(10)の前記船首(100)に動作可能に連結された気泡生成装置(104)であって、前記台形プール(103)に気泡(500)を噴射するように構成された、気泡生成装置(104)を更に備え、
前記気泡生成装置(104)は、前記船舶(10)の底(300)の上方に異なる噴射角度で前記気泡(500)を噴射して前記気泡(500)のサイズおよび密度を制御する、請求項11に記載の船舶(10)。
【請求項13】
前記気泡(500)は、前記船舶(10)の前記底(300)を通って流れ、前記船舶(10)の前記底(300)と海水との間に気泡(500)の層を創出する、請求項12に記載の船舶(10)。
【請求項14】
前記船首(100)、前記左舷側伸長アーム(101)、および前記右舷側伸長アーム(102)は、1つまたは複数の支持部材(105)を介して互いに支持可能に接続されている、請求項5に記載の船舶(10)。
【請求項15】
10°~60°のスライド構造(β)を有するバトック船尾(200)を更に備える、請求項5に記載の船舶(10)。
【請求項16】
前記バトック船尾(200)に動作可能に連結された回収ユニット(203)であって、海水波を介して気泡(500)に付着したマイクロプラスチックで汚れた前記気泡(500)を回収するように構成された、回収ユニット(203)と、
前記回収ユニット(203)に動作可能に連結された精製ユニット(204)であって、回収した前記気泡(500)から前記マイクロプラスチックを分離するように構成された、精製ユニット(204)と、
前記バトック船尾(200)に動作可能に連結された少なくとも1つのプロペラ(201)と、
前記船舶(10)の長さを短くするために前記少なくとも1つのプロペラ(201)の前方に配置された少なくとも1つの舵(202)と、
を更に備える、請求項15に記載の船舶(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総じて、船のような船舶の船首構造に関する。より具体的には、本発明は、船舶の船首構造に連結された1対の伸長アームを有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船、ヨット、ボート等のような船舶は、海洋、運河、河川、その他の深海域を含むがこれらに限定されない様々な水域を航行し、貨物や乗客を運ぶ。このような船舶はまた、防衛、研究、または漁業のための専門的な任務も支援する。加えて、船舶は、探検、貿易、戦争、移住、植民地化、そして科学を支援する。船舶輸送は、世界の商取引の大部分を担っている。
【0003】
船舶は通常、空気に比べて大きな抗力抵抗を与える媒体中を航行する。抗力抵抗とは、船舶の進路から水を押しのけるために必要なエネルギーを指す。この抗力抵抗によって、水波が創出される。抗力抵抗は、船舶の速度を低下させるだけでなく、船舶の燃料消費を増大させる。従って船舶は、抗力抵抗の要素を低く保つように設計する必要がある。
【0004】
抗力抵抗は、前端における水と船舶との相互作用を制御することによって、制御できる。最初に水と接触する船舶の前端部分を、船首という。
【0005】
船首がとがっていない船舶は、通過するために水を素早く押しのける必要があり、この高い加速は大きなエネルギーを必要とする。より鋭角の船首は、より緩やかに進路から水を押しのけ、必要なエネルギー量が低減されることは、当技術分野において既に知られている。
【0006】
一般に球状船首として知られている別のタイプの船首が、抗力抵抗を低減するために大型の船でよく使用されている。球が船首前方の圧力分布を変化させることにより、船舶によって生じる波が変わる。船首波との破壊的な干渉の性質上、これが有効な船舶速度の範囲は限られる。球状船首は、特定の速度範囲における特定の船舶の抗力抵抗を低減するために設計する必要がある。1つの船舶形状および1つの速度範囲で機能する球は、異なる船舶形状または異なる速度範囲では悪影響を与える可能性がある。従って、船舶に想定される運転速度および運転条件についての知識と適切な設計が、球状船首を設計する際には必要である。
【0007】
一般に直線形状船首として知られている別のタイプの船首では、より良い燃費が得られる。
【0008】
空気潤滑システムは、気泡を使用して船舶と水との間の抗力抵抗を低減する別の方法である。送風機または専用のシステムを使用して気泡を生成し、船の表面下を連続的に通過させる。気泡出口は、船舶の底に沿った様々な位置に船舶の中心線の両側に対称的に作成される。船舶表面の気泡分布によって船舶に作用する抗力抵抗が低減され、省エネ効果が創出される。船舶設計が適切であれば、空気潤滑システムによって船舶の燃料消費量が大幅に改善するとともにCO排出が最大10~15%低減されることが期待される。
【0009】
空気潤滑システムに関して開発されている現在の技術のほとんどは、船舶と水との間に気泡の層を形成するために、送風機または専用のシステムを使用して一定の流量の空気を供給する必要がある。現在の技術では、船底から飛び出しているフィンまたは船舶の底にしか気泡を生成できない。従って、気泡のサイズや密度を制御することは非常に困難である。
【0010】
悪天候の間、船舶は荒れた海況に直面しなければならない。荒れた海況では、波の高さが2.5メートルから14メートル超の範囲に達することがある。荒れた海況は、船舶に横揺れ、縦揺れサージング、上下運動、偏揺れおよび揺動を引き起こし、これによって船舶が損傷する可能性がある。
【0011】
更に、全世界が直面している最も顕著な問題の1つは、プラスチック廃棄物の増加である。プラスチック廃棄物の増加は、海洋を窒息させ、脆弱な生態系を脅かし、海の生き物を殺している。多くの研究者が、海洋中のプラスチックの量は今後15年間で倍増し、2050年までに海には(重量ベースで)魚よりも多くのプラスチックが存在することになる可能性がある、と推定している。
【0012】
更に、海鳥や海の生物が水域に存在するプラスチックを摂取するリスクが、常にある。海の生き物がプラスチックごみを喉に詰まらせたり、プラスチックごみに絡まったりして、痛みを伴うゆっくりとした死が引き起こされることもよくある。更に、プラスチック汚染は、サンゴ礁の破壊にも寄与している。
【0013】
水域のプラスチックが分解されると、マイクロプラスチックが創出される。これらのマイクロプラスチックは、魚その他の海の生物に飲み込まれ、最終的に食物連鎖に行き着く。これは人間の健康にも悪影響を及ぼす。
【0014】
国連のように、水域の浄化に取り組んでいる組織がある。そのような組織の殆どが、水域からプラスチックを回収するための専用のシステムに注目している。船舶輸送は世界の商取引の大部分を担っているため、船舶に取り付けて海からマイクロプラスチックを回収できる装置を開発することは、有利であろう。
【0015】
上記のような現在の技術の限界に鑑み、改良された船舶設計のための装置を開発すること、ひいては、船舶の抗力抵抗を低減し、船舶の速度を向上させ、燃費を向上させ、荒れた海況での安定性を向上させ、海からマイクロプラスチックを回収することを含むがこれらに限定されない様々な問題に対応することが、求められている。
【0016】
よって、機器/製品およびそれらの方法を含む従来のアプローチの上記の欠陥は、従来のアプローチの問題点の幾つかの概要を提供することを意図しているにすぎず、網羅的であることを意図したものではない。従来のアプローチに伴う他の問題、並びに本明細書に記載する様々な非限定的な実施形態の方法および対応する利点は、以下の説明を検討することによって更に明らかになり得る。
【発明の概要】
【0017】
本発明の幾つかの態様の基本的な理解を提供するため、以下に本発明の簡単な要約を提示する。この要約は、本発明の外延の概要ではない。本発明の鍵となる/不可欠の要素を特定したり、発明の範囲を線引きしたりすることを意図するものでもない。後に提示する本発明の更に詳細な説明の前置きとして、本発明の幾つかの概念を簡単な形態で提示することを、唯一の目的とする。
【0018】
従って、本発明の目的は、船舶の抗力抵抗を低減することによって船舶の速度および燃費を向上させる、船首構造を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、荒れた海況を容易に航海できる船舶を提供することである。
【0020】
本発明の更に別の目的は、海からマイクロプラスチックを回収する装置としての船舶を提供することである。
【0021】
故に、一態様において、本発明は、船舶の船首部分に連結された1対の伸長アームであって、前記1対の伸長アームは、前記船首の左舷側に動作可能に連結された左舷側伸長アームと、前記船首の右舷側に動作可能に連結された右舷側伸長アームと、を備え、前記1対の伸長アームは、台形プールを構成して前記船舶に向かう到来波を分岐させることで前記船舶への波抵抗の衝撃を軽減する、1対の伸長アームを提供する。
【0022】
別の態様において、本発明は、前記1対の伸長アームの各々が近位端および遠位端を有し、前記左舷側延長アームの前記遠位端が前記右舷側延長アームの前記遠位端に向けられて前記台形プールを形成する旨を規定する。
【0023】
更に別の態様において、本発明は、前記1対の伸長アームが、前記船舶に向かう到来波を、前記船舶の前記左舷側に向かう左舷側波と、前記船舶の前記右舷側に向かう右舷側波と、前記1対の伸長アームの遠位端の間の隙間を通って前記台形プール内に向かう中央波と、の3つの部分に分岐させるように構成されている旨を規定する。
【0024】
更に別の態様において、本発明は、前記1対の伸長アームが、当該1対の伸長アームの長さに沿って伸長しまたは引き込まれ得る旨を規定する。
【0025】
更なる態様において、本発明は、船舶であって、左舷側および右舷側を有する船首と、1対の伸長アームであって、前記船首の前記左舷側に動作可能に連結された左舷側伸長アーム、および前記船首の前記右舷側に動作可能に連結された右舷側延長アーム、を備える、1対の伸長アームと、を備え、前記1対のアームは、台形プールを構成して前記船舶に向かう到来波を分岐させることで前記船舶への波抵抗の衝撃を軽減する、船舶を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、前記船首が、湾曲した底を有する単一凹み付球状船首、またはスライド形船首、または垂直分割船首を有する非球状船首、から選択される旨を規定する。
【0027】
故に、別の態様において、本発明は、前記船首が、底に30°~90°の範囲の傾斜角を有する旨を規定する。
【0028】
故に、別の態様において、本発明は、前記1対の延長アームが、当該1対の伸長アームの長さに沿って伸長しまたは引き込まれて前記船舶の舵として機能し得る旨を規定する。
【0029】
故に、別の態様において、本発明は、前記左舷側伸長アームの前記遠位端が前記右舷側伸長アームの前記遠位端に向けられて前記台形プールを形成する旨を規定する。
【0030】
故に、別の態様において、本発明は、前記1対の伸長アームが、前記船舶に向かう到来波を、前記船舶の前記左舷側に向かう左舷側波と、前記船舶の前記右舷側に向かう右舷側波と、前記1対の伸長アームの遠位端の間の隙間を通って前記台形プール内に向かう中央波と、の3つの部分に分岐させるように構成されている旨を規定する。
【0031】
故に、別の態様において、本発明は、前記台形プールが、前記船首および前記1対の伸長アームと前記中央波との衝突による気泡の生成を設備する旨を規定する。
【0032】
故に、別の態様において、本発明は、気泡生成装置が、前記船舶の前記船首に動作可能に連結され、前記台形プールに気泡を噴射するように構成される旨を規定する。
【0033】
故に、別の態様において、本発明は、前記気泡生成装置が、前記船舶の底の上方に異なる噴射角度で気泡を噴射して前記気泡のサイズおよび密度を制御する旨を規定する。
【0034】
故に、別の態様において、本発明は、前記気泡が前記船舶の前記底を通って流れ、前記船舶の前記底と海水との間に気泡の層を創出する旨を規定する。
【0035】
故に、別の態様において、本発明は、前記船首、前記左舷側伸長アーム、および前記右舷側伸長アームが、1つまたは複数の支持部材を介して互いに支持可能に接続されている旨を規定する。
【0036】
故に、別の態様において、本発明は、10°~60°の細い線でのスライド構造を有するバトック船尾を規定する。
【0037】
故に、別の態様において、本発明は、前記船舶が、前記バトック船尾に動作可能に連結された回収ユニットであって、海水波を介して気泡に付着したマイクロプラスチックで汚れた前記気泡を回収するように構成された、回収ユニットと、前記回収ユニットに動作可能に連結された精製ユニットであって、回収した前記気泡から前記マイクロプラスチックを分離するように構成された、精製ユニットと、前記バトック船尾に動作可能に連結された少なくとも1つのプロペラと、前記バトック船尾の長さを短くするために前記少なくとも1つのプロペラの前方に配置された少なくとも1つの舵と、を更に備える旨を規定する。
【0038】
本発明の他の態様、利点、および顕著な特徴は、本発明を異なる実施形態において詳述する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本明細書は、本発明を特に示して明確に請求する特許請求の範囲で締めくくられているが、本発明の利点および特徴は、明示的に開示された例示的な実施形態の以下のより詳細な説明を、添付の図面と併せて参照することにより、更によく理解されるであろうと考えられる。以下の図面および詳細な説明は、明示的に開示された例示的な実施形態を示すことのみを意図したものであり、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0040】
図1図1は、本発明の一実施形態に採用した船舶の概略側面図を示す。
【0041】
図2図2は、本発明の一実施形態に採用した船舶船首部分の概略底面図を示す。
【0042】
図3a図3aは、本発明の一実施形態に採用した船舶の長さに沿った中心軸で切断した、球状船首を有する船舶船首部分の概略側面図を示す。
【0043】
図3b図3bは、本発明の一実施形態に採用した船舶の長さに沿った中心軸で切断した、垂直船首を有する船舶船首部分の概略側面図を示す。
【0044】
図3c図3cは、本発明の一実施形態に採用した支持構造を有する船舶船首部分の概略斜視図を示す。
【0045】
図3d図3dは、本発明の一実施形態に採用した支持構造を有する船舶船首部分の概略正面図を示す。
【0046】
図4図4は、本発明の一実施形態に採用した船舶の底の上方に気泡生成装置が気泡を噴射する船首部分の概略図を示す。
【0047】
図5図5は、本発明の一実施形態に採用した船舶の船尾の拡大概略図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0048】
例示の目的で本明細書に詳細に記載する例示的な実施形態は、構造および構成において多くの改変の対象となる。しかしながら、本発明は、本明細書に示され記載されるような特定の構成物に限定されないことを強調しておかねばならない。種々の省略および均等物の置換が、状況が示唆し得るようにまたは状況が好転し得るように企図されることが理解されるが、これらは本発明の特許請求の範囲から逸脱することなく適用や実施をカバーすることを意図するものである。また、本明細書で使用する表現および用語は、説明のためのものであって、限定のためのものと見なされるべきではないことを、理解されたい。
【0049】
本明細書において用語「含む(including)」、「備える(comprising)」、または「有する(having)」およびこれらの変化形の使用は、その後に列挙されたアイテムおよびそれらの同等物、並びに追加のアイテムを包含していることを意味する。
【0050】
更に、本明細書において用語「an」および「a」は、数量の制限を示すものではなく、むしろ、言及された物品が少なくとも1つ存在することを示すものである。
【0051】
更に、本明細書において用語「てもよい/し得る(may)」は、必須の意味(すなわち、しなければならない(must)の意味)ではなく、許容の意味(すなわち、可能性を有する(having the potential)の意味)で使用する。
【0052】
更に、本明細書において用語「船舶(vessel)」は、水上を航行するために使用される水上機(watercraft)を表すために使用する。船やボートであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明は、船舶への抗力抵抗を低減することで船舶の速度および燃費を向上させる、船舶の設計を提供する。更に、本船舶は、荒れた海況を航海することができ、海からマイクロプラスチックを回収することができる。
【0054】
本発明の例示的な実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0055】
図1は、本発明の一実施形態に採用した船舶10の概略側面図である。船舶10は、貨物船、旅客船、防衛船、調査船、または漁船であり得るが、これらに限定されるものではない。船舶10は、船首部分および船尾200を備えていてもよい。参照符号300は、船舶10の底を表している。船舶10の底300は、平坦面であってもよい。更に、参照符号Wは、海の水位を表している。
【0056】
図2は、本発明の一実施形態に採用した船舶10の船首部分の概略底面図である。船首部分は、船首100および1対の伸長アーム101,102を備えてもよい。船首100は、船舶10の船首部分の中央部に配置されていてもよい。船首100は、図3aに示されているような単一凹み付球状船首、および図3bに示されているようなスライド形垂直船首から選択され得るが、これらに限定されるものではない。単一凹み付球状船首は、単一凹み付球状の底が湾曲していてもよい。スライド形垂直船首または単一凹み付球状船首の湾曲した底は、30°~90°の間の範囲の傾斜角αを有していてもよい。
【0057】
1対の伸長アーム101,102は、船舶10の前方において、船首100の左舷側に動作可能に連結された左舷側伸長アーム101と、船首100の右舷側に動作可能に連結された右舷側伸長アーム102と、を備えてもよい。1対の伸長アーム101,102の近位端は、船舶10に連結されていてもよい。1対の伸長アーム101,102の近位端は、船舶10の左舷-右舷方向に距離Dだけ離間していてもよい。左舷側伸長アーム101の遠位端は、右舷側伸長アーム102の遠位端に向けられていてもよい。1対の伸長アーム101,102の遠位端は、互いに左舷-右舷方向に離間して、これらの間に隙間gが創出されていてもよい。1対の伸長アーム101,102の遠位端の間の隙間gは、1対の伸長アーム101,102の近位端の間の距離Dよりも小さくてもよい。更に、伸長アーム101,102の遠位端は、船首100より鋭角であってもよい。
【0058】
1対の伸長アーム101,102は、船舶10に向かう到来波を、船舶10の左舷側に向かい得る左舷側波と、船舶10の右舷側に向かい得る右舷側波と、隙間gを通って1対の伸長アーム101,102および船首100によって囲まれた閉鎖空間へ侵入し得る中央波と、の3つの部分に分岐させるように構成されてもよい。この閉鎖空間を、台形プール103と称してもよい。到来波が3方向に分岐されると、到来波の強度およびエネルギーもまた分割され得るため、船舶10に到達し得る中央波が有する強度およびエネルギーは、小さくなり得る。これにより、船舶10への波の衝撃は大幅に軽減され得る。海況に応じて、中央波の高さは到来波よりも0.5m~2m低くなると期待され得る。その結果、船舶10は荒れた海況を容易に航海し得る。
【0059】
台形プール103において、中央波は、間隙gを通って侵入して船首100および1対の伸長アーム101,102の内壁に衝突し得る。この衝突によって、台形プール103内に気泡500が自然に生じ得る。
【0060】
加えて、図4に示すように、船舶10に気泡生成装置104が設けられ、船舶10の船首100に動作可能に連結されていてもよい。気泡生成装置104は、送風機、空気圧縮機、または気泡500を生成するために使用し得る任意の他の専用システムを備えてもよい。気泡生成装置104は、台形プール103に追加の気泡500を提供するように構成されていてもよい。気泡生成装置104は、台形プール103内に、船舶10の底300より高くであり得る噴射点に異なる噴射角度で気泡500を噴射して、異なるサイズの気泡を創出してもよい。気泡生成装置104は、フィン104aとして設けられ、船舶10の底300の僅かな距離だけ上方で船首100と連結されていてもよい。フィン104aは、船舶10が前進するにつれて、フィン104aの上方に低圧領域を与え得る。低い圧力により、大気は、フィン104a周囲の流動条件、フィンの形状、迎え角、その他の要因に応じて顕著な空気圧縮を伴うことなく臨界水深まで移動し得る。フィン104aは、空気と水とがスムーズに合流して下流に流出するように、船舶10の底300の僅かな距離だけ上方に位置していてもよい。空気-水界面の不安定性によって小さな気泡が生じ、フィン104aの表面に沿って高いせん断速度に曝され得る。気泡の数密度は、フィン104aのすぐ後ろで生じ得るその後の破波現象に伴って増加し得る。気泡生成装置104は、多孔質板のような気泡細分化機器を用いることなく、小さな気泡を生成し得る。
【0061】
船首100は、湾曲しているかまたは傾斜している底を有し得るため、中央波は、台形プール103から船舶10の底300へと流れ得る。更に、気泡500は、中央波とともに、台形プール103から船舶10の底300へと流れ得る。船舶10の底300への気泡500の一定の流れがあり得る。船舶10の底300には、図4に示すように、船舶10の底300と海水との間に気泡500の層が形成され得る。気泡500の層により、船舶10と海水との間の抗力抵抗が低減されるであろう。従って、船舶の燃費が向上する。
【0062】
加えて、図3cおよび図3dに示すように、支持部材105を1対の伸長アーム101,102に接続して、1対の伸長アーム101,102に更なる強度を付与してもよい。支持部材105は、少なくとも1つまたは複数の水平部材を含んでいてもよい。支持部材105の一端を左舷側伸長アーム101の頂部分に連結し、支持部材105の他端を右舷側伸長アーム102の頂部分に連結してもよい。同様に、別の支持部材105の一端を左舷側伸長アーム101の底部分に連結し、別の支持部材105の他端を右舷側伸長アーム102の底部分に連結してもよい。支持部材105は、左舷側伸長アーム101と右舷側伸長アーム102とを支持可能に接続するように構成してもよい。水平部材の形状は、立方体、直方体、三角柱および円柱から選択してもよいが、これらに限定されるものではない。支持構造105は、波、ハリケーンまたは台風の力に耐えられるよう、1対の伸長アーム101,102に強度を付与するように構成してもよい。
【0063】
1対の伸長アーム101,102は、鋼、繊維強化プラスチック(FRP)、チタン等から選択される種々の材料を用いて製造してもよい。1対の伸長アーム101,102は、船舶10に溶接されるか3Dプリントされてもよい。更に、船舶10が氷上航海条件で航海し得るよう、1対の伸長アーム101,102の材料としてマイナス50℃の温度に耐え得る低温耐性鋼を選択してもよい。
【0064】
本発明の一実施形態において、伸長アーム101,102の長さは、(図2に示すように)伸長アーム101,102の長さ方向に調整可能であってもよい。伸長アーム101,102を、伸長アーム101,102の長さに沿って伸縮機構を介してスライドさせることによって、或いは、長さを伸長させるモジュールを追加することによって、伸長してもよい。伸縮機構は、ワイヤプル、空気圧式シリンダ、および伸長アームを伸長させ/引き込むためのギアシステムを含み得るが、これらに限定されるものではない。左舷側伸長アーム101の長さが右舷側伸長アーム102の長さと等しければ、船舶10の中心線に沿った対称な設計のせいで、水は船舶の周りを均等に流れる。従って、旋回力が生じることはなく、船舶は直線的に航行し得る。左舷側伸長アーム101の長さが伸長されて右舷側伸長アーム102の長さよりも長くなると、水流は船舶の左舷方向に向かい得る。左舷側にある過剰な水によって、左舷側には高い圧力が生じ得る。これによって低圧側への力が誘発され、船舶は右舷側に方向転換し得る。同様に、右舷側伸長アーム102の長さが伸長されて左舷側伸長アーム101の長さよりも長くなると、水流は船舶10の右舷方向に向かい得る。左舷側にある過剰な水によって、左舷側に高い圧力が生じ得る。これによって低圧側に向かう力が誘発され、船舶10は左舷側に方向転換し得る。このように、伸長アーム101,102は、船舶の舵として機能し得る。
【0065】
図5は、本発明の一実施形態に採用した船尾200の概略図である。船尾200は、1つまたは複数のプロペラ201と、1つまたは複数の舵202と、を備えていてもよい。複数のプロペラ201が、船尾200において船舶10の底300に配置されてもよい。複数の舵202が、船尾200において複数のプロペラ201よりも前方に配置されてもよい。その結果、船舶10は、例えば、プロペラの後側に舵を有する船舶と比べると5m~20m程度短くなり得る。船舶10の長さのこの節約を利用して、船舶10の全長を増加させることなく1対の伸長アーム101,102をより長く鋭くしてもよい。
【0066】
更に、船尾200は、矩形形状またはバトック形状を有していてもよい。バトック船尾200は、図5に示すように、10~60°の角度βのスライド構造を有していてもよい。スライド構造は、気泡500のほぼ全てを回収するように構成してもよい。船舶10の左舷方向および右舷方向において、スライド構造に一連の穴200aを設けてもよい。スライド構造は、船舶10が前進するにつれて、スライド構造の上方に低圧領域を与え得る。低い圧によって気泡500が穴200a内に押し込まれ、気泡500が回収され得る。
【0067】
例示的な一実施形態において、中央波がマイクロプラスチックを運んでいるならば、マイクロプラスチックは、1対の伸長アーム101,102の間の隙間gを通って台形プール103内に入り得る。マイクロプラスチックは本質的に疎水性であるため、マイクロプラスチックは台形プール103内の気泡500に付着し得る。気泡500が中央波とともに船舶10の底300へ流れると、マイクロプラスチックは気泡500に付着して船舶10の底300へと流れ得る。更に、水位の下方を流れるマイクロプラスチックもまた、気泡500に付着するであろう。
【0068】
バトック船尾200は、回収ユニット203と、精製ユニット204と、を更に備えていてもよい。回収ユニット203は、船尾部分200において気泡500に付着したマイクロプラスチックを回収するように構成してもよい。回収ユニット203は、スライド構造に設けられた穴200aに連結してもよい。回収ユニット203は、垂直チューブと、真空装置と、水タンクと、を備えていてもよい。垂直チューブは、穴に連結されてもよい。スライド構造の上方に創出される低い圧力により、マイクロプラスチックは気泡500に付着し、水が垂直チューブ内を上へと上昇し得る。真空装置の一端を垂直チューブに連結し、もう一方の端を水タンクに連結してもよい。真空チューブは、気泡500に付着したマイクロプラスチックを水とともに水タンクに移送するように構成してもよい。水タンクは、気泡に付着したマイクロプラスチックを水とともに溜めるように構成してもよい。水タンク内に適量のマイクロプラスチックが溜まると、溜まったマイクロプラスチック、気泡および海水は精製ユニット204に移送される。精製ユニット204は、回収ユニットに連結してもよい。精製ユニット204は、気泡や海水等からマイクロプラスチックを分離するように構成される。マイクロプラスチックは船舶10内に貯えて、気泡や海水を船舶10から排出してもよい。船舶10は、マイクロ波、超音波を用いてマイクロプラスチックを低減する構成としてもよく、船舶が陸地に到達した際にマイクロプラスチックを処分してもよい。
【0069】
本発明の例示的な実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示したものである。それらは、網羅的であることや、本発明を開示された正確な形態に限定することを意図したものではなく、上記の教示に照らし、多くの修正および変形が可能であることは明らかである。例示的な実施形態は、本発明の原理およびその実践的な適用を最もよく説明するために選択され記載されたものであって、企図される特定の用途に適した様々な変形例を用いて他の当業者が本発明および種々の実施形態を最もよく利用可能とするものである。種々の省略、均等物の置換が、状況が示唆し得るようにまたは状況が好転し得るように企図されることが理解されるが、これらは本発明の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、適用や実施をカバーすることを意図するものである。
【符号の説明】
【0070】
10…船舶
100…船首
101…左舷側伸長アーム
102…右舷側伸長アーム
103…台形プール
α…傾斜角
104…気泡生成装置
104a…フィン
105…支持部材
200…船尾
β…スライド角
200a…船尾のスライド構造の穴
201…プロペラ
202…舵
203…回収ユニット
203a…垂直チューブ
203b…真空ポンプ
203c…水タンク
204…精製ユニット
300…船舶の底
500…気泡
D…1対の伸長アームの近位端の間の距離
g…1対の伸長アームの遠位端の間のギャップ
W…海水位
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
【外国語明細書】