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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120160
(43)【公開日】2024-09-04
(54)【発明の名称】医療システムおよび動作方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020200
(22)【出願日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】63/447,673
(32)【優先日】2023-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516236908
【氏名又は名称】オリンパス・ヴィンター・ウント・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ミュックナー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK06
4C160KK07
4C160KK12
4C160KK22
4C160KK62
4C160KK64
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】外科用器具によって取得された測定データを使用して、当該外科用器具の機能を強化すること。
【解決手段】医療システム2は、測定データを取得するセンサ8を有する外科用器具4と、外科用器具4と相互作用するように構成された医療デバイス6と、を備える。外科用器具4は、第1のデータ通信インタフェース14と、測定データを記憶するための不揮発性記憶媒体16と、を備える。医療デバイス6は、第1のデータ通信インタフェース14との間でデータリンク20を確立し、不揮発性記憶媒体16に記憶された測定データをデータリンク20を介して通信する第2のデータ通信インタフェース18と、測定データから出力データを生成するプロセッサ22と、出力データを出力する出力インタフェース24とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療システムであって、
測定データを取得するように構成された少なくとも1つのセンサを有する外科用器具と、前記外科用器具と相互作用するように構成された医療デバイスと、を備え、
前記外科用器具は、
第1のデータ通信インタフェースと、
取得された前記測定データを記憶するための不揮発性記憶媒体と、をさらに備え、
前記医療デバイスは、
前記第1および第2のデータ通信インタフェースが、データリンクを確立するように構成され、前記外科用器具が、前記不揮発性記憶媒体に記憶された測定データを前記データリンクを介して前記医療デバイスに通信するように構成される、前記第2のデータ通信インタフェースと、
前記測定データから出力データを生成するためのプロセッサと、
前記出力データの出力のための出力インタフェースと、をさらに備える、医療システム。
【請求項2】
前記プロセッサが入力インタフェースを備え、
前記測定データが、前記入力インタフェースを通して人工知能モデルへの入力特徴として提供され、
前記プロセッサが、推論演算を実行するように構成され、
前記測定データが、前記推論演算において前記出力データを生成するために前記人工知能モデルに適用される、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記外科用器具が、前記測定データを前処理するように構成された補助プロセッサを備え、
前記外科用器具が、前記データリンクを介して前記医療デバイスに前処理された前記測定データを通信するように構成され、
前記医療デバイスの前記プロセッサが、前処理された前記測定データから前記出力データを生成するように構成される、請求項1に記載の医療システム。
【請求項4】
前記補助プロセッサが、補助入力インタフェースを備え、
前記測定データが、前記補助入力インタフェースを通して、補助人工知能モデルに入力特徴として提供され、前記補助プロセッサが、推論演算を実行するように構成され、
前記推論演算において、前記測定データが、前処理された前記測定データを生成するために、前記補助人工知能モデルに適用される、請求項3に記載の医療システム。
【請求項5】
前記補助人工知能モデルが、静的な事前訓練されたニューラルネットワークに基づく、請求項4に記載の医療システム。
【請求項6】
前記医療デバイスが、前記出力データを、前記出力インタフェースから、前記第2のデータ通信インタフェースおよび前記データリンクを介して、前記外科用器具の前記第1のデータ通信インタフェースに通信するように構成される、請求項1に記載の医療システム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記測定データで前記補助人工知能モデルの基礎をなす前記ニューラルネットワークを訓練するように、および、前記出力データとしての、静的な前記ニューラルネットワークのパラメータの更新されたセットを生成するように構成される、請求項5に記載の医療システム。
【請求項8】
前記医療デバイスの前記第2のデータ通信インタフェースが、クラウドコンピュータへの第2のデータリンクを確立するように構成され、
前記医療デバイスが、前記第2のデータリンクを介して前記クラウドコンピュータに前記出力データを通信するように構成される、請求項1に記載の医療システム。
【請求項9】
少なくとも1つのセンサと、第1のデータ通信インタフェースと、不揮発性記憶媒体と、を有する外科用器具を備える医療システムを動作させる動作方法であって、
前記医療システムが、第2のデータ通信インタフェースと、プロセッサと、出力インタフェースと、を有する医療デバイスをさらに備え、
前記動作方法は、
測定データを前記少なくとも1つのセンサによって取得し、取得された前記測定データを、前記外科用器具の前記不揮発性記憶媒体に記憶するステップと、
前記第1および前記第2のデータ通信インタフェース間のデータリンクを、確立するステップと、
前記外科用器具から、前記医療デバイスに前記測定データを通信するステップと、
出力データを生成するための、前記プロセッサによる前記測定データの処理のステップと、
前記出力データを、前記出力インタフェースを介して出力するステップと、を含む、動作方法。
【請求項10】
前記プロセッサが、入力インタフェースおよび人工知能モデルを備え、
前記動作方法は、
前記測定データを前記入力インタフェースに入力するステップと、
前記人工知能モデルへの入力特徴として前記測定データを提供するステップと、
前記測定データを前記人工知能モデルに適用することによって、前記プロセッサによって、推論演算を実行するステップと、
前記人工知能モデルの出力から前記出力データを生成するステップと、をさらに含む、
請求項9に記載の動作方法。
【請求項11】
前記外科用器具が補助プロセッサを備え、
前記動作方法は、
前記補助プロセッサによって、前記測定データを前処理するステップと、
前記データリンクを介して前記外科用器具から前記医療デバイスに前処理された前記測定データを通信するステップと、
前記医療デバイスの前記プロセッサによって、前処理された前記測定データから前記出力データを生成するステップと、をさらに含む、
請求項9に記載の動作方法。
【請求項12】
前記補助プロセッサが、補助入力インタフェースおよび補助人工知能モデルを備え、
前記動作方法は、
前記測定データを前記補助入力インタフェースに入力するステップと、
前記補助人工知能モデルへの前記入力特徴として前記測定データを提供するステップと、
前記測定データを前記補助人工知能モデルに適用することによって、前記補助プロセッサによって、推論演算を実行するステップと、
前記補助人工知能モデルの出力から前記出力データとしての前処理された測定データを生成するステップと、をさらに含む、
請求項11に記載の動作方法。
【請求項13】
前記補助人工知能モデルが、静的な事前訓練されたニューラルネットワークに基づく、請求項12に記載の動作方法。
【請求項14】
前記出力データを、前記出力インタフェースから、前記医療デバイスの前記第2のデータ通信インタフェースおよび前記データリンクを介して、前記外科用器具の前記第1のデータ通信インタフェースに通信するステップをさらに含む、請求項9に記載の動作方法。
【請求項15】
前記プロセッサが、前記測定データで前記補助人工知能モデルの基礎をなす前記ニューラルネットワークを訓練するように、および、前記出力データとしての、静的な前記ニューラルネットワークのパラメータの更新されたセットを生成するように構成される、請求項13に記載の動作方法。
【請求項16】
前記医療デバイスの前記第2のデータ通信インタフェースとクラウドコンピュータとの間に第2のデータリンクを確立するステップと、
前記医療デバイスから、前記第2のデータリンクを介して前記クラウドコンピュータに前記出力データを通信するステップとをさらに含む、
請求項9に記載の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、互いと相互作用するように構成された、外科用器具および医療デバイスを備える、医療システムに関する。さらに、本開示は、そのような医療システムを動作させる動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外科用器具、例えばメスおよび鉗子、ならびに最新の外科用器具、例えば電気外科用器具が、一般に知られている。外科用器具は、古典的なメスまたは電気凝固の過程で出血を停止させるために血管の閉塞に適用される電気外科用鉗子などの、ハンドヘルドデバイスであり得る。最小侵襲手術では、外科用器具は、内視鏡と組み合わせて使用される。検査および診断だけでなく手術にも適用される、内視鏡は、近位端のハンドピースから遠位端の先端まで、内視鏡のシャフトを通って突出する1つ以上のワーキングチャネルを備える。内視鏡先端の前に位置する外科的領域で外科的手順を実行するために、特殊な外科用器具をワーキングチャネルを通して挿入することができる。さらに、多くの内視鏡は、光を外科的領域に導き外科的視野の画像をキャプチャする、撮像システムを備える。画像キャプチャのために、内視鏡は、先端に組み込まれた、撮像光学素子を備える。
【0003】
内視鏡は、医療デバイス、例えば、近位端でハンドピースに結合することができるカメラヘッド、電気外科的手順を実行するためのHF信号を外科用器具に供給するためのHF発生器、例えばカメラヘッドによってキャプチャされる、画像データの画像処理を実行する画像プロセッサなどと、相互作用する。
【0004】
本明細書の文脈内で、外科用器具は、手術中に直接相互作用し患者の身体を操作するために使用される、ツールと考えられるものとする。内視鏡はまた、外科用器具と考えられるものとするが、直接の外科的手順は、内視鏡のワーキングチャネルを通して挿入される特殊化された外科用ツールによって実行されることが多い。外科用器具のさらなる例は、上で与えられる。外科用器具の使用の文脈内で外科用器具と相互作用するユニットは、医療デバイスと考えられるものとする。外科用器具とは対照的に、医療デバイスは、患者の身体と直接接触せず、患者の身体の直接操作のために構成されていない。
【0005】
外科用器具および医療デバイスは、2つの存在物が外科用器具の使用の文脈内で互いと機能的に協働する場合、互いと相互作用すると考えられるものとする。例えば、内視鏡は、使用中、具体的に言えば、例えば内視鏡シャフトの先端の前に位置する外科的視野の撮像中に、カメラヘッドおよびカメラプロセッサと相互作用する。さらに、例として、ワイヤループまたは任意の他の種類のモノもしくはバイポーラ電極などの、電気外科用電極は、内視鏡ワーキングチャネルを通って外科的視野に導かれ、内視鏡の使用中にHF発生器と相互作用する。HF発生器は、電極に適切なHF信号を提供し、これは、例えば凝固を支援または増強するために、電気外科処置中に印加され得る。外科用器具と医療デバイスとの間の相互作用は、外科用器具の使用中に直接行われる。
【0006】
しかしながら、外科用器具および医療デバイスはまた、直接かつ適時の一致する協働がないけれども適時の後続する機能的協働がある場合、互いと相互作用すると考えられるものとする。例えば、ハンドヘルドデバイスまたは内視鏡は、使用後にリプロセスされなければならない。洗浄および消毒は、典型的には、洗浄および消毒するデバイスである、リプロセスデバイスによって行われる。リプロセスデバイスは、本明細書の文脈内で、外科用器具と相互作用すると考えられる。これは、外科用器具の的確な成功裡の(繰返し)使用のためには、妥当なリプロセスを行わなければならないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2021/161120号
【特許文献2】米国特許出願公開第2022/0230076号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0133572号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、外科用器具によって取得された測定データを使用して、当該外科用器具の機能を強化することができる医療システムおよび動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのような目的は、医療システムであって、測定データを取得するように構成された少なくとも1つのセンサを有する外科用器具と、外科用器具と相互作用するように構成された医療デバイスと、を備え、外科用器具は、第1のデータ通信インタフェースと、取得された測定データを記憶するための不揮発性記憶媒体と、をさらに備え、医療デバイスは、第2のデータ通信インタフェースであって、第1および第2のデータ通信インタフェースが、データリンクを確立するように構成され、外科用器具が、不揮発性記憶媒体に記憶された測定データをデータリンクを介して医療デバイスに通信するように構成される、第2のデータ通信インタフェースと、測定データから出力データを生成するためのプロセッサと、出力データの出力のための出力インタフェースと、をさらに備える、医療システムによって解決することができる。
【0010】
従来、電子センサが装備された少数の外科用器具、例えば内視鏡がある。デジタル化の過程で、ますます多くのセンサが外科用器具に組み込まれて、いわゆる「スマート器具」を提供する。例えば、センサは圧力センサであり得る。この圧力センサは、外科用器具に組み込むことができる。例えば、圧力センサは、内視鏡と組み合わせて使用される、ツールまたは外科用器具に組み込むことができる。それは、外科用器具の遠位端または先端と身体の組織との間の接触圧力を測定するように構成され得る。外科用器具は、例えば電極であり得、それは、最小侵襲電気手術中に使用され、および出血を停止させるための凝固を支援するために外科的手順中に適用される。接触圧力の測定値は、外科用器具で開始または支持される、凝固の過程を査定するために使用することができる。さらに、圧力値を使用して、使用中に組織または外科用器具のいずれかに加えられる機械的応力を分析することができる。
【0011】
外科用器具は、測定データを取得することができ、それを不揮発性記憶媒体に記憶することができる。したがって、データを記憶することができるさらなるデバイス、例えば、カメラユニットまたはHF発生器などの医療デバイスと、外科用器具が常時データ通信する必要はない。
【0012】
センサの別の例は、温度センサである。例えば、外科用器具の温度、さらに例として、外科用器具の様々な異なる場所または点における温度が、取得され得、測定値は、不揮発性記憶媒体に記憶され得る。例えば、内視鏡と組み合わせて使用される外科用器具の温度である、測定値を取得するように構成された、第1の温度センサがある。第1の温度センサは、例えば、電気手術中に使用される電極の温度を測定するように構成することができる。さらに、内視鏡シャフトの、例えばその遠位端付近の、温度を検知するように構成された第2の温度センサがあり得る。第2の温度センサの測定値は、電気外科用ツールの使用中に内視鏡のシャフトが過熱をこうむる可能性があるか否かという問題に関して、有用であり得る。別のシナリオによれば、外科用器具のリプロセス中に温度データを取得することができる。この温度データを使用して、リプロセス過程を分析することができる。品質管理を行うことができ、過程の効率および信頼性を測定するかまたは少なくとも推定することができる。例えば、内視鏡または外科用器具の、特定の部分が所定の閾値よりも高い温度に加熱されるかどうかという問題に関して、温度値の時間シーケンスを分析して、リプロセス過程が十分な強度および十分に高い温度で実行されたことを確実にすることができる。
【0013】
外科用器具は、電子部品のための限られた設置スペースを有する。したがって、外科用器具に組み込むことができる資源も、限られる。言い換えると、小型マイクロプロセッサのコンピューティング能力が経時的に増大する可能性が高いという事実に照らしても、取得された測定データの高度なデータ分析を、外科用器具内で直接実行するのに十分なコンピューティング能力があるとはとても言えないであろう。マイクロプロセッサが、限られた設置スペースに対処することができる場合でも、次の制限は、プロセッサの動作に利用可能なエネルギーである。この事態を考慮して、医療システムは解決策を提供し、それにおいて、外科用器具は、データを取得し、それを一時的に記憶し、折に触れてデータを通信する。言い換えると、データは、第1および第2のデータ通信インタフェース間のデータリンクが確立されているとき、送信される。外科用器具によってキャプチャされるデータは、次いで医療デバイスに通信される。
【0014】
医療デバイスは、エッジ・コンピューティング・デバイスであり得る。医療デバイスは、さらなるデバイスと、例えば、さらなる医療デバイスと、または医療クラウド内の、サーバもしくはコンピュータなどの、他のデバイスと、通信するように構成され得る。医療デバイスはまた、さらなる外科用器具と通信するように構成され得る。言い換えると、医療デバイスは、2つ以上の外科用器具と通信するように構成され得る。
【0015】
医療デバイスは、エッジコンピューティングの共通定義内のエッジ・コンピューティング・デバイスである。典型的には、エッジコンピューティングは、計算およびデータ記憶をデータの源により近づける、分散コンピューティングパラダイムである。医療デバイスは、外科用器具によってキャプチャされるデータを、分析するように構成される。生データではなく結果が、さらなるデバイス、例えばクラウドに通信され得る。エッジコンピューティングの概念は、応答時間を改善することと、ネットワークの帯域幅を節約することとを期待されている。言い換えると、エッジコンピューティングの手法は、さらなるデバイス、例えば医療クラウド内のサーバまたは他の医療デバイスに、ネットワークまたはクラウドを介して分析の結果を転送する選択肢を依然として提供しながら、ネットワークを広範なデータ負荷から解放する。
【0016】
エッジ・コンピューティング・デバイスとして動作する医療デバイスは、例えば、カメラヘッド、カメラプロセッサ、リプロセスデバイス(ウォッシャ消毒器)、HF発生器、または、外科用器具と相互作用するように構成された任意の他の医療デバイスであり得る。
【0017】
医療デバイスは、電力供給ラインのためのグリッド接続を有することができる。医療デバイスはまた、バッテリ式であり得る。
【0018】
医療システムは、外科用器具が、測定データを前処理するように構成された補助プロセッサを備え、外科用器具が、データリンクを介して医療デバイスに前処理された測定データを通信するように構成され、医療デバイスのプロセッサが、前処理された測定データから出力データを生成するように構成されるという点で、構成され得る。
【0019】
測定データの前処理は、意味のあるデータの、残りのデータからの分離であり得る。結果として、外科用器具は、エッジデバイスとして振る舞う医療デバイスへ意味のあるデータのみを送出することができる。この場合、医療デバイスは、より深いデータ分析を実行するのであり、例えばさらなるアクションをトリガすることができる。この手段はまた、データ接続のための必要な帯域幅を低減するのに役立つ。フィルタ過程が、閾フィルタとして、または任意の他の種類のフィルタ機能によって、外科用器具の補助プロセッサに実装され得る。補助プロセッサに実装された人工知能(以下、AIと記載)モデルの助けによって、データフィルタリングを実行することも可能である。概括すると、外科用器具は、従来のように働くように構成されることができ、かつそれは、プレフィルタ機能を適用することができ、医療デバイスへ、フィルタ機能を通過するデータのみを送出することができる。これは、連続ストリームとして、またはイベントドリブンの概念に基づいて、実行することができる。医療デバイスは、より強力なコンピューティングタスクを実行する。さらに、センサ信号から導出され得るリアルタイム特徴およびオフライン特徴があり得る。リアルタイム特徴は、例えばAIによって、処理することができ、結果は、アクションをトリガするために使用することができる。この処理は、外科用器具の補助プロセッサ上、または医療デバイスのプロセッサ上の、いずれかで実行することができる。そのようなリアルタイム特徴についての例は、重大な動きの感知であり得、対応するトリガは、警告であり得る。センサ信号の分析が、医療デバイスのプロセッサ上で実行される場合、外科用器具と医療デバイスとの間のデータリンクは、前提条件である。
【0020】
オフライン特徴は、処理および評価される、センサ信号であり得る。例えば、例えば外科用器具の事故および潜在的な損傷に起因する、重大な加速のインシデントがあり得る。このデータは、外科用器具内の補助プロセッサによって前処理され得、データセットの、データおよび/または分析は、2つのデバイス間のデータ接続が確立されているときを意味する、折に触れて医療デバイスに通信され得る。
【0021】
リアルタイム特徴については、即時のアクションがトリガされる場合でも、トリガを引き起こしたイベントのデータサンプルが、医療デバイスに転送され得る。医療デバイスは、データを、他の外科用器具もしくは他の医療デバイスからのデータと、または上記外科用器具によってより早く受信されたデータと組み合わせるように構成され得る。データは組み合わされ得、その後、ニューラルネットワークを最適化するためにさらなるより徹底的な分析を実行するために使用され得る。このニューラルネットワークは、医療デバイスに実装されるAIの基盤を形成することができ、または外科用器具に実装されるAIの基盤を形成することができる。外科用器具は、事前訓練されたニューラルネットワークを備えることができ、これは、静的なニューラルネットワークであり得、これは、ネットワークのパラメータが外科用器具それ自体によって変更または修正されないことを意味する。ニューラルネットワークの最適化は、例えば外科用器具の損傷に関する最終決定に基づいて、または他の任意の基準に基づいて実行することができる。
【0022】
これに加えて、医療器具は、他の接続された外科用器具からのデータを使用することによって、または他の医療デバイスから受信されたデータによってさえ、第1の外科用器具からの欠落データを推定するように構成され得る。欠落しているデータを補うために実行される、このデータ推定は、医療デバイスに実装されるAIによって実行され得る。
【0023】
別の態様によれば、システムは、補助プロセッサが、補助入力インタフェースを備え、それを通して、測定データが、補助AIモデルに入力特徴として提供され、補助プロセッサが、推論演算を実行するように構成され、それにおいて、測定データが、前処理された測定データを生成するために、補助AIモデルに適用されるという点で、構成され得る。
【0024】
補助AIモデルは、静的な事前訓練されたニューラルネットワークに基づくことができる。これは、例えば限られた設置スペースおよび限られた利用可能な電気エネルギーに起因する、外科用器具に実装され得る限られた資源を、可能な最良のやり方で使用することができるという点で、有利である。補助プロセッサにおいて実行される補助AIモデルの基礎をなすAIの訓練は、医療デバイスにおいて実行され得る。
【0025】
さらに、医療システムは、プロセッサが入力インタフェースを備え、それを通して測定データがAIモデルへの入力特徴として提供され、プロセッサが推論演算を実行するように構成され、それにおいて出力データを生成するために測定データがAIモデルに適用されるという点で、構成され得る。
【0026】
AIモデルを使用するデータ分析は、医療デバイスにおいて行うことができる。この文脈において、医療デバイスは、典型的なエッジ・コンピューティング・デバイスとして動作する。本質的に測定データである外科用器具の、生データまたは前処理されたデータは、医療デバイス内のAIモデルによって処理される。
【0027】
AIモデルのパラメータは、例えば、類似のタスクを実行する他の医療デバイスに通信され得る。AIモデルのパラメータは、医療クラウドによって提供されるデータリンクを通して様々な医療デバイス間で更新することができる。言い換えると、AIモデルのパラメータは、第1の医療デバイスから、医療クラウド内のクラウドコンピュータに通信され得、このクラウドコンピュータは、医療クラウドに参加するさらなる第2の医療デバイスに、AIモデルの更新されたパラメータを分散させる。この概念により、医療クラウドのネットワークは、AIモデルがセントラルサーバ上で実行される場合に発生する、大量のデータ負荷から解放される。これは、集中型の概念では、すべての外科用器具が、AIモデルを実行するサーバにネットワークを介して生データを通信するからである。しかしながら、これは、ネットワーク内の高いデータトラフィックを引き起こす。エッジコンピューティングの手法により、ネットワークは、この高いデータ負荷から解放される。それにもかかわらず、様々な医療デバイスによるAIモデルの多数の適用および訓練から結果として生じる利点を、利用することができる。AIモデルは、医療クラウドを介して通信するのでありかつAlモデルのパラメータを共有することができる、多数の医療デバイスによって、自己訓練またはユーザ訓練され得る。AIモデルの広範な使用は、AIモデルのパラメータを強化する。パラメータは、医療デバイスに通信し返されることができるため、AIモデルを実行するあらゆる単一の医療デバイスは、AIモデルのパラメータの強化から利益を得る。
【0028】
さらに別の態様によれば、医療システムは、医療デバイスが、出力データを、第2のデータ通信インタフェースから、データリンクを介して、外科用器具の第1のデータ通信インタフェースに通信するように構成されるという点で、構成され得る。
【0029】
さらに、プロセッサは、測定データで補助AIモデルの基礎をなすニューラルネットワーキングを訓練するように構成され得る。さらに、プロセッサは、出力データとしての、静的なニューラルネットワークのパラメータの更新されたセットを生成するように構成され得る。
【0030】
データ分析の結果が外科用器具に通信し返されると、外科用器具の「スマートさ」が強化され得る。これはまた、外科用器具の補助プロセッサ上で実行される、補助AIモデルに当てはまる。さらに、外科用器具は、例えば、外科用デバイスの機能性および外科用デバイスの性能が強化され得るという点で、強化され得る。例えば、外科用ツールと組織との間の接触圧力の分析が行われる。データは、外科用器具に一時的に記憶され、その後、医療デバイスに通信され、それによって分析される。例えば、AIモデルは、ユーザ入力によってシステムに入力される成功裡の凝固結果を考慮して、接触圧力についてのある最適な範囲を見出した。補助AIモデルの基礎をなすニューラルネットワークの訓練のためのこの情報、および新しいパラメータセットは、外科用器具に送り返されることができる。この情報を保持することにより、外科用器具がその機能性に関して強化される。例えば、それは、外科用器具が最適な接触圧力を分析し、ユーザに通信することを可能にする。例えば、外科用器具は、ディスプレイを備えることができ、ディスプレイ出力によって凝固の最適を達成するための最適な接触圧力を見つけることにおいてユーザを支援する。長期的には、これは、外科用器具の機能範囲および品質を強化する。
【0031】
さらに別の態様によれば、医療システムは、医療デバイスの第2のデータ通信インタフェースが、クラウドコンピュータへの第2のデータリンクを確立するように構成され、医療デバイスが、第2のデータリンクを介してクラウドコンピュータに出力データを通信するように構成されるという点で、構成され得る。医療クラウドの使用に関する態様は、上述しており、繰り返さないものとする。
【0032】
目的は、少なくとも1つのセンサと、第1のデータ通信インタフェースと、不揮発性記憶媒体と、を有する外科用器具を備える医療システムを動作させる動作方法であって、医療システムは、第2のデータ通信インタフェースと、プロセッサと、出力インタフェースと、を有する医療デバイスをさらに備え、動作方法は、測定データを、少なくとも1つのセンサによって取得し、取得されたデータを、外科用器具の不揮発性記憶媒体に記憶するステップと、第1および第2のデータ通信インタフェース間のデータリンクを、確立するステップと、外科用器具から、医療デバイスに測定データを通信するステップと、出力データを生成するための、プロセッサによる測定データの処理のステップと、出力データを、出力インタフェースを介して出力するステップと、を含む、動作方法によってさらに解決することができる。
【0033】
医療システムに関して述べたのと同じまたは類似の利点は、同じまたは類似のやり方で医療システムを動作させる動作方法に当てはまるのであり、したがって繰り返されないものとする。
【0034】
さらに、動作方法は、外科用器具が補助プロセッサを備え、動作方法が、補助プロセッサによって、測定データを前処理するステップと、データリンクを介して外科用器具から医療デバイスに前処理された測定データを通信するステップと、医療デバイスのプロセッサによって、前処理された測定データから出力データを生成するステップと、をさらに含むという点で、構成され得る。
【0035】
別の態様によれば、補助プロセッサは、補助入力インタフェースおよび補助AIモデルを備えることができ、方法は、測定データを補助入力インタフェースに入力するステップと、補助AIモデルへの入力特徴として測定データを提供するステップと、測定データを補助AIモデルに適用することによって、補助プロセッサによって、推論演算を実行するステップと、補助AIモデルの出力から出力データとしての前処理された測定データを生成するステップと、をさらに含む。
【0036】
さらに別の態様では、動作方法は、補助AIモデルが静的な事前訓練されたニューラルネットワークに基づくという点で、強化される。
【0037】
さらに、動作方法は、プロセッサが、入力インタフェースおよびAIモデルを備え、動作方法が、測定データを入力インタフェースに入力するステップと、AIモデルへの入力特徴として測定データを提供するステップと、測定データをAIモデルに適用することによって、プロセッサによって、推論演算を実行するステップと、AIモデルの出力から出力データを生成するステップと、を含むという点で、さらに構成され得る。
【0038】
さらに別の態様では、動作方法は、それが、出力データを、医療デバイスの第2のデータ通信インタフェースから、データリンクを介して、外科用器具の第1のデータ通信インタフェースに通信するステップをさらに含むという点で、構成される。
【0039】
さらに、動作方法は、プロセッサが、測定データで補助AIモデルの基礎をなすニューラルネットワークを訓練するように、および、出力データとしての、静的なニューラルネットワークのパラメータの更新されたセットを生成するように構成されるという点で、構成され得る。
【0040】
別の態様によれば、動作方法は、医療デバイスの第2のデータ通信インタフェースとクラウドコンピュータとの間に第2のデータリンクを確立するステップ、医療デバイスから、第2のデータリンクを介してクラウドコンピュータに出力データを通信するステップをさらに含むことができる。
【0041】
本発明のさらなる特性は、特許請求の範囲および含まれる図面と共に本発明による実施形態の説明から明らかになるであろう。本発明による実施形態は、個々の特性、またはいくつかの特性の組合せを、実現し得る。
【0042】
例示的な実施形態に基づいて、本発明の一般的な意図を制限することなしに、以下で本発明を説明し、本文でより詳細に説明されない本発明によるすべての詳細の開示に関して、図面を明示的に参照する。図面は、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】医療システムの簡略化された図である。
図2】医療クラウドを介して互いに連結された医療デバイスを有する医療システムのさらなる簡略化された図である。
図3】医療システムを動作させる動作方法のフローチャートを示す図である。
図4】医療デバイスがAIモデルを実行する、医療システムの概略図である。
図5】外科用器具がAIモデルを実行する、医療システムの別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図面において、同じまたは類似の種類の要素またはそれぞれ対応する部分には、事項を再び導入する必要をなくすために、同じ参照番号が与えられている。
【0045】
図1は、外科用器具4および医療デバイス6を備える、医療システム2の簡略化された図である。外科用器具4は、例えば、内視鏡またはハンドヘルド外科用器具である。医療デバイス6は、例えば、カメラプロセッサ、リプロセスデバイスまたはHF発生器である。外科用器具4および医療デバイス6は、互いと相互作用するように構成される。外科用器具4および医療デバイス6は、外科用器具4の使用中にそれらが機能的に協働するという点で、互いと相互作用する。例えば、内視鏡はカメラプロセッサと相互作用し、またはハンドヘルド外科用器具は使用中にHF発生器と相互作用する。内視鏡のカメラ(図示せず)によってキャプチャされる、画像データは、画像プロセッサによって処理することができる。医療デバイス6が例えばHF発生器である場合、医療デバイス6およびハンドヘルド外科用器具4は、外科的処置を実行するために、HF発生器がハンドヘルド外科用器具4にHF信号を提供するという点で、協働する。医療デバイス6がリプロセスデバイスである場合、外科用器具4および医療デバイス6は、使用後にリプロセスデバイスを使用して外科用器具4が洗浄および消毒されなければならないという点で、相互作用する。
【0046】
外科用器具4は、例えば圧力センサまたは温度センサである、少なくとも1つのセンサ8を備える。単なる例として、図1の外科用器具4は、センサ8を1つだけ備える。しかしながら、外科用器具4は、2つ以上のセンサを備えることができる。センサ8は、例えば、内視鏡のワーキングチャネルを通して導かれることができる特殊化された外科用ツール11の先端10間の接触圧力を測定するように構成される。センサ8は、外科的手順中に内視鏡のシャフト12および組織内に配置することができる。外科用器具4は、第1のデータ通信インタフェース14と、センサ8の取得された測定データを記憶するための不揮発性記憶媒体16とをさらに備える。医療デバイス6は、第2のデータ通信インタフェース18を備える。第1のデータ通信インタフェース14および第2のデータ通信インタフェース18は、データリンク20を確立するように構成されている。データリンク20は、有線データリンクまたは無線データリンクであり得る。さらに、データリンク20は、双方向データリンクであり得、図1にそれが示されている通りである。データリンク20が単一方向データリンクであることも可能であり、その場合、外科用器具4のみが医療デバイス6にデータを送る。外科用器具4は、不揮発性記憶媒体16に記憶された測定データをデータリンク20を介して医療デバイス6に通信するように構成される。医療デバイス6は、測定データから出力データを生成するためのプロセッサ22をさらに備える。出力データは、医療デバイス6の出力インタフェース24において提供される。この出力インタフェース24から、出力データは、外科用器具4に送り返されることができ、または以下でさらに概説されるようにさらなるデバイスに通信されることができる。医療デバイス6のプロセッサ22は、人工知能(以下、AIと記載)モデルを実行するように構成され得る。これを、以下でさらに、図4を参照して概説する。
【0047】
外科用器具4が例えば内視鏡であり医療デバイス6がビデオプロセッサである場合、データリンク20は有線データリンクであり得る。そのようなシナリオでは、大量のデータが、内視鏡のカメラシステムから画像プロセッサに通信される。これは、有線データリンクを介して有利に実行される。外科用器具4が例えばハンドヘルド外科用ツールであり医療デバイス6がリプロセスデバイスである場合、データリンク20は無線データリンクであり得る。データ送信は、外科用器具4のリプロセス中に発生し得るから、無線データリンクの使用は、有利である。無線データリンクは、様々な技術規格、例えばWLAN、Bluetooth(登録商標)などに基づいて確立することができる。
【0048】
外科用器具4は、センサ8によってキャプチャされた測定データを前処理するように構成された補助プロセッサ21を備えることができる。外科用器具4は、データリンク20を介して医療デバイス6に前処理された測定データを通信するようにさらに構成される。この場合、医療デバイス6のプロセッサ22は、前処理された測定データから、出力インタフェース24において提供される出力データを生成または計算する。
【0049】
図2には、医療システム2の簡略化された図があり、そこでは、医療デバイス6の第2のデータ通信インタフェース18(図1)は、クラウドコンピュータ28への第2のデータリンク26を確立するように構成されている。第2のデータリンク26は、無線または有線データリンクであり得る。医療デバイス6は、第2のデータリンク26を介してクラウドコンピュータ28に出力データODを通信するように構成される。第2のデータリンク26は、双方向データリンクであり得る。例えば、第1の医療デバイス6.1は、第2のデータリンク26を介してクラウドコンピュータ28に出力データODを通信することができる。クラウドコンピュータ28は、出力データODを処理することができ、または第2のデータリンク26を介して第2の医療デバイス6.2に出力データODを直接転送することができる。別の例によれば、第1の医療デバイス6.1および第2の医療デバイス6.2は、これら2つのデバイス間の二重矢印で図示された、直接の第2のデータリンクを確立することができる。データは、2つの医療デバイス6.1、6.2間で直接通信されることができ、クラウドコンピュータ28とのデータ通信についてそれを概説したのと同じまたは類似のやり方による。出力データODは、例えば、医療デバイス6.1、6.2によって実行されるAIモデルのパラメータであり得る。医療デバイス6.1、6.2は、Alモデルの最適化されたパラメータを共有することができる。AIモデルのパラメータの最適化は、医療デバイス6.1、6.2内またはクラウドコンピュータ28内のいずれかで実行することができる。
【0050】
図2に示す医療システム2には、クラウドコンピュータ28への第2のデータリンク26を動作させない医療デバイス6もある。そのようなスタンドアロン医療デバイス6は、医療クラウドに参加しない。
【0051】
図3は、医療システム2を動作させる動作方法のフローチャートを示す。動作方法は、以下のステップを含む。ステップS1において、測定データは、センサ8によって取得され、外科用器具4の不揮発性記憶媒体16に記憶される。ステップS2において、第1および第2のデータ通信インタフェース14、18間のデータリンク20が、確立される。これは例えば、外科的手順における外科用器具4の使用後、例えば外科用器具4が医療デバイス6としてのリプロセスデバイス内へ置かれると、行われる。ステップS3において、不揮発性記憶媒体16に記憶された測定データが、外科用器具4から医療デバイス6に通信される。ステップS4において、測定データは、出力データを生成するために、医療デバイス6のプロセッサ22によって処理される。例えば、測定データは、プロセッサ22によって保持されるAIモデルに適用される。ステップS5において、出力データは、出力インタフェース24を介して出力される。例えば、出力データはクラウド接続を介してさらなる医療デバイス6に通信され、またはデータは外科用器具4に通信し返される。
【0052】
データリンク20は、必ずしも、特定の外科用器具4と割り当てられた医療デバイス6との間の一対一のデータ接続ではない。外科用器具4は、様々な医療デバイス6への複数のデータリンクを確立するように構成され得る。類似して、医療デバイス6は、複数の外科用器具4への複数の異なるデータリンク20を確立するように構成され得る。
【0053】
図4は、医療デバイス6のプロセッサ22がAIモデル30を実装する、医療システム2の概略図を示す。AIモデル30は、外科用器具4のセンサ8によって取得された、測定データに基づく、データを出力するように構成される。出力データは、例えば、外科用器具4の動作パラメータに関連するデータであり得る。
【0054】
様々な実施形態において、医療デバイス6は、入力インタフェース32を含み、それを通して、特定の外科用器具4に特有の測定データが、AIモデル30への入力特徴として提供される。プロセッサ22は、出力データを生成するために測定データがAIモデル30に適用される、推論演算を実行する。出力データは、ユーザインタフェース(user interface:UI)を介してユーザに通信されることができる。それが前述された通りに、ユーザインタフェースは、外科用器具4上に配置されたディスプレイであり得る。UIはまた、医療デバイス6に接続されたディスプレイ(図示せず)であり得る。
【0055】
入力インタフェース32は、データリンク20および第2のデータ通信インタフェース18を介して、データを受信する。センサ8は、AIモデル30の入力特徴の少なくとも一部を生成する。外科用器具4が2つ以上のセンサ8を備える場合、センサ8のうちのそれぞれの1つがAIモデル30の入力インタフェース32に対して入力特徴を提供することができる。例えば、外科用器具4は、圧力センサおよび温度センサを備える。したがって、圧力センサの測定値および温度センサによって取得された温度値を、入力特徴として使用することができる。これらのセンサは、経時的に一連の測定データを取得するように構成されているため、測定値のこの時系列も、入力特徴として使用されることができる。
【0056】
例えば、データリンク20が確立されているとき、入力インタフェース32は、治療のおよび/または診断の医療手順の後に、AIモデル30に直接、測定値を送信してもよい。追加的または代替的に、入力インタフェース32は、ユーザと医療デバイス6との間の相互作用を簡略化する古典的なユーザインタフェースであってもよい。例えば、入力インタフェース32は、ユーザインタフェースであり得、それを通して、ユーザは、外科用器具4に関する、または外科用器具4の使用に関する、さらなる情報を手動で入力してもよい。例えば、外科用器具4の使用中に行われた特定の観察、または観察された機能不全は、入力インタフェース32を介して手動で入力されることができる。
【0057】
追加的または代替的に、入力インタフェース32は、医療デバイス6に、医療クラウドおよびクラウドコンピュータ28への、アクセスを提供することができ、そこから1つ以上の入力特徴が抽出されてもよい。これらの入力特徴は、例えば、他の外科用器具4の、測定値であり得る。
【0058】
入力特徴のうちの1つ以上に基づいて、プロセッサ22は、出力データを生成するためにAIモデル30を使用して推論演算を実行する。出力データは、例えば、外科用器具4の動作パラメータであり得る。センサ8が、例えば、内視鏡の外科用ツール11の先端10と身体の組織との間の接触圧力を取得すると、この測定値は、AIモデル30に入力されることができる。出力インタフェース24を介して提供される、出力データは、外科用器具4の動作パラメータであり得る。この動作パラメータは、例えば外科用器具4上のディスプレイが成功裡の凝固に関して最適な接触圧力を指示するという点で、外科用器具4を構成する。したがって、外科用器具4は、凝固処置を行うときに外科医を支援する。凝固の過程の評価は、入力インタフェース32を介して、さらなる入力特徴として手動で入力することができる。それは、AIモデル30のさらなる訓練に使用することができる。
【0059】
図5には、補助プロセッサ21を備える外科用器具4がある。補助プロセッサ21は、補助AIモデル31を実装する。さらに、補助プロセッサ21は、補助入力インタフェース33を備える。補助入力インタフェース33を通して、測定データは、補助AIモデル31に、その入力特徴として提供される。補助プロセッサ21は、推論演算を実行するように構成され、それにおいて、測定データは、補助出力インタフェース34を介して出力される、前処理された測定データを生成するために、補助AIモデル31に適用される。
【0060】
補助AIモデル31への関連する入力特徴を表す、測定データは、不揮発性記憶媒体16から取ることができる。代替的に、測定値は、センサ8によって直接提供することができる。補助出力インタフェース34において提供される、前処理された測定データは、外科用器具4から医療デバイス6に通信されることができる。特に、前処理された測定データは、医療デバイス6がその入力インタフェース32で受信する、関連する入力特徴を表すことができる。言い換えると、前処理されたデータは、外科用器具4の補助出力インタフェース34から、医療デバイス6の入力インタフェース32に送られる。補助AIモデル31は、静的な事前訓練されたニューラルネットワークであり得る。
【0061】
さらに、医療デバイス6のプロセッサ22は、外科用器具4から受信され得る測定データで補助AIモデル31の基礎をなすニューラルネットワークを訓練するように、構成され得る。言い換えると、外科用器具4は、測定データを、および並行して、前処理された測定データを医療デバイス6に送達することができる。補助AIモデル31およびそれの基礎をなすニューラルネットワークの、訓練は、医療デバイス6の出力データとしての、静的なニューラルネットワークのパラメータの更新されたセットの生成をもたらす。この出力データは、補助AIモデル31を強化する試みにおいて外科用器具4に通信し返されることができる。
【0062】
例えば、入力インタフェース32は、AIモデル30を通して出力層に入力特徴を伝搬する、AIモデル30の入力層に測定データを送達する。
【0063】
AIモデル30、31は、データの分析において見出されるパターンに基づいて推論を行うことによって、明示的にプログラムされることなくタスクを実行する能力を有するコンピュータシステム上で提供されることができる。AIモデル30、31は、既存のデータから学習し新しいデータに関する予測を行い得る、アルゴリズム(例えば、機械学習アルゴリズム)の調査および構築を探索する。そのようなアルゴリズムは、出力または査定として表現されるデータドリブン予測または決定を行うために、例示的な訓練データからAIモデル30、31を築くことによって動作する。
【0064】
以下の説明は、AIモデル30および補助AIモデル31の両方に関係した。
【0065】
機械学習(以下、MLと記載)には2つの共通のモード、教師ありMLおよび教師なしMLがある。教師ありMLは、事前の知識(例えば、入力を出力または結末に相関させる例)を使用して、入力と出力との間の関係を学習する。教師ありMLの目標は、対応する出力を生成するために入力を与えられるときにMLモデルが同じ関係を実現することができるように、何らかの訓練データを与えられて訓練入力と出力との間の関係を最もよく近似する関数を学習することである。教師なしMLは、MLアルゴリズムの訓練であり、当該訓練は、分類もラベル付けもされていない情報を使用し、かつ当該訓練は、指導なしに、アルゴリズムがその情報に従って振る舞うことを可能にする。教師なしMLは、それがデータの構造を自動的に識別できるため、探索的分析において有用である。
【0066】
教師ありMLの共通のタスクは、分類問題および回帰問題である。分類問題は、カテゴリー化問題とも呼ばれ、事項をいくつかのカテゴリー値のうちの1つに分類すること(例えば、この物体はリンゴかまたはオレンジか?)を目的とする。回帰アルゴリズムは、(例えば、何らかの入力の値に対するスコアを提供することによって)何らかの事項を定量化することを目的とする。共通に使用される教師ありMLアルゴリズムのいくつかの例は、ロジスティック回帰(Logistic Regression:LR)、ナイーブベイズ、ランダムフォレスト(Random Forest:RF)、ニューラルネットワーク(neural network:NN)、ディープ・ニューラル・ネットワーク(deep neural network:DNN)、行列因子分解、およびサポート・ベクトル・マシン(Support Vector Machine:SVM)である。
【0067】
教師なしMLの、いくつかの共通のタスクは、クラスタリング、表現学習、および密度推定を含む。共通に使用される教師なしMLアルゴリズムの、いくつかの例は、K平均クラスタリング、主成分分析、およびオートエンコーダである。
【0068】
別の種類のMLは、連合学習(協調学習としても知られる)であり、それは、データを交換することなしに、ローカルデータを保持する複数の非集中型デバイスにわたってアルゴリズムを訓練する。この手法は、すべてのローカルデータセットが1つのサーバにアップロードされる、従来の集中型機械学習技術、さらには、ローカル・データ・サンプルが同一に分散されることをしばしば想定する、より古典的な非集中型の手法とは対照的である。連合学習は、複数の関係者がデータを共有することなく共通の堅牢な機械学習モデルを築くことを可能にし、したがって、データプライバシ、データセキュリティ、データアクセス権、および異種データへのアクセスなどの、重要な問題に対処することを可能にする。
【0069】
いくつかの例では、AIモデル30、31は、プロセッサ21、22による推論演算の実行前に、連続的または定期的に訓練されてもよい。次いで、推論演算中、AIモデル30、31に提供される特定の入力特徴としての測定データは、入力層から、1つ以上の隠れ層を通して、および最終的に出力データに対応する出力層に、伝搬されてもよい。
【0070】
例えば、圧力値または温度値であり得る、センサ8の測定値は、AIモデル30への入力特徴として提供され、外科用器具4の1つ以上のパラメータであり得る出力を生成するために使用される。
【0071】
推論演算中および/または推論演算に続いて、出力は、外科用器具4に、および/もしくはユーザインタフェース(UI)を介してユーザに、通信されてもよく、ならびに/または自動的に医療デバイス6に所望のアクションを実行させる。例えば、医療デバイス6は、AI生成された出力を臨床医に通知する。これは、例えば、外科用器具4の提案された新しいパラメータ、および対応するAI生成された信頼水準のレポートであり得る。
【0072】
図面のみから取られたものを含むすべての述べられた特性、および他の特性と組み合わせて開示される個々の特性は、単独でおよび組み合わせて、本発明にとって重要であると考えられる。本発明による実施形態は、個々の特性、またはいくつかの特性の組合せによって、実現され得る。「特に」または「とりわけ」という表現と組み合わされる特徴は、好ましい実施形態として扱われるべきである。
【符号の説明】
【0073】
2 医療システム
4 外科用器具
6,6.1,6.2 医療デバイス
8 センサ
10 先端
11 外科用ツール
12 シャフト
14 第1のデータ通信インタフェース
16 不揮発性記憶媒体
18 第2のデータ通信インタフェース
20 データリンク
21 補助プロセッサ
22 プロセッサ
24 出力インタフェース
26 第2のデータリンク
28 クラウドコンピュータ
30 AIモデル
31 補助AIモデル
32 入力インタフェース
33 補助入力インタフェース
34 補助出力インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5