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特開2024-1201632×3ストロークの内燃機関の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120163
(43)【公開日】2024-09-04
(54)【発明の名称】2×3ストロークの内燃機関の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/02 20060101AFI20240828BHJP
   F02B 75/04 20060101ALI20240828BHJP
   F02B 25/04 20060101ALI20240828BHJP
   F02B 3/06 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
F02B75/02
F02B75/04
F02B25/04
F02B3/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021948
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】10 2023 104 487.7
(32)【優先日】2023-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】524062168
【氏名又は名称】テクニカル ユニバーシティ オブ クルージュ ナポカ
【氏名又は名称原語表記】Technical University of Cluj-Napoca
【住所又は居所原語表記】St. Memorandumului 28, 400114 Cluj-Napoca, Cluj, Romania
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ コップ
(72)【発明者】
【氏名】オヴィディウ バラク-ズバルチャ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラエ ヴラド バルネテ
【テーマコード(参考)】
3G023
【Fターム(参考)】
3G023AA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2×3ストロークの内燃機関の運転方法を提供する。
【解決手段】内燃機関の運転方法は、A:第2の上死点OT”から第1の下死点UT’までの間に、シリンダ10の燃焼室14に燃料混合ガスを供給する。B:第1の下死点UT’から第1の上死点OT’までの間に、シリンダ10の燃焼室14内の空気・燃料混合ガスを圧縮する。C:第1の上死点OT’から第2の下死点UT”までの間に、空気・燃料混合ガスを燃焼させる。D:第2の下死点UT”から第1の上死点OT’までの間に、燃焼室14内に存在する混合ガスを圧縮する。E:第1の上死点OT’から第1の下死点UT’までの間に、混合ガスを燃焼させる。F:第1の下死点UT’から第2の上死点OT”までの間に、燃焼室14内の混合ガスを排気する。更に、ピストン20が第2の下死点UT”を通過する際に、燃焼室14内の混合ガスの一部を燃焼室14から掃気する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の運転方法であって、
作動サイクルが、内燃機関のクランクシャフト(60)の3回転を含み、
前記内燃機関のピストン(20)は、1回の作動サイクルの間に、第1の上死点(OT’)に2回、及び第2の上死点(OT”)に1回到達し、並びに、第1の下死点(UT’)に2回、及び第2の下死点(UT”)に1回到達するものであり、
前記第1の上死点(OT’)或いは前記第1の下死点(UT’)は、前記第2の上死点(OT”)或いは前記第2の下死点(UT”)よりも前記クランクシャフト(60)から離れており、
前記作動サイクルは以下のストローク:
(A)前記第2の上死点(OT”)から前記第1の下死点(UT’)までの前記ピストン(20)の運動の間に、シリンダ(10)の燃焼室(14)に燃料混合ガスを供給するストロークと、
(B)前記第1の下死点(UT’)から前記第1の上死点(OT’)までの前記ピストン(20)の運動の間に、前記シリンダ(10)の前記燃焼室(14)内の空気・燃料混合ガスを圧縮するストロークと、
(C)前記第1の上死点(OT’)から前記第2の下死点(UT”)までの前記ピストン(20)の運動の間に、空気・燃料混合ガスを燃焼させるストロークと、
(D)前記第2の下死点(UT”)から前記第1の上死点(OT’)までの前記ピストン(20)の運動の間に、この時点において前記燃焼室(14)内に存在する混合ガスを圧縮するストロークと、
(E)前記第1の上死点(OT’)から前記第1の下死点(UT’)までの前記ピストン(20)の運動の間に、混合ガスを燃焼させるストロークと、
(F)前記第1の下死点(UT’)から前記第2の上死点(OT”)までの前記ピストン(20)の運動の間に、前記燃焼室(14)内に存在する前記混合ガスを排気するストロークと、含み、
前記ピストン(20)が前記第2の下死点(UT”)を通過する際に、前記燃焼室(14)内に存在する前記混合ガスの少なくとも一部を前記燃焼室(14)から掃気する、方法。
【請求項2】
前記第2の下死点(UT”)から前記第1の上死点(OT’)までの前記ピストン(20)の運動の際の前記圧縮するストロークの間において、特に前記ピストン(20)が前記第2の下死点(UT”)を通過した直後の掃気中に、燃料混合ガスを前記燃焼室(14)内に噴射する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ピストン(20)が前記第2の下死点(UT”)を通過する間に、排気弁(13)を開く、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
内燃機関のシリンダアセンブリ(1)であって、
シリンダ(10)内を並進的に往復運動し、前記シリンダ(10)内に燃焼室(14)を画定するように形成されたピストン(20)と、
連結要素(42)によって前記ピストン(20)を遊星歯車(40)に連結されるように形成されたコンロッド(30)と、を備え、
前記連結要素(42)は前記遊星歯車(40)上に偏心して配置され、前記遊星歯車(40)は内歯車(50)と噛み合ってその中において回転し、更にクランクシャフト(60)にも連結されており、更に、
前記遊星歯車(40)の寸法、及び連結要素(42)の偏心配置は、前記内歯車(50)内における前記遊星歯車(40)の3回転中に、前記ピストン(20)が第1の上死点(OT’)に2回、及び第2の上死点(OT”)に1回到達し、並びに、第1の下死点(UT’)に2回、及び第2の下死点(UT”)に1回到達するように形成されており、
前記第1の上死点(OT’)及び前記第1の下死点(UT’)は、前記第2の上死点(OT”)或いは前記第2の下死点(UT”)よりも前記内歯車の軸から離れている、シリンダアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記シリンダ(10)は、前記第1の下死点(UT’)と前記第2の下死点(UT”)との間に、前記燃焼室(14)から混合ガスを排出するために形成された少なくとも1つの掃気開口部(11)を有する、請求項4に記載のシリンダアセンブリ(1)。
【請求項6】
コンロッド(30)と遊星歯車(40)との間の前記連結要素(42)は、偏心して配置された、特に円筒形の要素によって形成されており、この要素は、前記コンロッド(30)の端部に配置されたコンロッド大端部(31)によって囲まれている、請求項4又は5に記載のシリンダアセンブリ(1)。
【請求項7】
前記燃焼室(14)内に燃料・空気・混合ガスを供給するための少なくとも1つの吸気弁(12)と、前記燃焼室(14)から混合ガスを排気するための少なくとも1つの排気弁(13)と、を備えている、請求項4又は5に記載のシリンダアセンブリ(1)。
【請求項8】
前記内歯車(50)は、前記クランクシャフト(60)の周りに回転可能に配置されている、請求項4又は5に記載のシリンダアセンブリ(1)。
【請求項9】
前記内歯車(50)の外側に、前記内歯車(50)を前記クランクシャフト(60)の周りに回転させるために形成された外ねじ(51)が配置されている、請求項8に記載のシリンダアセンブリ(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの、請求項4又は5に記載のシリンダアセンブリ(1)を備えた内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ3つの異なるストロークからなる2つの交替する(交互に起こる)ストロークシーケンスの内燃機関(エンジン)の運転方法、及び本発明による方法を実施するためのシリンダアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の内燃機関のエネルギー効率及び類似するテーマに関して、その内燃機関に対する要求が絶えず高まっていることを背景として、この点において内燃機関の運転を最適化することに、絶え間ない努力がなされている。
【0003】
その際、従来技術によれば、本質的に内燃機関には2つの異なるタイプの作動サイクルが知られており、これらは、同時に、内燃機関又はシリンダアセンブリに異なる構造を要求する。その場合、作動サイクル(サイクル)は複数のストロークに分割され、その際、1ストロークはクランクシャフトの半回転中のピストンの運動によって規定される。そのため、クランクシャフトが1回転するのに2ストロークが必要となる。その2ストロークが1回転に応じて繰り返される場合は2ストロークエンジンといわれ、他方、サイクルが2回転、すなわち4ストロークに応じて繰り返される内燃機関は4ストロークエンジンといわれる。そのため、2ストロークエンジンにおいては1回転に応じて1サイクルが終了し、他方、4ストロークエンジンにおいては2回転に応じて1サイクルが終了する。
【0004】
2ストロークエンジンにおいては、まず第1ストロークにおいて、シリンダとその中を並進運動するピストンとによって形成される燃焼室に混合ガスが入り、燃焼室において下死点から上死点へのピストン運動によって圧縮される。その際、下死点とは、燃焼室が最大容積を有するピストンの位置として規定される。対応して、上死点は、燃焼室が最小容積を有するピストンの位置として規定される。流入する混合ガスは,この場合、すでに燃料と空気の混合ガスあり得、又は、しかしながら単に新気であり得る。ピストン運動の上死点付近においては、燃料が、吸気された混合ガスにまだ含まれていない場合には、燃焼室に噴射され、混合ガスが点火される。本出願の範囲において,混合ガスという用語は、空気・燃料混合ガスのみを指すのではなく,単に任意の組成のガスを指す。例えば,すでに燃焼された、空気・燃料混合ガスも、空気のみの場合と同様に,混合ガスということができる。ガソリンエンジンの場合には、点火はスパークプラグによって行われる。混合ガスの点火によって混合ガスが燃焼し、それによって燃焼室内の圧力が大幅に上昇する。ディーゼルエンジンの場合には、点火は、最大圧縮領域の高温と、導入された自己着火燃料とによって引き起こされる。
【0005】
これによって、ピストンは第2ストロークにおいて下死点方向に加速され、それによって出力放出はコンロッドを介してクランクシャフトに伝達される。ピストンが下死点に向かう途中において排気口に到達し、排気口を開放すると、点火又は燃焼した混合ガスがこの排気口を介して排出され、燃焼室内の圧力が低下する。下死点に向かう途中において、ピストンは吸気口も開放し、そこから新気が燃焼室に入り、燃焼した混合ガスを排気口から完全に、又は部分的に押し出す。この過程は、掃気(Spuelen)ともいう。出力放出の残留運動量によってピストンが再び上死点に向かい、2ストロークエンジンの作動サイクルが完了し、第1ストロークが再開される。
【0006】
2ストロークエンジンの利点は、クランクシャフトが1回転するごとに出力放出が発生し、それによって高出力を引き出せることである。しかしながら、欠点として、大きな摩耗、燃料消費、及び排出ガス、並びに、熱的及び機械的負荷が大きいために部品の耐久性が比較的低いこと、が挙げられる。
【0007】
これらの欠点を解消するために、現在、少なくとも自動車では最も使用されている4ストロークエンジンが開発された。その際、第1ストロークは、混合ガス(ここにおいても、後の燃料噴射を伴う新気、又は空気・燃料混合ガス)の吸気弁による吸気によって特徴付けられる。これは、ピストンが上死点から下死点へ運動の間に行われる。燃焼室容積が最大に達し、ピストンが反転点(この場合は下死点)に達すると、吸気弁が閉じられ、燃焼室内に閉じ込められた混合ガスが、ピストンの下死点から上死点への運動によって圧縮される。それによって第2ストロークが特徴付けられる。この場合においても混合ガスは上死点の領域、すなわち最大圧縮領域において点火される。それによって、燃焼室内に過剰圧力が発生し、再びその過剰圧力がピストンを下死点方向に加速し、その結果、クランクシャフトに出力放出する(第3ストローク)。
【0008】
4ストロークエンジンは、2ストロークエンジンに比べて排気ガスと燃料消費を大幅に削減し、エンジンの信頼性と耐久性を大幅に向上させることを可能にした。もっとも、クランクシャフトの2回転の間に単に1回の出力放出が行われるため、出力放出は低下する。
【0009】
従来技術において、更に、内燃機関の運転のための他の方法、及び対応する内燃機関も知られている。例えば、特許文献1は、互いに向かって接近、又は互いから離間するように、クランクシャフトによって互いに連結された2本のコンロッドを有する3ストローク内燃機関を開示している。この場合、クランクシャフトの1回転中に、排気/充填ステップ、圧縮ステップ、及び膨張ステップが実行される。シリンダ内の開口部はクランクシャフトの近くに配置されている。
【0010】
特許文献2は、3ストローク法の内燃機関を開示している。この方法は、掃気用の追加ストロークを有する2ストローク法に相当する。この場合、より徹底した掃気のための時間は、クランクピンの三角形状の動きによって達成される。これは例えば、直径比が1:3又は2:3の小歯車と回転内歯車を介して達成される。すなわち、クランクシャフトが3回転(1080°)する際に、ピストンが1回又は2回、完全に昇降する。
【0011】
特許文献3は、遊星歯車を有する電磁式の3ストロークピストンエンジンを開示している。特許文献4は、3ストローク原理の油圧エンジンを駆動するために、2つの互いに結合したピストンを有するフリーピストン内燃機関を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2010/069027号
【特許文献2】スイス国特許出願公開第714074号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第112953110号明細書
【特許文献4】国際公開第2022/087759号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した従来技術を背景として、本発明の課題は、2ストローク法と4ストローク法の利点を組み合わせ、それぞれの方法の欠点を可能な限り最小化した、内燃機関の新規な運転方法を提供することにある。また、本発明の課題は、対応するシリンダアセンブリ、ひいては本発明による方法を実施することができる内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に含まれる。
【0015】
内燃機関を運転するための本発明による方法は、内燃機関のクランクシャフトが3回転する作動サイクル(全サイクル)を有する。この作動サイクルの間に、内燃機関のピストンは、第1の上死点を2回、及び第2の上死点を1回通過し、並びに、第1の下死点を2回、及び第2の下死点を1回通過する。その際、第1の上死点、或いは第1の下死点は、第2の上死点、或いは第2の下死点よりもクランクシャフトからより離れている。更に、本発明による方法は、以下のストローク:
(A)第2の上死点から第1の下死点までのピストンの運動の間に、シリンダの燃焼室に燃料混合ガスを供給するストロークと、
(B)第1の下死点から第1の上死点までのピストンの運動の間に、シリンダの燃焼室内の空気・燃料混合ガスを圧縮するストロークと、
(C)第1の上死点から第2の下死点までのピストンの運動の間に、空気・燃料混合ガスを燃焼させるストロークと、
(D)第2の下死点から第1の上死点までのピストンの運動の間に、この時点において燃焼室内に存在する混合ガスを圧縮するストロークと、
(E)第1の上死点から第1の下死点までのピストンの運動の間に、混合ガスを燃焼させるストロークと、
(F)第1の下死点から第2の上死点までのピストンの運動の間に、燃焼室内に存在する混合ガスを排気するストロークと、を含む。
【0016】
更に、ピストンが第2の下死点を通過する際に、燃焼室内に存在する混合ガスの少なくとも一部を燃焼室から掃気する。第2の下死点の通過とは、その下死点まで一方向に運動し、その運動がその下死点において反対方向に反転するピストンの運動であると解される。
【0017】
第2の下死点の通過の際の燃焼室の掃気によって、方法ステップ(C)における空気・燃料混合ガスの燃焼は、掃気開始までしか行われず、その掃気は、好ましくは、第1の下死点を超えた時点から行われる。加えて、同様に、方法ステップ(D)による混合ガスの圧縮も、第2の下死点の通過の際の燃焼室の掃気が完了したときにのみ行われ、これは、好ましくは、同様に第1の下死点を、今回は逆方向に超えたときに行われる。
【0018】
方法ステップ(A)において言及される燃料混合ガスという用語は、既に燃料・空気・混合ガスとしてシリンダの燃焼室内に噴射される、或いは、吸気弁を通して吸入される燃料混合ガスと、新気の吸気と燃料の噴射とによって初めて燃焼室内に形成される燃料・空気・混合ガスと、の両方を指す。それは、この場合、燃焼後に、燃焼して又は部分燃焼して燃焼室内に存在する残留ガスを指すこともあり得る。
【0019】
したがって、本発明による方法は、6つの個別ストロークを有する方法であり、その際、これらのストロークは、2つの3ストロークシーケンスに分割することができる。その場合、両3サイクルシーケンスはそれぞれ燃焼ストロークを有し、この燃焼ストロークにおいてクランクシャフトに出力放出が行われる。したがって、2つの複数作動ストロークによって内燃機関の全体の作動サイクルを形成するために6ストロークが必要であっても、本願の文脈においては、3ストローク法という。この場合、カムシャフトはクランクシャフトより3倍遅く回転する。2つの個別の3ストローク法は、作業サイクルともいう。
【0020】
ピストンの第2の下死点の通過の際に、燃焼室内に存在する混合ガスの少なくとも一部が燃焼室から掃気されるという事実によって、本発明による方法は、4ストロークエンジンと2ストロークエンジンとの両方のすべての方法ステップを有する。その際、6つの個別のストロークにおける2倍の出力放出によって、4ストロークエンジンと比較して、出力放出を増加させることができる。同時に、燃料混合ガスのクリーン且つ完全な燃焼によって、2ストローク法の欠点が解消される。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態においては、燃焼室の掃気が、シリンダ内に放射状に配置された少なくとも1つの掃気開口部によって、第2の下死点の領域において行われる。掃気開口部は、掃気されるガスの量に応じた寸法にすること、又は、掃気を最適化するためにいくつかの小さな開口部に分割することができる。混合ガスは、少なくとも1つの掃気開口部を通って燃焼室に入る。その際、燃焼室内の燃焼過程によって事前に膨張した混合ガスは、好ましくは、排気弁又は別の排気開口部を通って燃焼室から事前に排出されている。その際、本発明の実施形態において、掃気開口部が燃焼室内に存在する混合ガスの排出のためにも使用されることも考えられる。
【0022】
本発明のさらなる好ましい一実施形態においては、ピストンの第2の下死点から第1の上死点までの運動の間に、燃料混合ガスを燃焼室に供給する、特に吸気弁を介して噴射する、又は掃気開口部を介して供給する。特に好ましくは、ピストンが第2の下死点を通過した直後において、すなわちピストンが第1の下死点に到達する前において、燃焼室の掃気の間に噴射が行われる。この追加的な燃料混合ガスの供給によって、燃焼室内の混合ガスが、2回目の出力放出中における2回目の燃焼のために最適に準備され、それによって、最適な出力放出とクリーンな燃焼が保証される。
【0023】
本発明による方法を実行するためには、ピストンの死点間の運動を確実にする必要がある。そのため、この方法は、全ての内燃機関、或いは全てのシリンダアセンブリに適用可能ではない。シリンダアセンブリという用語は、ピストン、コンロッド、及びクランクシャフトへの固定部材を含む、シリンダの組立て品を意味すると解される。その際、本発明による内燃機関は、共通のクランクシャフトを有する複数のシリンダアセンブリを含む。
【0024】
本発明による内燃機関のシリンダアセンブリはピストンを備え、そのピストンは、シリンダ内において並進的に振動して往復運動し、シリンダ内の燃焼室を画定するように形成されている。シリンダアセンブリは更にコンロッドを備え、そのコンロッドは、連結要素によってピストンを少なくとも1つの遊星歯車に連結されるように形成されている。その際、連結要素は遊星歯車上に偏心して配置され、遊星歯車は内歯車に噛み合ってその内歯車内において回転し、クランクシャフトにも連結されている。遊星歯車上に偏心して配置された連結要素は、連結要素の幾何学的中心が遊星歯車の幾何学的中心と一致せず、偏心していることによって規定される。更に、遊星歯車の寸法及び連結要素の偏心配置は、内歯車内における遊星歯車の、或いはクランクシャフトの3回転中に、ピストンが第1の上死点に2回、及び第2の上死点に1回到達し、並びに、第1の下死点に2回、及び第2の下死点に1回到達するように形成されており、第1の上死点及び第1の下死点は、第2の上死点或いは第2の下死点よりもクランクシャフトの軸から離れている。
【0025】
本発明による方法の必要な作動サイクルを可能にするために、遊星歯車の直径は、好ましくは内歯車の直径の5分の3である。この場合、直径とは、歯車(すなわち遊星歯車又は内歯車)のピッチ円直径であると解される。遊星歯車とクランクシャフトとの間の回転比は、好ましくは2:3である。
【0026】
この配置によって、特に遊星歯車に対する連結要素の偏心した固定によって、コンロッドと遊星歯車との連結要素の幾何学的中心は、ハイポサイクロイド経路に強制され、それによって、異なる死点を生じさせる。その際、偏心の寸法は、死点間の距離を規定する。
【0027】
本発明の有利な一実施形態においては、シリンダは、第1の下死点と第2の下死点との間に少なくとも1つの掃気開口部を有し、この掃気開口部は、ピストンが第1の下死点の下方にあり、したがって掃気開口部が露出しているときに、燃焼室を掃気するように形成されている。この方法によって、燃焼室の掃気のための簡単な方法を提供することができる。その際、掃気開口部を通って、燃焼室内に存在する混合ガスが排出され、及び新鮮な混合ガスが導入されるという実施形態が考えられ、また、新鮮な混合ガスのみが導入され、一方、燃焼室内に存在する混合ガスの排出が、別の排気開口部又は排気弁を介して確保されるという実施形態も考えられる。
【0028】
本発明によるシリンダアセンブリの更なる好ましい一実施形態においては、コンロッドと遊星歯車との間の連結要素は、偏心して配置された、特に円筒形の要素によって形成されており、この要素は、コンロッドの端部に配置されたコンロッド大端部によって囲まれている。このような配置は、コンロッドと遊星歯車との間の接続を確立するための実行容易な方法である。
【0029】
本発明の更なる好ましい一実施形態においては、シリンダアセンブリは、燃焼室内に混合ガス、特に燃料・空気混合ガスを供給するための少なくとも1つの吸気弁と、混合ガスを燃焼室から排気するための少なくとも1つの排気弁とを備える。対応する弁は、弁駆動装置を介して容易に制御することができ、それによって、燃焼室への燃料・空気混合ガスの供給を保証する効率的な方法を示す。その際、1サイクル内において弁の複数回の開放を意図することも考えられる。しかしながら、複数の吸気弁、或いは排気弁を備えた実施形態も考えられる。
【0030】
本発明の好ましい一実施形態においては、内歯車は、所定の角度位置だけ回転させることができる。これによって遊星歯車も回転し、それによって、コンロッドの連結要素が偏心して遊星歯車に固定されているその偏心の方向(Ausrichtung)が変化する。その結果、死点がわずかに変化し、それは、燃焼室内の圧縮比に影響を与え、弁、特に吸気弁の制御に特に影響を与える。この方法によって、弁の制御タイミングは、所定の角度位置だけの、内歯車のわずかな回転によって調整することができる。掃気開口部の適切な配置の際には、内歯車の回転によって掃気開口部を部分的にマスクすることもでき、それによって燃焼室の掃気にも影響を与えることができる。
【0031】
好ましくは、内歯車の回転は内歯車の外側に配置された外ねじによって行われる。内歯車は、この外ねじに噛み合う歯車によって回転させることができる。
【0032】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、内歯車の、遊星歯車の幾何学的寸法、及びコンロッドの偏心配置された連結要素と遊星歯車の幾何学的中心との間の距離は、第1の上死点と第1の下死点との間の距離と、第1の上死点と第2の下死点との間の距離との間の比が0.7~0.85となるように選択される。偏心連結要素と遊星歯車の幾何学的中心との間の距離は、遊星歯車上の連結要素の連結点と遊星歯車の幾何学的中心との間の距離によって規定される。このような比率によって、クリーンな燃焼と出力増進という点に関して、内燃機関の特に有利な運転が保証される。
【0033】
本発明による内燃機関は、少なくとも1つの、本発明によるシリンダアセンブリを備える。その際、シリンダ数は、好ましくは3の倍数である。その際、本発明による内燃機関は、異なる構成において、したがって個別のシリンダアセンブリの異なる幾何学的配置において利用可能である。例えば、内燃機関は、直列エンジン、V型エンジン、W型エンジン、又はボクサーエンジンとして実現することができる。
【0034】
本願の範囲において開示されている方法の特徴は、本発明による装置についても開示されているものとみなされ、その逆もまた同様であることに留意されたい。
【0035】
以下において、添付の図面を参照して、本発明の実施形態及び有利な局面をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ピストンアセンブリ1の本発明による一実施形態の斜視図である。
図2】本発明によるピストンアセンブリ1の遊星歯車40の詳細図である。
図3】シリンダ10の断面図、及び、コンロッド30を遊星歯車40に固定するための連結要素42の中心の移動経過を示す図である。
図4a】ピストン20が第2の下死点UT”に位置する際の、図1によるピストンアセンブリ1の詳細図である。
図4b】ピストン20が第2の下死点UT”に位置する際のシリンダ10の詳細図である。
図5a】ピストン20が第1の下死点UT’に位置する際の、図1によるピストンアセンブリ1の詳細図である。
図5b】ピストン20が第1の下死点UT’に位置する際のシリンダ10の詳細図である。
図6】本発明によるピストンアセンブリ1におけるピストン20の運動経過を、クランク角度にわたって描いたグラフである。
図7】吸気弁の可変制御タイミングを有する第2の実施形態における、本発明によるピストンアセンブリ1の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、ピストンアセンブリ1の本発明による一実施形態の斜視図を示す。ピストンアセンブリ1は、ピストン20が直線運動を行うシリンダ10を備える。この場合、シリンダ10は、より見やすくするために断面にて示されている。シリンダ10とピストン20は燃焼室14を囲んでおり、その容積はシリンダ10内でのピストン20の運動に応じて変化する。シリンダ10の一端面、すなわちシリンダカバーには、混合ガスを、燃焼室14内に導くための吸気弁12、及び、燃焼室14から排出するための排気弁13が配置されている。それらの弁は、カムシャフト70と、それに取り付けられた吸気カム71、或いは排気カム72とを介して制御される。特に複数のカムシャフト70を介して制御される複数の吸気弁12及び排気弁13を備えた実施形態も考えられる。更に、シリンダ10は、放射状の複数の掃気開口部11を一定の高さにおいて有し、それら掃気開口部11によって、ピストン20が対応する位置にある場合に燃焼室を掃気することができる。
【0038】
ピストン20はコンロッド30を介して2つの遊星歯車40に連結されており、遊星歯車40は内歯車50の中において回転する。単に、1つの遊星歯車40と、対応する1つの内歯車50とを設けることも可能である。2つの遊星歯車40の動きは同期しているため、便宜上、以下においては、単に1つの遊星歯車40と1つの内歯車50について説明する。クランクシャフト60が遊星歯車40に連結され、そのクランクシャフト60は、従来技術の内燃機関と同様に、エンジンの出力を利用し、異なるピストンアセンブリ1を互いに連結する。本発明によれば、コンロッド30は、偏心して、すなわち遊星歯車40の幾何学的中心にではなく、遊星歯車40に連結されている。それについて、図2を参照して詳細に説明する。
【0039】
図2は、図1によるピストンアセンブリ1の実施形態において使用される遊星歯車40を詳細に示す。遊星歯車40は、内歯車50の歯と噛み合う外部歯43を有する。コンロッド30と遊星歯車40との連結は、連結要素42を介して行われる。図示の実施形態においては、連結要素42は円筒状であり、遊星歯車40の側面に配置されている。遊星歯車40の幾何学的中心に、クランクシャフト60用の受け部41が配置されている。
【0040】
その際、円筒状の連結要素42の幾何学的中心Mは、遊星歯車40の幾何学的中心Kと一致していない。すなわち、連結要素42は遊星歯車40の側面に偏心して配置されている。その際、偏心e、すなわち、連結要素の幾何学的中心Mと遊星歯車40の幾何学的中心Kとの間の距離は、図3を参照してより詳細に説明されるように、ピストン運動にとって重要なパラメータとなる。
【0041】
図3は、シリンダ10の断面と、連結要素42の幾何学的中心Mの移動経過を示している。ピストン上の点の移動経過は、この場合、連結要素42の幾何学的中心Mの、図のY方向における移動経過に対応する。シリンダ10は、この場合、図1に既に示したシリンダ10に対応する。図2を参照して説明した偏心eによって、シリンダ10内のピストン20の直線的に振動する軸方向運動は、従来技術で知られているような常に2つの同一の端点の間を経過しない。その2つの同一の端点は、従来、上死点及び下死点(OT、UT)といわれ、それぞれ軸方向運動の際のピストン20の転回点を示す。本発明によるピストンアセンブリ1における偏心eによって、運動は2つの上死点と2つの下死点の間において行われる。図6を参照して後に更に詳しく説明するように、本発明によるピストンアセンブリの作動サイクル(2つの作業サイクル/複数作動ストロークを含む全サイクル)は、クランクシャフト60の3回転を含む。これは、遊星歯車40も内歯車50内において3回転することを意味する。偏心eによって、連結要素42の幾何学的中心Mは、1回転の間に、円軌道上を走らない。しかしながら、クランクシャフト60が3回転すると、幾何学的中心Mは再び同じ点に位置する。連結要素42の幾何学的中心Mの移動経過は、図3の右側に示されている。その際、ピストン20の上部の点の移動経過は、連結要素42の幾何学的中心Mの移動経過に対応しており、そのため、この図は、Y方向において、ピストン20の上部の点に転用することができる。
【0042】
このハイポサイクロイド曲線は、上死点として解される3つの極大点と、下死点として解される3つの極小点とを有する。その場合、2つの極大点は3つ目の極大点よりも高く、1つの極小点は2つの他の極小点よりも低い。それによって、2つの高い方の極大点が第1の上死点OT’を形成し、1つの低い方の極大点が第2の上死点OT”を形成する。同様に、2つの高い方の極小点は第1の下死点UT’を形成し、1つの低い方の極小点(いわば運動曲線の全体的な極小点)は第2の下死点UT”を形成する。
【0043】
連結要素42の幾何学的中心Mのハイポサイクロイドの移動経過を、ピストン20の直線的な軸方向の交互運動に変換することによって、ピストン20は、1回の作動サイクルの間に、第2の下死点UT”と第1の上死点OT’との間を運動し、その際、第1の上死点OT’に2回到達し、第2の上死点OT”に1回到達する。同様に、第1の下死点UT’に2回到達し、第2の下死点UT”には1回到達する。掃気開口部11は、ピストン20が第2の下死点UT”を通過するときにのみ開放されるように、シリンダ10内に配置されている。偏心eが大きいほど、連結要素42の幾何学的中心Mのハイポサイクロイドの移動経緯は円軌道からより大きく逸脱し、その結果、それぞれの第1及び第2の死点間の差はより大きくなる。その目的は、2つの作業サイクルにおいて可能な限り均一な圧縮を実現することである。
【0044】
異なる上死点と下死点の由来を、図4a、図4b、図5a及び図5bにおいてより詳細に説明する。図4a及び図5aは、作動サイクルの異なる位置における本発明によるピストンアセンブリ1を示している。図4aにおいては、遊星歯車40は、内歯車50内においてシリンダ10から最も離れた位置に位置している。その際、遊星歯車40は、偏心eが図面平面内において下方を指すように、すなわち、連結要素42が、シリンダ10から、遊星歯車40の幾何学的中心よりもより離れるように位置付けされている。そのため、ピストン20は、第2の下死点UT”、すなわち図3に示す移動経過における全体的な極小点に位置する。それによって、図4bに概略的に示されているように、ここでは断面で示されているシリンダ10の放射状の掃気開口部11は、ピストン20によって露出される。
【0045】
図5aにおいて、内歯車50内における遊星歯車40は、シリンダ10から最も遠い位置に再び位置しており、しかも、内歯車50内における遊星歯車40のちょうど1回転後においてである。しかしながら、連結要素42の幾何学的中心Mは、内歯車50内における遊星歯車40の1回転後に再び同じ位置に位置するのではなく、図5aの図面平面において、左上にずれている。それによって、ピストン20はシリンダ10内の第1の下死点UT’に位置し、その位置おいては掃気開口部11を覆っており、その結果、図5bに示すように、混合ガスが掃気開口部11を通って燃焼室14から流出しない。
【0046】
図6は、本発明によるピストンアセンブリ1のシリンダ10内のピストン20の運動経過を示すグラフである。図6に基づいて、本発明によるピストンアセンブリ1の作動サイクルを、したがって本発明による方法を、図1と関連してより詳細に説明する。
【0047】
全サイクルは、1080°のクランクシャフト回転を含み、これはクランクシャフトの全3回転に相当する。全サイクルは、6ストロークに区分され、各ストロークは、180°、すなわちクランクシャフトの半回転を含む。グラフは、X軸にクランクシャフト60の角度、すなわちクランクシャフトの回転を、Y軸にシリンダ10内のピストン20のストロークを示している。なお、このグラフにおける具体的な数値は、単に例示である。
【0048】
図示の初期位置においては、ピストン20は第2の上死点OT”に位置する。そこからピストン20は、第1ストロークにおいて第1の下死点UT’の方向に運動する。この運動の間に、カムシャフト70(図1参照)の吸気カム71が吸気弁12を開き、それによって、空気と燃料の混合ガスが燃焼室14に入る。代替的な実施形態においては、新気のみが吸気弁を通って燃焼室に入り、後続の圧縮ストロークにおいて、空燃混合ガスの形成のために噴射燃料と混合することも可能である。
【0049】
第1の下死点UT’に達した後、燃焼室14の容積は、ピストン20の第1の上死点OT’方向への運動によって再び減少する。その際、燃焼室14内の混合ガスが圧縮され、そのため、このストロークは圧縮ストロークと記載され得る。このストロークの間、吸気弁12は混合ガスの漏れを回避するために再び閉じられる。そのため、最初の2つのストロークは4ストロークエンジンからも同様に知られているが、この場合、4ストロークエンジンとは異なり、ピストン運動は2つの異なる上死点を含む。
【0050】
第1の上死点(UT’)の到達の際に、或いはその少し前において、混合ガスが点火される。このために、ガソリンエンジンにおいては従来の内燃機関と同様に点火プラグが使用され、一方、ディーゼルエンジンにおいては圧縮が非常に高いため、高圧、及びそれに伴う温度上昇によって、混合ガスが自ら点火する。混合ガスの点火によって燃焼室14内の圧力が大幅に上昇し、それによって、ピストン20は、第1の上死点OT’から第2の下死点UT”までの第3ストロークにおける運動の際に、加速する。それによって、出力を、コンロッド30を介してクランクシャフト60に伝達することができる。
【0051】
ピストン20は、第1の下死点UT’に達すると、シリンダ10内に放射状に配置された掃気開口部11を開放し、それによって燃焼室14は掃気される。掃気開口部11は、ピストン20が第2の下死点UT”を通過する間、ピストン20が第4ストロークにおいて再び第1の下死点UT’を通過するまで、或いは掃気開口部11を通過するまで、開いている。このように2つのストロークの移行時において行われる掃気の間に、燃焼室14内の圧力が燃焼室14に流入する新鮮な混合ガスの圧力よりも低い限りにおいて、吸気弁12が開き、それによって新鮮な混合ガスがシリンダカバーから燃焼室に流入することも可能ではあるが、必須ではない。好ましくは、排気弁13は、掃気過程中に少なくとも部分的に開き(図3参照)、それによって、混合ガスが掃気過程中に排気弁を介して少なくとも部分的に漏れ出ることができる。好ましくは、掃気過程は、燃焼室14内に存在する混合ガスが排気弁13から排出される一方、掃気開口部11を介して燃焼室14の底部に新鮮な混合ガスが流入するように行われる。混合ガスの排気と吸気の両方が、掃気過程中に、対応して配置された掃気開口部11を介して少なくとも部分的に実現される実施形態と同様に、一部のみが掃気に使用される複数の排気弁13の使用が考えられる。
【0052】
ピストン20が、第4ストロークの間に第1の上死点OT’方向への再度の運動の際に掃気開口部11を閉じるとすぐに、掃気は完了し(その際、場合によっては開いていた排気弁13も閉じる)、燃焼室14内の残りの混合ガスは再び圧縮され、続いて再び、すなわち、作動サイクル中に2回、点火される。圧縮過程の際に、任意に開いている弁は、再び閉じられる。それによって、第4及び第5ストロークは、2ストロークエンジンから知られるストロークに非常に対応する。
【0053】
混合ガスの再度の、すなわち第2の点火によって、第5ストロークにおいて、作動サイクル内の第2の出力放出がクランクシャフト60に生じる。その際、ピストン20は第1の下死点UT’にのみ到達する。この第2の燃焼ストローク(出力放出)において、混合ガスに含まれる残りの燃焼成分が完全に燃焼され、その結果、特にクリーン且つ完全な燃焼が達成され得る。
【0054】
第1の下死点UT’を通過した後、排気弁13の弁頭131がその弁座132から押し下げられ、燃焼室14内に残っている燃焼した混合ガスが排気弁13を通って排出される。図示の実施形態においては、排気カム72(図1参照)は、掃気過程及び排気ストローク(第6ストローク)の間に排気弁13を開くための2つの隆起部を含む。第2の上死点OT”に達した後、1回の作動サイクルが完了し、複数のストロークが再び最初から開始される。もちろん、吸気弁12と排気弁13の開閉時間を可変制御するために、独立に制御可能な弁駆動装置を有する本発明の実施形態、並びに、カムシャフトを有しない実施形態も考えられる。
【0055】
1回の作動サイクル、すなわち6ストロークの全サイクルの間に、2回の燃焼が、したがって2回の出力放出が行われるという事実に基づいて、本発明によるエンジンは、3ストロークエンジンであり、その際、2つの異なる3ストローク法が交互に実行される。そのため、2×3ストロークエンジンともいえる。2回の圧縮サイクルは、第1の下死点UT’と第1の上死点OT’との間において行われ、それによって、後続の各燃焼は、一定の圧縮比を確保することができる。
【0056】
図7は、本質的には図1のシリンダアセンブリを示しており、ここにおいては相違点のみを説明する。図1に示す実施形態とは異なり、図7に示す実施形態は、内歯車50の外側において、円周の半分にわたって延びる外ねじ51を追加して備えている。
【0057】
歯車80を回転させることによって、内歯車50はクランクシャフト60の周りを回転することができる。これによって遊星歯車40も回転し、それによって、連結要素42が偏心してコンロッド30及び遊星歯車40に連結されているその偏心が、わずかに変位する。その結果、その偏心の変位によってピストン運動の極端部が同一ではなくなるため、死点にも変位が生じる。このことは、第1に、燃焼室14内の圧縮に利用可能な容積、従って燃焼室14内の混合ガスの圧縮比が変化するという結果をもたらし、しかしながら、次に、特に、吸気弁の開閉時刻が変化し、それによって、これらの時刻の制御を内歯車50の回転によって得ることができるという結果も、もたらす。
【符号の説明】
【0058】
1 シリンダアセンブリ
10 シリンダ
11 掃気開口部
12 吸気弁
13 排気弁
14 燃焼室
20 ピストン
30 コンロッド
31 コンロッド大端部
40 遊星歯車
42 連結要素
50 内歯車
51 外ねじ
60 クランクシャフト
OT’ 第1の上死点
OT” 第2の上死点
UT’ 第1の下死点
UT” 第2の下死点
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7