(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120165
(43)【公開日】2024-09-04
(54)【発明の名称】動的リッジフィルタ及びレンジシフタ並びにこれらを有する放射システム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
A61N5/10 N
A61N5/10 M
A61N5/10 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024022607
(22)【出願日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】23158167.9
(32)【優先日】2023-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】318004198
【氏名又は名称】イオン ビーム アプリケーションズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Ion Beam Applications S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クレールブート イヴ
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC05
4C082AE01
4C082AG12
4C082AG21
4C082AG33
4C082AG42
4C082AJ06
4C082AJ16
4C082AL06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】動的リッジフィルタ及びレンジシフタ並びにこれらを有する放射システムを提供する。
【解決手段】一連のペンシルビームBjを成形するための動的成形装置30を有する放射治療ステーションである。動的成形装置30は、動的リッジフィルタ1及び動的レンジシフタ2を有し、リッジフィルタ1は、フィルタ行10を有し、Y軸に対して平行なフィルタ行の長さに沿って分散された異なるエネルギー拡散プロパティのフィルタモジュールの同一の選択から構成される。レンジシフタ2は、シフタ行20を有し、Y軸に対して平行なシフタ行の長さに沿って分散された異なるレンジシフトプロパティのシフタモジュールの同一の選択から構成される。フィルタ行及びシフタ行は、対応する照射軸に沿ってアライメントされたフィルタモジュール及びシフタモジュールによって形成された放射モジュール32をもたらすように、互いに独立的にY軸に沿って平行運動できる。
【選択図】
図6a-6b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電粒子ビームによる、好ましくはプロトン又はその他の光イオンビームによる、放射によって線量沈着ゾーンを成形する且つペンシルビームスキャニング(PBS)システムによる中央照射軸(Z)から発せられる対応する照射軸(Zj)に沿って伝播するペンシルビーム(Bj)によって印加された且つ前記X軸を横断する、好ましくはこれに対して垂直である、Y軸に沿って互いに隣接した状態において分散された特定の容積ストライプを形成するためにX軸に沿って特定の容積(Vj)に対してシーケンスにおいて供給される線量(Dj)を沈着させる動的リッジフィルタであって、前記特定の容積(Vj)は、腫瘍細胞を有するターゲット容積(Vt)を組合せにおいて定義しており、
前記動的リッジフィルタは、いくつかのエネルギー拡散ユニット(11)を有し、それぞれのエネルギー拡散ユニット(11)は、1つ又は複数のエネルギー拡散ユニット(11)を横断する前記対応するペンシルビーム(Bj)によって前記照射軸(Zj)に沿って沈着された前記線量を拡散させる対応するエネルギー拡散能力を特徴としている、動的リッジフィルタにおいて、
・前記エネルギー拡散ユニット(11)は、フィルタモジュール(12)内において分散され、それぞれのフィルタモジュール(12)は、1つ又は複数のエネルギー拡散ユニット(11)を支持し、且つ、前記対応するペンシルビーム(Bj)の断面に適合した前記中央照射軸(Z)に対して垂直であるエリアを有し、前記フィルタモジュール(12)は、異なるフィルタ行(10)として構成され、そのそれぞれは、前記行方向(Y)に沿って延在しており、
・それぞれのフィルタ行(10)は、いくつかの非類似のフィルタモジュール(12)を有し、フィルタ行(10)のそれぞれのフィルタモジュールは、前記同一のフィルタ行(10)の前記その他のフィルタモジュール(12)とは異なるエネルギー拡散能力を有し、
〇それぞれのフィルタ行は、前記X軸に沿ってフィルタストリング(12i)を形成するために独立的に変位させることが可能であり、且つ、
〇前記フィルタストリングは、前記特定の容積(Vj)内の前記線量沈着を成形し、これにより、前記照射軸(Zj)に沿って前記フィルタストリングに対向する前記特定の容積ストライプを形成するように構成されている、
ことを特徴とする動的リッジフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の動的リッジフィルタ(1)において、前記エネルギー拡散ユニット(11)は、前記フィルタモジュール(12)のベース上において支持された且つ使用の際に前記対応するペンシルビーム軸(Zj)に対して平行に延在する前記スパイクの長軸を有するように構成された一般化された円筒形の、好ましくはプリズム形の、形状の、或いは、断ち切られた又は断ち切られていない円錐形の形状の、好ましくはピラミッド形の形状の、スパイクの形態を有することを特徴とする動的リッジフィルタ(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の動的リッジフィルタ(1)において、前記エネルギー拡散ユニット(11)は、前記フィルタモジュール(12)の支持ベース内において貫通する一般化された円筒形又は円錐形の形状のオリフィスの形態を有し、それぞれのオリフィスは、前記支持ベースの表面におけるアパーチャ開口部から延在し、且つ、所与の深さに貫通し、これにより、前記支持ベースの材料の結果的に得られる厚さを残しており、且つ、使用の際に前記対応するペンシルビーム軸(Zj)に対して平行に延在する前記空洞の長軸を有するように構成されていることを特徴とする動的リッジフィルタ(1)。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の動的リッジフィルタ(1)において、それぞれのフィルタモジュール(12)は、前記照射軸(Zj)に対して垂直である異なる断面エリア(Ai)を有する複数の拡散サブユニット(11a~11c)によってそれぞれが形成された且つ使用の際に前記照射軸(Zj)に対して平行に延在するように構成された前記エネルギー拡散ユニット(11)の長軸に沿って互いの上部において積層された1つ又は複数のエネルギー拡散ユニット(11)を有し、前記積層体のすべての拡散サブユニット(11a~11c)は、異なるエネルギー拡散能力を有することを特徴とする動的リッジフィルタ(1)。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の動的リッジフィルタ(1)において、すべてのフィルタ行(10)は、同一であり、且つ、フィルタモジュール(12)の同一の選択を有することを特徴とする動的リッジフィルタ(1)。
【請求項6】
帯電粒子ビームによる、好ましくはプロトン又はその他の光イオンビームによる、放射によって線量沈着ゾーンを成形する且つペンシルビームスキャニング(PBS)システムによって中央照射軸(Z)から発せられる対応する照射軸(Zj)に沿って伝播するペンシルビーム(Bj)によって印加された且つ前記X軸を横断する、好ましくはこれに対して垂直である、Y軸に沿って互いに隣接した状態において分散された特定の容積ストライプを形成するためにX軸に沿って特定の容積(Vj)に対してシーケンスにおいて供給された線量(Dj)を沈着させる動的レンジシフタ(2)であって、前記特定の容積(Vj)は、腫瘍細胞を有するターゲット容積(Vt)を組合せにおいて定義しており、
前記レンジシフタ(2)は、前記レンジシフタ(2)のエリアにわたって変化する材料の厚さを有し、前記エリアは、使用の際に前記照射軸(Zj)に対して実質的に垂直になるように構成され、前記厚さの値は、前記厚さを横断する前記帯電粒子の前記ペンシルビーム(Bj)の吸収エネルギー(ΔE)の対応する量を決定している動的レンジシフタにおいて、
・前記レンジシフタは、シフタ行(20)を形成するために並んだ状態において構成されたシフタモジュール(22)を有し、それぞれのシフタ行(20)は、前記同一のシフタ行(20)の前記その他のシフタモジュール(22)とは異なる一定の又はほとんど一定の厚さを有する且つ前記ペンシルビーム(Bj)から基準吸収エネルギー(ΔE)の異なる量を吸収するように構成されたシフタモジュール(22)の選択を有し、
・それぞれのシフタ行(20)は、前記X軸に沿ってシフタストリング(22i)を形成するために独立的に変位させることが可能であり、
・前記シフタストリングは、前記特定の容積(Vj)内において前記線量沈着を前記照射軸(Zj)に沿って成形し、これにより、前記照射軸(Zj)に沿って前記シフタストリングに対向する前記固有の容積ストライプを形成するように構成されている、
ことを特徴とする動的レンジシフタ。
【請求項7】
請求項6に記載の動的レンジシフタ(2)において、すべてのシフタ行(20)は、同一であり、且つ、シフタモジュール(22)の同一の選択を有することを特徴とする動的レンジシフタ(2)。
【請求項8】
帯電粒子ビームによる、好ましくはプロトンビームによる、放射によって線量沈着ゾーンを成形する且つペンシルビームスキャニング(PBS)システムによって中央照射軸(Z)から発せられる対応する照射軸(Zj)に沿って伝播するペンシルビーム(Bj)によって印加された且つ前記X軸を横断する、好ましくはこれに対して垂直である、Y軸に沿って互いに隣接した状態において分散された特定の容積ストライプを形成するためにX軸に沿って特定の容積(Vj)のシーケンス内に供給された線量(Dj)を沈着させる動的成形装置(30)であって、前記特定の容積(Vj)は、腫瘍細胞を有するターゲット容積(Vt)を組合せにおいて定義している、動的成形装置(30)において、
フィルタストリング(12i)及びシフタストリング(22i)が、放射ストリング(32i)を組合せにおいて形成するために、使用の際に前記照射軸(Zj)に対して平行である方向に沿って互いに対向するように、ペンシルビーム(Bj)のビーム経路に沿ってシーケンスにおいて配設された請求項1乃至5の何れか一項に記載の少なくとも動的リッジフィルタ(1)及び請求項6又は7に記載の少なくとも動的レンジシフタ(2)を有することを特徴とする動的成形装置(30)。
【請求項9】
帯電粒子ビームによる、好ましくはプロトンビームによる、放射によって線量沈着ゾーンを成形する且つペンシルビームスキャニング(PBS)システムによって中央照射軸(Z)から発せられる対応する照射軸(Zj)に沿って伝播するペンシルビーム(Bj)によって印加された且つ前記X軸を横断する、好ましくはこれに対して垂直である、Y軸に沿って互いに隣接した状態において分散された特定の容積ストライプを形成するためにX軸に沿って特定の容積(Vj)のシーケンス内に供給された線量(Dj)を沈着させる治療ステーションであって、前記特定の容積(Vj)は、腫瘍細胞を有するターゲット容積(Vt)を組合せにおいて定義しており、前記治療ステーションは、
・加速帯電粒子の、好ましくはプロトンの、ペンシルビーム(Bj)のソースと、
・前記ターゲット容積(Vt)に向かって前記加速帯電粒子のペンシルビーム(Bj)を導くノズル(3)であって、前記ノズルが静止状態において留まっているのに伴って少なくとも前記X軸に沿ってスキャニングするために前記ペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成された電磁要素を有するノズルと、
・リッジフィルタと、
・レンジシフタと、
・仰向け、うつ伏せ、着座、又は直立位置において前記患者を受け入れるカウチ又は椅子(5)と、
・前記治療ステーションの様々なコンポーネントを制御するように構成された1つ又は複数のプロセッサと、
を有する、治療ステーションにおいて、
・前記リッジフィルタは、請求項1乃至5の何れか一項に記載の動的リッジフィルタ(1)であり、
・前記レンジシフタは、請求項6又は7に記載の動的レンジシフタ(2)であり、
前記動的リッジフィルタ(1)及び動的レンジシフタ(2)は、請求項8に記載の成形装置を形成するように構成されている、
ことを特徴とする治療ステーション。
【請求項10】
請求項9に記載の治療ステーションにおいて、
・前記電磁要素(4)は、前記ノズルが静止状態において留まっているのに伴って前記Y軸に沿ってもスキャニングするために前記ペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成されており、且つ、
〇前記成形装置(30)には、前記生成装置(30)が前記Y軸に沿って前記ペンシルビームとの間のアライメント状態を維持する状態において前記フィルタストリング(12i)及び前記シフタストリング(22i)が一緒に運動するように、前記Y軸に沿った前記ペンシルビームの平行運動に追随するように構成された平行運動システムが提供されており、又は、
〇前記フィルタストリング(12i)及び前記シフタストリング(22i)は、前記Y軸に沿った前記ペンシルビームとの間のアライメント状態を維持するために、前記ターゲット容積(Vt)との関係において好ましくは静止状態において留まる前記成形装置(30)との関係において前記Y軸に沿って運動しており、或いは、
・前記カウチ(5)には、前記成形装置(30)及び前記フィルタストリング及びシフタストリングが好ましくは前記ターゲット容積との関係において静止状態において留まる状態において、前記特定の容積(Vj)を前記対応するペンシルビーム(Bj)とアライメントさせるために前記Y軸に沿って前記カウチを平行運動させるように構成された平行運動システムが提供されており、或いは、
・前記上述の選択肢の組合せである、
ことを特徴とする治療ステーション。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の治療ステーションにおいて、前記1つ又は複数のプロセッサは、
・i番目のスキャニングストリングの前記ペンシルビーム(Bj)の前記ビーム経路が、前記ターゲット容積(Vt)を達成する前に、前記i番目の放射ストリング(32i)を形成する放射モジュール(32)の前記シーケンスの対応する放射モジュール(32)を横断するように、予め定義された治療計画に従ってi番目の放射ストリング(32i)をもたらすために、前記X軸に沿って延在するi番目のフィルタストリング(12i)及びi番目のシフタストリング(22i)を形成するフィルタモジュール(12)のシーケンスをもたらすために前記Y軸に沿って前記フィルタ行(10)及び前記シフタ行(20)を運動させ、放射モジュール(32)は、前記照射軸(Z)に沿ってアライメントされたフィルタモジュール(12)及びシフタモジュール(22)によって形成されているように、
・前記i番目のフィルタストリング(12i)の第1フィルタモジュール(12)及び前記i番目のシフタストリング(22i)の第1シフタモジュール(22)によって形成された第1放射モジュール(32)を通じて、且つ、前記X軸に沿って分散されたスポットのシーケンス(Sj)によって形成されたi番目のスキャニングストリングの第1スポット(Sj)に向かって、前記ペンシルビーム(Bj)を方向付けするために前記電磁要素(4)を制御し、前記スポットは、前記治療容積(Vt)の前記プレーン(X,Y)上への投影を表すプレーン(X,Y)上において構成されたスポットのアレイを定義するために前記Y軸に沿って分散された複数のスキャニングストリング(I、i+1...)として構成されるように、
・前記i番目のスキャニングストリングの前記第1スポット(Sj)を横断する前記ペンシルビーム(Bj)が予め定義された線量(Dj)を供給した後に、前記電磁要素(4)が、前記i番目の放射ストリング(32i)を形成する前記放射モジュール(32)のシーケンスを通じて、且つ、前記i番目のスキャニングストリングの前記スポットのシーケンス(Sj)に向かって、前記i番目のスキャニングストリングの前記ペンシルビーム(Bj)をシーケンシャルに方向付けするために構成されるように、
・前記i番目のフィルタストリング(12i)を形成するすべてのフィルタモジュール(12)について且つ前記i番目のシフタストリング(22i)を形成するすべてのシフタモジュール(22)について、前記ペンシルビーム(Bj)がx番目の放射モジュール(32)を横断し且つ前記X軸に沿って次の(x+1)番目の放射モジュール(32)に移動した後に、前記予め定義された治療に従ってスポット(Sj)の次の(i+1)番めのスキャニングストリングを照射するために必要とされる前記次の(i+1)番目の放射ストリング(32(i+1))の前記x番目の放射モジュールを照射するために必要とされる前記放射モジュール(32)をもたらすために前記j番目のフィルタ行(10)及び前記x番目のシフタ行(20)を前記Y軸に沿って運動させるように、
構成されていることを特徴とする治療ステーション。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の治療ステーションにおいて、前記i番目のスキャニングストリングの最後のスポット(Sj)を横断する前記ペンシルビーム(Bj)が、対応する最後の特定の容積(Vj)内に予め定義された線量(Dj)を供給した後に、前記1つ又は複数のプロセッサは、
・前記i番目のスキャニングストリングに対して前記Y軸に沿って隣接した(i+1)番目のスキャニングストリングの第1スポットを通じて前記ペンシルビーム(Bj)を方向付けするために請求項10に記載の前記電磁要素(4)又は前記カウチ(5)の前記平行運動システムを制御するように、
・前記(i+1)番目のスキャニングストリング上の前記スポットについて請求項11に記載の前記ステップを反復するように、
・前記複数のスキャニングストリングのすべてについて前記上述のステップを反復し、これにより、前記予め定義された治療計画に従って前記線量をいまだ受け取っていない前記スポット(Sj)のアレイを形成するように、
構成されていることを特徴とする治療ステーション。
【請求項13】
請求項10に記載の治療ステーションにおいて、前記カウチ(5)は、静止状態にあり、且つ、前記ペンシルビーム(Bj)によって辿られる前記ビーム経路が、前記フィルタストリング(12i)の対応するフィルタモジュール(12)及び前記シフタストリング(22i)の対応するシフタモジュール(22)と常に交差することを保証するために、1つ又は複数のプロセッサは、前記電磁要素(4)を同期化させるように構成され、且つ、
・前記成形装置の前記平行運動システムは、前記ペンシルビームが前記Y軸に沿って偏向されるのに伴って、前記成形装置又は前記放射ストリング(32i)も、前記Y軸に沿って平行運動されることを保証しており、或いは、
・前記フィルタストリング(12i)及び前記シフトストリング(22i)は、前記Y軸に沿った前記ペンシルビームとの間のアライメント状態を維持するために、前記ターゲット容積(Vt)との関係において静止状態において留まる前記成形装置(30)との関係において前記Y軸に沿って運動することを特徴とする治療ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍細胞又は照射を必要としているその他の状態を有する任意のターゲット容積の形状に適合するように調節され得るペンシルビームの拡大ブラッグピーク(=SOBP)を成形する動的成形装置に関する。成形装置は、動的リッジフィルタ及び/又は動的レンジシフタを有する。本発明の動的成形装置は、異なる事前定義された形状のいくつかのモジュールによって形成されたいくつかの同一の行を有する。それぞれの行は、X軸に沿ってアライメントされたそれぞれの行の1つのモジュールの選択によって形成された且つストリングに対向する特定の容積上に沈着された線量を成形するように構成されたストリングを定義するためにY軸に沿って独立的に平行運動するように構成されている(X⊥Y)。
【0002】
本発明の動的成形装置は、異なる形状の異なる腫瘍を治療するためのペンシルビームを成形するために単一の動的成形装置が使用され得るという利点を有する。これは、腫瘍の形状及び患者が時間に伴って変化し得ることを理由として患者ごとに且つ同一の患者に対する異なる照射セッションごとに新しい成形装置を製造することが必要ではないことから、大きな時間及び費用の節約を許容している。動的成形装置を有することにより、即座の治療計画の適合が許容されている。
【背景技術】
【0003】
電子ビーム、プロトンビーム、重イオンビーム、x線、γ線、及びこれらに類似したものなどの粒子又は波を伴う放射療法は、腫瘍を有する患者を治療するための不可欠なツールとなっている。
【0004】
容積内に存在している腫瘍細胞と正常細胞の両方が照射されることから、癌治療における第1の課題は、正常細胞を可能な限り傷つけないように正常細胞内への線量沈着を制限しつつ、腫瘍細胞を効果的に破壊又は殺傷ために定義された線量が腫瘍細胞内に沈着されることを保証する治療計画を定義する、という点にある。第2の課題は、限られた線量が計画どおりに正常細胞上に実際に沈着される状態において、定義された線量を腫瘍細胞上に実際に沈着させる、という点にある。
【0005】
異なる放射モードは、そのエネルギーを異なるパターンにおいて沈着させている。例えば、X線は、そのエネルギーの大部分を皮膚のレベルの近傍において沈着させており、且つ、沈着されたエネルギーは、組織内への貫通深さに伴って減少している。従って、腫瘍細胞の治療容積の上流に配置されている正常組織は、治療容積内において配置されている細胞よりも大きな線量を受け取っている。対照的に、プロトン及び炭素イオンなどの帯電粒子ビームは、そのエネルギーの大部分をそのビーム経路の端部の近傍において沈着させ、これにより、所謂ブラッグピークを形成している。
【0006】
粒子加速器のノズルから出現した帯電粒子は、狭いペンシルビームを形成している。実際的なサイズの治療容積をカバーするには、ビーム経路内において散乱材料を導入することにより、或いは、望ましいエリア上においてビームをスキャニングすることにより、ペンシルビームを横方向において拡大させなければならない。ペンシルビームスキャニング(PBS)及び二重散乱(DS)プロトン療法は、医師が、正常組織に対する最小限の放射曝露を伴って腫瘍をカバーする放射の正確で強力な線量を供給することを許容する2つの技法である。
【0007】
PBSは、非常に有利であり、その理由は、腫瘍を取り囲む治療容積の形状にマッチングするように線量沈着の幾何学的分布を最適化しているからである。但し、PBSビームは、それぞれのスポットにわたって且つ複数のモノエネルギー層にわたってスキャニングしなければならないことから、PBS治療時間が長くなり得る。1つのモノエネルギー層から、異なるエネルギーを有する次のものにPBSビームを運動させるには、500msのレベルの時間を所要する。従って、FLASH-RTにおけるものなどのように、照射時間が考慮事項である際には、層の数を低減する、最適には単一層に低減する、ことが有利である。
【0008】
治療時間の節約は、それぞれの患者ごとの粒子加速器の稼働時間を低減している。これは、患者にとっても相対的に快適である。また、治療計画がFLASH照射を有することも有利であり、この場合には、線量は、少なくとも1Gy/sという又は場合によっては最大で少なくとも40Gy/sという大きな線量レート(HDR)においてセル内に沈着されている。HDRにおいて沈着される所与の大きな線量(例えば、5~10Gy)は、相対的に低い従来の線量レート(CDR)において沈着された同一の線量との関係において、正常細胞を相対的に良好に傷つけないことを示している。FLASH照射が特に興味深いのは、HDRにおいて沈着されたのか又はCDRにおいて沈着されたのかとは無関係に、腫瘍細胞内に沈着された所与の線量が同一の殺傷効果を有するという点にある。
【0009】
単一層による深さにおけるターゲット容積の「ペインティング」は、ペンシルビーム経路に交差する成形装置を利用して治療対象の容積に向かって供給されるペンシルビームを成形することにより、実現することができる。成形装置は、加速された粒子のソースと治療容積の間において位置決めされ、これにより、自身を横断するビームのエネルギープロファイル及び/又は形状を変更する装置である。これは、線量がそれぞれのペンシルビームによって沈着される特定の容積を制御するために、ペンシルビームからのプロトンの一部分の必要とされるエネルギーの一部分を吸収するように設計されている。本発明は、更に詳しくは、リッジフィルタ及びレンジシフタ、並びに、少なくとも1つのリッジフィルタ及び少なくとも1つのレンジシフタから構成された成形装置に関する。
【0010】
患者のCTスキャン画像が生成され、その値がプロトン阻止力に変換されている。特定の容積上に沈着される線量を定義する治療計画が医師によって確立されている。1つ又は複数の装置は、正常組織上に沈着される線量を極小化しつつ、治療計画に従って治療容積内の特定の場所上に特定の線量を沈着させるために、腫瘍細胞を有する治療容積の形状にマッチングするようにビームを成形する治療計画システム(TPS)によって設計されている。
【0011】
リッジフィルタは、対応するペンシルビーム軸(Zj)に沿った拡大ブラッグピーク(SOBP)の成形を許容している。
図3(b)及び
図3(c)に示されているように、リッジフィルタは、当技術分野において知られており、且つ、ベース上において分散されたエネルギー拡散ユニットを有する。これらは、個々のペンシルビームのビーム軸(Zj)に沿って延在するスムーズなピン又はステップのピラミッド又は頂点の形態を有する。例えば、(特許文献1)は、支持ベース内においてスポットのアレイに従って並んだ状態で配置されたオリフィス又はピンの形態を有する複数のエネルギー拡散ユニットを有するリッジフィルタについて記述している。それぞれのエネルギー拡散ユニットは、断面エリアの一般化された円筒形形状を有する且つ支持ブロックから対応するビーム軸(Zj)に沿って延在するオリフィス又はピンの形態を有する1つ又は複数の拡散サブユニットによって形成されている。拡散サブユニットは、例えば、対応する照射軸(Zj)に沿って互いの上部に積層させることができる。それぞれのエネルギー拡散ユニットを形成する拡散サブユニットの重畳は、対応するビーム軸(Zj)に沿った拡大ブラッグピーク(SOBP)の幅の成形及び変更を許容している。
【0012】
レンジシフタは、ノズルと治療容積の間に挿入された阻止材料のスラブから構成され、且つ、治療範囲が浅い深さに延在し得るように、入射ビームの残留範囲を低減するために使用されている。具体的には、レンジシフタは、線量が、粒子の伝播方向との関係における治療容積の下流(或いは、遠位)端部において沈着される領域を制限することを許容している。所与の粒子阻止能力の材料の場合に、それぞれのペンシルビームに対向するスラブの厚さの変更は、線量が沈着される境界をターゲット容積の下流表面の形状に対してマッチングさせることを許容している。
【0013】
単一モノエネルギー層を使用したHDR照射のために使用される際には、リッジフィルタ及びレンジシフタは、一人の患者について1回のみ使用可能である固有の装置であり、且つ、治療対象の腫瘍のタイプ及び形状にマッチングするように、対応する計画された装置設計に従ってテーラーメイドされている。これらは、機械加工によって生成され得るが、これらは、一般には3D印刷によって生成されており、これは、依然として時間を所要し且つ相対的に高価である(但し、機械加工ほどには、時間及び費用を所要しない)。また、成形装置は、異なる照射セッションにおいて同一の患者の同一の腫瘍の治療のために新しいものによる交換を必要とする可能性があり、その理由は、CTスキャン画像において示されているように、腫瘍の形状又は患者は、時間に伴って且つ先行する照射セッションに伴って変化しており、これにより、成形装置が変更されない場合には臨床医によって受け入れ不能な線量分布をもたらすことになるからである。
本発明は、複数回にわたって再使用され得る且つ異なる形状の腫瘍の治療のために適合され得る動的リッジフィルタ及び/又は動的レンジシフタを含む動的成形装置を提案している。以下、本発明のこれらの及びその他の利点について説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願第2021/208699号明細書
【発明の概要】
【0015】
本発明は、添付の独立請求項において定義されている。好ましい実施形態は、従属請求項において定義されている。具体的には、本発明は、動的リッジフィルタ、動的レンジシフタ、並びに、動的リッジフィルタ及び動的レンジシフタを有する動的成形装置に関し、これらのそれぞれは、帯電粒子ビームによる、好ましくはプロトン又はその他の光イオンビームによる、放射によって線量沈着ゾーンを成形するように、且つ、ペンシルビームスキャニング(PBS)システムによって中央照射軸(Z)から発せられた対応する照射軸(Zj)に沿って伝播するペンシルビーム(Bj)によって印加される、且つ、X軸を横断する、好ましくはこれに対して垂直である、Y軸に沿って互いに隣接した状態において分散された特定の容積ストライプを生成するためにX軸に沿って特定の容積(Vj)に対してシーケンスにおいて供給される、線量(Dj)を沈着させるように、構成されており、特定の容積(Vj)は、腫瘍細胞を有するターゲット容積(Vt)を組合せにおいて定義している。
【0016】
動的リッジフィルタは、いくつかのエネルギー拡散ユニットを有し、それぞれのエネルギー拡散ユニットは、1つ又は複数のエネルギー拡散ユニットを横断する対応するペンシルビーム(Bj)によって照射軸(Zj)に沿って沈着される線量を拡散させるための対応するエネルギー拡散能力を特徴としている。動的リッジフィルタの要点は、エネルギー拡散ユニットが、フィルタモジュール内において分散され、それぞれのフィルタモジュールが、1つ又は複数のエネルギー拡散ユニットを支持し、且つ、対応するペンシルビーム(Bj)の断面と適合した中央照射軸(Z)に対して垂直であるエリアを有する、という点にある。フィルタモジュールは、それぞれが行方向(Y)に沿って延在する異なるフィルタ行として構成されている。
【0017】
それぞれのフィルタ行は、いくつかの非類似のフィルタモジュールを有する。フィルタ行のそれぞれのフィルタモジュールは、同一のフィルタ行のその他のフィルタモジュールとは異なるエネルギー拡散能力を有する。それぞれのフィルタ行は、X軸に沿ってフィルタストリングを形成するために独立的に変位させることが可能であり、且つ、フィルタストリングは、特定の容積(vj)内において線量沈着を成形し、これにより、照射軸(Zj)に沿ってフィルタストリングに対向する特定の容積ストライプを形成するように、構成されている。すべてのフィルタ行は、好ましくは、同一であり、且つ、対応するフィルタストリングを形成するために組み合わせられるフィルタモジュールの同一の選択を有する。
【0018】
一実施形態において、エネルギー拡散ユニットは、一般化された円筒形の、好ましくはプリズム形の、或いは、先端が断ち切られた又は断ち切られていない円錐形状の、好ましくはピラミッド形状の、スパイクの形態を有する。スパイクは、フィルタモジュールのベース上において支持されており、且つ、使用の際に対応するペンシルビーム軸(Zj)に対して平行に延在するスパイクの長軸を有するように構成されている。
【0019】
一代替実施形態において、エネルギー拡散ユニットは、フィルタモジュールの支持ベース内において貫通する一般化された円筒形又は円錐形の形状のオリフィスの形態を有する。それぞれのオリフィスは、支持ベースの表面におけるアパーチャ開口部から延在し、且つ、所与の深さに貫通し、これにより、支持ベースの結果的に得られる材料の厚さを残している。オリフィスは、使用の際に対応するペンシルビーム軸(Zj)に対して平行に延在する空洞の長軸を有するように構成されている。
【0020】
それぞれのフィルタモジュールは、照射軸(Zj)に対して垂直である異なる断面エリア(Ai)を有する複数の拡散サブユニットによってそれぞれが形成された1つ又は複数のエネルギー拡散ユニットを有することができる。これらは、使用の際に照射軸(Zj)に対して平行に延在するように構成されたエネルギー拡散ユニットの長軸に沿って互いの上部において積層させることが可能であり、この場合に、積層体のすべての拡散サブユニットは、異なるエネルギー拡散能力を有する。
【0021】
動的レンジシフタは、レンジシフタのエリアにわたって変化する材料の厚さを有し、エリアは、使用の際に照射軸(Zj)に対して実質的に垂直となるように構成されており、この場合に、厚さの値は、厚さを横断する帯電粒子のペンシルビーム(Bj)の対応する吸収エネルギー(ΔE)の量を決定している。レンジシフタのトポグラフィは、ターゲット容積(Vt)の下流部分のトポグラフィを近似しており、この場合に、「下流」は、粒子照射方向との関係において定義されている。
【0022】
本発明のレンジシフタの要点は、レンジシフタが、シフタ行を形成するために並んだ状態において構成されたシフタモジュールを有し、この場合に、それぞれのシフタ行は、同一シフタ行のその他のシフタモジュールとは異なる一定の又はほとんど一定の厚さを有する且つペンシルビーム(Bj)から異なる基準吸収エネルギー(ΔE)の量を吸収するように構成されたシフタモジュールの選択を有するという点にある。シフタ行は、ステップ形状を有する。或いは、この代わりに、シフタ行は、連続的な形状を有し、これにより、大きな厚さから小さな厚さへの連続的なスロープを形成することが可能であり、この場合に、それぞれのシフタモジュールは、変化する厚さを有し、その大きな及び小さな値は、両方の側においてそれに隣接するシフタモジュールの厚さの小さな及び大きな値に等しい。この形状は、Y軸に沿って並んだ状態においてアライメントされた中央照射軸(Z)に沿って計測される無限数の減少する高さの無限に薄いスライスとして定義することができる。
【0023】
ステップ状の又は連続的な形状を有するレンジシフタは、
・X軸に沿ってシフタストリングを形成するためにそれぞれのシフタ行を独立的に変位させることができるように、
・シフタストリングが、照射軸(Zj)に沿ってシフタストリングに対向する特定の容積ストライプを形成する特定の容積(Vj)内の線量沈着を照射軸(Zj)に沿って形成するように構成されるように、
なっている。
【0024】
すべてのシフタ行は、好ましくは、同一であり、これにより、シフタモジュールの同一の選択を有する。
【0025】
動的成形装置は、放射ストリングを組合せにおいて形成するためにフィルタストリング及びシフタストリングが使用の際に照射軸(Zj)に対して平行である方向に沿って互いに対向するように、ペンシルビーム(Bj)のビーム経路に沿ってシーケンスにおいて配設された少なくとも1つの以上において定義されている動的リッジフィルタ及び少なくとも1つの以上において定義されている動的レンジシフタを有する。
【0026】
また、本発明は、治療ステーションにも関し、これは、
・加速帯電粒子、好ましくはプロトン、のペンシルビーム(Bj)のソースと、
・ターゲット容積(Vt)に向かって加速帯電粒子のペンシルビーム(Bj)を導くためのノズルであって、ノズルが静止状態において留まっているのに伴って、少なくともX軸に沿ってスキャニングするためにペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成された電磁要素を有するノズルと、
・以上において定義されている動的リッジフィルタと、
・以上において定義されている動的レンジシフタと、
・仰向け、うつ伏せ、着座、又は直立位置において患者を受け入れるカウチ又は椅子と、
・治療ステーションの様々なコンポーネントを制御するように構成された1つ又は複数のプロセッサと、
を有し、
この場合に、動的リッジフィルタ(1)及び動的レンジシフタは、以上において定義されているように、成形装置を形成するように構成されている。
【0027】
本発明の治療ステーションの好適な一実施形態において、
・電磁要素は、ノズルが静止状態において留まっているのに伴って更にY軸に沿ってスキャニングするためにペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成されており、
〇成形装置には、フィルタストリング及びシフタストリングが、成形装置がY軸に沿ったペンシルビームとの間のアライメント状態を維持する状態において、一緒に運動するように、Y軸に沿ったペンシルビームの平行運動に追随するように構成された平行運動システムが提供されており、
〇フィルタストリング及びシフタストリングは、Y軸に沿ったペンシルビームとの間のアライメント状態を維持するために、ターゲット容積(Vt)との関係において好ましくは静止状態において留まっている成形装置との関係においてY軸に沿って運動しており、或いは、
・カウチには、成形装置及びフィルタストリング及びシフタストリングが好ましくはターゲット容積との関係において静止状態において留まりつつ、特定の容積(Vj)を対応するペンシルビーム(Bj)とアライメントさせるためにY軸に沿ってカウチを平行運動させるように構成された平行運動システムが提供されており、或いは、
・以上の選択肢の組合せである。
【0028】
1つ又は複数のプロセッサは、好ましくは、
・i番目のスキャニングストリングのペンシルビーム(Bj)のビーム経路が、放射モジュールのシーケンスの対応する放射モジュールを横断し、これにより、ターゲット容積(Vt)を実現する前に、i番目の放射ストリング(32i)を形成するように、予め定義された治療計画に従ってi番目の放射ストリングをもたらすために、X軸に沿って延在するi番目のフィルタストリング及びi番目のシフタストリングを形成するフィルタモジュールのシーケンスをもたらすために、Y軸に沿ってフィルタ行及びシフタ行を運動させ、この場合に、放射モジュールは、照射軸(Z)に沿ってアライメントされたフィルタモジュール及びシフタモジュールによって形成されるように、
・i番目のフィルタストリングの第1フィルタモジュール(12)及びi番目のシフタストリングの第1シフタモジュールによって形成された第1放射モジュールを通じて、且つ、X軸に沿って分散されたスポット(Sj)のシーケンスによって形成されたi番目のスキャニングストリングの第1スポット(Sj)に向かって、ペンシルビーム(Bj)を方向付けするために電磁要素(4)を制御し、スポットは、治療容積(Vt)のプレーン(X,Y)上への投影を表すプレーン(X,Y)上において構成されたスポットのアレイを定義するためにY軸に沿って分散された複数のスキャニングストリング(i、i+1...)内において構成されるように、
・i番目のスキャニングストリングの第1スポット(Sj)を横断するペンシルビーム(Bj)が予め定義された線量(Dj)を供給した後に、電磁要素が、i番目の放射ストリング(32i)を形成する放射モジュールのシーケンスを通じて、且つ、i番目のスキャニングストリングのスポット(Sj)のシーケンスに向かって、i番目のスキャニングストリングのペンシルビーム(Bj)をシーケンシャルに方向付けするように制御されるように、
・i番目のフィルタストリングを形成するすべてのフィルタモジュールについて且つi番目のシフタストリングを形成するすべてのシフタモジュールについて、ペンシルビーム(Bj)がx番目の放射モジュールを横断し且つX軸に沿って次の(x+1)番目の放射モジュールに運動した後に、予め定義された治療に従ってスポット(Sj)の次の(i+1)番目のスキャニングストリングを照射するために必要とされる次の(i+1)番目の放射ストリングのx番目の放射モジュールを照射するために必要とされる放射モジュール(32)をもたらすために、j番目のフィルタ行及びx番目のシフタ行をY軸に沿って運動させるように、
構成されている。
【0029】
本発明の一実施形態において、i番目のスキャニングストリングの最後のスポット(Sj)を横断するペンシルビーム(Bj)が、対応する最後の特定の容積(Vj)内に予め定義された線量(Dj)を供給した後に、1つ又は複数のプロセッサは、
・i番目のスキャニングストリングに対してY軸に沿って隣接する(i+1)番目のスキャニングストリングの第1スポットを通じてペンシルビーム(Bj)を方向付けするために以上において定義された電磁要素又はカウチの平行運動システムを制御するように、且つ、
・(i+1)番目のスキャニングストリング上のスポットについて以上のステップを反復するように、
・予め定義された治療計画に従って線量をいまだ受け取っていないスポットのアレイ(Sj)を形成する複数のスキャニングストリングのすべてについて以上のステップを反復するように、
構成されている。
【0030】
一実施形態において、カウチは、静止状態にあり、且つ、ペンシルビーム(Bj)によって辿られるビーム経路が常にフィルタストリングの対応するフィルタモジュール及びシフタストリングの対応するシフタモジュールと交差することを保証するために、1つ又は複数のプロセッサは、電磁要素を同期化させるように構成されており、且つ、
・成形装置の平行運動システムは、ペンシルビームがY軸に沿って偏向されるのに伴って、成形装置又は放射ストリングも、Y軸に沿って平行運動されることを保証しており、或いは、
・フィルタストリング及びシフタストリングは、Y軸に沿ったペンシルビームとの間のアライメント状態を維持するために、ターゲット容積(Vt)との関係において静止状態において留まる成形装置との関係において、Y軸に沿って運動している。
【0031】
本発明の特性の更に十分な理解を目的として、以下の添付図面との関連において提供されている以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1a】
図1(a)は、治療計画内において定義されているターゲット容積上に線量沈着パターンをマッチングさせるSOBPを定義するためにレンジシフタ及びリッジフィルタを通過した後にターゲット容積を照射するペンシルビームを示す。
【
図1b】
図1(b)は、異なるペンシルビームの位置を定義するプレーンP0上のスポットパターンを示す。
【
図1c】
図1(c)は、
図1(a)において定義されているペンシルビームBi及びBmによって沈着される特定の容積内の線量を定義するSOBPの例を示す。
【
図1d】
図1(d)は、
図1(a)において定義されているペンシルビームBi及びBmによって沈着される特定の容積内の線量を定義するSOBPの例を示す。
【
図2a】
図2(a)は、所与のエネルギーのモノエネルギービームの通常のブラッグピークの周りの深さ線量沈着の概略的な図を示す。横軸は、水中の深さを表している。水中の最大ビームレンジ(W0)は、ブラッグピークの最大値超の且つブラッグピークの最大値の80%に等しいエネルギーに対応する深さとして定義されており、この場合に、W0は、少なくともdj以上でなければならない(dj<W0)。
【
図2b】
図2(b)は、ビームの経路と交差するエネルギーシフトユニットを有する
図2(a)のビームのブラッグピークの深さ線量プロファイルを示す。
【
図2c】
図2(c)は、望ましい形状のSOBPの構造に対する1つ又は複数の拡散ユニットの効果を示す。
【
図2d】
図2(d)は、望ましい形状のSOBPの構造に対する1つ又は複数の拡散ユニットの効果を示す。
【
図2e】
図2(e)は、望ましい形状のSOBPの構造に対する1つ又は複数の拡散ユニットの効果を示す。
【
図3a】
図3(a)は、連続的ペンシルビームによって照射されたスポットのシーケンスの一例を示す。
【
図3b】
図3(b)は、照射のソースとターゲット容積の間において介在している従来技術のモノリシックで製造されたリッジフィルタ及びレンジシフタの一例を示す。
【
図3c】
図3(c)は、交差するガウス分布曲線によって形成された対応する線量沈着分布と共に、X軸に沿ってアライメントされた一連のスポットを連続的に照射するペンシルビームによって得られたSOBPを概略的に示す。
【
図4a】
図4(a)は、本発明による動的リッジフィルタの単一行の斜視図を示しており、この場合に、それぞれは、Y軸に沿ってアライメントされた標準寸法のモジュールの連続によって形成されている。
【
図4b】
図4(b)は、本発明による動的レンジシフタの単一行の斜視図を示しており、この場合に、それぞれは、Y軸に沿ってアライメントされた標準寸法のモジュールの連続によって形成されている。
【
図4c】
図4(c)は、動的成形装置を組合せにおいて形成する
図4(a)及び
図4(b)の動的リッジフィルタ及び動的レンジシフタの単一行の側面図を示す。
【
図5a】
図5(a)は、本発明による動的成形装置を有する照射治療ステーションを示す。
【
図5b】
図5(b)は、本発明による動的成形装置を有する照射治療ステーションを示す。
【
図6a】
図6(a)は、従来技術のモノリシックなリッジフィルタ及びレンジシフタが本発明による動的リッジフィルタ及びレンジシフタによって交換された
図3(b)の例を示す。
図3(c)及び
図6(b)において示されている結果的に得られるSOBPは、同一である。
【
図6b】
図6(b)は、従来技術のモノリシックなリッジフィルタ及びレンジシフタが本発明による動的リッジフィルタ及びレンジシフタによって交換された
図3(c)の例を示す。
図3(c)及び
図6(b)において示されている結果的に得られるSOBPは、同一である。
【
図7a】
図7(a)は、所与のターゲット容積を治療するためのシーケンシャルフィルタストリングを形成するエネルギー拡散ユニットの必要とされるシーケンスを示しており、この場合に、コードA、B...は、
図7(b)において定義されている。
【
図7b】
図7(b)は、所与のターゲット容積を治療するためのシーケンシャルフィルタストリングを形成するエネルギー拡散ユニットの必要とされるシーケンスを示しており、この場合に、コードA、B...は、
図7(b)において定義されている。
【
図7c】
図7(c)は、所与のターゲット容積を治療するためのシーケンシャルシフタストリングを形成する必要とされるシフタモジュールのシーケンスを示しており、この場合に、コードa、b...は、
図7(d)及び
図7(e)において定義されている。
【
図7d】
図7(d)は、
図7(c)において示されているコードa、b...を定義するレンジシフタの実施形態を示す。
図7(d)のレンジシフタは、一定の厚さの別個のモジュールから形成されている。
【
図7e】
図7(e)は、
図7(c)において示されているコードa、b...を定義するレンジシフタの実施形態を示す。
図7(e)のレンジシフタは、連続的スロープを有しており、この場合に、モジュールa、b...の境界は、ペンシルビームの直径によって定義されている。
【
図7f】
図7(f)は、
図7(f)におけるスポット(i、j)に適用されるように組合せ[Ba]によって所与のターゲット容積を治療するためのシーケンシャル放射ストリングを形成するエネルギー拡散ユニット及び動的レンジシフタのシフタモジュールの必要とされるシーケンスを示しており、この場合に、コードAa、Bb...は、
図7(f)において定義されている。
【
図7g】
図7(g)は、
図7(f)におけるスポット(i、j)に適用されるように組合せ[Ba]によって所与のターゲット容積を治療するためのシーケンシャル放射ストリングを形成するエネルギー拡散ユニット及び動的レンジシフタのシフタモジュールの必要とされるシーケンスを示しており、この場合に、コードAa、Bb...は、
図7(f)において定義されている。
【
図8a】
図8(a)は、ペンシルビームが、X軸に対して平行である第1スキャニングストリングに沿って1つのスポットから次のものに連続的に通過するのに伴う行の平行運動を示す。
【
図8b】
図8(b)は、ペンシルビームが、X軸に対して平行である第1スキャニングストリングに沿って1つのスポットから次のものに連続的に通過するのに伴う行の平行運動を示す。
【
図8c】
図8(c)は、ペンシルビームが、X軸に対して平行である第1スキャニングストリングに沿って1つのスポットから次のものに連続的に通過するのに伴う行の平行運動を示す。
【
図8d】
図8(d)は、ペンシルビームが、X軸に対して平行である第1スキャニングストリングに沿って1つのスポットから次のものに連続的に通過するのに伴う行の平行運動を示す。
【
図9a】
図9(a)は、ペンシルビームが、X軸に対して平行である第2スキャニングストリングに沿って1つのスポットから次のものに連続的に通過するのに伴う行の平行運動を示す。
【
図9b】
図9(b)は、ペンシルビームが、X軸に対して平行である第2スキャニングストリングに沿って1つのスポットから次のものに連続的に通過するのに伴う行の平行運動を示す。
【
図9c】
図9(c)は、ペンシルビームが、X軸に対して平行である第2スキャニングストリングに沿って1つのスポットから次のものに連続的に通過するのに伴う行の平行運動を示す。
【
図9d】
図9(d)は、ペンシルビームが、X軸に対して平行である第2スキャニングストリングに沿って1つのスポットから次のものに連続的に通過するのに伴う行の平行運動を示す。
【
図10a】
図10(a)は、リッジフィルタモジュールの実施形態を示す。
【
図10b】
図10(b)は、リッジフィルタモジュールの実施形態を示す。
【
図10c】
図10(c)は、リッジフィルタモジュールの実施形態を示す。
【
図10d】
図10(d)は、リッジフィルタモジュールの実施形態を示す。
【
図10e】
図10(e)は、リッジフィルタモジュールの実施形態を示す。
【
図11a】
図11(a)は、リッジフィルタモジュールの実施形態を示しており、この場合に、エネルギー拡散ユニットは、様々なエネルギー拡散サブユニットの重畳によって形成されている。
【
図11b】
図11(b)は、リッジフィルタモジュールの実施形態を示しており、この場合に、エネルギー拡散ユニットは、様々なエネルギー拡散サブユニットの重畳によって形成されている。
【
図11c】
図11(c)は、リッジフィルタモジュールの実施形態を示しており、この場合に、エネルギー拡散ユニットは、様々なエネルギー拡散サブユニットの重畳によって形成されている。
【
図11d】
図11(d)は、リッジフィルタモジュールの実施形態を示しており、この場合に、エネルギー拡散ユニットは、様々なエネルギー拡散サブユニットの重畳によって形成されている。
【
図12a】
図12(a)は、X軸及びY軸の両方に沿った異なるスポット照射シーケンスを示す。
【
図12b】
図12(b)は、X軸及びY軸の両方に沿った異なるスポット照射シーケンスを示す。
【
図12c】
図12(c)は、X軸及びY軸の両方に沿った異なるスポット照射シーケンスを示す。
【
図13a】
図13(a)は、ノズルがX及びY軸の両方に沿ってペンシルビームをスキャニングするように構成されており且つ成形装置がペンシルビームがY軸に沿ってシフトするのに伴ってペンシルビームとアライメントされたスキャニングストリングを維持するためにY軸に沿って平行運動するように構成されている照射ステーションを概略的に示す。
【
図13b】
図13(b)は、ノズルがX及びY軸の両方に沿ってペンシルビームをスキャニングするように構成されており且つ成形装置がペンシルビームがY軸に沿ってシフトするのに伴ってペンシルビームとアライメントされたスキャニングストリングを維持するためにY軸に沿って平行運動するように構成されている照射ステーションを概略的に示す。
【
図14a】
図14(a)は、ノズルがX及びY軸の両方に沿ってペンシルビームをスキャニングするように構成されており且つ成形装置がペンシルビームがY軸に沿ってシフトするのに伴ってペンシルビームとの間のアライメント状態において維持するようにY軸に沿って放射ストリングを平行運動させるように構成されている照射ステーションを概略的に示す。
【
図14b】
図14(b)は、ノズルがX及びY軸の両方に沿ってペンシルビームをスキャニングするように構成されており且つ成形装置がペンシルビームがY軸に沿ってシフトするのに伴ってペンシルビームとの間のアライメント状態において維持するようにY軸に沿って放射ストリングを平行運動させるように構成されている照射ステーションを概略的に示す。
【
図15a】
図15(a)は、ノズルがX軸に沿ってペンシルビームをスキャニングするように構成されており且つカウチがターゲット容積がペンシルビームによってY軸に沿ってスキャニングされることを許容するためにY軸に沿って平行運動するように構成されている照射ステーションを概略的に示す。
【
図15b】
図15(b)は、ノズルがX軸に沿ってペンシルビームをスキャニングするように構成されており且つカウチがターゲット容積がペンシルビームによってY軸に沿ってスキャニングされることを許容するためにY軸に沿って平行運動するように構成されている照射ステーションを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、異なる形状のターゲット容積(Vt)の治療のために治療計画によって定義された線量沈着パターンにマッチングするペンシルビームのSOBPを成形するために再使用及び再構成され得る動的成形装置(30)に関する。ターゲットエリア(At)は、ターゲット容積を中央照射軸(Z)に対して垂直であるX軸及びY軸によって定義されたプレーンP0上に投影することにより、定義されている。スポット(Sj)のアレイは、
図1(b)、
図3(a)、及び
図12(a)~
図12(c)に示されているように、ターゲットエリア(At)の少なくとも全体をカバーするプレーン(P0)上において分散された状態において、定義されている。本発明の動的成形装置(30)は、動的リッジフィルタ(1)及び/又は動的レンジシフタ(2)を有する。
【0034】
リッジフィルタ(1)
本発明の動的リッジフィルタ(1)は、帯電粒子ペンシルビームによる、好ましくはプロトンペンシルビームによる、放射によって線量沈着ゾーンを成形するように且つペンシルビームスキャニング(PBS)システムによって中央照射軸(Z)から発せられた対応する照射軸(Zj)に沿って伝播するペンシルビーム(Bj)によって印加された線量(Dj)を沈着させるように構成されている。ペンシルビームは、X軸を横断する、好ましくはこれに対して垂直である、Y軸に沿って互いに隣接した状態において分散された特定の容積ストライプを形成するために、X軸に沿った特定の容積(Vj)のシーケンス内に供給されている。特定の容積(Vj)は、組合せにおいて腫瘍細胞を有するターゲット容積(Vt)を定義している。
【0035】
動的リッジフィルタ(1)は、いくつかのエネルギー拡散ユニット(11)を有し、それぞれのエネルギー拡散ユニット(11)は、1つ又は複数のエネルギー拡散ユニット(11)を横断する対応するペンシルビーム(Bj)によって照射軸(Zj)に沿って沈着される線量を拡散させるための対応するエネルギー拡散能力を特徴としている。
【0036】
本発明の要点は、リッジフィルタが、リッジフィルタのトポグラフィが治療計画の要件に従って変化され得るという点において動的であるということである。この結果は、以下のように実現されている。エネルギー拡散ユニット(11)は、フィルタモジュール(12)内において分散されている。それぞれのフィルタモジュール(12)は、1つ又は複数のエネルギー拡散ユニット(11)を支持し、且つ、対応するペンシルビーム(Bj)の断面直径(D100)に適合した中央照射軸(Z)に対して垂直であるエリアを有する。
図4(a)及び
図4(c)に示されているように、フィルタモジュール(12)は、行方向(Y)に沿ってそれぞれが延在する異なるフィルタ行(10)として構成されている。それぞれのフィルタ行(10)は、いくつかの非類似のフィルタモジュール(12)を有し、フィルタ行(10)のそれぞれのフィルタモジュールは、同一のフィルタ行(10)のその他のフィルタモジュール(12)とは異なるエネルギー拡散能力を有する。
【0037】
本発明のリッジフィルタは、動的であり、その理由は、それぞれのフィルタ行が、
図6(a)に示されているように、X軸に沿ってフィルタストリング(12i)を形成するために独立的に変位され得るからである。この構造によれば、フィルタストリングは、特定の容積(Vj)内の線量沈着を成形し、これにより、照射軸(Zj)に沿ってフィルタストリングに対向する特定の容積ストライプを形成するように構成されている。
【0038】
すべてのフィルタ行(10)は、好ましくは、互いに同一であり、且つ、フィルタモジュール(12)の同一の選択を有する。それぞれのモジュールのフィルタストリング(12i)に対する関係は、文字の単語に対する関係に等しい。これらは、異なる「単語」を定義するために異なる構成において組み合わせることができる。
図6(a)及び
図6(b)に示されているように、それぞれのモジュール(12)は、好ましくは、ペンシルビームの直径(D100)と同一の大きさレベルの寸法を有する。
【0039】
エネルギー拡散ユニット(11)
それぞれのフィルタモジュール(12)は、フィルタモジュール(12)のベース上において支持されている1つ又は複数のエネルギー拡散ユニット(11)を有する。
図2(a)及び
図2(b)に示されているように、ハドロンビームの経路上においてエネルギー拡散ユニット(11)を介在させることにより、身体(例えば、患者の水分又は組織)を通じたその伝播距離を短縮するために、そのエネルギーを制御することができる。従って、ノズル(3)から放出されるハドロンビームのエネルギーを変更することなしに、それぞれの粒子のフル線量(Dj)が沈着されるハドロン粒子のブラッグピークの位置を変位させることができる。
図2(c)~
図2(e)は、1つ又は複数のペンシルビームのブラッグピークの位置が、これらをエネルギー拡散ユニット(11)の異なる実施形態に通過させることによって制御され得る方式を示している。ペンシルビーム(Bj)は、直径(D100)を有し、これは、例えば、ペンシルビーム(Bj)の粒子のガウス分布の分散の関数として定義することができる(例えば、
図2(c)~
図2(e)において、D100=4σであり、この場合に、σ
2が、ガウス分布の分散である)。ペンシルビームがエネルギー拡散ユニット(11)を形成する材料の異なる厚さを横断した場合に、一緒にSOBPを形成する多くの異なるブラッグピークが得られる。それぞれのシフトされたペンシルビームの寄与を正確に算出することにより、スムーズなSOBPを得ることができる。
【0040】
図10(b)及び
図10(c)に示されている一実施形態において、エネルギー拡散ユニット(11)は、一般化された円筒形の、好ましくはプリズム形の、形状のスパイクの形態を有することができる。一般化された円筒形の形状は、任意の形状の、好ましくは、但し、必ずしも円形ではない、平坦なベースの境界線を通過する平行線(=母線)によって定義されている。プリズム形の形状は、ここでは、その平坦なベースが多角形である円筒形の形状として定義されている。或いは、この代わりに、
図10(d)及び
図10(e)に示されているように、エネルギー拡散ユニット(11)は、断ち切られた又は断ち切られていない円錐形の形状、好ましくはピラミッド形の形状、を有し得る。円錐形の形状は、頂点を通過する直線により、且つ、任意の形状の、好ましくは、但し、必ずしも円形ではない、平坦なベースの境界線により、定義されている。ピラミッド形の形状は、その平坦なベースが多角形である円錐形の形状である。
【0041】
図5(a)及び
図5(b)に示されているように、ペンシルビーム(Bj)は、電磁要素(4)がX軸のみに沿ってペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成されているのか或いはX及びY軸の両方に沿ってペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成されているのかに応じて、(X,Z)プレーン内のスキャニング三角形の、且つ、そのベースが患者6上の少なくともターゲットエリア(At)を取り囲むスキャニング円錐の、頂点を形成するものとして見なされ得るノズル(3)から離脱している。中央照射軸(Z)は、ノズルの軸方向軸によって定義されている。X及びY軸の両方に沿ったスキャニングのケースにおいては、ペンシルビームは、スキャニングコーン内においてスキャニングすることが可能であり、且つ、従って、ターゲットエリア(At)全体をカバーすることができる。ビームレットが対応するターゲットエリア(At)の全体にわたってスキャニングすることを許容するために腫瘍が大き過ぎる場合には、ターゲットエリア全体をカバーするためにノズルを運動させるステップを含む2つ以上のステージにおいて照射セッションを実行しなければならない。プレーン(P0)までのノズルの距離は、ターゲットエリア(At)の直径よりも格段に大きいことから、ペンシルビーム(Bj)は、中央照射軸(Z)に対してほぼ平行であるものとして近似することが可能であり、但し、これは、スキャニングコーンのアパーチャに起因して厳密に真ではない。但し、このアパーチャは、非常に小さく、且つ、照射軸(Zj)は、中央照射軸(Z)に対してほぼ平行であると見なることができる。この問題は、当業者には周知である。わかりやすさ及び簡潔性を目的として、以下においては、照射軸は、中央照射軸(Z)に対して平行であるものと近似されている。
【0042】
図10(a)に示されている代替実施形態において、エネルギー拡散ユニット(11)は、フィルタモジュール(12)の支持ベース内において貫通する一般化された円筒形又は円錐形の形状のオリフィスの形態を有し得る。それぞれのオリフィスは、支持ベースの表面においてアパーチャ開口部から延在し、且つ、所与の深さに貫通し、これにより、結果的に得られる厚さの支持ベースの材料を残している。上述のスパイクの場合には、オリフィスが、使用の際に対応する照射軸(Zj)に対して平行に延在する空洞の長軸を有するように構成されていることが好ましい。
【0043】
図11(a)~
図11(d)に示されているように、それぞれのフィルタモジュール(12)は、1つ又は複数のエネルギー拡散ユニット(11)を有することが可能であり、このそれぞれは、照射軸(Zj)に対して垂直である異なる断面エリア(Ai)を有する複数の拡散サブユニット(11a~11c)によって形成されている。拡散サブユニット(11a~11c)は、使用の際に照射軸(Zj)に対して平行に延在するように構成されたエネルギー拡散ユニット(11)の長軸に沿って互いの上部において積層されている。異なるエネルギー拡散能力を有する拡散サブユニット(11a~11c)を積層することによって形成されたエネルギー拡散ユニットを使用することにより、対応するSOBPを(特許文献1)において記述されているように定義することができる。
【0044】
動的レンジシフタ(2)
本発明の動的成形装置(30)も、帯電粒子ビームによる、好ましくはプロトンビームによる、照射によって線量沈着ゾーンを成形するように、且つ、ペンシルビームスキャニング(PBS)システムによって中央照射軸(Z)から発せられる対応する照射軸(Zj)に沿って伝播するペンシルビーム(Bj)によって印加される且つX軸を横断する、好ましくはこれに対して垂直である、Y軸に沿って互いに隣接した状態において分散された特定の容積ストライプを形成するためにX軸に沿って特定の容積(Vj)のシーケンス内に供給される線量(Dj)を沈着させるように、構成されたレンジシフタ(2)を含む。特定の容積(Vj)は、組合せにおいて腫瘍細胞を有するターゲット容積(Vt)を定義している。
【0045】
レンジシフタ(2)は、レンジシフタ(2)のエリアにわたって変化する中央照射軸(Z)に沿って計測される材料の厚さを有する。使用の際に、エリアは、好ましくは、平坦であり、且つ、好ましくは、対応する照射軸(Zj)に対して実質的に垂直になるように構成されている。レンジシフト材料の厚さは、厚さを横断する帯電粒子のペンシルビーム(Bj)の吸収エネルギー(ΔE)の対応する量を決定している。
【0046】
本発明の要点は、レンジシフタ(2)が、レンジシフタの形状的厚さが治療計画の要件に従って変更され得るという点において動的であるということである。この結果は、以下のように実現されている。レンジシフタは、
図4(b)に示されているように、シフタ行(20)を形成するために並んだ状態において構成されたシフタモジュール(22)を有する。それぞれのシフタ行(20)は、同一のシフタ行(20)のその他のシフタモジュール(22)とは異なる一定の厚さを有する且つペンシルビーム(Bj)からエネルギーの異なる量(ΔE)を吸収するように構成されたシフタモジュール(22)の選択を有する。
【0047】
図6(a)に示されているように、すべてのシフタ行(20)は、X軸に沿ってシフタストリング(22i)を形成するために独立的に変位させることができる。
図6(b)に示されているように、シフタストリングは、照射軸(Zj)に沿って特定の容積(Vj)内の線量沈着を成形し、これにより、照射軸(Zj)に沿ってシフタストリングに対向する特定の容積ストライプを形成するように構成されている。具体的には、レンジシフタは、線量沈着プロファイルの最も遠い下流端部の形状を定義している。
【0048】
すべてのシフタ行(20)は、好ましくは同一であり、且つ、シフタモジュール(22)の同一の選択を有する。それぞれのシフタモジュールは、ペンシルビーム直径(D100)及びフィルタモジュール(12)と同一の大きさレベルのプレーン(X,Y)上において好ましくは一定の厚さ及び寸法のプレートによって形成されている。
【0049】
動的成形装置(30)及び治療ステーション
図5(a)及び
図5(b)並びに
図6(a)及び
図6(b)に示されているように、ペンシルビーム(Bj)のビーム経路に沿ってシーケンスにおいて配設された少なくとも以上において定義されているリッジフィルタ(1)及び少なくとも以上において定義されている動的レンジシフタ(2)の組合せが動的成形装置(30)を形成している。動的リッジフィルタ(1)及びレンジシフタ(2)は、フィルタストリング(12i)及びシフタストリング(22i)が、組合せにおいて放射ストリング(32i)を形成するために使用の際に照射軸(Zj)と平行である方向に沿って互いに対向するように、重畳されている。これは、
図6(a)においては、成形されたフィルタストリング(12i)及びシフタストリング(22i)によって示されている。
【0050】
リッジフィルタ(1)は、粒子フロー方向との関係においてレンジシフタ(2)の上流又は下流において特別な配慮を伴うことなしに位置決めすることができる。フィルタ行(10)及びシフタ行(20)は、治療計画において定義されている対応する特定の容積ストライプ上に線量沈着パターンをマッチングさせる必要とされている放射ストリング(32i)を定義するためにX軸に沿ってアライメントされた状態にフィルタモジュール(12)及びシフタモジュール(22)の正しいシーケンスを持ってくるように、Y軸に沿って平行運動させなければならない。フィルタ行(10)及びシフタ行(20)は、治療計画において定義されているように、Y軸に沿って第1のものに隣接している次の対応する特定の容積ストライプ上に線量沈着パターンをマッチングさせる必要とされている放射ストリング(32i)を定義するために再度平行運動させなければならない。
【0051】
また、本発明は、帯電粒子ビームによる、好ましくはプロトンビームによる、放射によって線量沈着ゾーンを成形するための、且つ、ペンシルビームスキャニング(PBS)システムによって中央照射軸(Z)から発せられる対応する照射軸(Zj)に沿って伝播するペンシルビーム(Bj)によって印加された且つX軸を横断する、好ましくはこれに対して垂直である、Y軸に沿って互いに隣接するように分散された特定の容積ストライプを形成するためにX軸に沿って特定の容積(Vj)のシーケンス内に供給される線量を沈着するための、治療ステーションにも関し、この場合に、特定の容積(Vj)は、組合せにおいて腫瘍細胞を有するターゲット容積(Vt)を定義している。
図5(a)及び
図5(b)に示されているように、治療装置は、
・加速された帯電粒子の、好ましくはプロトンの、ペンシルビーム(Bj)のソース、及び、
・ターゲット容積(Vt)に向かって加速帯電粒子のペンシルビーム(Bj)を導くためのノズル(3)であって、ノズルが静止状態において留まっているのに伴って少なくともX軸に沿ってスキャニングするためにペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成された電磁要素(4)を有するノズル、及び、
・患者(6)を受け入れるためのカウチ(5)、及び、
・本発明による動的リッジフィルタ、及び/又は、
・本発明によるレンジシフタ(2)、及び、
・治療ステーションの様々なコンポーネントを制御するように構成された1つ又は複数のプロセッサ、
を有する。
【0052】
好ましくは、治療ステーションは、本発明による動的リッジフィルタ(1)及び動的レンジシフタ(2)の両方を有し、且つ、フィルタストリング(12i)及びシフタストリング(22i)が、組合せにおいて放射ストリング(32i)を形成するために、使用の際に照射軸(Zj)に対して平行である方向に沿って互いに対向するように、アライメントされている。
【0053】
治療ステーションの使用
PBSシステムは、所与のシーケンスにおいてそれぞれのスポット(Sj)にわたってペンシルビーム(Bj)を向けるように構成されている。スポットシーケンスは、好ましくは、Y軸に沿って分散されたi=1~m個の放射ストリング(32i)にわたって反復されたX軸に沿った一連のスキャニングから構成されている。ノズルを運動させることは、最も時間を所要することから、ノズル(3)が静止状態において留まる状態において放射シーケンスの全体を実行することが好ましい。
図5(a)及び
図5(b)並びに
図13(a)及び
図13(b)~
図15(a)及び
図15(b)に示されているように、ノズル(3)には、少なくともX軸に沿って、好ましくはX軸及びY軸の両方に沿って、ペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成された電磁要素(4)が提供されている。
【0054】
本発明による放射ステーションによって放射治療セッションを実行するために、本明細書において記述されている
図7(a)、
図7(c)、
図7(f)、
図8(a)~
図8(d)及び
図9(a)~
図9(d)に示されているアクションを制御するために、1つ又は複数のプロセッサを構成することができる。
【0055】
図7(a)は、Y軸に沿った異なる位置(i=1~...)用の一連のフィルタストリング(12i)と共に、ターゲットエリア(At)をカバーするスポットパターンの一例を示している。文字A、B、C、Dは、
図7(b)において定義されている特定のフィルタモジュール(12)を意味している。
図7(c)は、Y軸に沿った異なる位置(i=1~...)用の一連のシフタストリング(22i)と共に、
図7(a)におけると同一のスポットパターンを示しており、この場合に、文字a、b、c、...は、
図7(d)及び
図7(e)において定義されている特定のシフタモジュール(22)を意味している。
図4(b)、
図4(c)、
図6(a)、及び
図7(d)に示されているように、シフタ行(20)は、好ましくは、それぞれが実質的に一定の厚さの別個のシフタモジュール(22)から形成されている。代替実施形態において、シフタ行(20)は、
図7(e)に示されているように連続的なスロープを有することができる。シフタモジュールのサイズは、
図7(g)から推定され得るように、ペンシルビーム(Bj)の直径によって定義されている。放射ストリング(32i)は、
図7(f)に示されているように、フィルタストリング(12i)及びシフタストリング(22i)の組合せによって形成されている。放射モジュール(32)は、必要とされているフィルタモジュール(12)及びシフタモジュール(22)を対応するペンシルビーム(Bj)とアライメントさせるために、Y軸に沿って動的成形装置(30)のそれぞれのフィルタ行(10)及びシフタ行(20)を摺動させることにより、得られている。
図7(a)及び
図7(c)において、フィルタ行(10)のモジュールは、文字A、B、C、Dによって識別されており、且つ、シフタ行のものは、文字a、b、c、dによって識別されている。放射モジュール(32)は、合計で16個の組合せAa、Ab、Ac、Ad、Ba、Bb、Bc...を有するフィルタモジュール(12)及びシフタモジュール(22)の任意の組合せによって形成することができる。例えば、
図7(g)は、
図7(f)における(i,j)において配置されたスポット(Sj)において必要とされている放射モジュール(32=[Ba])をもたらすために、フィルタモジュール(12=B)をシフタモジュール(22=a)とアライメントするためのフィルタ行(10)及びシフタ行(20)のアライメントを示している。
【0056】
図8(a)に示されているように、フィルタ行(10)及びシフタ行(20)は、
図7(a)、
図7(c)、及び
図7(f)において示されている予め定義された治療計画に従ってX軸に沿ってi番目のフィルタストリング(12i)及びi番目のシフタストリング(22i)から構成されたi番目の放射ストリング(32i)を組合せにおいて形成するフィルタモジュール(12)及びシフタモジュール(22)のシーケンスをもたらすためにY軸に沿って独立的に運動させられている。i番目のスキャニングストリングのペンシルビーム(Bj)のビーム経路は、ターゲット容積(Vt)を実現する前に、i番目の放射ストリング(32i)の対応する放射モジュール(32)を順番に横断している。これは、
図7(f)におけるラインi、i+1、i+2...において定義された任意の1つのシーケンスに対応している。
【0057】
電磁要素(4)は、i番目のフィルタストリング(12i)の第1フィルタモジュール(12)を通じて且つi番目のシフタストリング(22i)の第1シフタモジュール(22)を通じて、且つ、X軸に沿って分散されたスポット(Sj)のシーケンスによって形成されたi番目のスキャニングストリングの第1スポット(Sj)に向かって、ペンシルビーム(Bj)を方向付けるように制御されている。i番目のスキャニングストリングの第1スポット(Sj)を横断するペンシルビーム(Bj)が予め定義された線量(Dj)を供給した後に、電磁要素(4)は、i番目のフィルタストリングを形成するフィルタモジュール(12)のシーケンスのそれぞれのものを通じて、且つ、i番目のシフタストリングを形成するシフタモジュール(22)のシーケンスのそれぞれのものを通じて、且つ、i番目のスキャニングストリングのスポット(Sj)のシーケンスに向かって、i番目のスキャニングストリングのペンシルビーム(Bj)を順番に方向付けするように制御されている。
図8(a)に示されているように、放射シーケンスは、X軸に沿って分散されたスポットのi番目のスキャニングストリング(i)上のj番目のスポット(Sj)に対してj番目のペンシルビーム(Bj)を向けることにより、開始している。フィルタストリング(12i)及びシフタストリング(22i)の組合せによって形成された放射ストリング(32i)は、
図7(f)に示されているi番目のスキャニングストリング(32i)=[Ba]-[Cb]-[Db]-[Aa]によって定義されている。j番目のペンシルビーム(Bj)は、j番目のスポット(Sj)と関連する特定の容積(vi)上に沈着されるように線量(Dj)の第1の予め定義された割合を沈着させるために放射モジュール(12)=[Ba]を通過している。
図8(b)~
図8(d)に示されているように、電磁要素(4)は、X軸に沿ってj番目のスポット(Sj)に隣接する(j+1)番目のスポット(S(j+1))に向かってペンシルビームを偏向させるように起動されている。(j+1)番目のペンシルビームが放射モジュール(32)=[Cb]を通過するのに伴って、線量(Dj)の第1の予め定義された割合が、(j+1)番目のスポット(Sj)と関連する特定の容積(vi)上に沈着されている。この際に、第1スポット(Sj)に対向している以前のフィルタ行(12)及びシフタ行(22)は、Y軸に沿ってi番目のスキャニングストリングに隣接した(i+1)番目のスキャニングストリングの第1スポットのために
図7(f)において定義されている放射モジュール(32)=[Cb]を持ってくるために、平行運動させられている。
【0058】
これらの動作は、(j+3)番目のスポット(S(j+3))と関連する特定の容積(vi)上に沈着されるように線量(Dj)の第1の予め定義された割合を沈着させるために、その最後のスポット(S(j+3))が(j+3)番目のペンシルビーム(B(j+3))によって照射される時点まで、i番目のフィルタストリング(12i)のそれぞれのスポットについて反復されている。毎回、i番目のキャニングストリングのスポットが照射された後に、最後の照射されたスポットに対向するフィルタ行(10)及びシフタ行(20)は、
図7(f)において定義されているように放射モジュール(32)を持ってくるために、平行運動させられている。
【0059】
次のペンシルビームが、スポットの次のスキャニングストリング(i+1)の第1スポットに向かって方向付けされている。これは、
図13(a)及び
図13(b)~
図15(a)及び
図15(b)を参照して後述する異なる方式において実現することができる。以前のステップは、
図9(a)~
図9(d)に示されているように(i+1)番目のストリングに沿ってアライメントされたスポットのすべてについて反復されている。そして、これは、X軸に沿って延在する且つY軸に沿って分散されたすべてのスキャニングストリング(i、i+1...)に沿ってアライメントされたすべてのスポットが照射される時点まで、同様に継続している。対応するスポットが照射されるや否や、次のスキャニングストリングの対応するスポットによって必要とされているその個々の位置にフィルタ行(10)(並びに、シフタ行(20))を運動させることは、成形装置(30)が、次のスキャニングストリングのスポットにおいて向けられるペンシルビームを成形するために必要とされる放射ストリング用の放射ストリング(32i)を順番に変更しているという点において、有利である。この結果、(i+1)番目のスキャニングストリングに沿ってスキャニングを開始する前に、新しい放射ストリングが形成される時点まで、加速粒子のフローを中断させる必要がない。これは、i番目の放射ストリング[Ba]-[Cb]-[Db]-[Aa]を示す
図8(a)~
図8(d)を(i+1)番目のスキャニングストリングに沿ってターゲット容積を照射するための準備が完了している
図7(f)に定義されている(i+1)番目のスキャニングストリング[Cb]-[Ac]-[Cd]-[Bb]を示す
図9(a)~
図9(d)と比較することにより、示されている。i番目のスキャニングストリングのj番目のスポット(Sj)が放射ストリング(32)=[Aa]を通じて照射された際に、1つ又は複数の処理ユニットは、
図7(f)において定義されているように、(i+1)番目のスキャニングストリングのj番目のスポットについて必要とされている放射モジュール(32)=[Cb]をもたらすためにフィルタ及びシフトモジュール(12、22)をアライメントするように、ビーム(Bj)を(j+1)番目のスポット(S(j+1))に運動させるために電磁要素(4)を制御し、且つ、Y軸に沿ってx番目のフィルタ行(10)及びx番目のシフタ行(20)を運動させるために動的成形装置(30)を制御している。同一のプロセスは、線量がi番目のスキャニングストリングのそれぞれの連続的スポット(Sj、S(j+1)、...)と関連する特定の容積内において沈着された後に適用されている。
【0060】
i番目から(i+1)番目のスキャニングストリングへの通過
図12(a)~
図12(c)は、スポット照射シーケンスの3つの可能な実施形態を示しており、これらのすべては、少なくともX軸に沿った成分を有するスキャニングを含む。
図12(a)は、X軸に沿ったスキャニングが完了するのに伴って、ペンシルビームが、ドキュメントを読み取った際よりも1ストリングだけ下方の初期位置に戻されている読取りシーケンスを示している。或いは、この代わりに、
図12(b)は、X軸に沿ったスキャニングが完了するのに伴って、ペンシルビームが、次のストリング上において配置された最も近接したスポットにジャンプしているスカーフシーケンスを示している。読取りシーケンス又はスカーフシーケンスの間における選択は、ターゲット容積の形状、超高線量沈着レートにおいて照射されるスポットの位置、加速粒子のソースの性能、スキャニングシステムの性能、及びこれらに類似したものを含む本発明の範囲を超えて存在する多くのパラメータに依存している。
【0061】
図12(c)は、患者(6)を支持しているカウチ(5)がY軸に沿って平行運動した際に得られる読取りシーケンスを示している。Xレート(vx)におけるX軸に沿ったペンシルビームのスキャニングとカウチレート(v5、この場合に、vx>>v5である)におけるY軸に沿ったカウチ(5)及び患者(6)の平行運動の組合せは、結果的に得られるスキャニングレート(vs=(vx
2+v5
2)
1/2)におけるスキャニング方向(xs)をもたらしている。従って、
図12(c)に示されているX軸との間においてスキャニング方向(xs)によって形成される角度は、大いに誇張されている。所与のスキャニングストリングの最後のスポットから次のスキャニングストリングの第1スポットへのリターンレート(vr)は、Xレート(vx)よりも格段に大きいことに留意されたい。
【0062】
X軸に対して平行であるスキャニングストリングに沿ったスポットからスポットへのスキャニングは、ノズル(3)のレベルにおいて電磁要素(4)によって制御されている。i番目のスキャニングストリングから(i+1)番目のスキャニングストリングへの通過は、
図13(a)及び
図13(b)~
図15(a)及び
図15(b)に示されている様々なる方法で実行することができる。
【0063】
また、
図13(a)及び
図13(b)並びに
図14(a)及び
図14(b)に示されている第1実施形態において、ペンシルビーム(Bj)によるターゲットエリア(At)全体のスキャニングを許容するために、電磁要素(4)は、ノズルが静止状態において留まっているのに伴ってY軸に沿ってもスキャニングするためにペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成されている。従来技術のリッジフィルタ及びレンジシフタ(即ち、非動的なもの)は、X及びY軸の両方に沿ってスキャニングするのに伴ってペンシルビーム(Bj)を遮るように設計されている。これは、本発明の動的リッジフィルタ(1)、レンジシフタ(2)、及び結果的に得られる成形装置(30)の場合には、当て嵌まらず、その理由は、放射ストリング(32i)に沿ってアライメントされたモジュールのみが、治療計画に従ってSOBPをもたらすように構成されているからである。ペンシルビームがY軸に沿ってシフトするのに伴って、これらは、もはや放射ストリング(32i)に対向してはいない。ペンシルビームが、ターゲット容積全体にわたって定義されたSOBPをもたらすためにモジュール(12、22)の正しい構成を有する放射ストリングを通じて動的成形装置を横断することを保証するために、2つの解決策が提案されている。成形装置(30)全体が放射ストリング(32i)及びペンシルビーム(Bj)と一緒にY軸に沿って運動するというもの、或いは、放射ストリング(32i)が、ペンシルビーム(Bj)と共にY軸に沿って成形装置(32)との関係において運動するというものである。
【0064】
図13(a)及び
図13(b)は、第1スキャニングストリング(
図13(a)のi=1)及び最後のスキャニングストリング(
図13(b)におけるi=m)における2つのスキャニングシーケンスを示している。電磁要素(4)は、第1(i=1)から最後(i=m)のスキャニングストリングにペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成されている。ペンシルビームがY軸に沿って分散されたすべてのスキャニングストリングについて放射ストリング(32i)を横断することを保証するために、成形装置全体(30)は、ペンシルビーム(Bj)と共にY軸に沿って運動することができる。フィルタ行(10)及びシフタ行(20)は、ペンシルビーム(Bj)がペンシルビーム(Bj)と常にアライメントされている放射ストリング(32i)を横断するのに伴ってモジュール(12、22)の正しい構成が存在することを保証するために独立的に運動させることができる。この解決策は、極めて簡単なものであり、且つ、成形装置(30)及びペンシルビーム(Bj)のY軸に沿った平行運動を調整するために処理パワーをほとんど必要としてはいない。
【0065】
図14(a)及び
図14(b)に示されている代替解決策は、
図13(a)及び
図13(b)と同様に、第1スキャニングストリング(
図14(a)におけるi=1)及び最後のスキャニングストリング(
図14(b)におけるi=m)における2つのスキャニングシーケンスを示している。電磁要素(4)は、第1(i=1)から最後(i=m)のスキャニングストリングにペンシルビーム(Bj)を偏向させるように構成されている。ペンシルビームがY軸に沿って分散されたすべてのスキャニングストリングについて放射ストリング(32i)を横断することを保証するために、(
図13~
図15において矩形ウィンドウによって示されている)放射ストリング(32i)は、新しいスキャニングストリングに沿ったペンシルビーム(Bj)の偏向と共に、Y軸に沿った成形装置との関係において運動している。これは、実現が極めて簡単であり、且つ、Y軸に沿ってペンシルビームと共に運動する放射ストリングに沿ってモジュールの正しい構成をアライメントさせるようにフィルタ/シフタ行(10、20)の運動を調整するために、処理パワーをほとんど必要としてはいない。
【0066】
図15(a)及び
図15(b)に示されている代替実施形態においては、電磁要素(4)は、Y軸に沿ってペンシルビーム(Bj)を偏向させてはいない。成形装置(30)は運動していない。但し、患者(6)を支持しているカウチ(5)には、特定の容積(Vj)を対応するペンシルビーム(Bj)とアライメントさせるためにY軸に沿ってカウチを平行運動させるように構成された平行運動システムが提供されている。カウチ(5)の運動は、カウチレート(v5)において連続的なものであることが可能であり、或いは、これは、シーケンシャルなものであることも可能であり、これにより、ペンシルビームがY軸に沿って偏向された際にのみ運動している。カウチは、カウチレート(v5)において連続的に運動し、これにより、例えば、
図13(c)において示されているように、スキャニングシーケンスをもたらしていることが好ましい。
【0067】
また、
図13(a)及び
図13(b)~
図15(a)及び
図15(b)に示されている解決策の組合せは、ペンシルビームが全体ターゲットエリア(At)をカバーするそれぞれのスポット(Sj)においてモジュール(12、22)の正しいシーケンスを横断することを保証することを想定することもできる。
【0068】
本発明の利点
本発明の動的成形装置(30)は、それぞれ、いくつかのフィルタ行(10)及びいくつかのシフタ行を有する動的リッジフィルタ及び動的レンジシフタを有する。それぞれのフィルタ行は、Y軸に対して平行であるフィルタ行の長さに沿って分散された異なるエネルギー拡散プロパティのフィルタモジュール(12)の同一の選択から構成されている。同様に、それぞれのシフタ行(20)も、Y軸に対して平行であるシフタ行の長さに沿って分散された異なるレンジシフトプロパティのシフタモジュール(22)の同一の選択から構成されている。
【0069】
フィルタ行及びシフタ行は、対応する照射軸(Z)に沿ってアライメントされたフィルタモジュール及びシフタモジュールによって形成された放射モジュール(32)をもたらすために、相互に独立的にY軸に沿って平行運動させることができる。ペンシルビームのスキャニングの際にフィルタ行及びシフタ行を平行運動させることにより、動的成形装置(30)は、予め定義された治療計画に対して動的に適合している。
【0070】
本発明は、従来技術の成形装置との比較において非常に有利であり、その理由は、本発明による単一の動的成形装置(30)は、異なる患者を治療するために、或いは、異なる放射セッションに対応する異なる時点において同一の患者を治療するために、複数回にわたって使用され得るからである。本発明の動的成形装置は、異なる形状のターゲット容積の治療と関連する治療計画にマッチングするように適合させることができる。また、これは、異なる性能の粒子加速器と共に使用されるように適合させることもできる。それぞれの放射セッションの前に新しいリッジフィルタ及び新しいレンジシフタを製造する必要がないということは、大きな時間節約要因である。
【符号の説明】
【0071】
1 動的リッジフィルタ
2 動的レンジシフタ
3 ノズル
4 電磁要素
5 カウチ
6 患者
10 フィルタ行
11 エネルギー劣化要素
11a~11c 拡散サブユニット
12 フィルタモジュール
12i(i=1~k) フィルタストリング
20 シフタ行
22 シフタモジュール
22i(i=1~k) シフタストリング
30 成形装置
32 放射モジュール
32i(i=1~k) 放射ストリング
Pz ビーム
Si.j スポット
SOBP 拡大ブラッグピーク
Vt ターゲット容積
X スキャニング方向を定義するX軸
Xs ストライプ方向
Y 行方向を定義するY軸
Ys 列方向
Z プレーン(X,Y)に垂直の方向
Zj 照射軸
【外国語明細書】