(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012017
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】電動式作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240118BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
E02F9/16 C
E02F9/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140945
(22)【出願日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】22315154
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル カートン
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
2D015EC01
(57)【要約】
【課題】蓄電装置、冷却装置、および電動モータをコンパクトに配置して、小型の電動式作業機械に好適なレイアウトを実現する。
【解決手段】電動式作業機械としての油圧ショベルは、電動モータと、電動モータを駆動するための電力を蓄える蓄電装置と、電動モータによって駆動され、作動油を吐出する油圧ポンプと、冷媒が通る電気機器と、作動油および冷媒の少なくとも一方を冷却する冷却装置と、を備える。電動モータおよび冷却装置は、蓄電装置の側方に配置される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータを駆動するための電力を蓄える蓄電装置と、
前記電動モータによって駆動され、作動油を吐出する油圧ポンプと、
冷媒が通る電気機器と、を備えた電動式作業機械において、
前記作動油および前記冷媒の少なくとも一方を冷却する冷却装置をさらに備え、
前記電動モータおよび前記冷却装置は、前記蓄電装置の側方に配置される、電動式作業機械。
【請求項2】
前記電動モータおよび前記冷却装置は、前記蓄電装置の側方で前後方向に並べて配置される、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項3】
前記冷却装置は、
前記冷媒および前記作動油の少なくとも一方を熱交換により冷却する熱交換器と、
前記熱交換器を横切る風を発生させるファンと、
通気口を有するファンシュラウドと、を含み、
前記ファンシュラウドは、前記熱交換器に対して前記蓄電装置とは反対側に位置する、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項4】
前記電気機器は、前記電動モータを含む、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項5】
前記電気機器は、前記蓄電装置から前記電力が供給される電装品を含む、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項6】
前記電装品は、前記蓄電装置と前記冷却装置との間に配置される、請求項5に記載の電動式作業機械。
【請求項7】
前記電装品は、前記蓄電装置の側方で、前記電動モータと前後方向に並べて配置される、請求項5に記載の電動式作業機械。
【請求項8】
前記電装品は、インバータを含む、請求項5に記載の電動式作業機械。
【請求項9】
前記作動油を収容する作動油タンクをさらに備え、
前記作動油タンクは、前記電動モータと前後方向に並べて配置される、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項10】
前記作動油タンクは、前記電動モータに対して前記冷却装置とは反対側に位置する、請求項9に記載の電動式作業機械。
【請求項11】
前記作動油タンクは、前記油圧ポンプと前後方向に並べて配置される、請求項9に記載の電動式作業機械。
【請求項12】
前記作動油タンクは、前記油圧ポンプに対して前記冷却装置とは反対側に位置する、請求項11に記載の電動式作業機械。
【請求項13】
前記電動モータと前記油圧ポンプは、上下に並んで配置される、請求項1から12のいずれかに記載の電動式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータを備えた電動式作業機械が提案されている。例えば特許文献1では、電動モータを備えたバックホーが開示されている。上記バックホーでは、バッテリ(蓄電装置)の下方に、油圧ポンプ、電動モータ、およびこれらを冷却(空冷)するファンを配置するレイアウトを採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動式作業機械が十分な作業性能を発揮するためには、熱交換器を含む冷却装置を配置して、電気機器(例えば電動モータ)を通る冷媒、油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給される作動油の少なくとも一方を冷却することが望ましい。このとき、小型の電動式作業機械では、機関室内が狭く、各部材の配置スペースを広く確保することが困難である。このため、上記冷却装置を配置する場合には、上記冷却装置と他の部材(例えば蓄電装置、電動モータ)とをできるだけコンパクトに配置することが望ましい。
【0005】
この点、特許文献1のように、蓄電装置の下方のスペースに電動モータ等を配置する構成では、上記スペースが狭いため、このスペースに上記冷却装置をさらに配置することが困難である。このため、電動モータとは離れた位置に冷却装置を配置することが必要となり、小型の電動式作業機械に好適なコンパクトなレイアウトを実現することが困難となる。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、蓄電装置、冷却装置、および電動モータをコンパクトに配置して、小型の電動式作業機械に好適なレイアウトを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電動式作業機械は、電動モータと、前記電動モータを駆動するための電力を蓄える蓄電装置と、前記電動モータによって駆動され、作動油を吐出する油圧ポンプと、冷媒が通る電気機器と、を備えた電動式作業機械において、前記作動油および前記冷媒の少なくとも一方を冷却する冷却装置をさらに備え、前記電動モータおよび前記冷却装置は、前記蓄電装置の側方に配置される。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、蓄電装置、冷却装置、および電動モータをコンパクトに配置して、小型の電動式作業機械に好適なレイアウトを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る電動式作業機械の一例である油圧ショベルの概略の構成を示す側面図である。
【
図2】上記油圧ショベルの電気系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図3】上記油圧ショベルの機関室内の全体の構成を示す斜視図である。
【
図4】上記機関室内の主要部の構成を示す斜視図である。
【
図5】電動モータを支持した状態でのモータ支持部の斜視図である。
【
図7】油圧ポンプと上記モータ支持部との位置関係を示す斜視図である。
【
図8】上記機関室内の上記主要部の構成を示す平面図である。
【
図9】上記主要部の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0011】
〔1.電動式作業機械〕
図1は、本実施形態の電動式作業機械の一例である油圧ショベル(電動ショベル)1の概略の構成を示す側面図である。油圧ショベル1は、下部走行体2と、作業機3と、上部旋回体4と、を備える。
【0012】
ここで、方向を以下のように定義する。上部旋回体4の運転座席41aに着座したオペレータ(操縦者、運転手)が正面を向く方向を前方とし、その逆方向を後方とする。したがって、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態(旋回角度0°)では、上部旋回体4の前後方向は、下部走行体2が前後進する方向と一致する。また、運転座席41aに着座したオペレータから見て左側を「左」とし、右側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。図面では、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態で油圧ショベル1を示す。また、図面では、必要に応じて、前方を「F」、後方を「B」、右方を「R」、左方を「L」、上方を「U」、下方を「D」の記号で示す。
【0013】
下部走行体2は、左右一対のクローラ21と、左右一対の走行モータ22と、を備える。各走行モータ22は、油圧モータである。左右の走行モータ22が、左右のクローラ21をそれぞれ駆動することにより、油圧ショベル1を前後進させることができる。下部走行体2には、整地作業を行うためのブレード23と、ブレードシリンダ23aとが設けられる。ブレードシリンダ23aは、ブレード23を上下方向に回動させる油圧シリンダである。
【0014】
作業機3は、ブーム31、アーム32、およびバケット33を備える。ブーム31、アーム32、およびバケット33を独立して駆動することにより、土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0015】
ブーム31、アーム32、およびバケット33はそれぞれ、不図示のブームシリンダ、アームシリンダ、およびバケットシリンダによって回動される。ブームシリンダ、アームシリンダ、およびバケットシリンダは、油圧シリンダにより構成される。
【0016】
ブーム31の基端部、すなわち、ブーム31におけるアーム32との連結側とは反対側の端部は、ブラケット34を介して旋回フレーム42の先端部42aにスイング可能に連結される。すなわち、本実施形態の油圧ショベル1は、先端部42aを起点としてブーム31が左右にスイングするブームスイング機能を有する。
【0017】
上部旋回体4は、下部走行体2の上方に位置し、下部走行体2に対して旋回ベアリング(不図示)を介して旋回可能に設けられる。上部旋回体4には、操縦部41、旋回フレーム42(機体フレーム)、旋回モータ43、機関室44等が配置される。上部旋回体4は、油圧モータである旋回モータ43の駆動により、旋回ベアリングを介して旋回する。
【0018】
上部旋回体4には、油圧ポンプ71(
図2参照)が配置される。油圧ポンプ71は、機関室44の内部の電動モータ61(
図2参照)によって駆動される。油圧ポンプ71は、油圧モータ(例えば左右の走行モータ22、旋回モータ43)、および油圧シリンダ(例えばブレードシリンダ23a、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ)に作動油(圧油)を供給する。油圧ポンプ71から作動油が供給されて駆動される油圧モータおよび油圧シリンダを、まとめて油圧アクチュエータ73(
図2参照)と呼ぶ。
【0019】
操縦部41には、運転座席41aが配置される。運転座席41aの周囲には、各種のレバー41bが配置される。オペレータが運転座席41aに着座してレバー41bを操作することにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。これにより、下部走行体2の走行、ブレード23による整地作業、作業機3による掘削作業、上部旋回体4の旋回、等を行うことができる。
【0020】
上部旋回体4には、バッテリユニット53が配置される。すなわち、油圧ショベル1は、バッテリユニット53を備える。バッテリユニット53は、例えばリチウムイオンバッテリユニットで構成され、電動モータ61を駆動するための電力を蓄える蓄電装置である。バッテリユニット53は、複数のバッテリセルをユニット化して構成されてもよいし、単一のバッテリセルで構成されてもよい。また、上部旋回体4の後部には、給電口50(
図3参照)が設けられる。給電口50と、外部電源である商用電源51は、給電ケーブル52を介して接続される。これにより、バッテリユニット53を充電することができる。
【0021】
上部旋回体4には、鉛バッテリ54がさらに設けられる。鉛バッテリ54は、低電圧(例えば12V)の直流電圧を出力する。鉛バッテリ54からの出力は、制御電圧として例えばシステムコントローラ67(
図2参照)、ファン92(
図4参照)の駆動部、などに供給される。
【0022】
油圧ショベル1は、油圧アクチュエータ73などの油圧機器と、電力で駆動されるアクチュエータとを併用した構成であってもよい。電力で駆動されるアクチュエータとしては、例えば、電動走行モータ、電動シリンダ、電動旋回モータがある。
【0023】
〔2.電気系および油圧系の構成〕
図2は、油圧ショベル1の電気系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。油圧ショベル1は、電動モータ61と、充電器62と、インバータ63と、PDU(Power Distribution Unit)64と、ジャンクションボックス65と、DC-DCコンバータ66と、システムコントローラ67と、を備える。システムコントローラ67は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる電子制御ユニットで構成され、油圧ショベル1の各部の電気的な制御を行う。
【0024】
電動モータ61は、バッテリユニット53から、ジャンクションボックス65およびインバータ63を介して供給される電力により駆動される。電動モータ61は、永久磁石モータまたは誘導モータで構成される。電動モータ61は、旋回フレーム42上に、後述するモータ支持部100(
図3等参照)によって支持される。
【0025】
充電器62(給電器とも呼ばれる)は、
図1で示した商用電源51から給電ケーブル52を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換する。インバータ63は、バッテリユニット53から供給される直流電圧を、交流電圧に変換して電動モータ61に供給する。これにより、電動モータ61が回転する。インバータ63から電動モータ61への交流電圧(電流)の供給は、システムコントローラ67から出力される回転指令に基づいて行われる。
【0026】
PDU64は、内部のバッテリリレーを制御してバッテリユニット53の入出力を制御するバッテリ制御ユニットである。PDU64は、バッテリユニット53の上方に配置される(
図4参照)。
【0027】
ジャンクションボックス65は、充電器リレー、インバータリレー、ヒューズ等を含んで構成される。上記した充電器62から出力される電圧は、ジャンクションボックス65およびPDU64を介してバッテリユニット53に供給される。また、バッテリユニット53から出力される電圧は、PDU64およびジャンクションボックス65を介してインバータ63に供給される。
【0028】
DC-DCコンバータ66は、バッテリユニット53からジャンクションボックス65を介して供給される高電圧(例えば300V)の直流電圧を、低電圧(例えば12V)に降圧する。DC-DCコンバータ66から出力される電圧は、鉛バッテリ54からの出力と同様に、システムコントローラ67、ファン92の駆動部、などに供給される。なお、DC-DCコンバータ66は、PDU64内に配置されてもよい。
【0029】
電動モータ61の回転軸(出力軸)には、複数の油圧ポンプ71が接続される。複数の油圧ポンプ71は、可変容量型ポンプおよび固定容量型ポンプを含む。
図2では、例として油圧ポンプ71を1つのみ図示している。各油圧ポンプ71は、作動油タンク74と接続されている。電動モータ61によって油圧ポンプ71が駆動されると、作動油タンク74内の作動油が、油圧ポンプ71およびコントロールバルブ72を介して油圧アクチュエータ73に供給される。これにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。コントロールバルブ72は、油圧ポンプ71から油圧アクチュエータ73に供給される作動油の流れ方向および流量を制御する方向切替弁である。
【0030】
このように、油圧ショベル1は、電動モータ61によって駆動され、作動油を吐出する油圧ポンプ71を備える。また、油圧ショベル1は、油圧ポンプ71から供給される作動油によって駆動される油圧アクチュエータ73を備える。さらに、油圧ショベル1は、作動油を収容する作動油タンク74を備える。
【0031】
上記したバッテリユニット53、電動モータ61、インバータ63などの電気機器ELは、後述するラジエータ91a(
図3参照)と配管RPを介して接続される。配管RP内には、ラジエータ91aから供給される冷媒が流れる。そして、配管RP内を流れる冷媒は、電気機器ELの内部を通る。したがって、ラジエータ91aにおいて熱交換により冷媒を冷却し、ラジエータ91aから上記冷媒を電気機器ELに供給することにより、電気機器ELを冷却(水冷)することができる。このように、油圧ショベル1は、冷媒が通る電気機器ELを備える。なお、上記の冷媒は、例えば冷却水である。
【0032】
〔3.機関室内の構成〕
図3は、油圧ショベル1の機関室44内の全体の構成を示す後方斜視図である。運転座席41aは、シートマウント81上に設けられる。シートマウント81と旋回フレーム42との間には、バッテリユニット53が配置される。バッテリユニット53は、旋回フレーム42上で、後部側に位置するとともに、左右方向の中央よりも左側にずれて位置する。本実施形態では、2つのバッテリセル53a(
図4参照)が上下方向に並んで1つのバッテリユニット53が構成されている。なお、バッテリユニット53を構成するバッテリセル53aの数は特に限定されない。旋回フレーム42上でバッテリユニット53の後方には、鉛バッテリ54および給電口50が左右方向に並んで位置する。バッテリユニット53の後方上部には、充電器62が位置する。
【0033】
バッテリユニット53の右側には、冷却装置90が配置される。すなわち、油圧ショベル1は、冷却装置90を備える。冷却装置90は、上記の冷媒および作動油の少なくとも一方を熱交換によって冷却する装置である。
【0034】
図4は、油圧ショベル1の機関室44内の主要部の構成を示す後方斜視図である。冷却装置90は、熱交換器91と、ファン92と、ファンシュラウド93と、を含む。熱交換器91は、ラジエータ91aと、オイルクーラ91bと、を含む。ラジエータ91aは、電気機器ELを通る上記冷媒を熱交換により冷却する。オイルクーラ91bは、油圧ポンプ71および油圧アクチュエータ73(
図2参照)等を介して循環する油路と接続され、上記油路を流れる作動油を熱交換により冷却する。ラジエータ91aおよびオイルクーラ91bは、前後方向に並んで配置されている。また、ラジエータ91aおよびオイルクーラ91bは、ファン92と対向して配置される。
【0035】
ファン92は、熱交換器91を横切る風を発生させる。本実施形態では、ファン92は、熱交換器91の右側、つまり、熱交換器91に対してバッテリユニット53とは反対側に位置する。ファン92は、ファンシュラウド93によって覆われている。ファンシュラウド93は、通気口93aを有するカバーであり、ファン92を右側から覆っている。
【0036】
ファン92を回転させると、機関室44の内部から熱交換器91を横切って流れる空気(風)が、ファンシュラウド93の通気口93aを介して油圧ショベル1の外部に吐き出される。つまり、上記空気は、ラジエータ91aおよびオイルクーラ91bの隙間を通って流れる。これにより、熱交換器91が冷却される。言い換えれば、ラジエータ91aを流れる冷媒およびオイルクーラ91bを流れる作動油が熱交換により冷却される。このようなファン92の駆動形式は、「吐き出し型」と呼ばれる。
【0037】
なお、ファン92の駆動形式は、「吸い込み型」であってもよい。吸い込み型では、ファン92を回転させると、油圧ショベル1の外部の空気が機関室44の内部に、ファンシュラウド93の通気口93aを介して吸い込まれる。ファン92によって吸い込まれた空気は、熱交換器91に向かって流れ、熱交換器91を横切る。これにより、熱交換器91が冷却される。
【0038】
なお、熱交換器91は、ラジエータ91aおよびオイルクーラ91bのいずれか一方のみで構成され、他方は別の位置に配置されて別のファンで冷却されてもよい。ただし、熱交換器91がラジエータ91aおよびオイルクーラ91bの両方を含むほうが、1つのファン92によってラジエータ91aおよびオイルクーラ91bの両方を同時に(効率よく)冷却することができる点で望ましい。
【0039】
旋回フレーム42上で冷却装置90の前方には、上述の作動油タンク74が配置される。そして、旋回フレーム42上で、冷却装置90と作動油タンク74との間には、電動モータ61および油圧ポンプ71が位置する。電動モータ61は、モータ支持部100によって旋回フレーム42上に支持される。すなわち、油圧ショベル1は、機体フレームとしての旋回フレーム42上で電動モータ61を支持するモータ支持部100を備える。以下、モータ支持部100の詳細について説明する。
【0040】
図5は、電動モータ61を支持した状態でのモータ支持部100の斜視図である。また、
図6は、モータ支持部100の単独での斜視図である。モータ支持部100は、第1支持部101と、第2支持部102と、を有する。第1支持部101は、機体フレームとしての旋回フレーム42(
図4参照)にボルトおよびナット(以下、ボルト等と記載する)により取り付けられる。第2支持部102は、第1支持部101の上方に位置して電動モータ61を支持する。第2支持部102は、締結具103により第1支持部101に取り付けられる。これにより、第2支持部102が第1支持部101に支持される。上記の締結具103は、例えばボルト、ナット、防振ゴムを含む。
【0041】
第1支持部101は、上板部111と、脚部112と、を有する。上板部111は、左右方向および前後方向に延びる平板であり、内側に油圧ポンプ71(
図5参照)が通る上板開口部111aを有する。
【0042】
脚部112は、第1脚部112aおよび第2脚部112bを含む。第1脚部112aは、上板部111の右側の側縁部に連結され、下方に向かうにつれて前後方向の幅が狭くなり、下端部が左側に折れ曲がる形状を有する。第1脚部112aの下端部は、旋回フレーム42にボルト等により固定される。
【0043】
第2脚部112bは、前脚部112b1および後脚部112b2を有する。前脚部112b1および後脚部112b2の上端部は、上板部111の左側の側縁部の前部および後部にそれぞれ連結される。前脚部112b1および後脚部112b2は、下方に向かうにつれて互いの距離が狭まり、1か所で合流(合体)する。前脚部112b1および後脚部112b2の下端部、つまり、合流端部は、右側に折れ曲がり、旋回フレーム42にボルト等により固定される。これにより、第1支持部101が旋回フレーム42に取り付けられる。
【0044】
第2支持部102は、底板部121と、固定板部122と、を有する。底板部121は、左右方向および前後方向に延びる平板であり、内側に油圧ポンプ71(
図5参照)が通る底板開口部121aを有する。
【0045】
固定板部122は、底板部121の左側縁部に立設される平板である。底板部121と固定板部122とのなす角度はほぼ90°である。固定板部122には、上記の電動モータ61(
図5参照)がボルト等により固定される。
【0046】
電動モータ61が固定板部122に固定された状態では、電動モータ61の出力軸は上下方向に沿って位置する。つまり、固定板部122には、出力軸を上下方向に向けた状態で電動モータ61が固定される。また、電動モータ61は、底板部121よりも上方に位置するように、固定板部122にボルト等により固定される。したがって、電動モータ61が固定板部122に固定された状態では、底板部121は、電動モータ61よりも下方に位置する。すなわち、モータ支持部100は、電動モータ61の下方に位置する底板部121を有する。
【0047】
固定板部122は、底板部121よりも後方に(冷却装置90側)に延びる形状を有する。固定板部122において底板部121から後方にはみ出た部分には、電装品EQとしてのインバータ63がボルト等により取り付けられる。したがって、固定板部122において、電装品EQは電動モータ61と前後方向に並んで配置される。固定板部122は、電動モータ61とバッテリユニット53との間に位置する(
図9参照)。
【0048】
図6に示すように、固定板部122には、第1開口部122aおよび第2開口部122bが前後方向に並んで設けられている。第1開口部122aおよび第2開口部122bは、電動モータ61およびインバータ63の放熱用の開口部であり、電動モータ61およびインバータ63の取り付け位置に対応して形成されている。
【0049】
なお、固定板部122に固定される電装品EQは、インバータ63には限定されず、例えば、DC-DCコンバータ66(
図2参照)であってもよい。ただし、インバータ63は、電動モータ61に高電圧を供給することから、インバータ63と電動モータ61とをまとめて(近くに)配置することが、これらの接続ケーブルの配策が容易となる点で望ましい。
【0050】
底板部121の前縁部および後縁部には、補強部材123が設けられる。各補強部材123は、底板部121から斜め左上方に延び、その先端が固定板部122とそれぞれ連結される。これにより、底板部121に対する固定板部122の補強が行われる。
【0051】
図7は、油圧ポンプ71とモータ支持部100との位置関係を示す斜視図である。なお、
図7では、便宜上、油圧ポンプ71が連結される電動モータ61の図示を省略している。油圧ポンプ71は、モータ支持部100の底板開口部121aおよび上板開口部111aを貫通した状態で、電動モータ61に連結される。このとき、電動モータ61の出力軸は上述のように上下方向に沿った方向であるため、上記出力軸と連結される油圧ポンプ71の入力軸も上下方向に沿った方向となる。また、油圧ポンプ71は、モータ支持部100で支持されておらず、電動モータ61に連結(直結)されて宙づり状態となっている。なお、油圧ポンプ71を旋回フレーム42上で支持する支持部材が別途設けられていてもよい。
【0052】
モータ支持部100を用いた電動モータ61の旋回フレーム42への取り付けは、例えば以下の手順で行われる。(1)電動モータ61の出力軸と油圧ポンプ71の入力軸とをカップリング(図示せず)を介して連結する。(2)油圧ポンプ71を底板開口部121aに通し、その状態で電動モータ61を固定板部122にボルト等により取り付ける。(3)インバータ63を固定板部122にボルト等により取り付ける。(4)第2支持部102と第1支持部101とを締結具103により連結する。このとき、油圧ポンプ71が第1支持部101の上板開口部101aを通過するように位置させる。(5)第1支持部101の下端部を旋回フレーム42にボルト等により固定する。なお、(2)と(3)の順序は逆であってもよい。また、(4)と(5)の順序も逆であってもよい。
【0053】
図8は、油圧ショベル1の機関室44内の主要部の構成を示す平面図である。
図9は、
図8の構成を模式的に示す平面図である。これらの図に示すように、電動モータ61および冷却装置90は、バッテリユニット53の側方に配置される。本実施形態では、バッテリユニット53の右側において、電動モータ61は冷却装置90よりも前方に位置する。つまり、電動モータ61および冷却装置90は、バッテリユニット53の側方で前後方向にずれて位置する。
【0054】
上記した電動モータ61および冷却装置90の配置では、
図9に示すように、電動モータ61よりも後方に、電動モータ61の左右方向の設置幅と重複するように、冷却装置90を位置させることができる。これにより、電動モータ61および冷却装置90の両方を(同時に)、バッテリユニット53に近づけて配置することができる。したがって、小型の電動式の油圧ショベル1に冷却装置90を搭載する場合でも、バッテリユニット53、冷却装置90、および電動モータ61をコンパクトに(集約して)配置して、小型の電動式の油圧ショベル1に好適なレイアウトを実現することができる。また、冷却装置90により、冷媒および作動油の少なくとも一方を冷却するため、油圧ショベル1の作業性能を良好に確保しつつ、上記の効果を得ることができる。
【0055】
特に、油圧ショベル1の車幅(左右方向の幅)が増大することを確実に回避する観点では、本実施形態のように、電動モータ61および冷却装置90は、バッテリユニット53の側方で前後方向に並べて配置されることが望ましい。
【0056】
なお、例えば、バッテリユニット53は、旋回フレーム42上で左右方向の中央よりも右側にずれて位置してもよい。この場合、電動モータ61および冷却装置90は、バッテリユニット53の左側に位置して、前後方向にずれて位置してもよい。
【0057】
また、吸い込み型であっても吐き出し型であっても、冷却装置90の熱交換器91を冷却する風の流路を確保する観点では、
図4で示したように、ファンシュラウド93の通気口93aは、熱交換器91に対してバッテリユニット53とは反対側に位置することが望ましい。つまり、この構成では、吸い込み型であっても吐き出し型であっても、バッテリユニット53の側方に、熱交換器91を冷却する風の流路を確保して、上記風による熱交換器91の冷却が確実に行われる。
【0058】
電動モータ61を水冷する構成で、上述した本実施形態の効果を得る観点では、冷媒が通る電気機器ELは、電動モータ61を含むことが望ましい。
【0059】
また、インバータ63などの電装品EQ、つまり、バッテリユニット53から電力が供給される電装品EQを水冷する構成で、上述した本実施形態の効果を得る観点では、冷媒が通る電気機器ELは、上記電装品EQを含むことが望ましい。
【0060】
図9に示すように、バッテリユニット53と冷却装置90との間のスペースを有効活用する観点では、電装品EQは、バッテリユニット53と冷却装置90との間に配置されることが望ましい。また、冷却装置90のファン92によって発生する風を、電装品EQに当てて電装品EQの空冷に有効利用することができる点でも、電装品EQの上記配置は望ましい。なお、上述のように、電動モータ61と冷却装置90は、前後方向にずれて位置するため、冷却装置90とバッテリユニット53との間に配置される電装品EQが、冷却装置90よりも前方に位置する電動モータ61と干渉するおそれはほとんどない。
【0061】
電動モータ61と電装品EQとを結ぶケーブルを短くして、ケーブルの配策を容易にする観点では、電動モータ61の近くに電装品EQが配置されることが望ましい。このような配置を容易に実現するために、電装品EQは、バッテリユニット53の側方で、電動モータ61と前後方向に並べて配置されることが望ましい。本実施形態では、
図9に示すように、電装品EQとしてのインバータ63は、バッテリユニット53の右側で、電動モータ61よりも後方に位置しており、電動モータ61と前後方向に並んで位置している。
【0062】
また、本実施形態では、電装品EQは、インバータ63を含む。この構成では、インバータ63を通る冷媒が冷却装置90によって冷却される。したがって、インバータ63を水冷する構成において、上述の本実施形態の効果が得られる。
【0063】
油圧ショベル1の車幅の増大を回避して、小型の油圧ショベル1の実現に大きく寄与する点では、
図9に示すように、作動油タンク74は、電動モータ61と前後方向に並べて配置されることが望ましい。また、作動油タンク74も、油圧ポンプ71と前後方向に並べて配置されることが望ましい。
【0064】
特に、電動モータ61の前方のスペース、つまり、電動モータ61に対して冷却装置90とは反対側のスペースを有効活用する観点では、
図9に示すように、作動油タンク74は、電動モータ61に対して冷却装置90と反対側に位置することが望ましい。同様の観点から、作動油タンク74は、油圧ポンプ71に対して冷却装置90と反対側に位置することが望ましい。
【0065】
図5で示したように、本実施形態では、電動モータ61は、油圧ポンプ71に対して上方に位置する。すなわち、電動モータ61および油圧ポンプ71は、上下に並んで配置される。このような配置では、上方から見たときの、電動モータ61および油圧ポンプ71のトータルでの占有スペースが、例えば電動モータ61および油圧ポンプ71を左右方向に並べて配置する構成(横置きの構成)に比べて狭くなる。つまり、
図9に示すように、旋回フレーム42上での電動モータ61の占有スペース内に、油圧ポンプ71を位置させることができるため、電動モータ61および油圧ポンプ71のトータルでの占有スペースが横置きの構成に比べて狭くなる。このことは、バッテリユニット53の設置スペースを横置きの構成に比べて横方向に広げることができることを意味する。よって、小型の電動式の油圧ショベル1であっても、大型のバッテリユニット53(容量の十分なバッテリユニット53)を搭載して、油圧ショベル1の稼働時間を延ばすことが可能になる点で、電動モータ61および油圧ポンプ71を上下に並べて配置するレイアウトは非常に有効となる。
【0066】
なお、電動モータ61および油圧ポンプ71が上下に並んで配置されていれば、電動モータ61の出力軸および油圧ポンプ71の入力軸は、上下に沿って位置していなくてもよい。例えば、電動モータ61の下方に油圧ポンプ71が位置し、かつ、電動モータ61の出力軸および油圧ポンプ71の入力軸がそれぞれ水平方向に延びて位置し、上記出力軸と上記入力軸との間に、シャフト、ギア等を有する動力伝達機構が介在する構成であってもよい。この構成では、電動モータ61から上記動力伝達機構を介して油圧ポンプ71に動力が伝達されて、油圧ポンプ71が駆動される。
【0067】
以上では、電動式作業機械として、建設機械である油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、電動式作業機械は油圧ショベル1に限定されず、ホイルローダ、コンパクトトラックローダなどの他の建設機械であってもよい。また、電動式作業機械は、コンバイン、トラクタ等の農業機械であってもよい。
【0068】
〔4.付記〕
本実施形態で説明した油圧ショベル1は、以下の付記に示す電動式作業機械と表現することもできる。
【0069】
付記(1)の電動式作業機械は、
電動モータと、
前記電動モータを駆動するための電力を蓄える蓄電装置と、
前記電動モータによって駆動され、作動油を吐出する油圧ポンプと、
冷媒が通る電気機器と、を備えた電動式作業機械において、
前記作動油および前記冷媒の少なくとも一方を冷却する冷却装置をさらに備え、
前記電動モータおよび前記冷却装置は、前記蓄電装置の側方に配置される。
【0070】
付記(2)の電動式作業機械は、付記(1)に記載の電動式作業機械において、
前記電動モータおよび前記冷却装置は、前記蓄電装置の側方で前後方向に並べて配置される。
【0071】
付記(3)の電動式作業機械は、付記(1)または(2)に記載の電動式作業機械において、
前記冷却装置は、
前記冷媒および前記作動油の少なくとも一方を熱交換により冷却する熱交換器と、
前記熱交換器を横切る風を発生させるファンと、
通気口を有するファンシュラウドと、を含み、
前記ファンシュラウドは、前記熱交換器に対して前記蓄電装置とは反対側に位置する。
【0072】
付記(4)の電動式作業機械は、付記(1)から(3)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記電気機器は、前記電動モータを含む。
【0073】
付記(5)の電動式作業機械は、付記(1)から(4)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記電気機器は、前記蓄電装置から前記電力が供給される電装品を含む。
【0074】
付記(6)の電動式作業機械は、付記(5)に記載の電動式作業機械において、
前記電装品は、前記蓄電装置と前記冷却装置との間に配置される。
【0075】
付記(7)の電動式作業機械は、付記(5)または(6)に記載の電動式作業機械において、
前記電装品は、前記蓄電装置の側方で、前記電動モータと前後方向に並べて配置される。
【0076】
付記(8)の電動式作業機械は、付記(5)から(7)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記電装品は、インバータを含む。
【0077】
付記(9)の電動式作業機械は、付記(1)から(8)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記作動油を収容する作動油タンクをさらに備え、
前記作動油タンクは、前記電動モータと前後方向に並べて配置される。
【0078】
付記(10)の電動式作業機械は、付記(9)に記載の電動式作業機械において、
前記作動油タンクは、前記電動モータに対して前記冷却装置とは反対側に位置する。
【0079】
付記(11)の電動式作業機械は、付記(9)または(10)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記作動油タンクは、前記油圧ポンプと前後方向に並べて配置される。
【0080】
付記(12)の電動式作業機械は、付記(11)に記載の電動式作業機械において、
前記作動油タンクは、前記油圧ポンプに対して前記冷却装置とは反対側に位置する。
【0081】
付記(13)の電動式作業機械は、付記(1)から(12)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記電動モータと前記油圧ポンプは、上下に並んで配置される。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、例えば建設機械、農業機械などの作業機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 油圧ショベル(電動式作業機械)
53 バッテリユニット(蓄電装置、電気機器)
61 電動モータ(電気機器)
63 インバータ(電気機器、電装品)
66 DC-DCコンバータ(電装品)
71 油圧ポンプ
74 作動油タンク
90 冷却装置
91 熱交換器
91a ラジエータ(熱交換器)
91b オイルクーラ(熱交換器)
92 ファン
93 ファンシュラウド
93a 通気口
EL 電気機器
EQ 電装品