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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012020
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】半導体レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/028 20060101AFI20240118BHJP
   H01S 5/125 20060101ALI20240118BHJP
   H01S 5/227 20060101ALI20240118BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20240118BHJP
   H01S 5/50 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01S5/028
H01S5/125
H01S5/227
H01S5/026 610
H01S5/50 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146157
(22)【出願日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2022112724
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA26
5F173AB14
5F173AB24
5F173AB74
5F173AF92
5F173AK21
5F173AL07
5F173AL13
5F173AL21
5F173AP05
5F173AP45
5F173AR99
(57)【要約】
【課題】特性に優れた半導体レーザを提供すること
【解決手段】
半導体レーザであって、活性層と、回折格子周期が部分的に異なる位相シフト部を有する回折格子層と、前記回折格子層の上部に配置されたコンタクト層と、前記コンタクト層より電気抵抗の高い高抵抗体と、前記コンタクト層と接する電極と、を含み、前記高抵抗体は、前記電極のうち前記位相シフト部と重畳する部分の少なくとも一部の下に配置される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層と、
回折格子周期が部分的に異なる位相シフト部を有する回折格子層と、
前記回折格子層の上部に配置されたコンタクト層と、
前記コンタクト層より電気抵抗の高い高抵抗体と、
前記コンタクト層と接する電極と、を含み、
前記高抵抗体は、前記電極のうち前記位相シフト部と重畳する部分の少なくとも一部の下に配置される、
半導体レーザ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
最上層に前記コンタクト層を備え、光を取り出す方向に延伸するメサ構造をさらに有し、
前記電極は、前記メサ構造の延伸する方向における前記高抵抗体の前後において、前記コンタクト層と接する、
半導体レーザ。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体レーザであって、
前記メサ構造が延伸する方向における前記高抵抗体の幅は、前記位相シフト部より広い、
半導体レーザ。
【請求項4】
請求項2に記載の半導体レーザであって、
前記高抵抗体は、前記電極のうち前記位相シフト部と重畳する部分の一部の下に配置される、
半導体レーザ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の半導体レーザであって、
前記位相シフト部は、CPM構造である、
半導体レーザ。
【請求項6】
請求項1または2に記載の半導体レーザであって、
前記活性層はn型半導体である、
半導体レーザ。
【請求項7】
請求項1または2に記載の半導体レーザであって、
前記活性層の前記光を取り出す方向に、光増幅器をさらに含む、
半導体レーザ。
【請求項8】
請求項1または2に記載の半導体レーザであって、
前記活性層の前記光を取り出す方向に、前記活性層より屈折率の低い材料で構成された窓構造をさらに有する、
半導体レーザ。
【請求項9】
請求項1または2に記載の半導体レーザであって、
前記抵抗体は、絶縁体、高抵抗半導体層、樹脂のいずれかである、
半導体レーザ。
【請求項10】
請求項1または2に記載の半導体レーザであって、
前記光を取り出す方向の端面である前方端面または該前方端面の反対側の端面である後方端面の少なくとも一方に低反射端面コーティング膜を有する、
半導体レーザ。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体レーザであって、
前記位相シフト部は、前記前方端面から前記後方端面までの4割から6割の位置に配置される、
半導体レーザ。
【請求項12】
活性層を形成する工程と、
回折格子周期が部分的に異なる位相シフト部を有する回折格子層を形成する工程と、
前記回折格子層の上部にコンタクト層を形成する工程と、
前記コンタクト層より電気抵抗の高い高抵抗体を形成する工程と、
前記コンタクト層と接する電極を形成する工程と、を含み、
前記高抵抗体は、前記電極のうち前記位相シフト部と重畳する部分の少なくとも一部の下に配置される、
半導体レーザの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる光源として半導体レーザが広く使われている。半導体レーザの一つに、分布帰還型半導体レーザ(DFBレーザ)が知られている。DFBレーザは、回折格子を備えている。また特性向上のために、回折格子に位相シフト部を備えた構造が知られている(特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-259573号公報
【特許文献2】特開2002-84033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位相シフト部を含む回折格子を持つDFBレーザにおいて、位相シフト部においてホールバーニング効果が生じることがある。ホールバーニング効果とは、ある領域において光強度が集中し、他の領域と比較して光の誘導放出が多くなり、キャリアが減少し、利得が低減することを言う。結果としてホールバーニング効果は、半導体レーザの特性の劣化を招く。例えば、ホールバーニング効果は、スペクトル線幅の増加を引き起こす。ホールバーニング効果が大きい場合には単一モード発振を維持することができない。なお、ここでは回折格子が並ぶ向きにおけるホールバーニング効果の影響を示しており、軸方向ホールバーニングとも呼ばれている。
【0005】
本発明は、位相シフト部を含む回折格子を持つ半導体レーザの軸方向ホールバーニングを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体レーザは、活性層と、回折格子周期が部分的に異なる位相シフト部を有する回折格子層と、前記回折格子層の上部に配置されたコンタクト層と、前記コンタクト層より電気抵抗の高い高抵抗体と、前記コンタクト層と接する電極と、を含み、前記高抵抗体は、前記電極のうち前記位相シフト部と重畳する部分の少なくとも一部の下に配置される。
【0007】
本発明に係る半導体レーザの製造方法は、活性層を形成する工程と、回折格子周期が部分的に異なる位相シフト部を有する回折格子層を形成する工程と、前記回折格子層の上部にコンタクト層を形成する工程と、前記コンタクト層より電気抵抗の高い高抵抗体を形成する工程と、前記コンタクト層と接する電極を形成する工程と、を含み、前記高抵抗体は、前記電極のうち前記位相シフト部と重畳する部分の少なくとも一部の下に配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、特性に優れた半導体レーザを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態にかかる半導体レーザの上面図の例である。
図2図2は、図1に示す半導体レーザのII-II線に沿う概略断面図である。
図3図3は、図1に示す半導体レーザのIII-III線に沿う概略断面図である。
図4図4は、図1に示す半導体レーザのIV-IV線に沿う概略断面図である。
図5図5は、図3に示す半導体レーザのV-V線に沿う概略断面図である。
図6図6は、第1の実施形態の変形例に係る半導体光レーザのII-II線に沿う概略断面図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る半導体レーザの位相シフト部付近の概略断面図である。
図8図8は、図7に示す半導体レーザのVIII-VIII線に沿う概略断面図である。
図9図9は、第3の実施形態にかかる半導体レーザの上面図の例である。
図10図10は、図9に示す半導体レーザのX-X線に沿う概略断面図である。
図11図11は、第4の実施形態にかかる半導体レーザ光素子の上面図の例である。
図12図12は、図11に示す半導体レーザのXII-XII線に沿う概略断面図である。
図13図13は、図11に示す半導体レーザのXIII-XIII線に沿う概略断面図である。
図14図14は、図11に示す半導体レーザのXIV-XIV線に沿う概略断面図である。
図15図15は、第5の実施形態にかかる半導体レーザの上面図の例である。
図16図16は、図15に示す半導体レーザのXVI-XVI線に沿う概略断面図である。
図17図17は、第6の実施形態にかかる半導体レーザの内部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態にかかる半導体レーザ1の上面図である。図2は、図1のII-II線に沿う概略断面図を表す。図3は、図1のIII-III線に沿う概略断面図を表す。図4は、図1のIV-IV線に沿う概略断面図を表す。半導体レーザ1は、裏面に第1電極2、表面に第2電極3を備える。第1電極2及び第2電極3は金属層である。第1電極2と第2電極3との間に電流を注入することで、前方端面(図1で左側の端面)から光が出射される。前方端面、および後方端面(図1で右側の端面)には低反射端面コーティング膜4が形成されている。
【0012】
半導体レーザ1は、第1導電型の基板5の上に第1導電型の光閉じ込め層(SCH層)6、活性層7、第2導電型の光閉じ込め層8(SCH層)、第2導電型のクラッド層9、第2導電型のコンタクト層10の順で半導体層が積層されている。また第2導電型のクラッド層9には回折格子層11が形成されている。半導体レーザ1は、DFBレーザである。活性層7は、例えば多重量子井戸層で形成されている。また多重量子井戸層は、真性半導体もしくはn型半導体であってよい。なお、ここでは第1導電型はn型、第2導電型はp型であるが、逆であっても構わない。また、これらの半導体層は、メサ構造15を有している。メサ構造15は、光を取り出す方向に延伸している。なおメサ構造15の下部は基板5の一部である。メサ構造15の両側は半絶縁性の埋め込み層12で覆われている。なお埋め込み層12はp型、n型の半導体層の積層体であっても構わない。図1の点線は、メサ構造15の上部と埋め込み層12の境界の位置を示している。
【0013】
回折格子層11は、回折格子周期が部分的に異なる位相シフト部を含む。回折格子層11は、メサ構造15が延伸する方向に配置されている。回折格子層11の格子周期は一定であるが、メサ構造15が延伸する方向に見た時の略中央部に位相シフト部13を備える。ここでは位相シフト部13はλ/4位相シフト部である。
【0014】
半導体レーザ1は、表面に絶縁膜14を備える。絶縁膜14は一部を除いて半導体レーザ1の表面を覆っている。絶縁膜14は、位相シフト部13の上の領域を除いてメサ構造15の上には配置されていない。言い換えると、絶縁膜14は、位相シフト部13と重畳する領域と、メサ構造15が設けられていない領域に配置されている。位相シフト部13と重畳する領域に配置されている絶縁膜14は、高抵抗体30である。ここでは高抵抗体30は絶縁膜の一部であるが、高抵抗体30と絶縁膜14の高抵抗体30以外の領域とは異なる材料であっても構わない。他の材料の例は後述する。高抵抗体30は、第2導電型のコンタクト層10より電気抵抗が高い。ここでは高抵抗体30を含む全ての絶縁膜14は、例えば酸化膜や窒化膜である。メサ構造15の上側の領域であって、絶縁膜14が配置されていない領域においては、第2電極3と第2導電型コンタクト層10は電気的、物理的に接している。図2に示す態様では、電極3は、メサ構造の延伸する方向の前後における高抵抗体30の前後において、第2導電型コンタクト層10と接する。
【0015】
図5は、図4のV-V線に沿う概略断面図であって、絶縁膜14の断面を上面から見た図である。説明の簡略化のために、両端面の両面コーティング膜4は図示していない。またメサ構造15を点線で示している。図5より明らかなように、位相シフト部13が配置されている領域には高抵抗体30(ここでは絶縁膜14)が配置されており、本領域においてはメサ構造15の最上層である第2導電型コンタクト層10と第2電極3は電気的に接続されていない。従って、位相シフト部13には電流がほとんど流れ込まない。より厳密には、第2導電型クラッド層9を介して、非常に微量の電流が流れ込むこともあるが、絶縁膜14が配置されていない領域と比較して、位相シフト部13の電流密度は小さい。
【0016】
位相シフト部を含むDFBレーザは、位相シフト部付近で光子密度が高くなり、光子密度の高い領域では誘導放出により、キャリア密度が低下する。光子密度の増加によりキャリア密度の低下はキャリア密度の変化率を記述するレート方程式(1)において定常状態(dn/dt=0)とすることで得られる(2)式により記述される。利得が正の場合(2)式第2項の分子も正となるため、光子密度増加によるキャリア密度の減少を抑制するには電流密度Jを下げることが有効である。
【0017】
本実施形態にかかる半導体レーザ1は、光子密度が高くなる位相シフト部13付近の電流密度を低減させるために、第2電極3と第2導電型コンタクト層10との間に高抵抗体30が配置されている。高抵抗体30により位相シフト部13付近の電流密度が低下し、光子密度増加によるキャリア密度の減少が抑制される。その結果、ホールバーニング効果が抑制され、半導体レーザ1の特性劣化を抑制することができる。ここでホールバーニング効果が発生する領域は、両端面のコーティング膜の反射率、位相シフト部の位置により変わりうる。しかし、本実施形態に係る半導体レーザ1では、両端面を低反射率のコーティング膜としており、位相シフト部13を共振器長(ここでは両端面間の長さ)の中央付近に配置しているために、ホールバーニング効果は位相シフト部13に強く発生する。そのため、位相シフト部13の電流密度を小さくすることでホールバーニング効果を抑制することができる。なお、位相シフト部は、前方端面から後方端面までの4割から6割の位置に配置されていることが望ましい。
【0018】
本実施形態に係る回折格子層11は、フローティング型と呼ばれる回折格子構造を採用している。フローティング型の回折格子は、半導体層中(本実施形態では第2導電型クラッド層9)の内部に、当該半導体層とは屈折率が異なる領域が一定間隔で並んでいる構造を示す。つまり回折格子層11は、第2導電型クラッド層9とそれより屈折率の高い半導体層(高屈折率層)が交互に配置されている構造である。また本実施形態で示したλ/4シフト構造は、ある領域で第2導電型クラッド層9もしくは高屈折率層が連続している構造である。つまり、回折格子層11は、一定の長さの第2導電型クラッド層9と一定の長さの高屈折率層が一定間隔で交互に配置された構成を有するが、位相シフト部13においては、第2導電型クラッド層9もしくは高屈折率層が当該一定の長さとは異なる長さで配置されている。なお、回折格子は、フローティング型に限定されない。例えば、第2導電型SCH層8の上面に凹凸を形成して回折格子を形成しても構わない。
【0019】
ここで、回折格子層11の格子周期は発振波長により異なるが、例えば数百nmである。例えば出射する光を1.3μm帯で発振させる場合は、格子周期は約200nmである。この時、位相シフト部13の1周期(高屈折率部左端から右側に隣接する高屈折率部左端の距離)は約300nmである。ホールバーニング効果は、位相シフト部13を中心にある程度の幅を持って発生する。また第2電極3に注入された電流は、第2導電型クラッド層9の中で拡散をする。そのため、ホールバーニング効果を抑制するためには、メサ構造が延伸する方向における高抵抗体の幅は、位相シフト部より広いことが効果的である。例えば、メサ構造15が延伸する方向における高抵抗体30の幅を、10μm以上とすることによって、ホールバーニング効果の抑制効果が十分に得られる。ただし、10μmは一例であり、これに限定されない。少なくとも位相シフト部13より広い範囲を覆うように高抵抗体30を配置すれば、ホールバーニング効果の抑制効果は得られる。
【0020】
ここで半導体レーザの製造方法を説明する。まず、公知の多層成長技術およびリソフラフィ技術を用いて、基板5上に第1導電型の光閉じ込め層6、活性層7、第2導電型の光閉じ込め層8、回折格子層11を含む第2導電型のクラッド層409、第2導電型のコンタクト層10の各層が形成される。なお、回折格子層11には、位相シフト部13が含まれる。また、メサ構造15となる領域に酸化膜マスクが形成される。そして、公知のフォトリソグラフィ技術を用いてメサ構造15となる領域の両側が除去される。次に、埋め込み層12をMOCVD法によって結晶成長させた後、メサ構造15の上のマスクを除去する。次に、第2導電型のコンタクト層10より電気抵抗の高い高抵抗体30を含む絶縁膜14を全面に形成し、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて、全面に形成された絶縁膜14のうち、第2導電型のコンタクト層10と第2電極3が接する領域に形成された絶縁膜14のみを除去する(図5参照)。次に、例えばTi/Pt/Auからなる第2電極3の材料を用いて全面に製膜し、図1に示す第2電極3の領域以外の領域に形成された第2電極3の材料を除去する。次に基板5を所望の厚さに加工したのち、裏面に第1電極2を形成することで半導体レーザが完成する。上記工程によれば、高抵抗体30は、第2電極3のうち位相シフト部13と重畳する部分の少なくとも一部の下に配置される。従って、第2電極3は、高抵抗体30が設けられた領域において、第2導電型のコンタクト層10と接しないため、ホールバーニング効果を抑制することができる。
【0021】
[変形例]
図6は、第1の実施形態の半導体レーザ1の変形例にかかるII-II線に沿う概略断面図である。第1の実施形態との違いは、回折格子の構造がCPM(Corrugation-Pitch-Modulated)構造となっている点である。CPM構造は、ある領域において格子周期が異なっている構造である。格子周期が異なっている領域は、所望のシフト量が達成するために、格子周期および配置される領域長(メサ構造15に延伸する方向)が調整されている。本実施形態では、λ/4シフトするように調整されている。そして位相シフト部13は格子周期が異なっている領域で定義されれる。
【0022】
変形例1においても、位相シフト領域13と重畳する領域には高抵抗体30が配置されている。ここでは高抵抗体20は絶縁膜14である。そのため、位相シフト部13における電流密度が低減し、ホールバーニング効果を抑制することができる。位相シフト部13に重畳する高抵抗体30の幅は、メサ構造15が延伸する方向において、位相シフト部13より広いほうが望ましい。ただし回折格子がCPM構造の場合、位相シフト部13は第1の実施形態で示した回折格子構造と比較して、長い領域に渡って配置される。そのため、高抵抗体30が位相シフト部13を覆う領域が一部(例えばCPM回折格子構造の80%程度)であっても本発明の効果は得られる。
【0023】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係る半導体レーザ201の概略断面図である。図7は、第1実施形態の図4と同じ領域の断面図である(位相シフト部13の位置の断面図)。また図8は、図7のVIII-VIII線に沿う概略断面図である。その他の構造は、第1の実施形態と同じである。
【0024】
第1の実施形態との違いは、絶縁膜214の構造である。第1の実施形態では、高抵抗体30は位相シフト部13の上部を完全に覆っている。一方、第2の実施形態では、絶縁膜214の一部である高抵抗体30が位相シフト部13を完全には覆っておらず、位相シフト部13の上部においても第2電極3が第2導電型コンタクト層10と接している。従って、位相シフト部13にも電流が注入される構造となっている。つまり、高抵抗体30は、位相シフト部13の上部を部分的に覆っている。その結果、位相シフト部13付近は、その前後の領域と比較して第2電極3が接している領域が狭くなる。本構造により、位相シフト部13に流れる電流は他の領域と比較して小さく、電流密度が小さくなる。そのため、本実施形態においてもホールバーニング効果の抑制効果を得ることができる。このように位相シフト部13を完全に高抵抗体30で覆わなくても、ホールバーニング効果を抑制できる。
【0025】
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態にかかる半導体レーザ301の上面図である。図10は、図9のX-X線に沿う概略断面図を表す。第1の実施形態と第3の実施形態の違いは、第2電極303の構造の違いである。第3の実施形態では位相シフト部13と第2電極303とが重畳する領域付近を境に、第2電極303は二つの部位に分かれている。他の構造は第1の実施形態と同じである。
【0026】
本実施形態においても、図10に示すように、高抵抗体30の端部は、第2電極303と重畳している。また、位相シフト部13と重畳するように高抵抗体30が配置されている。そのため、位相シフト部13と高抵抗体30が重畳する領域において、位相シフト部13の電流密度を低減することができる。ここで、第2電極303は二つの部位に分かれているが、その材料、層構造は同一としている。また二つの第2電極303には同じ大きさの電流を注入する。なお、第2電極303が分離している場合、高抵抗体30がなくても、位相シフト部13の電流密度を一定程度低減することはできる。しかし、高抵抗体30が配置されていない場合、半導体層の第2導電型コンタクト層10が露出することになる。半導体層は空気に露出する場合汚染等の影響を受けるため、半導体レーザ301の信頼性が低下する恐れがある。さらに、半導体レーザ301の第2電極303側を素子搭載基板(サブマウント)に向けて搭載するジャンクションダウン搭載を行う場合、位相シフト部13と重畳する領域にも搭載時に用いたはんだが接触する。この場合、高抵抗体30がない構成では、はんだが第2導電型コンタクト層10に接触し、結晶の劣化を招く恐れがある。しかし、本実施形態では第2電極303が分離したとしても、その間には高抵抗体30が配置されているために、上記の問題を避けることができる。なお、他の実施形態では、高抵抗体30は絶縁膜14の一部であるが、本実施形態においては、高抵抗体30が絶縁膜14の全てであることが望ましい。また、第2電極303の端部と高抵抗体30の端部を一致させることは困難であるが、第2電極303の一部が高抵抗体30の端部に乗り上げるように形成することで容易に製造することができる。
【0027】
[第4の実施形態]
図11は、第4の実施形態にかかる半導体レーザ401の上面図である。図12は、図11のXII-XII線に沿う概略断面図を表す。図13は、図11のXIII-XIII線に沿う概略断面図を表す。図14は、図11のXIV-XIV線に沿う概略断面図を表す。半導体レーザ401は、裏面に第1電極402、表面に第2電極403を備える。第1電極402及び第2電極403は金属層である。第1電極402と第2電極403との間に電流を注入することで、前方端面(図11で左側の端面)から光が出射される。前方端面、および後方端面(図11で右側の端面)には低反射端面コーティング膜4が形成されている。
【0028】
半導体レーザ401は、第1導電型の基板405の上に第1導電型の光閉じ込め層406(SCH層)、活性層407、第2導電型の光閉じ込め層(SCH層)408、第2導電型のクラッド層409、第2導電型のコンタクト層410の順で半導体層が積層されている。また第2導電型のクラッド層409には回折格子層411が形成されている。半導体レーザ401はDFBレーザである。活性層407は例えば多重量子井戸層で形成されている。なお、ここでは第1導電型はn型、第2導電型はp型であるが、逆であっても構わない。また第2導電型クラッド層409の一部および第2導電型コンタクト層410はメサ構造415を構成している。回折格子層411より下の半導体層はメサ構造415に含まれない。メサ構造415の両側にはメサ構造415と略同じ高さの台座部が設けられている。両側の台座部の上面からメサ構造415の側面に至るまで絶縁膜414が配置されている。メサ構造415の上面においては、後述する位相シフト部413と重畳する領域に絶縁膜414が配置されているが、他の領域には配置されていない。ここで、位相シフト部413と重畳する領域の絶縁膜414は高抵抗体30である。
【0029】
回折格子層411は、メサ構造415が延伸する方向に配置されている。回折格子層411の格子周期は一定であるが、メサ構造415が延伸する方向に見た時の略中央部に位相シフト部413を備える。ここでは位相シフト部413はλ/4位相シフト部である。また、回折格子層411は、位相シフト部413の高屈折率層が他の領域の高屈折率層より長い構造を有する。位相シフト部413と第2電極403とが重畳する領域には絶縁膜414(高抵抗体30)が配置されているため、位相シフト部413の電流密度は小さい。そのため、ホールバーニング効果を抑制することができる。
【0030】
[第5の実施形態]
図15は、第5の実施形態にかかる半導体レーザ501の上面図である。図16図15のXVI-XVI線に沿う概略断面図を表す。第5の実施形態は、半導体レーザ501が前方端面(図15の左側の端面)側に光増幅器521を備えている点において、第1の実施形態と異なる。
【0031】
半導体レーザ501は、半導体レーザ部520と光増幅器部521とが基板5に一体的に集積されている。光増幅器部521は回折格子層11を有していない点を除いて、半導体レーザ部520と同じ層構造を有している。光増幅器部521は半導体レーザ部520で生成された光を増幅する。
【0032】
位相シフト部13は、メサ構造15が延伸する方向において、回折格子層11が配置されている領域の略中央部に設けられている。本構造においても、位相シフト部13付近においてホールバーニング効果が発生する。そのため、第1の実施形態同様に位相シフト部13と重畳する領域には高抵抗体30(ここでは絶縁膜14)が配置され、位相シフト部13付近の電流密度を下げることができる。
【0033】
このように、光増幅器に限らず回折格子層を含む半導体レーザ部の前方に他の構造が含まれていても、本発明の効果は得られる。例えば、窓構造が配置されていても良い。窓構造は、活性層より低い屈折率を持つ材料で構成されており、反射の影響を低減することがきる。
【0034】
[第6の実施形態]
図17は、第6の実施形態に係る半導体レーザ601の概略断面図であって、第1実施形態の図5と同じ領域の断面図である。本実施形態では高抵抗体630は絶縁膜614とは異なる材料である。その他の構造は、第1の実施形態と同じである。
【0035】
他の実施形態では、高抵抗体30である領域の絶縁膜14と、他の領域の絶縁膜14とが同じ材料であるが、本実施形態の高抵抗体630は絶縁膜614の他の領域とは異なる材料である。ただし、高抵抗体630の抵抗率は、第2導電型のコンタクト層10より十分に高い。高抵抗体630の例としては、以下の材料が該当する。まず他の実施形態で示した絶縁膜である。なお便宜上、“膜”と表記したが、絶縁体であれば形状は問わない。また絶縁膜614と異なる種類の絶縁膜であっても構わない。絶縁膜614の一例としては、シリコン酸化膜、窒化シリコン膜などがある。また高抵抗体630は、高抵抗の半導体であっても構わない。例えば、基板5がInPであれば、アンドープのInPやアンドープのInGaAsであって構わない。また、不純物をドーピングすることで高抵抗化したInPであっても構わない。一例として、FeやRuをドーピングしたInPであって構わない。さらに、高抵抗体630は樹脂であっても構わない。樹脂の一例としては、ポリイミド樹脂、BCBなどがある。
【0036】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、第1の実施形態の変形例1で示したCPM構造を他の実施例と組み合わせても構わない。また、端面コーティング膜は低反射膜に限定されない。例えば、前方端面を低反射、後方端面を高反射のコーティング膜としてもよい。また上記実施例では回折格子層は活性層の上部に配置されている例を示したが、活性層の下部に配置されていても本発明の効果は得られる。
【0037】
本発明は、位相シフト部を有するDFBレーザにおける軸方向ホールバーニングを低減する。本発明の実施形態は、DFBレーザの光軸内の高光強度領域に供給される電流を減少させることによってこれを達成する。高光強度領域は、メサ構造の位相シフト領域の周辺である。その領域へ注入される電流を減らす(その領域の電流密度を低減する)ために、本発明の実施形態は、位相シフト領域の上方及び軸方向に整列した第2電極の部分を除去する。第2の電極の除去された部分は、高抵抗体が配置される。位相シフト部は、連続した高屈折率層でも低屈折率層であっても良い。DFBレーザは、メサ構造が埋め込まれた埋め込み型(例えば平面型)でもよいし、メサ構造が半導体層で埋め込まれていない露出型(例えばリッジ型)であってもよい。DFBレーザは、活性層の上に配置される半導体層の極性はn型であってもよいし、p型であってもよい。DFBレーザは、増幅器集積半導体レーザの集積素子の一部であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1、201、301、401、501、601 半導体レーザ、2、402 第1電極、3、303、404 第2電極、4 端面コーティング膜、5、405 基板、6、406 第1導電型の光閉じ込め層、7、407 活性層、8、408 第2導電型の光閉じ込め層、9 、409、第2導電型のクラッド層、10、410 第2導電型のコンタクト層、11、411 回折格子層、12 埋め込み層、13、413 位相シフト部、14、214、414 絶縁膜、 15、415 メサ構造、 520 半導体レーザ部、521 光増幅器、30、630 高抵抗体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17