(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012021
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】プロセス
(51)【国際特許分類】
C12P 1/04 20060101AFI20240118BHJP
C12P 7/64 20220101ALI20240118BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240118BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240118BHJP
C12P 7/18 20060101ALI20240118BHJP
C12P 7/42 20060101ALI20240118BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240118BHJP
C02F 3/34 20230101ALI20240118BHJP
【FI】
C12P1/04 Z
C12P7/64
C12M1/00 C
C12N1/20 D
C12P7/18
C12P7/42
B01D53/14 200
C02F3/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022146199
(22)【出願日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】63/368,291
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2210917.7
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】522215610
【氏名又は名称】センビタ ファクトリー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルシオ ルイス ブシ ダ シルバ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシ グプタ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヘンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン パトリック キンケイド
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
4D020
4D040
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB02
4B029CC01
4B029DF02
4B029DG10
4B064AC02
4B064AC05
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4B064AD85
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4B065AC20
4B065BB11
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4B065CA54
4D020AA03
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4D020BB03
4D020DB08
4D040DD03
4D040DD16
(57)【要約】
【課題】当技術分野における従来のプロセスとは異なり、硫黄(例えばH
2S)も除去及び利用される、1又は複数のバイオ製品を製造するために二酸化炭素を捕捉するための改善されたプロセスを提供する。また、従来の方法と比較して効率的であり、バイオ製品の生産を強化することができ、バイオ製品の組成の制御を可能にする改善されたプロセスを実行するためのシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、1又は複数のバイオ製品を製造するために化学栄養生物を利用するバイオ脱硫及び炭素捕捉の複合プロセスを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2をバイオ製品に変換するための微生物学的プロセスであって、微生物学的変換に必要なエネルギーが、硫黄供給原料の付随する微生物学的酸化によって少なくとも部分的に提供される、微生物学的プロセス。
【請求項2】
1又は複数の化学栄養生物によって行われる、請求項1に記載の微生物学的プロセス。
【請求項3】
前記化学栄養生物の1又は複数が硫黄酸化細菌である、請求項2に記載の微生物学的プロセス。
【請求項4】
前記微生物学的変換及び/又は前記付随する微生物学的酸化が、チオアルカリミクロビウム(Thioalkalimicrobium)、チオアルカリビブリオ(Thioalkalivibrio)、チオバシラス(Thiobacillus)、アルカリリムニコーラ(Alkalilimnicola)、ガイパケリア(Guyparkeria)、ハロモナス(Halomonas)、アルカリスプリルム(Alkalispirillum)、ビブリオ(Vibrio)、チオミクロスピラ(Thiomicrospira)、ガイパケリア(Guyparkeria)、チオアルカリスピラ(Thioalkalispira)(以前はチオアルカリミクロビウム(Thioalkalimicrobium))、エクトチオロドスピラ科(Ectothiorhodospiraceae)、ロドバクテリウム科(Rhodobacteraceae)、ロージナトロバクター(seinatrobacter)、アルカリリムニコーラ(Alkalilimnicola)、ガイパケリア(Guyparkeria)、デスルフロムサ(Desulfuromusa)、デスルフリスプリルム(Desulfurispirillum)から選択される1又は複数の生物によって行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記硫黄供給原料が、硫黄酸化細菌によって元素状硫黄に少なくとも部分的に酸化される、請求項1~4のいずれか一項に記載の微生物学的プロセス。
【請求項6】
還元された元素状硫黄が、遠心分離、溶媒抽出から選択される方法によって、又はハイドロサイクロンによって、1又は複数のバイオ製品から除去される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
以下のステップ:
i.未加工の二酸化炭素及び硫黄含有供給原料を吸収媒体又は溶解媒体と接触させて、溶解又は吸収された無機炭素及び硫黄を含む試薬流を形成するステップ;及び
ii.前記試薬流の少なくとも一部をバイオリアクタ内の微生物ブロスと接触させて、硫黄を酸化し、前記二酸化炭素から1又は複数のバイオ製品を生成するステップ
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の微生物学的プロセス。
【請求項8】
以下のステップ:
iii.前記1又は複数のバイオ製品を1又は複数のバイオ製品と液体流とに分離するステップ;及び
iv.前記液体流の少なくとも一部を前記プロセスのステップi.に、前記吸収媒体又は溶解媒体として又はその一部として使用するために再循環させるステップ
をさらに含む、請求項7に記載の微生物学的プロセス。
【請求項9】
二酸化炭素及び前記硫黄が、単一の供給原料流として又はその一部として前記プロセスに導入される、請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項10】
二酸化炭素及び前記硫黄が、別個の供給原料流として前記プロセスに導入される、請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項11】
インライン・モニタリングを使用して、前記二酸化炭素/硫黄の比及び/又は炭素種分化を決定する、請求項7~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記吸収媒体又は溶解媒体のpHが制御される、請求項7~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記プロセスが栄養欠乏環境で操作され、前記1又は複数のバイオ製品が脂質に富む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記1又は複数のバイオ製品からのデブリが、バイオガスを生成するための嫌気性消化槽の供給原料として使用される、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記1又は複数のバイオ製品からの前記デブリが、二次バイオリアクタの供給原料として使用され、前記リアクタが硫酸還元菌を使用してH2Sを生成する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記二次バイオリアクタによって生成された前記H2Sが、前記硫黄供給原料として又はその一部として使用される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記二次バイオリアクタが生物学的化学物質を生成する、請求項15又は16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記1又は複数のバイオ製品が、バイオマス、燃料用脂質、PHA又はBDOを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
CO2を1又は複数のバイオ製品に変換するための装置であって、微生物学的変換に必要なエネルギーが、硫黄供給原料の付随する微生物学的酸化によって少なくとも部分的に提供され、前記装置が、以下:
i.未加工の二酸化炭素及び硫黄含有供給原料を別々に又は組み合わせて吸収媒体又は溶解媒体と接触させて、溶解又は吸収された無機炭素及び硫黄を含む試薬流を形成するための手段;及び
ii.前記試薬流の少なくとも一部をバイオリアクタ内の微生物ブロスと接触させて、硫黄を酸化し、前記二酸化炭素から1又は複数のバイオ製品を生成するための手段
を備える、装置。
【請求項20】
前記流体流を濃縮するためのガス接触器をさらに備える、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
硫酸還元菌を充填した二次バイオリアクタをさらに備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセスを動作させるように構成された、請求項19~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセスによって生産された1又は複数のバイオ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学栄養炭素の捕捉及び脱硫に関し、1又は複数のバイオ製品を製造するために化学栄養生物を利用するバイオ脱硫及び炭素捕捉の複合プロセスに関する。
【0002】
バイオ脱硫は、ガス流(例えば、天然ガス、随伴ガス、合成ガス、アミン酸ガス、煙道ガス、埋立地ガス、バイオガス、嫌気性消化槽からの排出物)から、並びにディーゼル油及び原油などの液体流からも硫黄/硫化物を除去するための既知のプロセスである。従来のバイオ脱硫プロセスの主な又は唯一の焦点は、硫黄(例えばH2S)の除去である。そのようなプロセスは、典型的には、炭素捕捉に全く関係せず、又はその最適化に望ましい条件に関係しない。実際、Thiopaq O&Gプロセスなどの従来のバイオ脱硫プロセスは、一般に、バイオ脱硫プロセスの操作を容易にするためにバイオマス蓄積(炭素捕捉)の量を最小限にしようとする。
【背景技術】
【0003】
米国特許第11,091,781号及び米国特許第10,597,681号は、細菌を使用して炭素を固定するためのシステム及び方法を開示している。システムは、溶液が収容された反応チャンバを含む。溶液は、水素、二酸化炭素、生物学的に利用可能な窒素、及び化学合成独立栄養細菌を含み得る。システムはまた、溶液内に含まれる水を分割して水素を形成する一対の電極を含むことができる。さらに、システムは、溶液中の生物学的に利用可能な窒素の濃度が閾値窒素濃度を下回るように操作されて、化学合成独立栄養細菌に生成物を生成させ得る。
【0004】
US2022/0154228は、二酸化炭素及び/又は他の形態の無機炭素及び/又はCI炭素源及び/又はCI化学物質を含有する混合物を捕捉し、バイオ燃料又は他の価値のあるバイオマス、化学物質、工業製品又は医薬品を含む有機化学物質に変換するハイブリッド生物学的及び化学的プロセスのための組成物及び方法を開示している。
【0005】
米国特許第9,957,534号は、外因性又は異種核酸配列を含有する微生物を開示しており、この微生物は、ガス状二酸化炭素、ガス状水素、合成ガス、又はそれらの組み合わせで増殖することができる。いくつかの実施形態では、微生物は、重量で少なくとも10%の脂質を産生又は分泌する化学栄養細菌である。また、工業プロセスに有用な有機炭素分子にガス状炭素を固定する方法、及び化学物質を製造するか、又は燃料に有用な化学物質の前駆体を生成する方法も開示される。
【0006】
米国特許第10,507,426号及び米国特許第9,764,279号は、二酸化炭素排出物をバイオ燃料、肥料、又は供給原料などの様々な製品に使用され得るバイオマスに変換することができる複数の化学独立栄養細菌を含む少なくとも1つの処理リアクタ内で供給源からの二酸化炭素排出物を処理することができるクリーンな燃料処理システムを達成する方法及びシステムを開示している。硫酸還元菌を使用して、硫黄含有化合物を化学独立栄養細菌に供給することができる。
【0007】
米国特許第10,376,837号は、二酸化炭素排出物をバイオ燃料、肥料、又は供給原料などの様々な製品に使用され得るバイオマスに変換することができる複数の化学独立栄養細菌を含む少なくとも1つの処理リアクタ内で供給源からの二酸化炭素排出物を処理することができるクリーンな燃料処理システムを達成する方法及びシステムを開示している。酸化窒素種を還元する細菌を使用して、還元窒素化合物を化学独立栄養細菌に供給することができる。
【0008】
米国特許第10,543,458号は、硫化水素及びメルカプタンを含むガスを処理するプロセスを開示しており、この方法は、(a)硫化水素及びメルカプタンを含むガスを、硫化物酸化細菌を含む水溶液と接触させ、それにより、負荷された水溶液及びより低い含有量の硫化水素及びメルカプタンを有するガスを得るステップと、(b)嫌気性条件下で、担体上に固定化されたメルカプタン還元微生物と負荷された水溶液を接触させるステップと、(c)ステップ(b)で得られた水溶液をメルカプタン還元微生物から分離して、第一の液体排出物を得るステップと、(d)第一の液体排出物を酸化剤と接触させて硫化物酸化細菌を再生し、再生硫化物酸化細菌を含む第二の液体排出物を得るステップとを含む。ステップ(a)に存在する硫化物酸化細菌は、ステップ(d)で得られた再生硫化物酸化細菌からなる。
【0009】
米国特許第10,801,045号は、生物において、糖、アルコール、化学物質、アミノ酸、ポリマー、脂肪酸及びそれらの誘導体、炭化水素、イソプレノイド、並びにそれらの中間体などの炭素系生成物の化学的独立栄養生成を与える経路、機構、システム及び方法(それにより、これらの生物は、ギ酸塩などの無機エネルギーを使用して無機炭素を目的の有機炭素系生成物に効率的に変換する)、並びに様々な炭素系生成物の商業生産のための生物の使用を開示している。
【0010】
先行技術は、主に、硫黄(例えばH2S)の除去又はCO2の捕捉及び/又は利用のいずれかに関する。先行技術は、炭素捕捉が硫黄除去と関連するプロセスを提供することができない。
【0011】
二酸化炭素(CO2)を捕捉することを含む1又は複数のバイオ製品を製造するためのプロセスにおいて、硫化水素(H2S)などのさらなる不純物の除去は、改善された製品の製造をもたらす。先行技術文献のいずれにも、微生物を用いて炭素を捕捉するようなプロセスと組み合わせてH2Sを除去する方法に関する満足のいく教示は含まれていない。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、当技術分野における従来のプロセスとは異なり、硫黄(例えばH2S)も除去及び利用される、1又は複数のバイオ製品を製造するために二酸化炭素を捕捉するための改善されたプロセスを提供することである。
【0013】
本明細書では、1又は複数のバイオ製品は、再生可能又はリサイクル可能なベースで利用可能な有機材料に由来する1又は複数の製品を意味し、材料、化学物質及びエネルギーを含み得る。バイオ製品の具体例としては、バイオマス、生化学物質、脂質、炭水化物、及びアルコールが挙げられ、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリヒドロキシブチラート、ポリヒドロキシバレラートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明のさらなる目的は、従来の方法と比較して効率的であり、バイオ製品の生産を強化することができ、バイオ製品の組成の制御を可能にする改善されたプロセスを実行するためのシステムを提供することである。
【0015】
本発明によれば、CO2を1又は複数のバイオ製品に変換するための微生物学的プロセスが提供され、微生物学的変換に必要なエネルギーは、硫黄供給原料の付随する微生物学的酸化によって少なくとも部分的に提供される。
【0016】
微生物学的プロセスは、好ましくは1又は複数の化学栄養生物によって行われる。
【0017】
好ましくは、化学栄養生物の1又は複数は、硫黄酸化細菌である。
【0018】
好ましくは、硫黄供給原料は、硫黄酸化細菌によって元素状硫黄に少なくとも部分的に酸化される。
【0019】
化学栄養生物は、単一の属、種及び/又は株として提供され得る。異なる生物のコンソーシアムも使用され得る。生物は、好気性、嫌気性、通性又はその他であり得る。
【0020】
本発明は、硫化物(又はスルファニル-典型的には主にH2Sであるが、メルカプタン/チオールなども想定され得る)及びCO2の両方が存在する任意の工業プロセスにおける利用を見出す。本発明のプロセスは、精製所及び化学プラントなどの下流設備、酸性ガス処理プラント及び酸性ガス注入井などの中流設備、並びにサワーオイル及びガス井、バイオガス及び埋立地ガス設備などの上流産業に適用することができる。本発明のプロセスを利用する場合、そのような施設のオペレータは、炭素隔離に関する規制/政府のインセンティブから利益を得ることができ、また、資本集約的で運転上複雑なクラウスユニット及びプロセスに頼ることなく効果的な脱硫を達成する立場にある。
【0021】
したがって、本発明は、以下のステップ:
i.未加工の二酸化炭素及び硫黄含有供給原料を別々に又は組み合わせて吸収媒体又は溶解媒体と接触させて、溶解又は吸収された無機炭素及び硫黄を含む試薬流を形成するステップ;及び
ii.試薬流の少なくとも一部をバイオリアクタ内の微生物ブロスと接触させて、硫黄を酸化し、二酸化炭素から1又は複数のバイオ製品を生成するステップ
を含む上記による微生物学的プロセスを提供する。
【0022】
溶解又は吸収された無機炭素は、典型的には、重炭酸塩又は炭酸塩(好ましくは少なくとも大部分が重炭酸塩)の形態で提供される。
【0023】
溶解又は吸収された無機硫黄は、典型的には、スルフィド、スルフヒドリル又はスルファニル(最も一般的にはスルフヒドリル、例えばNaSH)の形態で提供される。
【0024】
本発明のプロセスは、2022年5月6日に出願された本発明者らの同時係属中であるが、現在は未公開の出願であるUSSN63364275(その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されているpH制御を利用することができる。
【0025】
本発明のプロセスは、
iii.上記の1又は複数のバイオ製品を1又は複数のバイオ製品と液体流とに分離するステップ;及び
iv.液体流の少なくとも一部をプロセスのステップi.に、吸収媒体又は溶解媒体として又はその一部として使用するために再循環させるステップ
をさらに含み得る。
【0026】
本発明の重要な利点は、単一のプロセスでCO2捕捉と硫黄除去を組み合わせたことであり、これにより、温室効果ガス排出を抑制し、かつ、有害な硫黄流を安全に改善することができる。
【0027】
周知のように、二酸化炭素(CO2)は、燃料を燃焼させることによって生成される一般的な温室効果ガス排出である。炭素捕捉の従来の方法には、光合成アプローチ、及び油堆積物への隔離が含まれる。硫化水素(H2S)は、非常に危険なガスであり、ヒトに有毒であり、細胞呼吸を阻害する。従来、H2Sは、アミンガス処理技術によって燃料ガスから除去され、そこでアンモニウム塩に変換され、続いて元素状硫黄に変換される。
【0028】
炭素捕捉をH2S除去と結び付けることは、元素状硫黄へのH2Sの酸化が炭素固定に必要な電子及びエネルギーを提供し、当該技術分野における従来のプロセスと比較して、及び1又は複数の有用なバイオ製品を生成する本発明のプロセスにおいて、プロセスに必要な全体的なエネルギーを減少させるという点で明確な利点を有する。
【0029】
吸収媒体又は溶解媒体のpHは、本発明者らの前述の同時係属中であるが現時点では未公開の出願である2022年5月6日に出願されたUSSN63364275に教示されているように、好ましくは、二酸化炭素を吸収又は溶解するその能力を促進し、1又は複数のバイオ製品の製造を促進するバイオリアクタ内の反応条件に寄与するように制御される。
【0030】
必要なpH制御は、生物学的手段(例えば、適切な微生物及び/又は微生物消化条件の選択)、化学的手段(例えば、吸収媒体若しくは溶解媒体又はそれに寄与する再循環流のpHを調整することによる)、又はその両方によって行われ得る。
【0031】
吸収媒体又は溶解媒体のpHは、例えば、補給水の添加によって調整され得る。多くの場合、再循環流のpHを所望の範囲内で上昇させることが望ましく、これはアルカリ性補給水の添加によって達成することができる。
【0032】
再循環流は、約10.5~約11.5のpHを有し得る。一実施形態では、再循環流は約11のpHを有する。
【0033】
有利には、約10.5~約11.5のpHは、生菌がガス接触器に入るのを防ぐ。
【0034】
いくつかの実施形態では、再循環流がガス接触器及び/又はバイオリアクタに戻る前に、再循環流に補給水又は溶媒を添加することができる。
【0035】
好ましくは、ガス接触器からバイオリアクタへの液体流のpHは、8~10、好ましくは9~10、最も好ましくは9~9.5に維持される。一実施形態では、再循環流のpHは9~9.5である。
【0036】
液体流のpHが所望の範囲内(例えば、9~10、最も好ましくは9~9.5)にない場合、pHを所望の範囲に維持するために、アルカリ化合物、例えば水酸化ナトリウムを補給水に添加することができる。したがって、いくつかの実施形態では、補給水はアルカリ性化合物を含む。いくつかのさらなる実施形態では、補給水は水酸化ナトリウムを含む。
【0037】
アルカリ化合物、例えば水酸化ナトリウムを補給水に添加して、補給水のpHを約12~13に上昇させてもよい。好ましくは、得られる補給水のpHは約12.5である。
【0038】
補給水のpHを上昇させることは、再循環流を滅菌するのに役立ち得る。再循環流の滅菌は、増殖を防ぐために再循環流のpHを上昇させること、殺生物剤を添加すること、漂白剤(複数可)を添加すること、UV滅菌、ガンマ線照射又は温度上昇を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の方法によってさらに達成することができる。
【0039】
さらに、pHを上昇させることにより、二酸化炭素吸収を改善し、ガス接触器内の望ましくない微生物の増殖を防止することができる。これはまた、バイオリアクタ内での硫酸形成を回避するのに役立ち得る。
【0040】
本発明のプロセスは、炭素の捕捉及び利用に必要なエネルギーを減少させ、バイオ製品(例えば、燃料を製造するために使用されるバイオマス)から有害な汚染物質を除去するのに特に有効である。従来の化学プロセスでは、炭素捕捉に必要なエネルギーの大部分は、CO2及びH2Sの吸収に使用される溶媒を再生する際に消費される。本発明では、生体系を使用して、溶液中の重炭酸塩の形態で存在する溶解CO2、及び元素状硫黄の形態で存在するH2Sを消費し、それによって再生可能な溶媒を生成し、溶媒の再生に従来必要とされるエネルギーを節約する。
【0041】
流体供給原料流の供給源は、例えば、煙道ガス、周囲空気、及び/又は二酸化炭素及び硫黄材料(硫化水素など)を含む任意の他のプロセスガス流(複数可)、すなわち未加工の供給原料(複数可)であってもよい。そのような供給源の使用は、他の点では有害な二酸化炭素及び硫黄の排出を減少させるのに有利に役立つ。未加工の供給原料は、CO2と硫黄材料(例えばH2S)との混合物を含む単一の流れとして、又はCO2と硫黄材料(例えばH2S)とを個別に含む2つの別々の流れとして提供され得る。
【0042】
溶解した無機炭素及び硫黄を含む試薬流を形成するための未加工の供給原料(複数可)と吸収媒体又は溶解媒体との接触は、ガス接触器(又は、以下に説明するように、2つ以上のガス接触器)などの適切な容器内で行われ得る。吸収/溶解媒体は、典型的には、比較的低い二酸化炭素及び硫黄含有量を有し、これは未加工の供給原料との接触によって実質的に増加する。したがって、このプロセスは、例えば1又は複数のガス接触器を用いて、CO2及び硫黄供給原料を試薬流に溶解又は吸収することによって、再循環流の炭素質及び硫黄含有量を増加させることをさらに含み得る。
【0043】
上述したように、本プロセスは、特に、プロセスへのCO2及び硫黄の供給原料の別々の流れがある場合、2つ(又はそれよりも多く)の別々の接触器を利用することができる。2つ(又はそれよりも多く)のガス接触器を備えるシステムは、例えば試薬流中のC/S比を制御することをより容易にすることによって、より大きな操作上の柔軟性を提供する。C/S比は、最終バイオ製品(複数可)の仕様を制御する上で重要であり得る。硫黄流がH2Sである場合、(合わせた)供給原料中のw/w CO2/H2S比は、約0.1:1~約100:1、例えば約1:1~約50:1、好ましくは約2:1~約25:1、より好ましくは約3:1~約15:1、例えば約6又は7:1、特に約6.5:1であり得る。
【0044】
C/S比はモル項で表すこともできる(H2Sは必ずしも硫黄供給原料ではないことに留意されたい)。モル比C/Sは、好ましくは約10:1~約0.1:1、例えば約5:1~約0.5:1である。近似パリティのモル比(すなわち、約1:1)が望ましい場合がある。
【0045】
C/Sの比は、本発明のプロセスにおいて重要な結果をもたらす可能性があり、例えば、バイオリアクタに微生物のコンソーシアムが装填されている場合、C/S比の選択は、それらの生物の一部を優先的に応答させ、それによって最終生成物の性質に影響を及ぼす。例えば、最終生成物がバイオマスであり、高い脂質含有量を有するバイオマスを生産することが望まれる場合、C/S比は、所望のバイオマス組成特性をもたらす微生物に有利になるように適宜選択され得る。
【0046】
当技術分野で知られている様々なタイプの市販のガス接触器がある。本発明での使用に適したガス接触器は、入口流体流の組成に依存し得る。既知の市販の接触器としては、非構造化パッキングを有する吸収カラム、構造化パッキングを有する吸収カラム、又はトレイを有する吸収カラムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
利用されるガス接触器又はトレイのパッキングは、具体的には、ガス及び/又は液体の物質移動を改善するための設計である。そのような設計は公知であり、例えば、Perry’s Chemical Engineers’Handbook.New York:McGraw-Hill,1984から見出され得る。
【0048】
未加工の供給原料は、バイオリアクタに入る前にそのようなガス接触器に予め供給されてもよい。したがって、ガス接触器及びバイオリアクタは、別個のゾーンとして設けられてもよい。あるいは、ガス接触器及びバイオリアクタは、単一のハイブリッドゾーンとして提供されてもよい。この場合、本発明のプロセスでは、ガス接触器及びバイオリアクタは、単一の容器、例えば管状プラグフローリアクタであってもよいことが理解されよう。この場合、再循環流は、二酸化炭素及び硫化水素を含む流体流に加えて、バイオリアクタに直接供給される。
【0049】
未加工の供給原料をガス接触器内で処理して、炭素に富む供給原料液(溶解又は吸収された無機炭素を含む試薬流)及び二酸化炭素を実質的に含まないオフガスを生成することができる。例えば、ガス接触器は、未加工の供給原料(例えば、周囲空気、煙道ガス、又はCO2を含む任意の他のプロセスガス流)から二酸化炭素を吸収して、(試薬流としての)濃縮炭素液体流及び二酸化炭素を実質的に含まないオフガスを生成するように構成されてもよい。
【0050】
二酸化炭素を実質的に含まないオフガスは、任意の一般的に知られているプロセスで利用することができる。例えば、二酸化炭素を含まないオフガスは、吸着剤の熱風再生などのプロセスで使用されてもよく、又は圧縮空気供給として使用されてもよい。
【0051】
未加工の供給原料は、任意に、ガス接触器及び/又はバイオリアクタに入る前に圧力ブースタを介して供給されてもよい。任意に、未加工の供給原料は、プロセスに入る前に、例えば浄化又は濃縮によって前処理されてもよい。
【0052】
未加工の炭素質供給原料は、最大約100%v/vの二酸化炭素を含んでもよいが、産業排出物、煙道ガス、オフガス及び/又は周囲空気に典型的に見られるような様々な他の材料を含んでもよい。
【0053】
未加工の硫黄供給原料は、最大約100%v/vのH2Sを含んでもよいが、産業排出物、煙道ガス及び/又はオフガスに典型的に見られるような様々な他の材料を含んでもよい。
【0054】
二酸化炭素の量は、主に窒素、水及び酸素によってバランスされ得る。追加の微量のSOx、NOx、H2S、粒子状物質、CO、及び工業用ガス、石油化学、又は他の重工業運転に典型的に存在する他の化合物が存在してもよい。
【0055】
微生物ブロスは、有機流のバイオレメディエーションのための廃水、アンモニア及び/又は酵素(例えば、炭酸脱水酵素)を使用する、アミン、アルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)の少なくとも1つから選択される溶媒を含む。
【0056】
本発明者らは、バイオリアクタ内のそのような環境が、最適な微生物増殖を達成する制御された環境を提供することを見出した。
【0057】
硫黄酸化細菌(SOB)は、先行技術の説明に見出すことができる。これらには、チオアルカリミクロビウム(Thioalkalimicrobium)、チオアルカリビブリオ(Thioalkalivibrio)、チオバシラス(Thiobacillus)、アルカリリムニコーラ(Alkalilimnicola)、ガイパケリア(Guyparkeria)、ハロモナス(Halomonas)、アルカリスピリルム(Alkalispirillum)、ビブリオ(Vibrio)、チオミクロスピラ(Thiomicrospira)、ガイパケリア(Guyparkeria)、チオアルカリスピラ(Thioalkalispira)(以前はチオアルカリミクロビウム(Thioalkalimicrobium))、エクトチオロドスピラ科(Ectothiorhodospiraceae)、ロドバクテリウム科(Rhodobacteraceae)、ロージナトロバクター(Roseinatrobacter)、アルカリリムニコーラ(Alkalilimnicola)、ガイパケリア(Guyparkeria)、デスルフルオムーサ(Desulfuromusa)、デスルフリスピリルム(Desulfurispirillum)が含まれるがこれらに限定されない。
【0058】
バイオ製品の組成又は変換効率は、遺伝子工学及び改良されたリアクタ設計によって任意に改善することができる。
【0059】
本発明で使用される生物学的手段は、最終バイオ製品に依存し得る。
【0060】
バイオリアクタ条件は、C/S比及び炭素種分化を決定するためのインライン・モニタリングによって制御され得る。この情報を使用して、動作pH及びガス流量を最適化し、CO2捕捉及びシステム性能を最大化することができる。
【0061】
本発明のプロセスへの栄養供給は、バイオ製品の形成を最大化するように制御される。好ましくは、バイオリアクタへの栄養供給は、2mg(N)/l及び/又は2mg(P)/lを超え、好ましくは2.5を超え、より好ましくは3mg(N又はP)/lを超え、生成されるバイオ製品(例えばバイオマス)の量を最大化するように操作される。この栄養素濃度は、典型的には、現在のバイオ脱硫技術における従来よりも高く、実際、このような従来技術では、栄養素供給はこれらの範囲未満に意図的に維持される。
【0062】
本発明のプロセスは、とりわけ、望ましくは高い脂質、炭水化物及び/又はタンパク質含有量を有する、バイオマス、PHA/B、1,4-ブタンジオールなどの1又は複数のバイオ製品をもたらす。一態様では、プロセスは、タンパク質及び炭水化物よりも優先的に脂質を産生するように適合され得る。これは、微生物に一時的にストレスを与え、脂質産生を促進するために、時間制限された栄養欠乏環境(すなわち、低N又はPバイオアベイラビリティ)でバイオリアクタを動作させることによって達成され得る。
【0063】
二酸化硫黄の形成を回避するために、バイオリアクタに供給される酸素の量を制限することが望ましい場合もある。このようにバイオリアクタを「酸素リーン」で運転することは、硫黄酸化細菌による元素状硫黄の産生を最大化するのに役立つ。
【0064】
有利には、本発明によるプロセスは、異なる特性を有するバイオマスを製造するために使用することができる。
【0065】
1又は複数のバイオ製品がバイオマスを含む場合、いくつかの状況では、脂質含有量を最大化することが望ましい場合があり、この場合、バイオマスは、少なくとも約40%w/wの脂質含有量、例えば少なくとも約50%w/wの脂質含有量、例えば60%w/w又は70%w/wの脂質含有量を含み得る。
【0066】
あるいは、例えば、PHA/PHB又はBDOが最終生成物として標的化される場合、脂質含有量はより低くてもよく、例えば、40%w/w以下、例えば、30%w/w以下であってもよい。
【0067】
本発明によるプロセスから製造された1又は複数のバイオ製品は、非限定的な例として、エネルギー源、最終生成物、異なるプロセスにおける中間生成物、又は炭素貯蔵媒体として使用され得る。好ましい最終用途は、生成物の組成に依存し得る。1又は複数のバイオ製品が高い脂質含有量を有するバイオマスである場合、バイオディーゼルなどのバイオ燃料製造に望ましい。逆に、高炭水化物含量はエタノールの生産にとってより有利であり、高タンパク質バイオマスは農業飼料又は栄養補助食品のためのタンパク質サプリメントの生産に適している。
【0068】
一実施形態では、還元された元素状硫黄をバイオマスから分離する方法があり得る。場所及び最終生成物に応じて、これには、遠心分離、溶媒抽出、ハイドロサイクロン、又は当技術分野で公知の任意の他の分離方法が含まれ得る。
【0069】
別の実施形態では、硫黄が抽出され、標的分子が1又は複数のバイオ製品から除去されると、廃棄バイオマス又はバイオマス・デブリの一部が存在する。このデブリは、バイオガス生成のための嫌気性消化槽への供給物として使用することができる。デブリは、二次バイオリアクタに供給するために利用することもできる。二次バイオリアクタは、任意に、硫酸還元菌(SRB)を有するリアクタであってもよく、これは、第一のリアクタにフィードバックされるH2Sを生成して炭素捕捉を改善し得る。これは、部位が完全な炭素捕捉に十分なH2Sを欠いている場合に有用であろう。この第二のリアクタはまた、PHA/B、1,4-ブタンジオールなどの多くの他の生物学的化学物質を生成するように特別に設計されてもよい。
【0070】
本発明の第二の態様によれば、CO2を1又は複数のバイオ製品に変換するための装置が提供され、微生物学的変換に必要なエネルギーは、硫黄供給原料の付随する微生物学的酸化によって少なくとも部分的に提供され、その装置は、以下:
i.未加工の二酸化炭素及び硫黄含有供給原料を別々に又は組み合わせて吸収媒体又は溶解媒体と接触させて、溶解又は吸収された無機炭素及び硫黄を含む試薬流を形成するための手段;及び
ii.試薬流の少なくとも一部をバイオリアクタ内の微生物ブロスと接触させて、硫黄を酸化し、二酸化炭素から1又は複数のバイオ製品を生成するための手段
を備える。
【0071】
本発明による装置は、高炭素含有量の流体流を濃縮するためのガス接触器、及び/又は、再循環されるH2Sを生成し炭素捕捉を改善するための第二のバイオリアクタをさらに備えてもよい。
【0072】
本発明によるプロセスは、任意に、少なくとも1つの下流プロセスをさらに含んでもよい。
【0073】
下流プロセスは、二酸化炭素を含むガスを生成するプロセス、例えばバイオ燃料生成プロセスを含み得る。
【0074】
下流プロセスは、元素状硫黄を肥料又は汎用化学物質などの有用な最終生成物に変換するプロセスを含み得る。
【0075】
下流プロセスからの副産物又は生成物は、有利には、本発明によるプロセスで再利用及び使用することができ、それによってプロセス全体の環境への影響を改善し、外部手段の導入の必要性を減少させる。
【0076】
以下の例及び図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】混合供給物が使用される、本発明による炭素を隔離し、H
2Sを除去するプロセスの概略図を示す。
【
図2】別個の供給物が使用される、本発明による炭素を隔離し、H
2Sを除去するプロセスの概略図を示す。
【
図3】プロセスによって生成された元素状硫黄が硫黄還元バイオリアクタを介して再循環されて、硫黄供給原料としてプロセスにおいて使用するためのH
2Sを生成する、本発明によるプロセスの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1
図1によって概略的に表される本発明のプロセスでは、CO
2及びH
2Sを含む供給原料ガスは、ライン201内で大気圧で圧力ブースタ10に供給され、圧力ブースタは、煙道ガスがガス接触器11内の油圧ヘッドを克服する程度まで供給原料ガスの圧力を増加させる。加圧ガスは、ライン202を通過してガス接触器11に至り、また、ライン204からの補給水と組み合わせてプロセスからの液体再循環流と共にライン203によっても供給される。ガス接触器11において、供給原料流中のCO
2及びH
2Sは、液体再循環流に溶解され、ライン205でバイオリアクタ12に供給される。実質的に二酸化炭素を含まず硫化水素を含まないオフガスがライン206で排出される。
【0079】
ライン205の流れBは、微生物ブロスが充填されてバイオマス生成物及び液体ビヒクルを生成するために流れBの微生物ブロスによる消費を確実にするのに有効な温度/圧力/pHの条件下に維持されたバイオリアクタ12に入る。バイオリアクタ12には、ライン207を介して空気(酸素)が供給される。1又は複数のバイオ製品及び液体ビヒクルは、ライン209でバイオマス分離器13に供給され、ベントガスはライン208を通ってバイオリアクタを出る。バイオマス分離器13は、ライン210を通して除去される1又は複数のバイオ製品と、ライン204において補給水と組み合わせた後にライン203においてガス接触器11に再循環される再循環流Aとを分離する。
【0080】
ライン201で供給される流体供給原料流は、(この例では)化学プラントからの煙道ガスであるが、発電プラント又は他の産業プロセスなどの他の供給源を使用することもできる。
【0081】
供給原料ガスは、ライン201内で大気圧で圧力ブースタ10に供給され、圧力ブースタは、煙道ガスがガス接触器11内の油圧ヘッドを克服する程度まで供給原料ガスの圧力を増加させる。ガス接触器11は、ライン204からの補給水と組み合わせてプロセスからの液体再循環流と共にライン203で供給される。
【0082】
ガス接触器11において、供給原料流中の二酸化炭素及びH2Sは、アルカリ性液体再循環流に溶解され、ライン205でバイオリアクタ12に供給される。実質的に二酸化炭素を含まず硫化水素を含まないオフガスがライン206で排出される。
【0083】
ライン205の流れBは、微生物ブロスが充填されて1又は複数のバイオ製品及び液体ビヒクルを生成するために流れBの微生物ブロスによる消費を確実にするのに有効な温度/圧力/pHの条件下に維持されたバイオリアクタ12に入る。両方ともライン207でバイオマス分離器13に供給され、そこから1又は複数のバイオ製品がラインにおいて回収され、ライン208では、ライン204において補給水と組み合わせた後にライン203においてガス接触器11に再循環される再循環流Aが回収される。
【0084】
図2及び例
図2によって概略的に表される本発明のプロセスでは、CO
2を含む供給原料ガスは、ライン301内で大気圧で圧力ブースタ10に供給され、圧力ブースタは、煙道ガスがガス接触器11内の油圧ヘッドを克服する程度まで供給原料ガスの圧力を増加させる。加圧ガスは、ライン302を通過してガス接触器11に至り、また、ライン304からの補給水と組み合わせてプロセスからの液体再循環流と共にライン303によっても供給される。ガス接触器には、ライン305からのH
2Sを含む別個の流れも供給される。ガス接触器11において、CO
2及びH
2Sは、液体再循環流に溶解され、ライン307でバイオリアクタ12に供給される。実質的に二酸化炭素を含まず硫化水素を含まないオフガスがライン306で排出される。
【0085】
ライン301で供給される流体供給原料流は、(この例では)化学プラントからの煙道ガスであるが、発電プラント又は他の産業プロセスなどの他の供給源を使用することもできる。
【0086】
ライン305で供給される流体供給原料流は、(この例では)H2S流であるが、化学プラント若しくは発電プラント又は他の産業プロセスなどの他の供給源を使用することもできる。
【0087】
ライン307の流れBは、微生物ブロスが充填されてバイオマス生成物及び液体ビヒクルを生成するために流れBの微生物ブロスによる消費を確実にするのに有効な温度/圧力/pHの条件下に維持されたバイオリアクタ12に入る。バイオリアクタ12には、ライン308を介して空気(酸素)が供給される。1又は複数のバイオ製品及び液体ビヒクルは、ライン310でバイオマス分離器13に供給され、ベントガスはライン309を通ってバイオリアクタを出る。バイオマス分離器13は、ライン311を通して除去される1又は複数のバイオ製品と、ライン304において補給水と組み合わせた後にライン303においてガス接触器11に再循環される再循環流Aとを分離する。
【0088】
例
図2に概略的に示す本発明のプロセスでは、炭素含有供給原料流(煙道ガス)及びH2S供給原料流(H2Sガス)が、ガス接触器11に供給される。
【0089】
【0090】
煙道ガスは、大気圧又は高圧で供給することができる。大気圧で供給される場合、圧力ブースタを使用して煙道ガスの圧力を上昇させて、ガス接触器11内の油圧ヘッドを克服することができる。ガス接触器11はまた、H2S含有流も供給される。ガス接触器11はまた、プロセスからの液体再循環流も供給される。ガス接触器11では、二酸化炭素及び硫化水素が液体流に溶解され、バイオリアクタ12に供給される。実質的に二酸化炭素を含まず硫化水素を含まないオフガスは、オフガスとして排出される。
【0091】
【0092】
バイオリアクタ12に供給される液体流の組成は以下の通りである。
【表3】
【0093】
ガス接触器11から排出されるオフガスの組成は以下の通りである。
【表4】
【0094】
バイオリアクタ12には、ガス接触器11からの液体流及び酸素源としての圧縮空気が供給される。
【0095】
バイオリアクタ12は、微生物ブロスを充填され、ガス接触器11から供給される液体流の微生物ブロスによる消費を確実にして硫黄含有バイオマス生成物及び液体ビヒクルを生成するのに有効な温度/圧力/pHの条件下で維持される。硫黄含有バイオマス及び液体ビヒクルは、バイオマス分離器13に供給される。濃縮された硫黄含有バイオマス及び実質的にバイオマスを含まない液体が生成される。バイオマスを含まない液体は、ライン303を介してガス接触器11に戻される。いくつかの実施形態では、濃縮硫黄含有バイオマスをさらに処理して、バイオマスから元素状硫黄を分離することができる。他の実施形態では、濃縮硫黄含有バイオマスは、さらなるバイオリアクタのための供給原料として直接使用される。
【0096】
特定の実施形態では、バイオリアクタ12の運転パラメータは、バイオマスの増殖を促進するように最適化される。他の実施形態では、バイオリアクタの運転パラメータは、脂質の蓄積を促進するように最適化される。さらに他の実施形態では、バイオリアクタ運転パラメータは、炭水化物の蓄積を促進するように最適化される。
【0097】
上述の煙道ガス及びH2S含有ガス流は、実質的に硫化水素を除去し、二酸化炭素を捕捉するために本発明に従って処理することができる。
【0098】
図3
図3によって概略的に表される本発明のプロセスでは、本発明のプロセスからの元素状硫黄生成物は、H
2Sバイオリアクタを介して再循環され、本発明のプロセスのための硫黄流を提供する。
【0099】
煙道ガスは、ライン401を介してCO2吸収器20に供給される。CO2吸収器20では、二酸化炭素は再循環された液体流によって吸収され、ライン402を通過してH2S吸収器21に至る。H2S吸収器21はまた、H2Sバイオリアクタ22からの流れ403によって供給される。H2S吸収器21では、硫化水素は再循環された液体流に吸収される。
【0100】
ライン401で供給される流体供給原料流は、(この例では)化学プラントからの煙道ガスであるが、発電プラント又は他の産業プロセスなどの他の供給源を使用することもできる。
【0101】
供給原料ガスは、大気圧又は高圧で供給することができる。大気圧で供給される場合、圧力ブースタを使用してサワーガスの圧力を上昇させて、ガス吸収器20の油圧ヘッドを克服することができる。
【0102】
炭素及び硫黄含有試薬流はライン404を通って、微生物ブロスが充填されて1又は複数のバイオ製品及び液体ビヒクルを生成するために流れの微生物ブロスによる消費を確実にするのに有効な温度/圧力/pHの条件下に維持された好気性バイオリアクタ23に入る。バイオリアクタ23には、ライン406を介して栄養素、水酸化ナトリウム及び水が供給され、再循環された液体ビヒクルも含んでいる。1又は複数のバイオ製品及び液体ビヒクルは、ライン407でセトラー24に供給され、そこから1又は複数のバイオ製品が回収される。ライン408において、CO2の再循環流は、CO2吸収器20に再循環される。
【0103】
1又は複数のバイオ製品と液体ビヒクルとの混合物は、セトラー24からライン409を通って、最初に遠心分離機25に入り、遠心分離機は、ライン411を通して元素状硫黄を分離する条件下で動作する。実質的に硫黄を含まない生成物の混合物は、遠心分離機25からライン410を通って遠心分離機26に入り、遠心分離機は、液体ビヒクルからバイオ製品を分離する条件下で動作する。所望のバイオ製品はライン412を通して収集され、再循環された液体ビヒクルはライン406を通して除去され、ライン413を通して供給される栄養素、水酸化ナトリウム及び水と組み合わせて好気性バイオリアクタに再循環される。過剰な液体ビヒクルの除去を可能にするために、ブリード出口414も存在する。
【0104】
ライン411を通って除去された硫黄はH2Sバイオリアクタ22に供給され、そこには、ライン415からバイオマス・デブリも供給される。H2Sバイオリアクタに硫酸還元菌を充填し、H2Sの流れを生成し、これをライン403を通してH2S吸収器21にフィードバックして炭素捕捉を改善する。
【0105】
誤解を避けるために、二酸化炭素を隔離するためのプロセスに関するすべての特徴はまた、適切な場合には、二酸化炭素を隔離するための装置に関連し、逆もまた同様である。
【外国語明細書】