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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120210
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】切開器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61B17/32 528
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026849
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺内 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 敏明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広明
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF01
4C160KL03
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】チューブの内外径やナイフワイヤの外径を維持しつつ、支持部材の回転操作によってナイフワイヤの露出部の向きを所望の向きに円滑に変化させる。
【解決手段】切開器具は、第1ルーメンを有するチューブと、第1ルーメンに収容されたナイフワイヤと、ナイフワイヤの基端部を回転可能に支持する支持部材とを備える。ナイフワイヤは、チューブの先端とチューブの基端との間において、少なくともチューブが所定の姿勢にあるときに第1ルーメンに通じる孔部を介してチューブの外部に露出する露出部を有する。チューブは、チューブの先端とチューブの基端との間において、チューブの外側表面に沿って延びる複数の切り欠きまたは溝を有する形状である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切開器具であって、
第1ルーメンを有するチューブと、
前記第1ルーメンに収容されたナイフワイヤと、
前記ナイフワイヤの基端部を回転可能に支持する支持部材と、
を備え、
前記ナイフワイヤは、前記チューブの先端と前記チューブの基端との間において、少なくとも前記チューブが所定の姿勢にあるときに前記第1ルーメンに通じる孔部を介して前記チューブの外部に露出する露出部を有し、
前記チューブは、前記チューブの前記先端と前記チューブの前記基端との間において、前記チューブの外側表面に沿って延びる複数の切り欠きまたは溝を有する形状である、切開器具。
【請求項2】
請求項1に記載の切開器具であって、
複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれの幅は、前記第1ルーメンの直径以下である、切開器具。
【請求項3】
請求項2に記載の切開器具であって、
複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれの幅は、前記ナイフワイヤの前記露出部の直径の最大値よりも小さい、切開器具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の切開器具であって、
複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれの少なくとも一部分は、前記チューブにおける前記ナイフワイヤの前記露出部を露出させた部分である第1部分に形成されている、切開器具。
【請求項5】
請求項4に記載の切開器具であって、
複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれの全体は、前記チューブの前記第1部分に形成されている、切開器具。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の切開器具であって、
複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれの先端は、前記チューブの前記第1部分の先端よりも基端側に位置する、切開器具。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の切開器具であって、
複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれは、前記チューブの軸方向に沿って延びている、切開器具。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の切開器具であって、
前記ナイフワイヤの前記露出部の直径の最小値は、0.15mm以上、0.30mm以下である、切開器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、切開器具に関する。
【背景技術】
【0002】
総胆管結石症の治療法として、内視鏡的乳頭切開術(EST:Endoscopic Sphincterotomy)が知られている。内視鏡的乳頭切開術では、胆管および膵管の出口に相当する乳頭部に切開器具を挿入し、切開器具によって生体組織を切開する。
【0003】
内視鏡的乳頭切開術に用いられる切開器具は、ルーメンを有するチューブと、該ルーメンに収容されたナイフワイヤ(切断用ワイヤ)と、該ナイフワイヤの基端部を回転可能に支持する支持部材とを備える(例えば、特許文献1参照)。ナイフワイヤの一部分(以下、「露出部」という。)は、常時、あるいはチューブが所定の姿勢にあるときに、チューブの外部に露出する。高周波電源からナイフワイヤに高周波電流を印加することにより、ナイフワイヤの露出部によって生体組織を切開することができる。
【0004】
手技者が、乳頭部の所定範囲の生体組織を所定形状で切開するために、支持部材を回転させる操作を行う。これにより、支持部材に支持されたナイフワイヤの基端部に回転トルクが生じ、該回転トルクはナイフワイヤを介してチューブに伝わる。その結果、チューブが中心軸まわりに回転し、ナイフワイヤの露出部の向きが所望の向きに変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4896351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の切開器具では、チューブのねじり剛性が高いため、手技者が支持部材を回転させる操作を行うことによってナイフワイヤの基端部に回転トルクを与えても、チューブが円滑に回転せず、ナイフワイヤの露出部の向きを所望の向きに円滑に変化させることができないことがある。チューブの一部分を細径にして該部分のねじり剛性を低くすることも考えられるが、その場合には、該部分の内外径が細くなって必要な大きさのルーメン等を形成することができない。また、ナイフワイヤの外径を大きくして回転トルク伝達性を向上させることも考えられるが、ナイフワイヤの外径を大きくするとナイフワイヤの切開能力が低下するおそれがある。
【0007】
このように、従来の切開器具では、チューブの内外径やナイフワイヤの外径を維持しつつ、支持部材の回転操作によってナイフワイヤの露出部の向きを所望の向きに円滑に変化させることができない、という課題がある。
【0008】
なお、このような課題は、乳頭部を切開する内視鏡的乳頭切開術に用いられる切開器具に限らず、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官等、人体内の各器官に挿入されて、生体組織を切開する切開器具全般に共通する課題である。
【0009】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0011】
(1)本明細書に開示される切開器具は、第1ルーメンを有するチューブと、前記第1ルーメンに収容されたナイフワイヤと、前記ナイフワイヤの基端部を回転可能に支持する支持部材とを備える。前記ナイフワイヤは、前記チューブの先端と前記チューブの基端との間において、少なくとも前記チューブが所定の姿勢にあるときに前記第1ルーメンに通じる孔部を介して前記チューブの外部に露出する露出部を有する。前記チューブは、前記チューブの前記先端と前記チューブの前記基端との間において、前記チューブの外側表面に沿って延びる複数の切り欠きまたは溝を有する形状である。
【0012】
本切開器具では、チューブが複数の切り欠きまたは溝を有するため、チューブのねじり剛性を低下させることができる。そのため、本切開器具によれば、チューブの内外径やナイフワイヤの外径を維持しつつ、支持部材の回転操作によってナイフワイヤの露出部の向きを所望の向きに円滑に変化させることができる。
【0013】
(2)上記切開器具において、複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれの幅は、前記第1ルーメンの直径以下である構成としてもよい。本構成によれば、チューブにおける切り欠きまたは溝が形成された部分の強度が過度に低下することを抑制することができる。
【0014】
(3)上記切開器具において、複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれの幅は、前記ナイフワイヤの前記露出部の直径の最大値よりも小さい構成としてもよい。本構成によれば、チューブにおける切り欠きまたは溝が形成された部分の強度が過度に低下することを効果的に抑制することができる。
【0015】
(4)上記切開器具において、複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれの少なくとも一部分は、前記チューブにおける前記ナイフワイヤの前記露出部を露出させた部分である第1部分に形成されている構成としてもよい。本構成によれば、チューブにおけるナイフワイヤの露出部を露出させた第1部分のねじり剛性を低下させることができ、支持部材の回転操作によってナイフワイヤの露出部の向きをより円滑に変化させることができる。また、チューブの第1部分の曲げ剛性を低下させることができ、チューブを湾曲させてナイフワイヤの露出部により切開を行う際の操作性を向上させることができる。
【0016】
(5)上記切開器具において、複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれの全体は、前記チューブの前記第1部分に形成されている構成としてもよい。本構成によれば、チューブにおけるナイフワイヤの露出部を露出させた第1部分のねじり剛性を効果的に低下させることができ、支持部材の回転操作によってナイフワイヤの露出部の向きをより円滑に変化させることができる。また、チューブの第1部分の曲げ剛性を効果的に低下させることができ、チューブを湾曲させてナイフワイヤの露出部により切開を行う際の操作性を向上させることができる。
【0017】
(6)上記切開器具において、複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれの先端は、前記チューブの前記第1部分の先端よりも基端側に位置する構成としてもよい。本構成によれば、切り欠きまたは溝の存在に起因するチューブへのナイフワイヤの先端部の固定強度の低下を抑制することができる。
【0018】
(7)上記切開器具において、複数の前記切り欠きまたは前記溝のそれぞれは、前記チューブの軸方向に沿って延びている構成としてもよい。本構成によれば、チューブが湾曲した際における複数の切り欠きまたは溝の存在に起因するチューブの強度低下を抑制することができる。
【0019】
(8)上記切開器具において、前記ナイフワイヤの前記露出部の直径の最小値は、0.15mm以上、0.30mm以下である構成としてもよい。本構成によれば、ナイフワイヤの回転トルク伝達性の向上と、ナイフワイヤの切開能力の向上と、の両立を実現することができる。
【0020】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、切開器具、切開器具を含むシステム、これらの装置およびシステムを製造する方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の切開器具の構成を概略的に示す説明図
図2図1のII-IIの位置における切開器具の横断面(XY断面)の構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における切開器具の横断面の構成を示す説明図
図4】切開器具の先端部の縦断面(YZ断面)の構成を示す説明図
図5】切開器具の先端部の外観構成を示す斜視図
図6】切開器具の操作方法の一例を示す説明図
図7】切開器具の操作方法の一例を示す説明図
図8】第2実施形態の切開器具の先端部の外観構成を示す斜視図
図9】第2実施形態の切開器具の横断面(XY断面)の構成を示す説明図
図10】第3実施形態の切開器具の先端部の外観構成を示す斜視図
図11】第4実施形態の切開器具の横断面(XY断面)の構成を示す説明図
図12】第5実施形態の切開器具の横断面(XY断面)の構成を示す説明図
図13】第6実施形態の切開器具の横断面(XY断面)の構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.第1実施形態:
(切開器具100の構成)
図1は、第1実施形態の切開器具100の構成を概略的に示す説明図である。切開器具100は、生体組織を切開するための器具であり、例えば、総胆管結石症の治療のための内視鏡的乳頭切開術(EST:Endoscopic Sphincterotomy)に用いられる。なお、切開器具100は、内視鏡的乳頭切開術に限られず、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官等、人体内の各器官に挿入されて生体組織を切開するために用いられてもよい。
【0023】
図1では、切開器具100の一部の構成の図示を適宜省略している。また、図1には、互いに直交するXYZ軸を示している。Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。図1では、切開器具100の各部がZ軸に平行な略直線状となった状態を示しているが、切開器具100の少なくとも一部は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。これらの点は、以降の図においても同様である。本明細書では、切開器具100およびその構成部分について、先端側の端を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0024】
切開器具100は、チューブ10と、ナイフワイヤ20と、コネクタ30と、ハンドル部40とを備える。図1には、チューブ10の中心軸Axを示している。本実施形態では、コネクタ30およびハンドル部40の中心軸は、チューブ10の中心軸Axと略一致している。ただし、これらの中心軸がチューブ10の中心軸Axと相違していてもよい。
【0025】
図2は、図1のII-IIの位置における切開器具100の横断面(XY断面)の構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における切開器具100の横断面の構成を示す説明図であり、図4は、切開器具100の先端部の縦断面(YZ断面)の構成を示す説明図であり、図5は、切開器具100の先端部の外観構成を示す斜視図である。なお、図3において、ナイフワイヤ(図1:20)は、記入されていない。
【0026】
チューブ10は、中心軸Axに沿って延びる長尺状の部材である。図2に示すように、チューブ10(ただし、後述する切り欠き11が形成された部分を除く)の横断面の外形(外周線10Pの形状)は、例えば略円形または略楕円形である。チューブ10の外径は、全長にわたって一定であってもよいし、長手方向に沿って変化していてもよい。なお、チューブ10における切り欠き11の周辺の構成については、後に詳述する。
【0027】
チューブ10には、デバイス用ルーメン16Lと、ナイフワイヤ用ルーメン17Lと、送液用ルーメン18Lとが形成されている。デバイス用ルーメン16Lは、例えばガイドワイヤ等の併用デバイスが収容(挿通)される内腔であり、チューブ10の先端からチューブ10の基端部に設けられた分岐部19まで長手方向に延びている。ナイフワイヤ用ルーメン17Lは、ナイフワイヤ20が収容(挿通)される内腔であり、チューブ10の先端から基端まで長手方向に延びている。送液用ルーメン18Lは、造影剤や生理食塩水等の液体を流通させるための内腔であり、チューブ10の先端から基端まで長手方向に延びている。各ルーメンの横断面の外形は、例えば略円形または略楕円形である。本実施形態では、デバイス用ルーメン16Lの直径W16は、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの直径W17よりも大きく、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの直径W17は、送液用ルーメン18Lの直径W18よりも大きい。各ルーメンの直径の大小関係は、任意に変更可能である。ナイフワイヤ用ルーメン17Lは、第1ルーメンの一例である。
【0028】
チューブ10は、抗血栓性、可撓性、および生体適合性を有することが好ましく、例えば樹脂材料や金属材料により形成することができる。チューブ10を形成するための樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。チューブ10を形成するための金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、Ni-Ti合金、コバルトクロム合金等を用いることができる。
【0029】
ナイフワイヤ20は、生体組織を切開するための長尺状の部材である。ナイフワイヤ20は、チューブ10に形成されたナイフワイヤ用ルーメン17Lに収容されている。ナイフワイヤ20の先端部は、チューブ10の先端部に固定されている。より詳細には、図4に示すように、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの先端部に固定部材80が充填されており、ナイフワイヤ20の先端部21は、固定部材80に固定されることによって、チューブ10の先端部に固定されている。また、図1に示すように、ナイフワイヤ20の基端部22は、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの基端部からコネクタ30の内腔を介してハンドル部40の位置まで延伸し、ハンドル部40の後述するワイヤ支持部45に支持されている。
【0030】
ナイフワイヤ20の一部分(以下、「露出部20E」という。)は、チューブ10の先端と基端との間において、チューブ10の外部に露出している。より詳細には、図4に示すように、チューブ10には、ナイフワイヤ用ルーメン17Lと外部とを連通する先端側孔部12および基端側孔部13が形成されている。ナイフワイヤ20において、ナイフワイヤ用ルーメン17L内で固定部材80に固定された先端部21より基端側の部分が、先端側孔部12を介してチューブ10の外部に露出しており、さらに基端側の部分が基端側孔部13を介して再度、ナイフワイヤ用ルーメン17L内に収容されている。ナイフワイヤ20の露出部20Eは、先端側孔部12を通過する位置から基端側孔部13を通過する位置までの部分である。ナイフワイヤ20の露出部20Eの直径の最小値は、例えば0.15mm以上、0.30mm以下である。ナイフワイヤ20の露出部20Eの直径の最小値は、例えば0.18mm以上、0.25mm以下であってもよい。なお、本実施形態では、先端側孔部12は、チューブ10の外周面に形成されており、基端側孔部13は、後述する切り欠き11によって外部に露出したナイフワイヤ用ルーメン17Lの開口である。また、以下の説明では、チューブ10におけるナイフワイヤ20の露出部20Eを露出させた部分を、第1部分P1という。チューブ10の第1部分P1は、チューブ10の長手方向における一部分であって、先端側孔部12の位置から基端側孔部13の位置までの部分である。
【0031】
ナイフワイヤ20には、図示しない高周波電源から高周波電流が印加される。高周波電源は、ワイヤ支持部45に接続される。高周波電源をワイヤ支部45に接続する場合、ワイヤ支持部45を形成する材料としては、金属に代表される導電性材料を用いることができる。これにより、ナイフワイヤ20の露出部20Eによって生体組織を切開することができる。
【0032】
ナイフワイヤ20は、導電性、抗血栓性および生体適合性を有することが好ましく、例えば、SUS302、SUS304、SUS316等のステンレス合金、Ni-Ti合金、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金などの金属材料により形成することができる。
【0033】
ここで、チューブ10における切り欠き11の周辺の構成について説明する。チューブ10には、チューブ10の外側表面に沿って延びる2つの切り欠き11a,11bが形成されている。本明細書において、複数の切り欠き11a,11b,・・・を、まとめて切り欠き11とも呼ぶ。図3に示すように、各切り欠き11は、チューブ10における断面欠損部である。すなわち、チューブ10において、2つの切り欠き11a,11bが形成された部分の横断面(図3に示す断面)は、隣接する他の部分の横断面(例えば図2に示す断面)と比較して、外側(外周側)の一部分(図3の領域A1,A2)が欠損している。
【0034】
本実施形態では、2つの切り欠き11a,11bのそれぞれについて、切り欠き11の全体が、チューブ10の上記第1部分P1に形成されている。図4に示すように、各切り欠き11の先端は、チューブ10の第1部分P1の先端よりも基端側に位置し、各切り欠き11の基端は、チューブ10の第1部分P1の基端と同位置である。
【0035】
図3に示すように、2つの切り欠き11a,11bの幅W11a,W11bは、いずれもナイフワイヤ用ルーメン17Lの直径W17よりも大きい。本実施形態では、2つの切り欠き11a,11bの幅W11a,W11bは、いずれもデバイス用ルーメン16Lの直径W16よりも大きく、かつ、送液用ルーメン18Lの直径W18よりも大きい。なお、切り欠き11の幅W11は、チューブ10の中心軸Axに直交する方向に沿った切り欠き11の最大の大きさである。また、本実施形態では、チューブ10の中心軸Axの方向に沿った切り欠き11の長さL11(図4)は、いずれも切り欠き11の幅よりも大きい。
【0036】
図3に示すように、本実施形態では、チューブ10の中心軸Ax方向視で、1つの切り欠き11aとナイフワイヤ用ルーメン17Lの少なくとも一部とは、互いに重なっている。換言すれば、切り欠き11aの深さ(チューブ10の外周から中心軸Axに向かう方向の大きさ)は、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの位置に至る程度に比較的深い。図4および図5に示すように、本実施形態では、ナイフワイヤ用ルーメン17Lが切り欠き11aの空間と直接的に連通している。また、チューブ10の中心軸Ax方向視で、他の1つの切り欠き11bとナイフワイヤ用ルーメン17Lとは、互いに重なっていない。
【0037】
切り欠き11を有するチューブ10の製造方法は、例えば、切り欠き11を有しないチューブ10を作製し、その後、チューブ10における一部分を削り取ることによって切り欠き11を形成する方法であってもよい。あるいは、金型等を用いて切り欠き11を有する形状のチューブ10を直接的に成形する方法であってもよい。すなわち、切り欠き11は、何らかの除去工程により形成されたものに限られず、除去工程を経ずに直接的に形成された凹状の部分であってもよい。
【0038】
なお、図5に示すように、ナイフワイヤ20の露出部20Eの近傍において、チューブ10の外側表面には、露出部20Eの位置を示すマーカー14が形成されている。本実施形態では、露出部20Eの先端よりも先端側に1つのマーカー14が配置され、露出部20Eの基端よりも基端側に1つのマーカー14が配置され、露出部20Eの先端と基端との間に2つのマーカー14が配置されている。マーカー14の個数や位置は任意に変更可能である。マーカー14が形成されなくてもよい。他の図においては、マーカー14の図示を適宜省略している。
【0039】
図1に示すように、コネクタ30は、チューブ10の基端部に接続された筒状の部材である。コネクタ30は、細径部31と、テーパ部32と、太径部33とを有する。細径部31は、コネクタ30の先端部を構成する略一定の外径を有する部分である。太径部33は、コネクタ30の基端部を構成し、細径部31の外径よりも大きい略一定の外径を有する部分である。テーパ部32は、細径部31と太径部33との間に設けられ、細径部31との境界から太径部33との境界にかけて外径が徐々に大きくなった部分である。
【0040】
コネクタ30の細径部31には、中心軸Axに交差する方向へ延伸する分岐部39が形成されている。分岐部39の内腔は、チューブ10に形成された送液用ルーメン18Lに連通している。そのため、分岐部39を介して、送液用ルーメン18Lに造影剤や生理食塩水等の液体を供給することができる。
【0041】
ハンドル部40は、コネクタ30の基端側に配置されている。ハンドル部40は、軸部41と、ハンドル本体部42とを有する。軸部41は、略円筒状の部材であり、コネクタ30の基端部に接続されている。軸部41の内腔は、コネクタ30の内腔と連通している。軸部41の基端には、リング状の第1指受け部43が設けられている。
【0042】
ハンドル本体部42は、略円筒状の部材であり、軸部41に対して中心軸Axに沿って摺動可能に取り付けられている。ハンドル本体部42には、軸部41の内腔に突出するワイヤ支持部45が設けられており、ワイヤ支持部45にナイフワイヤ20の基端部22が支持(固定)されている。また、ハンドル本体部42の側面には、リング状の一対の第2指受け部44が設けられている。ハンドル本体部42は、支持部材の一例である。
【0043】
コネクタ30およびハンドル部40は、例えば樹脂材料により形成することができる。コネクタ30およびハンドル部40を形成するための樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。
【0044】
(切開器具100の操作方法)
図6および図7は、切開器具100の操作方法の一例を示す説明図である。図6に示すように、術者は、例えば第1指受け部43に親指を挿通し、第2指受け部44に人差し指および中指を挿通した状態で、チューブ10に対してハンドル本体部42を相対回転させる(矢印AR2)。すると、ハンドル本体部42のワイヤ支持部45に支持されたナイフワイヤ20の基端部22に回転トルクが生じ、該回転トルクはナイフワイヤ20を介して、ナイフワイヤ20の先端部に固定されたチューブ10の先端部に伝わる。これにより、チューブ10が中心軸Axまわりに回転し、その結果、ナイフワイヤ20の露出部20Eの向きが変化する。なお、切開器具100は、ハンドル本体部42の回転角度(すなわち、ナイフワイヤ20の露出部20Eの向き)を固定するロック機構を有していてもよい。
【0045】
また、図7に示すように、術者が、例えば第1指受け部43に親指を挿通し、第2指受け部44に人差し指および中指を挿通した状態で、人差し指および中指を基端側に引くと(矢印AR1)、ハンドル本体部42が軸部41の外周面に沿って基端側に移動する。すると、ハンドル本体部42のワイヤ支持部45に支持されたナイフワイヤ20の基端部22が基端側に引かれることによってナイフワイヤ20に張力が付与される。この張力により、ナイフワイヤ20の先端部に固定されたチューブ10の先端部が弓状に湾曲する。なお、ハンドル本体部42を先端側に戻せば、ナイフワイヤ20の張力が緩和され、チューブ10の先端部が略直線状に戻る。
【0046】
次に、内視鏡的乳頭切開術において、切開器具100を用いて乳頭部を切開する手技について説明する。まず術者は、内視鏡を十二指腸まで挿入し、内視鏡下に挿入したガイドワイヤ(併用デバイス)を、乳頭部の開口部から総胆管へとデリバリする。次に術者は、ガイドワイヤに沿わせて、切開器具100を乳頭部の開口部までデリバリする。具体的には、切開器具100のデバイス用ルーメン16Lの先端開口にガイドワイヤの基端を挿入した後、切開器具100の先端が乳頭部の開口部に至るまで、切開器具100を先端側(遠位側)へと進める。このとき術者は、ハンドル本体部42を先端側に位置させておく(図1)。これにより、チューブ10の先端部が直線状となり、切開器具100のデリバリ時にチューブ10の先端部が乳頭部や総胆管に引っ掛からないようにすることができる。
【0047】
次に術者は、ハンドル部40のハンドル本体部42をチューブ10に対して相対回転させることにより(図6、矢印AR2)、チューブ10の先端部を回転させ、ナイフワイヤ20の露出部20Eの向きを、乳頭部を切開するために適切な向きに設定する。
【0048】
その後、術者は、ハンドル本体部42を、軸部41の外周面に沿って基端側にスライド移動させることにより(図7、矢印AR1)、ナイフワイヤ20に張力を付与する。これにより、チューブ10の先端部を弓状に湾曲させ、ナイフワイヤ20の露出部20Eが切開箇所に押し当てられた状態とする。この状態で、術者は、高周波電源によりナイフワイヤ20に高周波電流を印加する。これにより、ナイフワイヤ20の露出部20Eによって乳頭部の所定範囲が所定形状に切開される。
【0049】
(本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態の切開器具100は、ナイフワイヤ用ルーメン17Lを有するチューブ10と、ナイフワイヤ用ルーメン17Lに収容されたナイフワイヤ20と、ナイフワイヤ20の基端部を回転可能に支持するハンドル本体部42とを備える。ナイフワイヤ20は、チューブ10の先端と基端との間において、ナイフワイヤ用ルーメン17Lに通じる先端側孔部12および基端側孔部13を介してチューブ10の外部に露出する露出部20Eを有する。チューブ10は、チューブ10の先端と基端との間において、チューブ10の外側表面に沿って延びる複数の切り欠き11を有する形状である。
【0050】
このように、本実施形態の切開器具100では、チューブ10が複数の切り欠き11を有するため、チューブ10のねじり剛性を低下させることができる。そのため、本実施形態の切開器具100によれば、チューブ10の内外径やナイフワイヤ20の外径を維持しつつ、ハンドル本体部42の回転操作によってナイフワイヤ20の露出部20Eの向きを所望の向きに円滑に変化させることができる。
【0051】
また、本実施形態の切開器具100では、複数の切り欠き11のそれぞれの少なくとも一部分は、チューブ10におけるナイフワイヤ20の露出部20Eを露出させた部分である第1部分P1に形成されている。そのため、本実施形態の切開器具100によれば、チューブ10におけるナイフワイヤ20の露出部20Eを露出させた第1部分P1のねじり剛性を効果的に低下させることができ、ハンドル本体部42の回転操作によってナイフワイヤ20の露出部20Eの向きをより円滑に変化させることができる。また、チューブ10の第1部分P1の曲げ剛性を効果的に低下させることができ、チューブ10を湾曲させてナイフワイヤ20の露出部20Eにより切開を行う際の操作性を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態の切開器具100では、複数の切り欠き11のそれぞれの全体が、チューブ10の第1部分P1に形成されている。そのため、本実施形態の切開器具100によれば、チューブ10の第1部分P1のねじり剛性を効果的に低下させることができ、ハンドル本体部42の回転操作によってナイフワイヤ20の露出部20Eの向きをさらに円滑に変化させることができる。また、チューブ10の第1部分P1の曲げ剛性を効果的に低下させることができ、チューブ10を湾曲させてナイフワイヤ20の露出部20Eにより切開を行う際の操作性をさらに向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の切開器具100では、複数の切り欠き11のそれぞれの先端は、チューブ10の第1部分P1の先端よりも基端側に位置する。そのため、本実施形態の切開器具100によれば、複数の切り欠き11の存在に起因するチューブ10へのナイフワイヤ20の先端部の固定強度の低下を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態の切開器具100では、複数の切り欠き11のそれぞれは、チューブ10の中心軸Axの方向に沿って延びている。そのため、本実施形態の切開器具100によれば、チューブ10が湾曲した際における複数の切り欠き11の存在に起因するチューブ10の強度低下を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態の切開器具100では、ナイフワイヤ20の露出部20Eの直径の最小値は、0.15mm以上、0.30mm以下である。そのため、本実施形態の切開器具100によれば、ナイフワイヤ20の回転トルク伝達性の向上と、ナイフワイヤ20の切開能力の向上と、の両立を実現することができる。
【0056】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態の切開器具100aの先端部の外観構成を示す斜視図であり、図9は、第2実施形態の切開器具100aの横断面(XY断面)の構成を示す説明図である。以下では、第2実施形態の切開器具100aの構成のうち、上述した第1実施形態の切開器具100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。なお、図9において、ナイフワイヤ20は、記入されていない。
【0057】
第2実施形態の切開器具100aでは、チューブ10に、3つの溝15a,15b,15cが形成されている。本明細書において、複数の溝15a,15b,15c,・・・を、まとめて溝15とも呼ぶ。各溝15は、中心軸Axに沿って延びている。図9に示すように、溝15は、チューブ10における断面欠損部である。すなわち、チューブ10において、溝15が形成された部分の横断面(図9に示す断面)は、隣接する他の部分の横断面と比較して、外側(外周側)の一部分(図9の領域A1,A2,A3)が欠損している。なお、本明細書では、溝15は側面を有する断面欠損部を意味し、切り欠き11は側面を有さない断面欠損部を意味するものとして、両者を使い分けているが、両者の間に本質的な違いはなく、溝を切り欠きと呼んでもよいし、切り欠きを溝と呼んでもよい。
【0058】
本実施形態では、3つの溝15a,15b,15cのそれぞれの全体が、チューブ10の第1部分P1に形成されている。
【0059】
図9に示すように、3つの溝15a,15b,15cのそれぞれの幅W15a,W15b,W15cは、いずれも、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの直径W17よりも大きい。また、3つの溝15a,15b,15cのそれぞれの幅W15a,W15b,W15cは、いずれも、デバイス用ルーメン16Lの直径W16よりも大きく、かつ、送液用ルーメン18Lの直径W18よりも大きい。なお、溝15の幅W15は、溝15の延伸方向(本実施形態ではチューブ10の中心軸Ax方向)に直交する方向に沿った溝15の最大の大きさである。また、3つの溝15a,15b,15cのいずれにおいても、チューブ10の中心軸Axの方向に沿った長さは幅よりも大きい。
【0060】
このように、第2実施形態の切開器具100aでは、チューブ10が複数の溝15を有するため、第1実施形態の切開器具100と同様に、チューブ10のねじり剛性を低下させることができる。そのため、第2実施形態の切開器具100aによれば、チューブ10の内外径やナイフワイヤ20の外径を維持しつつ、ハンドル本体部42の回転操作によってナイフワイヤ20の露出部20Eの向きを所望の向きに円滑に変化させることができる。
【0061】
C.第3実施形態:
図10は、第3実施形態の切開器具100bの先端部の外観構成を示す斜視図である。以下では、第3実施形態の切開器具100bの構成のうち、上述した第2実施形態の切開器具100aと同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0062】
第3実施形態の切開器具100bでは、第2実施形態の切開器具100aと同様に、チューブ10に3つの溝15a,15b,15cが形成されている。ただし、各溝15は、中心軸Ax方向ではなく、チューブ10の周方向に沿って延びている。
【0063】
本実施形態では、3つの溝15a,15b,15cのそれぞれの全体が、チューブ10の第1部分P1に形成されている。また、3つの溝15a,15b,15cのそれぞれについて、溝15の先端は、チューブ10の第1部分P1の先端よりも基端側に位置し、溝15の基端は、チューブ10の第1部分P1の基端よりも先端側に位置している。
【0064】
図10に示すように、3つの溝15a,15b,15cのそれぞれの幅W15a,W15b,W15cは、いずれも、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの直径W17よりも大きい。また、3つの溝15a,15b,15cのそれぞれの幅W15a,W15b,W15cは、いずれも、デバイス用ルーメン16Lの直径W16よりも大きく、かつ、送液用ルーメン18Lの直径W18よりも大きい。
【0065】
このように、第3実施形態の切開器具100bでは、チューブ10が複数の溝15を有するため、第2実施形態の切開器具100aと同様に、チューブ10のねじり剛性を低下させることができる。そのため、第3実施形態の切開器具100bによれば、チューブ10の内外径やナイフワイヤ20の外径を維持しつつ、ハンドル本体部42の回転操作によってナイフワイヤ20の露出部20Eの向きを所望の向きに円滑に変化させることができる。
【0066】
D.第4実施形態:
図11は、第4実施形態の切開器具100cの横断面(XY断面)の構成を示す説明図である。以下では、第4実施形態の切開器具100cの構成のうち、上述した第1実施形態の切開器具100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。なお、図11において、ナイフワイヤ20は、記入されていない。
【0067】
第4実施形態の切開器具100cでは、チューブ10に、4つの切り欠き11a,11b,11c,11dが形成されている。
【0068】
図11に示すように、4つの切り欠き11a,11b,11c,11dのそれぞれの幅W11a,W11b,W11c,W11dは、いずれも、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの直径W17以下である。また、4つの切り欠き11a,11b,11c,11dのそれぞれの幅W11a,W11b,W11c,W11dは、いずれも、デバイス用ルーメン16Lの直径W16以下であり、かつ、送液用ルーメン18Lの直径W18以下である。
【0069】
このように、第4実施形態の切開器具100cでは、第1実施形態の切開器具100と同様に、チューブ10が複数の切り欠き11を有するため、チューブ10のねじり剛性を低下させることができる。そのため、第4実施形態の切開器具100cによれば、チューブ10の内外径やナイフワイヤ20の外径を維持しつつ、ハンドル本体部42の回転操作によってナイフワイヤ20の露出部20Eの向きを所望の向きに円滑に変化させることができる。
【0070】
また、第4実施形態の切開器具100cでは、複数の切り欠き11のそれぞれの幅は、いずれも、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの直径W17以下である。そのため、第4実施形態の切開器具100cによれば、チューブ10における切り欠き11が形成された部分の強度が過度に低下することを抑制することができる。
【0071】
E.第5実施形態:
図12は、第5実施形態の切開器具100dの横断面(XY断面)の構成を示す説明図である。以下では、第5実施形態の切開器具100dの構成のうち、上述した第2実施形態の切開器具100aと同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。なお、図12において、ナイフワイヤ20は、記入されていない。
【0072】
第5実施形態の切開器具100dでは、第2実施形態の切開器具100aと同様に、チューブ10に、3つの溝15a,15b,15cが形成されている。
【0073】
図12に示すように、3つの溝15a,15b,15cのそれぞれの幅W15a,W15b,W15cは、いずれも、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの直径W17以下である。また、3つの溝15a,15b,15cのそれぞれの幅W15a,W15b,W15cは、いずれも、デバイス用ルーメン16Lの直径W16以下であり、かつ、送液用ルーメン18Lの直径W18以下である。
【0074】
このように、第5実施形態の切開器具100dでは、第2実施形態の切開器具100aと同様に、チューブ10が複数の溝15を有するため、チューブ10のねじり剛性を低下させることができる。そのため、第5実施形態の切開器具100dによれば、チューブ10の内外径やナイフワイヤ20の外径を維持しつつ、ハンドル本体部42の回転操作によってナイフワイヤ20の露出部20Eの向きを所望の向きに円滑に変化させることができる。
【0075】
また、第5実施形態の切開器具100dでは、複数の溝15のそれぞれの幅は、いずれも、ナイフワイヤ用ルーメン17Lの直径W17以下である。そのため、第5実施形態の切開器具100dによれば、チューブ10における溝15が形成された部分の強度が過度に低下することを抑制することができる。
【0076】
F.第6実施形態:
図13は、第6実施形態の切開器具100eの横断面(XY断面)の構成を示す説明図である。以下では、第6実施形態の切開器具100eの構成のうち、上述した第1実施形態の切開器具100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。なお、図13において、ナイフワイヤ20は、記入されていない。
【0077】
第6実施形態の切開器具100eでは、チューブ10に、1つの切り欠き11と、1つの溝15とが形成されている。すなわち、チューブ10に形成された切り欠き11または溝15の合計個数が2個以上である。
【0078】
このように、第6実施形態の切開器具100eでは、チューブ10が複数の切り欠き11または溝15を有するため、チューブ10のねじり剛性を低下させることができる。そのため、第6実施形態の切開器具100eによれば、チューブ10の内外径やナイフワイヤ20の外径を維持しつつ、ハンドル本体部42の回転操作によってナイフワイヤ20の露出部20Eの向きを所望の向きに円滑に変化させることができる。
【0079】
G.変形例:
本明細書に開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0080】
上記実施形態における切開器具100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、複数の切り欠き11または溝15のそれぞれの全体が、チューブ10の第1部分P1に形成されているが、切り欠き11または溝15の一部が、チューブ10の第1部分P1に形成され、残りの一部が、チューブ10の第1部分P1以外の部分(第1部分P1より先端側の部分および/または第1部分P1より基端側の部分)に形成されていてもよい。また、複数の切り欠き11または溝15のそれぞれの全体が、チューブ10の第1部分P1以外の部分に形成されていてもよい。
【0081】
上記実施形態において、チューブ10に形成された切り欠き11または溝15の幅と、チューブ10に形成された各ルーメンの幅との大小関係は、任意に変更可能である。例えば、チューブ10に形成された切り欠き11または溝15の幅は、ナイフワイヤ20の露出部20Eの直径の最大値よりも小さいとしてもよい。このようにすれば、チューブ10における切り欠き11または溝15が形成された部分の強度が過度に低下することを効果的に抑制することができる。
【0082】
上記実施形態において、切り欠き11または溝15の形状は任意に変更可能である。例えば、切り欠き11の長さが切り欠き11の幅以下であってもよい。また、溝15が、螺旋条、斜め交差条、波紋条であってもよい。
【0083】
上記実施形態において、チューブ10に形成される切り欠き11または溝15の個数は、合計2個以上である限りにおいて、任意に変更可能である。
【0084】
上記実施形態では、チューブ10にナイフワイヤ用ルーメン17L、デバイス用ルーメン16Lおよび送液用ルーメン18Lが形成されているが、デバイス用ルーメン16Lおよび/または送液用ルーメン18Lが形成されていなくてもよい。
【0085】
上記実施形態では、ナイフワイヤ20の露出部20Eが、常時、チューブ10の外部に露出しているが、ナイフワイヤ20の露出部20Eは、少なくともチューブ10が所定の姿勢(例えば、大きく湾曲した姿勢)にあるときにチューブ10の外部に露出すればよく、常時外部に露出している必要はない。
【0086】
以上、実施形態および変形例に基づき本明細書に開示される技術について説明してきたが、上述した実施形態および変形例は、本明細書に開示される技術の理解を容易にするためのものであり、本明細書に開示される技術を限定するものではない。本明細書に開示される技術は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本明細書に開示される技術にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0087】
10:チューブ 10P:外周線 11:切り欠き 12:先端側孔部 13:基端側孔部 14:マーカー 15:溝 16L:デバイス用ルーメン 17L:ナイフワイヤ用ルーメン 18L:送液用ルーメン 19:分岐部 20:ナイフワイヤ 20E:露出部 21:先端部 22:基端部 30:コネクタ 31:細径部 32:テーパ部 33:太径部 39:分岐部 40:ハンドル部 41:軸部 42:ハンドル本体部 43:第1指受け部 44:第2指受け部 45:ワイヤ支持部 80:固定部材 100:切開器具 P1:第1部分
図1
図2
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図8
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図10
図11
図12
図13