(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120212
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】2重シールドティグ溶接トーチ
(51)【国際特許分類】
B23K 9/29 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
B23K9/29 L
B23K9/29 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026851
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】下新原 春菜
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001LB02
4E001LB05
4E001LB06
4E001LH04
4E001LH06
4E001NA01
(57)【要約】
【課題】インナーガス7及びアウターガス9の噴出状態が乱流状態になることを抑制することができる2重シールドティグ溶接トーチを提供すること。
【解決手段】インナーガス7を噴出させるインナーノズル4及びアウターガス9を噴出させるアウターノズル5を備えた2重シールドティグ溶接トーチWTにおいて、インナーガス7の流路及びアウターガス9の流路にそれぞれガスレンズ12、13を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーガスを噴出させるインナーノズル及びアウターガスを噴出させるアウターノズルを備えた2重シールドティグ溶接トーチにおいて、
インナーガス及びアウターガスが通過するようにガスレンズを設ける、
ことを特徴とする2重シールドティグ溶接トーチ。
【請求項2】
前記インナーガスの流路及び前記アウターガスの流路にそれぞれ前記ガスレンズを設ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の2重シールドティグ溶接トーチ。
【請求項3】
前記インナーノズル及び前記アウターノズルの先端部に前記インナーガス及び前記アウターガスが通過するように一つの前記ガスレンズを設ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の2重シールドティグ溶接トーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2重シールドティグ溶接トーチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インナーガスを噴出させるインナーノズル及びアウターガスを噴出させるアウターノズルを備えた2重シールドティグ溶接トーチを使用し、溶接電流を通電して溶接する2重シールドティグ溶接方法が慣用されている(例えば、特許文献1参照)。インナーガス及びアウターガスとしては、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二重シールドティグ溶接トーチを使用して溶接する場合において、継手形状、溶接トーチ先端・母材間距離等の溶接条件に応じて、インナーガス及び/又はアウターガスの流用を多くなるように設定すると、ガスの噴出状態が乱流状態になりやすくなる。乱流状態になると、アークがふらつき、溶接状態が不安定になるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明では、インナーガス及びアウターガスの噴出状態が乱流状態になることを抑制して、溶接状態を安定化することができる2重シールドティグ溶接トーチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
インナーガスを噴出させるインナーノズル及びアウターガスを噴出させるアウターノズルを備えた2重シールドティグ溶接トーチにおいて、
インナーガス及びアウターガスが通過するようにガスレンズを設ける、
ことを特徴とする2重シールドティグ溶接トーチである。
【0007】
請求項2の発明は、
前記インナーガスの流路及び前記アウターガスの流路にそれぞれ前記ガスレンズを設ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の2重シールドティグ溶接トーチである。
【0008】
請求項3の発明は、
前記インナーノズル及び前記アウターノズルの先端部に前記インナーガス及び前記アウターガスが通過するように一つの前記ガスレンズを設ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の2重シールドティグ溶接トーチである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る2重シールドティグ溶接トーチによれば、インナーガス及びアウターガスの噴出状態が乱流状態になることを抑制して、溶接状態を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る2重シールドティグ溶接トーチを備えた溶接装置の構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態2に係る2重シールドティグ溶接トーチを備えた溶接装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る2重シールドティグ溶接トーチを備えた溶接装置の構成図である。以下、同図を参照して各構成物について説明する。
【0013】
溶接トーチWTは、主に、トーチボディ10、電極コレット11、電極1、インナーノズル4、アウターノズル5、インナーガスレンズ12及びアウターガスレンズ13を備えている。
【0014】
トーチボディ10は、図示しない内部の導電部が溶接電源PSのマイナス出力端子と溶接ケーブルによって接続されており、電力を電極1に供給する。トーチボディ10は、インナーガス流量調整器CIを介してインナーガスボンベ6と配管によって接続されており、図示しない内部の流路を通してインナーガス7をインナーノズル4内の流路に流出させる。トーチボディ10は、アウターガス流量調整器COを介してアウターガスボンベ8と配管によって接続されており、図示しない内部の流路を通してアウターガス9をアウターノズル5内の流路に流出させる。
【0015】
電極コレット11は、トーチボディ10に挿着されており、電極1を着脱自在に保持する。
【0016】
インナーノズル4は、トーチボディ10の先端部に設けられており、インナーガスレンズ12をとおしてインナーガス7をアーク3の周囲に噴出させる。例えば、インナーノズル4の内径は5mmである。
【0017】
アウターノズル5は、インナーノズル4の外側のトーチボディ10の先端部に設けられており、アウターガスレンズ13をとおしてアウターガス9をインナーガス7の外側に噴出させる。例えば、アウターノズル5の内径は13mmである。
【0018】
インナーガスレンズ12は、インナーノズル4内の流路に設けられており、インナーガス7の流れを均一に拡散させて層流状態にする。インナーガスレンズ12は、積層された複数枚の金網から形成されている。
【0019】
アウターガスレンズ13は、アウターノズル5内の流路に設けられており、アウターガス9の流れを均一に拡散させて層流状態にする。アウターガスレンズ13は、積層された複数枚の金網から形成されている。
【0020】
電極1は、タングステン電極であり、母材2との間にアーク3が発生する。
【0021】
電流設定回路IRは、予め定めた電流設定信号Irを出力する。
【0022】
インナーガス流量調整器CIは、慣用されているマスフローコントローラ等であり、溶接電源PSからのインナーガス流量設定信号Firを入力として、インナーガスボンベ6からのインナーガス7の流量Fiをインナーガス流量設定信号Firによって定まる値に調整して噴出する。
【0023】
アウターガス流量調整器COは、慣用されているマスフローコントローラ等であり、溶接電源PSからのアウターガス流量設定信号Forを入力として、アウターガスボンベ8からのアウターガス9の流量Foをアウターガス流量設定信号Forによって定まる値に調整して噴出する。
【0024】
インナーノズル4の内側の流路をインナーガス7が流れる。また、インナーノズル4の外側とアウターノズル5の内側の流路をアウターガス9が流れる。インナーガス7及びアウターガス9にはアルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが使用される。アーク3は、電極1が負極となり、母材2が正極となって発生する。
【0025】
溶接電源PSは、上記の電流設定信号Irを入力として、予め定めたインナーガス流量設定信号Fir及び予め定めたアウターガス流量設定信号Forを出力すると共に、電流設定信号Irによって設定された溶接電流Iwを電極1と母材2との間に出力する。
【0026】
本実施の形態1によれば、インナーガス及びアウターガスが通過するようにガスレンズを設ける。そのために、インナーガスの流路及びアウターガスの流路にそれぞれガスレンズを設けている。インナーガスの流路に設けたガスレンズによって、インナーガスの流れを均一に拡散させて層流状態にすることができる。アウターガスの流路に設けたガスレンズによって、アウターガスの流れを均一に拡散させて層流状態にすることができる。この結果、本実施の形態1では、インナーガス及び/又はアウターガスの流量が多くなっても、両ガスの噴出状態が乱流状態になることを抑制することができるので、溶接状態を安定化することができる
【0027】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2では、インナーノズル及びアウターノズルの先端部にインナーガス及びアウターガスが通過するように一つのガスレンズを設けている。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態2に係る2重シールドティグ溶接トーチを備えた溶接装置の構成図である。同図において、
図1と同一の構成物には同一符号を付して、それらの説明は繰り返さない。以下、同図を参照して、
図1とは異なる構成物について説明する。
【0029】
同図では、
図1のインナーガスレンズ12及びアウターガスレンズ13を削除し、それらに代えてガスレンズ14を設けるものである。同図では、インナーノズル4の先端位置がアウターノズル5の先端位置よりも奥側(内側)に引っ込んだ位置となっている。そして、ガスレンズ14は、インナーノズル4及びアウターノズル5の先端部にインナーガス7及びアウターガス9が通過するように一つのガスレンズとして設けられている。
【0030】
本実施の形態2によれば、インナーガス及びアウターガスが通過するようにガスレンズを設ける。そのために、インナーノズル及びアウターノズルの先端部にインナーガス及びアウターガスが通過するように一つのガスレンズを設けている。このようにすると、一つのガスレンズによって、インナーガス及びアウターガスの流れを均一に拡散させて層流状態にすることができる。この結果、本実施の形態2では、インナーガス及び/又はアウターガスの流量が多くなっても、両ガスの噴出状態が乱流状態になることを抑制することができるので、溶接状態を安定化することができる
【符号の説明】
【0031】
1 電極
2 母材
3 アーク
4 インナーノズル
5 アウターノズル
6 インナーガスボンベ
7 インナーガス
8 アウターガスボンベ
9 アウターガス
10 トーチボディ
11 電極コレット
12 インナーガスレンズ
13 アウターガスレンズ
14 ガスレンズ
CI インナーガス流量調整器
CO アウターガス流量調整器
Fi インナーガス流量
Fir インナーガス流量設定信号
Fo アウターガス流量
For アウターガス流量設定信号
IR 電流設定回路
Ir 電流設定信号
Iw 溶接電流
PS 溶接電源
WT 溶接トーチ