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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120213
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】藻場造成着生床
(51)【国際特許分類】
   A01G 33/00 20060101AFI20240829BHJP
   A01K 61/75 20170101ALI20240829BHJP
【FI】
A01G33/00
A01K61/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026857
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】福本 正
(72)【発明者】
【氏名】荻原 豪太
(72)【発明者】
【氏名】須田 健太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 延幸
【テーマコード(参考)】
2B003
2B026
【Fターム(参考)】
2B003AA03
2B003CC03
2B026AA05
2B026AB06
2B026AB07
2B026AB08
2B026AC03
(57)【要約】
【課題】耐久性の高い藻場造成着生床を提供する。
【解決手段】藻場造成着生床1において、海藻類を育成・保護するためのカゴ部10と、海底に設置される土台部30と、を支柱21によって連結する。そして、土台部30は、少なくとも下端部が海底地盤に埋設される土台本体31と、土台本体31を貫通して海底地盤に埋設され下端部が土台本体31よりも深く設置される複数の杭32と、を備えることが好ましい。さらに、土台本体31の形状は、底面の面積が上面の面積よりも大きい錐台形状であることが好ましい。また、杭32は、下端部が上端部よりも土台本体31の中心線から離れた位置にある状態で設置されることが好ましい。また、カゴ部10は、海藻類の種苗が着生する着生部材40を内部に収容した収容カゴ11と、収容カゴ11を内部に収容した外側カゴ12と、を備えること、さらに、収容カゴ11は、外側カゴ12よりも目が粗いことが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻類を育成・保護するためのカゴ部と、
海底に設置される土台部と、
前記カゴ部と前記土台部とを連結する支柱と、を備えることを特徴とする藻場造成着生床。
【請求項2】
請求項1に記載の藻場造成着生床において、
前記土台部は、
少なくとも下端部が海底地盤に埋設される土台本体と、
前記土台本体を貫通して海底地盤に埋設され、下端部が前記土台本体よりも深く設置される複数の杭と、を備えることを特徴とする藻場造成着生床。
【請求項3】
請求項2に記載の藻場造成着生床において、
前記土台本体の形状は、底面の面積が、上面の面積よりも大きい錐台形状であることを特徴とする藻場造成着生床。
【請求項4】
請求項2に記載の藻場造成着生床において、
前記杭は、当該杭の下端部が、当該杭の上端部よりも、前記土台本体の中心を通る仮想の鉛直線から離れた位置にある状態で設置されることを特徴とする藻場造成着生床。
【請求項5】
請求項1に記載の藻場造成着生床において、
前記カゴ部は、
海藻類の種苗が着生する着生部材を内部に収容した収容カゴと、
前記収容カゴを内部に収容した外側カゴと、を備えることを特徴とする藻場造成着生床。
【請求項6】
請求項5に記載の藻場造成着生床において、
前記収容カゴは、前記外側カゴよりも目が粗いことを特徴とする藻場造成着生床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻場造成着生床に関する。
【背景技術】
【0002】
藻場は、海水の浄化や、水生生物の多様性の維持等、大きな役割を果たしている。海藻類は岩礁を基盤として付着することが多く、砂地で生育する海藻類の種類は限られている。
例えば、特許文献1に記載の珊瑚生育試験用カプセルを用いれば、任意の種類の海藻類が繁茂する藻場を砂地に造成することが可能である。具体的には、特許文献1に記載の珊瑚生育試験用カプセルは、当該カプセルの海面側が鎖によって浮子と連結されており、その浮子が紐等によって海面に浮かぶ標識用ブイと連結されている。また、当該カプセルの海底側が鎖によって海底に載置された鉄塊と連結しており、当該カプセル内に珊瑚の小片が収容されている。この珊瑚の小片の代わりに海藻類の種苗を収容したカプセルを、海底が砂地である海域に設置することで、任意の種類の海藻類が繁茂する藻場を砂地に造成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-8632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1のカプセルは、海面側が鎖によって浮子に連結されており、海底側も鎖によって鉄塊と連結されているので、波や流れで揺動する。カプセルが揺動すると、カプセル内の海藻類がカプセル外へと流出するおそれがある。また、カプセルが大きく揺動したり揺動を繰り返したりすると、当該カプセル自体が破損する、当該カプセルを浮子や鉄塊と接続する鎖が切れて当該カプセルが流失する、等のおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、耐久性の高い藻場造成着生床を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、
藻場造成着生床において、
海藻類を育成・保護するためのカゴ部と、
海底に設置される土台部と、
前記カゴ部と前記土台部とを連結する支柱と、を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の藻場造成着生床において、
前記土台部は、
少なくとも下端部が海底地盤に埋設される土台本体と、
前記土台本体を貫通して海底地盤に埋設され、下端部が前記土台本体よりも深く設置される複数の杭と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、
請求項2に記載の藻場造成着生床において、
前記土台本体の形状は、底面の面積が、上面の面積よりも大きい錐台形状であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、
請求項2に記載の藻場造成着生床において、
前記杭は、当該杭の下端部が、当該杭の上端部よりも、前記土台本体の中心を通る仮想の鉛直線から離れた位置にある状態で設置されることを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明は、
請求項1に記載の藻場造成着生床において、
前記カゴ部は、
海藻類の種苗が着生する着生部材を内部に収容した収容カゴと、
前記収容カゴを内部に収容した外側カゴと、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項6に係る発明は、
請求項5に記載の藻場造成着生床において、
前記収容カゴは、前記外側カゴよりも目が粗いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐久性の高い藻場造成着生床を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態:藻場造成着生床の一例を示す図である。
図2】第1実施形態:カゴ部の一例を説明する図である。
図3】第1実施形態:土台本体の一例を説明する図である。
図4】第2実施形態:藻場造成着生床の一例を示す図である。
図5】第2実施形態:土台本体の一例を説明する図である。
図6】第3実施形態:藻場造成着生床の一例を示す図である。
図7】第3実施形態:藻場造成着生床の一例を示す図である。
図8】第3実施形態:カゴ部の一例を説明する図である。
図9】第3実施形態:支柱の一例を説明する図である。
図10】第3実施形態:土台本体の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、以下の実施形態及び図示例に限定されるものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方向(前後方向、左右方向)は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る藻場造成着生床1の一例を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)におけるI-I断面図である。
図2は、第1実施形態に係るカゴ部10の一例を説明する図であって、(a)は収容カゴ11の平面図(上面図)であり、(b)は収容カゴ11の正面図であり、(c)は外側カゴ12の平面図(上面図)であり、(d)は外側カゴ12の正面図である。
図3は、第1実施形態に係る土台本体31の一例を説明する図であって、(a)は土台本体31の平面図(上面図)であり、(b)は(a)におけるIII-III断面図である。
【0015】
藻場造成着生床1は、海藻類を育成・保護するためのカゴ部10と、カゴ部10を支持する支持部20と、海底に設置される土台部30と、を備えて構成される。なお、本願において「海藻類」は、「海藻」と「海草」の双方を含むものとする。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のカゴ部10は、外側カゴ12と、外側カゴ12の内部に設けられる収容カゴ11と、を備えて構成される。そして、収容カゴ11の内部に、海藻類の種苗(海藻の胞子、海草の種子、海藻類の苗等)が着生する着生部材40(着生基板等)が収容される。
本実施形態においては、カゴ部10が収容カゴ11と外側カゴ12の二重構造になっているので、内部(収容カゴ11内)の海藻類を傷つける等することなく、外側の汚れやすい方(外側カゴ12)を交換できる。
【0017】
図2に示すように、収容カゴ11は、円筒状の筒部11aと、筒部11aの開口面を閉塞する円形状の蓋部11bと、を備えて構成される。本実施形態の収容カゴ11は、筒部11aにおける両側の開口面(上面及び下面)の双方に蓋部11bが設けられている。
また、外側カゴ12は、収容カゴ11の筒部11aよりも径が大きい円筒状の筒部12aと、筒部12aの開口面を閉塞する円形状の蓋部12bと、を備えて構成される。本実施形態の外側カゴ12は、筒部12aにおける両側の開口面のうちの一方(上面)に蓋部12bが設けられている。
したがって、外側カゴ12における下側の開口面は閉塞されていないので、収容カゴ11を支持部20に固定した状態のまま、当該収容カゴ11を、外側カゴ12における下側の開口面から出し入れ可能となっている。すなわち、収容カゴ11を支持部20に固定した状態のまま、当該収容カゴ11に対して外側カゴ12を着脱可能となっているので、外側カゴ12の交換をスムーズに行うことができる。
【0018】
本実施形態の外側カゴ12は、高さ寸法(上下方向の長さ)が1000mm~1500mmに設定されているとともに、直径が500mm~1000mmに設定されているが、これに限られるものではない。
また、本実施形態の収容カゴ11及び外側カゴ12は、金属製(鉄製、ステンレス製等)の部材であるが、これに限られるものではなく、例えばファイバー製(グラスファイバー製等)の部材であってもよい。また、収容カゴ11及び外側カゴ12のうち、一方を金属製の部材として、他方をファイバー製の部材としてもよい。
【0019】
収容カゴ11と外側カゴ12は、網目(籠目)の大きさが異なる。本実施形態においては、図2に示すように、収容カゴ11の方が、外側カゴ12よりも目が粗い。
外側カゴ12の目を細かくすることで、収容カゴ11内の海藻類に対する食害を効果的に防止することが可能となる。すなわち、外側カゴ12の網目の大きさは、食害対象の生物の大きさを考慮して(例えば、食害対象の生物が外側カゴ12内に進入できない大きさに)設定されている。
【0020】
また、外側カゴ12の目を細かくすることで、外側カゴ12の内部(収容カゴ11)が汚れにくくなる。
また、収容カゴ11の目を粗くすることで、収容カゴ11の網目の大きさが外側カゴ12の網目の大きさと同等又はそれ未満である場合に比べて、収容カゴ11内の通水性(収容カゴ11の内部と外部の間に海水を通わせる性質、収容カゴ11の内部に新鮮な海水を送り込む性質)が高くなる。これにより、収容カゴ11内の海藻類の生長促進を図ることができる。
【0021】
支持部20は、カゴ部10を受け止める台座22と、カゴ部10(カゴ部10が載った台座22)と土台部30とを連結する支柱21と、を備えて構成される。
台座22は、円盤状の部材である。本実施形態の台座22は、直径が、カゴ部10の直径(外側カゴ12の直径)の1.1倍以下に設定されているが、これに限られるものではない。
なお、台座22の直径を、カゴ部10の直径の1.1倍以下にすることで、台座22上に砂が載ってカゴ部10が埋もれてしまう等の不都合を回避することが可能となる。台座22の直径は、例えばカゴ部10の直径の1.1倍以下の範囲内で、カゴ部10のサイズや重量等に応じて決定することが好ましい。また、台座22の厚さ寸法等も、カゴ部10のサイズや重量等に応じて設定される。
また、本実施形態の台座22は、金属製(鉄製、ステンレス製等)の部材であるが、これに限られるものではなく、例えば鉄筋コンクリート製の部材であってもよい。
【0022】
支柱21は、円筒状(あるいは円柱状)の部材である。本実施形態の支柱21は、直径が50mm~100mmに設定されているとともに、高さ寸法(上下方向の長さ)が100mm~300mmに設定されているが、これに限られるものではない。
なお、支柱21の直径は、例えば50mm~100mmの範囲内で、カゴ部10のサイズや重量等に応じて決定することが好ましい。
また、支柱21の高さ寸法も、例えば100mm~300mmの範囲内で、カゴ部10のサイズや重量等に応じて決定することが好ましい。さらに、支柱21は、カゴ部10が砂(海底)に埋もれることを防止するための足として機能する部材であるので、支柱21の高さ寸法は、藻場造成着生床1の設置海域の海象条件等に応じて決定することが好ましい。
また、本実施形態の支柱21は、金属製(鉄製、ステンレス製等)の部材であるが、これに限られるものではなく、例えば鉄筋コンクリート製の部材であってもよい。
【0023】
カゴ部10のうち収容カゴ11は、台座22に載った状態で、当該収容カゴ11の下端部(下側の蓋部11bや、筒部11aの下端部)が台座22に対して固定されている。
カゴ部10のうち外側カゴ12は、前述したように、下側の開口面が閉塞されていない(下側の開口面に蓋部12bが設けられていない)。よって、外側カゴ12は、台座22に固定されている収容カゴ11に対して上方から覆った状態で、当該外側カゴ12の下端部(筒部12aの下端部)が台座22に対して固定されている。そして、台座22に対する外側カゴ12の固定を解除することで、台座22に収容カゴ11が固定された状態のまま、外側カゴ12を取り外す(交換する)ことができる。
【0024】
土台部30は、少なくとも下端部が砂地内(海底地盤)に埋まった状態で海底に設置される円錐台状(円錐状)の土台本体31と、土台本体31を貫通して下端部が土台本体31よりも深く設置される複数の杭32と、を備えて構成されており、カゴ部10(及び支持部20)の流失や転倒を防止する防止手段として機能する。
本実施形態の土台本体31は、直径(底面の直径)が、当該土台本体31の高さ寸法(上下方向の長さ)の2倍以上に設定されているが、これに限られるものではない。
なお、土台本体31の直径を、当該土台本体31の高さ寸法の2倍以上にすることで、前述した土台本体31の機能を十分に果たすことが可能となる。土台本体31の直径は、例えば当該土台本体31の高さ寸法の2倍以上の範囲内で、カゴ部10や支持部20の重量、想定される最大波圧等に応じて決定することが好ましい。
また、本実施形態の土台本体31は、コンクリート製の部材であるが、これに限られるものではない。
【0025】
図3に示すように、土台本体31は、上下方向に延在する平面視(上面視)略円形状の穴部31aを有している。本実施形態の穴部31aは、当該穴部31aの中心線(軸線)と、土台本体31の中心線(軸線)と、が一致する位置に設けられている。穴部31aの直径は、支持部20の支柱21を挿入可能な大きさに設定されており、支柱21は、穴部31aに挿入された状態で土台本体31に固定される。
前述したように、本実施形態の支柱21は、高さ寸法が100mm~300mmに設定されているが、この高さ寸法は、土台本体31から突出する部分の長さ、すなわち土台本体31から台座22までの長さである。したがって、本実施形態の支柱21の長さ寸法は、100mm+D~300mm+D(D=穴部31aの深さ寸法)に設定されている。
【0026】
杭32は、土台本体31の抜け(少なくとも下端部が海底地盤に埋まっている土台本体31が海底地盤から抜けること)や転倒を防止する防止手段として機能する。本実施形態の杭32は、頭部を有する円筒状(あるいは円柱状)の部材である。そして、土台本体31には、杭32の軸部を挿入可能なさや管31bが複数本(本実施形態においては四本)埋め込まれており、土台本体31は、さや管31bを貫通した杭32によって海底地盤に固定されるようになっている。
具体的には、土台部30を海底に設置する際には、[1]土台本体31を砂地内(海底地盤)に埋める→[2]杭32をさや管31bの上端から挿入して土台本体31の下方(海底地盤)に向けて打ち込む、といった手順で設置される。したがって、土台本体31を砂地内(海底地盤)に埋める際([1]の工程を行う際)には、海底面SBをさや管31bの上端よりも下に位置させておき、杭32を打ち込んだ後([2]の工程の後)に、図1(a)に示すように土台部30全体が海底面SBよりも下に位置するように埋め戻すことが好ましい。これにより、杭32を打ち込む際([2]の工程を行う際)に、さや管31bの上端が露出した状態となっているので、施工が楽になる。
【0027】
土台本体31に埋め込まれている複数本のさや管31bは、土台本体31の中心線を中心とした放射状に配設されている。すなわち、さや管31bは、当該さや管31bの下端部が、当該さや管31bの上端部よりも、土台本体31の中心線(土台本体31の中心を通る仮想の鉛直線)から離れた位置にある状態で、土台本体31に設けられている。
これにより、杭32は、垂直(土台本体31の中心線に平行)ではなく、斜め外側へと打ち込まれる(さや管31bによってガイドされる)こととなるので、前述した杭32の機能を十分に果たすことが可能となる。
【0028】
なお、本実施形態では、四本のさや管31bを土台本体31に設けているが、これに限られるものではない。さや管31bの本数や角度(土台本体31の中心線に対する角度)、すなわち杭32の本数や角度は、藻場造成着生床1の設置海域の海象条件等に応じて決定することが好ましい。
また、本実施形態のさや管31bは、鉄製やステンレス製等の金属パイプであるが、これに限られるものではない。
【0029】
また、本実施形態の杭32は、鉄製やステンレス製等の金属パイプ、又は鉄筋であるが、これに限られるものではない。
また、本実施形態の杭32は、直径が15mm以上に設定されているが、これに限られるものではない。なお、杭32の直径は、例えば15mm以上の範囲内で、藻場造成着生床1の設置海域の海象条件等に応じて決定することが好ましい。また、杭32の長さ寸法等も、藻場造成着生床1の設置海域の海象条件等に応じて設定される。
【0030】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上記第1実施形態と共通する要素については共通の符号を付して説明を省略又は簡略し、上記第1実施形態との差異を中心に説明する。
図4は、第2実施形態に係る藻場造成着生床1の一例を示す正面図である。
図5は、第2実施形態に係る土台本体31の一例を説明する図であって、(a)は平面図(上面図)であり、(b)は(a)におけるV-V断面図である。
【0031】
本実施形態の支持部20は、複数本の支柱21を備えている。したがって、本実施形態の土台本体31には、支柱21が挿入される穴部31aが複数(支柱21と同数)設けられている。なお、図4及び図5に示す例では、四つの穴部31aが設けられている(四本の支柱21を備えている)が、これに限られるものではない。
本実施形態のカゴ部10は、台座22を介して支柱21に固定されるのではなく、支柱21に直接固定されている。本実施形態の支柱21は、長さ寸法が、カゴ部10の上端まで達する寸法に設定されており、一本の支柱21に対し、カゴ部10の上端、上下方向中央、下端の三箇所がワイヤー等の紐状部材によって固定されている。
【0032】
本実施形態のカゴ部10は、海藻類の種苗(海藻の胞子、海草の種子、海藻類の苗等)が着生する着生部材40(着生基板等)を収容する収容カゴ11を備えて構成される。なお、本実施形態のカゴ部10は、外側カゴ12を備えるものであってもよい。
また、本実施形態の土台本体31においては、さや管31bの上端が、土台本体31の側面(円錐台の側面)に位置するのではなく、土台本体31の上面(円錐台の上面)に位置している。本実施形態においても、土台本体31を砂地内(海底地盤)に埋める際([1]の工程を行う際)には、さや管31bの上端が海底面SBより上に位置するように埋めることが好ましい。
【0033】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上記第1実施形態と共通する要素については共通の符号を付して説明を省略又は簡略し、上記第1実施形態との差異を中心に説明する。
図6は、第3実施形態に係る藻場造成着生床1の一例を示す正面図である。
図7は、第3実施形態に係る藻場造成着生床1の一例を示す図であって、(a)は図6におけるA-A断面図であり、(b)は図6におけるB-B断面図であり、(c)は図6におけるC-C断面図であり、(d)は図6におけるD-D断面図である。
【0034】
図8は、第3実施形態に係るカゴ部10の一例を説明する図であって、(a)は第一側壁部11cを示す図であり、(b)は第二側壁部11dを示す図であり、(c)は第三側壁部11eを示す図であり、(d)は蓋部11bを示す図であり、(e)は上側枠材11fを示す図であり、(f)は下側枠材11gを示す図であり、(g)は被固定材11hを示す図である。
図9は、第3実施形態に係る支柱21の一例を説明する図である。
図10は、第3実施形態に係る土台本体31の一例を説明する図であって、(a)は平面図(上面図)であり、(b)は(a)におけるX-X断面図である。
【0035】
本実施形態のカゴ部10は、海藻類の種苗(海藻の胞子、海草の種子、海藻類の苗等)が着生する着生部材40(着生基板等)を収容する収容カゴ11として、円筒状のカゴ部材ではなく、四角筒状のカゴ部材を備えている。なお、本実施形態のカゴ部10は、外側カゴ12を備えるものであってもよい。
具体的には、本実施形態の収容カゴ11は、長方形状の側壁部(第一側壁部11c、第二側壁部11d、第三側壁部11e)と、正方形状の蓋部11bと、を備えて構成される。本実施形態の収容カゴ11は、側壁部11c,11d,11eによって構成される四角筒における両側の開口面(上面及び下面)の双方に蓋部11bが設けられている。
【0036】
収容カゴ11における四つの側面のうち、三つの側面は第一側壁部11cによって構成されており、残りの側面(一つの側面)は上下に並ぶ第二側壁部11d及び第三側壁部11eによって構成されている。すなわち、第一側壁部11cの高さ寸法と、第二側壁部11dの高さ寸法と第三側壁部11eの高さ寸法の和と、は略同一に設定されている。また、第一側壁部11cと第二側壁部11dと第三側壁部11eは、幅寸法が略同一に設定されている。
三枚の第一側壁部11cと一枚の第二側壁部11dを組み立てた状態において第二側壁部11dの下方には開口部が形成されるようになっており、この開口部には、例えば図6に示すように、当該開口部を開閉する第三側壁部11eが設けられる。具体的には、第三側壁部11eは、当該第三側壁部11eの上端が、第二側壁部11dの下端に対し回動自在に固定されている。これにより、収容カゴ11内に着生部材40を出し入れできるようになっている。なお、他の実施形態における収容カゴ11にも、当該収容カゴ11内に着生部材40を出し入れするための開閉扉を設けるようにしてもよい。
【0037】
収容カゴ11の上端部には、当該収容カゴ11を内側から補強する四つの上側枠材11fが取り付けられている。すなわち、収容カゴ11の上端部には、四つの上側枠材11fによって構成される正方形状の枠部が取り付けられている。図8(e)に示すように、上側枠材11fは、上面部と側面部とからなる、当該上側枠材11fの延在方向から見て略L字状の部材である。
また、収容カゴ11の下端部には、当該収容カゴ11を内側から補強する四つの下側枠材11gが取り付けられている。すなわち、収容カゴ11の下端部には、四つの下側枠材11gによって構成される正方形状の枠部が取り付けられている。図8(f)に示すように、下側枠材11gは、下面部と側面部とからなる、当該下側枠材11gの延在方向から見て略L字状の部材である。
【0038】
収容カゴ11を構成する第一側壁部11cは、上端部が、上側枠材11fの側面部に固定されるとともに、下端部が、下側枠材11gの側面部に固定されている。
また、収容カゴ11を構成する第二側壁部11dは、上端部が、上側枠材11fの側面部に固定されている。
【0039】
また、四つの下側枠材11gのうち前側の下側枠材11gと後側の下側枠材11gとの間には、着生部材40が固定される被固定材11hが、架け渡されて取り付けられている。図8(g)に示すように、被固定材11hは、上面部と二つの側面部とからなる、当該被固定材11hの延在方向から見て略コ字状の部材である。
被固定材11hの上面部における略中央には、上下方向に貫通する貫通孔11iが設けられており、この貫通孔11iに、着生部材40を被固定材11hに固定するための連結具(ボルト等)が装着されるようになっている。
【0040】
本実施形態の支持部20は、複数本の支柱21を備えている。したがって、本実施形態の土台本体31には、支柱21が挿入される穴部31aが複数(支柱21と同数)設けられている。なお、図6図10に示す例では、四つの穴部31aが設けられている(四本の支柱21を備えている)が、これに限られるものではない。
本実施形態のカゴ部10は、台座22を介して支柱21に固定されるのではなく、支柱21に直接固定されている。本実施形態の支柱21は、図9に示すように、互いに直交する二つの側面部からなる、上下方向(支柱21の延在方向)から見て略L字状の部材である。したがって、図7(d)や図10(a)に示すように、土台本体31に設けられた穴部31aの形状も、平面視(上面視)略円形状ではなく、平面視(上面視)略L字形状となっている。
【0041】
本実施形態の支柱21は、長さ寸法が、カゴ部10の上端まで達する寸法に設定されており、図7(b)に示すように、一本の支柱21に対し、互いに直交して隣接する二枚の側壁部(第一側壁部11cと第一側壁部11c、あるいは第一側壁部11cと第二側壁部11d)が、図示しない接合具によって(あるいは溶接等によって)接合されている。
なお、本実施形態の上側枠材11f、下側枠材11g、被固定材11h、及び支柱21は、金属製(鉄製、ステンレス製等)の部材であるが、これに限られるものではない。
また、本実施形態の土台本体31においては、さや管31bの上端が、土台本体31の側面(円錐台の側面)に位置するのではなく、土台本体31の上面(円錐台の上面)に位置している。本実施形態においても、土台本体31を砂地内(海底地盤)に埋める際([1]の工程を行う際)には、さや管31bの上端が海底面SBより上に位置するように埋めることが好ましい。
【0042】
<効果>
第1~第3実施形態の藻場造成着生床1によれば、カゴ部10内の海藻類の流出防止を図ることができるとともに、カゴ部10の設置姿勢の保持(転倒防止)、破損防止、流失防止、砂被り防止、埋没防止を図ることができる。
したがって、砂地に藻場造成が可能となる。また、砂地に核となる藻場を造成することが可能となり、漂砂の影響による海藻の生育を阻害する要因がなくなる。
すなわち、第1~第3実施形態の藻場造成着生床1は、沿岸域の砂地とその周辺の岩礁に藻場を造成するための着床基盤として使用することができる。また、砂地に設置することで、ウニ等の食害生物からの食害を抑制し、効率的に藻場を造成することが可能となる。また、沿岸域での種の多様性を創出し、ブルーカーボンにも貢献する基盤となり得る。
【0043】
具体的には、第1~第3実施形態の藻場造成着生床1は、海藻類を育成・保護するためのカゴ部10と、海底に設置される土台部30と、カゴ部10と土台部30とを連結する支柱21と、を備えている。
すなわち、カゴ部10と土台部30とが支柱21によって連結されているので、波や流れによってカゴ部10が揺動することがない。したがって、内部の海藻類がカゴ部10外へと流出する、カゴ部10自体が破損する、カゴ部10が紛失(流失)する、等のおそれがないので、耐久性の高い藻場造成着生床を提供することができる。
【0044】
また、第1~第3実施形態の藻場造成着生床1においては、土台部30を、少なくとも下端部が海底地盤に埋設される土台本体31と、土台本体31を貫通して海底地盤に埋設され、下端部が土台本体31よりも深く設置される複数の杭32と、を備えるものとすることが可能である。
このように構成することで、土台本体31の少なくとも下端部を海底地盤に埋設した後に、杭32を土台本体31の上方から下方に向けて打ち込むだけで、土台本体31を海底地盤に固定できるので、藻場造成着生床1を砂地に設置する作業を楽に行うことができる。
なお、杭32を打ち込んだ後の段階で、土台本体31の一部が海底面SBから露出している場合には、当該一部を埋没させて、土台本体31全体が海底地盤に埋設されるようにすることが好ましい。
【0045】
また、第1~第3実施形態の藻場造成着生床1においては、土台本体31の形状を、底面の面積が、上面の面積よりも大きい錐台形状とすることが可能である。
このように構成することで、土台本体31の設置状態を安定的に維持できるので、土台本体31によって、カゴ部10(及び支柱21)の流失や転倒を効果的に防止することが可能となる。
なお、第1~第3実施形態において、土台本体31の形状は円錐台形状であるが、これに限られるものではなく、土台本体31の形状は、例えば角錐台形状であってもよい。
【0046】
また、第1~第3実施形態の藻場造成着生床1においては、杭32を、当該杭32の下端部が、当該杭32の上端部よりも、土台本体31の中心線(土台本体31の中心を通る仮想の鉛直線)から離れた位置にある状態で設置することが可能である。
このように構成することで、杭32を垂直(土台本体31の中心線に平行)に設置した場合に比べて杭32が抜けにくくなるので、杭32によって、土台本体31の抜けや転倒を効果的に防止することが可能となる。
【0047】
また、第1実施形態の藻場造成着生床1においては、カゴ部10を、海藻類の種苗が着生する着生部材40を内部に収容した収容カゴ11と、収容カゴ11を内部に収容した外側カゴ12と、を備えるものとすることが可能である。
このように構成することで、カゴ部10が二重構造になるので、内部の海藻類を傷つける等することなく、外側の汚れやすい方(外側カゴ12)を交換できる。
【0048】
また、第1実施形態の藻場造成着生床1においては、収容カゴ11を、外側カゴ12よりも目が粗いものとすることが可能である。
このように構成することで、収容カゴ11内の通水性が高くなり、収容カゴ11内の海藻類の生長促進を図ることができる。また、外側カゴ12の目が細かいので、収容カゴ11内の海藻類に対する食害を効果的に防止できるとともに、外側カゴ12の内部(収容カゴ11)が汚れにくくなる。
なお、第2及び第3実施形態の藻場造成着生床1において、カゴ部10は、海藻類の種苗が着生する着生部材40を内部に収容した収容カゴ11に加えて、収容カゴ11を内部に収容した外側カゴ12を備えるものであってもよい。また、この場合、収容カゴ11は、外側カゴ12よりも目が粗いことが好ましい。
また、カゴ部10を収容カゴ11と外側カゴ12の二重構造とする場合、収容カゴ11は、外側カゴ12よりも目が細かくてもよいし、外側カゴ12と目の粗さが同等であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 藻場造成着生床
10 カゴ部
11 収容カゴ
12 外側カゴ
21 支柱
30 土台部
31 土台本体
32 杭
40 着生部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10