(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120217
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240829BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240829BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240829BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240829BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20240829BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240829BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/106
B29C64/295
B33Y30/00
B29C64/321
B29C64/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026862
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】合津 昌幸
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP06
4F213AP12
4F213AQ04
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL52
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】三次元造形装置において接触式の検出部を用いる場合に、検出部の配置によって造形の妨げになる可能性を低減する。
【解決手段】三次元造形装置は、先端に形成されたノズル開口から造形材料を吐出するノズルを有する造形部と、造形材料が堆積される堆積面を有するステージと、接触子を有し、堆積面と接触することによって堆積面の平行度を測定するための第1検出部と、ノズルとステージとの相対的な位置を変更する第1移動部と、第1検出部の位置を変更する第2移動部と、制御部と、を備える。制御部は、第2移動部を制御して、堆積面の平行度を測定する場合は、第1検出部を、ノズルと堆積面との間の造形領域の内側に位置させ、三次元造形物を造形する場合は、第1検出部を、造形領域の外に位置させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に形成されたノズル開口から造形材料を吐出するノズルを有する造形部と、
前記造形材料が堆積される堆積面を有するステージと、
接触子を有し、前記堆積面と接触することによって前記堆積面の平行度を測定するための第1検出部と、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変更する第1移動部と、
前記第1検出部の位置を変更する第2移動部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2移動部を制御して、
前記平行度を測定する場合は、前記第1検出部を、前記ノズルと前記堆積面との間の造形領域の内側に位置させ、
三次元造形物を造形する場合は、前記第1検出部を、前記造形領域の外に位置させる、
三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記三次元造形物の造形中に前記ノズル開口よりも上方に位置し、前記堆積面に堆積された前記造形材料を加熱するプレート状の加熱部を有し、
前記制御部は、前記第2移動部を制御して、
前記平行度を測定する場合、前記第1検出部を前記加熱部の下方に位置させ、
前記三次元造形物を造形する場合は、前記第1検出部を前記加熱部の周縁よりも外側に位置させる、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記第1移動部は、前記堆積面に垂直な第1方向に前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部を有し、
前記第1検出部は、前記第1検出部が前記加熱部の下方に位置した状態において、前記駆動部によって駆動される可動部に接触する接触部を有し、前記平行度を測定する場合に、前記第1検出部は、前記第1移動部によって、前記第1方向に移動する、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記三次元造形物の造形中に前記ノズル開口よりも上方に位置し、前記堆積面に堆積された前記造形材料を加熱するプレート状の加熱部を有し、
前記制御部は、前記第2移動部を制御して、
前記平行度を測定する場合は、前記第1検出部を前記加熱部の下方に位置させ、
前記三次元造形物を造形する場合は、前記第1検出部を、前記加熱部の上方に位置させる、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の三次元造形装置であって、
前記加熱部の形状は、前記堆積面に垂直な第1方向から見て、長方形であり、
前記第1移動部は、前記第1方向から見て前記加熱部の少なくとも一部と前記ステージの少なくとも一部とが重なる範囲で、前記加熱部と前記ステージとの相対的な位置を変更し、
前記加熱部を、前記第1方向から見て横4個、縦4個の計16個の領域に均等に分割した場合の4つの角のうちの少なくとも2つの角に対応する領域に、それぞれ前記第1検出部が設けられている、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記堆積面の凹凸位置を表す凹凸情報を取得し、前記凹凸情報に応じて前記第1検出部による前記堆積面の測定位置を決定する、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記ステージと連動して移動する接触式の第2検出部を有し、
前記第1検出部と前記第2検出部とは、前記第1検出部と前記第2検出部とが接触した場合に前記第1検出部及び前記第2検出部のうちの特定の一の検出部が接触を検出するように構成されている、三次元造形装置。
【請求項8】
請求項7に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記第1検出部と前記第2検出部とを接触させる第1処理と、前記第1検出部と前記堆積面とを接触させる第2処理と、前記第2検出部と前記ノズルとを接触させる第3処理と、を実行することにより、前記ノズルと前記堆積面との間の距離を測定する、三次元造形装置。
【請求項9】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記堆積面の異なる位置に接触可能な複数の前記第1検出部が、ホルダーに固定されており、
前記第2移動部は、前記ホルダーを移動させる、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ノズルの先端部までの距離L3を検出するために載置台に一体的に支持された検出部と、載置台の載置面と検出部との距離L5を取得する手段と、を備える三次元造形装置が開示されている。この装置では、距離L5から距離L3を差し引いた距離(L3-L5)に基づいて、載置面からノズルの先端部までの距離Lを検出する。この装置は、検出部及び距離取得手段として、非接触式の測距センサーを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
造形を精度良く行うためには、ノズルが移動する平面と、ステージの表面との平行度が重要である。そのため、ステージの着脱が行われた際などに、ステージの平行度を精度良く測定することが望まれる。発明者は、低コストで精度良く測定を行うために、接触式の検出部を用いることを考えたが、接触式の検出部を用いる場合、検出部の配置によっては造形の妨げになる可能性があるという課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、先端に形成されたノズル開口から造形材料を吐出するノズルを有する造形部と、前記造形材料が堆積される堆積面を有するステージと、接触子を有し、前記堆積面と接触することによって前記堆積面の平行度を測定するための第1検出部と、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変更する第1移動部と、前記第1検出部の位置を変更する第2移動部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2移動部を制御して、前記平行度を測定する場合は、前記第1検出部を、前記ノズルと前記堆積面との間の造形領域の内側に位置させ、三次元造形物を造形する場合は、前記第1検出部を、前記造形領域の外に位置させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態における三次元造形装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】三次元造形装置を模式的に示す概略断面図である。
【
図3】三次元造形装置を模式的に示す概略断面図である。
【
図6】第1検出部と第2検出部の内部構成を示す概略図である。
【
図9】ノズル距離測定処理のフローチャートである。
【
図11】第2実施形態における第1検出部の概略構成を示す斜視図である。
【
図12】第3実施形態における三次元造形装置を模式的に示す概略断面図である。
【
図13】加熱部に対する第1検出部の配置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100を模式的に示す斜視図である。
図2,3は、三次元造形装置100を模式的に示す概略断面図である。
図1~3には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向とを、両方含む。X軸及びY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。-Z方向は、鉛直方向であり、+Z方向は、鉛直方向とは逆向きの方向である。-Z方向のことを「下」ともいい、+Z方向のことを「上」ともいう。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。
図1~3におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。Z方向は、「第1方向」に対応する。
【0008】
三次元造形装置100は、造形部200と、ステージ300と、第1移動部400と、制御部500と、加熱部600を有する支持部700と、ノズル移動部800と、を備える。
【0009】
制御部500は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部500は、1つ、又は、複数のプロセッサー501と、記憶部502と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。制御部500には、表示装置510が接続されている。制御部500は、記憶部502に記憶されたプログラムをプロセッサー501が実行することによって、後述する三次元造形処理を実行する機能を発揮する。なお、制御部500は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能の少なくとも一部を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0010】
造形部200は、制御部500の制御下において、固体状態の材料を可塑化させてペースト状にした造形材料を、三次元造形物の基台となる造形用のステージ300上に吐出する。造形部200は、造形材料に転化される前の材料の供給源である材料供給部20と、材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化部30と、生成された造形材料を先端部63に形成されたノズル開口62から吐出するノズル61とを備える。造形部200のことをヘッドとも呼ぶ。
【0011】
本実施形態の三次元造形装置100は、造形部200として、第1造形部200aと、第2造形部200bとを備える。第1造形部200aは、材料供給部20として第1材料供給部20aを備え、可塑化部30として第1可塑化部30aを備え、ノズル61として第1ノズル61aを備えている。第2造形部200bは、材料供給部20として第2材料供給部20bを備え、可塑化部30として第2可塑化部30bを備え、ノズル61として第2ノズル61bを備えている。第1造形部200aと第2造形部200bとは、第1ノズル61aのY方向における位置と第2ノズル61bのY方向における位置とが一致するように、X方向に並んで配置されている。本実施形態では、第2造形部200bは、第1造形部200aの+X方向の位置に配置されている。第1造形部200aの構成と第2造形部200bの構成とは同様であるため、以下では、両者を特に区別しない場合、両者を単に造形部200と呼ぶこともある。また、両者の構成部材を区別する場合、第1造形部200aの構成部材には、符号「a」を付し、第2造形部200bの構成部材には、符号「b」を付して表記する。
【0012】
材料供給部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。本実施形態では、ペレット状に形成されたABS樹脂が材料として用いられる。本実施形態における材料供給部20は、ホッパーによって構成されている。
図2に示すように、材料供給部20の下方には、材料供給部20と可塑化部30との間を接続する供給路22が設けられている。材料供給部20は、供給路22を介して、可塑化部30に材料を供給する。
【0013】
図2に示すように、可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、スクリュー40と、バレル50とを備えている。可塑化部30は、材料供給部20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の造形材料を生成して、ノズル61に供給する。「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0014】
図4は、スクリュー40のスクリュー下面42側の概略構成を示す斜視図である。
図5は、バレル50のバレル上面52側を示す概略平面図である。スクリュー40は、その中心軸RXに沿った方向である軸線方向における長さが軸線方向に直交する方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。スクリュー40は、その回転中心となる中心軸RXがZ方向に平行になるように配置される。スクリュー40は、フラットスクリューや、ローター、スクロールとも呼ばれる。
【0015】
図2に示すように、スクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。スクリュー40の上面側は駆動モーター32に連結されており、スクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部500の制御下において駆動する。なお、スクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0016】
図4に示すように、スクリュー下面42には、渦状の溝部45が形成されている。上述した材料供給部20の供給路22は、スクリュー40の側面から、溝部45に連通する。溝部45は、スクリュー40の側面に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料供給部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
図4に示すように、本実施形態では、溝部45は、凸条部46によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部45の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。溝部45は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部47から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0017】
図2に示すように、バレル50は、スクリュー40の下方に配置されている。バレル上面52は、スクリュー下面42に面しており、スクリュー下面42の溝部45と、バレル上面52との間には空間が形成される。バレル50には、スクリュー40の中心軸RX上に、後述するノズル61のノズル流路65に連通する連通孔56が設けられている。バレル50には、スクリュー40の溝部45に対向する位置に可塑化ヒーター58が内蔵されている。可塑化ヒーター58の温度は、制御部500によって制御される。
【0018】
図5に示すように、バレル上面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、その一端が連通孔56に接続され、連通孔56からバレル上面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、案内溝54の一端が連通孔56に接続されていなくてもよい。また、バレル50には案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0019】
スクリュー40の溝部45内に供給された材料は、溝部45内において溶融されながら、スクリュー40の回転によって溝部45に沿って流動し、造形材料としてスクリュー40の中央部47へと導かれる。中央部47に流入した流動性を発現しているペースト状の造形材料は、連通孔56を介してノズル61に供給される。なお、造形材料を構成する全ての種類の物質が溶融していなくてもよく、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が溶融することによって、造形材料が全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0020】
図2に示すように、ノズル61は、ノズル流路65と、ノズル開口62が設けられた先端部63とを備えている。ノズル流路65は、ノズル61内に形成された造形材料の流路であり、上述したバレル50の連通孔56に接続されている。先端部63は、ノズル61の、ステージ300に向かって-Z方向に突出した先端部分を構成する。ノズル開口62は、ノズル流路65の大気に連通する側の端部に設けられた、ノズル流路65の流路断面が縮小された部分である。第1ノズル61aの第1先端部63aには第1ノズル開口62aが形成され、第2ノズル61bの第2先端部63bには第2ノズル開口62bが形成されている。可塑化部30によって生成された造形材料は、連通孔56を介してノズル61へ供給され、ノズル流路65を介してノズル開口62から吐出される。
【0021】
ステージ300は、ノズル開口62に対向する位置に配置されている。三次元造形装置100は、ノズル開口62からステージ300の堆積面321に向かって造形材料を吐出させ、堆積面321に造形材料の層を積層することによって三次元造形物を造形する。ステージ300の詳細については後述する。
【0022】
第1移動部400は、ノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、第1移動部400は、造形部200を積層方向であるZ方向に沿って移動させ、ステージ300を積層方向と交差する方向に移動させることによって、ノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させる。より具体的には、本実施形態の第1移動部400は、造形部200をZ方向に沿って移動させることによって、Z方向におけるノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させ、ステージ300をZ方向と直交するX方向及びY方向に移動させることによって、X方向及びY方向におけるノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させる。
図1に示すように、第1移動部400は、ステージ300をX方向に沿って移動させる第1駆動部410と、ステージ300と第1駆動部410とをY方向に沿って移動させる第2駆動部420と、造形部200を、ステージ300の堆積面321に垂直なZ方向に沿って移動させる第3駆動部430とによって構成されている。より詳細には、第3駆動部430は、第1造形部200a及び第2造形部200bが固定された可動部431をZ方向に沿って移動させることによって、第1造形部200a及び第2造形部200bをZ方向に沿って移動させる。なお、
図2,3では、第3駆動部430及び可動部431は省略されている。第1駆動部410、第2駆動部420、及び、第3駆動部430は、制御部500の制御下で駆動される。第1駆動部410、第2駆動部420、及び、第3駆動部430は、例えば、電動アクチュエーターである。
【0023】
図1に示すように、可動部431には、更に、支持部700が固定されている。支持部700は、可動部431の一部ともいえる。支持部700は、加熱部600を支持することによって、加熱部600をステージ300と対向する位置に配置する。従って、本実施形態における第3駆動部430は、造形部200と支持部700との位置関係を維持した状態で、造形部200とともに支持部700をZ方向に沿って移動させる。つまり、支持部700は、ノズル61とともにステージ300との相対的な位置が変化するように構成されているともいえる。また、同様に、支持部700によって支持される加熱部600は、ノズル61とともにステージ300との相対的な位置が変化するように構成されているともいえる。
【0024】
加熱部600は、ステージ300の堆積面321に堆積された造形材料を加熱する。加熱部600の形状は、プレート状であり、堆積面321に垂直なZ方向から見て長方形である。加熱部600は、第3駆動部430によって駆動される可動部431に固定されている。加熱部600は、第1造形部200a及び第2造形部200bとともに、ステージ300との相対的な位置が変化するように構成されている。本実施形態において、制御部500は、加熱部600を、造形部200とともに、第3駆動部430によってZ方向に移動させる。また、本実施形態において、制御部500は、第1駆動部410及び第2駆動部420を制御することにより、Z方向から見て加熱部600の少なくとも一部とステージ300の少なくとも一部とが重なる範囲で、加熱部600とステージ300との相対的な位置を変更する。加熱部600には、加熱部600をZ方向に貫通する第1開口71、第2開口72、及び、第3開口73が設けられている。第1開口71は、第1ノズル61aに対応する位置に設けられている。第2開口72は、第2ノズル61bに対応する位置に設けられている。第3開口73は、加熱部600の外縁と第1開口71との間に設けられている。
【0025】
図1に示したノズル移動部800は、ノズル61と加熱部600との相対的な位置を変化させる。三次元造形装置100には、第1造形部200aと第2造形部200bとに対応して、2つのノズル移動部800が設けられている。各ノズル移動部800は、可動部431に固定されており、加熱部600とともに第3駆動部430によってZ方向に移動される。ノズル移動部800は、例えば電動アクチュエーターとして構成され、制御部500の制御下で駆動される。ノズル移動部800は、造形部200をZ方向に移動させることにより、ノズル61と加熱部600との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、一方のノズル移動部800は、第1造形部200aをZ方向に移動させ、他方のノズル移動部800は、第2造形部200bをZ方向に移動させる。各ノズル移動部800は、それぞれ、制御部500によって個別に制御される。他の実施形態では、ノズル移動部800は、例えば、造形部200全体ではなく、ノズル61のみをZ方向に移動させてもよい。
【0026】
本実施形態では、第1ノズル61a及び第2ノズル61bは、それぞれ、ノズル移動部800によって、造形状態と退避状態とを切り替え可能に構成されている。
図2には、造形状態を示しており、
図3には退避状態を示している。造形状態とは、
図2に示すように、ノズル61の少なくとも一部が第1開口71又は第2開口72内に配置された状態である。造形状態にあるノズル61のノズル開口62は、Z方向において加熱部600とステージ300との間に配置される。つまり、三次元造形物の造形中には、加熱部600は、ノズル開口62よりも上方に位置する。退避状態とは、
図3に示すように、ノズル61が第1開口71又は第2開口72よりも上方に配置されることで、ノズル61が第1開口71又は第2開口72の外に配置された状態である。ノズル移動部800は、ノズル61を造形状態から退避状態へと切り替える場合、造形部200を+Z方向へ移動させ、ノズル61を退避状態から造形状態へと切り替える場合、造形部200を-Z方向へ移動させる。制御部500は、ノズル移動部800を制御して、三次元造形処理において使用しないノズル61を退避状態とすることで、そのノズル61が造形物に接触することを防止できる。なお、退避状態では、例えば、図示していないクリーニング機構によって、ノズル61のクリーニングが行われてもよい。
【0027】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の三次元造形装置100は、第1検出部110と第2検出部130と第2移動部150を備えている。
【0028】
第1検出部110及び第2検出部130は、対象物に接触することで制御部500に検出信号を出力する接触式の検出部である。第1検出部110は、ステージ300の堆積面321と接触することによって堆積面321の平行度を測定するために用いられる。平行度とは、基準面に対する平行の度合いをいう。基準面は、ノズル61が移動する平面であり、本実施形態では、水平面である。
【0029】
第2移動部150は、第1検出部110の位置を変更する。制御部500は、堆積面321の平行度を測定する場合は、第2移動部150を制御し、第1検出部110を、ノズル61と堆積面321との間の造形領域の内側に移動させる。造形領域とは、造形状態にあるノズル61と、堆積面321と、の間の空間であり、三次元造形物が造形され得る空間である。制御部500は、三次元造形物を造形する場合は、第2移動部150を制御して、第1検出部110を、造形領域の外に位置させる。
【0030】
本実施形態において、第2移動部150は、+Z方向に延びる支柱152と、アーム153とを備える。アーム153は、支柱152から垂直に延び、支柱152に対して回転可能に取り付けられている。アーム153の先端には、第1検出部110が設けられている。支柱152には、アーム153を回転させるためのモーターが組み込まれている。アーム153の回転は、制御部500によって制御される。第1検出部110は、支柱152に対して回転移動して、造形領域内に移動する。なお、第2移動部150は、第1検出部110を回転移動させる構成に限らず、例えば、伸縮するアームや、平行移動するアームによって第1検出部110を造形領域内に移動させるものであってもよい。
【0031】
図2に示すように、第1検出部110は、検出部支持機構118に設けられている。検出部支持機構118は、ベース部111と、支持部材112と、接触部114と、バネ115と、ガイドレール116と、を備える。
【0032】
ベース部111は、アーム153の先端に固定されている。ベース部111には、Z方向に沿ってガイドレール116が設けられている。ガイドレール116には、支持部材112がZ方向にスライド移動可能に取り付けられている。支持部材112の下部には、第1検出部110が設けられている。支持部材112の上部には、棒状の接触部114が設けられている。支持部材112とベース部111とは、Z方向に伸縮するバネ115によって連結されている。接触部114の上端部は、加熱部600に設けられた第3開口73に挿通可能である。加熱部600が設けられている可動部431には、接触部114を下方に押すための押板117が固定されている。押板117は、可動部431の一部を構成する。
【0033】
制御部500は、加熱部600が接触部114よりも上方に位置した状態で、第2移動部150を制御して第1検出部110を造形領域に移動させる。そして、第1移動部400を制御して加熱部600を下降させて、第1検出部110の接触部114を第3開口73に挿通させ、可動部431に固定された押板117により、接触部114を-Z方向に押して移動させる。すると、バネ115の引張り力に抗して第1検出部110が下方に移動し、第1検出部110がステージ300の堆積面321に接触する。第1検出部110により接触が検知されたら、制御部500は、加熱部600の下降を停止させた後に加熱部600を上昇させる。すると、バネ115の引張り力により、第1検出部110が堆積面321から離れて上昇し、元の位置に戻る。
【0034】
第2検出部130は、ステージ300に固定されている。本実施形態では、第2検出部130は、ステージ300の堆積面321よりも外側の部分に固定されている。第1移動部400によってステージ300が移動すると、第2検出部130は、ステージ300の移動と連動して移動する。第2検出部130は、ステージ300に取り付けられた第4駆動部440によって、Z方向に移動することができる。第4駆動部440は、制御部500によって制御される。制御部500は、第1検出部110と第2検出部130とを用いることで、ステージ300の堆積面321とノズル61の先端部63との間の距離を測定することができる。測定方法の詳細については後述する。
【0035】
図6は、第1検出部110と第2検出部130の内部構成を示す概略図である。本実施形態において、第1検出部110と第2検出部130とは、それぞれ、B接点式の接触センサーとして構成されている。第1検出部110及び第2検出部130は、それぞれ、接触子141と、導電体142と、一対の接点143と、ハウジング144と、バネ145とを備える。接触子141は、対象物に接触する部分である。接触子141は、例えば棒状の形状である。接触子141の基端には、導電体142が固定されている。バネ145は、導電体142とハウジング144との間に配置されている。接触子141が対象物に接触していない場合、バネ115は、導電体142を接触子141側に付勢することで、導電体142を一対の接点143に接触させる。この状態では、一対の接点143が、導電体142を介して電気的に接続された状態になる。これに対して、接触子141が対象物に接触すると、導電体142がバネ145を押し込み、一対の接点143から離れるため、一対の接点143は電気的に接続されていない状態になる。第1検出部110及び第2検出部130は、一対の接点143の電気的な接続状態を監視することで、接触子141が対象物に接触したか否かを検知し、接触した場合に、制御部500に検出信号を出力する。
【0036】
本実施形態では、第1検出部110に備えられたバネ145の付勢力と、第2検出部130に備えられたバネ145の付勢力とが異なっている。付勢力は、それぞれのバネ145のバネ定数を調整することで調整できる。こうすることで、本実施形態では、第1検出部110と第2検出部130とは、第1検出部110と第2検出部130とが接触した場合に、第1検出部110及び第2検出部130のうちの特定の一の検出部が接触を検出するように構成されている。本実施形態では、第1検出部110のバネ145の付勢力を第2検出部130のバネ145の付勢力よりも小さくしている。そのため、第1検出部110と第2検出部130とを互いに接触させると、
図6に示すように、第1検出部110のバネ145の方が先に圧縮されるため、第1検出部110から検出信号が出力される。なお、本実施形態では、第1検出部110及び第2検出部130は、B接点式の接触型センサーとしたが、これらはA接点式の接触型センサーによって構成することも可能である。また、他の実施形態では、第1検出部110のバネ145の付勢力を第2検出部130のバネ145の付勢力よりも大きくしてもよい。
【0037】
図7は、ステージ300の構成を示す斜視図である。ステージ300は、例えば、アルミやステンレス鋼、ガラスによって形成されている。ステージ300の堆積面321には、Y方向に沿った複数の溝322が、X方向に一定間隔に並ぶように形成されている。この溝322によってアンカー効果が発揮され、三次元造形物の堆積面321への密着度が向上する。本実施形態において、ステージ300は、第1移動部400に対して着脱可能である。ユーザーは、ステージ300として、
図7に示すステージ300以外にも、溝322の位置が異なるステージや、溝322が形成されていないステージを第1移動部400に対して取り付けてもよい。
【0038】
図8は、制御部500によって実行される三次元造形処理のフローチャートである。この三次元造形処理は、制御部500に対して、所定の造形開始操作が行われた際に実行される。なお、三次元造形処理の開始時において、加熱部600は、接触部114の上方に位置しているものとする。
【0039】
三次元造形処理の実行が開始されると、ステップS10において、制御部500は、凹凸情報を取得する。凹凸情報とは、ステージ300の堆積面321の凹凸位置を表す情報である。本実施形態において、凹凸の位置とは、
図7に示した溝322の位置である。例えば、ユーザーは、第1移動部400に取り付けたステージ300の種類を表す情報を、制御部500に接続された入力装置等を用いて入力する。制御部500は、入力された情報から、その情報に対応するステージ300を特定して、そのステージ300に関連付けられた凹凸情報を、制御部500内の記憶部502、あるいは、他の装置から取得する。凹凸情報は、三次元造形物を造形するための造形データに含まれていてもよい。
【0040】
ステップS20において、制御部500は、ステップS10で取得された凹凸情報に基づき、堆積面321の平行度を測定するための測定位置を決定する。本実施形態において、制御部500は、測定位置として、堆積面321上の溝322が形成されていない4つの異なる位置を測定位置として特定する。4つの異なる位置とは、例えば、堆積面321の四隅の位置や、堆積面321の1つの隅と中心とを対角に有する長方形の四隅の位置である。
【0041】
ステップS30において、制御部500は、第2移動部150を制御して、第1検出部110を造形領域外から造形領域内に移動させる。より具体的には、制御部500は、加熱部600に備えられた第3開口73の直下に接触部114が位置するように、第1検出部110を加熱部600の下方に位置させる。
【0042】
ステップS40において、制御部500は、堆積面の平行度を測定する。具体的には、制御部は、第1移動部150を制御して、加熱部600を下降させることによって、可動部431に設けられた押板117により、第1検出部110を下降させてステージ300の堆積面321に接触させる。制御部500は、第1移動部400を制御して第1検出部110に対するステージ300の位置を変更することで、ステップS20で決定された全ての測定位置において、第1検出部110を堆積面321に接触させる。こうすることで、各測定位置における堆積面の高さを測定できる。制御部500は、測定された高さの最大値と最小値との差を、平行度として算出する。制御部500は、算出した平行度を、表示装置510に表示してもよい。制御部500は、平行度に限らず、測定値や測定位置も表示装置510に表示してもよい。
【0043】
ステップS50において、制御部500は、ステップS40で測定した平行度に基づき、ステージ300の堆積面321が、水平面に対して平行であるか否かを判断する。本実施形態において、制御部500は、平行度が所定の閾値未満であれば、平行であると判断する。ステップS50において堆積面321が平行ではないと判断した場合、制御部500は、ステップS60において、制御部500に接続された表示装置510に対して警告を表示する。本実施形態において、例えば、制御部500は、「ステージを取り付け直してください。」といった警告を表示する。上述した閾値は、例えば、三次元造形物を造形する際の積層ピッチに応じて定められる。本実施形態では、閾値として積層ピッチと同じ値を設定する。閾値は、例えば、0.05mm~0.5mmである。
【0044】
ステップS50において堆積面321が平行であると判断した場合、制御部500は、ステップS70において、ノズル距離測定処理を実行する。ノズル距離測定処理とは、ノズル61と堆積面321との間の距離を測定する処理である。ノズル距離測定処理の詳細については後述する。
【0045】
ステップS80において、制御部500は、ステップS70で測定したノズル61と堆積面321との間の距離に基づき、Z軸オフセット量を決定する。具体的には、制御部500は、ステップS70で測定された距離と、予め定められた基準値との差を求め、その差を、Z軸オフセット量として決定する。予め定められた基準値とは、例えば、ノズル61と堆積面321との間の距離の設計値である。
【0046】
ステップS90において、制御部500は、積層処理を実行する。この積層処理において、制御部500は、記録媒体やネットワークを通じて取得した造形データを用いて造形材料を堆積面321に積層していき、三次元造形物を造形する。造形データには、ノズル61のステージ300に対する相対的な移動の経路を表すパスデータと、ノズル61から吐出される造形材料の量を表す吐出量データとが含まれる。制御部500は、ノズル61をZ方向に移動させる際に、ノズル61のZ方向の位置を、ステップS80で決定したZ軸オフセット量によって補正する。こうすることで、三次元造形物を精度良くステージ300上に造形できる。なお、ステップS90によって三次元造形物が造形される場合には、第1検出部110は、後述するノズル距離測定処理のステップS73において、造形領域の外に退避される。
【0047】
図9は、上記ステップS70において実行されるノズル距離測定処理のフローチャートである。
図10は、ノズル距離測定処理の説明図である。
【0048】
ステップS71において、制御部500は、第1検出部110と第2検出部130とを接触させる第1処理を実行する。第1処理において、制御部500は、第4駆動部440を制御して、第2検出部130の+Z方向の先端を、堆積面321よりも+Z方向に移動させる。制御部500は、第1移動部400の第1駆動部410及び第2駆動部420を制御して、第2検出部130のX方向及びY方向の位置を第1検出部110の位置に一致させる。制御部500は、第1移動部400の第3駆動部430を制御して、第1検出部110と第2検出部130とが接触するまで、すなわち、第1検出部110が検出信号を出力するまで、第1検出部110を測定開始位置から下降させる。第1処理において、制御部500は、第3駆動部430によって移動された第1検出部110の移動量に基づき、第1検出部110から第2検出部130までの距離L1を算出する。
【0049】
ステップS72において、制御部500は、第1検出部110と堆積面321とを接触させる第2処理を実行する。第2処理において、制御部500は、第1移動部400の第1駆動部410及び第2駆動部420を制御して、堆積面321上の測定基準となるX方向及びY方向の位置を第1検出部110の位置に一致させる。そして、第1移動部400の第3駆動部430を制御して、第1検出部110が検出信号を出力するまで、すなわち、第1検出部110と堆積面321とが接触するまで、第1検出部110を測定開始位置から下降させる。第2処理において、制御部500は、第3駆動部430によって移動された第1検出部110の移動量に基づき、第1検出部110から堆積面321までの距離L2を算出する。
【0050】
ステップS73において、制御部500は、第2移動部150を制御して第1検出部110を移動させ、造形領域の外に位置させる。より具体的には、制御部500は、第1検出部110を、加熱部600の周縁よりも外側に位置させる。
【0051】
ステップS74において、制御部500は、第2検出部130とノズル61とを接触させる第3処理を実行する。第3処理において、制御部500は、第1移動部400の第1駆動部410及び第2駆動部420を制御して、第2検出部130のX方向及びY方向の位置をノズル61の位置に一致させる。制御部500は、第1移動部400の第3駆動部430を制御して、第2検出部130が検出信号を出力するまで、すなわち、第2検出部130とノズル61とが接触するまで、ノズル61を測定開始位置から下降させる。第3処理において、制御部500は、第3駆動部430によって移動されたノズル61の移動量に基づき、第2検出部130からノズル61までの距離L3を算出する。
【0052】
ステップS75において、制御部500は、ノズル61と堆積面321との距離Lを算出するための演算処理を実行する。この演算処理において、制御部500は、まず、第1検出部110から堆積面321までの距離L2から、第1検出部110から第2検出部130までの距離L1を差し引くことで、第2検出部130と堆積面321との間の距離L4を算出する。そして、第2検出部130からノズル61までの距離L3に対して、第2検出部130と堆積面321との間の距離L4を加えることで、ノズル61と堆積面321との距離Lを算出する。なお、制御部500は、ステップS74の第3処理において、第2検出部130を、第1ノズル61aと第2ノズル61bとにそれぞれ接触させることにより、第1ノズル61aと堆積面321との間の距離と、第2ノズル61bと堆積面321との間の距離を個別に算出してもよい。こうすることで、第1ノズル61aと第2ノズル61bとに対して個別にZ軸オフセット量を決定することができる。
【0053】
以上で説明した第1実施形態の三次元造形装置100によれば、ステージ300の堆積面321の平行度を測定する場合は、第1検出部110を、ノズル61と堆積面321との間の造形領域の内側に位置させ、三次元造形物を造形する場合は、第1検出部110を、造形領域の外に位置させる。そのため、造形の妨げになることなく、低コストな接触式の第1検出部110を用いてステージ300の平行度を測定できる。
【0054】
第1実施形態の三次元造形装置100は、造形中にノズル開口62よりも上方に位置し、堆積面321に堆積された造形材料を加熱するプレート状の加熱部600を有している。そして、平行度を測定する場合には、第1検出部110を加熱部600の下方に位置させ、三次元造形物を造形する場合には、第1検出部110を加熱部600の周縁よりも外側に位置させる。そのため、第1検出部110と加熱部600とが接触することを抑制できる。
【0055】
第1実施形態の三次元造形装置100は、ステージ300の堆積面321に垂直なZ方向にノズル61とステージ300との相対的な位置を変更する第3駆動部430を有している。第1検出部110は、第1検出部110が加熱部600の下方に位置した状態において、第3駆動部430によって駆動される可動部431に接触する接触部114を有している。そして、平行度を測定する場合には、第1検出部110は、第1移動部400に備えられた第3駆動部430によってZ方向に移動する。そのため、第1検出部110を移動させるための駆動部を別途設けることなく、第1検出部110を移動させることができる。この結果、三次元造形装置100の構成を簡略化できる。
【0056】
第1実施形態では、ステージ300の堆積面321の凹凸位置を表す凹凸情報に応じて第1検出部110による堆積面321の測定位置を決定する。そのため、堆積面321の平行度を精度よく測定できる。
【0057】
第1実施形態では、第1検出部110と第2検出部130とが互いに接触した場合に、第1検出部110及び第2検出部130のうちの特定の一の検出部が接触を検出するように構成されている。そのため、接触の検出元がばらつくことがなく、制御部500は、一方の検出部からの検出信号の有無を監視すればよい。また、接触の検出元となる検出部がばらつかないため、距離の測定精度が変動することが抑制される。この結果、第1検出部110と第2検出部130との間の距離を精度よく測定できる。
【0058】
第1実施形態では、
図9,10に示した第1処理によって第1検出部110と第2検出部130との間の距離L1を測定し、第2処理によって第1検出部110と堆積面321との間の距離L2を測定し、第3処理によって第2検出部130とノズル61との間の距離L3を測定する。そのため、第2検出部130と堆積面321の高さが異なる場合であっても、それらの間の距離L4(=L2-L1)を算出することで、ノズル61と堆積面321との間の距離L(=L3+L4)を精度よく測定できる。
【0059】
第1実施形態では、三次元造形物の造形時には、第1検出部110を、造形領域外に退避させるので、第1検出部110が加熱部600による熱の影響を受けにくい。そのため、耐熱性の低く、かつ低コストな第1検出部110を用いることができる。
【0060】
B.第2実施形態:
図11は、第2実施形態における第1検出部110の概略構成を示す斜視図である。上述した第1実施形態では、三次元造形装置100に1つの第1検出部110が備えられている。これに対して、第2実施形態では、三次元造形装置100に、複数の第1検出部110が備えられている。複数の第1検出部110は、1つのホルダー119に固定されている。ホルダー119は、第1実施形態における支持部材112に対応する。複数の第1検出部110は、堆積面321の異なる位置に接触可能である。第2移動部150は、ホルダー119を移動させることで、複数の第1検出部110を同時に移動させることができる。各第1検出部110は、ホルダー119に設けられた接触部114が、可動部431に備えられた押板117に押されることで、ホルダー119とともにZ方向に移動する。ホルダー119に対する各第1検出部110の平面方向における取付位置は、ステージ300に設けられた溝322を避けるために、任意に調節可能であることが好ましい。
【0061】
第2実施形態によれば、複数の第1検出部110によって、同時に堆積面321の異なる位置を測定できる。そのため、堆積面321の平行度を効率的に測定できる。
【0062】
また、例えば、複数の第1検出部110が、
図11に示すように、堆積面321の1つの隅と中心とを対角に有する長方形RCの四隅の位置に対応する位置に配置されている場合、ステージ300を移動させつつ4回の測定を行うことで、堆積面321全体の平行度を測定できる。第1検出部110が1つの場合にはステージ300を移動させつつ9回の測定が必要になるため、測定時間を大幅に短縮できる。また、堆積面321全体の測定を行うことで、平行度に限らず、ステージ300の反りなどの変形を検出することもできる。
【0063】
C.第3実施形態:
図12は、第3実施形態における三次元造形装置100Cを模式的に示す概略断面図である。上述した第1実施形態では、第1検出部110は、加熱部600の周縁よりも外側から、加熱部600の下方に移動する。これに対して、第3実施形態では、第1検出部110は、加熱部600の上方から加熱部600の下方に移動する。
【0064】
第3実施形態では、第1検出部110は、可動部431に取り付けられている。第1検出部は、可動部431に設けられた第2移動部150Cによって、Z方向に移動することができる。第2移動部150Cは、制御部500によって制御される。第2移動部150Cは、例えば、電動リニアアクチュエーターによって構成される。
【0065】
制御部500は、平行度を測定する場合には、第2移動部150Cを制御することで、第1検出部110を、加熱部600の下方に位置させる。より具体的には、第1検出部110の-Z方向の先端を、加熱部600に設けられた第3開口73を通じて加熱部600よりも下方に位置させる。そして、三次元造形物を造形する場合は、第1検出部110を、加熱部600よりも上方に位置させる。より具体的には、第1検出部110の-Z方向の先端を、加熱部600の下面よりも上方に位置させる。
【0066】
以上で説明した第2実施形態によっても、第1実施形態と同様に、造形の妨げになることなく、かつ低コストな接触式の第1検出部110を用いてステージ300の平行度を測定できる。
【0067】
図13は、加熱部600に対する第1検出部110の配置の例を示す図である。第3実施形態において、三次元造形装置100Cは、第1検出部110を可動部431に複数備えていてもよい。例えば、
図13に示すように、加熱部600を、Z方向から見て横4個すなわちX方向に4個、縦4個すなわちY方向に4個の計16個の領域に均等に分割した場合、4つの角のうちの少なくとも2つの角に対応する領域に、それぞれ、第1検出部110が設けられてもよい。
図13には、4つの角のうちの全ての角に対応する領域に、第1検出部110が設けられている例を示している。こうすることで、ステージ300をXY方向に最大限移動させた場合にステージ300の一部が加熱部600に重なる移動範囲であっても、一の第1検出部110で測定できない堆積面321の位置を、他の第1検出部110で測定できる。そのため、ステージ300の移動範囲が上記のような範囲であっても、堆積面321の測定可能な範囲を広げることができる。
【0068】
D.他の実施形態:
(D1)上記各実施形態において、
図8に示した三次元造形処理の、ステップS70及びステップS80の処理は省略してもよい。つまり、ノズル距離測定処理及びZ軸オフセット量の決定は省略してもよい。この場合、三次元造形装置100は、第2検出部130を備えていなくてもよい。なお、ステップS70のノズル距離測定処理を省略した場合、制御部500は、ステップS90の積層処理を実行する前に、第1移動部400を造形領域の外に移動させる。
【0069】
(D2)上記各実施形態において、
図8に示した三次元造形処理のステップS40からステップS60までの処理、すなわち、平行度の測定に関わる処理を省略してもよい。この場合、制御部500は、ステップS70においてノズル61と堆積面321との間の距離を測定する場合に、第1検出部110を、造形領域の内側に位置させ、ステップS90において三次元造形物を造形する場合に、第1検出部110を、造形領域の外に位置させる。
【0070】
(D3)上記各実施形態において、
図8に示したステップS10及びステップS20の処理は、実行しなくてもよい。この場合、堆積面321の測定位置は、ステージ300の種類によらず、予め定められていてもよい。
【0071】
(D4)上記第1実施形態では、第1検出部110は、可動部431を駆動するための第3駆動部430によってZ方向に移動される。これに対して、例えば、ベース部111に電動リニアアクチュエーターを設け、制御部500がその電動リニアアクチュエーターを駆動することによって第1検出部110をZ方向に移動させてもよい。この場合、加熱部600に設けられた第3開口73や押板117を省略することができる。また、この場合、第1検出部110として、高精度接触式デジタル変位センサーを用いることで、堆積面321の凹凸を平面方向に連続的に測定してもよい。
【0072】
(D5)上記各実施形態では、第1移動部400は、造形部200をZ方向に移動させ、ステージ300をX方向及びY方向に沿って移動させる。これに対して、第1移動部400は、例えば、ステージ300をZ方向に移動させ、造形部200をX方向及びY方向に沿って移動させてもよい。また、造形部200を移動させずにステージ300をX方向、Y方向及びZ方向に移動させてもよい。また、ステージ300を移動させずに造形部200をX方向、Y方向及びZ方向に移動させてもよい。
【0073】
(D6)上記各実施形態では、三次元造形装置100は、2つの造形部200を備えている。これに対して、三次元造形装置100は、造形部200を1つのみ備えていてもよいし、3つ以上備えていてもよい。
【0074】
(D7)上記各実施形態において、
図9に示した三次元造形処理のステップS71、ステップS72、ステップS74の処理の順番は入れ替わってもよい。この場合、ステップS74の前に、ステップS73が実行される。
【0075】
E.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0076】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、先端に形成されたノズル開口から造形材料を吐出するノズルを有する造形部と、前記造形材料が堆積される堆積面を有するステージと、接触子を有し、前記堆積面と接触することによって前記堆積面の平行度を測定するための第1検出部と、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変更する第1移動部と、前記第1検出部の位置を変更する第2移動部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2移動部を制御して、前記平行度を測定する場合は、前記第1検出部を、前記ノズルと前記堆積面との間の造形領域の内側に位置させ、三次元造形物を造形する場合は、前記第1検出部を、前記造形領域の外に位置させる。
このような形態によれば、造形の妨げになることなく低コストな接触式の第1検出部を用いてステージの平行度を測定できる。
【0077】
(2)上記形態の三次元造形装置において、前記三次元造形物の造形中に前記ノズル開口よりも上方に位置し、前記堆積面に堆積された前記造形材料を加熱するプレート状の加熱部を有し、前記制御部は、前記第2移動部を制御して、前記平行度を測定する場合、前記第1検出部を前記加熱部の下方に位置させ、前記三次元造形物を造形する場合は、前記第1検出部を前記加熱部の周縁よりも外側に位置させてもよい。このような形態によれば、第1検出部と加熱部とが接触することを抑制できる。
【0078】
(3)上記形態の三次元造形装置において、前記第1移動部は、前記堆積面に垂直な第1方向に前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変更する駆動部を有し、前記第1検出部は、前記第1検出部が前記加熱部の下方に位置した状態において、前記駆動部によって駆動される可動部に接触する接触部を有し、前記平行度を測定する場合に、前記第1検出部は、前記第1移動部によって、前記第1方向に移動してもよい。このような形態によれば、第1検出部を移動させるための駆動部を別途設けることなく、第1検出部を移動させることができる。
【0079】
(4)上記形態の三次元造形装置において、前記三次元造形物の造形中に前記ノズル開口よりも上方に位置し、前記堆積面に堆積された前記造形材料を加熱するプレート状の加熱部を有し、前記制御部は、前記第2移動部を制御して、前記平行度を測定する場合は、前記第1検出部を前記加熱部の下方に位置させ、前記三次元造形物を造形する場合は、前記第1検出部を、前記加熱部の上方に位置させてもよい。このような形態によれば、第1検出部と加熱部とが接触することを抑制できる。
【0080】
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記加熱部の形状は、前記堆積面に垂直な第1方向から見て、長方形であり、前記第1移動部は、前記第1方向から見て前記加熱部の少なくとも一部と前記ステージの少なくとも一部とが重なる範囲で、前記加熱部と前記ステージとの相対的な位置を変更し、前記加熱部を、前記第1方向から見て横4個、縦4個の計16個の領域に均等に分割した場合の4つの角のうちの少なくとも2つの角に対応する領域に、それぞれ前記第1検出部が設けられてもよい。このような形態によれば、一の第1検出部で測定できない堆積面の位置を、他の第1検出部で測定できる。
【0081】
(6)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記堆積面の凹凸位置を表す凹凸情報を取得し、前記凹凸情報に応じて前記第1検出部による前記堆積面の測定位置を決定してもよい。このような形態によれば、堆積面の平行度を精度よく測定できる。
【0082】
(7)上記形態の三次元造形装置において、前記ステージと連動して移動する接触式の第2検出部を有し、前記第1検出部と前記第2検出部とは、前記第1検出部と前記第2検出部とが接触した場合に前記第1検出部及び前記第2検出部のうちの特定の一の検出部が接触を検出してもよい。このような形態によれば、接触の検出元がばらつくことがないので、第1検出部と第2検出部との間の距離を精度よく測定できる。
【0083】
(8)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記第1移動部及び前記第2移動部を制御して、前記第1検出部と前記第2検出部とを接触させる第1処理と、前記第1検出部と前記堆積面とを接触させる第2処理と、前記第2検出部と前記ノズルとを接触させる第3処理と、を実行することにより、前記ノズルと前記堆積面との間の距離を測定してもよい。このような形態によれば、ノズルと堆積面との間の距離を精度よく測定できる。
【0084】
(9)上記形態の三次元造形装置において、前記堆積面の異なる位置に接触可能な複数の前記第1検出部が、ホルダーに固定されており、前記第2移動部は、前記ホルダーを移動させてもよい。このような形態によれば、複数の第1検出部によって堆積面の平行度を効率的に測定できる。
【0085】
本開示は、上述した三次元造形装置の態様に限らず、三次元造形物の製造方法や、平行度の測定方法など、種々の態様によって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
20…材料供給部、20a…第1材料供給部、20b…第2材料供給部、22…供給路、30…可塑化部、30a…第1可塑化部、30b…第2可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…スクリュー、42…スクリュー下面、44…材料導入口、45…溝部、46…凸条部、47…中央部、50…バレル、52…バレル上面、54…案内溝、56…連通孔、58…可塑化ヒーター、61…ノズル、61a…第1ノズル、61b…第2ノズル、62…ノズル開口、62a…第1ノズル開口、62b…第2ノズル開口、63…先端部、63a…第1先端部、63b…第2先端部、65…ノズル流路、71…第1開口、72…第2開口、73…第3開口、100,100C…三次元造形装置、110…第1検出部、111…ベース部、112…支持部材、114…接触部、115…バネ、116…ガイドレール、117…押板、118…検出部支持機構、119…ホルダー、130…第2検出部、141…接触子、142…導電体、143…接点、144…ハウジング、145…バネ、150,150C…第2移動部、152…支柱、153…アーム、200…造形部、200a…第1造形部、200b…第2造形部、300…ステージ、321…堆積面、322…溝、400…第1移動部、410…第1駆動部、420…第2駆動部、430…第3駆動部、431…可動部、440…第4駆動部、500…制御部、501…プロセッサー、502…記憶部、510…表示装置、600…加熱部、700…支持部、800…ノズル移動部