(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120229
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】焼物調理装置
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20240829BHJP
A47J 37/07 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A47J37/06 366
A47J37/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026882
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】林 周作
(72)【発明者】
【氏名】山田 勇雄
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA08
4B040AB04
4B040AC02
4B040AD04
4B040CA02
(57)【要約】
【課題】水素を燃焼させるバーナ3と、バーナ3の上方に設けられる食材載置部たる格子状の板体5とを備える焼物調理装置において、水素燃焼ガスに含まれる水分による余分の脂分の流し落とし効果を向上できるようにする。
【解決手段】格子状の板体5に形成した隣接する長孔52,52間の支持棒部53を、食材が接する上端の平坦部531と、平坦部531から下方に離れたY軸方向幅が最大となる最大幅員部532と、平坦部531から最大幅員部532に向けて幅が次第に増加する拡幅部533とを有するものとする。好ましくは、支持棒部53に、最大幅員部532から支持棒部の下端に向けて幅が次第に減少する縮幅部534を設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を燃焼させるバーナと、バーナの上方に設けられる食材載置部とを備える焼物調理装置であって、直交する水平2方向をX軸方向及びY軸方向として、食材載置部材は、X軸方向に長手の長孔がY軸方向に間隔を存して複数形成されて、隣接する各長孔間に食材を支持する支持棒部が設けられた格子状の板体で構成されるものにおいて、
支持棒部は、食材が接する上端の平坦部と、平坦部から下方に離れたY軸方向幅が最大となる最大幅員部と、平坦部から最大幅員部に向けてY軸方向幅が次第に増加する拡幅部とを有することを特徴とする焼物調理装置。
【請求項2】
前記支持棒部は、前記最大幅員部から支持棒部の下端に向けてY軸方向幅が次第に減少する縮幅部を有することを特徴とする請求項1記載の焼物調理装置。
【請求項3】
Y軸方向に隣接する前記支持棒部の前記最大幅員部間のY軸方向幅は、支持棒部の最大幅員部のY軸方向幅よりも広いことを特徴とする請求項1記載の焼物調理装置。
【請求項4】
前記支持棒部の前記拡幅部のY軸方向各側の側面は、前記平坦部と前記最大幅員部とを結ぶ傾斜した仮想平面に対し支持棒部のY軸方向中心側に窪んだ凹面に形成されることを特徴とする請求項1記載の焼物調理装置。
【請求項5】
前記支持棒部の前記平坦部に、X軸方向に間隔を存して複数の溝が形成されていることを特徴とする請求項1記載の焼物調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を燃焼させるバーナと、バーナの上方に設けられる食材載置部とを備える焼物調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の焼物調理装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このものでは、食材載置部を金網で構成している。然し、金網では、高級感が得られない。そこで、直交する水平2方向をX軸方向及びY軸方向として、食材載置部を、X軸方向に長手の長孔がY軸方向に複数形成されて、隣接する各長孔間に食材を支持する支持棒部が設けられた格子状の板体で構成して、高級感を得られるようにすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水素を燃焼させた水素燃焼ガスは、炭化水素を燃焼させた燃焼ガスよりも単位熱量当りの水蒸気量が多い。そのため、水素燃焼ガスを食材に直接接触させると、余分の脂分を水素燃焼ガスに含まれる水分で流し落とすことが可能になる。
【0005】
ここで、食材載置部を上記の如く格子状の板体で構成する場合、一般的には、支持棒部のX軸方向に直交する断面形状を略方形にする。この場合、Y軸方向に隣接する支持棒部間の空間、即ち、長孔内を下方から上方にほぼ等速で水素燃焼ガスが流れる。そのため、水素燃焼ガスが食材付近で留まる時間を長くすることが困難で、余分の脂分の流し落とし効果を十分に得られなくなる。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、余分の脂分の流し落とし効果を向上できるようにした焼物調理装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、水素を燃焼させるバーナと、バーナの上方に設けられる食材載置部とを備える焼物調理装置であって、直交する水平2方向をX軸方向及びY軸方向として、食材載置部材は、X軸方向に長手の長孔がY軸方向に複数形成されて、隣接する各長孔間に食材を支持する支持棒部が設けられた格子状の板体で構成されるものにおいて、支持棒部は、食材が接する上端の平坦部と、平坦部から下方に離れたY軸方向幅が最大となる最大幅員部と、平坦部から最大幅員部に向けてY軸方向幅が次第に増加する拡幅部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、格子状の板体の長孔のY軸方向幅が支持棒部の最大幅員部に合致する上下方向位置で最も狭くなり、この位置から上方に向けて長孔のY軸方向幅が次第に広がる。そのため、長孔内に流れる水素燃焼ガスの流速が最大幅員部に合致する上下方向位置よりも上方で遅くなり、水素燃焼ガスが食材付近に留まる時間を長くすることができる。従って、水素燃焼ガスに含まれる水分による余分の脂分の流し落とし効果を向上させることができる。
【0009】
また、本発明において、支持棒部は、最大幅員部から支持棒部の下端に向けてY軸方向幅が次第に減少する縮幅部を有することが望ましい。これによれば、脂分が最大幅員部のY軸方向各側の側面の下端から縮幅部のY軸方向各側の側面を伝って流下し易くなる。そのため、最大幅員部のY軸方向各側の側面の下端に脂分が溜まって、この脂分により水素燃焼ガスの流れが妨げられることを回避できる。
【0010】
更に、本発明においては、Y軸方向に隣接する支持棒部の最大幅員部間のY軸方向幅を、支持棒部の最大幅員部のY軸方向幅よりも広くすることが望ましい。これによれば、長孔を通して食材に達する水素燃焼ガスの量を多くすることができ、余分の脂分の流し落とし効果を一層向上できる。
【0011】
また、本発明において、支持棒部の拡幅部のY軸方向各側の側面は、平坦部と最大幅員部とを結ぶ傾斜した仮想平面に対し支持棒部のY軸方向中心側に窪んだ凹面に形成されることが望ましい。これによれば、長孔内に流れる水素燃焼ガスの流速が拡幅部に合致する位置で一層遅くなる。そのため、食材付近での水素燃焼ガスの滞留時間を一層長くでき、余分の脂分の流し落とし効果を一層向上できる。
【0012】
更に、本発明においては、支持棒部の平坦部に、X軸方向に間隔を存して複数の溝を形成することが望ましい。これによれば、溝を通して水素燃焼ガスが流通するため、より多くの水素燃焼ガスを食材に接触させることができ、余分の脂分の流し落とし効果を向上させる上で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】
図2のIII-III線で切断した切断側面図。
【
図4】実施形態の焼物調理装置に設けられる格子状の板体の変形例の要部の拡大断面図。
【
図5】実施形態の焼物調理装置に設けられる格子状の板体の他の変形例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至
図3を参照して、本発明の実施形態の焼物調理装置は、直交する水平2方向をX軸方向及びY軸方向として、X軸方向に長手の略直方体形状のケース1を備えている。ケース1の上面には、X軸方向に長手の平面視矩形の開口21が開設された天板2が設けられている。ケース1内には、開口21に臨ませて、X軸方向に長手の管状のバーナ3がY軸方向に間隔を存して2本並設されている。バーナ3には、上向きに開口する炎孔31がX軸方向に間隔を存して多数形成されている。また、バーナ3のX軸方向一方の端部には、ノズル32が嵌着されている。そして、バーナ3にノズル32を介して水素を供給し、炎孔31から噴出する水素を拡散燃焼させるようにしている。更に、バーナ3の上方に、上方に凸の円弧状に湾曲した赤外線放射部材4を設けている。そして、赤外線放射部材4を加熱赤熱させることで放射される赤外線により後述する格子状の板体5と食材とが加熱されるようにしている。また、水素を燃焼させた水素燃焼ガスは、赤外線放射部材4の下から溢れ出て上昇し、板体5及び食材の加熱に寄与する。
【0015】
尚、バーナ3のX軸方向一方の端部上方には、高電圧を印加する点火電極6aと接地電極6bとを有する点火プラグ6が配置され、更に、バーナ3のX軸方向両端部の上方に臨ませて一対のフレームロッド7,7が配置されている。また、開口21からX軸方向一方に離れたケース1内には、ケース1外面の摘み11で操作される図示省略した水素用のガスコックを含むバルブユニットやイグナイタやコントローラが収納されている。更に、開口21の下方に位置するケース1内の部分には、汁受皿12がY軸方向に抜き差し自在に収納されている。
【0016】
天板2上には、開口21を覆うようにして、食材載置部たるダイキャスト製の格子状の板体5が設けられている。この板体5は、平面視矩形の外周枠部51と、この外周枠部51で囲われる部分にY軸方向に間隔を存して複数形成したX軸方向に長手の長孔52と、隣接する長孔52,52間に設けられた支持棒部53と、X軸方向中央部で各支持棒部53の下部に交差してY軸方向にのびる梁部54とを有している。従って、長孔52は、梁部54によりX軸方向に2分されることになる。また、支持棒部53の上半部は、外周枠部51のX軸方向両側の部分の上面上にも延在している。尚、ケース1上面には、開口21のX軸方向両端部に位置する一対の板体用の支持部材13,13が設けられている。そして、両支持部材13,13により板体5が支持されるようにしている。
【0017】
ところで、水素燃焼ガスに含まれる水分による余分の脂分の流し落とし効果を向上させるには、水素燃焼ガスが食材付近に留まる時間を長くすることが必要である。そこで、本実施形態では、格子状の板体5の支持棒部53を、食材が接する上端の平坦部531と、平坦部531から下方に離れたY軸方向幅が最大となる最大幅員部532と、平坦部531から最大幅員部532に向けてY軸方向幅が次第に増加する拡幅部533とを有するものとしている。
【0018】
これによれば、格子状の板体5の長孔52のY軸方向幅が支持棒部53の最大幅員部532に合致する上下方向位置で最も狭くなり、この位置から上方に向けて長孔52のY軸方向幅が次第に広がる。そのため、長孔52内に流れる水素燃焼ガスの流速が最大幅員部532に合致する上下方向位置よりも上方で遅くなり、水素燃焼ガスが食材付近に留まる時間を長くすることができる。従って、水素燃焼ガスに含まれる水分による余分の脂分の流し落とし効果を向上させることができる。
【0019】
また、本実施形態において、支持棒部53は、更に、最大幅員部532から支持棒部53の下端に向けてY軸方向幅が次第に減少する縮幅部534を有している。これによれば、支持棒部53に落下した脂分が最大幅員部532のY軸方向各側の側面の下端から縮幅部534のY軸方向各側の側面を伝って流下し易くなる。そのため、最大幅員部532のY軸方向各側の側面の下端に脂分が溜まって、この脂分により水素燃焼ガスの流れが妨げられることを回避できる。
【0020】
更に、本実施形態では、Y軸方向に隣接する支持棒部53,53の最大幅員部532,532間のY軸方向幅Waを、支持棒部53の最大幅員部532のY軸方向幅Wbよりも広くしている。例えば、幅Waを8mm、幅Wbを6mmにしている。これによれば、長孔52を通して食材に達する水素燃焼ガスの量を多くすることができ、余分の脂分の流し落とし効果を一層向上できる。
【0021】
尚、上記実施形態では、支持棒部53の拡幅部533のY軸方向各側の側面を、平坦部531と最大幅員部532とを結ぶ傾斜した平面に形成しているが、この側面を、
図4に示す如く、平坦部531と最大幅員部532とを結ぶ傾斜した仮想平面(仮想線で示した平面)に対し支持棒部53のY軸方向中心側に窪んだ凹面533aに形成してもよい。これによれば、拡幅部533に合致する長孔52の部分のY軸方向幅が上記実施形態のものよりも広くなって、水素燃焼ガスの流速がこの部分で一層遅くなる。そのため、食材付近での水素燃焼ガスの滞留時間を一層長くでき、余分の脂分の流し落とし効果を一層向上できる。
【0022】
また、
図5に示す如く、支持棒部53の平坦部531に、X軸方向の間隔を存して複数の溝531aを形成してもよい。これによれば、溝531aを通して水素燃焼ガスが流通する。そのため、より多くの水素燃焼ガスを食材に接触させることができ、余分の脂分の流し落とし効果を向上させる上で有利である。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、長孔52の長手方向たるX軸方向を矩形の開口21の長手方向としているが、この開口21の短手方向をX軸方向とすること、即ち、板体5に開口21の短手方向に長手の長孔を形成することも可能である。また、上記実施形態では、赤外線放射部材4が設けられているが、赤外線放射部材4を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
3…バーナ、5…格子状の板体、52…長孔、53…支持棒部、531…平坦部、531a…溝、532…最大幅員部、533…拡幅部、533a…凹面、534…縮幅部、Wa…Y軸方向に隣接する支持棒部の最大幅員部間のY軸方向幅、Wb…支持棒部の最大幅員部のY軸方向幅。