(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120230
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】接着性重合体組成物、該接着性重合体組成物と金属を含む金属積層体、及び該金属積層体からなる電池用包装材
(51)【国際特許分類】
C09J 123/12 20060101AFI20240829BHJP
C09J 123/06 20060101ALI20240829BHJP
C09J 123/08 20060101ALI20240829BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20240829BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240829BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240829BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C09J123/12
C09J123/06
C09J123/08
C09J123/26
C09J7/35
B32B27/32 101
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026886
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 真保
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 翔平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 晶光
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB01C
4F100AB10C
4F100AB33C
4F100AK01B
4F100AK07A
4F100AK63A
4F100AL05A
4F100AL07A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CB00A
4F100EJ17
4F100EJ42
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4F100JL11A
4F100YY00A
4J004AA07
4J004AB03
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA08
4J040DA021
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4J040GA07
4J040JA09
4J040JB01
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA10
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】アルミニウムのような金属に対して常温での接着性に優れるとともに、高温環境下での接着性も改良された接着性重合体組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン(A)、プロピレン単独重合体が不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性剤で変性されてなる変性ポリプロピレン(B)、及び直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)を含む接着性重合体組成物であって、接着性重合体組成物中の変性剤の未反応物の含有量が500ppm以下である接着性重合体組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン(A)、プロピレン単独重合体が不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性剤で変性されてなる変性ポリプロピレン(B)、及び直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)を含む接着性重合体組成物であって、
該接着性重合体組成物中の前記変性剤の未反応物の含有量が500ppm以下である接着性重合体組成物。
【請求項2】
前記重合体組成物における成分(A)の含有割合が50質量%以上90質量%以下であり、成分(B)の含有割合が1質量%以上20質量%以下であり、成分(C)の含有割合が1質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載の接着性重合体組成物。
【請求項3】
更にエチレン-αオレフィン共重合体(D)を成分(A)~(C)の合計100質量部に対して1~20質量部含む請求項1又は2に記載の接着性重合体組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の接着性重合体組成物からなる接着層と重合体層とを有する樹脂積層体。
【請求項5】
請求項3に記載の接着性重合体組成物からなる接着層と重合体層とを有する樹脂積層体。
【請求項6】
電池用タブリードフィルムである、請求項4に記載の樹脂積層体。
【請求項7】
電池用タブリードフィルムである、請求項5に記載の樹脂積層体。
【請求項8】
請求項4に記載の樹脂積層体と金属層とを有する多層成形体。
【請求項9】
請求項5に記載の樹脂積層体と金属層とを有する多層成形体。
【請求項10】
電池用包装材である、請求項8に記載の多層成形体。
【請求項11】
電池用包装材である、請求項9に記載の多層成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着性重合体組成物、該接着性重合体組成物と金属を含む金属積層体、及び該多層成形体からなる金属積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器の高性能化に伴い、より高容量で小型軽量な二次電池の需要が高まっている。特に、急速放充電が可能、エネルギー密度が高い、長寿命等の観点から、リチウムイオン二次電池の急速な普及が見込まれている。
このような二次電池の包装材としては、一般的に二次電池用パウチが使用される。二次電池用パウチは、上部パウチと下部パウチから構成され、これらの間に電解液からなる電池セルを封入すると共に、電極アセンブリを挟み込むことにより、二次電池は構成される。そして、この電池用パウチは、前記電池セルを衝撃や光などから保護するだけでなく、放熱性などを向上させるためにアルミニウム薄膜が介在した形態で構成される事が一般的である。また、電池セルを外部の衝撃から保護するために、このアルミニウム薄膜の外面にポリアミド樹脂などが配され、また、このアルミニウム薄膜の内面にポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが配される。
上部パウチと下部パウチの接着は、ポリオレフィン同士の熱融着によって接着されるが、アルミニウム薄膜とポリオレフィン層との接着は、ポリオレフィンがアルミニウムと直接接着させる事ができないため、接着層が必要となる。すなわち、二次電池用パウチの層構成の例としては、ポリアミド/プライマー/アルミニウム薄膜/接着層/ポリプロピレン(ポリオレフィン)といった構成が挙げられる。
【0003】
また、前記電極アセンブリはタブリードを有するが、これは、上部パウチと下部パウチの間の一部に、端部が二次電池の包装材から露出した形で配される。このタブリードの両面には、前記の上部パウチ及び下部パウチとこのタブリードとを接着すると共に、電解液漏れや水分の混入を防ぐため、接着層/樹脂層/接着層の構造を有する樹脂積層体からなるタブリードフィルムが配される。
【0004】
ところで、電池の信頼性担保のためには、製造工程や外部要因(落下、衝撃、圧力等)によってアルミニウムと接着層が剥離しない事が求められるが、一方で近年のデバイスの小型軽量化に伴い、二次電池やその包装材にも薄膜化が求められており、接着層には薄膜化と高い接着性の両立が求められる。
【0005】
このような接着層に用いられる接着性重合体組成物として、酸変性ポリプロピレンを使用する事が知られている(特許文献1)。
他方、酸変性ポリプロピレンを使用する接着性樹脂組成物としては、特定のプロピレン系共重合体を不飽和カルボン酸やその誘導体で変性した変性ポリプロピレンと、プロピレン系共重合体と、エチレン-αオレフィン共重合体とを特定の含有割合で含有するものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-56824号公報
【特許文献2】特開2017―82033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、二次電池は充放電時など使用環境によっては高温にさらされる事もあり、高温環境下での接着性(高温接着性)の保持が求められている。しかし、特許文献2に記載されている接着性樹脂組成物では、後掲の比較例1に示す様に高温接着性に改良の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、アルミニウムのような金属に対して常温での接着性に優れると共に、高温環境下での接着性も改良された接着性重合体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造を有するポリプロピレンと変性ポリプロピレンを含み、更には直鎖状低密度ポリエチレンを併用する事により、溶融成形性を維持したまま優れた高温接着性と常温接着性を両立する事に成功した。すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
【0010】
[1]メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン(A)、プロピレン単独重合体が不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性剤で変性されてなる変性ポリプロピレン(B)、及び直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)を含む接着性重合体組成物であって、該接着性重合体組成物中の前記変性剤の未反応物の含有量が500ppm以下である接着性重合体組成物。
【0011】
[2]前記重合体組成物における成分(A)の含有割合が50質量%以上90質量%以下であり、成分(B)の含有割合が1質量%以上20質量%以下であり、成分(C)の含有割合が1質量%以上30質量%以下である、[1]に記載の接着性重合体組成物。
[3]更にエチレン-αオレフィン共重合体(D)を成分(A)~(C)の合計100質量部に対して1~20質量部含む[1]又は[2]に記載の接着性重合体組成物。
【0012】
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載の接着性重合体組成物からなる接着層と重合体層とを有する樹脂積層体。
[5]電池用タブリードフィルムである、[4]に記載の樹脂積層体。
[6][4]に記載の樹脂積層体と金属層とを有する多層成形体。
[7]電池用包装材である、[6]に記載の多層成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミニウムのような金属に対して常温での接着性に優れるとともに、高温環境下での接着性も改良された接着性重合体組成物を提供する事ができる。
また、本発明の接着性重合体組成物を接着層として電池用包装材、特に二次電池用包装材に用いても、溶融成形性を維持したまま薄膜化によっても接着強度が十分担保されるため、その機能が損なわれる事を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施する事ができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0015】
この発明にかかる接着性重合体組成物は、所定のポリプロピレン(A)(以下、「成分(A)」と称することがある。)、変性ポリプロピレン(B)(以下、「成分(B」と称することがある。)、直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)(以下、「成分(C)」と称することがある。)を含む重合体組成物である。
【0016】
[ポリプロピレン(A)]
本発明のポリプロピレン(A)は、メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレンである。ここでポリプロピレンとは、全単量体単位に対するプロピレン単位の含有割合が50質量%よりも多いポリオレフィンを意味する。
【0017】
前記ポリプロピレン(A)としては、その種類は特に制限されず、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体等のプロピレン共重合体のいずれも使用する事ができる。中でも、より柔軟で被着体界面との濡れ性が向上しやすいという観点から、プロピレンランダム共重合体が好ましい。
【0018】
前記ポリプロピレン(A)がプロピレンランダム共重合体である場合、プロピレンと共重合する単量体としては、エチレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンを例示する事ができる。また、ポリプロピレンがプロピレンブロック共重合体である場合、多段階で重合して得られるプロピレンブロック共重合体が挙げられ、より具体的には、第一段階でポリプロピレンを重合し、第二段階でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレンブロック共重合体が挙げられる。中でも、耐熱性に優れ高温環境下でも優れた接着性を示す、柔軟性が高く接着界面での濡れ性が良好、工業的に入手しやすい、という観点から、プロピレン・エチレンランダム共重合体がより好ましい。
【0019】
前記ポリプロピレン(A)におけるプロピレン単位の含有割合は、下限としては60質量%以上である事が好ましく、75質量%以上である事がより好ましく、90質量%以上である事が更に好ましい。プロピレン単位の含有割合の下限がかかる範囲であることにより、本発明の接着性重合体組成物は耐熱性に優れるため、高温環境下で接着強度を維持する事ができる。一方、ポリプロピレン(A)におけるプロピレン単位の含有割合の上限については特に制限されないが、柔軟性を付与して接着界面への濡れ性を向上させるという観点から、99質量%以下である事が好ましく、98質量%以下である事がより好ましい。なお、ポリプロピレンのプロピレン単位の含有割合は、赤外分光法により求める事ができる。
【0020】
前記ポリプロピレン(A)のメルトフローレート(以下、「MFR」と称することがある。)(230℃、荷重21.2N)としては特に制限されないが、接着性重合体組成物に十分な流動性を与え、溶融成形性や接着界面への濡れ性を担保する観点から0.1g/10分以上である事が好ましく、0.5g/10分以上である事がより好ましく、1g/10分以上である事が更に好ましく、1.5g/10分以上である事がとりわけ好ましく、2g/10分以上である事が特に好ましい。一方、MFRの上限としては、接着性重合体組成物の溶融粘度を一定以上に保ち溶融成形性を担保する、分子量ひいては凝集力を高め接着力を担保するという観点から、30g/10分以下である事が好ましく、25g/10分以下である事がより好ましく、20g/10分以下である事が更に好ましく、15g/10分以下である事がとりわけ好ましく、10g/10分以下である事が特に好ましい。
【0021】
前記ポリプロピレン(A)の融点は、耐熱性の観点から上限としては115℃以上である事が好ましく、120℃以上である事がより好ましい。一方、溶融成形性の観点から上限としては140℃以下である事が好ましく、135℃以下である事がより好ましい。
【0022】
前記ポリプロピレン(A)は、メタロセン触媒を用いた既知の重合方法で製造する事もできるし、市販品として入手する事もできる。市販品としては、日本ポリプロピレン社製「WELNEX(登録商標)」、「WINTEC(登録商標)」、三井化学社製「TAFMER(登録商標)」、トタルエナジー社製「Lumicene(登録商標)」、エクソンモービル社製「ACHIEVE(登録商標)」、ライオンデルバセル社製「Metocene(登録商標)」シリーズ等から該当するものを適宜選択して用いる事ができる。
【0023】
前記ポリプロピレン(A)は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いる事ができる。
【0024】
[変性ポリプロピレン(B)]
前記変性ポリプロピレン(B)は、ポリプロピレンを不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の変性剤(以下、単に「変性剤」と称することがある。)で変性した樹脂である事が好ましい。該変性は、グラフト変性である事が好ましい。ここで「グラフト変性」とは、ポリプロピレンに、不飽和カルボン酸やその誘導体を結合させることを意味する。なお、変性ポリプロピレンにおける前記変性剤である不飽和カルボン酸やその誘導体の結合位置は、特に制限されず、ポリプロピレンの主鎖末端及び側鎖の少なくとも一方に導入されていればよい。
【0025】
本発明においてグラフト変性する原料として用いるポリプロピレンは、プロピレン単独重合体である事が重要である。本発明の接着性重合体組成物は、不飽和カルボン酸及びその誘導体が被着体官能基と反応、もしくは電気的に引き合う事により強固な接着強度を発現する。グラフト変性する原料としてプロピレン単独重合体を用いる事で、変性ポリプロピレン(B)は融点が高く耐熱性に優れるため、高温環境下であっても接着界面における接着性重合体組成物の分子運動性が低くなり、結果として優れた高温接着性を発現する事ができる。
この原料として用いられるプロピレン単独重合体は、一般に知られているプロピレン単独重合体であり、アタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチック等の任意の構造を有するプロピレン単独重合体を使用することができる。これらのうちで耐熱性の観点からアイソタクチック構造を取る事が特に好ましい。
【0026】
原料ポリプロピレンの密度(JIS K7112)は、特に制限されないが、凝集力を維持し接着性を高める観点から、下限としては0.85g/cm3以上である事が好ましく、0.86g/cm3以上である事がより好ましく、0.87g/cm3以上である事が更に好ましく、0.88g/cm3以上である事がとりわけ好ましく、0.89g/cm3以上である事が特に好ましい。一方、接着界面の濡れ性を向上し接着性を高める観点から、上限としては0.95g/cm3以下である事が好ましく、0.94g/cm3以下である事がより好ましく、0.93g/cm3以下である事が更に好ましく、0.92g/cm3以下である事がとりわけ好ましく、0.91g/cm3以下である事が特に好ましい。
【0027】
原料ポリプロピレンのMFR(230℃、荷重21.2N)としては特に制限されないが、接着性重合体組成物に十分な流動性を与え、溶融成形性や接着界面への濡れ性を担保する観点から0.1g/10分以上である事が好ましく、1g/10分以上である事がより好ましく、2g/10分以上である事が更に好ましく、3g/10分以上である事がとりわけ好ましく、5g/10分以上である事が特に好ましい。一方、MFRの上限としては、接着性重合体組成物の溶融粘度を一定以上に保ち溶融成形性を担保する、分子量ひいては凝集力を高め接着力を担保するという観点から、50g/10分以下である事が好ましく、40g/10分以下である事がより好ましく、30g/10分以下である事が更に好ましく、20g/10分以下である事がとりわけ好ましく、15g/10分以下である事が特に好ましい。
【0028】
原料ポリプロピレンのグラフト変性に用いる変性剤の一種である不飽和カルボン酸としては、特に制限されないが、代表的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸が挙げられる。また不飽和カルボン酸の誘導体としては、特に制限されないが、代表的には酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩が挙げられる。
【0029】
前記変性剤の一種である不飽和カルボン酸の誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N,N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミド、マレイミド、Nブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、又はメタクリル酸カリウムが挙げられる。
【0030】
前記変性剤は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合せ及び比率で用いる事ができる。
これらのうち、特にマレイン酸又はその無水物が、電子密度が低く反応性が高いことから好適である。
【0031】
原料ポリプロピレンのグラフト変性は、従来公知の種々の方法で行う事ができる。変性方法としては、溶融させた原料ポリプロピレンに前記変性剤を添加してグラフト共重合させる溶融変性法、溶媒に溶解させた原料ポリプロピレンに前記変性剤を添加してグラフト共重合させる溶液変性法等が挙げられるが、これらに特に制限されない。これらのうち、接着阻害成分として作用する低分子量成分や未反応の変性剤(未反応の不飽和カルボン酸やその誘導体)を洗浄除去でき、高い接着強度が期待できるという観点から、溶液変性法が好ましい。なお、効率よくグラフト変性するためには、ラジカル開始剤の存在下に変性する事が好ましい。
【0032】
ラジカル開始剤としては、特に制限されないが、有機過酸化物又はアゾ化合物が好ましく、有機過酸化物が特に好ましい。具体的には、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,4-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレエート、2,2-ビス(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、もしくは1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン等のジアルキルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、もしくは2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(トルイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類;ジ-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、もしくはジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、もしくは2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;又はメチルエチルケトンパーオキサイド、もしくはシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類が挙げられるが、これらに特に制限されない。
ラジカル開始剤は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合せ及び比率で用いる事ができる。
【0033】
これらの中でも、半減期が1分となる分解温度が100℃以上であるラジカル開始剤がグラフト変性効率の観点から好ましい。具体的には、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、もしくは2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類、又はt-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、もしくは2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3等のパーオキシエステル類が好ましい。
【0034】
ラジカル開始剤の使用量は、特に制限されないが、原料ポリプロピレン100質量部に対して、0.001~10質量部の割合が好ましい。
【0035】
変性ポリプロピレン(B)における変性成分、具体的には、ポリプロピレンにグラフト化した不飽和カルボン酸やその誘導体の含有割合(以下、「グラフト率」と呼ぶ場合がある。)は、原料ポリプロピレン、変性剤の種類によっても異なり特に制限されないが、金属や極性を有する被着体との接着性を向上する観点から、0.01質量%以上である事が好ましく、0.1質量%以上である事がより好ましく、0.5質量%以上である事が更に好ましく、1質量%以上である事がとりわけ好ましく、2質量%以上である事が特に好ましい。一方、原料ポリプロピレンの架橋を防ぎ、溶融成形性悪化や異物発生を抑制するという観点から上限としては、20質量%以下である事が好ましく、15質量%以下である事がより好ましく、10質量%以下である事が更に好ましく、7質量%以下である事がとりわけ好ましく、5質量%以下である事が特に好ましい。
【0036】
ここで、グラフト率の測定は、変性ポリプロピレン(B)をそのまま厚さ100μmのシートにプレス成形して試験サンプルとし、赤外線吸収スペクトル法を用い、樹脂中の変性剤(カルボン酸やその誘導体)特有の吸収から求める事ができる。具体的には、1900~1600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することにより求める事ができる。
すなわち、前記のカルボニル特性吸収の測定値からグラフト化に寄与した変性剤(不飽和カルボン酸やその誘導体)の量を算出し、原料ポリプロピレンに対する質量比としてグラフト率(質量%)を算出する。
なお、原料ポリプロピレンのグラフト変性においては、原料ポリプロピレンと未反応の変性剤(不飽和カルボン酸やその誘導体)も残留しえるため、本発明においては、変性ポリプロピレン(B)をアセトンで85℃×1時間還流し、再沈処理を行う事により未反応物を除去した状態でのグラフト率を用いることとする。そして、アセトン還流・再沈降処理の前後のグラフト率の差を未反応の変性剤(未反応の不飽和カルボン酸やその誘導体)として算出する。
また、グラフト率は、重合体組成物を測定対象として、フーリエ変換赤外線分光分析(FT-IR)による赤外線吸収スペクトルを測定することでも評価する事ができる。この評価の場合には、グラフト率は、酸変性量と表現することもできる。
【0037】
変性ポリプロピレン(B)の密度(JIS K7112)は、特に制限されないが、凝集力を維持し接着性を高める観点から、下限としては0.85g/cm3以上である事が好ましく、0.86g/cm3以上である事がより好ましく、0.87g/cm3以上である事が更に好ましく、0.88g/cm3以上である事がとりわけ好ましく、0.89g/cm3以上である事が特に好ましい。一方、接着界面の濡れ性を向上し接着性を高める観点から、上限としては0.95g/cm3以下である事が好ましく、0.94g/cm3以下である事がより好ましく、0.93g/cm3以下である事が更に好ましく、0.92g/cm3以下である事がとりわけ好ましく、0.91g/cm3以下である事が特に好ましい。
【0038】
変性ポリプロピレン(B)のMFRとしては、特に制限されないが、接着性重合体組成物に十分な流動性を与え、溶融成形性や接着界面への濡れ性を担保する観点から下限としては0.1g/10分以上である事が好ましく、1g/10分以上である事がより好ましく、2g/10分以上である事が更に好ましく、3g/10分以上である事がとりわけ好ましく、5g/10分以上である事が特に好ましい。一方、MFRの上限としては、接着性重合体組成物の溶融粘度を一定以上に保ち溶融成形性を担保する、分子量ひいては凝集力を高め接着力を担保するという観点から、10000g/10分以下である事が好ましく、5000g/10分以下である事がより好ましく、1000g/10分以下である事が更に好ましく、500g/10分以下である事がとりわけ好ましく、400g/10分以下である事が特に好ましい。ここで、変性ポリプロピレン(B)のMFRは、180℃、荷重21.2N、オリフィス径1mmでの値を意味する。
【0039】
好適な変性ポリプロピレン(B)としては市販品を用いることもでき、例えば、三菱ケミカル社製「モディック(登録商標)」シリーズの中から前記の特性に該当するものを適宜選択して用いる事ができる。
【0040】
これらの変性ポリプロピレン(B)は、1種のみを用いてもよく、モノマー組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0041】
[直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)]
本発明において直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)は、エチレンとαオレフィンとの共重合体であり、αオレフィンの含有割合が10質量%以下であるエチレン-αオレフィン共重合体であり、ポリエチレン鎖にαオレフィンが共重合される事で結晶構造を取りにくくなり、結果として低密度となる。直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)は耐熱性と材料強度に優れるため、これを配合する事で、本発明の接着性重合体組成物の耐熱性を維持したまま材料強度が向上し、ひいては凝集力が向上するため接着力が向上する。
【0042】
この直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)は、上記に該当するものであれば特に制限されず、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重 合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体 、エチレン・1-オクテン共重合体等が挙げられる。更に上記重合体を単独で用いるのみならず、2種類以上の 重合体をブレンドして用いることも可能である。なお、前記の各共重合体としては、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体等の何れであってもよい。
【0043】
直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)のMFR(190℃、荷重21.2N)について特に制限はないが、溶融成形性を担保しつつ、ポリプロピレン(A)と粘度を近づけて分散性を向上し、優れた材料強度や接着性を発現するという観点から、下限としては0.1g/10分以上である事が好ましく、0.2g/10分以上である事がより好ましく、0.3g/10分以上である事が更に好ましく、0.5g/10分以上である事がとりわけ好ましく、1g/10分以上である事が好ましい。一方、上限としては30g/10分以下である事が好ましく、20g/10分以下である事がより好ましく、10g/10分以下である事が更に好ましく、5g/10分以下である事がとりわけ好ましく、3g/10分以下である事が特に好ましい。
【0044】
直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)の密度(JIS K7112)は特に制限されないが、凝集力を維持し接着性を高める観点から、下限としては0.87g/cm3以上である事が好ましく、0.88g/cm3以上である事がより好ましく、0.89g/cm3以上である事が更に好ましく、0.90g/cm3以上である事がとりわけ好ましく、0.91g/cm3以上である事が特に好ましい。一方、接着界面の濡れ性を向上し接着性を高める観点から、上限としては0.97g/cm3以下である事が好ましく、0.96g/cm3以下である事がより好ましく、0.95g/cm3以下である事が更に好ましく、0.94g/cm3以下である事がとりわけ好ましく、0.93g/cm3以下である事が特に好ましい。
【0045】
[エチレン-αオレフィン共重合体(D)]
本発明の接着性重合体組成物は、更にエチレン-αオレフィン共重合体(D)を含んでも良い。ポリプロピレン(A)、変性ポリプロピレン(B)、直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)の他に柔軟なエチレン-αオレフィン共重合体(D)を更に含む事で、接着界面の濡れ性が向上し、接着強度が向上する。
【0046】
前記エチレン-αオレフィン共重合体(D)におけるαオレフィン単位の含有割合は、ポリプロピレン(A)と変性ポリプロピレン(B)、直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)への分散性、及び柔軟性の観点から、下限としては11質量%以上であり、14質量%以上である事がより好ましく、18質量%以上である事が更に好ましく、22質量%以上である事がとりわけ好ましく、26質量%以上である事が特に好ましい。一方、耐熱性と材料強度の観点から、上限としては40質量%以下である事が好ましく、38質量%以上である事がより好ましく、36質量%以上である事が更に好ましく、34質量%以上である事がとりわけ好ましく、32質量%以上である事が特に好ましい。なお、直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)もエチレンとαオレフィンの共重合体であるが、こちらはαオレフィンの含有割合が10質量%以下のものを指すため、エチレン-αオレフィン共重合体(D)とはαオレフィンの含有割合で明確に区別される。
【0047】
エチレン-αオレフィン共重合体(D)を構成するαオレフィンは制限されないが、具体的には、例えば、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、αオレフィンとしては炭素数が3~8であるものが好ましい。また、エチレン-αオレフィン共重合体(D)には、エチレンと上記のαオレフィン以外の他の単量体単位が含まれていてもよい。
【0048】
エチレン-αオレフィン共重合体(D)のMFR(190℃、荷重21.2N)については、特に制限はないが、分子量を高めて凝集力を向上し、ひいては優れた接着力を発現させるという観点から、下限としては0.1g/10分以上である事が好ましく、0.2g/10分以上である事がより好ましく、0.3g/10分以上である事が更に好ましく、0.4g/10分以上である事がとりわけ好ましく、0.5g/10分以上である事が好ましい。一方、上限としては10g/10分以下である事が好ましく、5g/10分以下である事がより好ましく、3g/10分以下である事が更に好ましく、2g/10分以下である事がとりわけ好ましく、1g/10分以下である事が特に好ましい。
【0049】
エチレン-αオレフィン共重合体(D)の密度(JIS K7112)は特に制限されないが、凝集力を維持し接着性を高める観点から、下限としては0.80g/cm3以上である事が好ましく、0.81g/cm3以上である事がより好ましく、0.82g/cm3以上である事が更に好ましく、0.83g/cm3以上である事がとりわけ好ましく、0.84g/cm3以上である事が特に好ましい。一方、接着界面の濡れ性を向上し接着性を高める観点から、上限としては0.93g/cm3以下である事が好ましく、0.92g/cm3以下である事がより好ましく、0.91g/cm3以下である事が更に好ましく、0.90g/cm3以下である事がとりわけ好ましく、0.89g/cm3以下である事が特に好ましい。
【0050】
本発明に好適なエチレン-αオレフィン共重合体(D)としては市販品を用いることもでき 、例えば、三井化学社製「タフマー(登録商標)」、ダウ・ケミカル社製「エンゲージ(登録商標)」、SKケミカル社製「ソルマー(登録商標)」シリーズ等の中から前記の特性に該当するものを適宜選択する事ができる。
【0051】
これらのエチレン-αオレフィン共重合体(D)は、1種のみを用いてもよく、αオレフィン含有割合や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0052】
[接着性重合体組成物]
本発明の接着性重合体組成物は、ポリプロピレン(A)、変性ポリプロピレン(B)及び直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)を併用する事が重要であり、特に成分(A)がメタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレンであり、成分(B)が不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種で変性されたプロピレン単独重合体である事が重要である。これらの組み合わせが本発明の効果である常温の接着強度と高温の接着強度の両立に寄与するメカニズムについて、以下に詳細に説明する。
【0053】
ポリプロピレン(A)はメタロセン触媒を用いて重合される。メタロセン触媒は活性点が均質であるため、メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレンはオリゴマー成分の含有量が少ない。接着において、オリゴマー成分のような低分子量成分は凝集力の低下を招き、接着阻害として働くため、オリゴマー成分が少ない前記ポリプロピレン(A)を用いる事で、本発明の接着性重合体組成物は優れた常温接着強度を発現する事ができる。また、ポリプロピレンは元来融点が高く、耐熱性に優れるため、高温環境下においても接着界面の分子運動性が低くなり、結果として本発明の接着性重合体組成物は優れた高温接着性を発現する。
【0054】
変性ポリプロピレン(B)は不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種で変性されたプロピレン単独重合体である。すなわち、グラフト変性する原料として用いるポリプロピレンは、プロピレン単独重合体である事が重要である。本発明の接着性重合体組成物は、不飽和カルボン酸及びその誘導体が被着体官能基と反応、もしくは電気的に引き合う事により強固な接着強度を発現する。グラフト変性する原料としてプロピレン単独重合体を用いる事で、変性ポリプロピレン(B)は融点が高く耐熱性に優れるため、高温環境下においても接着界面の分子運動性が低くなり、結果として優れた高温接着性を発現する。
【0055】
直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)はポリプロピレン(A)と比較して密度が高いため、凝集力を向上させて接着強度を向上する効果を有する。また、融点も比較的高いため、ポリプロピレンを主成分とする本発明の重合体組成物のポリプロピレン特有の耐熱性を損なう事も無く、高温接着性を維持する事ができる。直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)は、エチレンとの共重合成分としてαオレフィン由来の単量体を有しており、これがポリプロピレン(A)や変性ポリプロピレン(B)との相溶性向上に寄与し、優れた材料強度や接着強度を発現する事ができる。
【0056】
エチレン-αオレフィン共重合体(D)は接着界面の濡れ性を向上し、接着強度を向上する効果を有する。特に、エチレンとαオレフィンの共重合比率が適した範囲にあるため、耐熱性と柔軟性のバランスに優れ、結果として本発明の接着性重合体組成物は高温接着性と常温接着性を両立する事ができる。
【0057】
本発明の接着性重合体組成物中の変性剤(不飽和カルボン酸やその誘導体)の未反応物含有量は500ppm以下である事が重要であり、400ppm以下である事が好ましく、300ppm以下である事がより好ましく、200ppm以下である事が更に好ましく、100ppm以下である事が特に好ましく、70ppm以下である事がとりわけ好ましい。
不飽和カルボン酸又はその誘導体の未反応物、すなわち変性ポリプロピレン(B)の原料ポリプロピレンにグラフトされず組成物中に遊離する変性剤の未反応成分は、分子量が低く分子運動性が高いため変性ポリプロピレン(B)に不飽和カルボン酸やその誘導体がグラフト化されることにより形成された変性体よりも優先的に接着界面に析出し、被着体と反応もしくは相互作用を生じ、本来接着性重合体組成物と被着体との間で生じるはずであった反応点を減少させる。結果、接着阻害として働く事が分かっている。接着性重合体組成物中の不飽和カルボン酸単位又はその誘導体単位の未反応物含有量がかかる範囲であれば、本発明の接着性重合体組成物は十分な接着強度を発現する事ができる。
【0058】
本発明の接着性重合体組成物におけるグラフト化された不飽和カルボン酸及びその誘導体の含有割合(グラフト率)は、変性ポリプロピレン(B)を構成する原料ポリプロピレン、変性に用いる不飽和カルボン酸及びその誘導体の種類によっても異なり特に制限されないが、金属や極性を有する被着体との接着性を向上する観点から0.01質量%以上である事が好ましく、0.03質量%以上である事がより好ましく、0.05質量%以上である事が更に好ましく、0.07質量%以上である事がとりわけ好ましく、0.1質量%以上である事が特に好ましい。一方、原料ポリプロピレンの架橋を防ぎ、溶融成形性悪化や異物発生を抑制するという観点から上限としては0.6質量%以下である事が好ましく、0.5質量%以下である事がより好ましく、0.4質量%以下である事が更に好ましく、0.3質量%以下である事がとりわけ好ましく、0.2質量%以下である事が特に好ましい。グラフト率の測定は、変性ポリプロピレン(B)と同様の方法で行う事ができる。
【0059】
本発明の接着性重合体組成物のMFR(230℃、荷重21.2N)は、特に制限されないが、溶融成形性の観点から、下限としては0.1g/10分以上である事が好ましく、0.3g/10分以上である事がより好ましく、0.5g/10分以上である事が更に好ましく、1g/10分以上である事がとりわけ好ましく、2g/10分以上である事が好ましい。
一方、上限としては30g/10分以下である事が好ましく、20g/10分以下である事がより好ましく、10g/10分以下である事が更に好ましく、5g/10分以下である事がとりわけ好ましく、4g/10分以下である事が特に好ましい。
【0060】
本発明の接着性重合体組成物中のポリプロピレン(A)の含有割合は、耐熱性と接着性、溶融成形性の観点から、下限としては50質量%以上である事が好ましく、55質量%以上である事がより好ましく、60質量%以上である事が更に好ましく、65質量%以上である事がとりわけ好ましく、70質量%以上である事が特に好ましい。また、該含有割合は、接着性の観点から上限としては90質量%以下である事が好ましく、89質量%以下である事がより好ましく、88質量%以下である事が更に好ましく、87質量%以下である事がとりわけ好ましく、86質量%以下である事が特に好ましい。
【0061】
本発明の接着性重合体組成物中の変性ポリプロピレン(B)の含有割合は、接着性の観点から下限としては1質量%以上である事が好ましく、2質量%以上である事がより好ましく、3質量%以上である事が更に好ましく、4質量%以上である事がとりわけ好ましく、5質量%以上である事が特に好ましい。また、該含有割合は、溶融成形性の観点から上限としては20質量%以下である事が好ましく、18質量%以下である事がより好ましく、16質量%以下である事が更に好ましく、14質量%以下である事がとりわけ好ましく、12質量%以下である事が特に好ましい。
【0062】
本発明の接着性重合体組成物中の直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(C)の含有割合は、接着性の観点から下限としては1質量%以上である事が好ましく、2質量%以上である事がより好ましく、3質量%以上である事が更に好ましく、4質量%以上である事がとりわけ好ましく、5質量%以上である事が特に好ましい。また、該含有割合は、耐熱性の観点から上限としては30質量%以下である事が好ましく、28質量%以下である事がより好ましく、26質量%以下である事が更に好ましく、24質量%以下である事がとりわけ好ましく、22質量%以下である事が特に好ましい。
【0063】
エチレン-αオレフィン共重合体(D)を更に含む場合、接着性重合体組成物中のエチレン-αオレフィン共重合体(D)の含有割合は、接着性の観点から下限としては接着性重合体組成物100質量%に対して1質量%以上である事が好ましく、2質量%以上である事がより好ましく、3質量%以上である事が更に好ましく、4質量%以上である事がとりわけ好ましく、5質量%以上である事が特に好ましい。また、該含有割合は、耐熱性の観点から上限としては接着性重合体組成物100質量%に対して20質量%以下である事が好ましく、18質量%以下である事がより好ましく、16質量%以下である事が更に好ましく、14質量%以下である事がとりわけ好ましく、12質量%以下である事が特に好ましい。
【0064】
本発明の接着性重合体組成物は、前記した各樹脂以外のその他の樹脂を含有することができる。このその他の樹脂を含有する場合、その含有割合は制限されないが、通常、接着性重合体組成物100質量%中の含有割合で0.1~20質量%、好ましくは0.5~10質量%である。その他の樹脂の含有割合が上記上限値以下であれば、得られる接着性重合体組成物の極性基を有する樹脂に対する接着性を十分に得る事ができる。
【0065】
前記のその他の樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂(エチレン単独重合体(A)やエチレン系共重合体(B)、変性ポリプロピレン(C)に含まれるものを除く);ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;等の熱可塑性樹脂や各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0066】
本発明の接着性重合体組成物は、さらに添加剤を含有することができる。この添加剤を含有する場合、その含有割合は制限されないが、通常、接着性重合体組成物100質量%中に0.01~10質量%、好ましくは0.2~5質量%である。添加剤の含有割合が上記上限値以下であれば、得られる接着性重合体組成物の極性基を有する樹脂に対する接着性を十分に得る事ができる。なおこれらの添加剤は、接着性重合体組成物をマスターバッチとして用いる場合には、マスターバッチ100質量%中の含有割合として、前記した含有割合の2~50倍、好ましくは3~30倍の濃度で含有させることもできる。
【0067】
添加剤としては、各種の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、造核剤、可塑剤、衝撃改良剤、相溶化剤、消泡剤、増粘剤、架橋剤、界面活性剤、滑剤、離型剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、充填材等が挙げられる。
【0068】
いずれの場合においても、接着性重合体組成物が成分(A)~(C)(成分(D)を含む場合は、成分(A)~(D))を含むことによる接着性の向上効果を有効に得る観点から、接着性重合体組成物を100質量%とした場合の成分(A)~(C)(成分(D)を含む場合は、成分(A)~(D))の合計の含有割合は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0069】
[接着性樹脂組成物の製造方法]
本発明の接着性重合体組成物は、上述の各成分を所定の割合で混合する事により得られる。混合の方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限は無い。すなわち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合する事により、各成分が均一に分散した組成物を得る。より均一な混合・分散のためには、所定量の上記原料成分を溶融混合する事が好ましく、例えば、本発明の接着性重合体組成物の各原料成分等を任意の順序で混合してから加熱してもよいし、全原料成分等を順次溶融させながら混合してもよいし、各原料成分等の混合物をペレット化した後、目的成形品を製造する際の成形時に溶融混合してもよい。
【0070】
本発明の接着性重合体組成物は、所定量の上記原料成分を種々公知の手法、例えばタンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、混合後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等で溶融混練し、造粒あるいは粉砕する手法により調製する事ができる。溶融混練時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150~300℃の範囲で行う。
【0071】
本発明の接着性重合体組成物は、少なくとも前記の成分(A)~(C)を含有していれば、これを独立した原料として用いなくともよい。すなわち、既にこれら成分のうち2つ以上の成分を含有する組成物を原料とする場合や、既に重合体組成物からなる成形品となったものを破砕して原料とする事もできる。また、予め重合体組成物となっている原料が本発明を構成する全ての成分を有していない場合には、足りない成分のみを原料として補えばよい。
【0072】
[接着性重合体組成物の接着性]
本発明の接着性重合体組成物は、常温及び高温において、十分に高い接着性を発揮することができる。
本発明の接着性重合体組成物からなる単層フィルム(100μm)とアルミニウム箔(25μm)を10cm×5cmずつ切り出し、重ね合わせて、温度160℃、圧力0.2MPA、シールバーの幅5mmでヒートシールを行う。
得られた積層体を1cm幅の短冊状に切削し、所定の測定温度で180°剥離試験機を用い、剥離速度50mm/分で単層フィルムとアルミニウム箔との剥離強度(接着強度)を測定することができる。常温接着強度は、測定温度を23℃とし、高温接着強度は、測定温度160℃とすることで、測定することができる。
この測定方法による常温接着強度は、一般的な接着性を有する観点から、3.0N/10mm以上がよく、4.0N/10mm以上が好ましい。また、高温接着強度は、高温(160℃)時における接着性の確保の観点から、2.5N/10mm以上がよく、2.8N/10mmが好ましい。
【0073】
[接着性重合体組成物の成形品]
本発明の接着性重合体組成物から得られる成形品には限定は無く、種々の押出成形品や射出成形品とする事ができる。また、本発明の接着性重合体組成物を単独で使用し、単層シート等の成形品とする事もできるが、本発明の接着性重合体組成物は、後述する種々の金属や重合体との接着性に優れているので、これらを基材とした積層体の接着層として好適に使用される。
【0074】
[樹脂積層体]
本発明の樹脂積層体は、上述した本発明の接着性重合体組成物からなる接着層と、重合体からなる重合体層とを有し、この重合体層の片面又は両面に前記接着層を接するように配する。中でも、接着層、重合体層の順に積層された樹脂積層体は、二次電池においてはタブリードフィルムとして、また、接着層、重合体層、接着層の順に積層された樹脂積層体は、二次電池においてはパウチの構成樹脂層として、好適に用いられる。樹脂積層体の形態としては、多層シート、多層フィルム、多層チューブ等が挙げられる。ここで、「シート」と「フィルム」は何れも面状の成形体を意味し、同義である。
【0075】
前記重合体層を構成する重合体は制限されないが、本発明の接着性重合体組成物との共押出性に優れるという観点からオレフィン系重合体を選択する事が好ましい。オレフィン系重合体としては、例えば成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)の中で記載したものが好適に使用できる。
【0076】
前記樹脂積層体には、本発明の接着性重合体組成物からなる接着層、重合体層以外に、任意の層を設ける事ができる。
【0077】
前記樹脂積層体を製造する方法としては、公知の種々の方法を採用する事ができるが、特に共押出成形が好適である。
【0078】
前記樹脂積層体を延伸して得る場合、上記の通り延伸した後には、熱固定を行ってもよいし、熱固定をせずに製品としてもよい。熱固定を行わない場合は、その後に積層体を加熱することによって応力が開放され、収縮する性質を持つためシュリンクフィルムとして用いることができる。
このようにして製造された積層体には、更に、金属蒸着加工、コロナ放電処理加工、印刷加工等の各種フィルム加工処理を施す事ができる。
【0079】
前記樹脂積層体において、本発明の接着性重合体組成物からなる層の厚みに特に制限はなく、層構成、用途、最終製品の形状、要求される物性等により任意に設定することができるが、通常0.1~500μmであり、1~300μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましい。
【0080】
前記樹脂積層体は、これを延伸して延伸フィルムとしてもよい。延伸フィルムを製造する方法としては、公知の種々の方法を採用する事ができる。延伸方向は、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよく、また逐次延伸で製造しても、同時延伸で製造してもよい。また、延伸方法の一つとして、積層体を製造する段階でインフレーション成形する事でインフレーションフィルムとしてもよい。
【0081】
[多層成形体]
前記樹脂積層体は、金属層と貼り合わせ、必要に応じて、折り曲げ等の成形を行うことにより、多層成形体が得られる。
多層成形体の製造方法としては、前記金属層に前記樹脂積層体の接着層面を接着させる方法が挙げられる。また、前記樹脂積層体の少なくとも一方の外表面に前記の接着性重合体組成物からなる接着層が形成されていない場合は、前記樹脂積層体の一方の面に前記接着層を形成し、この接着層と金属層とを貼り合わせる方法が挙げられる。さらに、金属層の一方の面に、積層する樹脂積層体の構成層を順番に積層していく方法を挙げることができる。
樹脂積層体の少なくとも一方に形成した接着層と金属層とを貼り合わせる具体的な方法としては、予めTダイにより製膜・固化した前記樹脂積層体を金属層熱圧着する熱ラミネート方法が挙げられる。通常、金属層の片側表面にラミネート加工するが、必要に応じて、両側にラミネートする事もできる。また、金属層の一方の面に、積層する樹脂積層体の構成層を順番に積層していく具体的な方法としては、金属層の表面上に、Tダイより押出した溶融重合体膜を、金属層上に連続的に被覆・圧着する押出ラミネート方法が挙げられる。
【0082】
樹脂積層体からなるフィルムを用いてラミネート成形を行う場合、金属層に1種のフィルムをラミネートするだけでなく、2種以上のフィルムをラミネートしてもよい。その場合、同時貼り合せによって成形してもよいが、予め、一方のフィルムを用いてラミネート成形しておき、これに他方のフィルムを貼り合せてもよい。また、ラミネートする重合体は、1種のみを用いる場合に限らず、2種以上を共押出してもよい。
【0083】
前記の二次電池におけるタブリードフィルムは、前記重合体層の両面に前記接着層を積層した樹脂積層体であるが、これを前記の方法でタブリードを構成する金属層の両面に貼り合わせることにより、タブリードフィルム/タブリード/タブリードフィルムというタブリード構成積層体からなる電極アセンブリを形成することができる。
【0084】
また、前記の二次電池の電池用包装材に用いられる上部パウチや下部パウチ等のパウチは、前記の重合体層/接着剤層からなるパウチ構成樹脂層を前記の方法で金属層の一方の面に貼り合わせる。次いで、金属層の他方の面に公知の方法で、プライマー層を介してポリアミド層を積層し、所定形状に成形することにより、上部パウチや下部パウチを形成することができる。
このポリアミド層としては、一般的なポリアミド樹脂を用いることができる。このポリアミド樹脂としては、6-ナイロン、6,6-ナイロン等が挙げられる。
【0085】
前記金属層としては、アルミニウム箔のほか、銅箔、錫箔、ニッケル箔などを使用することができるが、中でもアルミニウム箔は、軽量で展延性に富み、成形およびラミネートなどの加工性に優れると共に、水蒸気その他のバリヤー性にも優れ、更に、汎用性金属箔として比較的安価で経済性にも優れている。また、アルミニウム箔層の少なくとも内側の面をクロメート処理することにより、前述の電解質に由来するフッ化水素に対する耐性を向上させることができる。代表的なクロメート処理としては、フェノール樹脂、リン酸、フッ化クロム(III)化合物の水溶液をロールコート法などで塗布した後、アルミニウム箔の温度が170~200℃になるように加熱して皮膜形成するものである。このようなクロメート処理は、アルミニウム箔層の内側の面のみに行ってもよいが、両側の面に行うことが更に好ましい。
【0086】
[用途]
本発明の接着性重合体組成物は、金属や樹脂等に対して優れた常温接着性と高温接着性を示すため、これを用いた本発明の多層成形体は、自動車、航空機などの輸送機器、家電機器、エレクトロニクス分野、ロボット分野のボディ素材、フレーム素材、筒体素材、包装体素材等において、好適に用いる事ができ、特に電池用包装材として好適に用いる事ができる。
【0087】
本発明の接着性重合体組成物は、アルミニウムのような金属に対しても優れた接着性を発現する事ができる。特に、リチウムイオン二次電池の電池用包装材として使用した場合に、その厚みが薄い場合でも極めて優れた接着強度を維持する。更には、耐熱性にも優れるため、電池の高出力化に伴い使用環境温度が高い場合においても、優れた接着強度を発現する。このため、このような本発明の重合体組成物を接着層とする多層成形体よりなる本発明の電池用包装材、特に二次電池用包装材は、使用環境に寄らず優れた信頼性を有している。
したがって、本発明の多層成形体からなる電池用包装材は、特に二次電池用の包装材として好適である。
【実施例0088】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により制限されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0089】
[使用原料]
以下の実施例及び比較例で用いた原料は、次の通りである。
<ポリプロピレン(A)>
(A-1):メタロセン触媒を用いて重合されたランダムポリプロピレン:
日本ポリプロピレン社製「ウィンテック(登録商標)WFX6MC」、
MFR:2.0g/10分(230℃、21.2N)、
密度:0.90g/cm3
【0090】
(A-2):メタロセン触媒を用いて重合されたランダムポリプロピレン:
日本ポリプロピレン社製「ウィンテック(登録商標)WFX4M」、
MFR:7.0g/10分(230℃、21.2N)、
密度:0.90g/cm3
【0091】
(A-3、比較例用):チーグラーナッタ触媒を用いて重合されたランダムポリプロピレン:
日本ポリプロピレン社製「ノバテック(登録商標)EG6D」、
MFR:1.9g/10分(230℃、21.2N)、
密度:0.90g/cm3
【0092】
(A-4、比較例用):チーグラーナッタ触媒を用いて重合されたランダムポリプロピレン:
日本ポリプロピレン社製「ノバテック(登録商標)FW4B」、
MFR:6.5g/10分(230℃、21.2N)、
密度:0.90g/cm3
【0093】
<変性ポリプロピレン(B)>
(B-1):溶液変性法で製造した無水マレイン酸変性プロピレン単独重合体:
無水マレイン酸グラフト率:2.3質量%、
未反応無水マレイン率:0.05%、
MFR:300g/10分(180℃、21.2N、オリフィス径:1mm)
【0094】
(B-2、比較例用):溶融変性法で製造した無水マレイン酸変性ポリプロピレンプロピレン-エチレンランダム共重合体:
無水マレイン酸グラフト率:0.6質量%、
未反応無水マレイン酸含有割合:0.6%、
MFR:0.7g/10分(180℃、21.2N、オリフィス径:1mm)
【0095】
<成分(C)>
(C-1):直鎖状低密度ポリエチレン:
日本ポリエチレン社製「ノバテック(登録商標)F30HG」、
MFR:2.0g/10分(190℃、21.2N)、
密度:0.92g/cm3
【0096】
<成分(D)>
(D-1):エチレン・プロピレン共重合体:
三井化学社製「タフマー(登録商標)P0775」、
MFR:0.6g/10分(190℃、21.2N)、
密度:0.87g/cm3
【0097】
[実施例1~2及び比較例1~3]
<接着性重合体組成物及び単層フィルムの製造>
各原料成分を表1に示す配合割合で、事前にドライブレンドにより混合し、二軸押出機TEX25(JSW社製)を用い、温度200℃、スクリュー回転数300rpm、押出量20kg/hで溶融混錬し、ストランド上に押出し、冷却後カッティングしてペレット状の接着性重合体組成物を得た。その後、該接着性重合体組成物を原料として、GSIクレオス社製の単層Tダイフィルム成形機にペレット状の重合体組成物を投入し、押出成形温度200~220℃で厚み100μmになるように成形して、単層フィルムを得た。
【0098】
<常温接着性の評価>
接着性重合体組成物とアルミニウムの常温接着性は、常温接着強度を測定し以下の要領で評価した。
本発明の接着性重合体組成物からなる単層フィルム(100μm)を10cm×5cmの大きさに切り出し、同じく10cm×5cmの大きさに切り出したアルミニウム箔(25μm)と重ね合わせてヒートシールを行い、単層フィルムとアルミニウム箔からなる積層体を得た。この時、ヒートシール温度は160℃、ヒートシール圧力は0.2MPA、シールバーの幅は5mmであった。その後、1cm幅の短冊状に切削し、測定温度23℃の環境下で180°剥離試験により剥離速度50mm/分で接着性重合体組成物からなる単層フィルムとアルミニウムの積層間の接着強度を測定した。接着強度の値が大きいほど接着性に優れると評価できる。
【0099】
<高温接着性の評価>
測定温度を160℃に変更した以外は常温接着強度と同様に測定し評価した。
【0100】
<評価結果>
評価結果を下記表1に示す。
【0101】
【0102】
表1より、本発明の接着性重合体組成物を用いた実施例1及び2はアルミニウムに対する常温接着性、高温接着性共に優れる結果であった。これに対して、比較例1~3は、常温接着性、高温接着性に劣る結果となった。