(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120241
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】重荷重タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20240829BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B60C11/03 100B
B60C11/13 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026905
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 剛史
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC12
3D131BC33
3D131BC34
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB18V
3D131EB18W
3D131EB18X
3D131EB28V
3D131EB28W
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB44X
3D131EB46X
3D131EB47V
3D131EB82V
3D131EB82W
3D131EB83W
3D131EB87V
3D131EB87W
3D131EB87X
3D131EB89V
3D131EB89W
3D131EB91V
3D131EC13V
3D131EC13W
(57)【要約】
【課題】ローテーション頻度を低減した重荷重タイヤを提供する。
【解決手段】実施形態の一例である重荷重タイヤは、トレッドを備え、タイヤ未使用時において、トレッドは、トレッドのタイヤ軸方向中央部に形成されるセンター陸部と、タイヤ周方向に延びる2本の第1主溝と、第1主溝よりもタイヤ軸方向外側に形成されるショルダー陸部と、ショルダー陸部内に第1主溝からタイヤ軸方向外側に延びるショルダー溝とを有し、ショルダー溝の深さは、第1主溝の深さの10%~40%である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備えた重荷重タイヤであって、
タイヤ未使用時において、前記トレッドは、前記トレッドのタイヤ軸方向中央部に形成されるセンター陸部と、タイヤ周方向に延びる2本の第1主溝と、前記第1主溝よりもタイヤ軸方向外側に形成されるショルダー陸部と、前記ショルダー陸部内に前記第1主溝からタイヤ軸方向外側に延びるショルダー溝とを有し、前記ショルダー溝の深さは、前記第1主溝の深さの10%~40%である、重荷重タイヤ。
【請求項2】
タイヤ未使用時において、前記ショルダー陸部のトラクション要素は、前記センター陸部のトラクション要素の5%~45%である、請求項1に記載の重荷重タイヤ。
【請求項3】
前記ショルダー溝は、前記ショルダー陸部内で閉塞している、請求項1に記載の重荷重タイヤ。
【請求項4】
前記トレッドは、さらに、前記第1主溝よりもタイヤ軸方向内側に、タイヤ周方向に延びる2本の第2主溝を有する、請求項1に記載の重荷重タイヤ。
【請求項5】
タイヤ平面視において、前記第1主溝は、タイヤ周方向に対して10°以下の角度で略直線状に形成されており、前記第2主溝は、タイヤ周方向に対して10°~30°の角度で交互に向きを変えてジグザグに形成されている、請求項4に記載の重荷重タイヤ。
【請求項6】
前記第2主溝の側壁の傾斜は、前記第1主溝の側壁の傾斜よりも大きい、請求項4に記載の重荷重タイヤ。
【請求項7】
前記センター陸部は、前記第2主溝同士の間を連通する複数の第1副溝と、前記第1副溝同士の間を連通する第2副溝により区画されてブロック状に形成されている、請求項4に記載の重荷重タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重タイヤに関し、特に、タイヤ周方向に延びる第1主溝よりもタイヤ軸方向外側に形成されるショルダー陸部内に第1主溝側からタイヤ軸方向外側に延びるショルダー溝を有する重荷重タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重タイヤ等の空気入りタイヤのトレッドには、溝やサイプが刻まれている。空気入りタイヤの表面は使用によって摩耗するため、トレッドに形成された溝やサイプは、浅くなり、消滅するものもある。例えば、特許文献1は、ショルダー部の駆動性能及び制動性能を維持しつつ、ショルダー部の偏摩耗を防止するために、ショルダー部にタイヤ未使用時においてトレッド表面に出現していない細溝を設ける技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、重荷重タイヤは、バスやトラック等の重荷重車両を支持するため、偏摩耗が発生しやすい。特に、非駆動輪に装着された重荷重タイヤは、旋回の影響を受けやすく、駆動輪に装着された重荷重タイヤよりも偏摩耗が発生しやすいため、タイヤ寿命を延ばすために、重荷重タイヤは頻繁にローテーションを行う必要がある。重荷重タイヤのローテーションは、負荷の大きい作業であり、ローテーション頻度の低減が望まれている。先行技術文献は、ローテーション頻度の低減について考慮しておらず、改良の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、ローテーション頻度を低減した重荷重タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る重荷重タイヤは、トレッドを備え、タイヤ未使用時において、トレッドは、トレッドのタイヤ軸方向中央部に形成されるセンター陸部と、タイヤ周方向に延びる2本の第1主溝と、第1主溝よりもタイヤ軸方向外側に形成されるショルダー陸部と、ショルダー陸部内に第1主溝からタイヤ軸方向外側に延びるショルダー溝とを有し、ショルダー溝の深さは、第1主溝の深さの10%~40%であることを特徴とする。
【0007】
ショルダー陸部に形成されたショルダー溝の深さを、タイヤ未使用時において、第1主溝の深さの40%以下とし、使用によってショルダー溝を消滅させることで、偏摩耗発生要因を除去して偏摩耗を抑制し、重荷重タイヤのローテーション頻度を低減できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る重荷重タイヤによれば、偏摩耗を抑制し、ローテーション頻度を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の一例である重荷重タイヤの断面図である。
【
図2】実施形態の一例に係るトレッドの正面図である。
【
図3A】実施形態の一例に係る第1主溝の断面を示す図である。
【
図3B】実施形態の一例に係る第2主溝の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る重荷重タイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態及び変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは本発明に含まれている。
【0011】
図1は、実施形態の一例である重荷重タイヤ1の断面図である。
図1に示すように、重荷重タイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10と、トレッド10からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール11と、ホイールのリムと接触される一対のビード12とを備える。トレッド10、サイドウォール11、及びビード12は、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。サイドウォール11、及びビード12は、重荷重タイヤ1の左右の側面を形成している。
【0012】
重荷重タイヤ1は、所定圧の空気が充填される空気入りタイヤである。重荷重タイヤ1は、一般的に、カーカス13、ベルト14、及びインナーライナーゴム15を備える。カーカス13は、ゴムで被覆されたコード層であり、荷重、衝撃、空気圧等に耐える重荷重タイヤ1の骨格を形成する。カーカス13は、トレッド10のタイヤ径方向内側で一対のビード12の間に掛け渡され、ビード12でタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されている。インナーライナーゴム15は、カーカス13のタイヤ径方向内側に配置されたゴム層であって、重荷重タイヤ1の空気圧を保持する。
【0013】
ベルト14は、トレッド10を構成するトレッドゴムとカーカス13の間に配置される補強帯であり、カーカス13を強く締めつけて重荷重タイヤ1の剛性を高める。ベルト14は、例えば、ゴムで被覆されたスチールコードにより構成されている。
【0014】
ベルト14は、例えば、カーカス13側から順に、第1ベルトプライ14a、第2ベルトプライ14b、第3ベルトプライ14c、及び第4ベルトプライ14dを含む。本実施形態では、タイヤ軸方向断面において、第2ベルトプライ14bの端は、他のベルトプライ14a,14c,14dの端よりも接地端E側に位置する。また、タイヤ軸方向断面において、第4ベルトプライ14dの端は、他のベルトプライ14a,14b,14cの端よりもタイヤ赤道CL側に位置する。また、タイヤ軸方向断面において、第1ベルトプライ14aと第3ベルトプライ14cの端は、略同じ位置にある。なお、ベルト14の構成は、この例に限定されず、含まれるベルトプライの枚数や大きさは変更可能である。
【0015】
重荷重タイヤ1は、ビードコア16と、ビードフィラー17とを備える。ビードコア16及びビードフィラー17は、左右両側のビード12にそれぞれ設けられている。ビードコア16は、束ねられた鋼線をゴムで被覆したリング状の部材である。ビードフィラー17は、硬質のゴムで構成され、ビード12の剛性を高める機能を有する。ビードフィラー17は、ビードコア16よりもタイヤ径方向外側に配置されている。
【0016】
トレッド10には、接地端Eが存在する。本実施形態では、接地端Eは、トレッド10のタイヤ軸方向両端に位置する。本明細書において、接地端Eとは、未使用の重荷重タイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で、正規内圧における正規荷重(最大負荷能力)の85%の負荷を加えたときに、平坦な路面に接地する領域のタイヤ軸方向両端を意味する。
【0017】
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0018】
本実施形態において、トレッド10は、タイヤ赤道CLを挟むように形成され、タイヤ周方向に延びる2本の第1主溝20と、第1主溝20よりもタイヤ軸方向内側に、タイヤ周方向に延びる2本の第2主溝22とを有する。タイヤ赤道CLとは、タイヤ軸方向中央を通るタイヤ周方向に沿った線を意味する。主溝20,22は、トレッド10と路面の間に存在する雨水等を除去する排水路として機能する。2本の第1主溝20は、例えば、互いに略同じ深さ、略同じ幅を有する。また、2本の第2主溝22は、例えば、互いに略同じ深さ、略同じ幅を有する。第1主溝20と第2主溝22は、例えば、互いに略同じ深さを有してもよい。第1主溝20の幅は、例えば、第2主溝22の幅よりも大きい。ここで、主溝の幅とは、トレッド10の表面において、対向する溝壁間のタイヤ軸方向に沿った長さを意味する。
【0019】
トレッド10は、第1主溝20及び第2主溝22により区画された複数の陸部を有する。陸部は、基準面からタイヤ径方向外側に向かって突出した突出部である。基準面とは、最も深い周方向溝の底面に沿った仮想面であって、陸部が存在しない場合のトレッド10の外周面を意味する。本実施形態においては、トレッド10は、第2主溝22同士の間に形成されるセンター陸部30と、第1主溝20と第2主溝の間に形成されるメディエイト陸部31と、第1主溝20よりもタイヤ軸方向外側に形成されるショルダー陸部32とを有する。トレッド10の構成は、この例に限定されず、例えば、トレッド10が、第1主溝20のみを有し、第2主溝22を有さなくてもよい。この場合、トレッド10は、センター陸部30とショルダー陸部32のみを有し、メディエイト陸部31を有さない。
【0020】
次に、
図2を参照しつつ、トレッド10について詳説する。
図2は、実施形態の一例に係るトレッド10の正面図である。トレッド10は、平面視において、タイヤ赤道CLに対して右側と左側に分けた場合に、右側と左側が、互いに点対称の形状を有している。
【0021】
センター陸部30は、トレッド10のタイヤ軸方向中央部に形成されている。本実施形態においては、トレッド10のタイヤ軸方向両側にはショルダー陸部32が形成され、センター陸部30と各ショルダー陸部32の間にはメディエイト陸部31が形成されている。即ち、第1主溝20によりセンター陸部30とメディエイト陸部31が区画され、第2主溝21によりメディエイト陸部31とショルダー陸部32が区画されている。第1主溝20及び第2主溝22の位置により、センター陸部30、メディエイト陸部31、及びショルダー陸部32の各々のタイヤ軸方向の長さが決定される。
【0022】
センター陸部30は、第2主溝22同士の間を連通する複数の第1副溝40と、第1副溝40同士の間を連通する第2副溝42により区画されてブロック状に形成されている。第1副溝40は、2つの屈曲点を有している。第2副溝42は、タイヤ周方向に対して10°~30°傾いた直線形状である。センター陸部30は、第1センターブロック30aと、第2センターブロック30bとを含む。第1センターブロック30aと第2センターブロック30bは、互いに同じ形状で、互いに点対称に配置されている。
【0023】
第1センターブロック30aは、第2副溝42からタイヤ軸方向外側に延びる第1サイプ50を有する。ここで、サイプとは、主溝及び副溝よりも幅が狭い溝である。サイプは毛細管現象により、WET路面での制駆動性、操縦安定性の向上に寄与する。一般的には、溝幅が1.5mm以下の溝がサイプと定義される。
【0024】
第1サイプ50は、第1センターブロック30aの第2副溝42に沿った辺の略中央からタイヤ軸方向外側に延びており、1つの屈曲点を有し、第1センターブロック30a内で一端が閉塞している。第1サイプ50は、第1センターブロック30aの第1副溝40に沿った辺と略平行である。第2センターブロック30bは、上記のように、第1センターブロック30aと同じ形状で、点対称に配置されているので、第1センターブロック30aと同様の形態を有する。
【0025】
第1副溝40は、底面の溝幅方向略中央に第2サイプ52を有し、第2サイプ52は、第1副溝40と略平行である。タイヤ軸方向において、第2サイプ52の両端は、各々、第1センターブロック30aに形成された第1サイプ50の終端と第2センターブロック30bに形成された第1サイプ50の終端に略一致する。
【0026】
メディエイト陸部31は、タイヤ軸方向内側のセンター陸部30とタイヤ軸方向外側のショルダー陸部32の間に形成されている。メディエイト陸部31は、第1主溝20と、第2主溝22と、第1主溝20と第2主溝22の間を連通する複数の第3副溝44により区画されてブロック状に形成されている。即ち、メディエイト陸部31は、複数のメディエイトブロック31aを含む。第3副溝44は、1つの屈曲点を有する。
【0027】
メディエイトブロック31aは、タイヤ軸方向に波状に延びる第3サイプ54を有する。第3サイプ54は、メディエイトブロック31aの略中央に形成されている。第3サイプ54の両端は、メディエイトブロック31a内で閉塞している。
【0028】
センターブロック30a,30bのタイヤ周方向の長さと、メディエイトブロック31aのタイヤ周方向の長さは、略同じである。また、第1副溝40の幅と第3副溝44の幅は、略同じである。ここで、第1副溝40と第3副溝44の幅とは、トレッド10の表面において、対向する溝壁間のタイヤ周方向に沿った長さを意味する。メディエイトブロック31aは、第2主溝22を挟んで、2つのセンターブロック30aに隣接し、2つのセンターブロック30aの間の第1副溝40の略延長線上にメディエイトブロック31aに形成された第3サイプ54が位置する。また、第3副溝44の略延長線上にセンターブロック30aに形成された第1サイプ50が位置する。
【0029】
第3副溝44は、底面の溝幅方向略中央に第4サイプ56を有し、第4サイプ56は、第3副溝44と略平行である。第4サイプ56は、第3副溝44の略全長に亘って形成されている。
【0030】
ショルダー陸部32は、第1主溝20を挟んで、メディエイト陸部31のタイヤ軸方向外側に形成されている。ショルダー陸部32は、タイヤ周方向に連続しており、リブ状に形成されている。
【0031】
トレッド10は、タイヤ未使用時において、ショルダー陸部32内に第1主溝20からタイヤ軸方向外側に延びるショルダー溝60を有する。ショルダー溝60は、ショルダー陸部32内で閉塞している。具体的には、ショルダー溝60は、第1主溝20に接する始点60aからタイヤ軸方向に略平行に外側に延び、屈曲点60bでタイヤ軸方向に対して10°~30°屈曲した後に直線的に延び、屈曲点60cで再度屈曲した後に、タイヤ軸方向に略平行に終点60dまで延びている。なお、ショルダー溝60は、ショルダー陸部32内で閉塞せずに、接地端Eまで延びて開口していてもよい。
【0032】
ショルダー溝60の深さは、タイヤ未使用時において、第1主溝20の深さの10%~40%である。これにより、使用によってショルダー溝60を消滅させることができるので、偏摩耗発生要因を除去して偏摩耗を抑制し、重荷重タイヤのローテーション頻度を低減できる。本発明者らの検討の結果、ショルダー陸部32は、センター陸部30及びメディエイト陸部31に比べて、旋回の影響を受けやすく、ショルダー陸部32に形成された溝を起点にして偏摩耗が発生しやすいことが判明した。本発明者らは、さらに鋭意検討を重ね、タイヤ未使用時におけるショルダー溝60の深さを第1主溝20の深さの10%~40%とすることで、ショルダー溝60が消滅した後であっても、各陸部の剛性が大きくなっており、トラクション性能は保たれる。
【0033】
ショルダー陸部32には複数の第5サイプ58が形成されており、第5サイプ58は、タイヤ周方向に等間隔に配置されている。第5サイプ58は、接地端Eからタイヤ軸方向内側に向かって延びている。第5サイプ58は、例えば、使用によりショルダー溝60が消滅した後にも残存する。
【0034】
本実施形態において、センター陸部30に形成された第1副溝40、メディエイト陸部31に形成された第3副溝44、及びショルダー陸部32に形成されたショルダー溝60は、タイヤ周方向において相互に重ならない。
【0035】
タイヤ未使用時において、ショルダー陸部32のトラクション要素は、例えば、センター陸部30のトラクション要素の5%~45%である。この値が5%未満の場合は、タイヤが回転する際に滑りやすくなって偏摩耗が発生する可能性が高まる恐れがある。また、この値が45%超の場合は、ショルダー陸部32の剛性が低下し偏摩耗発生の要因となりやすい。各陸部のトラクション要素は、各陸部に形成された溝及びサイプの各々のトラクション要素の和である。溝及びサイプの各々のトラクション要素は、その溝及びサイプの長さと深さから算出される。具体的には、溝又はサイプをタイヤ軸方向に投影した長さをその溝又はサイプのエッジ要素とし、このエッジ要素とその溝又はサイプの深さの積がその溝又はサイプのトラクション要素である。トラクション要素が大きいほど摩耗に伴うトラクション要素が大きく、滑りにくいことを示す。本実施形態においては、センター陸部30のトラクション要素は、第2主溝22、第1副溝40、第2副溝42、及び第1サイプ50のトラクション要素の和であり、ショルダー陸部32のトラクション要素は、ショルダー溝60及び第5サイプ58のトラクション要素の和である。
【0036】
図2に示すように、タイヤ平面視において、第1主溝20は、例えば、タイヤ周方向に対して10°以下の角度で略直線状に形成されており、第2主溝22は、例えば、タイヤ周方向に対して10°~30°の角度で交互に向きを変えてジグザグに形成されている。これにより、センター陸部30のトラクション性能が向上する。
【0037】
図3A及び
図3Bを参照しつつ、第1主溝20と第2主溝22の断面形状について説明する。
図3Aは、実施形態の一例に係る第1主溝20の断面を示す図であり、
図3Bは、実施形態の一例に係る第2主溝22の断面を示す図である。第2主溝22の側壁22aの傾斜は、第1主溝20の側壁20aの傾斜よりも大きい。換言すれば、第2主溝22の側壁22aがタイヤ径方向となす角βは、第1主溝20の側壁20aがタイヤ径方向となす角αよりも大きい。
【0038】
次に、コンピュータシミュレーションを用いて、
図2に示すトレッド10を有するタイヤのショルダー陸部32のリブ剛性、並びに、センター陸部30及びショルダー陸部32のトラクション要素を算出した結果を表1に示す。表1において、実施例1~4は、ショルダー溝60の深さが第1主溝20の深さの10%~40%とした場合の結果であり、比較例1~3は、ショルダー溝60の深さがこの範囲外である場合の結果である。なお、実施例4は、実施例2のショルダー溝60が接地端Eまで延びた場合についての結果である。各溝及びサイプの平面視における長さ及び幅は
図2に示した図の通りである。主溝20,22及びサイプ50,52,54,56,58の深さは同じとした。
【0039】
ショルダー陸部32のリブ剛性は、有限要素法(FEM)を用いて算出した。リブ剛性が高いほどショルダー陸部32が動きにくくなるため、耐摩耗性が良くなる。FEMでは、解析対象の構造を有限要素に分割し、各要素について運動方程式を演算することにより解析を行う。
図2に示す平面図に基づいて、複数の要素にメッシュ分割された三次元のタイヤモデルを作成してコンピュータシミュレーションを行った。解析条件は以下の通りである。
負荷面圧:0.06kgf/mm
2
変位量:5.0mm
摩擦係数:0.5
【0040】
センター陸部30及びショルダー陸部32のトラクション要素については、
図2に示す平面図に基づいて算出した。上述の通り、センター陸部30のトラクション要素は、第2主溝22、第1副溝40、第2副溝42、及び第1サイプ50のトラクション要素の和であり、ショルダー陸部32のトラクション要素は、ショルダー溝60及び第5サイプ58のトラクション要素の和である。
【0041】
ショルダー陸部32のリブ剛性については、実施例3の評価結果を100として、他の実施例及び比較例の評価結果を相対値で示している。センター陸部30及びショルダー陸部32のトラクション要素については、実施例3のセンター陸部30の評価結果を100として、実施例及び比較例のショルダー陸部32の評価結果、及び、他の実施例及び比較例のセンター陸部30の評価結果を相対値で示している。
【0042】
【0043】
表1に示すように、実施例1~4では、ショルダー陸部32のリブ剛性を所定以上としつつ、ショルダー陸部32のトラクション要素が所定の値以上に維持されている。これにより、初期のタイヤ特性(リブ剛性及びトラクション性能)を確保しつつ、使用時には適切に偏摩耗発生要因が除去されるので、ローテーション頻度を低減できる。一方、比較例1では、ショルダー陸部32のトラクション要素がなく、初期のトラクション性能が十分でない。また、比較例2,3では、初期のリブ剛性が低過ぎる。
【0044】
以上のように、本発明に係る重荷重タイヤは、ローテーション頻度を低減できる。より具体的には、ショルダー陸部内をタイヤ軸方向に延びるショルダー溝の深さを、タイヤ周方向に延びる第1主溝の深さの10%~40%とすることで、初期のタイヤ特性を確保しつつ、偏摩耗発生要因となるショルダー溝を適切なタイミングで消滅させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 重荷重タイヤ、10 トレッド、11 サイドウォール、12 ビード、13 カーカス、14 ベルト、14a 第1ベルトプライ、14b 第2ベルトプライ、14c 第3ベルトプライ、14d 第4ベルトプライ、15 インナーライナーゴム、16 ビードコア、17 ビードフィラー、20 第1主溝、22 第2主溝、30 センター陸部、30a 第1センターブロック、30b 第2センターブロック、31 メディエイト陸部、32 ショルダー陸部、40 第1副溝、42 第2副溝、44 第3副溝、50 第1サイプ、52 第2サイプ、60 ショルダー溝、CL タイヤ赤道、E 接地端