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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120249
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】車載器、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 23/00 20060101AFI20240829BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G01C23/00 R
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026917
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】花房 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】河村 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】酒井 一成
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129BB26
2F129BB54
2F129CC07
2F129GG17
2F129HH12
5H181AA01
5H181BB12
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL06
(57)【要約】
【課題】加速度センサのゼロ点補正を理想的な環境下で実施できない場合でも、正確に、且つ、複雑な処理を要すること無く、上り坂と下り坂との判定を実行する。
【解決手段】車載器は、加速度センサにより測定される車両の加速度に基づいて勾配値を算出し坂道判定閾値との比較により坂道を判定する坂道検出機能を備える車載器であって、車両が往復ルートを運行する際における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とを計数する計数部と、計数部により計数された上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との比率に応じて坂道判定閾値を補正する閾値補正部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサにより測定される車両の加速度に基づいて勾配値を算出し坂道判定閾値との比較により坂道を判定する坂道検出機能を備える車載器であって、
前記車両が往復ルートを運行する際における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とを計数する計数部と、
前記計数部により計数された前記上り坂の判定回数と前記下り坂の判定回数との比率に応じて前記坂道判定閾値を補正する閾値補正部と
を備える車載器。
【請求項2】
前記閾値補正部は、複数回の運行の前記上り坂の判定回数の合計値と前記下り坂の判定回数の合計値との比率に応じて前記坂道判定閾値を補正する請求項1に記載の車載器。
【請求項3】
前記閾値補正部は、前記上り坂の判定回数と前記下り坂の判定回数との少なくとも一方が閾値未満である運行を除く複数回の運行の前記上り坂の判定回数の合計値と前記下り坂の判定回数の合計値との比率に応じて前記坂道判定閾値を補正する請求項2に記載の車載器。
【請求項4】
前記閾値補正部は、前記上り坂の判定回数と前記下り坂の判定回数との比率又は複数回の運行の前記上り坂の判定回数の合計値と前記下り坂の判定回数の合計値との比率が、下記式により規定される所定の条件を満たす場合に、前記坂道判定閾値を補正する請求項1又は2に記載の車載器。
X≧Y又はX≦Z
Xは、前記上り坂の判定回数と前記下り坂の判定回数との比率又は複数回の運行の前記上り坂の判定回数の合計値と前記下り坂の判定回数の合計値との比率である。
Yは、1.0<Y≦2.0である。
Zは、0.5≦Z<1.0である。
【請求項5】
前記閾値補正部は、
X≧Yの場合に、上り坂の判定についての前記坂道判定閾値の絶対値を増加させ、下り坂の判定についての前記坂道判定閾値の絶対値を減少させ、
X≦Zの場合に、上り坂の判定についての前記坂道判定閾値の絶対値を減少させ、下り坂の判定についての前記坂道判定閾値の絶対値を増加させる請求項4に記載の車載器。
【請求項6】
加速度センサにより測定される車両の加速度に基づいて勾配値を算出し坂道判定閾値との比較により坂道を判定する坂道検出機能を車載器に実行させるためのプログラムであって、
前記車両が往復ルートを運行する際における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とを計数する計数手順と、
前記計数手順において計数された前記上り坂の判定回数と前記下り坂の判定回数との比率に応じて前記坂道判定閾値を補正する閾値補正手順と
を前記車載器に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサを用いた道路勾配検出機能を備える車載器として、検出された道路勾配に基づいて坂道と判定した場合に、エンジン過回転数の警報の発生を抑制するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、加速度センサを用いた道路勾配検出機能を備える車載器として、加速度センサのゼロ点補正機能を備えるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、加速度センサのゼロ点補正処理を行う地点の実勾配を水準器で測定し、ゼロ点補正の補正値と実勾配との関係を示したテーブルを用いて、実勾配に応じたゼロ点補正を行うことが記載されている。
【0003】
また、車載器に備えられた加速度センサの校正方法として、列車が坂道で停車している時に、当該位置の勾配と加速度との関係を示した情報を用いて、加速度センサの測定値を補正する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、車載器に備えられた加速度センサの校正方法として、車両が坂道で走行している時に、サーバから取得する勾配と、加速度センサの測定値から求められる勾配との一致性に応じて、加速度センサの測定値を補正する方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-190232号公報
【特許文献2】特開2022-190463号公報
【特許文献3】特開2017-147825号公報
【特許文献4】特開2021-99374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車載器では、加速度センサのゼロ点補正に誤差が生じると道路勾配の検出結果に基づく坂道の判定に偏りが生じる。例えば、上り坂は緩勾配でも坂道と判定されるのに対して、下り坂は緩勾配では坂道と判定されず急勾配でなければ坂道と判定されない等の事態が生じ、坂道判定の信頼性が低下する。また、往復ルート等の上り坂の回数と下り坂の回数とが一致するべきルートの運行にもかかわらず、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とに差が生じる事態も想定される。そのため、加速度センサのゼロ点補正の精度が重要となる。
【0006】
加速度センサのゼロ点補正の精度を確保するためには、車両を可能な限りに勾配がゼロ、且つ、凹凸の無い地点に移動させてゼロ点補正を行う必要がある。しかしながら、平らに舗装された一般的な駐車場の場合、路面に水勾配が設けられているうえに路面に窪みや凹凸や経時的な荒れが存在する。そのため、特許文献2に記載されているように路面の勾配を水準器で測定した場合、路面の勾配の測定値は、勾配の車両1台分の範囲でも測定位置によって変動する。従って、現状では、車両を可能な限りに勾配がゼロ、且つ、凹凸の無い地点に移動させてゼロ点補正を行うためには、車両検査場等の専用環境で行う必要があり、効率が悪い。
【0007】
他方で、車載器に備えられた加速度センサは、坂道判定機能以外に衝突検知等の他機能でも使用される。そのため、坂道判定機能の信頼性の向上を目的として加速度センサの測定値が補正されたり、加速度センサのゼロ点補正が行われたりする場合には、上記他機能の判定の基準値にズレが生じる。ここで、機能毎に加速度センサの測定値の補正を行うことも考えられるが、処理が複雑化する。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、加速度センサのゼロ点補正を理想的な環境下で実施できない場合でも、正確に、且つ、複雑な処理を要することなく、上り坂と下り坂との判定を実行できる車載器、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車載器は、加速度センサにより測定される車両の加速度に基づいて勾配値を算出し坂道判定閾値との比較により坂道を判定する坂道検出機能を備える車載器であって、前記車両が往復ルートを運行する際における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とを計数する計数部と、前記計数部により計数された前記上り坂の判定回数と前記下り坂の判定回数との比率に応じて前記坂道判定閾値を補正する閾値補正部とを備える。
【0010】
本発明のプログラムは、加速度センサにより測定される車両の加速度に基づいて勾配値を算出し坂道判定閾値との比較により坂道を判定する坂道検出機能を車載器に実行させるためのプログラムであって、前記車両が往復ルートを運行する際における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とを計数する計数手順と、前記計数手順において計数された前記上り坂の判定回数と前記下り坂の判定回数との比率に応じて前記坂道判定閾値を補正する閾値補正手順とを前記車載器に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加速度センサのゼロ点補正を理想的な環境下で実施できない場合でも、正確に、且つ、複雑な処理を要することなく、上り坂と下り坂との判定を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る車載器の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示す加速度センサを用いた勾配値の算出方法を説明するための図である。
図3図3は、図1に示す加速度センサを用いた勾配値の算出方法を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、図1に示すCPUが実行する自動校正機能の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、図1に示すCPUが実行する自動校正機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る車載器10の構成を示すブロック図である。この図に示す車載器10は、デジタルタコグラフ、又はデジタルタコグラフの機能を併せ持つドライブレコーダー等の運行記録装置であり、運行管理の対象の車両に搭載される。この車載器10は、運行データ、車両の走行に関するイベント等を記録する機能(以下、記録機能)を備える。運行データとしては、出入庫時刻、走行距離、走行時間、走行速度等が挙げられる。また、イベントとしては、速度オーバー、急発進、急減速、下り坂のフットブレーキ41の多用、エンジン過回転数等が挙げられる。
【0015】
ここで、車両が上り坂を走行する際には、無謀運転に該当しない場合であっても、エンジン回転数が上昇する。また、車両が下り坂を走行する際に、ギアを落としエンジンブレーキを効かせてフットブレーキ41の多用を防止する適正運転を行った場合であっても、エンジン回転数が上昇する。そこで、本実施形態の車載器10は、加速度センサ1の測定値に基づいて坂道を検出する機能(以下、坂道検出機能)を備え、上り坂及び下り坂の検出時には、エンジン過回転数の記録を抑制する。これにより、本実施形態の車載器10は、エンジン過回転数についての評価を適正化する。
【0016】
また、車載器10の坂道検出機能は、加速度センサ1の測定値に基づいて道路の勾配値を算出し、算出した勾配値と坂道判定閾値とを比較し、算出した勾配値が坂道判定閾値を超える場合に坂道を検出する。そのため、加速度センサ1にゼロ点のズレ(以下、オフセット誤差)がある場合には、勾配値の算出結果に誤差が生じ、何ら対策を施さなければ、上り坂と下り坂との一方が検出され易く、上り坂と下り坂との他方が検出され難くなる(即ち、上り坂と下り坂との判定が偏る)事態が生じる。
【0017】
ここで、運行管理の対象の車両が往復ルートを運行する場合には、往路の上り坂は復路の下り坂となるため、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とは一致するべきである。しかしながら、上り坂と下り坂との判定に偏りが生じた場合には、往復ルートを運行した車両についての上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とに差が生じる可能性がある。そこで、本実施形態の車載器10は、車両が往復ルートを運行した際における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との比率に応じて坂道判定閾値を補正する(自動補正機能の実行)。
【0018】
車載器10は、CPU(Central Processing Unit)11と、メモリ12と、各種センサ等から出力された信号が入力されるインターフェース(以下、I/F)13と、GPS(Global Positioning System)受信器14とを備える。また、車載器10は、カードインターフェース(以下、カードI/F)15と、通信部16と、リアルタイムクロック(以下、RTC)17とを備える。
【0019】
CPU11は、車載器10の各部の制御を司り、特に、上記の記録機能、坂道検出機能、及び自動校正機能等を実行する。CPU11は、算出部111と、坂道判定部112と、計数部113と、記録部114と、閾値補正部115とを備える。
【0020】
算出部111は、加速度センサ1の測定値に基づいて道路の勾配値を算出する。また、坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値と坂道判定閾値との比較により坂道判定を行う。また、計数部113は、車両が往復ルートを運行する際における坂道判定部112による上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とを計数する。ここで、計数部113は、1運行毎に上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とを計数する。
【0021】
記録部114は、計数部113により計数された上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とを1運行毎にメモリ12に記録する。ここで、記録部114は、1運行の上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との双方が閾値(例えば5回)以上である場合に、当該運行の上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とをメモリ12に記録する。他方で、記録部114は、1運行の上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との少なくとも一方が閾値未満である場合には、当該運行の上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とをメモリ12に記録しない。
【0022】
閾値補正部115は、所定回数の運行についての上り坂の判定回数の合計値と下り坂の判定回数の合計値との比率に応じて、坂道判定閾値を補正する。なお、算出部111、坂道判定部112、計数部113、記録部114、及び閾値補正部115の処理の詳細については後述する。
【0023】
メモリ12は、CPU11が実行するプログラムを格納する不揮発性メモリである。CPU11が実行するプログラムとしては、上記の記録機能、坂道検出機能、及び自動校正機能を実行するためのプログラムに加え、イベント発生時に音声や映像等により警報する警報機能を実行するためのプログラム等が挙げられる。
【0024】
メモリ12は、自動校正機能の実行で用いられる校正情報を格納する。ここで、詳細は後述するが、運行管理の対象の車両が出庫し往復ルートを運行した後に元の場所に入庫すると、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とが校正情報としてメモリ12に記録される。
【0025】
なお、校正情報を取得するための往復ルートは、通常運行時の運行ルートでもよく、通常運行とは別に設定されるルートでもよい。通常運行とは別に設定されるルートとしては、特定の坂道を繰り返し往復するルート等が挙げられる。
【0026】
I/F13には、加速度センサ1、エンジン回転数センサ2、車速センサ3、ブレーキスイッチ4、ハンディテンキー(以下、H/T)5、車載カメラ6、スイッチユニット(以下、SWU)7、ナビゲーションシステム8等が接続されている。
【0027】
加速度センサ1は、車両進行方向の加速度を検知して加速度信号をI/F13に出力する。また、エンジン回転数センサ2は、車両のエンジン回転数を検知して回転数信号をI/F13に出力する。また、車速センサ3は、車両の速度を検知して車速信号をI/F13に出力する。また、ブレーキスイッチ4は、運転者のフットブレーキ41の操作を検知してブレーキ信号をI/F13に出力する。
【0028】
H/T5は、出庫ボタン、自動校正機能のON/OFFボタン等の各種ボタン(図示省略)が配置されており、操作入力信号をI/F13に出力する。車載カメラ6は、車両の前方等を撮影して画像信号をI/F13に出力する。また、SWU7は、出庫ボタン、入庫ボタン、自動校正機能のON/OFFボタン等の各種ボタン(図示省略)が配置されており、操作入力信号をI/F13に出力する。さらに、ナビゲーションシステム8は、地図情報をI/F13に出力する。
【0029】
GPS受信器14は、GPSアンテナ141に接続されており、GPS衛星(図示省略)から発信されたGPS信号を受信する。このGPS信号は、GPS位置情報と、GPS時刻情報とを含む。
【0030】
カードI/F15には、メモリカード等の外部記録媒体151が着脱される。カードI/F15に接続された外部記録媒体151には、運行データとイベントとが記録される。なお、外部記録媒体151に上記の校正情報を格納してもよい。
【0031】
通信部16は、広域通信網を介して、サーバや事務所パソコン(共に図示省略)と通信する。RTC17は、GPS受信器14が受信したGPS時刻情報に基づいて、現在時刻を計時する。
【0032】
図2は、図1に示す加速度センサ1を用いた勾配値S(%)の算出方法を説明するための図である。この図に示すように、運行中の車両が勾配値S(%)の坂道を走行する時、勾配値S(%)は、下記(1)式により算出される。
【数1】
【0033】
斜面の角度θは、下記(2)~(4)式を満たす。
【数2】
【0034】
図3は、図1に示すCPU11が実行する坂道検出機能の手順を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示すように、CPU11は、坂道検出機能の実行中、ステップS21~S32の処理を繰り返す。CPU11の算出部111は、坂道検出機能の実行中、運行管理対象の車両が一定区間(例えば20m)を走行する毎に勾配値S(%)を上記(1)式により算出する。
【0035】
CPU11の坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が正の閾値S(例えば+3%)以上であるか否かを判定する(ステップS21)。坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が正の閾値S以上である場合(ステップS21でYES)、算出部111により算出された勾配値S(%)が所定回数(例えば2回)連続で正の閾値S以上であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0036】
坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が所定回数(例えば2回)連続で正の閾値S以上である場合(ステップS22でYES)、上り坂のフラグをONにする(ステップS23)。坂道判定部112は、上り坂のフラグがONの間、算出部111により算出された勾配値S(%)が正の閾値S未満であるか否かを判定する(ステップS24)。坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が正の閾値S以上である間(ステップS24でNO)、上り坂のフラグをONに維持し、ステップS24に戻る。他方で、坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が正の閾値S未満である場合(ステップS24でYES)、算出部111により算出された勾配値S(%)が所定回数(例えば2回)連続で正の閾値S未満であるか否かを判定する(ステップS25)。坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が所定回数連続で正の閾値S未満である場合(ステップS25でYES)、上り坂のフラグをOFFにする(ステップS26)。他方で、坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が正の閾値S未満である状態が所定回数未満(例えば1回)で途切れた場合(ステップS25でNO)、上り坂のフラグをONに維持し、ステップS24に戻る。
【0037】
坂道判定部112は、ステップS21,S22で否定判定を行った場合、及び上り坂のフラグをOFFにした場合(ステップS26)、算出部111により算出された勾配値S(%)が負の閾値S(例えば-3%)以下であるか否かを判定する(ステップS27)。坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が負の閾値S以下である場合(ステップS27でYES)、算出部111により算出された勾配値S(%)が所定回数(例えば2回)連続で負の閾値S以下であるか否かを判定する(ステップS28)。
【0038】
坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が所定回数連続で負の閾値S以下である場合(ステップS28でYES)、下り坂のフラグをONにする(ステップS29)。坂道判定部112は、下り坂のフラグがONの間、算出部111により算出された勾配値S(%)が負の閾値Sより大きいか否かを判定する(ステップS30)。坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が負の閾値S以下である間(ステップS30でNO)、下り坂のフラグをONに維持しステップS30に戻る。他方で、坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が負の閾値Sより大きい場合(ステップS30でYES)、算出部111により算出された勾配値S(%)が所定回数(例えば2回)連続で負の閾値Sより大きいか否かを判定する(ステップS31)。坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が所定回数連続で負の閾値Sより大きい場合(ステップS31でYES)、下り坂のフラグをOFFにする(ステップS32)。他方で、坂道判定部112は、算出部111により算出された勾配値S(%)が負の閾値Sより大きい状態が所定回数未満(例えば1回)で途切れた場合(ステップS31でNO)、下り坂のフラグをONに維持しステップS30に戻る。坂道判定部112は、ステップS27,S28で否定判定を行った場合、及び下り坂のフラグをOFFにした場合(ステップS32)、ステップS21の処理を実行する。
【0039】
図4は、図1に示すCPU11が実行する自動校正機能の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示すように、CPU11は、運行管理の対象の車両の往復ルートの運行中、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とを計数し、当該車両の運行後、自動校正を実行する。
【0040】
CPU11の計数部113は、運行管理の対象の車両が出庫したか否かを、H/T5又はSWU7の出庫ボタンの操作の有無により判定する(ステップS1)。計数部113は、運行管理の対象の車両が出庫したと判定した場合(ステップS1でYES)、坂道判定部112による上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とをカウントする(ステップS2)。他方で、計数部113は、運行管理の対象の車両が出庫していないと判定した場合(ステップS1でNO)、スタンバイ状態(ステップS11)を維持する。なお、計数部113は、GPS位置情報に基づいて、運行管理の対象の車両が出庫したか否かを判定してもよい。
【0041】
CPU11の記録部114は、運行管理の対象の車両が入庫したか否かを、H/T5又はSWU7の入庫ボタンの操作の有無により判定する(ステップS3)。記録部114は、運行管理の対象の車両が入庫したと判定した場合(ステップS3でYES)、当該運行における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とが共に閾値(例えば5回)以上であるか否かを判定する(ステップS4)。記録部114は、当該運行における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とが共に閾値以上である場合(ステップS4でYES)、当該運行における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とをメモリ12に記録する(ステップS5)。他方で、記録部114は、当該運行における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との少なくとも一方が閾値未満である場合(ステップS4でNO)、当該運行における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とをメモリ12に記録することなく、ステップS6に移行する。
【0042】
図5は、図1に示すCPU11が実行する自動校正機能を説明するための図である。この図に示すように、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とが共に閾値(例えば5回)以上である運行(例えば、1,2,4,5運行目)について、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とがメモリ12に記録される。この場合、メモリ12に記録されている所定回数(例えば3回)の運行について、上り坂の判定回数の合計値と下り坂の判定回数の合計値とが算出される。
【0043】
そして、所定回数の運行における上り坂の判定回数の合計値と下り坂の判定回数の合計値との比率(以下、上り/下り比率)Xが閾値Y以上又は閾値Z(=1/Y)以下である場合(X≧Y又はX≦Z)に、自動校正(坂道判定閾値の補正)が実行される。ここで、閾値Yは、1.0より大きく2.0以下の値(1.0<Y≦2.0)であり、例えば、1.4≦Y≦2.0である。また、閾値Zは、1.0より小さく0.5以上の値(0.5≦Y<1.0)であり、例えば、0.5(=1/2.0)≦Z≦0.7(≒1/1.4)である。それに対して、上り/下り比率Xが閾値Zより大きく閾値Y未満である場合(Z<X<Y)には、自動校正は実行されない。
【0044】
例えば、Y=1.5の場合に、図5に示すように、1,2,4運行目の3運行における上り坂の判定回数の合計値が30回、下り坂の判定回数の合計値が17回であれば、上り/下り比率Xが1.76となり、自動校正が実行される。これにより、5運行目の上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との比率が1になる。他方で、Y=1.5の場合に、図5に示すように、2,4,5運行目の3運行における上り坂の判定回数の合計値が28回、下り坂の判定回数の合計値が20回である場合には、上り/下り比率Xが1.4となり、自動校正は実行されない。
【0045】
図4に示すように、CPU11の閾値補正部115は、所定回数(例えば3回)の運行における上り坂の判定回数の合計値と下り坂の判定回数の合計値とを算出する(ステップS6)。次に、閾値補正部115は、所定回数の運行における上り/下り比率Xが閾値Y以上であるか否かを判定する(ステップS7)。閾値補正部115は、上り/下り比率Xが閾値Y以上である場合(ステップS7でYES)、上り/下り比率Xが1に近づく(上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とが均等化する)ように、上り坂の判定閾値と下り坂の判定閾値とを補正する(ステップS8)。閾値補正部115は、例えば、上り坂の判定閾値を、上り/下り比率Xに応じた量だけ増加させ(例えば+0.5%)、下り坂の判定閾値を、上り/下り比率Xに応じた量だけ増加させる(例えば+0.5%)。換言すると、閾値補正部115は、上り坂の判定閾値の絶対値を、上り/下り比率Xに応じた量(例えば0.5%)だけ増加させ、下り坂の判定閾値の絶対値を、上り/下り比率Xに応じた量(例えば0.5%)だけ減少させる。
【0046】
閾値補正部115は、上り/下り比率Xが閾値Y未満である場合(ステップS7でNO)、上り/下り比率Xが閾値Z以下であるか否かを判定する(ステップS9)。閾値補正部115は、上り/下り比率Xが閾値Z以下である場合(ステップS9でYES)、上り/下り比率Xが1に近づくように、上り坂の判定閾値と下り坂の判定閾値とを補正する(ステップS10)。閾値補正部115は、例えば、上り坂の判定閾値を、上り/下り比率Xに応じた量だけ減少させ(例えば-0.5%)、下り坂の判定閾値を、上り/下り比率Xに応じた量だけ減少させる(例えば-0.5%)。換言すると、閾値補正部115は、上り坂の判定閾値の絶対値を、上り/下り比率Xに応じた量(例えば0.5%)だけ減少させ、下り坂の判定閾値の絶対値を、上り/下り比率Xに応じた量(例えば0.5%)だけ増加させる。
【0047】
CPU11は、上り坂の判定閾値と下り坂の判定閾値との補正が実行された後、及びステップS9で否定判定が行われた後、スタンバイ状態に移行する(ステップS11)。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の車載器10では、CPU11の計数部113が、運行管理の対象の車両が往復ルートを運行する際における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とを計数し、CPU11の閾値補正部115が、計数部113により計数された上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との比率に応じて坂道判定閾値を補正する。これによって、車両検査場等の加速度センサ1のゼロ点補正を実施する理想的な環境では加速度センサ1のゼロ点補正を実施できないような状況下においても、上り坂と下り坂とを偏りなく判定することができる。
【0049】
また、加速度センサ1は、坂道判定機能以外に衝突検知等の他機能でも使用されるのに対して、加速度センサ1の測定値の補正が行われないため、他機能の判定の基準値にズレが生じることを回避できる。また、機能毎に加速度センサ1の補正を行うような複雑な処理も回避できる。
【0050】
また、加速度センサ1のオフセット誤差は、気温等の環境や振動等の車両状態の影響で生じる場合があるのに対して、環境や車両状態等の影響を含んだ状態で坂道判定閾値の補正が実施される。これにより、運行時の環境や車両状態等の影響にかかわらず坂道判定の精度を確保できる。
【0051】
また、加速度センサ1のオフセット誤差に対して坂道判定閾値の補正により坂道判定の精度を確保できることによって、加速度センサ1のオフセット誤差の許容範囲が拡大する。従って、オフセット誤差の少ない高精度、高コストな加速度センサ1を要することなく、また、加速度センサ1の校正用の他のセンサを追加することなく、坂道判定の精度を確保できる。
【0052】
また、上り坂及び下り坂の判定を適正に実行できることにより、エンジン過回転数の判定を適正に実行できる。
【0053】
また、本実施形態の車載器10では、閾値補正部115が、複数回の運行の上り坂の判定回数の合計値と下り坂の判定回数の合計値との比率(上り/下り比率X)に応じて坂道判定閾値を補正する。即ち、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との比率を平滑化し、平滑化した比率に応じて坂道判定閾値を補正する。これによって、ある1回の運行における上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との比率に応じて坂道判定閾値を補正する場合に比して、坂道判定の信頼性を向上できる。
【0054】
また、本実施形態の車載器10では、記録部114が、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との少なくとも一方が閾値未満である運行を除いて、1運行毎に、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とをメモリ12に記録する。そのため、閾値補正部115は、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との少なくとも一方が閾値未満である運行を除く複数回の運行の上り坂の判定回数の合計値と下り坂の判定回数の合計値との比率に応じて坂道判定閾値を補正する。即ち、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数とが相対的に少ない運行については、当該運行で取得した校正情報をノイズとして除去する。これにより、坂道判定の信頼性を向上できる。
【0055】
また、本実施形態の車載器10では、閾値補正部115が、複数回の運行の上り坂の判定回数の合計値と下り坂の判定回数の合計値との比率Xが、X≧Y又はX≦Zの条件(但し、1.0<Y≦2.0、0.5≦Z<1.0)を満たす場合に、坂道判定閾値を補正する。これにより、加速度センサ1のオフセット誤差の影響による坂道判定の精度の低下が許容範囲を超える場合に限り、坂道判定閾値の補正を実行することが可能になり、過度な処理負担が生じることを回避できる。
【0056】
また、本実施形態の車載器10では、閾値補正部115が、X≧Yの場合に、上り坂の判定についての坂道判定閾値の絶対値を増加させ、下り坂の判定についての坂道判定閾値の絶対値を減少させる。他方で、閾値補正部115は、X≦Zの場合に、上り坂の判定についての坂道判定閾値の絶対値を減少させ、下り坂の判定についての坂道判定閾値の絶対値を増加させる。これにより、上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との比率を1に近づけることができる。
【0057】
以上、上述の実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0058】
例えば、上述の実施形態では、閾値補正部115が、複数回の運行の上り坂の判定回数の合計値と下り坂の判定回数の合計値との比率に応じて坂道判定閾値を補正する。しかしながら、閾値補正部115が、1回の運行の上り坂の判定回数と下り坂の判定回数との比率に応じて坂道判定閾値を補正するようにしてもよい。
【0059】
また、上述の実施形態では、閾値補正部115が、上り/下り比率Xが、X≧Y又はX≦Zの条件を満たす場合に、坂道判定閾値を補正する。しかしながら、閾値補正部115が、上り/下り比率XがX≧Y又はX≦Zの条件を満たすか否かにかかわらず、上り/下り比率Xに応じて、坂道判定閾値を補正するようにしてもよい。
【0060】
さらに、上述の実施形態では、加速度センサ1が車載器10に設けられている。しかしながら、加速度センサ1は、車載されていればよく、車載器10とは異なる車載器に設けられていてもよく、あるいは、車両に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 :加速度センサ
10 :車載器
113 :計数部
115 :閾値補正部
図1
図2
図3
図4
図5