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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120251
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/345 20060101AFI20240829BHJP
   B41J 2/335 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B41J2/345 B
B41J2/335 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026920
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有瀧 康之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】中久保 一也
(72)【発明者】
【氏名】大谷 敬倫
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JE02
2C065JE03
2C065JE07
2C065JE09
2C065JE17
2C065JE18
2C065KB10
2C065KB15
(57)【要約】
【課題】ボンディングパッドを狭ピッチ化することが可能なサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】サーマルプリントヘッド(100)は、基板(10)と、基板上に配置されているグレーズ層(20)と、グレーズ層上に配置されている配線層(30)とを備えている。配線層は、複数のボンディングパッド(32b)を有している。複数のボンディングパッドは、複数の組(GP)に区分されている。複数の組の各々には、第1ボンディングパッド(32ba)と、第2ボンディングパッド(32bb)と、第3ボンディングパッド(32bc)と、第4ボンディングパッド(32bd)とが含まれている。複数の組のうちの1つである第1組(GP1)は、第1方向(DR1)において複数の組のうちの他の1つである第2組(GP2)と隣り合っている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置されているグレーズ層と、
前記グレーズ層上に配置されている配線層とを備え、
前記配線層は、複数のボンディングパッドを有し、
前記複数のボンディングパッドは、複数の組に区分されており、
前記複数の組の各々には、第1ボンディングパッドと、第2ボンディングパッドと、第3ボンディングパッドと、第4ボンディングパッドとが含まれており、
前記複数の組のうちの1つである第1組は、第1方向において、前記複数の組のうちの他の1つである第2組と隣り合っており、
前記第1組に属する前記第2ボンディングパッドは、前記第1方向において、前記第1組に属する前記第1ボンディングパッドの中央と前記第1組に属する前記第3ボンディングパッドの中央との間に配置されており、
前記第1組に属する前記第4ボンディングパッドは、前記第1方向において、前記第1組に属する前記第3ボンディングパッドの中央と前記第2組に属する前記第1ボンディングパッドの中央との間に配置されており、
前記第3ボンディングパッドは、前記第1方向に直交する第2方向において、前記第1ボンディングパッドと前記第2ボンディングパッド及び前記第4ボンディングパッドとの間に配置されている、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記配線層の厚さは、3μm以上10μm以下である、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記複数のボンディングパッドのうちの前記第1方向において隣り合う2つの間のピッチは、30μm以上70μm以下である、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記配線層の構成材料は、銀が含まれている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2019-98667号公報(特許文献1)には、サーマルプリントヘッドが記載されている。特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドは、基板と、グレーズ層と、配線層とを有している。グレーズ層は、基板上に配置されている。配線層は、グレーズ層上に配置されている。
【0003】
配線層は、複数の第1ボンディングパッドと、複数の第2ボンディングパッドとを有している。複数の第1ボンディングパッドは、第1方向に沿って1列をなすように並んでいる。複数の第2ボンディングパッドは、第1方向に沿って1列をなすように並んでいる。第1ボンディングパッドの列は、第2方向において、第2ボンディングパッドの列とずれた位置にある。第2方向は、第1方向に直交する方向である。第1ボンディングパッド及び第2ボンディングパッドからは、第2方向に沿ってリード配線部が延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-98667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドでは、第2ボンディングパッドから延在しているリード配線部が、第1方向において対向配置されている2つの第1ボンディングパッドの間を通過している。そのため、隣り合う第1ボンディングパッド及び第2ボンディングパッドの間のピッチが小さくなると、リード配線部の幅も小さくせざるを得ない。
【0006】
特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドでは、成膜された配線層の構成材料をウェットエッチングでパターンニングすることにより、配線層が形成される。ウェットエッチングは等方的に進行するため、リード配線部の幅が小さくなると、ウェットエッチング時にリード配線部が細り、リード配線部が断線してしまうことがある。このように、特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドでは、隣り合う第1ボンディングパッド及び第2ボンディングパッドの間のピッチを小さくすることが困難である。
【0007】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、ボンディングパッドを狭ピッチ化することが可能なサーマルプリントヘッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のサーマルプリントヘッドは、基板と、基板上に配置されているグレーズ層と、グレーズ層上に配置されている配線層とを備えている。配線層は、複数のボンディングパッドを有する。複数のボンディングパッドは、複数の組に区分されている。複数の組の各々には、第1ボンディングパッドと、第2ボンディングパッドと、第3ボンディングパッドと、第4ボンディングパッドとが含まれる。複数の組のうちの1つである第1組は、第1方向において、複数の組のうちの他の1つである第2組と隣り合っている。第1組に属する第2ボンディングパッドは、第1方向において、第1組に属する第1ボンディングパッドの中央と第1組に属する第3ボンディングパッドの中央との間に配置されている。第1組に属する第4ボンディングパッドは、第1方向において、第1組に属する第3ボンディングパッドの中央と第2組に属する第1ボンディングパッドの中央との間に配置されている。第3ボンディングパッドは、第1方向に直交する第2方向において、第1ボンディングパッドと第2ボンディングパッド及び第4ボンディングパッドとの間に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示のサーマルプリントヘッドによると、ボンディングパッドを狭ピッチ化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】サーマルプリントヘッド100の平面図である。
図2図1中のII-IIにおける断面図である。
図3図1中のIII-IIIにおける断面図である。
図4図1中のIV-IVにおける断面図である。
図5図1の部分拡大図である。
図6】サーマルプリントヘッド100の製造工程図である。
図7】グレーズ層形成工程S2を説明する断面図である。
図8】金属層形成工程S3を説明する断面図である。
図9】金属層パターンニング工程S4を説明する断面図である。
図10】発熱体形成工程S5を説明する断面図である。
図11】保護ガラス形成工程S6を説明する断面図である。
図12】サーマルプリントヘッド100Aの拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。実施形態に係るサーマルプリントヘッドを、サーマルプリントヘッド100とする。
【0012】
(サーマルプリントヘッド100の構成)
以下に、サーマルプリントヘッド100の構成を説明する。
【0013】
図1は、サーマルプリントヘッド100の平面図である。図1中では、保護ガラス50の図示が省略されている。図2は、図1中のII-IIにおける断面図である。図3は、図1中のIII-IIIにおける断面図である。図4は、図1中のIV-IVにおける断面図である。図5は、図1の部分拡大図である。図1から図5に示されているように、サーマルプリントヘッド100は、基板10と、グレーズ層20と、配線層30と、発熱体40と、保護ガラス50とを有している。
【0014】
基板10は、第1主面10aと、第2主面10bとを有している。第1主面10a及び第2主面10bは、基板10の厚さ方向における端面である。第2主面10bは、第1主面10aの反対面である。平面視における(第1主面10aの法線方向に沿って第1主面10a側から見た際の)基板10の長手方向を、第1方向DR1とする。平面視において第1方向DR1に直交する方向を、第2方向DR2とする。基板10の第2方向DR2における両端を、それぞれ第1端10c及び第2端10dとする。
【0015】
基板10の構成材料は、絶縁材料である。基板10の構成材料は、例えばセラミックである。基板10の構成材料の具体例としては、アルミナ(Al)が挙げられる。
【0016】
グレーズ層20は基板10上に配置されている。より具体的には、グレーズ層20は第1主面10a上に配置されている。グレーズ層20の構成材料は、絶縁材料である。グレーズ層20の構成材料の具体例としては、ガラスが挙げられる。
【0017】
配線層30は、グレーズ層20上に配置されている。配線層30は、共通電極31と、複数の個別電極32とを有している。
【0018】
共通電極31は、本体部31aと、複数の突出部31bとを有している。本体部31aは、第1方向DR1に沿って延在している。本体部31aは、第2方向DR2において、第1端10c側にある。すなわち、第2方向DR2における第1端10cと本体部31aとの間の距離は、第2方向DR2における第2端10dと本体部31aとの間の距離よりも小さい。
【0019】
突出部31bは、第2端10d側を向いている本体部31aの辺から、第2方向DR2に沿って突出している。複数の突出部31bは、第1方向DR1に沿って間隔を空けて並んでいる。
【0020】
個別電極32は、一方端部において先端部32aを有しており、他方端部においてボンディングパッド32bを有している。先端部32aは、隣り合う2つの突出部31bの間に配置されている。すなわち、突出部31b及び先端部32aは、第1方向DR1において交互に並んでいる。先端部32aは、第2方向DR2に沿って延在している。
【0021】
複数のボンディングパッド32bは、複数の組GPに区分されている。組GPには、第1ボンディングパッド32baと、第2ボンディングパッド32bbと、第3ボンディングパッド32bcと、第4ボンディングパッド32bdとが含まれている。複数の組GPのうちの1つを、第1組GP1とする。第1組GP1と第1方向DR1において隣り合っている複数の組GPの他の1つを、第2組GP2とする。
【0022】
第1組GP1に属する第2ボンディングパッド32bbは、第1方向DR1において、第1組GP1に属する第1ボンディングパッド32baの中央と第1組GP1に属する第3ボンディングパッド32bcの中央との間に配置されている。第1組GP1に属する第4ボンディングパッド32bdは、第1方向DR1において、第1組GP1に属する第3ボンディングパッド32bcの中央と第2組GP2に属する第1ボンディングパッド32baの中央との間に配置されている。このことを別の観点から言えば、第1ボンディングパッド32ba、第2ボンディングパッド32bb、第3ボンディングパッド32bc及び第4ボンディングパッド32bdは、第1方向DR1に沿ってこの順で並んでいる。
【0023】
第3ボンディングパッド32bcは、第2方向DR2において、第1ボンディングパッド32baと第2ボンディングパッド32bb及び第4ボンディングパッド32bdとの間に配置されている。このことを別の観点から言えば、複数の第1ボンディングパッド32baは第1方向DR1に沿って1列(第1列)をなすように並んでおり、複数の第3ボンディングパッド32bcは第1方向DR1に沿って1列(第2列)をなすように並んでおり、複数の第2ボンディングパッド32bb及び第4ボンディングパッド32bdは第1方向DR1に沿って1列(第3列)をなすように並んでいる。そして、第1列、第2列及び第3列は、第2方向DR2において互いにずれた位置にある。
【0024】
先端部32aとボンディングパッド32bとの間は、リード配線部32cにより接続されている。ボンディングパッド32bに接続されているリード配線部32cの部分は、ボンディングパッド32bから、第2方向DR2に沿って延在している。
【0025】
隣り合う2つのボンディングパッド32bの間のピッチを、ピッチPとする。ピッチPは、1つのボンディングパッド32bの第1方向DR1における中央と当該1つのボンディングパッド32bの隣にある他の1つのボンディングパッド32bの第1方向DR1における中央の間の距離である。ピッチPは、好ましくは、70μm以下である。ピッチPは、60μm以下であってもよい。ピッチPは、例えば30μm以上である。
【0026】
配線層30の厚さを、厚さTとする。厚さTは、好ましくは、3μm以上である。厚さTは、4μm以上であってもよい。厚さTは、例えば、10μm以下である。配線層30の構成材料は、例えば、銀(Ag)を含んでいる。配線層30の構成材料の具体例としては、銀粒子の焼結体であってもよい。配線層30の構成材料は、銅(Cu)を含んでいてもよく、金(Au)を含んでいてもよい。
【0027】
発熱体40は、第1方向DR1に沿って延在している。発熱体40は、突出部31b及び先端部32aと重なりながらグレーズ層20上に配置されている。発熱体40は、例えば、ガラスと、ガラス中に混入されている複数の導電粒子とを有している。導電粒子の構成材料は、例えば、酸化ルテニウム(RuO)である。
【0028】
共通電極31には、共通電位(例えば、グランド電位)が印加されている。図示されていないが、ボンディングパッド32bは、ボンディングワイヤにより、ドライバICの外部端子(ボンディングパッド)に電気的に接続されている。そのため、複数の個別電極32の各々には、ドライバICにより、選択的に電位が印加される。これにより、電位の印加されている個別電極32の先端部32aとその隣にある突出部31bとの間にある発熱体40の部分には電流が流れ、当該部分が抵抗発熱する。この発熱が紙に伝わることにより当該紙に対する印刷が行われることになる。
【0029】
保護ガラス50は、配線層30及び発熱体40を覆うようにグレーズ層20上に配置されている。図示されていないが、保護ガラス50は開口部を有しており、当該開口部からはボンディングパッド32bが露出されている。
【0030】
(サーマルプリントヘッド100の製造方法)
以下に、サーマルプリントヘッド100の製造方法を説明する。
【0031】
図6は、サーマルプリントヘッド100の製造工程図である。図6に示されているように、サーマルプリントヘッド100の製造方法は、準備工程S1と、グレーズ層形成工程S2と、金属層形成工程S3と、金属層パターンニング工程S4と、発熱体形成工程S5と、保護ガラス形成工程S6と、個片化工程S7とを有している。
【0032】
準備工程S1では、基板10が準備される。グレーズ層形成工程S2は、準備工程S1の後に行われる。図7は、グレーズ層形成工程S2を説明する断面図である。図7に示されているように、グレーズ層形成工程S2では、基板10上(第1主面10a)上にグレーズ層20が形成される。グレーズ層形成工程S2では、第1に、ガラスを含有するペーストが、第1主面10a上に塗布される。第2に、塗布されたペーストが加熱される。これにより、ペースト中の溶剤が蒸発されるとともにペースト中のガラスが互いに結合されることにより、グレーズ層20が形成される。
【0033】
金属層形成工程S3は、グレーズ層形成工程S2の後に行われる。図8は、金属層形成工程S3を説明する断面図である。図8に示されるように、金属層形成工程S3では、グレーズ層20上に金属層33が形成される。金属層33は、金属層33の構成材料(例えば、銀粒子)を含むペーストをグレーズ層20上に塗布するとともに当該ペーストを焼成することにより形成される。
【0034】
金属層パターンニング工程S4は、金属層形成工程S3の後に行われる。図9は、金属層パターンニング工程S4を説明する断面図である。図9に示されているように、金属層パターンニング工程S4では、金属層33がパターンニングされて配線層30となる。金属層パターンニング工程S4では、第1に、金属層33上にレジストパターンが形成される。レジストパターンは、感光性樹脂材料を金属層33上に塗布するとともに、塗布された感光性樹脂材料に対して露光及び現像を行うことにより形成される。レジストパターンは開口部を有しており、当該開口部からは金属層33が露出している第2に、レジストパターンをマスクとして、レジストパターンから露出している金属層33の部分がウェットエッチングされる。これにより、金属層33がパターンニングされて配線層30となる。
【0035】
発熱体形成工程S5は、金属層パターンニング工程S4の後に行われる。図10は、発熱体形成工程S5を説明する断面図である。図10に示されているように、発熱体形成工程S5では、突出部31b及び先端部32aと重なりながらグレーズ層20上に発熱体40が形成される。発熱体40は、発熱体40の構成材料(例えば、ガラス及び酸化ルテニウム粒子)を含むペーストを突出部31b及び先端部32aと重なるようにグレーズ層20上に塗布するとともに当該ペーストを焼成することにより形成される。
【0036】
保護ガラス形成工程S6は、発熱体形成工程S5の後に行われる。図11は、保護ガラス形成工程S6を説明する断面図である。図11に示されるように、保護ガラス形成工程S6では、配線層30及び発熱体40を覆うようにグレーズ層20上に保護ガラス50が形成される。保護ガラス50は、ガラスを含有するペーストを配線層30及び発熱体40を覆うようにグレーズ層20上に塗布するとともに、当該ペーストを焼成することにより形成される。
【0037】
個片化工程S7は、保護ガラス形成工程S6の後に行われる。個片化工程S7では、基板10、グレーズ層20及び保護ガラス50が例えばレーザ光を照射することで切断されることにより、複数のサーマルプリントヘッド100に個片化される。以上により、図1から図5に示される構造のサーマルプリントヘッド100が得られる。
【0038】
(サーマルプリントヘッド100の効果)
以下に、サーマルプリントヘッド100の効果を、比較例に係るサーマルプリントヘッドと対比しながら説明する。比較例に係るサーマルプリントヘッドを、サーマルプリントヘッド100Aとする。
【0039】
図12は、サーマルプリントヘッド100Aの拡大平面図である。図12に示されているように、サーマルプリントヘッド100Aでは、第2ボンディングパッド32bb及び第4ボンディングパッド32bdが、第2方向DR2において第1ボンディングパッド32baと第3ボンディングパッド32bcとの間に配置されている。この点を除いて、サーマルプリントヘッド100Aの構成は、サーマルプリントヘッド100の構成と共通している。
【0040】
サーマルプリントヘッド100Aでは、第2ボンディングパッド32bb及び第4ボンディングパッド32bdが第1方向DR1において対向配置されており、第3ボンディングパッド32bcに接続されているリード配線部32cが第2ボンディングパッド32bbと第4ボンディングパッド32bdとの間を通る。そのため、サーマルプリントヘッド100Aでは、ボンディングパッド32bを狭ピッチ化する(すなわち、ピッチPを小さくする)と、リード配線部32cの幅を小さくせざるを得ない。
【0041】
上記のとおり、配線層30は、金属層パターンニング工程S4において金属層33に対するウェットエッチングを行うことにより形成される。ウェットエッチングは等方的に進行するため、リード配線部32cの幅が小さくなると、リード配線部32cが当該ウェットエッチングに細り、リード配線部32cが断線してしまうことがある。このように、サーマルプリントヘッド100Aによると、ピッチPを小さくすることが困難である。
【0042】
他方で、サーマルプリントヘッド100では、第1組GP1に属する第2ボンディングパッド32bbに接続されているリード配線部32cが第1組GP1に属する第1ボンディングパッド32baと第1組GP1に属する第3ボンディングパッド32bcとの間を通り、第1組GP1に属する第4ボンディングパッド32bdに接続されているリード配線部32cが第1組GP1に属する第3ボンディングパッド32bcと第2組GP2に属する第1ボンディングパッド32baとの間を通る。
【0043】
しかしながら、サーマルプリントヘッド100では、第1組GP1に属する第1ボンディングパッド32ba及び第1組GP1に属する第3ボンディングパッド32bcは第1方向DR1において対向配置されておらず、第1組GP1に属する第3ボンディングパッド32bc及び第2組GP2に属する第1ボンディングパッド32baは第1方向DR1において対向配置されていない。そのため、サーマルプリントヘッド100では、リード配線部32cが第1方向DR1において対向配置されている2つのボンディングパッド32bの間を通ることはなく、ピッチPを小さくしてもリード配線部32cの幅を確保可能である。例えば、サーマルプリントヘッド100では、図5中において点線で示されている領域までリード配線部32cを拡幅することが可能である。その結果、サーマルプリントヘッド100によると、ピッチPを小さくしてもリード配線部32cがウェットエッチングの際に断線しがたく、ボンディングパッド32bを狭ピッチ化する(例えば、ピッチPを70μm以下にする)ことが可能となる。
【0044】
既存のドライバICの出力のビット数は、4の倍数(64ビット、128ビット)であることが多い。サーマルプリントヘッド100では、4つのボンディングパッド32bの配列で1つの周期になっているため、既存のドライバICに対応させやすい。
【0045】
配線層30の構成材料が銀である場合、配線層30の構成材料が金である場合と比較して、厚さTを大きくすることがある。厚さTが大きくなると、金属層パターンニング工程S4のウェットエッチングにおける横方向(金属層33の厚さ方向と直交する方向)のエッチング量が大きくなり、リード配線部32cが細りやすい。サーマルプリントヘッド100では、リード配線部32cの幅を確保することができるため、厚さTが大きくなる場合であってもボンディングパッド32bの狭ピッチ化が可能である。なお、配線層30の構成材料として銀を用いることにより、配線層30の構成材料に金が用いられる場合と比較して、サーマルプリントヘッド100の製造コストを低減可能である。
【0046】
(変形例)
上記においては、4つのボンディングパッド32bを1つの組として第1方向DR1に沿って当該組を周期的に並べ、複数のボンディングパッド32bを第1方向DR1に沿って3列をなすように並べる例を説明したが、複数のボンディングパッド32bの配列はこれに限られるものではない。リード配線部32cが第1方向DR1において対向配置される2つのボンディングパッド32bの間を通らなければ、5つ以上のボンディングパッド32bの組を第1方向に沿って周期的に並べてもよく、複数のボンディングパッド32bが第1方向DR1に沿って4列以上に並んでいてもよい。但し、図1から図5に示されている例のように複数のボンディングパッド32bを第1方向DR1に沿って3列をなすように並べることで、サーマルプリントヘッド100の第2方向DR2における寸法の増大を抑制可能である。
【0047】
(付記)
上記の実施形態には、以下の構成が含まれている。
【0048】
<付記1>
基板と、
前記基板上に配置されているグレーズ層と、
前記グレーズ層上に配置されている配線層とを備え、
前記配線層は、複数のボンディングパッドを有し、
前記複数のボンディングパッドは、複数の組に区分されており、
前記複数の組の各々には、第1ボンディングパッドと、第2ボンディングパッドと、第3ボンディングパッドと、第4ボンディングパッドとが含まれており、
前記複数の組のうちの1つである第1組は、第1方向において、前記複数の組のうちの他の1つである第2組と隣り合っており、
前記第1組に属する前記第2ボンディングパッドは、前記第1方向において、前記第1組に属する前記第1ボンディングパッドの中央と前記第1組に属する前記第3ボンディングパッドの中央との間に配置されており、
前記第1組に属する前記第4ボンディングパッドは、前記第1方向において、前記第1組に属する前記第3ボンディングパッドの中央と前記第2組に属する前記第1ボンディングパッドの中央との間に配置されており、
前記第3ボンディングパッドは、前記第1方向と直交する第2方向において、前記第1ボンディングパッドと前記第2ボンディングパッド及び前記第4ボンディングパッドとの間に配置されている、サーマルプリントヘッド。
【0049】
<付記2>
前記配線層の厚さは、3μm以上10μm以下である、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
【0050】
<付記3>
前記複数のボンディングパッドのうちの前記第1方向において隣り合う2つの間のピッチは、30μm以上70μm以下である、付記1又は付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
【0051】
<付記4>
前記配線層の構成材料は、銀が含まれている、付記1から付記3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【0052】
以上のように本開示の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0053】
100,100A サーマルプリントヘッド、10 基板、10a 第1主面、10b 第2主面、10c 第1端、10d 第2端、20 グレーズ層、30 配線層、31 共通電極、31a 本体部、31b 突出部、32 個別電極、32a 先端部、32b ボンディングパッド、32ba 第1ボンディングパッド、32bb 第2ボンディングパッド、32bc 第3ボンディングパッド、32bd 第4ボンディングパッド、32c リード配線部、33 金属層、40 発熱体、50 保護ガラス、DR1 第1方向、DR2 第2方向、GP 組、GP1 第1組、GP2 第2組、P ピッチ、S1 準備工程、S2 グレーズ層形成工程、S3 金属層形成工程、S4 金属層パターンニング工程、S5 発熱体形成工程、S6 保護ガラス形成工程、S7 個片化工程、T 厚さ。
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