IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特開2024-120260運転支援システム、運転支援方法、及びプログラム
<>
  • 特開-運転支援システム、運転支援方法、及びプログラム 図1
  • 特開-運転支援システム、運転支援方法、及びプログラム 図2
  • 特開-運転支援システム、運転支援方法、及びプログラム 図3
  • 特開-運転支援システム、運転支援方法、及びプログラム 図4
  • 特開-運転支援システム、運転支援方法、及びプログラム 図5
  • 特開-運転支援システム、運転支援方法、及びプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120260
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】運転支援システム、運転支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20240829BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240829BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240829BHJP
【FI】
B60W30/10
G08G1/16 C
G06T7/00 650A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026931
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯高 良
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直登志
(72)【発明者】
【氏名】河原 徹也
(72)【発明者】
【氏名】越阪部 圭亮
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
3D241BA50
3D241CC17
3D241CE04
3D241DB01Z
3D241DB07Z
3D241DC35A
3D241DC35Z
3D241DC42A
3D241DC42Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL04
5H181LL09
5L096AA06
5L096BA04
5L096CA05
5L096DA02
5L096EA04
5L096FA03
5L096FA09
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】車両前方の車線境界部の認識が困難な状況において、車両の運転支援を行うことができる運転支援システムを提供する。
【解決手段】運転支援システム10は、前方車線境界部認識部22による自車線の車両1の前方における車両に対する車線境界部の位置の認識が困難である場合に、地図情報及び車両1の現在位置から認識される対象道路における車両の位置と、後方車線境界部認識部23により認識される自車線の車両1の後方における車両1に対する車線境界部の位置と、に基づいて、自車線の車両1の前方における車両1に対する車線境界部の位置を推定する前方車線境界部推定部26を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられたカメラにより撮影される前記車両の前方画像及び後方画像を取得する車両周辺画像取得部と、
前記前方画像に基づいて、前記車両が走行している自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する前方車線境界部認識部と、
前記後方画像に基づいて、前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する後方車線境界部認識部と、
前記車両の現在位置を認識する車両位置認識部と、
前記車両が走行している対象道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記前方車線境界部認識部による前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置の認識が困難である場合に、前記地図情報及び前記車両の現在位置から認識される前記車両の前方における前記対象道路の形状と、前記後方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置と、に基づいて、前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を推定する前方車線境界部推定部と、
を備える運転支援システム。
【請求項2】
前記前方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置、又は前記前方車線境界部推定部により推定される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置に基づいて、前記車両が前記自車線の幅方向の中央部を走行するように、前記車両に備えられた操舵装置を作動させる車線維持支援制御部を備える
請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記前方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置、又は前記前方車線境界部推定部により推定される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置に基づいて、前記車両に備えられた表示装置に、前記自車線の前記車両の前方における車線境界部の位置を示す報知画像を表示させる車線視認支援制御部を備える
請求項1又は請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
コンピュータにより実行される運転支援方法であって、
車両に備えられたカメラにより撮影される前記車両の前方画像及び後方画像を取得する車両周辺画像取得ステップと、
前記前方画像に基づいて、前記車両が走行している自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する前方車線境界部認識ステップと、
前記後方画像に基づいて、前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する後方車線境界部認識ステップと、
前記車両の現在位置を認識する車両位置認識ステップと、
前記車両が走行している対象道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
前記前方車線境界部認識ステップによる前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置の認識が困難である場合に、前記地図情報及び前記車両の現在位置から認識される前記車両の前方における前記対象道路の形状と、前記後方車線境界部認識ステップにより認識される前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置と、に基づいて、前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を推定する前方車線境界部推定ステップと、
を含む運転支援方法。
【請求項5】
コンピュータを、
車両に備えられたカメラにより撮影される前記車両の前方画像及び後方画像を取得する車両周辺画像取得部と、
前記前方画像に基づいて、前記車両が走行している自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する前方車線境界部認識部と、
前記後方画像に基づいて、前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する後方車線境界部認識部と、
前記車両の現在位置を認識する車両位置認識部と、
前記車両が走行している対象道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記前方車線境界部認識部による前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置の認識が困難である場合に、前記地図情報及び前記車両の現在位置から認識される前記車両の前方における前記対象道路の形状と、前記後方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置と、に基づいて、前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を推定する前方車線境界部推定部と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援システム、運転支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて運転支援技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。例えば、特許文献1は、車両の目標状態量を、ナビゲーション装置により検出される車両進行方向の道路形状と、車両の操舵状態及び走行状態に基づいて設定する技術を開示する。また、特許文献2は、ナビゲーション装置で検出した自車の位置情報を、カメラで認識した走行車線の車線幅中央へ移動させて仮想自車位置を設定し、仮想自車位置を中心として設定した誤差範囲と走行車線の車線幅とのラップ率を比較して、前記自車両が前記走行車線内に存在しているか否かを判定する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-178704号公報
【特許文献2】特開2018-169319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転支援技術においては、車両の作動を制御するために自車両の前方の車線の状況を認識する必要がある。そして、車両の走行環境によっては、例えば、太陽光の入射角度が低い場合(朝日、西日の時間帯での走行時等)に、前方カメラのダイナミックレンジを超えたレベルで太陽光が入射されると、ハレーションが生じて前方の車線の状況を認識することが困難になる。そこで、このような走行環境に対応した運転支援を行うことが本願の課題である。
本願は上記課題の解決のため、車両前方の車線境界線の認識が困難な状況において、車両の運転支援を行うことができる運転支援システム、運転支援方法、及びプログラムを提供することを目的としたものである。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1態様として、車両に備えられたカメラにより撮影される前記車両の前方画像及び後方画像を取得する車両周辺画像取得部と、前記前方画像に基づいて、前記車両が走行している自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する前方車線境界部認識部と、前記後方画像に基づいて、前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する後方車線境界部認識部と、前記車両の現在位置を認識する車両位置認識部と、前記車両が走行している対象道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、前記前方車線境界部認識部による前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置の認識が困難である場合に、前記地図情報及び前記車両の現在位置から認識される前記車両の前方における前記対象道路の形状と、前記後方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置と、に基づいて、前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を推定する前方車線境界部推定部と、を備える運転支援システムが挙げられる。
【0006】
上記運転支援システムにおいて、前記前方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置、又は前記前方車線境界部推定部により推定される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置に基づいて、前記車両が前記自車線の幅方向の中央部を走行するように、前記車両に備えられた操舵装置を作動させる車線維持支援制御部を備える構成としてもよい。
【0007】
上記運転支援システムにおいて、前記前方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置、又は前記前方車線境界部推定部により推定される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置に基づいて、前記車両に備えられた表示装置に、前記自車線の前記車両の前方における車線境界部の位置を示す報知画像を表示させる車線視認支援制御部を備える構成としてもよい。
【0008】
上記目的を達成するための第2態様として、コンピュータにより実行される運転支援方法であって、車両に備えられたカメラにより撮影される前記車両の前方画像及び後方画像を取得する車両周辺画像取得ステップと、前記前方画像に基づいて、前記車両が走行している自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する前方車線境界部認識ステップと、前記後方画像に基づいて、前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する後方車線境界部認識ステップと、前記車両の現在位置を認識する車両位置認識ステップと、前記車両が走行している対象道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得ステップと、前記前方車線境界部認識ステップによる前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置の認識が困難である場合に、前記地図情報及び前記車両の現在位置から認識される前記車両の前方における前記対象道路の形状と、前記後方車線境界部認識ステップにより認識される前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置と、に基づいて、前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を推定する前方車線境界部推定ステップと、を含む運転支援方法が挙げられる。
【0009】
上記目的を達成するための第3態様として、コンピュータを、車両に備えられたカメラにより撮影される前記車両の前方画像及び後方画像を取得する車両周辺画像取得部と、前記前方画像に基づいて、前記車両が走行している自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する前方車線境界部認識部と、前記後方画像に基づいて、前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する後方車線境界部認識部と、前記車両の現在位置を認識する車両位置認識部と、前記車両が走行している対象道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、前記前方車線境界部認識部による前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置の認識が困難である場合に、前記地図情報及び前記車両の現在位置から認識される前記車両の前方における前記対象道路の形状と、前記後方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置と、に基づいて、前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を推定する前方車線境界部推定部と、して機能させるためのプログラムが挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
上記運転支援システムによれば、車両前方の車線境界部の認識が困難な状況において、車両の運転を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、運転支援システムが搭載された車両の構成図である。
図2図2は、運転支援システムの構成図である。
図3図3は、運転支援システムによる車線維持支援制御及び視覚支援制御の説明図である。
図4図4は、後方画像に基づいて自車線の前方の車線境界線を認識する処理の説明図である。
図5図5は、運転支援処理の第1のフローチャートである。
図6図6は、運転支援処理の第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.車両及び運転支援システムの構成]
図1図3を参照して、本開示の運転支援システム10及び運転支援システム10が搭載された車両1の構成について説明する。
【0013】
図1を参照して、本開示の運転支援システム10が搭載された車両1は、通信ユニット40、操舵装置70、及びナビゲーション装置80を備えている。さらに、車両1は、前方を撮影するフロントカメラ50、前方の物体の位置を検出するフロントレーダー51、後方を撮影するリアカメラ52、後方の物体の位置を検出するリアレーダー53、及び利用者U(運転者)により視認される表示装置60を備えている。表示装置60は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイである。なお、表示装置60は、HUD(Head―Up Display)であってもよい。
【0014】
図2を参照して、運転支援システム10は、通信ユニット40、フロントカメラ50、フロントレーダー51、リアカメラ52、リアレーダー53、表示装置60、操舵装置70、及びナビゲーション装置80と接続されている。ナビゲーション装置80は、車両1の現在位置を検出するGNSS(Global Navigation Satellite System)センサ81と、地図データ82を備えている。
【0015】
運転支援システム10は、通信ユニット40により、通信ネットワーク200を介して車両管理サーバー210、運転支援サーバー220、交通情報サーバー230等の車外の通信装置との間で通信を行う。運転支援システム10には、フロントカメラ50により撮影される前方画像、フロントレーダー51により検出される前方物体の位置データ、リアカメラ52により撮影される後方画像、リアレーダー53により検出される後方物体の位置データ、GNSSセンサ81により検出される車両1の現在位置データ、ナビゲーション装置80による経路案内データ等が入力される。また、運転支援システム10から出力される制御信号によって、表示装置60により表示される情報、操舵装置70の作動、ナビゲーション装置80の作動等が制御される。
【0016】
運転支援システム10は、プロセッサ20、メモリ30により構成される制御ユニットである。プロセッサ20は、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサであってもよい。メモリ30には、運転支援システム10の制御用のプログラム31が保存されている。プログラム31は、記録媒体(磁気ディスク、光学ディスク、フラッシュメモリ等)から読み出されてメモリ30に保存されてもよく、車両管理サーバー210等からダウンロードされてメモリ30に保存されてもよい。
【0017】
プロセッサ20は、プログラム31を読み込んで実行することにより、車両周辺画像取得部21、前方車線境界部認識部22、後方車線境界部認識部23、車両位置認識部24、地図情報取得部25、前方車線境界部推定部26、車線維持支援制御部27、及び車線視認支援制御部28として機能する。
【0018】
車両周辺画像取得部21により実行される処理は、本開示の運転支援方法における車両周辺画像取得ステップに相当し、前方車線境界部認識部22により実行される処理は、本開示の運転支援方法における前方車線境界部認識ステップに相当する。後方車線境界部認識部23により実行される処理は、本開示の運転支援方法における後方車線境界部認識ステップに相当し、車両位置認識部24により実行される処理は、本開示の車両制御方法における車両位置認識ステップに相当する。地図情報取得部25により実行される処理は、本開示の車両制御方法における地図情報取得ステップに相当し、前方車線境界部推定部26により実行される処理は、本開示の運転支援方法における前方車線境界部推定ステップに相当する。
【0019】
ここで、図3は、車両1が道路100aを走行している状況を例示しており、車両1は、車線110a(以下、自車線110aと称する)を走行している。車両周辺画像取得部21は、吹き出しB1,B2で示したように、フロントカメラ50により撮影される車両1の前方の画像(前方画像)120と、リアカメラ52により撮影される車両1の後方の画像(後方画像)121を取得する。
【0020】
前方車線境界部認識部22は、前方画像120に対して、エッジ点抽出、特徴量抽出、細線化等の各種の画像処理を行って、自車線110aの車両1の前方の左側の車線境界線111fと右側の車線境界線112fの画像部分を抽出する。そして、前方車線境界部認識部22は、フロントカメラ50の位置検出データにより、車両1に対する車線境界線111f,112fの位置を認識する。より具体的には、前方車線境界部認識部22は、自車線110aの幅方向Wにおける車両1と車線境界線111f,112fとの間隔d1f,d2fを認識する。図3では、車両1の前方の位置P1における車両1と車線境界線111f,112fとの間隔がd1f,d2fである例を示している。
【0021】
同様に、後方車線境界部認識部23は、後方画像121に対して各種の画像処理を行って、自車線110aの車両1の後方の左側の車線境界線111rと右側の車線境界線112rの画像部分を抽出する。そして、後方車線境界部認識部23は、リアカメラ52の位置検出データにより、車両1に対する車線境界線111r,112rの位置を認識する。より具体的には、後方車線境界部認識部23は、自車線110aの幅方向Wにおける車両1と車線境界線111r,112rとの間隔d1r、d2rを認識する。図3では、車両1の後方の位置P2における車両1と車線境界線111r,112rとの間隔がd1r,d2rとなっている例を示している。
【0022】
車両位置認識部24は、GNSSセンサ81による位置検出データに基づいて、車両1の現在位置Pcを認識する。地図情報取得部25は、車両1の現在位置に応じて、車両1が走行している道路の情報を含む地図情報を、地図データ82から抽出して取得する。地図情報は、道路の形状(直線路、曲線路等)を含む高精度の情報である。なお、地図情報は、交通情報サーバー230等から、通信ネットワーク200を介して受信することにより取得してもよい。
【0023】
前方車線境界部推定部26は、前方車線境界部認識部22による、前方画像120に基づく自車線110aの前方の車線境界線111f,112fの認識が困難である場合に対応するために、以下の第1要素~第3要素に基づいて、車線境界線111f,112fの位置を推定する。前方車線境界部認識部22による、前方画像120に基づく自車線110の前方の車線境界線111f,112fの認識が困難である場合とは、例えば、車両1の前方の太陽光の入射角が低い状況(朝日、夕日の時間帯等)であって、フロントカメラ50のダイナミックレンジを超える強さの太陽光によりハレーションが生じて、車線境界線111f,112fの画像部分を抽出することができない場合である。
【0024】
第1要素…車両位置認識部24により認識される車両1の現在位置。
第2要素…地図情報取得部25により取得される地図情報から認識される車両1の前方の道路の形状。
第3要素…後方車線境界部認識部23により認識される車両1に対する自車線の後方の車線境界線の位置。
【0025】
ここで、図4は、車両1が曲線の道路100bを走行していて、前方車線境界部認識部22により、フロントカメラ50により撮影される前方画像120から、車両1の前方の車線境界線111f,112fの位置を認識することが困難である状況を例示している。図4では、後方車線境界部認識部23により、リアカメラ52により撮影される後方画像121から、車両1の後方の車線境界線111r,112rの位置を認識することは可能であり、道路100bの幅方向Wにおける位置P3での車両1と車線境界線111r,112rとの間隔d1r,d2rが認識されている。
【0026】
図4の状況である場合に、前方車線境界部推定部26は、上記第1要素と第2要素により、車両1の前方の道路100bの形状(ここでは曲線路)を認識する。そして、前方車線境界部推定部26は、上記第3要素による車両1と後方の車線境界線111r,112rとの間隔d1r,d2rを用いて、道路100bの形状に合わせた曲率の仮想線VLを、車両1の現在位置Pcの前方に想定し、仮想線VLから左側に間隔d1rを空けた位置を、左側の車線境界線111fの位置として推定する。同様に、前方車線境界部推定部26は、仮想線VLから右側に間隔d2rを空けた位置を右側の車線境界線112fの位置として推定する。図4では、車両1の前方の自車線110bにおける位置P4での車線境界線111f,112fの位置を推定する場合を例示している。
【0027】
車線維持支援制御部27は、前方車線境界部認識部22により認識される車両1の前方の車線境界線111f,112fの位置に基づいて、車両1が自車線110a,110bのセンター付近を走行するように、操舵装置70を作動させる車線維持支援制御を実行する。図3の例では、車線維持支援制御部27は、車線境界線111f,112fの位置から認識される自車線110aのセンターcと車両1の幅方向Wにおけるずれ量Δwを減少させるように、操舵装置70を作動させる。
【0028】
また、車線維持支援制御部27は、前方車線境界部認識部22により車線境界線111f,112fの位置を認識することが困難であるが、図4に示したように、前方車線境界部推定部26により車線境界線111f,112fの位置を推定することが可能である場合は、前方車線境界部推定部26により推定された車線境界線111f,112fの位置を用いて、車線維持支援制御を実行する。
【0029】
車線視認支援制御部28は、図3の吹き出しB3に示したように、前方車線境界部認識部22により認識される車両1の前方の車線境界線111f,112f、又は前方車線境界部推定部26により推定される車両1の前方の車線境界線111f,112fの位置を示す報知画像61を、表示装置60に表示する車線視認支援制御を実行する。表示装置60は、車両1のフロントガラス90の下方のインスツルメンツパネルに配置されている。報知画像61は、フロントカメラ50により撮影される車両1の前方の実画像に、車線境界線111f,112fのアイコンを重畳させて表示してもよく、3Dのグラフィックによる疑似画像であってもよい。
【0030】
[2.運転支援処理]
図5図6に示したフローチャートに従って、運転支援システム10により実行される一連の運転支援処理の手順について説明する。運転支援システム10は、車両1の走行中に、図5図6に示したフローチャートによる処理を繰り返し実行して、上述した車線維持支援制御及び車線視認支援制御を行う。
【0031】
図5のステップS1で、車両周辺画像取得部21は、フロントカメラ50により車両1の前方を撮影して、前方画像120を取得する。続くステップS2で、前方車線境界部認識部22は、前方画像120に対する画像処理を行って、車両1の自車線の前方の車線境界線111f,112fの認識処理を実行する。次のステップS3で、前方車線境界部認識部22は、車線境界線111f,112fが認識されたときはステップS4に処理を進め、車線境界線111f,112fが認識されなかったときには図6のステップS10に処理を進める。
【0032】
ステップS4で、前方車線境界部認識部22は、フロントカメラ50の位置検出データにより、車両1に対する自車線110aの前方の車線境界線111f,112fの位置を認識する。続くステップS5で、車線維持支援制御部27は、上述したように、自車線110aの幅方向Wにおける車両1とセンターcとのずれ量Δw(図3参照)を減少させるように、操舵装置70を作動させる車線維持支援制御を実行する。
【0033】
次のステップS6で、車線視認支援制御部28は、図3を参照して上述したように、前方車線境界部認識部22により認識される車両1の前方の車線境界線111f,112fの位置を示す報知画像61を、表示装置60に表示する車線視認支援制御を実行する。なお、他の前方物体検出手段である、例えばフロントレーダー51により、回避すべき前方の物体が検知できた場合には、自車両の周辺の画像等で、周辺の安全を確認しつつ、車線視認支援制御から公知の回避制御(手段)等に切り替えて、前方の物体を回避してもよいのは無論のことである。
【0034】
図6のステップS10で、車両周辺画像取得部21は、リアカメラ52により車両1の後方を撮影して、後方画像121を取得する。続くステップS11で、後方車線境界部認識部23は、後方画像121に対する画像処理を行って、車両1の自車線の後方の車線境界線111r,112rの認識処理を実行する。次のステップS12で、後方車線境界部認識部23は、車線境界線111r,112rが認識されたときはステップS13に処理を進め、車線境界線111r,112rが認識されなかったときにはステップS20に処理を進める。ステップS20で、後方車線境界部認識部23は、認識エラーを報知する画像を表示装置60に表示して、図5のステップS7に処理を進める。
【0035】
ステップS13で、車両位置認識部24は、GNSSセンサ81による検出データにより車両1の現在位置Pcを認識する。続くステップS14で、地図情報取得部25は、地図データ82を参照して、車両1の現在位置Pcを含む地図情報を取得する。次のステップS15で、前方車線境界部推定部26は、車両1の現在位置Pcと地図情報から、車両1の前方の道路形状を認識する。続くステップS16で、前方車線境界部推定部26は、車両1の前方の道路形状と、車両1に対する自車線の後方の車線境界線111r,112rとに基づいて、上記第1要素~第3要素により、車両1の前方の車線境界線111f,112fの位置を推定する。
【0036】
続くステップS17で、車線維持支援制御部27は、前方車線境界部推定部26により推定された前方の車線境界線111f,112fの位置に基づいて、ステップS6と同様に、車線維持支援制御を実行する。次のステップS18で、車線視認支援制御部28は、前方車線境界部推定部26により推定された前方の車線境界線111f、112fの位置に基づいて、ステップS6と同様に、車線視認支援制御を実行する。なお、他の前方物体検出手段である、例えばフロントレーダー51により、回避すべき前方の物体が検知できた場合には、自車両の周辺の画像等で、周辺の安全を確認しつつ、車線視認支援制御から公知の回避制御(手段)等に切り替えて、前方の物体を回避してもよいのは無論のことである。
【0037】
[3.他の実施形態]
上記実施形態では、本開示の車線境界部として車線境界線111f,112f,111r、112rを示したが、車線境界部は、縁石、道路鋲等であってもよい。
【0038】
上記実施形態において、運転支援システム10は、車線維持支援制御部27と車線視認支援制御部28を備えて、車線維持支援制御と車線視認支援制御を行ったが、車線維持支援制御部27と車線視認支援制御部28とのうちのいずれか一方のみを備える構成としてもよい。また、前方車線境界部推定部26により推定される車両1の前方の車線境界線111f,112fを用いて、車線維持支援制御及び車線視認支援制御以外の処理を行ってもよい。
【0039】
上記実施形態では、運転支援システム10を車両1に備えたが、運転支援システム10の構成の一部又は全部を運転支援サーバー220に備えてもよい。例えば、運転支援システム10の構成の全てを運転支援サーバー220に備える場合は、フロントカメラ50により撮影される前方画像120とリアカメラ52により撮影される後方画像121を、車両1のECU(Electronic Control Unit)から運転支援サーバー220に送信することによって、運転支援システム10が前方画像120と後方画像121を取得する。そして、運転支援サーバー220において、図5図6のフローチャートによる処理を実行し、運転支援サーバー220から車両1のECUに対して、車線維持支援制御による操舵装置70に対する操舵の制御指示データと、車線視認支援制御による表示装置60に対する画像表示の制御指示データを、運転支援サーバー220から車両1のECUに送信することによって、車両1における操舵装置70と表示装置60の作動を制御する構成となる。
【0040】
なお、図2は、本願発明の理解を容易にするために、運転支援システム10の構成を、主な処理内容により区分して示した概略図であり、運転支援システム10の構成を他の区分によって構成してもよい。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアユニットにより実行されてもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行されてもよい。また、図5図6に示した各構成要素による処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。
【0041】
[4.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0042】
(構成1)車両に備えられたカメラにより撮影される前記車両の前方画像及び後方画像を取得する車両周辺画像取得部と、前記前方画像に基づいて、前記車両が走行している自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する前方車線境界部認識部と、前記後方画像に基づいて、前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する後方車線境界部認識部と、前記車両の現在位置を認識する車両位置認識部と、前記車両が走行している対象道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、前記前方車線境界部認識部による前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置の認識が困難である場合に、前記地図情報及び前記車両の現在位置から認識される前記車両の前方における前記対象道路の形状と、前記後方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置と、に基づいて、前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を推定する前方車線境界部推定部と、を備える運転支援システム。
構成1の運転支援システムによれば、車両前方の車線境界部の認識が困難な状況において、後方車線境界部認識部により認識される自車線の車両の後方における車両に対する車線境界部の位置に基づいて、自車線における車両の前方における車両に対する車線境界部の位置を推定することにより、車両の運転支援を行うことができる。
【0043】
(構成2)前記前方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置、又は前記前方車線境界部推定部により推定される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置に基づいて、前記車両が前記自車線の幅方向の中央部を走行するように、前記車両に備えられた操舵装置を作動させる車線維持支援制御部を備える構成1に記載の運転支援システム。
構成2の運転支援システムによれば、車両の前方の車線境界部を認識することが困難な場合であっても、車線維持支援制御部により、車両が自車線の幅方向の中央部を走行するように、車両の操舵装置を作動させる制御を実行することができる。
【0044】
(構成3)前記前方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置、又は前記前方車線境界部推定部により推定される前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置に基づいて、前記車両に備えられた表示装置に、前記自車線の前記車両の前方における車線境界部の位置を示す報知画像を表示させる車線視認支援制御部を備える構成1又は構成2に記載の運転支援システム。
構成3の運転支援システムによれば、車両の前方の車線境界部を認識することが困難な場合であっても、車線視認支援制御部により、車両の表示装置に、自車線の車両の前方における車線境界部の位置を示す報知画像を表示させることができる。
【0045】
(構成4)コンピュータにより実行される運転支援方法であって、車両に備えられたカメラにより撮影される前記車両の前方画像及び後方画像を取得する車両周辺画像取得ステップと、前記前方画像に基づいて、前記車両が走行している自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する前方車線境界部認識ステップと、前記後方画像に基づいて、前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する後方車線境界部認識ステップと、前記車両の現在位置を認識する車両位置認識ステップと、前記車両が走行している対象道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得ステップと、前記前方車線境界部認識ステップによる前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置の認識が困難である場合に、前記地図情報及び前記車両の現在位置から認識される前記車両の前方における前記対象道路の形状と、前記後方車線境界部認識ステップにより認識される前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置と、に基づいて、前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を推定する前方車線境界部推定ステップと、を含む運転支援方法。
構成4の運転支援方法をコンピュータにより実行することによって、構成1の運転支援システムと同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
(構成5)コンピュータを、車両に備えられたカメラにより撮影される前記車両の前方画像及び後方画像を取得する車両周辺画像取得部と、前記前方画像に基づいて、前記車両が走行している自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する前方車線境界部認識部と、前記後方画像に基づいて、前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置を認識する後方車線境界部認識部と、前記車両の現在位置を認識する車両位置認識部と、前記車両が走行している対象道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、前記前方車線境界部認識部による前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置の認識が困難である場合に、前記地図情報及び前記車両の現在位置から認識される前記車両の前方における前記対象道路の形状と、前記後方車線境界部認識部により認識される前記自車線の前記車両の後方における前記車両に対する車線境界部の位置と、に基づいて、前記自車線の前記車両の前方における前記車両に対する車線境界部の位置を推定する前方車線境界部推定部と、して機能させるためのプログラム。
構成5のプログラムをコンピュータにより実行することにより、構成1の運転支援システムの構成を実現することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…車両、10…運転支援システム、20…プロセッサ、21…車両周辺画像取得部、22…前方車線境界部認識部、23…後方車線境界部認識部、24…車両位置認識部、25…地図情報取得部、26…前方車線境界部推定部、27…車線維持支援制御部、28…車線視認支援制御部、30…メモリ、31…プログラム、40…通信ユニット、50…フロントカメラ、51…フロントレーダー、52…リアカメラ、53…リアレーダー、60…表示装置、61…報知画像、70…操舵装置、80…ナビゲーション装置、81…GNSSセンサ、82…地図データ、100a,100b…道路、110a,11b…自車線、111f,112f…前方の車線境界線、111r,112r…後方の車線境界線、120…前方画像、121…後方画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6