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特開2024-120264加飾物品の製造方法、表面処理済物品の製造方法および加飾物品の製造装置
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  • 特開-加飾物品の製造方法、表面処理済物品の製造方法および加飾物品の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120264
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】加飾物品の製造方法、表面処理済物品の製造方法および加飾物品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B27M 1/00 20060101AFI20240829BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20240829BHJP
   B27K 5/02 20060101ALI20240829BHJP
   B05C 9/10 20060101ALI20240829BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240829BHJP
   B05D 7/06 20060101ALI20240829BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240829BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240829BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20240829BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20240829BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B27M1/00 F
B27M3/00 M
B27K5/02 B
B05C9/10
B05C5/00 101
B05D7/06 Z
B05D1/26 Z
B05D1/36 Z
B05D1/02 Z
B05D5/06 G
B41J2/01 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026935
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】奈良本 正治
(72)【発明者】
【氏名】山本 寛峰
(72)【発明者】
【氏名】中田 安美
【テーマコード(参考)】
2B230
2B250
2C056
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2B230AA22
2B230BA03
2B230CA14
2B230CA19
2B230CB06
2B230CC14
2B230DA02
2B230EA12
2B230EA15
2B230EB03
2B230EC06
2B250AA01
2B250BA03
2B250CA11
2B250DA03
2B250FA33
2B250FA46
2B250GA03
2B250HA01
2C056FA12
2C056FA15
2C056FB01
2C056FB10
4D075AA02
4D075AA81
4D075AA83
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AE03
4D075CA35
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB00
4D075DB21
4D075EA06
4D075EA33
4D075EB22
4D075EB38
4D075EC11
4D075EC17
4D075EC33
4F041AA08
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F042AA16
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA12
4F042CB10
4F042DA02
(57)【要約】
【課題】濡れ性が低い不燃木材であっても、均一に表面処理液を塗布することができる加飾物品の製造方法、表面処理済物品の製造方法および加飾物品の製造装置を提供する。
【解決手段】木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する前処理ユニット6と、表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施すシャトルユニット4とを備え、前処理ユニット6が、不燃木材に対してマイクロミストの表面処理液を塗布する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程と、前記表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施す印刷工程とを含み、
前記表面処理液塗布工程において、前記不燃木材に対してマイクロミストの表面処理液を塗布する不燃木材の加飾物品の製造方法。
【請求項2】
前記マイクロミストの最大粒子径が、20μm以下である請求項1記載の不燃木材の加飾物品の製造方法。
【請求項3】
前記マイクロミストの平均粒子径が、10μm以下である請求項1記載の不燃木材の加飾物品の製造方法。
【請求項4】
前記表面処理液塗布工程において、前記不燃木材に塗布される表面処理液の量が7g/m以上である請求項1記載の不燃木材の加飾物品の製造方法。
【請求項5】
前記不燃木材に塗布される表面処理液の量が50g/m以下である請求項1記載の不燃木材の加飾物品の製造方法。
【請求項6】
木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液をマイクロミストとして塗布する表面処理済物品の製造方法。
【請求項7】
木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布部と、
前記表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施す印刷部とを備え、
前記表面処理液塗布部が、前記不燃木材に対してマイクロミストの表面処理液を塗布する不燃木材の加飾物品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃木材に表面処理液を塗布する加飾物品の製造方法、表面処理済物品の製造方法および加飾物品の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホウ素系(ホウ砂およびホウ酸など)やリン酸系(リン酸アンモニウムなど)等の不燃薬剤を木材に浸透注入して製造される不燃木材が提案されている。このような不燃木材は、たとえば建築部材として用いることによって火災を防止することができる。
【0003】
不燃木材をたとえば建築部材として用いる場合、不燃木材に対してインクなどを用いて加飾できればその用途が広がり好ましい。
【0004】
しかしながら、不燃木材の原材料の木材には、水を通す役割を持つ管(導管)が存在する。不燃木材にもこの管は存在し、たとえば水性インクを用いて直接インクジェット印刷した場合、板状に加工された木材表面では、導管の内部が剥き出しになっているため、導管に沿って滲みが生じ、細線再現性が低下する。
【0005】
そこで、特許文献1および特許文献2においては、上述したような滲みを抑制するため、木材の表面に対して表面処理液を塗布して表面処理層を形成し、その表面処理層上にインクジェット印刷を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-169207号公報
【特許文献2】特開2021-169208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、不燃木材は、水分の通り道である導管などが不燃薬剤で狭くなり吸水性(濡れ性)が大きく低下しているため、表面処理液を不燃木材に塗布した場合、表面処理液が浸透せずに表面で弾かれてしまう。また、不燃木材は、接触角が高くなる傾向にあるため、不燃木材の表面に表面処理液を均一に塗布することも困難である。
【0008】
特許文献1および特許文献2においては、接触式の塗布方法で表面処理液を塗布する方法が提案されている。
【0009】
しかしながら、不燃木材の加飾面に細かな凹凸加工や溝加工が施されている場合には、接触式の塗布方法では、凹凸部分や溝部分に表面処理液を安定的に塗布することが難しく、その結果、不燃木材の加飾面全体に表面処理液を均一に塗布することが困難である。
【0010】
本発明は、濡れ性が低い不燃木材であっても、均一に表面処理液を塗布することができる加飾物品の製造方法、表面処理済物品の製造方法および加飾物品の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の加飾物品の製造方法は、木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程と、表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施す印刷工程とを含み、表面処理液塗布工程において、不燃木材に対してマイクロミストの表面処理液を塗布する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加飾物品の製造方法によれば、不燃木材に対してマイクロミストの表面処理液を塗布するようにしたので、不燃木材に表面処理液を均一に塗布することができ、高画質な加飾を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の加飾物品の製造装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示す図
図2図1に示すインクジェット印刷装置のシャトルユニットの内部構成を示す図
図3図1に示すインクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図
図4図1に示すインクジェット印刷装置の動作を説明するための説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の加飾物品の製造装置の一実施形態を備えたインクジェット印刷装置1について詳細に説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。以下に示す実施形態の説明では、図1に矢印で示す上下左右前後を、インクジェット印刷装置1の上下左右前後方向とする。
【0015】
インクジェット印刷装置1は、図1に示すように、シャトルベースユニット2と、フラットベッドユニット3と、シャトルユニット4と、前処理ユニット6とを備えている。本実施形態においては、シャトルユニット4が、本発明の印刷部に相当し、前処理ユニット6が、本発明の表面処理液塗布部に相当する。
【0016】
シャトルベースユニット2は、シャトルユニット4および前処理ユニット6を支持するとともに、前後方向(副走査方向)にシャトルユニット4および前処理ユニット6を移動させるものである。シャトルベースユニット2は、具体的には、架台部31と、副走査駆動ガイド33A,33Bと、副走査駆動モータ32(図3参照)とを備えている。
【0017】
架台部31は、矩形枠状に形成されたものであり、シャトルユニット4および前処理ユニット6を支持するものである。架台部31の左右の枠上には、前後方向に延びる副走査駆動ガイド33A,33Bがそれぞれ形成されている。副走査駆動ガイド33A,33Bは、シャトルユニット4および前処理ユニット6を前後方向に移動するようにガイドするものである。副走査駆動モータ32は、シャトルユニット4および前処理ユニット6を前後方向に移動させるものである。
【0018】
フラットベッドユニット3は、塗布媒体Mを支持するものである。フラットベッドユニット3は、シャトルベースユニット2の架台部31の内側に形成された直方体形状の凹部内に配置されている。フラットベッドユニット3は、塗布媒体Mが載置される水平面である媒体載置面3aを有している。フラットベッドユニット3は、図示省略した油圧駆動機構などを有し、これにより媒体載置面3aの高さを調整できるように構成されている。
【0019】
シャトルユニット4は、塗布媒体Mに対して印刷処理を施すものである。図2は、シャトルユニット4の概略構成を示す図である。本実施形態においては、塗布媒体Mとして不燃木材を用いる。
【0020】
シャトルユニット4は、図2に示すように、筐体41と、主走査駆動ガイド42と、主走査駆動モータ43(図3参照)と、ヘッド昇降ガイド44と、ヘッド昇降モータ45(図3参照)と、ヘッドユニット46とを備えている。
【0021】
筐体41は、ヘッドユニット46などの各部を収納するものである。筐体41は、フラットベッドユニット3を左右方向に跨ぐような門型に形成されている。筐体41は、シャトルベースユニット2の架台部31に支持され、副走査駆動ガイド33A,33Bに沿って移動可能に構成されている。
【0022】
主走査駆動ガイド42は、ヘッドユニット46を左右方向(主走査方向)に移動するようにガイドするものである。主走査駆動ガイド42は、左右方向に延びる長尺状の部材によって形成されている。ヘッドユニット46は、主走査駆動モータ43によって左右方向に移動する。
【0023】
ヘッド昇降ガイド44は、ヘッドユニット46を上下方向に移動するようガイドするものである。ヘッド昇降ガイド44は、上下方向に細長い形状の部材から形成されている。ヘッド昇降ガイド44は、ヘッドユニット46とともに主走査駆動ガイド42に沿って左右方向に移動可能に構成されている。ヘッドユニット46は、ヘッド昇降モータ45によって上下方向に昇降する。
【0024】
ヘッドユニット46は、上述したように主走査駆動ガイド42に沿って左右方向に移動しながら、塗布媒体Mにインクを吐出することによって印刷処理を施すものである。ヘッドユニット46は、図2に示すように、4つのインクジェットヘッド51を有している。
【0025】
4つのインクジェットヘッド51は、左右方向に並列して配置されている。4つのインクジェットヘッド51は、それぞれ異なる色(たとえばシアン、ブラック、マゼンダおよびイエロー)のインクを吐出するものである。4つのインクジェットヘッド51には、それぞれインクを供給するインク供給管53が接続されている。
【0026】
インクジェット印刷に用いるインクは、特に限定されないが、UV硬化型ではないインクであることが好ましく、さらに、水性インクであることが好ましい。すなわち、水、バインダー樹脂、及び色材を含むインクであることが好ましい。また、水性インクの色材は染料、顔料でもよい。耐光性の観点で色材は顔料の方が好ましい。水性インクは、UV硬化型インクとは異なり、塗布媒体Mの素材感を活かした印刷が可能である。
【0027】
また、バインダー樹脂としては、インクジェット用として実績がある水に分散するエマルション樹脂を使用することが好ましく、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂などが好ましい。
【0028】
また、インクは少量で着色できるため広く利用されている数plの液滴を吐出可能なインクジェットヘッド51を利用することができる。
【0029】
図1に戻り、前処理ユニット6は、塗布媒体Mに対して表面処理液を塗布して前処理を行うものである。前処理ユニット6は、塗布媒体Mに対してマイクロミストの表面処理液を塗布する。
【0030】
前処理ユニット6は、左右方向(主走査方向)に配列された多数のノズルを有し、その各ノズルからマイクロミストの表面処理液を吐出する。マイクロミストには、ドライミストも含まれる。
【0031】
マイクロミストを発生させる機構としては、通常のエアスプレーよりも小さな粒で表面処理液を塗布可能な流量および圧力に調整した2流体スプレー、1流体スプレー、ロータリー式スプレーおよび超音波振動式スプレーなどを用いることができる。また、これらの微粒化原理と併用して、塗布媒体Mの凹凸や影部へ塗着性を上げるために、塗布媒体を帯電させる静電引力装置(コロナ帯電装置)(図示省略)を用いるようにしてもよい。
【0032】
また、超音波振動式スプレーを用いる場合には、表面処理液の耐薬品性(腐食など)が必要な場合は、超音波振動子の作用水と表面処理液の容器を分離したダブルチャンバー構造を用いるようにしてもよい。
【0033】
マイクロミストの最大粒子径は20μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10μm以下である。また、マイクロミストの液滴の平均粒子径は10μm以下であることが好ましい。マイクロミストの最大粒子径および平均粒子径は、位相ドップラー干渉計(西華デジタルイメージ株式会社製PDI)を用いて計測される。
【0034】
このように表面処理液の粒を小さくするとともに、液滴数の増加、液量の少量化、粒トータルの表面積の増加が得られるため、塗布媒体M表面での表面処理液のハジキを抑制することができ、塗布媒体Mの表面に凹凸部分や溝部分があっても均一に塗布することができる。
【0035】
また、塗布媒体Mと前処理ユニット6のノズルとの間の距離は、表面処理液を均一に塗布し易い間隔であればいずれでもよいが、20cm~30cm程度が均一に塗りやすい。たとえば塗布媒体Mとノズルとの間の距離が近すぎる場合は、塗布媒体Mとの衝突の危険があったり、濡れる範囲が狭くなるため全面に塗布するための時間が増えて生産性を低下させたり、塗布量を均一にすることが難くなる可能性がある。したがって、塗布媒体Mと前処理ユニット6のノズルとの間の距離は、20cm以上であることが好ましい。一方、遠すぎる場合は表面処理液の粒が塗布媒体Mに届かなくなる可能性があるので、塗布媒体Mと前処理ユニット6のノズルとの間の距離は、30cm以下であることが好ましい。
【0036】
また、塗布媒体Mに表面処理液を均一に塗布するためには、表面処理液の量が7g/m以上であることが好ましく、より好ましくは10g/m以上である(特開2021-169207参照)。これにより、塗布媒体Mに表面処理液を均一に塗布することができる。
【0037】
また、本実施形態のように、塗布媒体Mとして不燃木材を用いる場合には、不燃木材の白華現象を抑制するため、表面処理液の量は50g/m以下であることが好ましい(特開2021-169207参照)。これにより、不燃木材の白華現象を抑制することができる。
【0038】
表面処理液は、たとえば特許第6727020号公報に記載の表面処理液を用いることができ、水、カチオン性の水分散性樹脂、および表面張力調整剤を含み、カチオン性の水分散性樹脂は、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以上10μm以下の大粒子を含むことが好ましい。なお、表面処理液については、後で詳述する。
【0039】
不燃木材に対する表面処理液の接触角は濡れ性の指標であり、液滴法による動的接触角の経時変化測定によって測定できる(測定装置 接触角計 DM-500 協和界面科学社製)。不燃木材に表面処理液(液滴1.0μL)が着弾して1秒後の動的接触角が大きいほど濡れ性が低く、表面処理液が均一に塗布されにくい。具体的には、不燃木材に対する表面処理液の動的接触角が10°以上の場合に、表面処理液を均一に塗布することが困難である。
【0040】
そこで、本実施形態においては、上述したように、不燃木材の表面に、マイクロミストの表面処理液を塗布する。これにより、不燃木材に表面処理液を均一に塗布することができ、塗布ムラを抑制することができる。そして、これにより加飾物品の印刷画像の品質を向上させることができる。特に、上述したように不燃木材に対する表面処理液の動的接触角が10°以上の場合に、顕著な効果を得ることができる。
【0041】
表面処理液を塗布することによって、不燃木材の細い管の内部にまで表面処理液が浸透して、インクの濡れ広がりを制御し、にじみにくく、且つ、発色性を上げることができる。また、インク成分に含まれるアニオン性成分と、表面処理液のカチオン性成分が反応し、色材などのインク成分の木材への浸透を制御し、色材を木材表面へ留めることができる。
【0042】
前処理ユニット6は、シャトルベースユニット2の架台部31に支持され、副走査駆動ガイド33A,33Bに沿って移動可能に構成されている。前処理ユニット6は、副走査方向(Y方向)への移動によって、その下方の塗布媒体M上の所定範囲に表面処理液を順次塗布するものである。
【0043】
図3は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の構成を示すブロック図である。インクジェット印刷装置1は、印刷制御装置15からの制御信号に応じて、図3に示す制御対象の各部を動作させる。
【0044】
印刷制御装置15とインクジェット印刷装置1とは、LAN(Local Area Network)またはインターネット回線などの通信回線によって接続されており、互いに通信可能に構成されている。
【0045】
印刷制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えたコンピュータから構成される。印刷制御装置15は、入力された印刷ジョブなどに基づいて、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶された印刷制御プログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって図3に示す各部を制御する。
【0046】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1の動作について、図4A図4Dを参照しながら説明する。なお、図4A図4Dは、図1に示すインクジェット印刷装置1を左側から見た図である。
【0047】
まず、図4Aに示すように、フラットベッドユニット3上に塗布媒体Mが載置される。この際、シャトルユニット4および前処理ユニット6は、図4Aに示すように、最も前側の初期位置に配置されている。そして、印刷制御装置15は、副走査駆動モータ32を駆動し、これによりシャトルユニット4および前処理ユニット6が、図4Aに示す初期位置から後方向(図4Aに示す矢印方向)に移動を開始し、図4Bに示す印刷開始位置まで移動する。
【0048】
次に、印刷制御装置15は、図4Cに示すように、前処理ユニット6を前方向(図4Cに示す矢印方向)に移動させるとともに、前処理ユニット6内の液体塗布装置1を動作させ、塗布媒体Mに表面処理液を塗布して前処理を行う。
【0049】
そして、前処理ユニット6によって塗布媒体Mに表面処理液が塗布された後、塗布媒体Mは一旦、図示省略した乾燥装置に搬送され、乾燥処理が行われる。乾燥装置における乾燥処理が終了した後、塗布媒体Mは、インクジェット印刷装置1に再び設置され、印刷制御装置15は、副走査駆動モータ32を制御して、図4Dに示すようにシャトルユニット4を前方向(図4Dに示す矢印方向)に移動させながら印刷処理を行う。
【0050】
具体的には、印刷制御装置15は、まず、シャトルユニット4が印刷開始位置に配置された状態において、主走査駆動モータ43を制御してヘッドユニット46を主走査方向に移動させる。そして、ヘッドユニット46のインクジェットヘッド51が、印刷画像に基づく制御信号に応じてインクを吐出させることによって、1パス分の印刷が行われる。
【0051】
1パス分の印刷が終了した後、印刷制御装置15は、副走査駆動モータ32を制御してシャトルユニット4を次のパスの印刷位置まで前方向に移動させる。印刷制御装置15は、この1パス分の印刷とシャトルユニット4の移動とを交互に繰り返すことにより、塗布媒体Mに印刷画像を形成する。
【0052】
そして、1枚分の印刷処理が終了した時点において、シャトルユニット4および前処理ユニット6は、図4Dに示すように、再び初期位置に配置された状態となる。
【0053】
なお、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、乾燥装置を別の構成としたが、前処理ユニット6のように、インクジェット印刷装置1に乾燥ユニットを設け、乾燥ユニットで基材を走査することによって乾燥処理を行うようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、前処理ユニット6によってマイクロミストの表面処理液を塗布媒体Mに塗布するようにしたが、これに限らず、マイクロミストを発生する所定の塗布機を用いて手動で表面処理液を塗布媒体Mに塗布するようにしてもよい。
【0055】
次に、本発明の不燃木材の加飾物品の製造方法の具体的な実施例および比較例について説明する。下表1は、実施例1~実施例3および比較例1~比較例3の塗布媒体M、表面処理液の塗布方法、表面処理液の塗工量並びに画像品位の評価結果を示す表である。
【0056】
表1に示すように、実施例1~実施例3および比較例1~比較例3では、塗布媒体Mとして、表面に幅1cm、深さ5mmの溝加工がされた不燃木材を用いた。また、表面処理液は手動で塗布し、表面処理液の塗工量は、15.0g/mとした。
【0057】
また、加飾方法としては、表面処理液を不燃木材に塗布した後、室温で15分放置し、インクジェットヘッドとしてエスアイアイ・プリンテック社S508ヘッドを用いて、C、M、Y、K、LmおよびLcのインクを用いて540×540dpiの木目画像を印刷した。木目画像とは、木目を表現した画像である。画像品位の評価は目視によって行った。
【0058】
実施例1では、手動エアスプレーを用いて、マイクロミストの表面処理液を不燃木材に塗布した。手動エアスプレーとしては、2流体ノズルを有するP&G社製のファブリーズマイクロミスト(登録商標)を用いた。画像品位の評価結果は、表面処理液が均一に塗布できており、溝の有無にかかわらず、不燃木材の木目模様が均一に再現できた。
【0059】
また、実施例2では、電動エアスプレーを用いて、マイクロミストの表面処理液を不燃木材に塗布した。電動エアスプレーとしては、2流体ノズルを有するHonstek社製の電動スプレーガンを用いた。画像品位の評価結果は、表面処理液が均一に塗布できており、溝の有無にかかわらず、不燃木材の木目模様が均一に再現できた。
【0060】
また、実施例3では、超音波式スプレーを用いて、マイクロミストの表面処理液を不燃木材に塗布した。超音波式スプレーとしては、SNAILLIFE社製の超音波ネプライザ(シングルチャンバー)を用いた。画像品位の評価結果は、表面処理液が均一に塗布できており、溝の有無にかかわらず、不燃木材の木目模様が均一に再現できた。
【0061】
また、比較例1では、マイクロミストを吐出するスプレーではない、電動エアスプレー式の通常スプレーを用いて表面処理液を不燃木材に塗布した。通常スプレーとしては、2流体ノズルを有する日本ワーグナースプレーテック社製のWAGNER W550を用いた。画像品位の評価結果は、表面処理液が不燃木材ではじいており、均一に塗布できておらず、不燃木材全体で木目模様が均一に再現できなかった。
【0062】
また、比較例2では、スポンジクロスを用いて、接触式の塗布方法によって、表面処理液を不燃木材に塗布した。スポンジクロスとしては、材質がセルロースのアイオン社製のスポンジクロスを用いた。画像品位の評価結果は、不燃木材の溝がない部分は均一に再現できたが溝部においては表面処理液が均一に濡れていなかったため画像の再現性が悪かった。
【0063】
また、比較例3では、表面処理液を塗布せずに印刷工程を行った。画像品位の評価結果は、表面処理液が塗布されていないため、不燃木材全体で木目模様がにじんで再現できなかった。
【表1】
【0064】
次に、上記実施形態、実施例および比較例における表面処理液について、より詳細に説明する。
【0065】
表面処理液は、上述したように少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含むことが好ましい。また、上記色材定着成分は、カチオン性の水分散性樹脂であることが好ましく、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以上10μm以下の大粒子を含むことが好ましい。さらに、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm未満の小粒子を含むことがより好ましい。
【0066】
本実施形態の表面処理液は、特には、UV硬化型ではないインク(たとえば水性インク)を用いて印刷する前の表面処理液として用いることが好ましい。印刷前に本実施形態の表面処理液を予め用い、その後にインクジェットインクによる印刷画像を形成することにより、インクの濡れ広がりを制御し、これにより滲みにくく細線再現性が良好で、かつ発色性の良い印刷画像を形成することができる。
【0067】
カチオン性の水分散性樹脂粒子は、樹脂粒子の表面がプラスに帯電した、正電荷を帯びた樹脂粒子であり、水に溶解することなく粒子状に分散して、水中油(O/W)型のエマルションを形成できるものである。自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するカチオン性の官能基が粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にカチオン性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。
【0068】
カチオン性の官能基は、代表的には第1級、第2級又は第3級アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピラゾール基、及びベンゾピラゾール基等であり、カチオン性の分散剤は、1級、2級、3級又は4級アミノ基含有アクリルポリマー、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリビニルアルコール樹脂、及びカチオン性水溶性多分岐ポリエステルアミド樹脂等である。
【0069】
樹脂粒子の表面電荷量は、粒子電荷計で評価することができる。試料を中和するのに必要なアニオン量またはカチオン量を測定することで、表面電荷量を算出することができる。具体的には、表面電荷量が+300μeq/g以上であることが好ましい。粒子電荷計としては、日本ルフト株式会社製コロイド粒子電荷量計Model CAS等を用いることができる。
【0070】
水分散性樹脂としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。また、処理液の製造に際しては、水中油型の樹脂エマルションとして配合することができる。
【0071】
代表的には、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いても良い。後述するが
、これらの樹脂が複合された樹脂エマルションでも良い。上記のとおり、これらの樹脂にカチオン性の官能基を導入するか、又は、カチオン性分散剤等で表面処理して、プラスの表面電荷を与えることができる。
【0072】
樹脂粒子の粒径は、特に限定されず、複数種の異なる粒径の粒子を任意に組み合わせて用いることができる。ただし、不燃木材の表面に留まりやすいという観点から、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が1μm以上のサイズを持つ粒子を含むことが好ましい。また、樹脂粒子の平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、これにより不燃木材の木材としての特性を生かしつつ、不燃木材表面の凹部及び空隙にも浸透することができる。
【0073】
すなわち、不燃木材では、樹脂粒子のメジアン径(平均粒径)を1μm以上10μm以下とすることによって、不燃木材の上述した管の大きさに追随して、効率よく表面処理層を形成することができる。特に、木材では、針葉樹と広葉樹の分類によって管の大きさ(平均直径)が異なる。たとえば広葉樹の環孔材であるタモ材の平均直径は約260μm、散孔材であるメープル材は約60μmである。一方、針葉樹であるヒノキ材は平均直径が約10μmである。このように、木材は樹種によってその空隙の大きさが異なり、さらには天然物であるため基材の空隙の分布が全く同じ状態のものは存在しないのであるが、大粒子の平均粒径を上記とすることにより、木材のような空隙が不揃いな基材に対しても、基材の本来の機能(木材では吸湿性)を低下させることなく、表面処理層を形成することができる。
【0074】
さらに、表面処理液は、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が1μm未満の小粒子も併せて含むことが好ましい。これにより、上記の画像品位に加えて、インク層の耐水性もさらに向上させることができる。
【0075】
大粒子と小粒子を用いる場合の両者の比率は、小粒子が大粒子に対して少なすぎると定着性が不十分であり、多すぎると処理層が皮膜化し木材の吸湿性を妨げる恐れがあるため、重量比で大粒子1に対し小粒子が0.1~1.5程度であることが好ましい。なお、本明細書において「重量」と「質量」は同じ意味で用いられる。
【0076】
樹脂粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の粒径値(メジアン径)である。動的光散乱式粒子径分布測定装置としては、ナノ粒子解析装置nano Partica SZ-100(株式会社堀場製作所)等を用い、水分散性樹脂の濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、25℃で測定することができる。
【0077】
表面処理液中又は後述するインク中において、樹脂粒子は、独立した微粒子の状態で存在する場合と、独立した微粒子が集合した凝集体の状態で存在する場合とが考えられるが、動的光散乱法で測定されるメジアン径を「平均粒径」とする。
【0078】
なお、上記樹脂粒子の平均粒径は、表面処理液又はインクを調製する前の原料エマルション状態で測定することが、インクの場合であれば色材(顔料粒子)の影響を排除できることから好ましく、その測定値を本実施形態の平均粒径とすることができる。
【0079】
大粒子の平均粒径は、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。小粒子の平均粒径は、500nm以下であることがさらに好ましい。平均粒径の下限値は、特に限定はされないが、表面処理液の保存安定性の観点からは、5nm以上程度であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
【0080】
さらに、大粒子と小粒子は、両者を混合して平均粒径を測定した場合に、その粒度分布において二つのピークが存在する、すなわち各々が異なるピーク値を有するものであることが好ましい。
【0081】
また、大粒子と小粒子は、平均粒径値の相違に加え、その他の相違点を有していてもよい。例えば、大粒子は、最低造膜温度(MFT)が70℃以上であることが好ましく、一方、小粒子は、MFTが70℃未満以下であることが好ましい。このMFTとは、エマルションがフィルム化(成膜)するために必要な温度であり、JIS K6828-2に従って測定することができる。ここで、70℃においても成膜しない水分散性樹脂は、MFTが70℃以上の水分散性樹脂に含まれるものとする。
【0082】
より好ましくは、大粒子のMFTは100℃以上であり、小粒子のMFTは50℃以下であり、特に、小粒子は室温で成膜することが好ましいため、40℃以下であることが一層好ましい。
【0083】
また、大粒子のMFTと小粒子のMFTの差は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。
【0084】
大粒子と小粒子の樹脂の分子構造は、同一であってもよいが、互いに異なるものを用いてもよい。
【0085】
大粒子として、例えば、カルボキシ基、スルホ基等に代表されるアニオン性の官能基を有するポリマーと、アミノ基又はアミド基等に代表されるカチオン性の官能基を有するポリマーとが複合して得られるポリマーコンプレックスであって、コア部がアニオン性ポリマー、シェル部がカチオン性ポリマーである、コアシェル構造の複合有機粒子を用いることも好ましい。
【0086】
複合有機粒子のアニオン性ポリマーとしては、例えば繰り返し単位として(メタ)アクリル酸を含むポリマー、より具体的にはスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。スチレン、(メタ)アクリル酸以外の、これらと共重合可能なビニル化合物を含んでいてもよい。
【0087】
複合有機粒子のカチオン性ポリマー(塩基性ポリマー)としては、例えば、含窒素モノマーを含むポリマーであり、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルオキサゾリドン、N-ビニルイミダゾール等の窒素複素環化合物を繰り返し単位として含むホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。コポリマーを形成するコモノマーとしては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリルアミド等の一般的なビニル化合物を、1種または2種以上選択して使用できる。
【0088】
この場合のアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーの使用割合は、粒子表面の電荷をカチオン性とするために、重量比で、アニオン性ポリマー1に対し、カチオン性ポリマーが3~10であることが好ましい。
【0089】
このような複合有機粒子の市販品として、「PP-15」、「PP-17」(共に明成化学工業株式会社)を好ましく用いることができる。
【0090】
また、表面処理液中における水分散性樹脂の量(大粒子と小粒子を用いる場合には両者の合計固形分量)は、処理した際の基材表面におけるインク定着性の観点から2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。一方、処理液の粘度が高すぎる場合、均一な処理が困難になるため、樹脂量は50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
【0091】
表面処理液に含まれる水は、表面処理液の溶媒、すなわちビヒクルとして機能するものであり、水道水、イオン交換水、脱イオン水等が使用できる。水は揮発性の高い溶媒であり、基材に吐出された後、容易に蒸発するので、表面処理後の基材の空隙が塞がれるのを防止し、木材の吸湿性等の表面処理後の基材本来の特性の低下を防止する作用を奏する。また、水は、無害で安全性が高く、VOCのような問題が無いので、表面処理された基材を環境にやさしいものとすることができる。
【0092】
表面処理液中の水の含有量が多いほど、表面処理液の粘度が低く、取り扱いが容易になることから、水は、処理液全量の60重量%以上であることが好ましく、65重量%以上であることがより好ましい。
【0093】
水の含有量の上限値は、特に限定はされないが、処理液中に水分散性樹脂の大粒子と小粒子を含む一実施形態において、水の含有量は95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。別の一実施形態においては、水の含有量は85重量%~95重量%であることが好ましい。
【0094】
表面処理液の溶媒は、ほとんどが水で構成されることが好ましいが、必要に応じて、水以外に、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0095】
例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0096】
これらの水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。水溶性有機溶剤の含有量は、粘度調整と保湿効果の観点から、処理液中に30重量%以下(あるいは、溶媒中に50重量%以下)であることが好ましい。
【0097】
また、表面処理液は、その表面張力を低下させて不燃木材の表面に均一に塗布できるようにするために、また、粒径の小さい水分散性樹脂粒子(小粒子)を含む場合にはその凝集を抑制して液の保存安定性を高めるために、表面張力調整剤(界面活性剤)をさらに含むことが好ましい。
【0098】
界面活性剤は、親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)のものと非イオン性(ノニオン性)のものに大別されるが、本実施形態では、表面処理液の泡立ちの観点から、起泡しにくい非イオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。また、低分子系・高分子系(一般には分子量が約2000以上のものを指す。)のどちらでも良いが、高分子系界面活性剤を用いることが好ましい。HLB値については、5~20程度の界面活性剤であることが好ましい。
【0099】
非イオン系の界面活性剤としては、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型のもの、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型のもの、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型のもの等が挙げられる。
【0100】
本実施形態では、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0101】
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品として、アセチレングリコールであるサーフィノール104E、104H、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造のサーフィノール420、440、465、485等(エアープロダクツアンドケミカルズ社)、アセチレングリコールのオルフィンE-1004、E-1010、E-1020、PD-002W、PD-004、EXP.4001、EXP-4200、EXP-4123、EXP-4300等(日信化学工業株式会社)、アセチレングリコールのアセチレノールE00、E00P、アセチレングリコールのエチレンオキサイドを付加した構造のアセチレノールE40、E100等(川研ファインケミカル株式会社)が挙げられる。
【0102】
シリコーン系界面活性剤は、非常に高い表面張力低下能と接触角低下能を持つため、不燃木材の表面が親水性でなくてもその表面に表面処理液を速やかに拡散させることができる。その結果、不燃木材の表面に表面処理液の機能発現成分が均一に定着することができるため、印刷した際にインクが処理部分に均一に定着し、高発色で高品位の印刷画像を得ることができる。
【0103】
シリコーン系界面活性剤のなかでも、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤が好ましい。市販品では「シルフェイスSAGシリーズ」(日信化学工業株式会社)を好ましく使用できる。
【0104】
界面活性剤は、上記のシリコーン系界面活性剤等を、いずれか単独で用いてもよいし、互いに相溶性が良好な複数の界面活性剤を併用してもよい。
【0105】
界面活性剤を使用する場合の表面処理液中の含有量は、0.1重量%以上程度であることが好ましく、0.3重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることが一層好ましい、一方、界面活性剤量は、5重量%以下程度であることが好ましく、4重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが一層好ましい。
【0106】
表面処理液には、処理液の機能を阻害しない限り、上記の成分以外に、例えば、保湿剤、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等の公知の添加剤を任意に添加できる。これらの添加剤を複数種組み合わせて使用してもよい。
【0107】
表面処理液は、水、カチオン性の水分散性樹脂、及び表面張力調整剤、並びに任意に添加される添加剤があれば該添加剤を、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。
【0108】
また、表面処理液が、カチオン性の水分散性樹脂として大粒子と小粒子を含む場合、表面処理液の適用を、2段階に分けて行うこともできる。すなわち、例えば、大粒子または小粒子のどちらか一方を含む表面処理液と、残りの一方を含む表面処理液を準備し、両者をそれぞれ、不燃木材に塗布することもできる。大粒子と小粒子を分けて適用する場合、小粒子の塗布が先であると、不燃木材の空隙への浸透が進み、インクに対するバインダーとしての効果が薄れる可能性があるため、大粒子を先に塗布するほうが好ましい。なお、上述したように2種類の表面処理液を塗布する場合、表面処理液の量とは、2種類の表面処理液の量の合計値である。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。たとえば実施形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。
【0110】
本発明に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0111】
(付記1)
本発明の加飾物品の製造方法は、木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布工程と、表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施す印刷工程とを含み、表面処理液塗布工程において、不燃木材に対してマイクロミストの表面処理液を塗布する。
【0112】
(付記2)
付記1記載の加飾物品の製造方法において、マイクロミストの最大粒子径は、20μm以下とすることができる。
【0113】
(付記3)
付記1または付記2記載の加飾物品の製造方法において、マイクロミストの平均粒子径は、10μm以下とすることができる。
【0114】
(付記4)
付記1から付記3いずれかに記載の加飾物品の製造方法においては、表面処理液塗布工程において、不燃木材に塗布される表面処理液の量を7g/m以上とすることができる。
【0115】
(付記5)
付記1から付記4いずれかに記載の加飾物品の製造方法方においては、不燃木材に塗布される表面処理液の量を50g/m以下とすることができる。
【0116】
(付記6)
本発明の表面処理済物品の製造方法は、木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液をマイクロミストとして塗布する。
【0117】
(付記7)
本発明の加飾物品の製造装置は、木材に不燃処理を施した不燃木材に対して、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含む表面処理液を塗布する表面処理液塗布部と、表面処理液が塗布された不燃木材に対してインクジェット印刷を施す印刷部とを備え、表面処理液塗布部が、不燃木材に対してマイクロミストの表面処理液を塗布する。
【符号の説明】
【0118】
1 インクジェット印刷装置
2 シャトルベースユニット
3 フラットベッドユニット
3a 媒体載置面
4 シャトルユニット
6 前処理ユニット
15 印刷制御装置
31 架台部
32 副走査駆動モータ
41 筐体
42 主走査駆動ガイド
43 主走査駆動モータ
44 ヘッド昇降ガイド
45 ヘッド昇降モータ
46 ヘッドユニット
51 インクジェットヘッド
53 インク供給管
33A,33B 副走査駆動ガイド
M 塗布媒体
図1
図2
図3
図4