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特開2024-120272電子部品、および電子部品の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120272
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】電子部品、および電子部品の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 21/00 20060101AFI20240829BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20240829BHJP
   G01P 15/00 20060101ALI20240829BHJP
   G01P 15/04 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G01P21/00
G01P15/125 Z
G01P15/00 C
G01P15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026946
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀明
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ウィルフリード ヘラー
(57)【要約】
【課題】電子部品に対して衝撃が加えられた工程を特定可能とする。
【解決手段】
Z軸方向を含む方向に錘10が変位したときに、第2部材42が変形した後に第1部材41と第2部材42とが接触する接触状態となる。この接触状態は維持される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期位置から変位する可動部材と、
変位した前記可動部材を前記初期位置に戻す方向に、前記可動部材に付勢力を加える付勢部材と、
前記可動部材に設けられた可動電極と、
前記可動電極の所定方向側に設けられた固定電極と、
前記可動電極と前記固定電極との間の静電容量を検出する検出回路と、
前記可動部材に設けられた第1部材と、
前記第1部材の前記所定方向側に設けられた第2部材と、を備え、
前記所定方向を含む方向に前記可動部材が変位したときに、前記第1部材と前記第2部材とのうち少なくとも一方が変形した後に前記第1部材と前記第2部材とが接触する接触状態となり、
前記接触状態は維持される、電子部品。
【請求項2】
前記第1部材は、第1面を有し、
前記第2部材は、前記接触状態であるときに、前記第1面と接触する第2面を有し、
前記接触状態は、前記付勢力により維持される、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1面および前記第2面は平面である、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1部材および前記第2部材のいずれかの一方の部材は、前記所定方向に沿って細くなる第1テーパ部を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1部材および前記第2部材のいずれかの他方の部材は、
前記一方の部材が貫通する孔部と、
前記第1テーパ部と接し、かつ前記一方の部材が前記孔部を貫通するように案内する第2テーパ部とを有する、請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1部材および前記第2部材のいずれかの一方の部材は、
前記第1部材および前記第2部材のいずれかの他方の部材が貫通する孔部と、
前記一方の部材と接し、かつ前記一方の部材が前記孔部を貫通するように案内する第2テーパ部とを有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記一方の部材は、前記第1テーパ部の頂部を有する、請求項4に記載の電子部品。
【請求項8】
前記電子部品は、前記所定方向に沿って並ぶ複数の前記第1部材を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記電子部品は、前記所定方向に沿って並ぶ複数の前記第2部材を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項10】
前記検出回路は、所定値の前記静電容量を検出したときに、前記接触状態を検出する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項11】
前記電子部品は、前記第1部材と前記第2部材とが前記接触状態であるときに、該接触状態であることを通知するための信号を出力する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項12】
前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方は、弾力性を有する部材である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項13】
前記電子部品は、前記検出回路が検出した静電容量に基づいて、前記電子部品の加速度を検出する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項14】
電子部品の検査方法であって、
前記検査方法は、
前記電子部品を準備することを備え、
前記電子部品は、
初期位置から変位する可動部材と、
変位した前記可動部材を前記初期位置に戻す方向に、前記可動部材に付勢力を加える付勢部材と、
前記可動部材に設けられた可動電極と、
前記可動電極の所定方向側に設けられた固定電極と、
前記可動部材に設けられた第1部材と、
前記第1部材の前記所定方向側に設けられた第2部材と、を有し、
前記所定方向を含む方向に前記可動部材が変位したときに、前記第1部材と前記第2部材とのうち少なくとも一方が変形した後に前記第1部材と前記第2部材とが接触する接触状態となり、
前記接触状態は維持され、
前記検査方法は、さらに、
前記可動電極と前記固定電極との間の静電容量を検出することと、
前記静電容量が所定値である場合に、前記電子部品に衝撃力が加えられたと判定することとを備える、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品、および電子部品の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2019-049434号公報(特許文献1)には、静電容量型の加速度センサが開示されている。この加速度センサは、錘と、可動電極と、固定電極とを備える。錘は、加速度センサに加えられる加速度に応じて変位する。可動電極は、錘に設置されている。錘の変位に応じて、可動電極も変位する。そして、加速度センサは、可動電極と、固定電極との間の静電容量に基づいて加速度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-049434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下では、製造途中の加速度センサ、および完成した加速度センサはまとめて「電子部品」とも称される。電子部品の製造工程は、該電子部品に対して大きな衝撃が加えられ得る工程を含む。たとえば、電子部品の製造者などは、電子部品に対して大きな衝撃が加えられた工程を特定したい場合がある。従来の電子部品においては、電子部品の製造者などは、電子部品に対して大きな衝撃が加えられた工程を特定することができなかった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電子部品に対して衝撃が加えられた工程を特定可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電子部品は、可動部材と、付勢部材と、可動電極と、固定電極と、検出回路と、第1部材と、第2部材と、を備える。可動部材は、初期位置から変位する。付勢部材は、変位した可動部材を初期位置に戻す方向に、可動部材に付勢力を加える。可動電極は、可動部材に設けられている。固定電極は、可動電極の所定方向側に設けられている。検出回路は、可動電極と固定電極との間の静電容量を検出する。第1部材は、可動部材に設けられている。第2部材は、第1部材の所定方向側に設けられている。所定方向を含む方向に可動部材が変位したときに、第1部材と第2部材とのうち少なくとも一方が変形した後に第1部材と第2部材とが接触する接触状態となる。接触状態は維持される。
【0007】
本開示の電子部品の検査方法は、電子部品を準備することを備える。電子部品は、可動部材と、付勢部材と、可動電極と、固定電極と、検出回路と、第1部材と、第2部材と、を備える。可動部材は、初期位置から変位する。付勢部材は、変位した可動部材を初期位置に戻す方向に、可動部材に付勢力を加える。可動電極は、可動部材に設けられている。固定電極は、可動電極の所定方向側に設けられている。検出回路は、可動電極と固定電極との間の静電容量を検出する。第1部材は、可動部材に設けられている。第2部材は、第1部材の所定方向側に設けられている。所定方向を含む方向に可動部材が変位したときに、第1部材と第2部材とのうち少なくとも一方が変形した後に第1部材と第2部材とが接触する接触状態となる。接触状態は維持される。検査方法は、可動電極と固定電極との間の静電容量を検出することを備える。また、検査方法は、静電容量が所定値である場合に、電子部品に衝撃力が加えられたと判定することを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電子部品に対して衝撃が加えられた工程を特定可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、MEMSセンサのブロック図である。
図2図2は、MEMSの構成例を説明するための図である。
図3図3は、初期状態を示す図である。
図4図4は、当接状態を示す図である。
図5図5は、変形状態を示す図である。
図6図6は、面接触状態を示す図である。
図7図7は、面接触状態であるときの可動電極および固定電極を示す図である。
図8図8は、シンギュレーション工程の一例を示す図である。
図9図9は、搬送工程の一例を示す図である。
図10図10は、検査方法のフローチャートである。
図11図11は、衝撃工程を経ていない複数の電子部品の正規分布を示す図である。
図12図12は、衝撃工程を経た複数の電子部品の正規分布を示す図である。
図13図13は、第2実施形態の維持機構の一例を示す図である。
図14図14は、第3実施形態の維持機構の一例を示す図である。
図15図15は、変形例の第1部材を示す図である。
図16図16は、変形例の第1部材を示す図である。
図17図17は、変形例の第2部材を示す図である。
図18図18は、変形例の第2部材を示す図である。
図19図19は、変形例の初期状態を示す図である。
図20図20は、変形例の変形状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
<第1実施形態>
[MEMSセンサの構成]
図1は、電子部品の一例であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサ300のブロック図である。本実施形態においては、電子部品は、MEMSにより構成される例が説明される。また、MEMSセンサ300は、典型的には、加速度センサとして用いられる。MEMSセンサ300は、MEMS100と、検出回路200とを備える。
【0012】
MEMSセンサ300に対して加えられた加速度に応じて、後述の静電容量が変化する。検出回路200は、該静電容量を検出する。そして、検出回路200は、該静電容量に基づいて、加速度を検出し、該加速度を示す信号を処理装置250に出力する。処理装置250は、該加速度に応じた処理を実行する。加速度に応じた処理とは、たとえば、該加速度をディスプレイに表示する処理を含む。なお、MEMS100、MEMSセンサ300、および後述のセンサ群300Sが、本開示の「電子部品」に対応する。
【0013】
[MEMSの構成]
図2は、MEMS100の構成例を説明するための図である。なお、本開示のMEMS100は、図2に示す構成に限られず、図2と同様の構成が採用されてもよい。MEMS100は、錘10と、付勢部材12と、付勢部材14と、可動電極31と、可動電極32と、固定電極40と、維持機構2と、維持機構4とを備える。錘10は、本開示の「可動電極」に対応する。付勢部材12は、たとえば、弾性体(バネ)である。
【0014】
本開示のMEMSセンサ300には、1方向である所定方向の加速度を検出する構成が採用される。当該所定方向は、図2では、Z軸方向(Z1・Z2方向)である。なお、Z軸方向に直交する方向をX軸方向(X1・X2方向)とする。なお、Z1方向およびZ2方向は互いに真逆の方向である。また、X1方向およびX2方向は互いに真逆の方向である。また、XZ平面に垂直な軸は、Y軸とも称される。
【0015】
MEMSセンサ300に対して加速度が加えられていない状態では、錘10は初期位置に位置する。なお、図2では、錘10が初期位置に位置している例が示されている。錘10が初期位置に位置している状態は、「初期状態」とも称される。また、MEMSセンサ300に対して加えられた加速度に応じて、錘10は、初期位置から変位する。本実施の形態においては、錘10は、Z軸方向(Z1・Z2方向)に変位する。
【0016】
付勢部材12と、付勢部材14とは、変位した錘10を初期位置に戻す方向に、錘10に付勢力を加える。MEMS100は、2本の付勢部材12を有する。2本の付勢部材12の一端12Aは、固定部材(図示せず)に固定されている。2本の付勢部材12の他端12Bは錘10に接続されている。2本の付勢部材14の一端14Aは、固定部材(図示せず)に固定されている。2本の付勢部材14の他端14Bは錘10に接続されている。
【0017】
したがって、錘10がZ1方向に変位した場合には、付勢部材12および付勢部材14は、該錘10に対して初期位置に戻る方向であるZ2方向に付勢力を加える。また、錘10がZ2方向に変位した場合には、付勢部材12および付勢部材14は、該錘10に対して初期位置に戻る方向であるZ1方向に付勢力を加える。
【0018】
可動電極31および可動電極32は、錘10に固定されている。したがって、錘10のZ軸方向の変位に応じて、可動電極31および可動電極32もZ軸方向に変位する。図2の例では、可動電極31および可動電極32は、錘10のX軸方向側の両端の各々に設置されている。
【0019】
固定電極40は、可動電極31および可動電極32の所定方向(Z軸方向)側に設けられている。固定電極40の一端は、固定部材(図示せず)に固定されている。図2の例では、固定電極40は、錘10のX軸方向側の両端に設置されている。また、固定電極40は、可動電極31および可動電極32の間に位置するように設置される。このように、固定電極40と、該固定電極40を挟んで設置される可動電極31および可動電極32とにより、1組の容量素子が構成される。検出回路200(図1参照)は、該容量素子の静電容量を検出する。つまり、検出回路200は、可動電極31および固定電極40の間の静電容量C1と、可動電極32および固定電極40の間の静電容量C2とを検出する。一般的に、静電容量Cは、以下の式(1)により算出される。
【0020】
C=ε・S/L (1)
ここで、εは、容量素子の誘電体の誘電率である。また、Sは、構成される容量素子の電極板の面積Sである。Lは、固定電極40と、可動電極(可動電極31および可動電極32)の距離である。本実施の形態においては、εおよびSは固定値であるとする。可動電極31および可動電極32は、Z軸方向に変位することから、Lは変動値である。したがって、検出回路200が検出する静電容量Cは、可動電極31および可動電極32(錘10)の位置に応じた値となる。
【0021】
検出回路200は、以下の式(2)により差分値Aを算出する。
【0022】
A=C1-C2 (2)
さらに、検出回路200は、X軸方向の一端側(図3のX1軸方向側)の容量素子についての差分値A1と、X軸方向の他端側(図3のX2軸方向側)の容量素子についての差分値A2とに基づく値を算出する。この値は、たとえば、差分値A1と差分値A2との平均値Aavgである。検出回路200は、平均値Aavgを検出する。検出回路200は、さらに該平均値Aavgに応じた値を、MEMSセンサ300に加えられた加速度として、処理装置250(図1参照)に出力する。本開示では、平均値Aavgが、「静電容量」とも称される場合がある。
【0023】
また、初期状態においては、図3に示すように、可動電極31および固定電極40の距離と、可動電極32および固定電極40の距離とは等しい(全ての距離がL0である)。したがって、初期状態においては静電容量C1と、静電容量C2とは等しくなる。よって、初期状態であるときの平均値Aavgはゼロとなり、検出される加速度もゼロとなる。
【0024】
さらに、本実施の形態においては、MEMS100は、維持機構2および維持機構4を備える。維持機構2および維持機構4は、以下に示すように、MEMSセンサ300に対して衝撃力が加えられたことを検出するための機構である。維持機構2は、Z1軸方向の衝撃力がMEMSセンサ300に対して加えられたことを検出するための機構である。維持機構4は、Z2軸方向の衝撃力がMEMSセンサ300に対して加えられたことを検出するための機構である。
【0025】
[維持機構]
図3は、維持機構4を説明するための図である。なお、維持機構2も図3と同様の構成である。維持機構4は、第1部材41と、第2部材42とを有する。なお、図3は、第1部材41および第2部材42のXZ平面における断面を示す図である。また、図3は、上記の初期状態であるときの第1部材41および第2部材42を示す図である。第1部材41は、「オス部材」とも称され、第2部材42は、「メス部材」とも称される。また、後述のように、第1部材41は、第2部材42に係合(engage)されることから、第1部材41は、「被係合部材」とも称され、第2部材42は、「係合部材」とも称される。
【0026】
また、本実施の形態においては、第2部材42は、変形可能な素材で構成される。換言すれば、第2部材42は、弾力性を有する素材から構成される。弾力性を有する素材は、たとえば、シリコンなどである。
【0027】
図3の例では、第1部材41は、円錐形状を有する。なお、第1部材41は、他の形状であってもよく、たとえば、多角錐形状(たとえば、四角錐形状)であってもよい。また、第1部材41は、棒部412により錘10に固定されている。第1部材41は、第1テーパ部41Aと、第1面41Bと、頂部41Cを有する。第1テーパ部41Aは、第1部材41の側面に相当する。第1テーパ部41Aは、所定方向(Z軸方向)に沿って、第1部材41の径が小さくなるように形成されている。第1テーパ部41Aの先端は、頂部41Cとなっている。頂部41Cは、第1部材41の頂点に相当する。第1面41Bは、平面形状であり、第1部材41の底面に相当する。また、第1面41Bは、第1部材41の、錘10の初期位置側に配置される。
【0028】
第2部材42は、第1部材41の所定方向(Z軸方向)側に、対向して設けられている。第2部材42は、略柱形状とされる。本実施形態においては、第2部材42は、略円柱形状とされる。第2部材42には、Y2軸方向に枠部材422が接続されている。枠部材422により係合室424が形成される。
【0029】
第2部材42は、第2テーパ部42Aと、第2面42Bと、孔部42Cと、頂部42Dとを有する。孔部42Cは、XY平面における第2部材42の中央部に貫通して形成される。第2テーパ部42Aは、孔部42Cの径がZ2方向に沿って小さくなるように形成される。また、第2部材42の係合室424側の面が、第2面42Bとされる。また、頂部42Dは、第2部材42の縁部に相当する。本実施形態においては、第1面41Bおよび第2面42Bはともに平面である。なお、第2部材42と、枠部材422とがまとめて「第2部材」とも称されてもよい。
【0030】
図4は、Z2軸方向を含む方向に、MEMSセンサ300に対して強い衝撃力が加えられた場合の第1部材41および第2部材42を示す図である。この場合には、第1部材41の第1テーパ部41Aと、第2部材42の第2テーパ部42Aとが当接する。該当接している状態は、「当接状態」とも称される。
【0031】
図5は、図4の当接状態において、MEMSセンサ300に対する衝撃力が継続して加えられた場合を示す図である。上述のように、第2部材42および枠部材422は弾力性を有する。したがって、第2部材は変形しつつ、第1部材41は、Z2軸方向に変位する。そして、第1部材41は、孔部42Cを貫通する。図5の例では、第2部材42の変形は、第2部材がX軸方向側に広がる変形である。
【0032】
図6は、面接触状態の一例を示す図である。面接触状態は、第1部材41の孔部42Cへの貫通が終了し、かつMEMSセンサ300への衝撃力が加わることが終了した場合に、第1部材41と第2部材42とがなす状態である。本実施形態の面接触状態は、第1部材41の第1面41Bと、第2部材42の第2面42Bとが接触している状態である。典型的には、面接触状態は、第1部材41が第2部材42に係合されている状態である。
【0033】
第1部材41孔部42Cへの貫通が終了すると、第2部材42の変形は解除される。つまり、第2部材42は、変形前の状態(図3の状態)となる。また、上述のように、付勢部材12および付勢部材14は、錘10を初期位置に戻す方向に、錘10に付勢力を加える。したがって、第1部材41の第1面41Bが、第2部材42の第2面42Bに圧接される。このように、本実施形態の面接触状態は、第1部材41の第1面41Bと、第2部材42の第2面42Bとが圧接している状態である。また、面接触状態は、付勢部材12および付勢部材14の付勢力により維持される。また、一定値以上の衝撃力が、MEMSセンサ300に加えられたときに、MEMS100の状態は面接触状態となる。
【0034】
図7は、面接触状態であるときの錘10の一端側(図3の右側)の可動電極31、可動電極32、および固定電極40を示す図である。上述のように、面接触状態が維持されることから、可動電極31および固定電極40の距離と、可動電極32および固定電極40の距離が、一定距離L1に維持される。したがって、面接触状態であるときの平均値Aavgも特定値Axとなる。
【0035】
ここで、特定値Axは、MEMSセンサ300が加速度を検出しているときには、検出されない値であり、面接触状態となったときにのみ検出される値である。換言すれば、特定値Axは、MEMSセンサ300に対して、強い衝撃力が加えられたことを示す値である。
【0036】
平均値Aavgが特定値Axである場合には、MEMSセンサ300により処理装置250が静電容量として特定値Axを表示する。そして、ユーザが、表示された特定値Axを視認することにより、ユーザは、一定値以上の衝撃力が、MEMSセンサ300に加えられたことを認識できる。なお、MEMSセンサ300に対して加えられた衝撃力が一定値未満である場合には、MEMS100の状態は、接触状態とはならない。
【0037】
[衝撃力が加えられ得る工程]
MEMS100が製造された後の1以上の後工程において、MEMS100、または該MEMS100を含むMEMSセンサ300に対して、強い衝撃力が加えられる場合がある。MEMS100に対して強い衝撃力が加えられると、MEMSセンサ300内の部品の損傷し、該損傷した状態でMEMSセンサ300が出荷されてしまうことなどが懸念される。そこで、MEMSセンサ300の製造工程のうち、衝撃力が加えられた工程(以下、「衝撃工程」とも称される。)が、MEMSセンサ300の設計者または製造者などにより特定されることが好ましい。
【0038】
本実施形態においては、上述の1以上の後工程の各々の工程が終了した後において、たとえば、任意の工程の後に、製造者が、検出回路200が検出する平均値Aavg(静電容量)が、上記特定値Axであるか否かを判断する。そして、平均値Aavgが特定値Axである場合には、製造者は、当該任意の工程が、衝撃工程であることを特定する。
【0039】
次に、設計者または製造者が衝撃工程を特定できることが好ましい理由を説明する。たとえば、設計者が衝撃工程を特定できると、MEMS300の強化などのために、MEMS300の設計値を変更することなどができる。また、製造者が衝撃工程を特定できると、たとえば、当該衝撃工程の仕様などを変更することができる。
【0040】
また、後述のシンギュレーション工程と、搬送工程とが衝撃工程になり得る。図8は、シンギュレーション工程の一例を示す図である。また、本実施形態においては、図2に示されるMEMSセンサ300は、連続的にパターン化してセンサ群300Sとして製造される。そして、シンギュレーション工程において、切断装置320によりセンサ群300Sが切断されることにより、1つのMEMSセンサ300が製造される。シンギュレーション工程においては、切断装置320による衝撃力が、切断前のMEMSセンサ300(つまり、センサ群300Sの一部)および切断後のMEMSセンサ300に対して、加えられ得る。
【0041】
図9は、搬送工程の一例を示す図である。図9の例の搬送工程においては、MEMSセンサ300がコレット400に吸着されて、第1位置から第2位置に搬送される。図9の例では、搬送工程においては、第1位置でMEMSセンサ300がコレット400に吸着される。搬送工程では、該吸着時にMEMSセンサ300に対して衝撃力が加えられ得る。また、搬送工程では、コレット400の吸着が解除されて、第2位置にMEMSセンサ300が配置される。搬送工程では、該配置時に配置面からMEMSセンサ300に対して衝撃力が加えられ得る。
【0042】
たとえば、衝撃工程として、図9の搬送工程が特定されると、製造者は、MEMSセンサ300への衝撃力を低減させるために、コレット400の吸着態様(たとえば、吸着力など)を変更することができる。また、設計者は、搬送工程で衝撃力がMEMSセンサ300に対して加えられたとしても、該衝撃力がMEMS100に悪影響を及ぼさないように、MEMSセンサ300の応力集中箇所の設計値などを変更できる。具体的には、設計者は、MEMS100またはMEMSセンサ300の補強またはデザインの修正を行うことができる。
【0043】
[フローチャート]
図10は、本実施の形態の検査方法のフローチャートの一例である。このフローチャートは、上記の1以上の後工程のそれぞれにおいて、製造者または検査装置などにより実行される。当該検査方法は、電子部品(MEMSセンサ300)に対して衝撃力が加えられたか否かを検査する方法である。
【0044】
ステップS2において、検査対象の電子部品が準備される。次に、ステップS4において、検出回路200が静電容量(上記の平均値Aavg)を検出する。次に、ステップS6において、静電容量が特定値Axであるか否かが判断される。静電容量が特定値Axではないと判断された場合には(ステップS6でNO)、ステップS8において、電子部品には、衝撃力が加えられていないと判断される。また、静電容量が特定値Axであると判断された場合には(ステップS6でYES)、ステップS10において、電子部品には、衝撃力が加えられたと判断される。ステップS8およびステップS10の処理が終了すると、図10の検査方法は終了する。たとえば、複数個の電子部品に対してこの検査方が実行されて、静電容量が特定値Axとなる電子部品の個数が所定値以上であれば、該検査方法が実行された工程が衝撃工程であると特定される。
【0045】
[正規分布]
次に、本実施の形態の電子部品の検査方法に関する正規分布を説明する。製造者または検査装置などは、図10の方法ではなく、後述の正規分布を用いて衝撃工程を特定するようにしてもよい。図11は、上述の衝撃工程を経ていない複数の電子部品の正規分布を示す図である。図11および後述の図12においては、横軸は、検査対象の電子部品の個数を示し、縦軸は、各電子部品の検出回路200により検出された静電容量を示す。
【0046】
図11に示すように、複数の電子部品の静電容量の中央値(平均値、最頻値)はCxとなる。図12は、上述の衝撃工程を経た複数の電子部品の正規分布を示す図である。図12の例では、複数の電子部品の静電容量の中央値がCyとなる。このCyは、上述の特定値Axに応じた値となる。
【0047】
たとえば、検査装置が、任意の後工程の終了後に、検査対象の複数の電子部品のそれぞれにおいて、図10のステップS2およびステップS4の処理を実行する。そして、該複数の電子部品の静電容量の平均値がCyとなった場合には、検査装置が当該任意の後工程を衝撃工程であると判断するようにしてもよい。
【0048】
[作用・効果]
次に、本実施形態の電子部品の作用および効果を説明する。本実施形態のおいては、一定値以上の衝撃力(大きな衝撃力)がMEMSセンサ300に加えられたときに、所定方向(図3のZ軸方向)を含む方向に錘10が変位する場合がある。この場合には、図5に示すように、第2部材42が変形した後に第1部材41と第2部材42とが接触する面接触状態となる(図6参照)。そして、該面接触状態は維持される。
【0049】
このように、面接触状態が維持されることから、可動電極31,32と固定電極40との間の静電容量は所定値となる。本実施形態においては、図7で説明したように、平均値Aavgが特定値Axとなる。したがって、第2部材42を変形させる衝撃力がMEMS100に加えられたときに、検出回路200が検出する静電容量は上記の特定値Axとなる。よって、該静電容量を視認した製造者などは、上述の1以上の後工程のうち衝撃力が加えられた工程を特定できる。
【0050】
なお、図8および図9の例においては、MEMSセンサ300に対して衝撃力が加えられ得る構成が示された。しかしながら、MEMS100が完成した後の工程において、該MEMS100に対して衝撃力の有無が検査されるようにしてもよい。この場合には、MEMS100は、検出回路200には接続されていない。したがって、該MEMS100が検出回路200に接続された後、製造者などは、静電容量を視認することにより、衝撃力の有無を検査する。
【0051】
また、変形例として、MEMSセンサ300は、該MEMSセンサ300が検出した加速度を、処理装置250に表示するようにしてもよい。そして、MEMSセンサ300は、静電容量が上記の特定値である場合には、特定加速度を処理装置250に表示するようにしてもよい。このような構成であれば、該特定加速度を視認した製造者などは、上述の1以上の後工程のうち衝撃力が加えられた工程を特定できる。
【0052】
また、図6に示すように、面接触状態は、第1部材41が第2部材42に係合する状態である。したがって、電子部品は、面接触状態を安定的に維持させることができる。
【0053】
また、第1部材41は、所定方向(Z軸方向)に沿って細くなる第1テーパ部41Aを有する。したがって、第1部材41が第2部材42に係合し易くなる。よって、電子部品は、衝撃力の方向が所定方向と若干異なる場合などであっても、面接触状態を維持できる。
【0054】
また、第2部材42は、孔部42Cと、第2テーパ部42Aとを有する。したがって、第1部材41が第2部材42に係合し易くなる。よって、電子部品は、衝撃力の方向が所定方向と若干異なる場合などであっても、面接触状態を維持できる。
【0055】
また、図3などに示すように、第1部材41は、頂部41Cを有する。したがって、第1テーパ部41Aのテーパ面の面積を大きくできる。よって、電子部品は、第1部材41を精度良く、第2部材42に係合させるように案内できる。
【0056】
また、図6などに示すように、第1部材41は、第1面41Bを有する。第2部材42は、第2面42Bを有する。そして、第1面41Bと第2面42Bとが接触することにより、上記面接触状態なり、この面接触状態は、付勢部材12,14の付勢力(初期位置に戻る方向への力)により維持される。したがって、電子部品は、安定的に、面接触状態を維持できる。
【0057】
また、第1面41Bおよび第2面42Bは共に平面である。したがって、電子部品は、安定的に、面接触状態を維持できる。
【0058】
また、第2部材42は、頂部42Dを有する。したがって、第2テーパ部42Aのテーパ面の面積を大きくできる。よって、電子部品は、第1部材41を精度良く、第2部材42に係合させるように案内できる。
【0059】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、維持機構4が備える第1部材41の数は1つである構成が説明された。第2実施形態においては、維持機構が備える第1部材の数はN(Nは2以上の整数)個である例が説明される。図13は、第2実施形態の維持機構4Aの一例を示す図である。
【0060】
図13の例では、維持機構4Aが、3つの第1部材61,62,63を備える例が開示されている。3つの第1部材は、所定方向(Z軸方向)に沿って配置されている。第1部材61は、「任意の第1部材」と称され、第1部材62および第1部材63は、「他の第1部材」とも称される。「他の第1部材」は、「任意1の第1部材」よりも、付勢部材12,14の付勢力の方向(初期状態に戻る方向)側に位置している。なお、図13の第2部材42の構成は、図3の第2部材42の構成と同様である。
【0061】
第1部材61は、第1テーパ部61Aと、第1面61Bとを有する。第1部材62は、第1テーパ部62Aと、第1面62Bとを有する。第1部材63は、第1テーパ部63Aと、第1面63Bとを有する。
【0062】
図13の例においては、第1部材61が、第2部材42に係合されており、第1部材62および第1部材63は、第2部材42に係合されていない状態が示されている。
【0063】
第2実施形態の初期状態は、第1部材61、第1部材62および第1部材63のいずれも、第2部材42に係合されていない状態となる。そして、電子部品が初期状態である場合において、Z軸方向を含む方向に、第1所定値S1以上第2所定値S2未満の第1衝撃力F1が、該電子部品に加えられたときに、当接状態および変形状態を経て、以下の第1面接触状態となる。ただし、S2>S1である。
【0064】
第1面接触状態は、第1部材61の第1面61Bと、第2部材42の第2面42Bとが接触する面接触状態である(つまり、図13の状態となる)。換言すると、第1面接触状態は、第1部材61のみが第2部材42に係合し、第1部材62および第1部材63が第2部材42に係合しない状態となる。また、第1面接触状態であるときにおいて、可動電極32と、固定電極40との距離(図7参照)は、L1となる。したがって、検出回路200が検出する静電容量(平均値Aavg)は、距離L1に対応したAs1となる。
【0065】
また、電子部品が初期状態である場合において、Z軸方向を含む方向に、第2所定値S2以上第3所定値S3未満の第2衝撃力F2が、該電子部品に加えられたときに、当接状態および変形状態を経て、以下の第2面接触状態となる。ただし、S3>S2である。つまり、F2>F1となる。
【0066】
第2面接触状態は、第1部材62の第1面62Bと、第2部材42の第2面42Bとが接触する面接触状態である。換言すると、第2面接触状態は、第1部材61および第1部材62が第2部材42に係合し、第1部材63が第2部材42に係合しない状態となる。また、第2面接触状態であるときにおいて、可動電極32と、固定電極40との距離は、L2(L2>L1)となる。したがって、検出回路200が検出する静電容量(平均値Aavg)は、距離L2に対応したAs2となる。
【0067】
また、電子部品が初期状態である場合において、Z軸方向を含む方向に、第3所定値S3以上の第3衝撃力F3が、該電子部品に加えられたときに、当接状態および変形状態を経て、以下の第3面接触状態となる。第3面接触状態は、第1部材63の第1面63Bと、第2部材42の第2面42Bとが接触する面接触状態である。換言すると、第3面接触状態は、第1部材61、第1部材62、および第1部材63のすべてが第2部材42に係合する状態となる。また、第3面接触状態であるときにおいて、可動電極32と、固定電極40との距離は、L3(L3>L2)となる。したがって、検出回路200が検出する静電容量(平均値Aavg)は、距離L3に対応したAs3となる。
【0068】
以上のように、電子部品が初期状態である場合において、Z軸方向を含む方向に、第1衝撃力F1が電子部品に加えられたときに検出回路200が検出する静電容量はAs1となる。また、電子部品が初期状態である場合において、Z軸方向を含む方向に、第1衝撃力F1よりも強い第2衝撃力F2が電子部品に加えられたときに検出回路200が検出する静電容量はAs2となる。また、電子部品が初期状態である場合において、Z軸方向を含む方向に、第2衝撃力F2よりも強い第3衝撃力F3が電子部品に加えられたときに検出回路200が検出する静電容量はAs3となる。
【0069】
したがって、電子部品の、製造者、設計者、または検査装置は、検出回路200が検出している静電容量の値を特定することにより、電子部品に衝撃力が加えられたことのみならず、当該衝撃力の程度も把握することができる。したがって、たとえば、設計者は、衝撃力が加えられる後工程のみならず、該衝撃力の程度も把握することにより、より細やかに、MEMSセンサ300の設計値を変更することなどができる。具体的には、設計者は、把握された程度の衝撃力が加えられたとしても耐えられるMEMSセンサ300の設計を行うことなどが可能となる。
【0070】
<第3実施形態>
第2実施形態の維持機構4Aにおいては、第1部材41の数はN個であり第2部材42の数は1つである構成が説明された。第3実施形態においては、第1部材41の数は1個であり第2部材42の数はM(Mは2以上の整数)個である構成が説明される。図14は、第3実施形態の維持機構4Bの一例を示す図である。
【0071】
図14の例では、維持機構4Bが、3つの第2部材71,72,73を備える例が開示されている。3つの第2部材は、所定方向(Z軸方向)に沿って配置されている。第2部材71は、「任意の第2部材」と称され、第2部材72および第2部材73は、「他の第2部材」とも称される。「任意の第2部材」は、「他の第2部材」よりも、付勢部材12,14の付勢力の方向側(初期状態に戻る方向側)に位置している。なお、図14の第1部材41の構成は、図3の第1部材41の構成と同様である。
【0072】
第2部材71は、第2テーパ部71Aと、第2面71Bとを有する。第2部材72は、第2テーパ部72Aと、第2面72Bとを有する。第2部材73は、第2テーパ部73Aと、第2面73Bとを有する。
【0073】
第2実施形態の初期状態は、第2部材71、第2部材72および第2部材73のいずれも、第1部材41に係合されていない状態となる(つまり、図14の状態である)。そして、電子部品が初期状態である場合において、Z軸方向を含む方向に、上記第1衝撃力F1が、該電子部品に加えられたときに、以下の第1面接触状態となる。第1面接触状態は、第1部材41の第1面41Bと、第2部材71の第2面71Bとが接触する面接触状態である(つまり、図14の状態となる)。換言すると、第1面接触状態は、第1部材41は、第2部材71に係合し、第2部材72および第2部材73と係合しない状態となる。また、第1面接触状態であるときにおいて、可動電極32と、固定電極40との距離(図7参照)は、L1となる。したがって、検出回路200が検出する静電容量(平均値Aavg)は、距離L1に対応したAs1となる。
【0074】
また、電子部品が初期状態である場合において、Z軸方向を含む方向に、上記第2衝撃力F2が、該電子部品に加えられたときに、以下の第2面接触状態となる。第2面接触状態は、第1部材41の第1面41Bと、第2部材72の第2面72Bとが接触する面接触状態である。換言すると、第2面接触状態は、第1部材41が、第2部材72に係合し、第2部材73に係合しない状態となる。また、第2面接触状態であるときにおいて、可動電極32と、固定電極40との距離は、L2(L2>L1)となる。したがって、検出回路200が検出する静電容量(平均値Aavg)は、距離L2に対応したAs2となる。
【0075】
また、電子部品が初期状態である場合において、Z軸方向を含む方向に、上記第3衝撃力F3が、該電子部品に加えられたときに、以下の第3面接触状態となる。第3面接触状態は、第1部材41の第1面41Bと、第2部材73の第2面73Bとが接触する面接触状態である。換言すると、第3面接触状態は、第2部材73に係合する状態となる。また、第3面接触状態であるときにおいて、可動電極32と、固定電極40との距離は、L3(L3>L2)となる。したがって、検出回路200が検出する静電容量(平均値Aavg)は、距離L3に対応したAs3となる。
【0076】
第3実施形態においては、第2実施形態と同様に、電子部品の、製造者、設計者、または検査装置は、検出回路200が検出している静電容量の値を特定することにより、電子部品に衝撃力が加えられたことのみならず、当該衝撃力の程度も把握することができる。したがって、たとえば、設計者は、衝撃力が加えられる後工程のみならず、該衝撃力の程度も把握することにより、より細やかに、MEMS300の設計値を変更することなどができる。
【0077】
<第4実施形態>
上述の実施形態においては、本開示の電子部品が有利な効果を奏する工程は、電子部品が工場出荷される前の工程である構成が説明された。しかしながら、本開示の電子部品が有利な効果を奏する工程は、電子部品が工場出荷された後であってもよい。工場出荷された後においては、ユーザが電子部品を使用する。
【0078】
たとえば、図1の括弧書きに示されるように、検出回路200は、静電容量として、特定値Axを検出した場合には、ユーザ通知信号を出力する。このユーザ通信信号は、第1部材41と第2部材42とが面接触状態であることを示す信号でもある。該信号の出力先である処理装置250(図1参照)は、該ユーザ通信信号に応じて、MEMSセンサ300に対して強い衝撃力が加えられたことを通知する。これにより、ユーザは、MEMSセンサ300に対して強い衝撃力が加えられたことを認識できる。
【0079】
<第5実施形態>
第5実施形態においては、第1部材および第2部材の他の形状などが説明される。以下のような構成が採用された電子部品であっても、上記と同様の効果を奏する。
【0080】
(1) 図15は、変形例の第1部材81のXZ平面における断面を示す図である。第1部材81は、第1テーパ部81Aと、第1面81Bとを有する。第1部材41(図3など参照)と、第1部材81とが相違する点は以下の通りである。第1部材41の第1テーパ部41Aは、平面である一方、第1部材81の第1テーパ部81Aは曲面である。また、第1部材41は頂部41Cを有する一方、第1部材81は頂部を有さない。
【0081】
(2) 図16は、変形例の第1部材91のXZ平面における断面を示す図である。第1部材91は、第1テーパ部91Aと、第1面91Bとを有する。第1部材41と、第1部材91とが相違する点として、第1部材41は頂部41Cを有する一方、第1部材91は頂部を有さない。
【0082】
(3) 図17は、変形例の第2部材82のXZ平面における断面を示す図である。第2部材82は、第2テーパ部82Aと、第2面82Bと、孔部82Cとを有する。第2部材42(図3参照)と、第2部材82とが相違する点として、第2部材42の第2テーパ部42Aは、平面である一方、第2部材82の第2テーパ部82Aは曲面である。
【0083】
(4) 図18は、変形例の第2部材92のXZ平面における断面を示す図である。第2部材92は、第2テーパ部92Aと、第2面92Bと、孔部92Cとを有する。第2部材42(図3参照)と、第2部材92とが相違する点として、第2部材42は頂部42Dを有する一方、第2部材92は頂部を有さない。
【0084】
(5) また、上述の実施形態の変形状態は、図5に示されるように、第2部材42が変形される構成が説明された。しかしながら、変形状態において、第1部材41が変形される構成が採用されてもよい。図19は、本変形例の維持機構4Xの初期状態を示す図である。また、図20は、本変形例の変形状態を示す図である。
【0085】
図19に示すように、維持機構4Xの第1部材41の内部に中空部41Dが形成されている。該中空部41Dが形成されることにより、第1部材41の先端がX軸方向において縮小するように第1部材41は、変形する。したがって、図20に示すように変形状態においては、第1部材41は、変形する。そして、特に図示しないが、第1面41Bと、第2面42Bとが接触する面接触状態となる。
【0086】
(6) また、特に図示しないが、第1部材41がテーパ部(第1テーパ部)を有さない構成が採用されてもよい。また、第2部材42がテーパ部(第2テーパ部)を有さない構成が採用されてもよい。
【0087】
(7) 上記の実施形態においては、図5および図6に示されるように、変形状態の後に、該変形状態が解除されて、面接触状態となる構成が説明された。しかしながら、変形例として、変形状態の後に、変形が維持されて、面接触状態となる構成が採用されてもよい。
【0088】
(8) 上記の実施形態においては、図6に示すように、第1部材41の第1面41Bと第2部材42の第2面42Bとが接触することにより、面接触状態が実現される構成が説明された。しかしながら、面接触状態は、他の手法により実現させるようにしてもよい。たとえば、MEMS100は、第1部材41と第2部材42との接触を維持する接触手段を有していてもよい。接触手段は、たとえば、第1部材41と第2部材42との接触を維持する両面テープである。
【0089】
(9) 上記の実施の形態においては、錘10に配置される部材がオス部材(第1部材41)であり、該オス部材に対向して配置される部材がメス部材(第2部材42)である構成が説明された。しかしながら、錘10に配置される部材がメス部材であり、該メス部材に対向して配置される部材がオス部材としてもよい。
【0090】
(10) また、上述の実施形態においては、検出対象の加速度および衝撃力は、1軸方向(Z軸方向)である構成が説明された。検出対象の加速度および衝撃力は、複数軸方向としてもよい。このような構成が採用される場合には、該複数軸に応じた複数のMEMS100が設置される。
【0091】
<付記>
(第1項) 本開示の電子部品は、可動部材と、付勢部材と、可動電極と、固定電極と、検出回路と、第1部材と、第2部材と、を備える。可動部材は、初期位置から変位する。付勢部材は、変位した可動部材を初期位置に戻す方向に、可動部材に付勢力を加える。可動電極は、可動部材に設けられている。固定電極は、可動電極の所定方向側に設けられている。検出回路は、可動電極と固定電極との間の静電容量を検出する。第1部材は、可動部材に設けられている。第2部材は、第1部材の所定方向側に設けられている。所定方向を含む方向に可動部材が変位したときに、第1部材と第2部材とのうち少なくとも一方が変形した後に第1部材と第2部材とが接触する面接触状態となる。面接触状態は維持される。
【0092】
このような構成によれば、所定方向を含む方向に可動部材が変位したときに、第1部材と第2部材とのうち少なくとも一方が変形した後に第1部材と第2部材とが接触する面接触状態となり、該面接触状態は維持される。また、面接触状態が維持されることから、可動電極と固定電極との間の静電容量は所定値となる。したがって、第1部材と第2部材とのうち少なくとも一方を変形させる衝撃力が電子部品に加えられたときに、検出回路が検出する静電容量は所定値となることから、該静電容量を視認した製造者などは、製造工程の各工程ごとに静電容量を確認することにより、衝撃力が加えられた工程を特定できる。
【0093】
(第2項) 第1項に記載の電子部品において、第1部材は、第1面を有する。第2部材は、接触状態であるときに、第1面と接触する第2面を有する。接触状態は、付勢力により維持される。
【0094】
このような構成によれば、接触状態であるときに、第1部材の第1面と第2部材の第2面とが接触し、弾性部材の付勢力により維持される。したがって、電子部品は、安定した接触状態を実現できる。
【0095】
(第3項) 第2項に記載の電子部品において、第1面および第2面は平面である。
【0096】
このような構成によれば、電子部品は、安定した接触状態を実現できる。
【0097】
(第4項) 第1項~第3項のいずれか1項に記載の電子部品において、第1部材および第2部材のいずれかの一方の部材は、所定方向に沿って細くなる第1テーパ部を有する。
【0098】
このような構成によれば、第1部材および第2部材のいずれかの一方の部材は、所定方向に沿って細くなる第1テーパ部を有することから、第1部材が第2部材に係合し易くなる。したがって、電子部品は、衝撃力の方向が所定方向と若干異なる場合などであっても、接触状態を維持できる。
【0099】
(第5項) 第4項に記載の電子部品において、第1部材および第2部材のいずれかの他方の部材は、一方の部材が貫通する孔部と、第1テーパ部と接し、かつ一方の部材が孔部を貫通するように案内する第2テーパ部とを有する。
【0100】
このような構成によれば、第1部材および第2部材のいずれかの他方の部材は、孔部と、上記の一方の部材が孔部を貫通するように案内する第2テーパ部とを有する。したがって、第1部材が第2部材に係合し易くなる。よって、電子部品は、衝撃力の方向が所定方向と若干異なる場合などであっても、接触状態を維持できる。
【0101】
(第6項) 第1項~第3項のいずれか1項に記載の電子部品において、第1部材および第2部材のいずれかの一方の部材は、第1部材および第2部材のいずれかの他方の部材が貫通する孔部と、一方の部材と接し、かつ一方の部材が孔部を貫通するように案内する第2テーパ部とを有する。
【0102】
このような構成によれば、第1部材および第2部材のいずれかの他方の部材は、孔部と、上記の一方の部材が孔部を貫通するように案内する第2テーパ部とを有する。したがって、第1部材が第2部材に係合し易くなる。よって、電子部品は、衝撃力の方向が所定方向と若干異なる場合などであっても、接触状態を維持できる。
【0103】
(第7項) 第4項または第5項に記載の電子部品において、一方の部材は、第1テーパ部の頂部を有する。
【0104】
このような構成によれば、第1テーパ部の頂部を有することから、第1テーパ部のテーパ面の面積を大きくできる。したがって、電子部品は、上述の一方の部材を精度良く案内できる。
【0105】
(第8項) 第1項~第7項のいずれか1項に記載の電子部品において、電子部品は、所定方向に沿って並ぶ複数の第1部材を有する。
【0106】
このような構成によれば、可動電極と固定電極との間の静電容量を複数段階とすることができる。したがって、該静電容量を視認した製造者などは、衝撃力が加えられた工程のみならず、電子部品に印加された衝撃力の程度も特定できる。
【0107】
(第9項) 第1項~第7項のいずれか1項に記載の電子部品において、電子部品は、所定方向に沿って並ぶ複数の第2部材を有する。
【0108】
このような構成によれば、可動電極と固定電極との間の静電容量を複数段階とすることができる。したがって、該静電容量を視認した製造者などは、衝撃力が加えられた工程のみならず、電子部品に印加された衝撃力の程度も特定できる。
【0109】
(第10項) 第1項~第9項のいずれか1項に記載の電子部品において、検出回路は、所定値の静電容量を検出したときに、接触状態を検出する。
【0110】
このような構成によれば、検出回路が所定値の静電容量を検出したときに、接触状態を検出することができる。
【0111】
(第11項) 第1項~第10項のいずれか1項に記載の電子部品において、電子部品は、第1部材と第2部材とが接触状態であるときに、該接触状態であることを通知するための信号を出力する。
【0112】
このような構成によれば、検出回路が所定値の静電容量を検出したときに、接触状態を検出することができる。
【0113】
(第12項) 第1項~第11項のいずれか1項に記載の電子部品において、第1部材および第2部材の少なくとも一方は、弾力性を有する部材である。
【0114】
このような構成によれば、電子部品に対して大きな衝撃力が加えられたときにのみ接触状態を維持する構成を実現できる。
【0115】
(第13項) 第1項~第12項のいずれか1項に記載の電子部品において、電子部品は、検出回路が検出した静電容量に基づいて、電子部品の加速度を検出する。
【0116】
このような構成によれば、電子部品は加速度を検出する加速度センサとして機能させることができる。
【0117】
(第14項) 本開示の電子部品の検査方法は、電子部品を準備することを備える。電子部品は、可動部材と、付勢部材と、可動電極と、固定電極と、検出回路と、第1部材と、第2部材と、を備える。可動部材は、初期位置から変位する。付勢部材は、変位した可動部材を初期位置に戻す方向に、可動部材に付勢力を加える。可動電極は、可動部材に設けられている。固定電極は、可動電極の所定方向側に設けられている。検出回路は、可動電極と固定電極との間の静電容量を検出する。第1部材は、可動部材に設けられている。第2部材は、第1部材の所定方向側に設けられている。所定方向を含む方向に可動部材が変位したときに、第1部材と第2部材とのうち少なくとも一方が変形した後に第1部材と第2部材とが接触する接触状態となる。接触状態は維持される。検査方法は、可動電極と固定電極との間の静電容量を検出することを備える。また、検査方法は、静電容量が所定値である場合に、電子部品に衝撃力が加えられたと判定することを備える。
【0118】
このような構成によれば、第1部材と第2部材とのうち少なくとも一方を変形させる衝撃力が電子部品に加えられたときに、検出回路が検出する静電容量は所定値となることから、該静電容量を視認した製造者などは、製造工程の各工程ごとに静電容量を確認することにより、衝撃力が加えられた工程を特定できる。
【0119】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
2,4 維持機構、10 錘、12,14 付勢部材、31,32 可動電極、40 固定電極、41 第1部材、41A 第1テーパ部、41B 第1面、41C,42D 頂部、41D 中空部、42 第2部材、42A 第2テーパ部、42B 第2面、42C 孔部、100 MEMS、300S センサ群、200 検出回路、250 処理装置、300 MEMSセンサ、320 切断装置、400 コレット、412 棒部、422 枠部材、424 係合室。
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