(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120277
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】オイルセパレータ
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20240829BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F01M13/04 E
F01M13/04 C
F01M13/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026952
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000220804
【氏名又は名称】東京濾器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 耕作
(72)【発明者】
【氏名】岡本 有司
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヴァン ハ
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BD10
3G015BD23
3G015BE11
3G015BE12
3G015BE13
3G015BE15
3G015BF05
3G015BF08
3G015CA05
3G015CA07
3G015CA16
3G015DA04
3G015EA06
3G015FA04
(57)【要約】
【課題】エンジンの稼働状態に関わらず油滴状オイルの排出を可能にするオイルセパレータを提供する。
【解決手段】オイルセパレータ10は、エンジン40取付けられるケース11と、ケース内に収容され、エンジンで発生したミスト状オイルを含むガスB1からミスト状オイルを捕集する捕集構造体12と、ケースと前記捕集構造体とによって区画され、ミスト状オイルが凝集してなる油滴状オイルLを貯留する第1貯留室13と、第1貯留室に形成され、第1貯留室内の油滴状オイルを、第1貯留室外に排出するための開口14と、を備える。開口は、第1貯留室の下部に形成され、エンジンの内部空間に油滴状オイルを排出するための第1開口14aと、第1貯留室の側部に形成され、内部空間に油滴状オイルを排出するための第2開口14bと、を含む。第2開口は、第1開口より上方に位置する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに取付けられるケースと、
前記ケース内に収容され、前記エンジンで発生したミスト状オイルを含むガスから前記ミスト状オイルを捕集する捕集構造体と、
前記ケースと前記捕集構造体とによって区画され、前記ミスト状オイルが凝集してなる油滴状オイルを貯留する第1貯留室と、
前記第1貯留室に形成され、前記第1貯留室内の前記油滴状オイルを、前記第1貯留室外に排出するための開口と、を備え、
前記開口は、
前記第1貯留室の下部に形成され、前記エンジンの内部空間に前記油滴状オイルを排出するための第1開口と、
前記第1貯留室の側部に形成され、前記内部空間に前記油滴状オイルを排出するための第2開口と、を含み、
前記第2開口は、前記第1開口より上方に位置する、
ことを特徴とするオイルセパレータ。
【請求項2】
前記第1開口に設けられる第1逆止弁を備え、
前記第1逆止弁は、前記第1貯留室から前記内部空間に、前記油滴状オイルを排出させる、
請求項1に記載のオイルセパレータ。
【請求項3】
上下方向に所定間隔を有して前記ケースに取付けられる一対のオイルシールを備え、
前記一対のオイルシールは、前記ケースが前記エンジンに取付けられた状態で、前記エンジンと接触し、前記ケースと前記エンジンとの間に、前記油滴状オイルを貯留する第2貯留室を形成し、
前記第2貯留室は、前記第2開口と連通する、
請求項1に記載のオイルセパレータ。
【請求項4】
前記エンジンの構成要素であるオイルパンに貯留されるエンジンオイル内に、前記油滴状オイルを排出するオイル排出ポートを備え、
前記オイル排出ポートの一端は、前記第2貯留室と連通し、前記オイル排出ポートの他端は、前記オイルパン内の空間と連通する、
請求項3に記載のオイルセパレータ。
【請求項5】
前記エンジンの構成要素であるシリンダブロック内に、前記油滴状オイルを排出するオイル排出ポートであって、一端において、前記第2貯留室と連通し、他端において、前記シリンダブロック内の空間と連通するオイル排出ポートと、
前記第2開口から前記シリンダブロック内に、前記油滴状オイルを排出させる第2逆止弁と、を備える、
請求項3に記載のオイルセパレータ。
【請求項6】
前記ケースに取付けられる一つのオイルシールであって、前記ケースが前記エンジンに取付けられた状態で、前記エンジンと接触する一つのオイルシールと、
前記オイルシールよりも上方において前記ケースに一体形成され、前記エンジンの構成要素であるオイルパンに貯留されるエンジンオイル内に、前記油滴状オイルを排出するオイル排出ポートと、を備え、
前記オイル排出ポートの一端は、前記第2開口と連通し、前記オイル排出ポートの他端は、前記オイルパン内の空間と連通する、
請求項1に記載のオイルセパレータ。
【請求項7】
前記第2開口から前記オイルパンに貯留されるエンジンオイル内に、前記油滴状オイルを排出させる第2逆止弁を備える、
請求項4又は6に記載のオイルセパレータ。
【請求項8】
前記ケースに取付けられる一つのオイルシールであって、前記ケースが前記エンジンに取付けられた状態で、前記エンジンと接触する一つのオイルシールと、
前記オイルシールよりも上方において前記ケースに一体形成され、前記エンジンの構成要素であるシリンダブロック内に、前記油滴状オイルを排出するオイル排出ポートであって、一端において、前記第2開口と連通し、他端において、前記シリンダブロック内の空間と連通するオイル排出ポートと、
前記第2開口から前記シリンダブロック内に、前記油滴状オイルを排出させる第2逆止弁と、を備える、
請求項1に記載のオイルセパレータ。
【請求項9】
前記ケースは、
前記エンジンの内部空間から、前記ケースの内部空間に、前記ミスト状オイルを含むガスを流入させる流入ポートを有し、
前記捕集構造体は、
前記捕集構造体に一体形成され、前記流入ポートに対向する面部を含むオイルトラップを有する、
請求項1に記載のオイルセパレータ。
【請求項10】
前記オイルトラップは、前記面部の下方において、前記ケースの下端面との間に隙間を形成し、
前記隙間の上下方向高さは、前記流入ポートの上下方向高さ以上に設定される、
請求項9に記載のオイルセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンのクランクケースからエンジンの吸気管路へ通じる換気管路の途中に配置され、ミスト状オイルを含むブローバイガスから、ミスト状オイルを分離するオイルセパレータが記載されている。
【0003】
このオイルセパレータでは、ミスト状オイルを含むブローバイガスを、織物あるいは不織布からなる捕集体に衝突させることで、ミスト状オイルが捕集体に吸着される。これにより、ミスト状オイルを含むブローバイガスからミスト状オイルが分離される。このミスト状オイルは、凝集することで油滴状オイルとなる。この油滴状オイルは、オイルセパレータの外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、油滴状オイルが、ミスト状オイルを含むブローバイガスに混入することを回避するため、エンジンが停止しているときに、油滴状オイルを排出する必要があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンの稼働状態に関わらず油滴状オイルの排出を可能にするオイルセパレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るオイルセパレータは、エンジンに取付けられるケースと、前記ケース内に収容され、前記エンジンで発生したミスト状オイルを含むガスから前記ミスト状オイルを捕集する捕集構造体と、前記ケースと前記捕集構造体とによって区画され、前記ミスト状オイルが凝集してなる油滴状オイルを貯留する第1貯留室と、前記第1貯留室に形成され、前記第1貯留室内の前記油滴状オイルを、前記第1貯留室外に排出するための開口と、を備え、前記開口は、前記第1貯留室の下部に形成され、前記エンジンの内部空間に前記油滴状オイルを排出するための第1開口と、前記第1貯留室の側部に形成され、前記内部空間に前記油滴状オイルを排出するための第2開口と、を含み、前記第2開口は、前記第1開口より上方に位置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エンジンの稼働状態に関わらず油滴状オイルの排出を可能にするオイルセパレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る換気システムとエンジンシステムを示す図である。
【
図2】
図1のオイルセパレータとヘッドカバーとを示す斜視図である。
【
図3】
図1のオイルセパレータを示す斜視図である。
【
図4】
図1のオイルセパレータとヘッドカバーとを示す平面図である。
【
図6】
図5の断面図において、ミスト状オイルを含むブローバイガス、油滴状オイル、及び、ミスト状オイルが分離された後のブローバイガスの流れを示す図である。
【
図7】オイルセパレータの性能と排出管内の油面の高さとの関係を説明する図である。
【
図8】第1実施形態の変形例に係る換気システムとエンジンシステムを示す図である。
【
図9】第1実施形態の別の変形例に係るオイルセパレータを示す断面図である。
【
図10】第2実施形態に係るオイルセパレータとヘッドカバーとを示す斜視図である。
【
図12】
図10のオイルセパレータとヘッドカバーとを示す平面図である。
【
図14】
図13の断面図において、ミスト状オイルを含むブローバイガス、油滴状オイル、及び、ミスト状オイルが分離された後のブローバイガスの流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。本明細書において、「上」、「下」とは、
図1~
図3等に示す「上」、「下」を意味するものとし、その方向を上下方向とする。また、上下方向を中心に周方向を定義し、上下方向に垂直な方向を径方向とする。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る換気システム1とエンジンシステム1aを示す図である。
図2は、
図1のオイルセパレータ10とヘッドカバー41とを示す斜視図である。
図3は、
図1のオイルセパレータ10を示す斜視図である。
図4は、
図1のオイルセパレータ10とヘッドカバー41とを示す平面図である。
図5は、
図4のA-A断面図である。
図6は、
図5の断面図において、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1、油滴状オイルL、及び、ミスト状オイルが分離された後のブローバイガスB2の流れを示す図である。
図7は、オイルセパレータ10の性能と排出管19内の油面の高さとの関係を説明する図である。
【0012】
<エンジンシステム>
エンジンシステム1aは、吸気管30と、エンジン40と、エアフィルタ50と、ターボ60と、エアクーラ70と、を備える。なお、エンジンシステム1aは、ターボ60及びエアクーラ70を備えなくてもよい。
【0013】
図1に示すように、エンジン40は、ヘッドカバー41と、エンジン本体部42と、オイルパン43と、を有する。
【0014】
本実施形態において、エンジン本体部42は、シリンダブロック及びシリンダヘッドを含む。シリンダブロックは、内部にシリンダを有する。当該シリンダ内には、ピストンが収容される。シリンダブロックにおいて、ピストン下方の下部空間(シリンダブロック内の空間の一例)には、クランクシャフトが収容される。以下、シリンダブロックにおけるピストン下方の下部空間を、シリンダブロック下部空間と記載する。シリンダ内の燃焼室で混合気を燃焼させることで、ピストンが往復運動する。シリンダヘッドは、シリンダブロックの上面に取付けられる。シリンダヘッドは、燃焼室への混合気の供給、燃焼室からの燃焼ガスの排出を行う動弁機構等を収容する。
【0015】
ヘッドカバー41は、シリンダヘッドの上部を覆う部品である。本実施形態に係るヘッドカバー41は、略直方体形状であり、下方に向けて開口している。ヘッドカバー41は、下部開口41aと、ボルト41bと、上部開口41cと、カバー内空間(エンジン40の内部空間の一例)41dとを有する(
図2、
図5参照)。
【0016】
下部開口41aは、ヘッドカバー41をシリンダヘッドの上部に取付けるための部位である。下部開口41aは、シリンダヘッドの上部と上下に対向する。
【0017】
図5に示すように、上部開口41cは、オイルセパレータ10が取付けられる穴である。上部開口41cは、ヘッドカバー41の上面に設けられる。上部開口41cの数は、ヘッドカバー41に取付けるオイルセパレータ10の数と同数である。本実施形態では、1個の例を示している。
【0018】
ボルト41bは、オイルセパレータ10をヘッドカバー41に固定する部品である。ボルト41bは、ヘッドカバー41の上面且つ上部開口41cの近傍に設けられる取付穴(図示せず)に挿入される。当該取付穴は、ヘッドカバー41を上下方向に貫通する。ボルト41bを、ナット(図示せず)に締結することで、オイルセパレータ10はヘッドカバー41に固定される。ボルト41b及び取付穴の数は、オイルセパレータ10をヘッドカバー41に固定することができれば特に限定されない。本実施形態では、4個の例を示している。
【0019】
カバー内空間41dは、下部開口41aより上方に位置する、ヘッドカバー41の内部空間である。カバー内空間41dは、シリンダヘッドの上部と連通、即ち空間的に接続される。
【0020】
オイルパン43は、シリンダブロックの下面に取付けられ、ピストン等の潤滑に使用されるエンジンオイルを貯留する。オイルパン43の内部空間は、シリンダブロック下部空間と連通する。
【0021】
本実施形態では、燃焼室で発生し、ピストンとシリンダとの隙間を通じて、シリンダブロック下部空間に吹き抜けた燃焼ガス及び未燃焼ガスを、ブローバイガスと呼ぶ。このブローバイガスには、シリンダブロック下部空間内で、ミスト状オイルが吸着する。ミスト状オイルを含むブローバイガス(ミスト状オイルを含むガスの一例)は、シリンダブロックとシリンダヘッドを通じて、カバー内空間41dへ流入する。
【0022】
吸気管30は、エアフィルタ50で濾過された外気を、燃焼室に供給する部品である。本実施形態において、吸気管30には、ターボ60とエアクーラ70とが配置される。ターボ60は、排気流を利用してタービンを駆動し、吸気管30内の外気を圧縮する部品である。これにより、ターボ60は、燃焼室に供給する空気量を増やす(空気密度を高くする)。エアクーラ70は、ターボ60により圧縮された高温の空気を冷却し、燃焼室に供給される空気の密度を高める部品である。
【0023】
<換気システム>
図1に示すように、換気システム1は、オイルセパレータ10と、排出管19と、ブリーザパイプ20と、リターンパイプ21と、を備える。換気システム1は、エンジンシステム1aに取付けられる。
【0024】
オイルセパレータ10は、ミスト状オイルを含むブローバイガスから、ミスト状オイルを分離する。オイルセパレータ10は、ヘッドカバー41に、具体的にはヘッドカバー41の上部開口41cに、埋め込まれるように取付けられる。
【0025】
排出管19及びリターンパイプ21は、オイルセパレータ10内の油滴状オイルを、オイルパン43へ還元するための部品である。排出管19は、一端で、後述する第2オイル排出ポート18(オイル排出ポートの一例)に取付けられ、他端で、リターンパイプ21に取付けられる。
【0026】
リターンパイプ21は、シリンダブロックに取付けられている。リターンパイプ21の一端は、シリンダブロックの外部に開口しており、排出管19と接続される。リターンパイプ21の他端は、オイルパン43の下面近傍に位置する。リターンパイプ21の他端は、オイルパン43内のエンジンオイルの油面より下方に位置する。
【0027】
排出管19は、第2オイル排出ポート18及びリターンパイプ21と連通する。これにより、排出管19及びリターンパイプ21は、油滴状オイルを、オイルパン43に貯留されたエンジンオイル内に還元する。つまり、排出管19及びリターンパイプ21は、オイルパン43内のエンジンオイル面よりも下方に、油滴状オイルを還元する。ここまで、排出管19及びリターンパイプ21が別体の場合を説明したが、排出管19及びリターンパイプ21は、一体形成されてもよい。
【0028】
ブリーザパイプ20は、オイルセパレータ10から排出される、ミスト状オイルが分離された後のブローバイガス(以下、分離後ブローバイガスともいう)を、吸気管30に還元するための部品である。ブリーザパイプ20は、一端で、後述するガス排出ポート3jに取付けられ、他端で、吸気管30に取付けられる。具体的には、分離後ブローバイガスは、吸気管30におけるエアフィルタ50とターボ60とを接続する部分に還元される。分離後ブローバイガスは、エアフィルタ50からの外気と混合され、ターボ60で圧縮される。圧縮された分離後ブローバイガス及び外気は、エアクーラ70で冷却されて、エンジン40に供給される。なお、換気システム1は、ブリーザパイプ20が吸気管30に接続されていなくてもよい。この場合、オイルセパレータ10から排出される分離後ブローバイガスは、大気に開放される。
【0029】
<オイルセパレータ>
オイルセパレータ10は、ケース11と、捕集構造体12と、第1貯留室13と、開口14と、一対のオイルシール16と、第2貯留室17と、第2オイル排出ポート18と、板ばね80と、オイルトラップ82と、第1逆止弁84と、第2逆止弁86とを備える(
図2~
図5参照)。
【0030】
<<ケース>>
ケース11は、オイルセパレータ10の外装を構成する部品である。ケース11は、ヘッドカバー41に取付けられる。ケース11は、捕集構造体12、板ばね80、オイルトラップ82、第1逆止弁84等が配置される内部空間を有する。
【0031】
ケース11は、下部ケース11aと、上部ケース11bと、を有する。
【0032】
下部ケース11aは、上端が開口した逆円錐台型の筒状部品である。当該開口を通じて、下部ケース11aの内部空間に、捕集構造体12、板ばね80、オイルトラップ82、第1逆止弁84等が挿入される。下部ケース11aの下端面11cは、下部ケース11aの径方向中心に向かって下側に傾斜している。下部ケース11aは、ヘッドカバー41の上部開口41cに嵌め込まれる。
【0033】
下部ケース11aは、突起部2aと、流入ポート2bと、第1オイル排出ポート2cと、爪部2dと、取付部2eと、ストッパ部2fと、一対の溝2gとを有する。
【0034】
突起部2aは、オイルトラップ82を下側から保持する部位である。突起部2aは、下部ケース11aの内面から、下部ケース11aの径方向中心に向かって突出している。突起部2aの数は、オイルトラップ82を下側から保持することができれば特に限定されない。
【0035】
図6に示すように、流入ポート2bは、カバー内空間41dから、オイルセパレータ10の内部即ち下部ケース11aの内部空間に、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1を流入させるための部位である。本実施形態に係る流入ポート2bは、下部ケース11aの側面に設けられる開口である。流入ポート2bは、下部ケース11aの内部空間と外部空間(即ちカバー内空間41d)とを連通させる。流入ポート2bは、上から見て突起部2aと径方向に対向しないように設けられる。流入ポート2bの位置や数は、オイルセパレータ10の内部にミスト状オイルを含むブローバイガスB1を流入させることができれば特に限定されない。
【0036】
図6に示すように、第1オイル排出ポート2cは、油滴状オイルLを、オイルセパレータ10の外部に流出させるための部位である。第1オイル排出ポート2cは、下部ケース11aの下端面11cの中心に設けられる開口である。第1オイル排出ポート2cは、下部ケース11aの内部空間と外部空間とを連通させる。具体的には、オイルセパレータ10がヘッドカバー41に取付けられた状態で、第1オイル排出ポート2cは、下部ケース11aの内部空間とカバー内空間41dとを連通させる。
【0037】
図3に示すように、爪部2dは、後述するフック部3bと嵌合して下部ケース11aに上部ケース11bを取付ける部位である。爪部2dは、下部ケース11aの上端近傍の外周面に径方向外側に突出するように設けられる。爪部2dの位置や数は、下部ケース11aに上部ケース11bを取付けることができれば特に限定されない。
【0038】
図2に示すように、取付部2eは、オイルセパレータ10をヘッドカバー41に取付けるための部位である。取付部2eは、下部ケース11aの外側側面から径方向外側に延びる。本実施形態において、取付部2eは、下部ケース11aの外側側面において、対向する位置に2つ設けられる。
【0039】
取付部2eは、取付部2eを上下方向に貫通する取付穴2e1を有する。取付穴2e1は、ボルト41bが挿入されることにより、オイルセパレータ10をヘッドカバー41に取付けるための部位である。取付穴2e1は、下部ケース11aがヘッドカバー41に取付けられる際に、ヘッドカバー41の取付穴(図示せず)の真上に配置される。取付穴2e1の数は、ヘッドカバー41の取付穴の数と同じである。本実施形態では、取付穴2e1の数が4つである例を示す。
【0040】
図5に示すように、ストッパ部2fは、ヘッドカバー41の上部開口41cに対して下部ケース11aの上下方向の位置を決める部位である。ストッパ部2fは、環状且つ板状に形成される。ストッパ部2fは、下部ケース11aの外側側面に設けられる。ストッパ部2fの外径は、上部開口41cの直径よりも大きい。ストッパ部2fの下面の位置は、取付部2eの下面の位置と等しい。つまり、ストッパ部2fの下面は、取付部2eの下面と面一である。ストッパ部2fは、流入ポート2bよりも上に設けられる。
【0041】
一対の溝2gは、後述する一対のオイルシール16が配置される部位である。一対の溝2gは、下部ケース11aの外側側面において、周方向に設けられている。一対の溝2gは、上下方向に所定間隔を有して設けられる。
図5の例において、一対の溝2gの一方は、ストッパ部2fの下方近傍に設けられ、一対の溝2gの他方は、流入ポート2bの上部近傍に設けられる。
【0042】
下部ケース11aは、上部開口41cに上から嵌め込まれる。この時、ヘッドカバー41の取付穴と下部ケース11aの取付穴2e1の軸が一致するように、下部ケース11aは、上部開口41cに嵌め込まれる。すると、ストッパ部2fの下面が上部開口41cの縁に接触して、下部ケース11aの上下方向の位置が決まる。そして、ボルト41bを、ヘッドカバー41の取付穴と下部ケース11aの取付穴2e1に挿入し、ナット(図示せず)でボルト41bを締結することで、下部ケース11aはヘッドカバー41に対して固定される。
【0043】
下部ケース11aがヘッドカバー41に固定された状態において、下部ケース11aのストッパ部2fよりも下側の部位は、ヘッドカバー41の上面よりも下方に位置する。また、一対の溝2gよりも下側の部位、即ち流入ポート2b及び第1オイル排出ポート2cは、カバー内空間41dに配置される。従って、下部ケース11aの内部空間は、流入ポート2b及び第1オイル排出ポート2cを通じてカバー内空間41dと連通する。
【0044】
上部ケース11bは、下部ケース11aの上端に位置する開口を塞ぐように設けられる部品である。上部ケース11bは、外筒3aと、フック部3bと、ストッパ部3cと、大径筒体3dと、小径筒体3eと、蓋部3fと、開口部3gと、第1接続部3hと、ガス排出ポート3jと、PCVバルブ3kと、を有する。
【0045】
外筒3aは、下部ケース11aの上端に位置する開口を塞ぐ部位である。外筒3aは、上端が閉じ、下端が開口した略円筒状をなす。上部ケース11bは、外筒3aの下端の開口が下部ケース11aの上端の開口と対向するように、下部ケース11aに取付けられる。
【0046】
フック部3bは、下部ケース11aの爪部2dと嵌合して、下部ケース11aに上部ケース11bを取付ける部位である。フック部3bは、外筒3aの外側側面から径方向外側に延びるとともに、当該径方向外側の端から下方に延在する環状をなす。フック部3bの位置や数は、下部ケース11aに上部ケース11bを取付けることができれば特に限定されない。
【0047】
ストッパ部3cは、オイルシール88の移動を規制する部位である。ストッパ部3cは、外筒3aの外側側面から径方向外側へと突出する環状の部位である。ストッパ部3cの下面には、オイルシール88が配置され、下部ケース11aと上部ケース11bの間をシールする。
【0048】
大径筒体3dは、上部ケース11bの内側を仕切る部位である。大径筒体3dは、外筒3aよりも径の小さい円筒型をなす。大径筒体3dは、外筒3aの径方向内側に配置される。
【0049】
小径筒体3eは、大径筒体3dとともに上部ケース11bの内側を仕切る部位である。小径筒体3eは、大径筒体3dよりも径の小さい円筒型をなす。小径筒体3eは、大径筒体3dの径方向内側に配置される。
【0050】
蓋部3fは、小径筒体3eの下方の開口を塞ぐ部位である。蓋部3fは、円形の板材である。蓋部3fは、小径筒体3eの下端に設けられる。蓋部3fは、小径筒体3eとともに上部ケース11bの内側の空間を仕切る。
【0051】
開口部3gは、小径筒体3eの内側に、分離後ブローバイガスB2を流入させるための部位である。開口部3gは、小径筒体3eの上端の開口である。
【0052】
第1接続部3hは、大径筒体3dと外筒3aを接続して、分離後ブローバイガスB2の通過を防止する部位である。第1接続部3hは、環状の板材である。本実施形態において、第1接続部3hは、大径筒体3dの上端から外筒3aの内周面に向かって設けられる。
【0053】
また、小径筒体3eと大径筒体3dを接合する部位として第2接続部(図示せず)が設けられる。第2接続部は、一例として方形の板材である。第2接続部の位置や数は、小径筒体3eと大径筒体3dを接続することができれば特に限定されない。本実施形態において、第2接続部は、大径筒体3dの下端から小径筒体3eの外周面に向かって設けられ、周方向に間隔を空けて複数個(例えば3つ)設けられる。つまり、第2接続部の間の隙間は、分離後ブローバイガスB2の通過を許容する。
【0054】
ガス排出ポート3jは、分離後ブローバイガスB2をオイルセパレータ10の内部から外部に流出させるための部位である。本実施形態に係るガス排出ポート3jは、円筒型をなす。ガス排出ポート3jは、小径筒体3eの側面から径方向外側に向けて、大径筒体3dの側面と、外筒3aの側面とを貫通し、外筒3aの外側まで延びるように1つ設けられる。ガス排出ポート3jの内部空間は、小径筒体3eの内部空間と連通している。ガス排出ポート3jには、ブリーザパイプ20が接続される。
【0055】
PCVバルブ3kは、小径筒体3eの開口部3gを開閉するための部材である。PCVバルブ3kは、ダイヤフラム弁3k1と、スプリング3k2と、を備える(
図5参照)。
【0056】
ダイヤフラム弁3k1は、開口部3gを開閉する。ダイヤフラム弁3k1は、円盤状をなす。ダイヤフラム弁3k1は、上部ケース11bの内部空間に、開口部3gに対向するように収容されている。
【0057】
ダイヤフラム弁3k1は、弁部3kvと、膜部3kmとを有する。弁部3kvは、開口部3gを開閉する部位である。本実施形態に係る弁部3kvの形状は、円盤状である。弁部3kvは、開口部3gの上方に設けられる。膜部3kmは、弁部3kvと外筒3aを接続する部位である。具体的には、膜部3kmは、弁部3kvの径方向外側の端部と外筒3aの内周面とを接続する。膜部3kmは、弾性変形する環状の部位である。
【0058】
スプリング3k2は、弁部3kvを上下に移動可能な状態で支持する。スプリング3k2は、コイル状のばねである。スプリング3k2は、小径筒体3eの内側、且つ弁部3kvの下において弁部3kvと蓋部3fとの間に挟まれており、弁部3kvを上向きに付勢する。
【0059】
上部ケース11bの内部空間は、小径筒体3e及び蓋部3fによって仕切られている。本実施形態では、小径筒体3eの外側面、蓋部3fの下側面、及び外筒3aの内側面により区画される空間を、上部上流空間S4と記載する。また、小径筒体3eの内側面、蓋部3fの上側面により区画される空間を、上部下流空間S5と記載する。
【0060】
スプリング3k2が縮むと、膜部3kmが弾性変形して伸び、弁部3kvのみが下方に移動して、弁部3kvと小径筒体3eの上端が接触する。これにより、開口部3gは閉じられて、上部上流空間S4と上部下流空間S5とは互いに遮断された状態となる。一方、スプリング3k2が伸びると、膜部3kmが弾性変形して縮み、弁部3kvが上方に移動して、弁部3kvと小径筒体3eの上端が離れる。これにより、開口部3gは開いて、上部上流空間S4と上部下流空間S5とは互いに連通した状態となる。
【0061】
<<捕集構造体>>
捕集構造体12は、下部ケース11a内に収容され、エンジン40で発生したミスト状オイルを含むブローバイガスガスから、ミスト状オイルを捕集する構造体である。捕集構造体12は、本体部12aと、調節バルブ12bと、捕集体12cと、押さえ部材12eとを有する(
図5、
図6参照)。
【0062】
本体部12aは、捕集構造体12の基本部分となる筒状の枠を構成する部位である。本体部12aは、環状円板部12a1と、小径筒部12a2と、大径筒部12a3と、フランジ部12a4と、を有する。
【0063】
環状円板部12a1は、小径筒部12a2と大径筒部12a3とを連結する部位である。環状円板部12a1は、中心部に貫通穴が形成された、環状且つ板状をなす。環状円板部12a1の外縁部は、下部ケース11aの内面から離間しており、これにより所定の隙間13cが形成される。
【0064】
小径筒部12a2は、本体部12aの上部を構成する部位である。小径筒部12a2は、円筒型をなす。小径筒部12a2の直径は、環状円板部12a1の内径と等しい。小径筒部12a2は、環状円板部12a1の径方向内側の縁に沿って上側に向けて突出する。小径筒部12a2の端部は、上下ともに開口している。
【0065】
大径筒部12a3は、本体部12aの中央部を構成する部位である。大径筒部12a3は、円筒型をなす。大径筒部12a3の直径は、小径筒部12a2の直径よりも大きい。大径筒部12a3は、環状円板部12a1の下面から下側に向けて突出する。
【0066】
フランジ部12a4は、本体部12aの下部を構成する部位である。フランジ部12a4は、環状をなす。フランジ部12a4の外径は、下部ケース11aの内径より僅かに小さい。フランジ部12a4は、大径筒部12a3の下端に設けられる。また、フランジ部12a4には、径方向外側に向けて開口する溝が周方向に形成される。当該溝には、オイルシール90が配置されて、フランジ部12a4と下部ケース11aの間をシールする。
【0067】
本体部12aが下部ケース11aに上側から嵌め込まれることによって、本体部12aは、下部ケース11aの内部空間を流入ポート2b側の空間(下部上流空間S1と呼ぶ)と、下部ケース11aの上端に位置する開口側の空間(第2下部下流空間S3と呼ぶ)に仕切る。下部上流空間S1は、本体部12aによって仕切られる下部ケース11aの内部空間のうち、本体部12aの内部空間を含む流入ポート2b側の空間である。第2下部下流空間S3は、本体部12aによって仕切られる下部ケース11aの内部空間のうち、上記開口側の空間における捕集構造体12と下部ケース11aとの間の空間である。
【0068】
調節バルブ12bは、下部上流空間S1から流れるミスト状オイルを含むブローバイガスB1の流量を調節する部品である。調節バルブ12bは、バルブ本体12b1と、バルブ弾性体12b2と、筒状部12b3と、スプリング12b4と、を有する(
図5参照)。
【0069】
バルブ本体12b1は、小径筒部12a2の上端開口を開閉する弁体である。バルブ本体12b1は、円盤状をなす。バルブ本体12b1は、小径筒部12a2の上端開口の上方に配置される。バルブ本体12b1が上下に移動することによって、小径筒部12a2の上端開口が開閉する。また、バルブ本体12b1の上面が、後述する押さえ部材12eの筒部12e1の下面と接触することで、バルブ本体12b1の上方向の移動が規制される。
【0070】
バルブ弾性体12b2は、バルブ本体12b1が小径筒部12a2の上端開口に接近する際の衝撃を緩和する。バルブ弾性体12b2は、弾性を有する環状の部材である。バルブ弾性体12b2は、バルブ本体12b1の下面の外周縁に沿って設けられている。バルブ弾性体12b2は、バルブ本体12b1が下に移動すると、小径筒部12a2の上端開口に接触する。バルブ弾性体12b2は、バルブ本体12b1が上に移動すると、小径筒部12a2の上端開口から上に向かって離れ、バルブ弾性体12b2と小径筒部12a2の上端との間に環状の隙間が形成される。この隙間は、下部上流空間S1に流入したミスト状オイルを含むブローバイガスB1の流路C1となる。このブローバイガスB1の流路C1は、バルブ本体12b1の上下方向の位置によって大きさが変化する。すなわち、流路C1は、開度が変化する流路である。流路C1の入口は、小径筒部12a2の内部空間(下部上流空間S1)である。流路C1の出口は、小径筒部12a2の外側及びバルブ本体12b1の外側である。
【0071】
筒状部12b3は、調節バルブ12bの重心位置を下げ、調節バルブ12bに不均一な力が作用した際に、調節バルブ12bを本体部12aに対して傾きにくくさせる部位である。筒状部12b3は、円筒型の部位である。筒状部12b3は、バルブ本体12b1の下面から下方へ突出するように設けられる。本実施形態において、筒状部12b3は、下部上流空間S1内に位置する。
【0072】
スプリング12b4は、バルブ本体12b1を上下に移動可能な状態で支持する。スプリング12b4は、コイル状のばねである。スプリング12b4は、バルブ本体12b1の上面に配置される。具体的には、スプリング12b4は、バルブ本体12b1の上面と、後述する押さえ部材12eの円板部12e2の下面との間に挟まれており、バルブ本体12b1を下向きに付勢する。
【0073】
捕集体12cは、通気性を有し、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1からミスト状オイルを分離する部品である。捕集体12cは、例えば不織布である。捕集体12cは、流路C1の出口と径方向に対向している。本体部12aによって仕切られる下部ケース11aの内部空間のうち、下部ケース11aの上端に位置する開口側の空間における捕集体12cと調節バルブ12bの外側及び小径筒部12a2の外側の間の空間を第1下部下流空間S2とする。
【0074】
捕集体12cは、径方向の外側と内側から保持部材(図示せず)により挟み込まれることで、保持される。保持部材は、例えば、環状円板部12a1の上面に周方向に所定間隔を有して設けられる。保持部材は、環状円板部12a1の上面から上方に延びる。捕集体12cは、保持部材により保持されることで、環状且つ調節バルブ12bを外周側から径方向間隔を空けて囲むように配置される。なお、保持部材は、捕集体12cを支持できればよく、例えば、捕集体12cの径方向外側及び径方向内側のいずれか一方から捕集体12cを保持するものでもよい。
【0075】
押さえ部材12eは、スプリング12b4を上側から押さえる部材である。押さえ部材12eは、筒部12e1と、円板部12e2と、柱面部12e3と、を有する。
【0076】
円板部12e2は、スプリング12b4を上側から押さえる部位である。円板部12e2の下面は、スプリング12b4を上側から押さえている。
【0077】
筒部12e1は、スプリング12b4の径方向の移動を規制する部位である。筒部12e1は、下端が開口した円筒型の部位である。筒部12e1は、円板部12e2の下面に設けられる。筒部12e1の外周にはスプリング12b4が配置される。よって、スプリング12b4は、径方向の移動が規制される。また、調節バルブ12bが上方に移動する際、筒部12e1の下端には、バルブ本体12b1の上面が接触する。これにより、調節バルブ12bの上方向への移動が制限される。
【0078】
柱面部12e3は、円板部12e2の外縁に沿って捕集体12cの上面の高さまで下方に延び、且つ当該下方端から径方向外側に延びる部位である。柱面部12e3は、円板部12e2の外縁部に周方向に間隔を開けて設けられる。柱面部12e3は、径方向外側に延びる部分の下面において、捕集体12cの上面と接触し、捕集体12cを上方から支持してもよい。
【0079】
<<第1貯留室>>
第1貯留室13は、ミスト状オイルが凝集してなる油滴状オイルLを貯留する空間である。第1貯留室13は、ケース11と捕集構造体12とによって区画される。
【0080】
具体的には、第1貯留室13は、主空間13aと排出流路13bとを有する。
【0081】
主空間13aは、径方向外側(側部)が下部ケース11aにより区画され、径方向内側が大径筒部12a3により区画され、下側(下部)がフランジ部12a4により区画される空間である。主空間13aは、環状に形成される。主空間13aは、上側に隙間13cを有する。隙間13cは、第2下部下流空間S3と連通する。
【0082】
排出流路13bは、主空間13aの径方向内側の少なくとも一か所から、径方向内側且つ下方へ延びる空間である。本実施形態では、排出流路13bが2つの場合が示される。排出流路13bの先端は、後述する第1開口14aとなる。
【0083】
<<開口>>
開口14は、第1貯留室13に形成され、第1貯留室13内の油滴状オイルLを、第1貯留室13外に排出するための部位である。開口14は、第1開口14a及び第2開口14bを含む。
【0084】
第1開口14aは、第1貯留室13の下部に形成され、エンジン40の内部空間(即ち、カバー内空間41d)に油滴状オイルLを排出するための部位である。具体的には、第1開口14aは、排出流路13bの径方向内側且つ下方の端部において、下方に開口する部位である。本実施形態において、一例として、2つの第1開口14aが示される。
【0085】
第2開口14bは、第1貯留室13の側部に形成され、エンジン40の内部空間(即ち、オイルパン43)に油滴状オイルLを排出するための部位である。具体的には、第2開口14bは、下部ケース11aを径方向内側から径方向外側に貫通する部位である。本実施形態において、第2開口14bは、隙間13cの径方向外側に設けられる。第2開口14bは、隙間13cの上方に設けられてもよいし、下方に設けられてもよい。第2開口14bは、第1開口14aより上方に位置する。本実施形態では、一例として、2つの第2開口14bが示される。
【0086】
<<一対のオイルシール>>
一対のオイルシール16は、上下方向に所定間隔を有して、下部ケース11aに取付けられる。具体的には、一対のオイルシール16は、下部ケース11aに設けられる一対の溝2gに配置される。一対のオイルシール16が一対の溝2gに配置された状態で、下部ケース11aがヘッドカバー41に嵌め込まれることにより、一対のオイルシール16は、ヘッドカバー41と下部ケース11aの間に挟まれて、両者の間をシールする。一対のオイルシール16は、下部ケース11aがヘッドカバー41に取付けられた状態で、ヘッドカバー41と接触し、下部ケース11aとヘッドカバー41との間に、油滴状オイルLを貯留する第2貯留室17を形成する。
【0087】
<<第2貯留室>>
第2貯留室17は、油滴状オイルLを貯留する空間である。第2貯留室17は、下部ケース11aとヘッドカバー41とにより区画される。具体的には、第2貯留室17は、径方向外側がヘッドカバー41により区画され、径方向内側が下部ケース11aにより区画される。第2貯留室17は、上側及び下側を、一対のオイルシール16によりシールされている。第2貯留室17は、第1貯留室13の径方向外側において、環状に形成される。第2貯留室17は、第2開口14bと連通する。
【0088】
<<第2オイル排出ポート>>
第2オイル排出ポート18は、油滴状オイルLをオイルセパレータ10の内部から外部に流出させる部位である。本実施形態に係る第2オイル排出ポート18は、円筒型をなす。第2オイル排出ポート18は、一端でヘッドカバー41に取付けられ、他端で排出管19に取付けられる。具体的には、第2オイル排出ポート18の一端は、ヘッドカバー41に圧入され、他端は、排出管19に接続される。第2オイル排出ポート18の内部空間は、第2貯留室17と連通する。
【0089】
<<第1逆止弁>>
第1逆止弁84は、第1貯留室13からカバー内空間41dに、油滴状オイルLを排出させる部位である。第1逆止弁84は、第1開口14aに設けられる。第1逆止弁84は、第1開口14aを開閉させる弁である。第1逆止弁84は、弁体84aと、軸部84bと、ストッパ部84cとを有する。
【0090】
弁体84aは、第1開口14aを開閉する部位である。弁体84aは、円形の板部材である。弁体84aの位置や数は、第1開口14aを開閉することができれば特に限定されない。本実施形態において、弁体84aは、第1開口14aを覆うように1つ設けられる。
【0091】
軸部84bは、弁体84aの移動方向を規制する部位である。軸部84bは、棒状の部位である。軸部84bは、弁体84aの中心を貫通するように設けられる。軸部84bは、排出流路13bを構成する本体部12aの部分の貫通穴に挿入される。これにより、軸部84bは、弁体84aとともに貫通穴に沿って上下に移動可能となる。軸部84bが上下に移動することで、弁体84aも上下に移動し、第1開口14aを開閉させる。
【0092】
ストッパ部84cは、弁体84a及び軸部84bの上下方向の移動量を規制する部位である。ストッパ部84cは、軸部84bの一部が径方向に膨らんだ部位である。ストッパ部84cは、軸部84bにおいて、弁体84aの上面から所定距離だけ上に離れた部分に設けられる。ここで、所定距離とは、上記貫通穴の上下方向の長さと弁体84aを上下方向に移動させる量を足した長さである。ストッパ部84cの径は、貫通穴の径よりも大きくなっている。このため、軸部84bが下向きに移動する際にストッパ部84cが貫通穴の縁に接触し、弁体84aの下向きの移動が制限される。
【0093】
弁体84aの上面には第1貯留室13の内部空間の圧力が作用し、弁体84aの下面には下部上流空間S1の圧力が作用する。第1貯留室13の内部空間の圧力が下部上流空間S1の圧力よりも大きい場合は、弁体84aは下方に移動し、第1開口14aが開放される。一方、下部上流空間S1に流入するミスト状オイルを含むブローバイガスB1の流量が大きくなって、弁体84aの下面に作用するミスト状オイルを含むブローバイガスB1の圧力が大きくなると、弁体84aは上に移動し、第1開口14aが閉鎖される。
【0094】
<<第2逆止弁>>
図1に示すように、オイルセパレータ10は、第2逆止弁86を有する。第2逆止弁86は、排出管19に設けられ、第2開口14bから、リターンパイプ21を介してオイルパン43内に、油滴状オイルLを排出させる。第2逆止弁86の上側には、第2オイル排出ポート18及び排出管19を流れる油滴状オイルLの圧力が作用する。第2逆止弁86の下側には、オイルパン43内に貯留されるエンジンオイルの圧力が作用する。第2逆止弁86は、第2逆止弁86の下側の圧力が第2逆止弁86の上側の圧力よりも大きいとき、排出管19を閉鎖する。一方、第2逆止弁86の下側の圧力が第2逆止弁86の上側の圧力よりも小さいとき、第2逆止弁86は、排出管19を開放する。
【0095】
なお、オイルセパレータ10は、第2逆止弁86を有さなくてもよい。この場合、オイルパン43内のエンジンオイルがオイルセパレータ10に到達しないよう、排出管19の上下方向長さを適正値に設定する必要がある。この点、排出管19の内部におけるエンジンオイルの油面の高さHについては、
図7を用いて後述する。
【0096】
<<板ばね>>
板ばね80は、圧縮量に比例する反発力を発生させる部材である。板ばね80は、金属製の環状部材であり、上下に波型に形成される。このため、板ばね80は、上下に圧縮されると反発力を発生させる。板ばね80は、円板部12e2の上面に1個配置される。板ばね80は、円板部12e2の上面と蓋部3fの下面との間に挟まれて、上下に圧縮されている。これにより、板ばね80は、反発力を発生させ、円板部12e2を通じて捕集構造体12と、捕集構造体12が嵌め込まれている下部ケース11aに対して下向きの力を作用させる。また、板ばね80が発生させる反発力は、蓋部3f、小径筒体3e及びガス排出ポート3jを通じて、上部ケース11bに対して上向きの力を作用させる。
【0097】
板ばね80によって、下部ケース11aには下向きの力が作用し、上部ケース11bには上向きの力が作用する。ここで、上部ケース11bは、フック部3bを下部ケース11aの爪部2dに嵌合させることによって下部ケース11aに組み付けられるが、フック部3bと爪部2dの寸法のばらつきによって、嵌合部にガタつきが発生する場合がある。これに対して、本実施形態によれば、板ばね80によって、下部ケース11aに下向きの力が、上部ケース11bに上向きの力が作用する(つまり、両ケースを上下に離間させる向きの反発力が作用する)ため、上部ケース11bは、下部ケース11aに対してガタつきなく組み付けられる。
【0098】
<<オイルトラップ>>
オイルトラップ82は、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1からミスト状オイルを分離する。オイルトラップ82は、環状の部材である。オイルトラップ82は、環状面部82aと、傾斜面部82bと、を有する。
【0099】
環状面部82aは、オイルトラップ82の位置を決める。環状面部82aは、環状に形成された板状の部位である。環状面部82aは、突起部2aの上に載せられている。環状面部82aの外周側の部位が突起部2aの上面とフランジ部12a4の下面に挟まれることにより、オイルトラップ82は保持される。
【0100】
傾斜面部82bは、環状に形成された板状の部位である。傾斜面部82bは、下方に向かって内径が小さくなるテーパ状となっている。傾斜面部82bは、環状面部82aの内周側の縁に設けられる。傾斜面部82bは、流入ポート2bと径方向に対向するように配置される。なお、傾斜面部82bは、環状面部82aの内周側の縁から、鉛直下方に延びるものであってもよい。傾斜面部82bの下端は、下部ケース11aから上方に離間し、隙間82cが形成されている。当該隙間82cは、傾斜面部82bの下端と下部ケース11aの間の隙間である。
【0101】
<ミスト状オイルを含むブローバイガスB1、油滴状オイルL、及び、ミスト状オイルが分離された後のブローバイガスB2の流れ>
図6において、破線はミスト状オイルを含むブローバイガスB1の流れを示し、一点鎖線はミスト状オイルが分離された後のブローバイガスB2の流れを示し、実線は油滴状オイルLの流れを示す。
図6では、図面の見易さの観点から、説明に必要な符号のみを示す。
【0102】
ミスト状オイルを含むブローバイガスB1は、カバー内空間41dから流入ポート2bを通って、下部上流空間S1に流入する。
【0103】
下部上流空間S1に流入する際、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1は、傾斜面部82bに衝突し、流れ方向が変化する。一方、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1のミスト状オイルの一部は、流れ方向の変化についていけず、傾斜面部82bの表面上で凝集することによりミスト状オイルを含むブローバイガスB1から分離される。これにより、下部上流空間S1に流入するするミスト状オイルを含むブローバイガスB1の濃度は、カバー内空間41dにおけるミスト状オイルを含むブローバイガスB1の濃度よりも低くなる。
【0104】
下部上流空間S1に流入するときに、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1から分離されたミスト状オイルの一部は、凝集して油滴状オイルとなる。この油滴状オイルは、重力によって下方に流れ、下部ケース11aの下端面11cへ流れる。この下端面11cが第1オイル排出ポート2cに向かって傾いているため、油滴状オイルは、第1オイル排出ポート2cから、カバー内空間41dへ流れる。
【0105】
ここで、下部上流空間S1に流入するミスト状オイルを含むブローバイガスB1の流量は、エンジン40の運転状態等によって変化する。下部上流空間S1に流入するガス流量が小さい時は、下部上流空間S1におけるガス圧力が低いため、スプリング12b4のバネ力によりバルブ弾性体12b2が小径筒部12a2の上端開口に密着して塞ぐことで、小径筒部12a2の上端開口は、閉じられた状態となる。
【0106】
一方、下部上流空間S1に流入するミスト状オイルを含むブローバイガスB1の流量が増加し、下部上流空間S1におけるガス圧力が一定の大きさを超えると、下部上流空間S1のガス圧力によりバルブ本体12b1に作用する上向きの力が、スプリング12b4によりバルブ本体12b1に作用する下向きの力よりも大きくなる。従ってバルブ本体12b1は上向きに移動して、バルブ弾性体12b2が小径筒部12a2の上端から上方に離間し、小径筒部12a2の上端開口が開いた状態となる。この場合、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1は、流路C1を通って、第1下部下流空間S2へ流れる。なお、下部上流空間S1のガス圧力が高いほど、バルブ本体12b1の上方への移動量が大きくなり、流路C1の開度が大きくなる。
【0107】
流路C1を通過したミスト状オイルを含むブローバイガスB1は、流路C1の出口に対向している捕集体12cに衝突する。ミスト状オイルを含むブローバイガスB1が捕集体12cを通過する間に、ミスト状オイルは、捕集体12cにより捕集されることにより分離される。捕集体12cを通過してミスト状オイルが分離された分離後のブローバイガスB2は、第2下部下流空間S2へ流れる。
【0108】
続いて、分離後のブローバイガスB2の流れを説明する。
【0109】
分離後のブローバイガスB2は、第2下部下流空間S3から上部上流空間S4へ流れる。ここで、PCVバルブ3kが閉じた状態であれば、分離後のブローバイガスB2は、上部上流空間S4内に滞留する。一方、PCVバルブ3kが開いた状態であれば、分離後のブローバイガスB2は、上部下流空間S5へ流れる。そして、分離後のブローバイガスB2は、ガス排出ポート3jを通ってブリーザパイプ20へ流れる。
【0110】
上部下流空間S5が、ガス排出ポート3j及びブリーザパイプ20を通じて吸気管30に接続されているため、エンジン40の吸気圧(負圧)が高くなってダイヤフラム弁3k1の弁部3kvを下方へ引っ張る力が、スプリング3k2の弾性力よりも大きくなると、PCVバルブ3kの開度が小さくなる。また、エンジン40の吸気圧がさらに高くなると、弁部3kvが小径筒体3eの開口部3gと接触して、PCVバルブ3kは完全に閉じる。一方、エンジン40の吸気圧が低くなって、弁部3kvを下方へ引っ張る力よりも、スプリング3k2の弾性力の方が大きくなると、PCVバルブ3kの開度が大きくなる。
【0111】
次いで、油滴状オイルLの流れを説明する。
【0112】
捕集体12cによって、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1から分離されたミスト状オイルは、凝集して油滴状オイルLとなる。この油滴状オイルLは、重力によって捕集体12cから第2下部下流空間S3へ流れる。第2下部下流空間S3に流れた油滴状オイルLは、重力の作用により、隙間13cを通じて、さらに下方の第1貯留室13へ流れる。
【0113】
油滴状オイルLは、第1貯留室13の排出流路13bを通って第1開口14aへ流れる。上述の通り、弁体84aの上面側である排出流路13bの圧力よりも、弁体84aの下面側である下部上流空間S1の圧力が高い場合は、弁体84aが押し上げられて、第1開口14aが閉じる。このため、下部上流空間S1に流入するミスト状オイルを含むブローバイガスB1が、排出流路13bに流れることがない。エンジン40が稼働している間、下部上流空間S1に流れ込むミスト状オイルを含むブローバイガスB1の量が多くなるため、下部上流空間S1の圧力が高くなる。このため、通常、エンジン40が稼働している間、第1開口14aは閉鎖される。
【0114】
一方、排出流路13bの圧力が下部上流空間S1の圧力に対して高い場合又は同じ場合は、弁体84aが押し下げられて、第1開口14aが開く。エンジン40が停止すると、下部上流空間S1に流れ込むミスト状オイルを含むブローバイガスB1の量が少なくなるため、下部上流空間S1の圧力が低下する。このため、通常、エンジン40が停止している間、第1開口14aは開放される。この時、油滴状オイルLは、第1開口14aを通って下部上流空間S1へ流れる。そして、油滴状オイルLは、下部ケース11aの下端面11cへ流れ、第1オイル排出ポート2cを通ってカバー内空間41dへ流れる。
【0115】
ところで、エンジン40が長期間に亘って稼働する場合、第1逆止弁84が第1開口14aを閉鎖するため、油滴状オイルLは、第1貯留室13に溜まり続ける。第1貯留室13から溢れ出た油滴状オイルLは、第2開口14bを通じて、第2貯留室17へ流れ込む。そして、第1貯留室13から溢れ出た油滴状オイルLの量が、第2貯留室17の容量を超えると、この油滴状オイルLは、第2オイル排出ポート18、排出管19、及びリターンパイプ21を通じて、オイルパン43に還元される。
【0116】
<オイルセパレータの性能と油面の高さとの関係>
図7は、オイルセパレータ10の性能と排出管19内の油面の高さHとの関係を説明する図である。
【0117】
図7の左縦軸(分離効率)は、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1の量に対する、オイルセパレータ10に捕集されるミスト状オイルの量の割合を示す。
図7の右軸(差圧)は、捕集体12cの前後の圧力差、即ち、第1下部下流空間S2の圧力と第2下部下流空間S3の圧力との差を示す。また、横軸(高さH)は、オイルパン43内のエンジンオイルの油面から、排出管19内のエンジンオイルの油面までの高さを示す(
図1も参照)。
【0118】
図7の実線及び破線で示すように、捕集体12cの前後の差圧が高くなればなるほど、捕集体12cにおける分離効率は高くなる。
【0119】
例えば、エンジン40の吸気圧(負圧)が高くなると、第2下部下流空間S3の圧力は、この吸気圧に近づく。この場合、エンジン40においてミスト状オイルを含むブローバイガスB1の発生量が増えることから、下部上流空間S1の圧力は高くなる。つまり、エンジン40の吸気圧が高くなると、捕集体12cの前後の差圧が大きくなり、分離効率が向上する。
【0120】
また、
図7に示すように捕集体12cの前後の差圧が大きくなり、分離効率が向上すると、これに伴い、排出管19内のエンジンオイルの高さが高くなる。
【0121】
例えば、エンジン40の吸気圧が高くなると、エンジン40の負荷が増加することから、オイルパン43内のエンジンオイルの油面に加わる圧力が上昇する。このため、オイルパン43内のエンジンオイルは、排出管19内を、所定の高さHまで上昇する。ここで、所定の高さHは、オイルパン43内のエンジンオイルの油面に加わる圧力(排出管19内のエンジンオイルの高さを上昇させる力)と、第2下部下流空間S3内の圧力及び重力(排出管19内のエンジンオイルの高さを下降させる力)と、が釣り合う位置である。つまり、捕集体12cの分離効率を向上させると、これに応じて、オイルパン43内のエンジンオイルの油面に加わる圧力(排出管19内のエンジンオイルの高さを上昇させる力)と、第2下部下流空間S3内の圧力及び重力(排出管19内のエンジンオイルの高さを下降させる力)との差が大きくなる。このため、油面の高さHが高くなる。
【0122】
よって、排出管19に第2逆止弁86を設けることなく、捕集体12cの分離効率を高め、オイルセパレータ10の性能向上を図る場合は、排出管19内のエンジンオイルが第2下部下流空間S3に到達しないよう、排出管19の上下方向長さを設計する必要がある。一例として、オイルセパレータ10の分離効率を75%に設定する場合、
図7に示すように、オイルパン43内のエンジンオイルの油面に対する、排出管19内のエンジンオイルの高さHは、200mmとなる。このため、排出管19の上下方向長さを、少なくとも200mmより長く設計する。この点、上述したように、排出管19に第2逆止弁86を設ける場合、排出管19内のエンジンオイルが第2下部下流空間S3に到達することを、確実に回避できる。
【0123】
(変形例)
次いで、第1実施形態の変形例に係る換気システム1vについて説明する。変形例に係る換気システム1vは、第1実施形態に係る換気システム1に対して、リターンパイプ21を有さない点、油滴状オイルを還元する位置の点で異なる。以下、上述の換気システム1と同じ又は類似する機能を有する構成については、換気システム1と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0124】
図8は、変形例に係る換気システム1vとエンジンシステム1aを示す図である。換気システム1vは、オイルセパレータ10と、排出管19と、ブリーザパイプ20と、を備える。オイルセパレータ10の第2オイル排出ポート18は、シリンダブロック内に、油滴状オイルLを排出する。第2オイル排出ポート18は、他端で排出管19に接続されている。第2オイル排出ポート18は、他端において、排出管19を介してシリンダブロック下部空間(シリンダブロック内の空間の一例)と連通する。
【0125】
オイルセパレータ10の第2逆止弁86は、第2開口14bから、シリンダブロック内に、油滴状オイルを排出させる。第2逆止弁86の上側には、第2オイル排出ポート18及び排出管19を流れる油滴状オイルLの圧力が作用する。第2逆止弁86の下側には、シリンダブロック下部空間内の圧力が作用する。第2逆止弁86は、第2逆止弁86の下側の圧力が第2逆止弁86の上側の圧力よりも大きいとき、排出管19を閉鎖する。一方、第2逆止弁86の下側の圧力が第2逆止弁86の上側の圧力よりも小さいとき、第2逆止弁86は、排出管19を開放する。
【0126】
例えば、シリンダブロック下部空間内の圧力が1.5kPaの場合、第2逆止弁86の上側において、油滴状オイルの高さが174.4mmになると、第2逆止弁86の下側の圧力と第2逆止弁86の上側の圧力とが釣り合うことが計算される。このため、油滴状オイルの高さが、174.4mmより高くなった場合、第2逆止弁86は、排出管19を開放する。
【0127】
このため、本変形例に係るオイルセパレータ10では、第2逆止弁86を排出管19の下部(できるだけ低い位置)に配置する。これにより、排出管19内において、第2逆止弁86の上側で、油滴状オイルの高さを高くすることができる。よって、第2逆止弁86の上側の圧力が第2逆止弁86の下側の圧力よりも大きい状態になりやすく、油滴状オイルを、シリンダブロック下部空間に排出しやすくなる。また、変形例に係る換気システム1vでは、リターンパイプを廃止できるので、換気システム1vの構成を簡素化でき、且つ、コスト低減を図ることが可能となる。
【0128】
(別の変形例)
次いで、第1実施形態の別の変形例に係るオイルセパレータ10aについて説明する。本変形例に係るオイルセパレータ10aは、第1実施形態に係るオイルセパレータ10に対して、突起部2aを有さない点、オイルトラップ12a8の構造の点で異なる。以下、第1実施形態のオイルセパレータ10と同じ又は類似する機能を有する構成については、オイルセパレータ10と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0129】
<オイルセパレータ>
図9は、第1実施形態の別の変形例に係るオイルセパレータ10aを示す断面図である。
図9に示すように、オイルセパレータ10aは、ケース11と、捕集構造体12と、第1貯留室13と、開口14と、一対のオイルシール16と、第2貯留室17と、第2オイル排出ポート18と、板ばね80と、第1逆止弁84と、第2逆止弁86とを備える。本変形例に係るオイルセパレータ10aは、捕集構造体12に一体形成されたオイルトラップ12a8を有する。
【0130】
<<捕集構造体>>
捕集構造体12は、本体部12aと、調節バルブ12bと、捕集体12cと、押さえ部材12eとを有する。
【0131】
本体部12aは、環状円板部12a1と、小径筒部12a2と、大径筒部12a3と、フランジ部12a4と、オイルトラップ12a8と、を有する。
【0132】
捕集構造体12において、フランジ部12a4は、大径筒部12a3の下端から径方向外方へ延在する上側フランジ部12a5と、上側フランジ部12a5に対し下方に離間し、上側フランジ部12a5と平行又は略平行に延在する下側フランジ部12a6と、上下方向に延在し、上側フランジ部12a5及び下側フランジ部12a6を連結する連結部12a7と、を有する。フランジ部12a4には、径方向外側に向けて開口する溝が周方向に形成される。当該溝は、上側を上側フランジ部12a5により画定され、下側を下側フランジ部12a6により画定され、径方向内側を連結部12a7により画定されている。当該溝には、オイルシール90が配置されて、フランジ部12a4と下部ケース11aの間をシールする。
【0133】
オイルトラップ12a8は、ミスト状オイルを含むブローバイガスからミスト状オイルを分離する。オイルトラップ12a8は、環状に形成された板状の部位である。オイルトラップ12a8は、フランジ部12a4の下端、具体的には連結部12a7の下端から、下方に延在する部位である。オイルトラップ12a8は、流入ポート2bと径方向に対向する傾斜面部(面部の一例)12a9を有する。つまり、オイルトラップ12a8は、傾斜面部12a9において、流入ポート2bの上下方向高さBを、少なくとも部分的に覆う。より詳細には、オイルトラップ12a8は、傾斜面部12a9において、流入ポート2bの上下方向高さBを、好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上覆う。
【0134】
傾斜面部12a9は、下方に向かって外径が小さくなるテーパ状となっている。傾斜面部12a9は、下側フランジ部12a6の下面の内周側の縁から、下方且つ径方向内方へ傾斜する。傾斜面部12a9は、下側フランジ部12a6の下面の内周側の縁から、鉛直下方に延びてもよい。
【0135】
図9に示すように、オイルトラップ12a8の下端は、下部ケース11aの下端面11cから上方に離間し、これにより、隙間82cが形成されている。当該隙間82cは、傾斜面部12a9の下端と下部ケース11aの下端面11cとの間の上下方向での隙間である。当該隙間82cの上下方向高さAは、流入ポート2bの上下方向高さB以上に設定される。
【0136】
ミスト状オイルを含むブローバイガスB1が下部上流空間S1に流入する際、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1は、傾斜面部12a9に衝突し、流れ方向が変化する。一方、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1のミスト状オイルの一部(特に大粒のミスト状オイル)は、流れ方向の変化についていけず、傾斜面部12a9の表面上で凝集することによりミスト状オイルを含むブローバイガスB1から分離される。
【0137】
本変形例に係るオイルセパレータ10aによれば、傾斜面部12a9が、下方且つ内方へ傾斜しているので、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1が傾斜面部12a9に衝突する際の圧力損失を極力抑制することができる。また、本変形例に係るオイルセパレータ10aでは、オイルトラップ12a8が、流入ポート2bの上下方向高さBを、好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上覆うので、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1の流れ方向を、大きく変化させることができる。このため、ミスト状オイル(特に大粒のミスト状オイル)を、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1から、確実に分離することができる。
【0138】
(第2実施形態)
次いで、本発明の第2実施形態に係るオイルセパレータ100について説明する。第2実施形態に係るオイルセパレータ100は、上述のオイルセパレータ10に対して、ケース110、オイルシール160、第2オイル排出ポート180が異なる。以下、上述のオイルセパレータ10と同じ又は類似する機能を有する構成については、オイルセパレータ10と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0139】
図9は、第2実施形態に係るオイルセパレータ100とヘッドカバー410とを示す斜視図である。
図10は、
図9のオイルセパレータ100の斜視図である。
図11は、
図9のオイルセパレータ100とヘッドカバー410とを示す平面図である。
図12は、
図11のB-B断面図である。
図13は、
図12の断面図において、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1、油滴状オイルL、及び、ミスト状オイルが分離された後のブローバイガスB2の流れを示す図である。
【0140】
<オイルセパレータ>
オイルセパレータ100は、ケース110、捕集構造体12と、第1貯留室13と、開口14と、オイルシール160と、第2オイル排出ポート180と、板ばね80と、オイルトラップ82と、第1逆止弁84と、第2逆止弁86とを備える(
図9~
図12参照)
【0141】
<<ケース>>
ケース110は、下部ケース11a1と、上部ケース11bと、を有する。下部ケース11a1は、外側面に一つの溝200を有する。溝200は、後述するオイルシール160が配置される部位である。溝200は、下部ケース11a1の外側側面において、周方向に設けられている。溝200は、流入ポート2bの上部近傍に設けられる。
【0142】
<<オイルシール>>
オイルシール160は、下部ケース11a1に取付けられる。具体的には、オイルシール160は、下部ケース11a1に設けられる溝200に配置される。オイルシール160が溝200に配置された状態で、下部ケース11a1がヘッドカバー410に嵌め込まれることにより、オイルシール160は、ヘッドカバー410と下部ケース11a1の間に挟まれて、両者の間をシールする。オイルシール160は、下部ケース11aがヘッドカバー410に取付けられた状態で、ヘッドカバー41と接触する。
【0143】
<<第2オイル排出ポート>>
第2オイル排出ポート(オイル排出ポートの一例)180は、油滴状オイルLをオイルセパレータ10の内部から外部に流出させる部位である。本実施形態に係る第2オイル排出ポート180は、円筒型をなす。第2オイル排出ポート180は、オイルシール160よりも上方において、下部ケース11a1に一体形成される。第2オイル排出ポート180は、オイルパン43に貯留されるエンジンオイル内に、油滴状オイルLを排出する。第2オイル排出ポート180は、一端で第2開口14bと連通し、他端でオイルパン43内の空間と連通する。具体的には、第2オイル排出ポート180の他端は、排出管19に接続され、排出管19及びリターンパイプ21を介して、オイルパン43内の空間と連通する。
【0144】
なお、第2オイル排出ポート180の他端は、排出管19を介して、シリンダブロック下部空間と連通してもよい。この場合、リターンパイプ21は設けられず、排出管19がシリンダブロック下部空間と連通する。
【0145】
<<ヘッドカバー>>
図9に示すように、ヘッドカバー410は、上面の一部が下方に窪む窪み部411を有する。窪み部411には、ヘッドカバー410の上部開口41cが形成される。オイルセパレータ100が上部開口41cに嵌め込まれた状態で、窪み部411には、本実施形態に係る第2オイル排出ポート180が配置される。
【0146】
<油滴状オイルの流れ>
図13では、図面の見易さの観点から、説明に必要な符号のみを示す。捕集体12cによって、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1から分離されたミスト状オイルは、凝集して油滴状オイルLとなる。この油滴状オイルLは、重力によって捕集体12cから第2下部下流空間S3へ流れる。第2下部下流空間S3に流れた油滴状オイルLは、重力の作用により、隙間13cを通じて、さらに下方の第1貯留室13へ流れる。
【0147】
油滴状オイルLは、第1貯留室13の排出流路13bを通って第1開口14aへ流れる。エンジン40が長期間に亘って稼働する場合、第1逆止弁84が第1開口14aを閉鎖するため、油滴状オイルLは、第1貯留室13に溜まり続ける。第1貯留室13から溢れ出た油滴状オイルLは、第2開口14bを通じて、第2オイル排出ポート180へ流れ込む。そして、この油滴状オイルLは、第2オイル排出ポート180、排出管19、及びリターンパイプ21を通じて、オイルパン43のエンジンオイル内に還元される。なお、リターンパイプ21が設けられず、第2オイル排出ポート180の他端が、排出管19を介して、シリンダブロック下部空間と連通している場合、油滴状オイルLは、第2オイル排出ポート180及び排出管19を通じて、シリンダブロック下部空間に還元される。
【0148】
上記各実施形態においては、以下のような態様が開示される。
【0149】
(態様1)
オイルセパレータ10,100は、エンジン40に取付けられるケース11,110と、ケース11,110内に収容され、エンジン40で発生したミスト状オイルを含むガスB1からミスト状オイルを捕集する捕集構造体12と、ケース11,110と捕集構造体12とによって区画され、ミスト状オイルが凝集してなる油滴状オイルLを貯留する第1貯留室13と、第1貯留室13に形成され、第1貯留室13内の油滴状オイルLを、第1貯留室13外に排出するための開口14と、を備える。開口14は、第1貯留室13の下部に形成され、エンジン40のカバー内空間41dに油滴状オイルLを排出するための第1開口14aと、第1貯留室13の側部に形成され、オイルパン43又はシリンダブロック下部空間に油滴状オイルLを排出するための第2開口14bと、を含み、第2開口14bは、第1開口14aより上方に位置する。
【0150】
態様1のオイルセパレータ10によれば、エンジン40の稼働に伴って発生した油滴状オイルLを、第1開口14aを通じてカバー内空間41dへ還元することができる。ところで、長期間に亘るエンジン40の稼働により、多量の油滴状オイルLが発生した場合、この油滴状オイルLが第1貯留室13に溜まり、第1開口14aから排出できないことがある。このような場合であっても、第1開口14aより上方に第2開口14bが配置されるので、第1貯留室から溢れ出た油滴状オイルLは、第2開口14bを通じて、オイルパン43又はシリンダブロック下部空間へ還元される。よって、エンジン40の稼働状態に関わらず油滴状オイルLの排出が可能になる。
【0151】
(態様2)
態様1において、オイルセパレータ10,100は、第1開口14aに設けられる第1逆止弁84を備え、第1逆止弁84は、第1貯留室13からカバー内空間41dに、油滴状オイルLを排出させる。
【0152】
態様2のオイルセパレータ10,100によれば、第1逆止弁84は、第1貯留室13からカバー内空間41dに向かう油滴状オイルLの流れを可能にし、カバー内空間41dから第1貯留室13へ向かうミスト状オイルを含むブローバイガスB1の流れを遮断する。よって、カバー内空間41dへ還元させる油滴状オイルLへの、上記ブローバイガスB1の混入を回避することができる。
【0153】
(態様3)
態様1又は2において、オイルセパレータ10は、上下方向に所定間隔を有してケース11に取付けられる一対のオイルシール16を備え、一対のオイルシール16は、ケース11がエンジン40に取付けられた状態で、エンジン40と接触し、ケース11とエンジン40との間に、油滴状オイルLを貯留する第2貯留室17を形成し、第2貯留室17は、第2開口14bと連通する。
【0154】
態様3のオイルセパレータ10によれば、長期間に亘るエンジン40の稼働により、多量の油滴状オイルLが発生し、この油滴状オイルLが第1貯留室13に溜まった場合であっても、第1貯留室13から溢れ出た油滴状オイルLを、第2開口14bを通じて、第2貯留室17で貯留することができる。
【0155】
(態様4)
態様1から3のいずれかにおいて、オイルセパレータ10は、エンジン40の構成要素であるオイルパン43に貯留されるエンジンオイル内に、油滴状オイルLを排出する第2オイル排出ポート18を備え、第2オイル排出ポート18の一端は、第2貯留室17と連通し、第2オイル排出ポート18の他端は、オイルパン43内の空間と連通する。
【0156】
態様4のオイルセパレータ10によれば、長期間に亘るエンジン40の稼働により、多量の油滴状オイルLが発生し、この油滴状オイルLが第1貯留室13から溢れ出た場合であっても、油滴状オイルLを、第2オイル排出ポート18を通じて、オイルパン43に貯留されるエンジンオイル内に還元できる。また、第2オイル排出ポート18の他端は、エンジンオイルが貯留されたオイルパン43内の空間と連通していることから、オイルパン43から、第2オイル排出ポート18を通じて、オイルセパレータ10の内部に、ミスト状オイルを含むブローバイガスが逆流することを回避できる。
【0157】
(態様5)
態様1から3のいずれかにおいて、オイルセパレータ10は、エンジン40の構成要素であるシリンダブロック内に、油滴状オイルLを排出する第2オイル排出ポート18であって、一端において、第2貯留室17と連通し、他端において、シリンダブロック内の空間と連通する第2オイル排出ポート18と、第2開口14bからシリンダブロック内に、油滴状オイルLを排出させる第2逆止弁86と、を備える。
【0158】
態様5のオイルセパレータ10によれば、長期間に亘るエンジン40の稼働により、多量の油滴状オイルLが発生し、この油滴状オイルLが第1貯留室13から溢れ出た場合であっても、油滴状オイルLを、第2オイル排出ポート18を通じて、シリンダブロック内に還元できる。また、第2開口14bからシリンダブロック内に、油滴状オイルLを排出させる第2逆止弁86が設けられることから、シリンダブロックから、第2オイル排出ポート18を通じて、オイルセパレータ10の内部に、ミスト状オイルを含むブローバイガスが逆流することを回避できる。
【0159】
(態様6)
態様1又は2において、オイルセパレータ100は、ケース110に取付けられる一つのオイルシール160であって、ケース110がエンジン40に取付けられた状態で、エンジン40と接触する一つのオイルシール160と、オイルシール160よりも上方においてケース110に一体形成され、エンジン40の構成要素であるオイルパン43に貯留されるエンジンオイル内に、油滴状オイルLを排出する第2オイル排出ポート180と、を備え、第2オイル排出ポート180の一端は、第2開口14bと連通し、第2オイル排出ポート180の他端は、オイルパン43内の空間と連通する。
【0160】
態様6のオイルセパレータ100によれば、一つのオイルシール160で、ケース110とエンジン40とをシールすることができるので、組付け工数を削減することができる。また、第2オイル排出ポート180がケース110(即ち下部ケース11a1)に一体形成されているので、第2オイル排出ポート180がケース110と別体に設けられている場合と比較して、オイルセパレータ100の製造を容易にできる。さらに、長期間に亘るエンジン40の稼働により、多量の油滴状オイルLが発生し、この油滴状オイルLが第1貯留室13から溢れ出た場合であっても、油滴状オイルLを、第2オイル排出ポート180を通じて、オイルパン43に貯留されるエンジンオイル内に還元できる。また、第2オイル排出ポート180の他端は、エンジンオイルが貯留されたオイルパン43内の空間と連通していることから、オイルパン43から、第2オイル排出ポート180を通じて、オイルセパレータ100の内部に、ミスト状オイルを含むブローバイガスが逆流することを回避できる。
【0161】
(態様7)
態様4又は6において、オイルセパレータ10,100は、第2開口14bからオイルパン43内に、油滴状オイルLを排出させる第2逆止弁86を備える。
【0162】
態様7のオイルセパレータ10,100によれば、第2逆止弁86は、第2開口14bからオイルパン43に向かう油滴状オイルLの流れを可能にし、オイルパン43から第2開口14bへ向かうエンジンオイルの流れを遮断する。よって、オイルセパレータ10,100内へのエンジンオイルの進入(逆流)を回避することができる。
【0163】
(態様8)
態様1又は2において、オイルセパレータ100は、ケース110に取付けられる一つのオイルシール160であって、ケース110がエンジン40に取付けられた状態で、エンジン40と接触する一つのオイルシール160と、オイルシール160よりも上方においてケース110に一体形成され、エンジン40の構成要素であるシリンダブロック内に、油滴状オイルLを排出する第2オイル排出ポート180であって、一端において、第2開口14bと連通し、他端において、シリンダブロック内の空間と連通する第2オイル排出ポート180と、第2開口14bからシリンダブロック内に、油滴状オイルLを排出させる第2逆止弁86と、を備える。
【0164】
態様8のオイルセパレータ100によれば、一つのオイルシール160で、ケース110とエンジン40とをシールすることができるので、組付け工数を削減することができる。また、第2オイル排出ポート180がケース110(即ち下部ケース11a1)に一体形成されているので、第2オイル排出ポート180がケース110と別体に設けられている場合と比較して、オイルセパレータ100の製造を容易にできる。さらに、長期間に亘るエンジン40の稼働により、多量の油滴状オイルLが発生し、この油滴状オイルLが第1貯留室13から溢れ出た場合であっても、油滴状オイルLを、第2オイル排出ポート180を通じて、シリンダブロック内に還元できる。また、第2開口14bからシリンダブロック内に、油滴状オイルLを排出させる第2逆止弁86が設けられることから、シリンダブロックから、第2オイル排出ポート180を通じて、オイルセパレータ10の内部に、ミスト状オイルを含むブローバイガスが逆流することを回避できる。
【0165】
(態様9)
態様1から8のいずれかにおいて、ケース11は、エンジン40の内部空間から、ケース11の内部空間に、ミスト状オイルを含むガスB1を流入させる流入ポート2bを有し、捕集構造体12は、捕集構造体12に一体形成され、流入ポート2bに対向する面部12a9を含むオイルトラップ12a8を有する。
【0166】
態様9のオイルセパレータ10aによれば、オイルトラップ12a8が、捕集構造体12に一体形成されている。このため、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1からミスト状オイルを分離させる効果を維持しつつ、コスト低減、CO2削減を図ることができる。具体的には、金型製造時の資源(原材料)と工数を削減し、射出成型時の工数を削減し、さらにオイルセパレータ10aの組み立て時の工数を削減することができる。れにより、オイルセパレータ10aの製造に関わるコスト低減と、CO2削減に貢献できる。
【0167】
(態様10)
態様9において、オイルトラップ12a8は、面部12a9の下方において、ケース11の下端面11cとの間に隙間82cを形成し、隙間82cの上下方向高さAは、流入ポート2bの上下方向高さB以上に設定される。
【0168】
態様10のオイルセパレータ10aによれば、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1が、隙間82cを通過するときに圧力損失を、ミスト状オイルを含むブローバイガスB1が、流入ポート2bを通過する時の圧力損失と同等又は当該圧力損失より低くできる。
【0169】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に係るオイルセパレータ10,100に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0170】
2b 流入ポート、10,100 オイルセパレータ、11,110 ケース、11c 下端面、12 捕集構造体、12a8 オイルトラップ、 12a9 傾斜面部(面部)、13 第1貯留室、14 開口、14a 第1開口、14b 第2開口、16 一対のオイルシール、160 オイルシール、17 第2貯留室、18,180 第2オイル排出ポート(オイル排出ポート)、86 第2逆止弁、40 エンジン、41d カバー内空間(エンジンの内部空間)、43 オイルパン、82c 隙間、A 隙間の上下方向高さ、B 流入ポートの上下方向高さ、B1 ミスト状オイルを含むブローバイガス(ミスト状オイルを含むガス)、L 油滴状オイル