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特開2024-120284アスファルト非含有のアスファルト代替組成物並びに舗装材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120284
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】アスファルト非含有のアスファルト代替組成物並びに舗装材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/10 20060101AFI20240829BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240829BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240829BHJP
【FI】
E01C7/10
C08K5/09
C08L21/00
C08L91/06
C08L91/00
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026962
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 信之
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 泰丈
(72)【発明者】
【氏名】平 健太郎
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AA05
2D051AF01
2D051AG02
2D051AG04
2D051AG09
2D051AG15
2D051AH02
4J002AC143
4J002AE032
4J002AE042
4J002AE051
4J002AF031
4J002AJ001
4J002BB032
4J002BN063
4J002BP011
4J002CF003
4J002CK023
4J002DE006
4J002DE086
4J002DE236
4J002DJ016
4J002DL006
4J002DM006
4J002FD016
4J002FD021
4J002FD022
4J002FD023
4J002GL00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】近年においては、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化しており、カーボンニュートラルを念頭においた化石資源由来のアスファルトに替わる植物資源由来のアスファルト代替物が望まれている。本発明は、アスファルトに代えて植物資源由来の脂肪酸ピッチを含むアスファルト非含有のアスファルト代替組成物を提供する。
【解決手段】本発明のアスファルト非含有のアスファルト代替組成物は、米糠脂肪酸ピッチと、熱可塑性エラストマと、ワックスと、を含むことを特徴とする。また、本発明は、このアスファルト代替組成物を含むアスファルト非含有の舗装材料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠脂肪酸ピッチと、熱可塑性エラストマと、ワックスと、を含むことを特徴とするアスファルト非含有のアスファルト代替組成物。
【請求項2】
前記米糠脂肪酸ピッチの動粘度(100℃)は、50cSt以上、200cSt以下であることを特徴とする請求項1に記載のアスファルト非含有のアスファルト代替組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のアスファルト非含有のアスファルト代替組成物と、骨材と、を含むことを特徴とする舗装材料。
【請求項4】
マーシャル安定度が4.90kN以上であることを特徴とする請求項3に記載の舗装材料。
【請求項5】
請求項3に記載の舗装材料の製造方法であって、
加熱攪拌した前記骨材に前記熱可塑性エラストマを投入する工程と、
前記熱可塑性エラストマを取入してから所定時間経過後に、予熱した前記米糠脂肪酸ピッチを投入する工程と、
前記米糠脂肪酸ピッチを投入してから所定時間経過後に、さらに前記熱可塑性エラストマと前記ワックスとを投入して所定温度で混合する工程と、
を有することを特徴する舗装材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト非含有のアスファルト代替組成物並びに舗装材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトは、舗装材料、ルーフィング材料、防水材料などに広く使用されている。中でも舗装材料(例えば、特許文献1参照)へのアスファルトの需要は大きい。その一方で、石油をはじめとする化石資源から主に得られるアスファルトは、その埋蔵量の限界や昨今の海外情勢によって価格の高騰が著しい。そのためアスファルトは、将来に向けての安定供給が懸念されている。
また、近年においては、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化しており、カーボンニュートラルを念頭においた化石資源由来のアスファルトに替わる、いわゆる植物資源由来のアスファルト代替物が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-157427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原油の常圧残油の減圧蒸留ボトムとして得られるアスファルトの代替物としては、例えば植物油脂の蒸留ボトムとして得られる脂肪酸ピッチが考えられる。しかしながら、植物資源由来の脂肪酸ピッチは、油性成分の蒸留工程で得られる点で石油アスファルトと共通するものの、舗装用の基本となるストレートアスファルトと同等の性能(例えば、JIS K 2207参照)を有する脂肪酸ピッチを含むものは未だ知られていない。
【0005】
本発明の課題は、アスファルトに代えて植物資源由来の脂肪酸ピッチを含むアスファルト非含有のアスファルト代替組成物並びにこのアスファルト代替組成物を含む舗装材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した本発明のアスファルト非含有のアスファルト代替組成物は、米糠脂肪酸ピッチと、熱可塑性エラストマと、ワックスと、を含むことを特徴とする。
また、前記課題を解決した本発明の舗装材料は、前記アスファルト非含有のアスファルト代替組成物と、骨材と、を含むことを特徴とする。
また、本発明は、前記舗装材料の製造方法であって、加熱攪拌した前記骨材に前記熱可塑性エラストマを投入する工程と、前記熱可塑性エラストマを取入してから所定時間経過後に、予熱した前記米糠脂肪酸ピッチを投入する工程と、前記米糠脂肪酸ピッチを投入してから所定時間経過後に、さらに前記熱可塑性エラストマと前記ワックスとを投入して所定温度で混合する工程と、を有することを特徴する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アスファルトに代えて植物資源由来の脂肪酸ピッチを含むアスファルト非含有のアスファルト代替組成物並びにこれを含む舗装材料及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】米糠脂肪酸ピッチの製造工程を示すフロー図である。
図2】舗装材料の製造工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施する形態(本実施形態)のアスファルト非含有のアスファルト代替組成物及びこのアスファルト代替組成物を含む舗装材料について詳細に説明する。
<アスファルト代替組成物>
本実施形態のアスファルト代替組成物は、米糠脂肪酸ピッチと、熱可塑性エラストマと、ワックスを含んでいる。
【0010】
米糠脂肪酸ピッチは、米糠から米油を製造する際にその副産物として得られる。
図1は、米糠脂肪酸ピッチの製造工程を示すフロー図である。なお、図1は、米糠脂肪酸ピッチの製造方法の一例を示すものであり、本実施形態での米糠脂肪酸ピッチは、図1に示す製造方法により得られたものに限定されるものではない。
【0011】
図1に示すように、この製造方法においては、米糠から米油とフーツとが分離される。ここでのフーツは、粗油の脱ガム工程で発生した脱ガム油サイを意味する。
次に、この製造方法においては、減圧下に乾燥させたフーツをケン化又はトイッチェル分解することによって粗脂肪酸を得る。そして、粗脂肪酸は、蒸留工程を経ることで留出物(蒸留米糠脂肪酸)と、蒸留ボトムである残渣とに分けられる。
【0012】
本実施形態での米糠脂肪酸ピッチは、図1に示すように、粗脂肪酸の蒸留残渣である高粘度油性物質である。
本実施形態での米糠脂肪酸ピッチは、炭素数16~18の飽和又は不飽和の脂肪酸を多く含む、100℃における動粘度が50cSt以上、200cSt以下(5.0×10-5/s以上、2.0×10-4/s以下)であるものを想定している。なお、本実施形態での動粘度は、B型粘度計にて測定したものである。
【0013】
熱可塑性エラストマとしては、例えば、スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレン共重合体(SIS)、スチレンエチレンブタジエンスチレン共重合体(SEBS)、ポリエステルエラストマ、ポリウレタンエラストマ、ポリエチレンブチルゴムグラフトポリマ、ポリオレフィン系エラストマなどが挙げられる。中でもスチレンブタジエンスチレン共重合体が好ましい。
【0014】
ワックスとしては、融点が50℃以上、110℃以下のものが好ましい。具体的には、ワックスは、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどが挙げられる。中でもフィッシャートロプシュワックスが好ましい。
【0015】
本実施形態のアスファルト代替組成物における米糠脂肪酸ピッチの含有率は、68~84質量%に設定することができる。
また、本実施形態のアスファルト代替組成物における熱可塑性エラストマの含有率は、10~22質量%に設定することができる。
また、本実施形態のアスファルト代替組成物におけるワックスの含有率は、6~10質量%に設定することができる。
【0016】
また、アスファルト代替組成物は、必用に応じて、さらにゴム、熱可塑性樹脂などを含むことができる。
【0017】
前記のゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、ポリクロロプレン(CR)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(NBR)、イソブチレンイソプレン共重合体(IIR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、エチレンプロピレン共重合体(EPDM)、スチレンイソプレン共重合体(SIR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリン共重合体、ポリアクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0018】
前記の熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アタクチックポリプロピレン(APP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、飽和ポリエステル、ポリブテンなどが挙げられる。
以上のようなアスファルト代替組成物は、プラントミックス型及びプレミックス型のいずれにおいても適用することができる。
【0019】
<舗装材料>
本実施形態の舗装材料は、バインダとしての前記のアスファルト代替組成物と、骨材と、を含んでいる。
骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、再生骨材、セラミックスなどが挙げられる。骨材としては、JIS A 5001-2008に規定された粒径で、2.36mm以上の粗骨材と、2.36mm未満の細骨材とが挙げられる。粗骨材としては、例えば、粒径範囲2.36mm以上、4.75mm未満の7号砕石、粒径範囲4.75mm以上、13.2mm未満の6号砕石、粒径範囲13.2mm以上、1m未満の5号砕石、粒径範囲19mm以上、31.5mm未満の4号砕石が挙げられる。細骨材は、好ましくは粒径0.075mm以上、2.36mm未満の細骨材である。細骨材としては、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂、再生骨材破砕砂などが挙げられる。
中でも骨材は、粗骨材と細骨材との組み合わせが好ましい。
なお、細骨材には、粒径0.075mm未満のフィラーが含まれていてもよい。フィラーとしては、砂、フライアッシュ、石灰石粉末などの炭酸カルシウム、消石灰などが挙げられる。
【0020】
次に、本実施形態に係る舗装材料の製造方法について説明する。
図2は、舗装材料の製造工程を示すフロー図である。
図2に示すように、この製造方法は、加熱下に骨材を攪拌する工程(骨材加熱攪拌工程)と、加熱攪拌した骨材に熱可塑性エラストマを投入する工程(熱可塑性エラストマ投入工程)と、前記熱可塑性エラストマを取入してから所定時間(60秒程度)経過後に、予熱した米糠脂肪酸ピッチを投入する工程(米糠脂肪酸ピッチ投入工程)と、米糠脂肪酸ピッチを投入してから所定時間(10秒程度)経過後に、熱可塑性エラストマとワックスとを投入して所定温度で混合する工程(熱可塑性エラストマ・ワックス投入工程)と、を有している。
【0021】
骨材加熱攪拌工程における骨材の温度としては、170℃程度に設定することができる。
第1の熱可塑性エラストマ投入工程における熱可塑性エラストマとしては、ペレット状の熱可塑性エラストマが好ましい。
第1の熱可塑性エラストマ投入工程における熱可塑性エラストマの投入量は、骨材100質量部に対して8質量部以上、16質量部以下に設定することができる。
【0022】
米糠脂肪酸ピッチ投入工程における米糠脂肪酸ピッチの予熱温度は、160℃程度に設定することができる。
米糠脂肪酸ピッチの投入量は、骨材100質量部に対して68質量部以上、84質量部以下に設定することができる。
【0023】
熱可塑性エラストマ・ワックス投入工程における熱可塑性エラストマの投入量は、骨材100質量部に対して2質量部以上、6質量部以下に設定することができる。
熱可塑性エラストマ・ワックス投入工程における熱可塑性エラストマは、パウダ状のものが好ましい。
熱可塑性エラストマ・ワックス投入工程におけるワックスの投入量は、骨材100質量部に対して6質量部以上、10質量部以下に設定することができる。
熱可塑性エラストマ及びワックスの投入後、155℃程度で60秒程度混合することで本実施形態に係る前記のアスファルト代替組成物を含む舗装材料を得ることができる。
【0024】
本実施形態の舗装材料による舗装形態としては、例えば、密粒度舗装、排水性舗装、透水性舗装、密粒度ギャップアスファルト舗装、砕石マスチックアスファルト舗装、カラー舗装、半たわみ性舗装、保水性舗装、薄層舗装などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
以上のような本実施形態によれば、アスファルトに代えて植物資源由来の脂肪酸ピッチを含むアスファルト非含有のアスファルト代替組成物及びこのアスファルト代替組成物を含む舗装材料を提供することができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、アスファルト代替組成物を含む舗装材料について説明したが、本実施形態のアスファルト代替組成物は、舗装材料に限定されずに、例えばルーフィング材料、防水材料などにも使用することができる。
【実施例0027】
次に、本実施形態に係るアスファルト代替組成物について、以下の実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
[実施例1]
本実施例では、ミキサで攪拌しながら170℃の骨材24kgに、ペレット状のスチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)0.15kgを投入することで、第1混合物(160℃)を得た。
なお、骨材としては、6号砕石、7号砕石、砕砂、細砂、及び石粉の混合物を使用した。
骨材にペレット状のスチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)を投入してから60秒経過後、この第1混合物に、160℃に予熱した米糠脂肪酸ピッチ0.98kgを投入して攪拌することで、第2混合物(155℃)を得た。
本実施例で使用した米糠脂肪酸ピッチの成分分析値を下記表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
第1混合物に米糠脂肪酸ピッチを投入してから10秒(第2混合時間)経過後、この第2混合物に、パウダ状のスチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)0.03kgと、フィッシャートロプシュワックス0.1kgとを投入後、60秒(第3混合時間)攪拌混合した。これにより本実施例の舗装材料を得た。
得られた舗装材料から骨材を除いた本実施例のアスファルト代替組成物の組成は、米糠脂肪酸ピッチ77.5質量%、スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)14.5質量%、及びフィッシャートロプシュワックス8質量%であった。
次に、得られた舗装材料について、下記のマーシャル安定度試験とホイールトラッキング試験とを行った。
マーシャル安定度試験は、舗装評価・試験法便覧(社団法人日本道路協会編)に記載の「B001マーシャル安定度試験方法」に準拠して行った。また、ホイールトラッキング試験は、舗装評価・試験法便覧(社団法人日本道路協会編)に記載の「B003ホイールトラッキング試験」に準拠して行った。
その結果、マーシャル安定度試験における安定度は、7.24kNであり、フロー値は、20(1/100cm)であった。
また、ホイールトラッキング試験におけるDS値は、768(回/mm)であり、60分後変形量は、3.83mmであった。
【0030】
[比較例1]
本実施例では、ミキサで攪拌しながら170℃の骨材24kgに、ストレートアスファルト(60/80)1.4kgを投入後、180秒攪拌することで、舗装材料を得た。
なお、骨材としては、実施例1と同様のものを使用した。
次に、得られた舗装材料について、実施例1と同様にしてマーシャル安定度試験とホイールトラッキング試験とを行った。
その結果、マーシャル安定度試験における安定度は、10.41kNであり、フロー値は、27(1/100cm)であった。
また、ホイールトラッキング試験におけるDS値は、580(回/mm)であり、60分後変形量は、8.20mmであった。
【0031】
[評価結果]
実施例1及び比較例1における試験結果により、実施例1の舗装材料は、アスファルトを含まずに、従来の舗装用のアスファルト混合物と略同等の性能を有することが検証された。
図1
図2