(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120286
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】反応促進剤、反応促進方法、複合体、および複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/38 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
C01B33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026966
(22)【出願日】2023-02-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年6月24日掲載、第44回Clayteamセミナー/EBISワークショップ、講演予稿集 掲載アドレス:https://unit.aist.go.jp/tohoku/clayteam/img2/44th/ab-44th.pdf 〔刊行物等〕 令和4年8月19日開催、産業技術総合研究所東北センターClayteam主催、第44回Clayteamセミナー/EBISワークショップ 〔刊行物等〕 令和5年1月9日公開、Small 2023,2205857、Wiley-VCH GmbH発行
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「ERATO山内物質空間テクトニクスプロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 美陽
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BB13
4G073BB44
4G073BB70
4G073BD16
4G073CM09
4G073CM14
4G073FB01
4G073FD01
4G073FD04
4G073FD20
4G073GA33
4G073GB09
(57)【要約】
【課題】有機化合物を基質とした求電子反応の反応速度を向上させることが可能な反応促進剤、反応促進方法、複合体、および複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の一の態様によれば、有機化合物を基質とした求電子反応を促進する反応促進剤であって、層状ケイ酸塩を含み、前記層状ケイ酸塩の表面に前記有機化合物を吸着させることによって用いられる、反応促進剤が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物を基質とした求電子反応を促進する反応促進剤であって、
層状ケイ酸塩を含み、前記層状ケイ酸塩の表面に前記有機化合物を吸着させることによって用いられる、反応促進剤。
【請求項2】
前記層状ケイ酸塩が、スメクタイト類である、請求項1に記載の反応促進剤。
【請求項3】
前記有機化合物が、カチオン性または中性の有機化合物である、請求項1に記載の反応促進剤。
【請求項4】
前記有機化合物が、テトラピロール環を有する化合物である、請求項3に記載の反応促進剤。
【請求項5】
前記有機化合物が配位子であり、前記求電子反応が前記有機化合物を金属に配位させる反応である、請求項1に記載の反応促進剤。
【請求項6】
有機化合物を基質とした求電子反応を促進する反応促進方法であって、
層状ケイ酸塩の表面に前記有機化合物を吸着させる工程と、
前記層状ケイ酸塩の前記表面に前記有機化合物を吸着させた状態で、前記有機化合物を基質とした求電子反応を行う工程と、
を備える、反応促進方法。
【請求項7】
層状ケイ酸塩と、前記層状ケイ酸塩の表面に吸着した有機金属錯体とを備え、
前記有機金属錯体における前記層状ケイ酸塩側とは反対側の表面が露出している、複合体。
【請求項8】
前記層状ケイ酸塩が、スメクタイト類である、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記有機金属錯体が、カチオン性または中性の有機金属錯体である、請求項7に記載の複合体。
【請求項10】
前記有機金属錯体が、テトラピロール環を有する、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
層状ケイ酸塩と、前記層状ケイ酸塩の表面に吸着した有機金属錯体とを備える複合体の製造方法であって、
前記層状ケイ酸塩と、前記層状ケイ酸塩の表面に吸着し、かつ金属に配位可能な有機化合物とを備える複合体を得る工程と、
前記複合体の前記有機化合物を金属に配位させて、前記層状ケイ酸塩と、前記層状ケイ酸塩の表面に吸着した有機金属錯体とを備える複合体を得る工程と
を備える、複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応促進剤、反応促進方法、複合体、および複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、層状ケイ酸塩の表面に有機化合物を吸着させる技術が知られている。例えば、層状ケイ酸塩の表面に中性やカチオン性のポルフィリンを吸着させることが知られている(非特許文献1、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Shinsuke Takagi et al., “Size-Matching Effect on Inorganic Nanosheets: Control of Distance, Alignment, and Orientation of Molecular Adsorption as a Bottom-Up Methodology for Nanomaterials”, ACS Publications, LANGMUIR 2013, 29, 2108-2119
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-127265号公報
【特許文献2】特開2021-127376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ポルフィリン等の有機化合物を金属に配位させる反応等、有機化合物を基質とした求電子反応において、反応速度の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、有機化合物を基質とした求電子反応の反応速度を向上させることが可能な反応促進剤、反応促進方法、複合体、および複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]有機化合物を基質とした求電子反応を促進する反応促進剤であって、層状ケイ酸塩を含み、前記層状ケイ酸塩の表面に前記有機化合物を吸着させることによって用いられる、反応促進剤。
【0008】
[2]前記層状ケイ酸塩が、スメクタイト類である、上記[1]に記載の反応促進剤。
【0009】
[3]前記有機化合物が、カチオン性または中性の有機化合物である、上記[1]または[2]に記載の反応促進剤。
【0010】
[4]前記有機化合物が、テトラピロール環を有する化合物である、上記[3]に記載の反応促進剤。
【0011】
[5]前記有機化合物が配位子であり、前記求電子反応が前記有機化合物を金属に配位させる反応である、上記[1]ないし[4]のいずれか一項に記載の反応促進剤。
【0012】
[6]有機化合物を基質とした求電子反応を促進する反応促進方法であって、層状ケイ酸塩の表面に前記有機化合物を吸着させる工程と、前記層状ケイ酸塩の前記表面に前記有機化合物を吸着させた状態で、前記有機化合物を基質とした求電子反応を行う工程と、を備える、反応促進方法。
【0013】
[7]層状ケイ酸塩と、前記層状ケイ酸塩の表面に吸着した有機金属錯体とを備え、前記有機金属錯体における前記層状ケイ酸塩側とは反対側の表面が露出している、複合体。
【0014】
[8]前記層状ケイ酸塩が、スメクタイト類である、上記[7]に記載の複合体。
【0015】
[9]前記有機金属錯体が、カチオン性または中性の有機金属錯体である、上記[7]または[8]に記載の複合体。
【0016】
[10]前記有機金属錯体が、テトラピロール環を有する、上記[9]に記載の複合体。
【0017】
[11]層状ケイ酸塩と、前記層状ケイ酸塩の表面に吸着した有機金属錯体とを備える複合体の製造方法であって、前記層状ケイ酸塩と、前記層状ケイ酸塩の表面に吸着し、かつ金属に配位可能な有機化合物とを備える複合体を得る工程と、前記複合体の前記有機化合物を金属に配位させて、前記層状ケイ酸塩と、前記層状ケイ酸塩の表面に吸着した有機金属錯体とを備える複合体を得る工程とを備える、複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る有機化合物を基質とした求電子反応の反応速度を向上させることが可能な反応促進剤、反応促進方法、複合体、および複合体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1(A)は、実施形態に係る層状ケイ酸塩および有機化合物の複合体の模式図であり、
図1(B)は、実施形態に係る層状ケイ酸塩および有機金属錯体の複合体の模式図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係るH
2TMAP-LAS複合体および比較例1に係るH
2TMAPのZnCl
2混合直後および8日後のQバンドスペクトルである。
【
図3】
図3は、実施例1に係るH
2TMAP-LAS複合体および比較例1に係るH
2TMAPとZn
2+の金属配位反応のアレニウスプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る反応促進剤、反応促進方法、複合体、および複合体の製造方法について説明する。
図1(A)は、本実施形態に係る層状ケイ酸塩および有機化合物の複合体の模式図であり、
図1(B)は、実施形態に係る層状ケイ酸塩および有機金属錯体の複合体の模式図である。
【0021】
<反応促進剤>
反応促進剤は、有機化合物を基質とした求電子反応を促進させるものである。反応促進剤は、層状ケイ酸塩を含み、層状ケイ酸塩の表面に有機化合物を吸着させることによって用いられる。
【0022】
反応促進剤は、上記したように層状ケイ酸塩を含むものである。層状ケイ酸塩としては特に限定されず、公知の層状ケイ酸塩が使用できる。層状ケイ酸塩としては、天然由来のものであっても、天然由来のものを化学変性したものであっても、合成されたものであってもよい。
【0023】
層状ケイ酸塩としては、例えば、後述する1:1型の結晶構造を有する蛇紋石-カオリン類(族)、2:1型の結晶構造を有するタルク-パイロフィライト(滑石-葉蝋石)類、スメクタイト類、バーミキュライト類、マイカ(雲母)類、脆雲母類、クロライト(緑泥石)類、及び、これらの単位構造層が交互に積み重なったもの(例えばレクトライト、及び、コレンス石等)が挙げられる。
【0024】
蛇紋石-カオリン類の層状ケイ酸塩としては、蛇紋石サブグループ(亜族)のリザーダイト、バーチェリン、アメサイト、クロンステダイト、ネポーアイト、ケリアイト、フレイポナイト、及び、ブリンドリアイト等(3八面体);カオリンサブグループのカオリナイト、ディ(ッ)カイト、ナクライト、ハロイサイト、及び、オーディナイト等(2八面体);が挙げられる。
【0025】
タルク-パイロフィライト(滑石-葉蝋石)類の層状ケイ酸塩としては、タルクサブグループのタルク、ウィレムサイト、ケロライト、及び、ピメライト等(3八面体);パイロフィライトサブグループのパイロフィライト、及び、フェリパイロフィライト(2八面体)等;が挙げられる。
【0026】
スメクタイト類の層状ケイ酸塩としては、3八面体型のサポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スティブンサイト、及び、スインホルダイト等;2八面体型のモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、及び、ボルコンスコアイト等;が挙げられる。
【0027】
バーミキュライト類の層状ケイ酸塩としては、3八面体型の3八面体型バーミキュライト、及び、2八面体型の2八面体型バーミキュライト等が挙げられる。
【0028】
雲母類の層状ケイ酸塩としては、黒雲母、金雲母、鉄雲母、イーストナイト、シデロフィライト、テトラフェリ鉄雲母、レピドライト、及び、ポリリシオナイト(3八面体)等;白雲母、セラドン石、トベライト、イライト、及び、パラゴナイト(2八面体)等;が挙げられる。
【0029】
脆雲母類の層状ケイ酸塩としては、クリントナイト、及び、ザンソフィライト(3八面体)等;マーガライト(2八面体)等;が挙げられる。
【0030】
緑泥石類の層状ケイ酸塩としては、3八面体型のクリノクロア、シャモサイト、及び、ニマイト等、2八面体型のドンバサイト等、並びに、2-3八面体型のクッケアイト、及び、スドーアイト等が挙げられる。
【0031】
上記層状ケイ酸塩の結晶構造は、一般に四面体シートと八面体シートからなり、「シート」が組み合わさった複合単位が「層」である。四面体シートは、一般にSi4+を4つのO2-が囲んだ四面体のうち、3つを隣の四面体と共有し、残りの1つの頂点は同じ方向を向いて並び、六角形の網状に広がったもので、[Si2O5]2-の組成を持ったフィロケイ酸塩(層状シリケート)である。
【0032】
また、上記八面体シートは、一般にAl3+、Mg2+、Fe2+などの陽イオンを6つの(OH)-が囲んだ八面体が稜を共有して2次元的な網状に広がったもので、基本的にはAl2(OH)6、又は、Mg3(OH)6の組成を持っている。
【0033】
1枚の四面体シートと1枚の八面体シートが組み合わさって複合層を作る場合、これを1:1層といい、1:1層が繰り返して積み重なることによって作られる構造を有する結晶構造を有する層状ケイ酸塩は、一般にカオリンと呼ばれ、カオリンとしては、カオリナイト、及び、ハロイサイト等が挙げられる。
【0034】
また、2枚の四面体シートが1枚の八面体シートを挟み込んだ3層構造から作られる構造を2:1型構造といい、このような層状ケイ酸塩としては、パイロフィライト、タルク、スメクタイト(ソーコナイト、スティブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、及び、サポナイト等)、セピオライト、バーミキュライト、雲母(白雲母、パラゴナイト、イライト、金雲母、及び、黒雲母等)、並びに、脆雲母(マーガライト、及び、ザンソフィライト等)等が挙げられる。
【0035】
上記のとおり、層状ケイ酸塩は、層構造として、シリカの四面体シートの上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体シートを有する2層構造(1:1型)と、シリカの四面体シートが、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体シートを両側から挟んだ3層構造(2:1型)に大別される。
【0036】
更に、八面体シートの種類、すなわち中心金属がアルミニウム、及び、鉄(III)等である2八面体シート(以下、単に「2八面体」ともいう。)と、中心金属がマグネシウム、リチウム、ニッケル、鉄(II)、及び、マンガン等である3八面体シート(以下、単に「3八面体」ともいう。)により細分される。
【0037】
1:1型層構造を有するものとしては、3八面体のリザーダイト、アメサイト、及び、クリソタイル等の蛇紋石系、2八面体のカオリナイト、ディッカイト、及び、ハロイサイト等のカオリン系が挙げられる。
【0038】
2:1型層構造を有するもののうち、2八面体としては、パイロフィライトモンモリロナイト、バイデライト、2八面体型バーミキュライト、イライト、白雲母、パラゴナイト、マーガライト、及び、ドンバサイト等が挙げられる。
【0039】
2:1型層構造を有するもののうち、3八面体としては、タルク、サポナイト、ヘクトライト、セピオライト、3八面体型バーミキュライト系、金雲母、黒雲母、レピドライト、クリントナイト、クリノクロア、シャモサイト、及び、ニマイト等が挙げられる。
【0040】
なかでも、より優れた耐久性を有する点で、層状ケイ酸塩としては2:1型層構造を有することが好ましく、層状ケイ酸塩としては、スメクタイト類(2八面体、及び、3八面体)であることが好ましい。
【0041】
カオリナイト、パイロフィライト、及び、タルク等の構造では、1:1型層又は2:1型層全体としても、個々のイオンの間でも、電荷は中和してバランスを保っている。しかし、他の2:1型構造の四面体シートではSi4+の代わりに、わずかにイオン半径の大きいAl3+が入ることがある。また、八面体シートではAl3+の代わりに、わずかにイオン半径の大きいMg2+が入ることがある。これらの場合には、結晶構造には大きな変化はないが、電荷の不足を生じる。このような電荷の不足を補うためにアルカリ金属又はアルカリ土類金属が結晶表面あるいは結晶層間に陽イオンとして入ることがあり、このような陽イオンとしては、K+、Na+、Ca2+、Mg2+、Cu2+、及び、H+等が挙げられる。
【0042】
このような結晶層間に入っている層間陽イオンと層状ケイ酸塩の単位層表面の負電荷との結合力は弱いため、他の陽イオンを含む溶液と接触すると層間陽イオンと液中の陽イオンは交換反応をおこし、陽イオン交換反応を生じる。
【0043】
層状ケイ酸塩としては、陽イオン交換性を有することが好ましく、そのような層状ケイ酸塩としては、例えば、スメクタイト、バーミキュライト、及び、雲母等が挙げられる。
【0044】
また、層間の陽イオンと単位層表面の負電荷との結合力が、層間の陽イオンと水分子の相互作用エネルギーより弱い層状ケイ酸塩では、層間を引き締める力が弱いので水分子を多量に取り込むことができ、水膨潤性を有する。層状ケイ酸塩を含む分散液の溶媒が水を含有する場合、層状ケイ酸塩としては水膨潤性を有することが好ましい。
【0045】
水膨潤性を有する層状ケイ酸塩としては、ハロイサイト、スメクタイト(ソーコナイト、スティブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、及び、サポナイト等)、バーミキュライト、膨潤性雲母(膨潤性テニオライト、膨潤性四ケイ素雲母、及び、膨潤性合成フッ素雲母等)等が挙げられる。
【0046】
層状ケイ酸塩としては、陽イオン交換性、及び、水膨潤性を有する観点から、スメクタイト類(ソーコナイト、スティブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、及び、サポナイト等)、バーミキュライト類、及び、膨潤性雲母(膨潤性テニオライト、膨潤性四ケイ素雲母、及び、膨潤性合成フッ素雲母等)が好ましく、スメクタイト類、及び、バーミキュライト類からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、スメクタイト類がより好ましい。
【0047】
層状ケイ酸塩としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、「クニピア」(クニミネ工業株式会社製)、「スメクトン」(クニミネ工業株式会社製)、「ポーラゲル」(ボルクレイジャパン社製)、「ヘクタブライト」(アメリカンコロイド社製)、「ラポナイト」(BYK社制)、「ルーセンタイト」(コープケミカル株式会社製)、「ベントン」(レオックス社製)、「NHT」(トピー工業株式会社)、及び、「ビーガム」(バンダービルト社製)等が挙げられる。
【0048】
層状ケイ酸塩は、単位構造の単層であってもよい。例示的には、層状ケイ酸塩の厚みは、0.5nm以上1.5nm以下であり、より好ましくは、0.5nm以上1.2nm以下、さらに好ましくは0.7nm以上1.0nm以下である。これにより、有機化合物への吸着を容易にし、求電子反応を促進できる。なお、層状ケイ酸塩は、単位構造の積層体であってもよく、この場合にも単層構造と同様の効果を得ることができる。
【0049】
反応促進剤は、上記したように有機化合物を基質とした求電子反応を促進させるものである。有機化合物を基質とした求電子反応としては、求電子剤を用いた求電子付加反応および求電子置換反応のいずれであってもよい。求電子付加反応としては、例えば、配位子としての有機化合物を金属に配位させる反応等が挙げられる。ただし、金属に配位させる反応に限らず、求電子付加反応であれば、反応促進剤を適用できる。
【0050】
<有機化合物>
有機化合物は、反応促進剤の表面に吸着されるものであり、求電子反応における基質となるものであれば、特に限定されず、例えば、配位子として用いられるものであってもよい。有機化合物が配位子として用いられる場合、求電子反応により有機化合物を金属に配位させることができる。
【0051】
有機化合物としては、例えば、色素、極性基を有する化合物等が挙げられる。色素としては、例えば、テトラピロール環を有する化合物、ローダミン、メチレンブルー、タンニン酸、およびこれらの誘導体が挙げられる。また、極性基を有する化合物としては、例えば、窒素元素や硫黄元素を含む複素環を有する化合物やアミン等が挙げられる。
【0052】
有機化合物は、より効率的に複合体が得られる点で、テトラピロール環を有する化合物が好ましい。本明細書において「テトラピロール環」とは、4個のピロール(又はその誘導体)を含む環状構造を有する化合物を意味し、ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、コリン、およびフタロシアニン、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。
【0053】
有機化合物は、カチオン性または中性を有することが好ましい。層状ケイ酸塩の表面は負に帯電しているので、カチオン性の有機化合物であれば、有機化合物を層状ケイ酸塩の表面に吸着させることができる。また、中性の有機化合物であっても、例えば、上記特許文献1のように、層状ケイ酸塩および有機化合物を分散させる有機溶媒として、同一種類であるとともに、ハンセン溶解度パラメータの極性項が17MPa0.5以下であり、かつ水素結合項が18MPa0.5以下である有機溶媒を用いることにより、層状ケイ酸塩の表面に吸着させることができる。「ハンセン溶解度パラメータ」とは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、分散項、極性項、及び、水素結合項の3成分に分割し、3次元空間に表したものである。分散項は分散力による効果、極性項は双極子間力による効果、水素結合項は水素結合力による効果を示す。
【0054】
ハンセン溶解度パラメータの定義と計算は、Charles M.Hansen著「Hansen Solubility Parameters;A Users Handbook(CRC Press,2007)」に記載されている。また、コンピュータソフトウェア「Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)」を用いることにより、文献値等が知られていない溶媒に関しても、その化学構造から簡便にハンセン溶解度パラメータを推算することができる。
【0055】
有機化合物は、容易に層状ケイ酸塩の表面に吸着させる観点から、カチオン性であることがより好ましい。カチオン性有機化合物は、対アニオン(カウンターアニオン)を有するものであるが、例えば、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩であってよい。
【0056】
カチオン性のテトラピロール環を有する化合物としては、特に制限されないが、例えば、以下の式に記載した化合物、又は、以下の式に記載した化合物の誘導体化合物が挙げられる。
【化1】
式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、およびAr
4はそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素環式又は複素環式芳香族基を示し、Ar
1、Ar
2、Ar
3、およびAr
4の少なくとも1個はカチオン性基を有する芳香族基である。
【0057】
芳香族基としては、炭素環式のものとしては例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などから誘導される基であり、複素環式のものとしては、1個又は2個以上の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する5~10員の単環式又は縮合環式の複素環から誘導される基であり、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、アゾール環などから誘導される基である。好ましい芳香族基としては、フェニル基や4-ピリジル基などが挙げられる。
【0058】
芳香族基が有するカチオン性基としては、アンモニウム基やスルホニウム基などが挙げられるが、第四級アンモニウム基が好ましい。カチオン性基は芳香族基の置換基として有していてもよいが、芳香族基の異種原子がカチオン化されたものであってもよい。カチオン性基を有する芳香族基としては、例えば、4-N,N,N-トリメチルアミノフェニル基、4-N,N,N-トリエチルアミノフェニル基などの4-N,N,N-トリ低級アルキルアミノフェニル基、N-メチル-4-ピリジル基、N-エチル-4-ピリジル基などのN-低級アルキル-4-ピリジル基などが挙げられる。
【0059】
中性のテトラピロール環を有する化合物としては、特に制限されないが、例えば、以下の式に記載した化合物、又は、以下の式に記載した化合物の誘導体化合物が挙げられる。
【化2】
【0060】
有機化合物の厚みは、特に制限はないが、例示的には、0.5Å以上10Å以下であってよい。この範囲であれば、層状ケイ酸塩が容易に吸着する。例えば、層状ケイ酸塩が単層である場合には、2.5Å以上4.5Å以下の厚さを有する有機化合物を採用すると、層状ケイ酸塩が吸着し、求電子反応の反応速度が向上し得る。
【0061】
<求電子剤>
求電子剤は、電子受容能を有する。求電子剤としては、例えば、金属塩、NO2+、Xδ+Xδ-、Xδ+-X-Feδ-X3等が挙げられる。ここで、Xはハロゲンを表し、δ+、δ-はそれぞれ正電荷、負電荷の帯電を表している。金属塩を構成する金属としては、例えば、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、コバルト、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、レニウム、マンガン、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される少なくとも1種の金属が挙げられる。
【0062】
<反応促進方法、複合体、および複合体の製造方法>
まず、反応促進剤としての層状ケイ酸塩を含む分散液と、有機化合物を含む溶液または分散液とを用意する。
【0063】
(層状ケイ酸塩を含む分散液)
層状ケイ酸塩を含む分散液は、層状ケイ酸塩の他、溶媒を含む。層状ケイ酸塩を含む分散液の溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、特に制限されないが、n-ヘキサン、シクロヘキサン、およびイソオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、及び、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、ジメチルスルホキシド、溶融アセトアミド、ホルムアミド、およびアセトン等の非プロトン性極性溶媒;アセトニトリル、及び、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、および酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルセルソルブ、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、およびトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0064】
(有機化合物を含む溶液または分散液)
有機化合物がカチオン性の有機化合物である場合、溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルセルソルブ、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒であれば、有機化合物は溶解し得る。有機化合物が中性の有機化合物である場合、溶媒としては、例えば、上記したように層状ケイ酸塩を含む分散液の有機溶媒と同一種類であり、ハンセン溶解度パラメータの極性項が17MPa0.5以下であり、かつ水素結合項が18MPa0.5以下である有機溶媒を用いる。
【0065】
層状ケイ酸塩を含む分散液と、有機化合物を含む溶液または分散液とを用意した後、層状ケイ酸塩を含む分散液と、有機化合物を含む溶液または分散液を混合して、混合液を得る。これにより、層状ケイ酸塩の表面に有機化合物を吸着させることができるので、
図1(A)に示されるように層状ケイ酸塩11と、層状ケイ酸塩11の表面11Aに吸着された有機化合物12との複合体10が得られる。複合体10においては、有機化合物12における層状ケイ酸塩11側とは反対側の表面は露出している。すなわち、有機化合物12における層状ケイ酸塩11側とは反対側の表面は層状ケイ酸塩11で覆われていない。複合体10においては、有機化合物における層状ケイ酸塩11側とは反対側の表面が露出しているので、後述する求電子剤が有機化合物12に接触しやすい。これにより、求電子反応が生じやすい。なお、複合体において、有機化合物における層状ケイ酸塩側とは反対側の表面が露出していない場合であっても、例えば、有機化合物の両面が層状ケイ酸塩で覆われている場合であっても、求電子剤を投入すれば、求電子反応が生じる。
【0066】
混合時の層状ケイ酸塩を含む分散液の温度および有機化合物を含む溶液または分散液の温度は、特に限定されないが、それぞれ、例えば、0℃以上200℃以下であってよい。この温度範囲であれば複合体を合成できる。
【0067】
その後、複合体10を含む混合液に求電子剤を投入する。投入される求電子剤は求電子剤を含む溶液の状態であってもよい。これにより、有機化合物を基質した求電子反応が生じる。有機化合物が配位子であり、求電子剤として金属塩を用いた場合には、金属に有機化合物が配位する反応が生じるので、
図1(B)に示されるように層状ケイ酸塩11と、層状ケイ酸塩11の表面11Aに吸着し、かつ有機化合物12が金属13に配位した有機金属錯体14とを備える複合体20が形成される。複合体20においては、有機金属錯体14における層状ケイ酸塩11側とは反対側の表面は露出している。
【0068】
有機金属錯体を含む複合体が蛍光材料である場合、励起寿命が長くなるという利点を有する。一方で、複合体において、有機金属錯体が反応促進剤として用いた層状ケイ酸塩に吸着されているが、複合体を蛍光材料として使用する場合には、層状ケイ酸塩は発光や励起寿命の妨げにならないので、有利である。
【0069】
本実施形態によれば、有機化合物を基質とした求電子反応の際に、層状ケイ酸塩を含む反応促進剤を用いているので、求電子反応の反応速度を向上させることができる。これは、以下の理由からであると考えられる。まず、層状ケイ酸塩の表面は負に帯電しているので、有機化合物が層状ケイ酸塩の表面に吸着されると、有機化合物の電子の分布が変化する。具体的には、有機化合物が層状ケイ酸塩の表面に吸着された状態では、有機化合物における層状ケイ酸塩側に正電荷が集まりやすくなるので、有機化合物における層状ケイ酸塩側とは反対側には電子が多く存在する。このため、求電子剤が有機化合物に近づきやすくなる。これにより、頻度因子が増え、反応速度が上昇するものと考えられる。ここで、基質としての有機化合物は層状ケイ酸塩に吸着されているので、層状ケイ酸塩によって片側の表面は被覆されている。このため、求電子反応において層状ケイ酸塩に吸着されていないものと比べて、頻度因子は小さくなると考えられるが、実施例で裏付けられているように、頻度因子は層状ケイ酸塩に吸着されていないものと比べて極めて大きくなっている。したがって、層状ケイ酸塩の表面に有機化合物を吸着させた状態で、求電子反応を行うと、反応速度が向上することは、驚くべき効果である。なお、触媒は反応の活性化エネルギーを低下させる機能を有するが、層状ケイ酸塩は活性化エネルギーを低下させるものではないので、触媒とは異なる。
【実施例0070】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
図2は、実施例1に係るH
2TMAP-LAS複合体および比較例1に係るH
2TMAPのZnCl
2混合直後および8日後のQバンドスペクトルであり、
図3は、実施例1に係るH
2TMAP-LAS複合体および比較例1に係るH
2TMAPとZn
2+の金属配位反応のアレニウスプロットである。
【0071】
<実施例1>
(Cu2+-LASの調製)
3八面体シートを有する膨潤性の2:1型の層状合成ケイ酸塩([(Si7.20Al0.80)(Mg5.97Al0.03)O20(OH)4]-0.77(Na0.77)+0.77]、サポナイト)であるクニミネ工業株式会社製の層状アルミノケイ酸塩(LAS)を水から繰り返しデカンテーションし、エタノールで洗浄することによって精製した。そして、水中での完全剥離によって表面を得て、LASの単層を調製した。各LASの厚さは1nmであり、LASの表面は原子レベルで平坦であった。その後、CuCl2溶液にLAS粉末を分散させ、続いて蒸留水で遠心分離を用いて繰り返し洗浄することによってCu2+-LASを調製した。
【0072】
(H
2TMAP溶液の調製)
5,10,15,20-テトラキス(4-トリメチルアンモニオフェニル)ポルフィリン(H
2TMAP)のp-トルエンスルホン酸塩(シグマアルドリッチ社製)のカウンターイオンを、イオン交換樹脂を用いて下記化学式のようにCl
-にイオン交換した。ここで、H
2は遊離塩基形態を示す。そして、様々なpH値でのバッファー溶液を水酸化ナトリウム、1Mの塩酸、およびフタル酸水素カリウム(全て富士フイルム株式会社製)を適切な濃度で混合することによって調製した。
【化3】
【0073】
(H2TMAP-LAS複合体の調製)
H2TMAP溶液とLAS分散液を混合することによってH2TMAP-LAS複合体を調製した。H2TMAPとLASは、静電引力によって結合していた。すなわち、LASの表面にH2TMAPが吸着されていた。カチオン交換容量に対するH2TMAPの有する正電荷量の割合は16%であった。また、H2TMAP-LAS複合体において、LASの厚みは1nmであり、H2TMAPの厚みは3Å~4Åであった。
【0074】
(Zn2+TMAP-LAS複合体の調製)
H2TMAP-LAS複合体を亜鉛に配位させて、Zn2+TMAP-LAS複合体を調製した。具体的には、H2TMAP-LAS複合体とZnCl2とのモル比が1:20となるように室温(22℃)において水中で混合して、実施例1に係るZn2+TMAP-LAS複合体を得た。
【0075】
<比較例1>
比較例1においては、H2TMAP-LAS複合体の代わりに、上記H2TMAP単体を用い、H2TMAPを実施例1と同様にして亜鉛に配位させて、Zn2+TMAPを調製した。これにより、比較例1に係るZn2+TMAPを得た。
【0076】
<吸収スペクトル評価>
実施例1に係るH
2TMAP-LAS複合体をZnCl
2と混合した直後および8日後にH
2TMAP-LAS複合体の吸収スペクトルを記録し、また比較例1に係るH
2TMAPをZnCl
2と混合した直後および8日後にH
2TMAPの吸収スペクトルを記録した。一般に、遊離塩基ポルフィリンで観察されるQバンドの4つのピークは、金属配位すると、2つのピーク(α、β)として観察される。ここで、αは短波長に生じる。
図2から、ZnCl
2の混合直後と8日後とを比較すると、H
2TMAPにおいてはあまり変化が無かったが、H
2TMAP-LAS複合体においては2つの大きなピークを示した。βピークよりもαピークの大きな吸光度は、金属およびポルフィリン間の安定的な平面四角形の錯体を示す。これは、H
2TMAP-LAS複合体の電子密度はH
2TMAPの電子密度と著しく異なり、またH
2TMAP-LAS複合体におけるLASに対する結合が金属配位反応にとって有利であることを示している。
【0077】
<速度定数、頻度因子、活性化エネルギーの推定>
H2TMAPと+Zn2+で生じる化学反応は下記式(1)で表すことができる。
H2TMAP+Zn2+→Zn2+TMAP+H2 …式(1)
また、H2TMAP-LAS+Zn2+で生じる化学反応は下記式(2)で表すことができる。
H2TMAP-LAS+Zn2+→Zn2+TMAP-LAS+H2 …式(2)
【0078】
下記等式(3)における反応(α、β)の順序は、327KでのH2TMAP:Zn2+の比を、それぞれ、1:5、1:10、1:20、1:30および1:40した時間依存スペクトルに基づいて決定し、1と2とした。ポルフィリン分子による金属配位の反応の順番は、金属イオン、ポルフィリン構造、およびこれらの濃度の組み合わせに依存する。H2TMAPとZn2+の場合、配位反応は中間体を含む多段階方法を介して進行すると考えられる。
【0079】
各時点の比率は、実験開始時と終了時のスペクトルを基に再現して推定した。
v=k[H2TMAP]α[Zn2+]β …式(3)
式中、αを1とし、βを2とした。
その後、モル比が1:20の比で速度定数(k)を、比較例1に係るH2TMAPにおいて求めたところ、8.74×104L2mol-2min-1となり、実施例1に係るH2TMAP-LAS複合体において求めたところ、2.00×106L2mol-2min-1となった。したがって、速度定数は、LASの表面で約23倍増大したので、反応速度が向上したことが確認された。
【0080】
また、速度定数を、3つの追加的な温度(301、309および317K)で決定して、アレニウスプロットを作成するとともに頻度因子(A)、活性化エネルギー(Ea)を推定した。
k=Aexp(-Ea/RT) …式(4)
式中、Rは気体定数(J・K-1・mol-1)であり、Tは温度(K)である。
【0081】
図3のアレニウスプロットから比較例1に係るH
2TMAPでのAおよびE
aの値を求めると、それぞれ1.55×10
17および76.56kj・mol
-1となり、また実施例1に係るH
2TMAP-LAS複合体でのAおよびE
aの値を求めると、それぞれ1.32×10
20および86.59kj・mol
-1となった。したがって、実施例1に係るH
2TMAP-LAS複合体においては比較例1に係るH
2TMAPと比べて頻度因子(A)が著しく増加しているが、活性化エネルギーはほぼ変化していないことが確認された。
【0082】
<比較例2>
比較例2においては、実施例1に係るLASの代わりに、三チタン酸ナトリウムを用いた。具体的には、三チタン酸ナトリウムを10mg量り取り、6mLバイアル瓶に秤量した。ここへ1mMのTMAP水溶液1mLを加え、48時間静置した。三チタン酸ナトリウム表面に吸着したTMAPはプロトン化していたので、実施例1と同様にZnCl2を混合した場合であっても、実施例1に示すような反応の加速は見られなかった。