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  • 特開-医療用集束音波発生装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120290
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】医療用集束音波発生装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/225 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61B17/225
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026974
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000105279
【氏名又は名称】ケイセイ医科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】植竹 茂
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE17
4C160EE19
4C160JJ33
4C160JJ36
(57)【要約】
【課題】音波を集束させる集束対象位置に十分な強さの衝撃を与えることができる医療用集束音波発生装置を提供する。
【解決手段】医療用集束音波発生装置100は、音波発生プローブ110と装置本体120とを備える。音波発生プローブ110は、振動板112が発生させた音波を一点で集束させる音波出力部113を備えている。装置本体120は、制御装置122によって作動制御される電圧出力部124およびディスチャージ部125を備えている。電圧出力部124は、振動板112に印加する高電圧を生成する電圧生成部124aと電圧生成部124aを振動板112に対してスイッチングするドライブ部124bとを備えている。ディスチャージ部125は、振動板112に印加されている高電圧を電圧降下させる電圧降下部125aと電圧降下部125aを振動板112に対してスイッチングするドライブ部125bとを備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を発生させるための振動板とこの音波が一点で集束するように出力する音波出力部とを有する音波発生プローブと、
前記振動板に対して1Hz以上かつ50Hz以下のパルス状の電圧を印加する電圧出力手段とを備えて前記音波を体内で集束させることで疾患の治療効果を高める医療用集束音波発生装置であって、
前記振動板に印加されている電圧を低下させる電圧降下手段と、
前記電圧降下手段を前記振動板に対して電気的に接続または遮断するスイッチングを行う電圧降下スイッチング部とを備えることを特徴とする医療用集束音波発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用集束音波発生装置において、
前記電圧降下スイッチング部は、
前記振動板に対する前記電圧の印加時間が10μ秒以上かつ100μ秒以下になるように前記スイッチングを行うことを特徴とする医療用集束音波発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の医療用集束音波発生装置において、
前記電圧降下手段は、抵抗器を含むことを特徴とする医療用集束音波発生装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医療用集束音波発生装置において、
前記電圧出力手段は、コッククロフトウォルトン回路を含むことを特徴とする医療用集束音波発生装置。
【請求項5】
請求項4に記載の医療用集束音波発生装置において、
前記電圧出力手段は、
前記振動板に印加する電圧を複数の前記コッククロフトウォルトン回路がそれぞれ発生させる電圧の総和で生成することを特徴とする医療用集束音波発生装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の医療用集束音波発生装置において、
前記電圧出力手段は、
前記振動板に印加する電圧を生成する電圧生成部と、
前記電圧生成部を前記振動板に対して電気的に接続または遮断するスイッチングを行う電圧印加スイッチング部とを備えることを特徴とする医療用集束音波発生装置。
【請求項7】
請求項6に記載の医療用集束音波発生装置において、
前記電圧印加スイッチング部の作動のタイミングと前記電圧降下スイッチング部の作動のタイミングとをそれぞれ制御する制御装置を備えることを特徴とする医療用集束音波発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波を体内で集束させることで疾患の治療効果を高める医療用集束音波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、単発の音波を体内で集束させることで結石を破砕する医療用集束音波発生装置がある。例えば、下記特許文献1には、圧電素子に数十Hz以下の周波数でパルス状の電圧を印加する医療用集束音波発生装置としての集束式音波治療装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-239791号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された医療用集束音波発生装置においては、音波を集束させる集束対象位置に十分な強さの衝撃を与えることが困難であるという問題がある。これは、本発明者らによる検証によれば、圧電素子に数十Hz以下の周波数でパルス状の電圧を印加した場合、圧電素子が電圧印加前の元の形状に復帰する前に次の電圧印加が行われてしまうことで、圧電素子の変形量が小さくなるためではないかと考えられる。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、音波を集束させる集束対象位置に十分な強さの衝撃を与えることができる医療用集束音波発生装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、音波を発生させるための振動板とこの音波が一点で集束するように出力する音波出力部とを有する音波発生プローブと、振動板に対して1Hz以上かつ50Hz以下のパルス状の電圧を印加する電圧出力手段とを備えて音波を体内で集束させることで疾患の治療効果を高める医療用集束音波発生装置であって、振動板に印加されている電圧を低下させる電圧降下手段と、電圧降下手段を振動板に対して電気的に接続または遮断するスイッチングを行う電圧降下スイッチング部とを備えることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、医療用集束音波発生装置は、振動板に対して電圧降下手段が電圧降下スイッチング部によって選択的に接続または遮断されるため、電圧降下手段を振動板に選択的に接続することで振動板の印加電圧を迅速に降下させることができる。特に、医療用集束音波発生装置は、電圧降下能力の高い電圧降下手段を振動板に選択的に接続することで振動板の印加電圧を迅速に降下させることができる。これにより、医療用集束音波発生装置は、電圧印加状態にあった振動板を電圧印加前の元の形状に迅速に復帰させることができるため音波を集束させる集束対象位置に十分な強さの衝撃を与えることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記医療用集束音波発生装置において、電圧降下スイッチング部は、振動板に対する電圧の印加時間が10μ秒以上かつ100μ秒以下になるようにスイッチングを行うことにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、医療用集束音波発生装置は、電圧降下スイッチング部が振動板に対する電圧の印加時間が10μ秒以上かつ100μ秒以下になるようにスイッチングを行うため、本発明者らの実験によれば集束対象位置に十分な強さの衝撃を与えることができる。これは、電圧の印加時間が10μ秒以上かつ100μ秒以下に設定することで振動板が十分に変化できる時間が確保されるためであると考えられる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記医療用集束音波発生装置において、電圧降下手段は、抵抗器を含むことにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、医療用集束音波発生装置は、電圧降下手段が抵抗器を含んで構成されているため、振動板に印加されている電圧を簡単な構成で効果的に低下させることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記医療用集束音波発生装置において、電圧出力手段は、コッククロフトウォルトン回路を含むことにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、医療用集束音波発生装置は、電圧出力手段がコッククロフトウォルトン回路を含んで構成されているため効率的に高電圧を生成することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記医療用集束音波発生装置において、電圧出力手段は、振動板に印加する電圧を複数のコッククロフトウォルトン回路がそれぞれ発生させる電圧の総和で生成することにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、医療用集束音波発生装置は、電圧出力手段が振動板に印加する電圧を複数のコッククロフトウォルトン回路がそれぞれ発生させる電圧の総和で生成するため、極めて短時間に高電圧を生成することができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記医療用集束音波発生装置において、電圧出力手段は、振動板に印加する電圧を生成する電圧生成部と、電圧生成部を振動板に対して電気的に接続または遮断するスイッチングを行う電圧印加スイッチング部とを備えることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、医療用集束音波発生装置は、電圧生成部を振動板に対して電気的に接続または遮断するスイッチングを行う電圧印加スイッチング部を備えているため、振動板に対して電圧を印加するタイミングまたは電圧の印加を解除するタイミングを正確に制御することができ振動板に対する不必要な電圧印加を防いで消費電力を抑えることができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記医療用集束音波発生装置において、電圧印加スイッチング部の作動のタイミングと電圧降下スイッチング部の作動のタイミングとをそれぞれ制御する制御装置を備えることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、医療用集束音波発生装置は、電圧印加スイッチング部の作動のタイミングと電圧降下スイッチング部の作動のタイミングとをそれぞれ制御する制御装置を備えているため、振動板に対して精度良く電圧の印加または印加電圧の解消を繰り返し行うことでき集束対象位置に対して十分な強さの衝撃を精度良く繰り返し与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る医療用集束音波発生装置のシステム構成を模式的に示す説明図である。
図2図1に示した電圧生成部が振動板に印加する電圧に係る設定印加電圧値、印加時間および印加回数を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る医療用集束音波発生装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る医療用集束音波発生装置100のシステム構成を模式的に示す説明図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。
【0022】
(医療用集束音波発生装置100の構成)
この医療用集束音波発生装置100は、ヒトの皮膚から体内に向かって音波を照射および集束させることで結石の破壊または疼痛の緩和などを行う医療装置である。医療用集束音波発生装置100は、主として、音波発生プローブ110と装置本体120とを備えて構成されている。
【0023】
音波発生プローブ110は、ヒトの皮膚から体内に向かって音波を照射および集束させるための器具である。この音波発生プローブ110の構成は、公知であるため詳細な説明を省略して簡単に説明しておく。音波発生プローブ110は、主として、筐体111、振動板112および音波出力部113をそれぞれ備えて構成されている。
【0024】
筐体111は、振動板112を収容して音波発生プローブ110の外表面の一部を構成する樹脂製の部品であり、内部が空洞の円筒状に形成されている。この筐体111は、使用者が把持する円筒状のグリップ部111aと、このグリップ部111aよりも大径に形成されて振動板112を収容するとともに音波出力部113が取り付けられる振動板収容部111bとが一体的に形成されて構成されている。
【0025】
振動板112は、音波を発生させるための部品である。本実施形態においては、電圧が加えられることで変形する板状の圧電素子で構成されている。この場合、振動板112は、発生させる音波が一点に集束するように断面視で円弧状でかつ正面視で円形の球面状に形成されている。この振動板112には、後述する電圧出力部124、ディスチャージ部125および監視部126がそれぞれ電気的に接続されている。
【0026】
なお、圧電素子としては、種々のセラミックスを採用することができることは当然である。また、振動板112としては、紙製、樹脂製、木製または金属製のコーンを採用することもできる。また、音波とは、必ずしも可聴音のみを意味するものではなく、弾性体を伝播するあらゆる弾性波を含む意味である。
【0027】
音波出力部113は、振動板112が発生させた音波を外部に向けて出力する部分であり、振動板112が発生させた音波が一点に集束する形状に形成されている。具体的には、音波出力部113は、振動板収容部111b側から先端部に向かって尖った円錐状または円錐台状に形成された外カバー113aの内部に振動板112が発生させた音波を伝搬させるゲル状の伝搬物質113bが振動板112の凹状面に密着した状態で充填されている。
【0028】
この音波発生プローブ110は、振動板112に電気コード114を介して装置本体120における電圧出力部124、監視部126およびディスチャージ部125がそれぞれ電気的に接続されている。この場合、音波発生プローブ110は、電気コード114の先端部に設けられた接続コネクタ114aを介して装置本体120に対して着脱自在に接続されている。
【0029】
装置本体120は、高電圧を生成して音波発生プローブ110に供給するための装置であり、主として、電源部121、制御装置122、操作パネル123、電圧出力部124、ディスチャージ部125および監視部126をそれぞれ備えて構成されている。
【0030】
電源部121は、外部の電力供給源(例えば、家庭用100V電源)から電源コードを介して電力の供給を受けて制御装置122および電圧出力部124にそれぞれ降圧した直流の電力を供給する電気回路である。
【0031】
制御装置122は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを備えて構成されており、医療用集束音波発生装置100の全体の作動を総合的に制御するとともに、記憶装置に予め記憶された図示しないプローブ駆動プログラム(図示せず)を実行することにより音波発生プローブ110の駆動制御を行う。
【0032】
具体的には、制御装置122は、電圧出力部124の作動を制御することで高電圧を生成するとともに生成した高電圧を所定のタイミングで音波発生プローブ110の振動板112に印加する。また、制御装置122は、ディスチャージ部125の作動を制御することで振動板112に印加されている高電圧を所定のタイミングで解消する。また、制御装置122は、監視部126からの検出信号に基づいて振動板112に印加されている電圧状態を監視する。この制御装置122には、操作パネル123が接続されている。
【0033】
操作パネル123は、使用者からの指示を受け付けて制御装置122に入力するとともに制御装置122の作動状況を表示する液晶のタッチディスプレイで構成されている。この操作パネル123は、図2に示すように、音波発生プローブ110の振動板112に印加する電圧値である設定印加電圧値V、印加時間Tpおよび1秒当たりの印加回数fを制御装置122に設定することができる。
【0034】
電圧出力部124は、音波発生プローブ110の振動板112に印加するパルス状の高電圧を生成して出力するための電気回路であり、主として、電圧生成部124aとドライブ部124bとを備えて構成されている。この電圧出力部124は、接続コネクタ124cを介して音波発生プローブ110側の接続コネクタ114aに着脱自在に接続される。
【0035】
電圧生成部124aは、音波発生プローブ110の振動板112に印加する高電圧を生成する電気回路である。具体的には、電圧生成部124aは、電源部121から電力供給を受けて高電圧を生成するコッククロフトウォルトン回路で構成されている。本実施形態においては、電圧生成部124aは、それぞれ最大(絶対値)で-1kVの高電圧を生成する5つのコッククロフトウォルトン回路を直列接続することで合計で最大(絶対値)で-5kVの高電圧を出力するように構成されている。なお、電圧生成部124aは、+5kVなどのプラス電位の電圧を生成するものであってもよいことは当然である。
【0036】
ドライブ部124bは、制御装置122に制御されて電圧生成部124aによる高電圧の生成または出力を制御するためのスイッチング回路である。具体的には、ドライブ部124bは、制御装置122に制御されて電圧生成部124aと振動板112との電気的な接続を遮断することで電圧生成部124aに高電圧を生成させるとともに電圧生成部124aと振動板112とを電気的に接続することで電圧生成部124aが生成した高電圧を振動板112に印加する。すなわち、このドライブ部124bは、本発明に係る電圧印加スイッチング部に相当する。このドライブ部124bは、5つの電圧生成部124aごとにそれぞれ設けられており、各電圧生成部124aに対してMOS-FETを介して接続されている。
【0037】
ディスチャージ部125は、音波発生プローブ110の振動板112に印加されている高電圧を開放するための電気回路であり、電圧降下部125aとドライブ部125bとを備えて構成されている。
【0038】
電圧降下部125aは、音波発生プローブ110の振動板112に印加されている高電圧を降下させる電気部品である。具体的には、電圧降下部125aは、電気エネルギを熱エネルギに変換する抵抗器で構成されている。本実施形態においては、電圧降下部125aは、数十Ω~数百Ωの1つの抵抗器で構成されている。
【0039】
ドライブ部125bは、制御装置122に制御されて電圧降下部125aによる電圧降下を制御するためのスイッチング回路である。具体的には、ドライブ部125bは、制御装置122に制御されて電圧生成部124aと振動板112との電気的な接続を遮断することで振動板112に高電圧を印加可能な状態にするとともに電圧生成部124aと振動板112とを電気的に接続することで振動板112に印加された高電圧を電圧降下部125aに電気的に接続して電圧降下させる。すなわち、ドライブ部125bは、本発明に係る電圧降下スイッチング部に相当する。このドライブ部125bは、1つの電圧降下部125aに対して直列接続された5つのMOS-FETを介して接続されている。
【0040】
監視部126は、制御装置122に作動が制御されて音波発生プローブ110の振動板112に印加されている電圧状態を監視する回路であり、マイクロコンピュータおよび電圧測定回路などを備えて構成されている。具体的には、監視部126は、制御装置122が出力する信号に基づいて振動板112への高電圧の印加ON状態または印加OFF状態の各印加状態を把握するとともに、各印加状態における振動板112に印加されている電圧を測定する。そして、監視部126は、各印加状態における振動板112に印加されている測定電圧が所定の電圧の範囲内の電圧であるか否かを判定してその判定結果を操作パネル123に表示させる。
【0041】
なお、制御装置122から操作パネル123、電圧出力部124、ディスチャージ部125および監視部126の各作動を制御するための制御信号を伝達する信号線は光ファイバで構成されている。これにより、制御装置122は、電圧出力部124によって生成された高電圧による影響を抑えて操作パネル123、電圧出力部124、ディスチャージ部125および監視部126の各作動を制御することができる。
【0042】
(医療用集束音波発生装置100の作動)
次に、上記のように構成した医療用集束音波発生装置100の作動について説明する。まず、医師または整体師などの使用者は、電源部121を外部電源に接続した後、制御装置122の電源をONにする。これにより、制御装置122は、ROMなどの記憶装置に予め記憶された制御プログラム(図示せず)を実行することによって作動を開始して使用者からの指示を待つ待機状態となる。
【0043】
次に、作業者は、操作パネル123を操作して音波発生プローブ110の起動を制御装置122に指示する。この指示に応答して、制御装置122は、プローブ駆動プログラム(図示せず)の実行を開始する。具体的には、制御装置122は、使用者に対して音波発生プローブ110の振動板112に印加する電圧V(以下、「設定印加電圧値V」という)、印加時間Tpおよび1秒当たりの印加回数fの入力を促す。この場合、使用者は、操作パネル123を介して制御装置122に対して設定印加電圧値Vとして-3kV以上かつ-5kV以下、印加時間Tpとして1μ秒以上かつ100μ秒以下および印加回数fとして1回以上かつ50回以下(すなわち、1Hz以上かつ50Hz以下)の範囲でそれぞれ設定することができる。
【0044】
次に、使用者は、操作パネル123を操作して音波発生プローブ110から音波を発生させる。この指示に応答して、制御装置122は、電圧生成部124aに電圧を印加して高電圧を生成させる。この場合、制御装置122は、前記設定印加電圧値Vを電圧生成部124aの数で割った電圧値を5つの電圧生成部124aがそれぞれ生成するように電圧生成部124aを制御する。例えば、制御装置122は、設定印加電圧値Vが-5kVの場合には、5つの各電圧生成部124aが-1kVずつの電圧を生成するように制御する。
【0045】
次に、制御装置122は、ドライブ部124bの作動を制御してスイッチング動作を実行させることで各電圧生成部124aを音波発生プローブ110の振動板112に電気的に接続する(以下、「印加スイッチングON」という)。この場合、制御装置122は、ドライブ部124bの作動を制御してスイッチング動作を実行させることで電圧降下部125aの音波発生プローブ110の振動板112への電気的な接続を遮断する(以下、「ディスチャージスイッチングOFF」という)。これにより、振動板112には、5つの電圧生成部124aが生成した各電圧(例えば、-1kV)の総和の高電圧(例えば、-5kV)が印加される。
【0046】
これにより、振動板112は、音波出力部113側に向かって変形することで音波を発生させる。振動板112が発生させた音波は、音波出力部113における外カバー113aを介して音波出力部113の外部に放出される。
【0047】
この高電圧印加状態において、制御装置122は、使用者によって設定された前記印加時間Tpに対応する時間の経過を待って振動板112に対する電気的な接続を遮断するスイッチング動作(以下、「印加スイッチングOFF」という)をドライブ部124bに実行させる。また、制御装置122は、ドライブ部124bの作動を制御してスイッチング動作を実行させることで印加スイッチングOFFと同時に電圧降下部125aの音波発生プローブ110の振動板112に電気的に接続する(以下、「ディスチャージスイッチングON」という)。
【0048】
この場合、制御装置122は、印加スイッチングOFFおよびディスチャージスイッチングONのディスチャージ状態を使用者が設定した前記印加回数fを実現するために必要な時間だけ維持する。例えば、制御装置122は、印加時間Tpが20μ秒でかつ印加回数fが20回に設定されている場合には、ディスチャージ状態の維持時間Tdは49.98msである。これにより、振動板112に印加されている高電圧は、電圧降下部125aによって熱に変換されることで急激に低下する。このため、振動板112は、変形状態が解消されて高電圧が印加される前の元の状態に戻る。なお、この場合、振動板112の形状の復帰は、ディスチャージ状態の維持時間Tdが短い場合には完全に復帰しきれない場合もあり得る。
【0049】
次に、制御装置122は、ディスチャージ状態の維持時間Tdが経過した後は、再び印加スイッチングONおよびディスチャージスイッチングOFFを行って振動板112に高電圧を印加する。これにより、制御装置122は、振動板112に対して設定印加電圧値Vの電圧を印加時間Tpだけ印加する動作を印加回数fの周期で実行することになる。
【0050】
この結果、音波発生プローブ110は、設定印加電圧値Vおよび印加時間Tpにそれぞれ対応する強さの音波を印加回数fに対応する周期で音波出力部113から出力させる。この場合、制御装置122は、監視部126の作動を制御して振動板112に印加されている測定電圧が所定の電圧の範囲内の電圧であるか否かを判定してその判定結果を操作パネル123に表示させる。
【0051】
使用者は、音波発生プローブ110を把持して音波出力部113の外カバー113aを患者の皮膚に押し付けることで音波出力部113から出力される音波を患者の体内に伝搬させてこの体内における集束対象位置で集束させることができる。この場合、使用者は、操作パネル123を確認することで振動板112に所定の電圧が印加されているか否かを確認しながら音波発生プローブ110を使用することができる。
【0052】
そして、使用者は、医療用集束音波発生装置100の使用を中断する場合には、操作パネル123を操作してプローブ駆動プログラムの実行を中断させることで音波発生プローブ110から音波を発生させることを中断させることができる。また、使用者は、制御装置122の電源をOFFにして電源部121を外部電源から外すことで医療用集束音波発生装置100の使用を終えることができる。
【0053】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、医療用集束音波発生装置100は、振動板112に対して電圧降下部125aがドライブ部125bによって選択的に接続または遮断されるため、電圧降下部125aを振動板112に選択的に接続することで振動板112の印加電圧を迅速に降下させることができる。特に、医療用集束音波発生装置100は、電圧降下能力の高い電圧降下部125aを振動板112に選択的に接続することで振動板112の印加電圧を迅速に降下させることができる。これにより、医療用集束音波発生装置100は、電圧印加状態にあった振動板112を電圧印加前の元の形状に迅速に復帰させることができるため音波を集束させる集束対象位置に十分な強さの衝撃を与えることができる。
【0054】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態においては、振動板112に印加されている高電圧を低下させるための電圧降下部125aを抵抗器で構成した。すなわち、この電圧降下部125aが本発明に係る電圧降下手段に相当する。この電圧降下部125a(電圧降下手段)は、振動板112に印加されている電圧を低下させることができるように構成されていればよい。したがって、電圧降下部125a(電圧降下手段)は、抵抗器に代えてまたは加えて、例えば、MOS-FETなどの半導体素子で構成することができるほか、接地(アース)で構成することもできる。なお、上記実施形態における電圧降下部125aは、1つの抵抗器で構成したが、複数の抵抗器を直列接続または並列接続で構成することもできる。
【0056】
また、上記実施形態においては、ドライブ部125bは、5つのMOS-FETで構成されている。しかし、ドライブ部124bは、少なくとも1つのMOS-FETで構成されていればよい。また、ドライブ部125bは、MOS-FET以外のスイッチング素子で構成されていてもよいことは当然である。
【0057】
また、上記実施形態においては、振動板112に高電圧を印加する印加時間Tpとして1μ秒以上かつ100μ秒以下の範囲で設定した。しかし、本発明者らによる実験によれば、印加時間Tpは10μ秒以上かつ100μ秒以下が好適である。これは、電圧の印加時間Tpが10μ秒以上かつ100μ秒以下に設定することで振動板112が十分に変化できる時間が確保されるためであると考えられる。
【0058】
また、上記実施形態においては、医療用集束音波発生装置100は、電圧出力部124が-5kVの電圧を出力するように構成した。しかし、医療用集束音波発生装置100の電圧出力部124が出力する電圧は、振動板112の仕様または患者の治療に応じた電圧を出力するように構成されていればよい。したがって、電圧出力部124は、絶対値で5kV以下、3kV以下、1kV以下または500V以下の電圧を出力するように構成されていてもよい。本発明者らの実験によれば、3kV以上かつ5kV以下が好適である。この場合、医療用集束音波発生装置100は、電圧出力部124が絶対値で少なくとも1kVの高電圧を出力するように構成した場合においても振動板112に印加された高電圧を印加スイッチングOFFおよびディスチャージスイッチングONのディスチャージ状態によって効果的に低下させることができる。
【0059】
また、上記実施形態においては、電圧生成部124aをコッククロフトウォルトン回路で構成した。しかし、電圧生成部124aは、振動板112に印加する高電圧(少なくとも500V以上)を生成することができるように構成されていればよい。したがって、電圧生成部124aは、例えば、トランスおよびインバータを用いて昇圧する回路で構成することもできる。
【0060】
また、上記実施形態においては、電圧生成部124aは、5つのコッククロフトウォルトン回路で構成するとともに、これらの5つのコッククロフトウォルトン回路ごとにドライブ部124bを備えて構成した。しかし、電圧生成部124aは、少なくとも1つのコッククロフトウォルトン回路で構成することができる。また、ドライブ部124bについても少なくとも1つのドライブ部124bを備えて構成されていればよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、制御装置122は、ディスチャージスイッチングON時に印加スイッチングOFFとする制御を行った。しかし、制御装置122は、ディスチャージスイッチングON時に印加スイッチングONを維持する制御を行うこともできる。この場合、制御装置122は、電圧生成部124aにチャージされている電圧値を監視して電圧値が所定の電圧値以下となった場合に印加スイッチングOFFとする制御を行うとよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、医療用集束音波発生装置100は、人体における結石破壊または疼痛緩和などの疾患の治療効果を高めるために用いた。しかし、医療用集束音波発生装置100は、結石破壊または疼痛緩和以外の疾患の治療効果を高めるために用いることもできる。また、医療用集束音波発生装置100は、動物における各種疾患の治療効果を高めるために用いることもできる。
【符号の説明】
【0063】
V…設定印加電圧値、Tp…印加時間、f…印加回数(パルス状電圧の周波数)、Td…ディスチャージ状態の維持時間、
100…医療用集束音波発生装置、
110…音波発生プローブ、111…筐体、111a…グリップ部、111b…振動板収容部、112…振動板、113…音波出力部、113a…外カバー、113b…伝搬物質、114…電気コード、114a…接続コネクタ、
120…装置本体、121…電源部、122…制御装置、123…操作パネル、124…電圧出力部、124a…電圧生成部、124b…ドライブ部、124c…接続コネクタ、125…ディスチャージ部、125a…電圧降下部、125b…ドライブ部、126…監視部。
図1
図2