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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120293
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61B6/03 321K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026984
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太郎
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA32
4C093EC12
4C093EC47
4C093FA12
4C093FA43
4C093FA55
(57)【要約】
【課題】鉛直方向に沿ったスキャナ部のストロークを向上させ、かつスキャナ部のモーメント荷重を支持可能なベアリングの径を確保し、さらにスタンドのサイズを小型化可能な片持ちのX線CT装置を実現すること。
【解決手段】本実施形態に係るX線CT装置は、X線コンピュータ断層撮影装置は、スキャナ部と、ベアリングと、駆動部と、スタンドとを有する。スキャナ部は、X線管を搭載した回転部を回転可能に支持する。ベアリングは、前記スキャナ部に接続され、内周面に複数の歯を有する内輪と、複数の転動体を介して前記内輪の外周に接続された外輪とを有する。駆動部は、前記複数の歯を介して、前記内輪を回転させる。スタンドは、前記駆動部を搭載し、前記外輪に接続され、床面に設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管を搭載した回転部を回転可能に支持するスキャナ部と、
前記スキャナ部に接続され、内周面に複数の歯を有する内輪と、複数の転動体を介して前記内輪の外周に接続された外輪とを有するベアリングと、
前記複数の歯を介して、前記内輪を回転させる駆動部と、
前記駆動部を搭載し、前記外輪に接続され、床面に設けられたスタンドと、
を備えるX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記スタンドに搭載され、前記複数の歯を介して、前記内輪の回転を抑制する保持部をさらに備える、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記スタンドは、前記外輪に接続され、前記駆動部と前記保持部とを前記外輪とともに鉛直方向に移動可能な架台移動機構を有する、
請求項2に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記複数の歯に嵌合する駆動ギアと、前記駆動ギアの回転を駆動する駆動モータとを有し、
前記駆動モータは、前記スタンドに搭載され、
前記駆動ギアは、前記内輪の開口に配置され、
前記保持部は、前記複数の歯に嵌合する保持ギアと、前記保持ギアの回転を駆動する保持モータとを有し、
前記保持モータは、前記スタンドに搭載され、
前記保持ギアは、前記内輪の開口に配置される、
請求項2または3に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記駆動ギアと前記保持ギアとは非干渉である、
請求項4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、臥位状態または立位状態の被検体を撮影可能なX線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT(computed tomography)装置と呼ぶ)が知られている。臥位状態の被検体に対する撮影(以下、臥位撮影と呼ぶ)と立位状態の被検体に対する撮影(以下、立位撮影と呼ぶ)との間において、当該X線CT装置では、撮影系を備えた架台本体を回転させる機構を有する。立位撮影時における被検体の視認性およびストレッチャーから寝台への被検体の移動の利便性のために、架台本体(スキャナ部とも称される)は、片持ちでスタンドに支持されることがある。
【0003】
このとき、立位撮影および臥位撮影の両方が撮影可能なX線CT装置を実現するためには、スキャナ部を90°チルトするための駆動機構が必要になる。スキャナ部を片持ちで支持し、臥位撮影および臥位撮影の両方が撮影可能なX線CT装置(以下、片持ちCT装置と呼ぶ)の駆動機構は、図6に示すように、スキャナ部121の重量をスタンド133で支持するために、ベアリング162を使用して構成される。例えば、当該駆動機構は、例えば、ベアリング162に支持されたシャフトをギアに接続し、当該ギアをモータで駆動することで、スキャナ部121の90°のチルトを実現する。
【0004】
立位撮影時は、スキャナ部121が鉛直方向に沿って動く性質上、スキャナ部121の厚みTS(スキャナ部121における開口15に垂直方向に沿ったスキャナ部121の長さ)を抑えることで、立位撮影時におけるスキャナ部121のストローク(鉛直方向に沿ったスキャナ部121の移動範囲)を確保することができる。また、スキャナ部121のチルトにおいてスキャナ部121を支持するベアリング162は、スキャナ部121のモーメント荷重を受ける。この性質上、ベアリング162の径は、大きいほど良い。一方、立位撮影において天井高とスキャナ部121の厚みTSによって、スキャナ部121の上下動のストロークが制限される。このため、スキャナ部121の厚みを抑えた設計が求められる。
【0005】
図7に示すように、スキャナ部121は、シャフト24を介してベアリング162の内輪に保持される。また、スタンド133は、ベアリング162の内輪に接続される。上記駆動機構の構造では、モータによるギアのバックラッシュ(backlash)でスキャナ部121が振動することがある。このため、バックラッシュを抑制するためのブレーキが必要になる。このような機構部品の配置では、図7のようにスキャナ部121の厚み方向TSまたはスタンド133の奥行方向(Y方向)に機構部品を配置する必要がある。すなわち、スキャナ部121の厚み方向TSに駆動部22、およびブレーキ26を配置する。このとき、駆動部22は、図7に示すように、モータ222と、モータ222による回転をギア226に伝達するシャフト224とを有する。加えて、ブレーキ26は、図7に示すように、モータ262と、モータ262による回転をギア266に伝達するシャフト264とを有する。これらのため、図7に示すように、スキャナ部121の厚みよりチルト機構部(ベアリング)の厚みが大きくなる。このため、図7のような構成では、スキャナ部121の上下動のストロークに制限を与えてしまうことがある。
【0006】
また、スキャナ部121の上下動のストロークの制限を与えないようにすると、ベアリング162の径を小さくする必要が生じる。ベアリング162の径を小さくすることは、スキャナ部121のモーメント荷重に対して不利になる。さらに駆動部22、およびブレーキ26を水平方向に配置することも可能である。しかしながら、立位撮影の上下動の際に駆動部22、ブレーキ26が動くスペースを確保するために、スタンド133を水平方向に沿って大きくする必要が生じる。以上のように、従来の片持ちCT装置では、設計上何かしらの制約を受けることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-198769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、鉛直方向に沿ったスキャナ部のストロークを向上させ、かつスキャナ部のモーメント荷重を支持可能なベアリングの径を確保し、さらにスタンドのサイズを小型化可能な片持ちのX線CT装置を実現することにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、スキャナ部と、ベアリングと、駆動部と、スタンドとを有する。スキャナ部は、X線管を搭載した回転部を回転可能に支持する。ベアリングは、前記スキャナ部に接続され、内周面に複数の歯を有する内輪と、複数の転動体を介して前記内輪の外周に接続された外輪とを有する。駆動部は、前記複数の歯を介して、前記内輪を回転させる。スタンドは、前記駆動部を搭載し、前記外輪に接続され、床面に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図。
図2図2は、第1実施形態に係り、固定部と、架台移動機構と、開口と、ベアリングと、回転フレームとの位置関係の一例を示す斜視図。
図3図3は、第1実施形態に係り、架台と、スタンドと、架台移動機構と、ベアリングと、駆動部との位置関係の一例を示す斜視図。
図4図4は、第2実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図。
図5図5は、第2実施形態に係り、架台と、スタンドと、架台移動機構と、ベアリングと、駆動部と、保持部との位置関係の一例を示す斜視図。
図6図6は、従来技術に関する図。
図7図7は、従来技術に関する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、X線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT(computed tomography)装置と呼ぶ)の実施形態について説明する。本実施形態に係るX線CT装置は、被検体を立位で撮影可能な立位撮影状態と、被検体を臥位で撮影可能な臥位撮影状態との間で、架台の姿勢を変更可能な構造を有し、かつ架台本体を片持ちで支持する構造をさらに有する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
なお、本実施形態は、X線CT装置に限定されない。例えば、本実施形態は、ガントリを有する医用画像診断装置であれば、本実施形態の技術的特徴を利用可能である。当該医用画像診断装置は、例えば、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ)、陽電子放出断層撮影装置(以下、PET(Positron Emission Tomography)装置と呼ぶ)および単一光子放射断層撮影装置(以下、SPCET(Single Photon Emission Computed Tomography)装置と呼ぶ)などの核医学新装置、X線CT装置と核医学診断装置との複合装置、MRI装置と核医学診断装置との複合装置などである。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示す図である。図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、スタンド13と、寝台装置40と、コンソール装置100とを有する。例えば、架台装置10、スタンド13および寝台装置40はCT検査室に設置され、コンソール装置100はCT検査室に隣接する制御室に設置される。架台装置10とスタンド13と寝台装置40とコンソール装置100とは互いに通信可能に有線または無線で接続されている。架台装置10、スタンド13および寝台装置40は、コンソール装置100を介したユーザからの操作、或いは架台装置10、又は寝台装置40に設けられた操作部を介したユーザからの操作に基づいて動作する。なお、本実施形態では、床面FLに対し垂直である軸方向すなわち鉛直方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、かつ互いに直交する2方向を、X軸方向およびY軸方向としてそれぞれ定義するものとする。
【0014】
架台装置10は、立位状態または臥位状態の被検体Pに対して、X線CT撮影をするための構成を有するスキャン装置である。コンソール装置100は、架台装置10を制御するコンピュータである。架台装置10は、架台(架台本体、ガントリとも称される)11と、スタンド(支柱とも称される)13と、回転駆動装置23と、架台制御装置25と、を備える。架台11は、被検体Pの撮影に関する撮影系と当該被検体Pを挿入可能な開口15とを有する。スタンド13は、鉛直方向と水平方向との間で開口15の向きを変更可能に、かつ架台11を鉛直方向に沿って移動可能に、当該架台11を支持する。なお、スタンド13は、スタンド部と称されてもよい。スタンド13は、検査室の床面FLに設けられる。
【0015】
架台(ガントリ)11は、被検体Pの撮影に関する撮影空間を成す開口15を有する。なお、架台11は、スキャナ部と称されてもよい。スキャナ部11は、X線管17を搭載した回転フレーム21(回転部と称されてもよい)を回転可能に支持する。架台11は、開口15が形成された略円筒形状の構造体である。図1に示すように、架台11は、開口15を挟んで対向するように配置されたX線管17とX線検出器19とを収容する。X線管17とX線検出器19とは、本実施形態における被検体Pの撮影に関する撮影系に含まれる。なお、撮影系は、さらに、データ収集回路(以下、DAS(Data Acquisition System)と呼ぶ)33、高電圧発生器31、コリメータ、およびウェッジ等を含んでもよい。すなわち、架台11は、被検体Pの撮影に関する撮影系を有する。
【0016】
図2は、固定部12と、架台移動機構14と、開口15と、ベアリング16と、回転フレーム21との位置関係の一例を示す斜視図である。図2に示すように。回転フレーム21は、固定部に支持される。また、固定部12は、ベアリング16を介して、スタンド13における架台移動機構14により支持される。
【0017】
架台11は、スタンド13に沿って鉛直方向に移動可能に、架台移動機構14とベアリング16とを介してスタンド13に支持される。また、架台11は、鉛直方向と水平方向との間で開口15の向きを変更可能に、架台移動機構14とベアリング16とを介してスタンド13に支持される。開口15の向きは、例えば立位撮影状態である場合、回転軸A1に沿った方向に対応する。回転軸A1は、例えば、立位撮影状態である場合は鉛直方向であり、臥位撮影状態である場合は水平方向である。
【0018】
架台11は、アルミ等の金属により形成された固定部12と、立位撮影状態である場合固定部12により回転軸A1回りに軸受等を介して回転可能に支持された回転フレーム21と、を有する。固定部12は、被検体Pが配置可能な固定部開口を有し、X線管17を搭載した回転フレーム21を回転可能に支持する。固定部開口は、固定部12に設けられた開口15に相当する。以下、開口15に関して、固定部12に設けられた開口15に注目する場合、当該開口15を、必要に応じて固定部開口と呼ぶこととする。固定部12は、例えば、メインフレーム、または固定フレームとも称される。また、回転部21は、回転フレーム21と称される。メインフレーム12と回転フレーム21との接触部には環状電極(図示せず)が設けられている。メインフレームの当該接触部には環状電極に摺り接触するように導電性の摺動子(図示せず)が取り付けられている。
【0019】
スタンド13は、架台11を床面FLから離反して支持する基体である。スタンド13は、例えば、円柱形状や角柱形状等の柱状形状を有する。スタンド13は、例えば、架台11の側面部に取付けられる。スタンド13は、例えば、被検体Pを検査する検査室の床面FLに設けられる。スタンド13は、架台移動機構14を有する。架台移動機構14は、座位または立位姿勢の被検体PをX線CT撮影するため、開口15の回転軸A1が床面に対して略垂直を向いた状態の架台11を、鉛直方向にスライド可能に支持する。これにより、スタンド13は、固定部12を鉛直方向に移動可能に支持する。ベアリング16は、当該固定部12を鉛直方向に垂直なチルト軸を中心に回動可能に支持する。駆動部18は、スタンド13に搭載される。具体的には、駆動部18は、スタンド13における架台移動機構14に搭載される架台移動機構14、ベアリング16、および駆動部18については、後ほど説明する。
【0020】
図3は、架台11と、スタンド13と、架台移動機構14と、ベアリング16と、駆動部18との位置関係の一例を示す斜視図である。図3では、当該位置関係が分かりやすいように、スタンド13および架台移動機構14と、ベアリング16と、架台11とは離間して示されている。図3では駆動部18における駆動ギア181が、内歯167と鉛直方向の上端で嵌合しているが、これに限定されない。内歯167と駆動ギア181との嵌合位置は、内歯167で囲まれた空間(開口)内であれば、任意に設定可能である。
【0021】
典型的には、スタンド13は、架台11の一つの側部に、架台移動機構14とベアリング16とを介して設けられる。また、スタンド13は柱状形状を有するとしたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、スタンド13は、架台11の少なくとも一方の側部を支持可能であれば、U字形状等の如何なる形状を有していてもよい。なお、スタンド13は、検査室の床面FLに設置されることに限定されず、スタンド13の一端が検査室の床面FLに固定されスタンド13の他端は、検査室の天井に固定されてもよい。
【0022】
スタンド13は、回転軸A1が鉛直方向と水平方向との間で、床面に対して平行する水平軸(以下、チルト軸と呼称する。)回りに回転可能に、架台移動機構14とベアリング16とを介して、架台11を支持する。架台移動機構14は、例えば、鉛直方向に沿った直動ガイドと、直動ガイド上を移動可能なブロックと、当該ブロックを移動させるモータ(以下、鉛直移動モータと呼ぶ)とを有する。
【0023】
具体的には、スタンド13には、鉛直方向に沿って架台移動機構14における直動ガイドが設けられる。直動ガイドに沿って移動可能なブロックには、ベアリング16が設けられる。ブロックは、移動制御回路27による制御の下での鉛直移動モータの駆動により、直動ガイドに沿って移動する。これにより、架台11は、鉛直方向に沿って移動する。
【0024】
架台移動機構14は、移動制御回路27による制御の下で、鉛直方向に沿って配置された直動ガイドに沿ってブロックを移動させることで、架台11を移動させる。これにより、架台11は、鉛直方向に沿って、上下に移動が可能となる。なお、鉛直方向に沿った架台11の移動に関する機構は、直動ガイドなどに限定されず例えばラックアンドピニオンなどの既知の機構により実現されてもよい。
【0025】
図1乃至図3に示すように、ベアリング16の径は、スキャナ部11の厚み、すなわちY方向に沿った架台11の厚み(架台11における開口15に垂直方向に沿った架台11の長さ)と同じ大きさを有する。これにより、スキャナ部11の厚みを越えない範囲で、ベアリング16の径を最大化することが可能になる。ベアリング16は、内輪161と、複数の転動体163と、外輪165と、複数の歯(ギア、歯車とも称される)167とを有する。内輪161は、例えば、転動体163の回転方向に沿って不図示の複数の取付穴を有する。内輪161は、複数の取付穴を通したボルトにより、スキャナ部(架台11)に接続される。内輪161は、当該内輪161の内周面に上記複数の歯167を有する。すなわち、ベアリング16における開口には、内向きの複数の歯(以下、内歯と呼ぶ)167が配置される。
【0026】
転動体163は、例えば保持器により保持される。転動体163は、内輪161と外輪165とを回転可能に接続する。転動体163は、玉、コロなど、既知の物が使用可能である。
【0027】
外輪165は、複数の転動体163を介して内輪161の外周に接続される。外輪165において、スキャナ部11と反対側(以下、スキャナ対向側と呼ぶ)には、スタンド13が接続される。具体的には、外輪165は、例えば、転動体163の回転方向に沿って不図示の複数の取付穴を有する。外輪165には、複数の取付穴を通したボルトにより、外輪165のスキャナ対向側において架台移動機構14が接続される。例えば、外輪165は、複数の取付穴を通したボルトにより、架台移動機構14におけるブロックと接続された部材を介して、架台移動機構14と接続される。当該部材としては、直動ガイドと複数の取付穴との位置関係に応じて、プレートなどが適宜利用可能である。なお、内歯167を有するベアリング16は、旋回ベアリングまたは旋回座軸受けなどと称されてもよい。
【0028】
架台移動機構14には、ベアリング16における複数の歯167を介して、内輪161を回転させる駆動部18を搭載する。駆動部18は、駆動ギア181と、駆動シャフト183と、駆動モータ185と、を有する。駆動ギア181は、複数の歯(内歯)167に嵌合する。駆動ギア181は、図3に示すように、ベアリング16の内周に収まる。図1および図3に示すように、駆動ギア181は、所定のトルクを生じさせる各種歯車等を介して駆動モータ185の回転軸である駆動シャフト183と接続される。
【0029】
駆動シャフト183は、駆動ギア181からスキャナ対向側に向けて駆動モータ185まで延伸される。駆動シャフト183は、駆動モータ185の回転軸と駆動ギア181の回転軸とを接続する。駆動モータ185は、駆動シャフト183を回転することで、駆動ギア181の回転を駆動する。図1および図3に示すように、複数の歯167と駆動ギア181とは、ベアリング16における開口部分、すなわち内輪161の内周側の空間に配置される。駆動モータ185は、架台移動機構14に搭載される。これらのことから、駆動部18は、架台11の鉛直方向に沿って、ベアリング16とともに鉛直方向に移動する。
【0030】
また、駆動部18は、移動制御回路27による制御の下で、駆動ギア181の回転により内歯167を回転させる。すなわち、ベアリング16における内歯167は、移動制御回路27による制御の下での駆動モータ185の駆動により、回転する。これにより、駆動部18は、水平方向と鉛直方向との間で架台11を回転させる。架台11の回転により、立位撮影状態と臥位撮影状態との切り替えが可能となる。これらにより、架台11は、図1乃至図3におけるX軸を回転軸として回転可能であって、鉛直方向に沿って移動可能となる。なお、架台移動機構14、ベアリング16、および駆動部18は、架台11の可動に関する可動部と称されてもよい。このとき、可動部は、スタンド13に接続される。
【0031】
例えば、被検体Pに対して臥位撮影を行う場合、駆動部18における駆動モータ185は、移動制御回路27による制御の下で、開口15の面が鉛直方向に対して垂直になるように、駆動シャフト183を回転させる。これにより、駆動ギア181が回転する。駆動ギア181の回転に伴って内歯167が回転し、架台11が回転する。被検体Pが天板43に横たわった後、寝台駆動装置32により天板43を移動させることで、通常のX線CT装置と同様に被検体Pに対する臥位撮影が可能となる。
【0032】
また、被検体Pに対して立位撮影を行う際は、駆動部18における駆動モータ185は、移動制御回路27による制御の下で、開口15の面が水平になるように、駆動シャフト183を回転させる。これにより、駆動ギア181が回転する。駆動ギア181の回転に伴って内歯167が回転し、架台11が回転する。次いで、移動制御回路27による制御の下での鉛直移動モータの駆動により、ブロックを鉛直方向上向きに移動させる。これにより、架台11は、鉛直方向上向きに、被検体Pが開口15の直下で立てる位置まで移動する。被検体Pは、開口15の真下に位置すると、入力インタフェース105を介したユーザの指示に応じて、移動制御回路27による制御の下での鉛直移動モータの駆動により、ブロックは、鉛直方向に沿って移動する。これにより、架台11が上下することで被検体Pの立位撮影が適宜実行される。
【0033】
X線管17は、高電圧発生器31からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。熱電子がターゲットに衝突することによりX線が発生される。X線管17における管球焦点で発生したX線は、例えばコリメータを介してコーンビーム形に成形され、被検体Pに照射される。例えば、X線管17には回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。なお、本実施形態においては、一管球型のX線CT装置にも、X線管17とX線検出器19との複数のペアを回転フレーム21に搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。
【0034】
X線検出器19は、X線管17から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をDAS33へと出力する。X線検出器19は、例えば、X線管17の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器19は、例えば、当該検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。なお、X線CT装置1には、X線管17とX線検出器19とが一体として被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、およびリング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管17のみが被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)があり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。以下、説明を具体的にするために、本実施形態のX線CT装置1は、第3世代CTを例にとり説明する。
【0035】
また、X線検出器19は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器19は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。また、X線検出器19は、光子計数型X線検出器であってもよい。X線検出器19は、X線検出部の一例である。
【0036】
回転フレーム21は、開口15を有し、X線を発生するX線管17が取り付けられる。具体的には、回転フレーム21は、X線管17とX線検出器19とを対向支持し、後述する架台制御装置25によってX線管17とX線検出器19とを回転させる円環状のフレームである。回転フレーム21は、支持軸受を介してメインフレーム12に回転可能に支持される。回転フレーム21は、架台制御装置25による制御の下での回転駆動装置23からの動力を受けて、回転軸A1回りに一定の角速度で回転する。
【0037】
なお、回転フレーム21は、X線管17とX線検出器19とに加えて、高電圧発生器31やDAS33を更に備えて支持する。このような回転フレーム21は、撮影空間をなす開口15が形成された略円筒形状の筐体に収容されている。開口15の中心軸は、回転フレーム21の回転軸A1に一致する。なお、DAS33が生成した検出データは、例えば発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の非回転部分(例えばメインフレーム12)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置100へと転送される。なお、回転フレーム21から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0038】
回転駆動装置23は、架台制御装置25からの制御に従って回転フレーム21を回転させるための動力を発生する。回転駆動装置23は、架台制御装置25からの駆動信号のデューティ比等に応じた回転速度で駆動することにより、動力を発生する。回転駆動装置23は、例えば、ダイレクトドライブモータやサーボモータ等のモータにより実現される。回転駆動装置23は、例えば、架台11に収容されている。
【0039】
架台制御装置25は、コンソール装置100からの指令に従い、高電圧発生器31、回転駆動装置23、移動制御回路27およびDAS33などを制御する。架台制御装置25は、コンソール装置100や架台装置10に取り付けられた入力インタフェースからの入力信号を受けて、架台装置10の動作制御を行う機能を有する。例えば、架台制御装置25は、入力信号を受けて回転フレーム21を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御などを行う。なお、架台制御装置25は、架台装置10におけるスタンド13に設けられてもよいし、コンソール装置100に設けられても構わない。また、架台制御装置25により実現される機能は、コンソール装置100における処理回路107において、架台制御機能として搭載されてもよい。
【0040】
架台制御装置25は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の処理装置(プロセッサ)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリ)とを有する。また、架台制御装置25は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。
【0041】
当該処理装置は、当該記憶装置に保存されたプログラムを読み出して実現することで、上記機能を実現する。なお、当該記憶装置にプログラムを保存する代わりに、当該処理装置の回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、当該処理装置は、当該回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで上記機能を実現する。
【0042】
操作パネル29等を介したユーザの指示として開口15の向きが鉛直方向である立位撮影状態を実現させる指示が入力されると、移動制御回路27は、駆動部18を制御することで駆動ギア181を回転させ、内歯167を回転させる。内歯167の回転により、水平方向から鉛直方向に架台11が回転する。また、操作パネル29等を介したユーザの指示として開口15の向きが水平方向である臥位撮影状態を実現させる指示が入力されると、移動制御回路27は、駆動部18を制御することで駆動ギア181を回転させ、内歯167を回転させる。内歯167の回転により、鉛直方向から水平方向に架台11が回転する。操作パネル29等を介したユーザによりチルト角が入力されると、移動制御回路27は、駆動部18を制御することで駆動ギア181を回転させ、内歯167を回転させる。内歯167の回転により、入力されたチルト角を実現するように、架台11が回転する。
【0043】
また、立位撮影時において、操作パネル29等を介したユーザにより架台11の移動指示が入力されると、移動制御回路27は、鉛直移動モータを制御することで、架台移動機構14のブロックを移動させる。これにより、架台11は、鉛直方向に沿って移動する。
【0044】
移動制御回路27は、上述のプロセッサなどにより実現される。移動制御回路27により実行される各種移動制御の処理を実現するプロセッサは、移動制御部に相当する。なお、図1では、移動制御回路27は、スタンド13に搭載されているが、架台11に搭載されてもよいし、コンソール装置100に搭載されてもよい。また、移動制御回路27により実現される機能は、移動制御機能として、処理回路107に搭載されてもよいし、架台制御装置25に搭載されてもよい。
【0045】
操作パネル29は、スイッチボタン、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、および表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等により実現される。操作パネル29は、ユーザから受け取った入力操作を電気信号へ変換し、架台制御装置25へ出力する。操作パネル29は、例えば、立位姿勢の被検体Pの撮影に関する立位モード、または臥位姿勢の被検体Pの撮影に関する臥位モードを選択する選択操作を受け付ける。操作パネル29は、例えばスタンド13に設けられる。
【0046】
高電圧発生器31は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管17に印加する高電圧及びX線管17に供給するフィラメント電流を発生する。また、高電圧発生器31は、X線管17が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行う。高電圧発生器31は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、高電圧発生器31は、回転フレーム21に設けられてもよいし、架台11のメインフレーム12側に設けられても構わない。
【0047】
不図示のウェッジは、X線管17から照射されたX線のX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジは、X線管17から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管17から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。ウェッジは、例えばウェッジフィルタ(wedge filter)またはボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0048】
不図示のコリメータは、ウェッジを透過したX線をX線照射範囲に絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。
【0049】
DAS33は、X線検出器19の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS33が生成した検出データは、コンソール装置100へと転送される。
【0050】
寝台装置40は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台41と、寝台駆動装置42と、天板43と、天板支持フレーム44とを備えている。基台41は、天板支持フレーム44を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置42は、被検体Pが載置された天板43を天板43の長軸方向に移動させるモータあるいはアクチュエータである。寝台駆動装置42は、コンソール装置100による制御に従い、天板43を移動する。天板支持フレーム44の上面に設けられた天板43は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置42は、天板43に加え、天板支持フレーム44を天板43の長軸方向に移動してもよい。
【0051】
コンソール装置100は、メモリ101と、ディスプレイ103と、入力インタフェース105と、処理回路107とを有する。メモリ101と、ディスプレイ103と、入力インタフェース105と、処理回路107との間のデータ通信は、例えば、バス(BUS)を介して行われる。
【0052】
メモリ101は、種々の情報を記憶するHDD(Hard disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ101は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。メモリ101は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ101の保存領域は、コンソール装置100内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。また、メモリ101は、本実施形態に係る制御プログラムを記憶する。メモリ101は、プリスキャンや本スキャンにより生成されたボリュームデータなどを記憶する。
【0053】
ディスプレイ103は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ103は、処理回路107によって生成された医用画像(CT画像)や、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ103としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。また、ディスプレイ103は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ103は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置100本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。ディスプレイ103は、表示部に相当する。
【0054】
入力インタフェース105は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路107に出力する。例えば、入力インタフェース105は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。入力インタフェース105としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。
【0055】
なお、本実施形態において、入力インタフェース105は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路107へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース105の例に含まれる。また、入力インタフェース105は、入力部の一例である。また、入力インタフェース105は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インタフェース105は、コンソール装置100本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。入力インタフェース105は、入力部に相当する。
【0056】
処理回路107は、入力インタフェース105から出力される入力操作の電気信号に応じて、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路107は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路107は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能111、前処理機能113、再構成機能115、および画像処理機能117を実行する。
【0057】
システム制御機能111、前処理機能113、再構成機能115、および画像処理機能117をそれぞれ実行する処理回路107は、システム制御部、前処理部、画像生成部、および画像処理部に相当する。なお、システム制御機能111、前処理機能113、再構成機能115、および画像処理機能117各々は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することによりシステム制御機能111、前処理機能113、再構成機能115、および画像処理機能117各々を実現するものとしても構わない。
【0058】
処理回路107は、システム制御機能111により、入力インタフェース105を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路107の各機能を制御する。具体的には、システム制御機能111は、メモリ101に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路107内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線CT装置1の各部を制御する。例えば、処理回路107は、入力インタフェース105を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路107の各機能を制御する。
【0059】
処理回路107は、前処理機能113により、DAS33から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータを生データ、前処理後のデータを投影データと称する。
【0060】
処理回路107は、再構成機能115により、前処理機能113にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法(FBP法:Filtered Back Projection)や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。すなわち、再構成機能115は、撮影系からの出力に基づいて画像を生成する。再構成機能115は、再構成されたCT画像のデータをメモリ101に格納する。
【0061】
処理回路107は、画像処理機能117により、再構成機能115により再構成されたCT画像に種々の画像処理を施す。例えば、画像処理機能117は、当該CT画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示画像を生成する。
【0062】
以上に述べた第1実施形態に係るX線CT装置1は、X線管17を搭載した回転部21を回転可能に支持するスキャナ部11と、スキャナ部11に接続され、内周面に複数の歯167を有する内輪161と、複数の転動体163を介して内輪161の外周に接続された外輪165とを有するベアリング16と、複数の歯167を介して、内輪161を回転させる駆動部18と、駆動部18を搭載し、外輪165に接続され、床面FLに設けられたスタンド13とを有する。また、第1実施形態に係るX線CT装置1におけるスタンド13は、外輪165に接続され、駆動部18を外輪165とともに鉛直方向に移動可能な架台移動機構14を有する。また、第1実施形態に係るX線CT装置1における駆動部18は、複数の歯167に嵌合する駆動ギア181と、駆動ギア181の回転を駆動する駆動モータ185とを有し、駆動モータ185は、スタンド13に搭載され、駆動ギア181は、内輪161の開口(ベアリング16における開口)に配置される。
【0063】
これらのことから、第1実施形態に係るX線CT装置1は、ベアリング16として内歯167(内輪ギアとも称される)のついたベアリング16を採用し、ベアリング16の内周側に駆動部18を配置することで、ベアリング16の内周に駆動部18が収まる。このため、第1実施形態に係るX線CT装置1は、ベアリング16および駆動部18をコンパクトに設計することができる。加えて、第1実施形態に係るX線CT装置1によれば、ベアリング16の径を、スキャナ部11の厚み、すなわち図2および図3に示すY方向に沿ったスキャナ部11の長さと同じ長さに設定することができ、スキャナ部11の厚みを越えない範囲でベアリング16の径を最大化することが可能になる。また、スタンド13のサイズについても従来の図7における外歯ギアを使用した際と同等のスタンド13のサイズで設計することが可能となる。
【0064】
以上のことから、第1実施形態に係るX線CT装置1によれば、内歯167を有するベアリング16と、ベアリング16の内周側への駆動部18の配置との実装により、ベアリング16および駆動部18による厚みが、スキャナ部11の厚みを越えることなく、かつベアリング16の径をスキャナ部11の厚みと同じサイズまで最大化することが可能になるこれにより、第1実施形態に係るX線CT装置1によれば、スタンド13のサイズも従来技術と同等で立位・臥位両方が撮影可能な片持ちCT装置を実現することが可能になる。また、第1実施形態に係るX線CT装置1によれば、片持ちで架台11を支持するため、複数の支柱(スタンド)により架台11を支持するX線CT装置に比べて、よりコンパクトとなることで、少ない部品点数でのコスト削減、および、少ない部品点数でのメンテナンスを向上させることができる。また、第1実施形態に係るX線CT装置1によれば、立位撮影時における被検体Pの視認性およびストレッチャーから天板43への被検体Pの移動の利便性が高い片持ちCT装置であるため、被検体Pに対する検査のスループットを改善すること、すなわち検査効率を向上させることができる。
【0065】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態の構成に加えて、内歯167を保持することで、内歯167の回転を抑制する保持部をさらに有することにある。図4は、本実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示す図である。図4に示すように、保持部20は、スタンド13に搭載される。保持部20は、複数の歯(内歯)167を介して、ベアリング16における内輪161を保持して、内輪161の回転を抑制する。保持部20は、ブレーキと称されてもよい。以下、本実施形態において、第1実施形態と相違する構成について説明する。
【0066】
図5は、架台11と、スタンド13と、架台移動機構14と、ベアリング16と、駆動部18と、保持部20との位置関係の一例を示す斜視図である。図5では、当該位置関係が分かりやすいように、スタンド13および架台移動機構14と、ベアリング16と、架台11とは離間して示されている。図5では駆動部18における駆動ギア181と、保持部20における保持ギア201とが、内歯167と鉛直方向の両端で嵌合しているが、これに限定されない。内歯167に対する駆動ギア181と保持ギア201との嵌合位置は、内歯167で囲まれた空間内であれば、任意に設定可能である。このとき、駆動ギア181と保持ギア201とは非干渉であることが必須条件となる。
【0067】
架台移動機構14には、駆動部18に加えて、ベアリング16における複数の歯167を介して、内輪161の回転を抑制する保持部20を搭載する。保持部20は、保持ギア201と、保持シャフト203と、保持モータ205と、を有する。なお、保持部20は、既知のディクブレーキまたはドラムブレーキにより実現されてもよい。例えば、保持部20としてディスクブレーキが用いられる場合、内輪161には、円環状のディスクロータがさらに設けられる。
【0068】
保持ギア201は、複数の歯(内歯)167に嵌合する。保持ギア201は、図5に示すように、ベアリング16の内周に収まる。すなわち、保持ギア201は、内輪161の開口に配置される。図5に示すように、保持ギア201は、所定のトルクを生じさせる各種歯車等を介して保持モータ205の回転軸である保持シャフト203と接続される。
【0069】
保持シャフト203は、保持ギア201からスキャナ対向側に向けて保持モータ205まで延伸される。保持シャフト203は、保持モータ205の回転軸と保持ギア201の回転軸とを接続する。
【0070】
保持モータ205は、スタンド13に搭載される。具体的には、保持モータ205は、図5に示すように、スタンド13における架台移動機構14に搭載される。保持モータ205は、保持シャフト203を回転することで、保持ギア201の回転を駆動する。図5に示すように、複数の歯167と保持ギア201とは、ベアリング16における開口部分、すなわち内輪161の内周側の空間に配置される。保持モータ205は、架台移動機構14に搭載される。これらのことから、保持部20は、架台11の鉛直方向に沿って、ベアリング16とともに鉛直方向に移動する。
【0071】
また、保持部20は、移動制御回路27による制御の下で、内歯167と駆動ギア181との接触点(ピッチ点)に対向する内歯167の歯面(以下、対向歯面と呼ぶ)に、保持ギア201が接触するように、保持シャフト203を回転させる。すなわち、ベアリング16における内歯167は、移動制御回路27による制御の下での保持モータ205の駆動により、保持ギア201と接触する。水平方向と鉛直方向との間での架台11の回転において、保持ギア201における歯を対向歯面に接触させることで、バックラッシュが抑制される。すなわち、立位撮影状態と臥位撮影状態との切り替えにおいて、バックラッシュが抑制される。なお、架台移動機構14、ベアリング16、駆動部18、および保持部20は、架台11の可動に関する可動部と称されてもよい。
【0072】
以上に述べた第2実施形態の変形例に係るX線CT装置1における保持部20は、スタンド13に搭載され、複数の歯167を介して、内輪161の回転を保持する。また、第2実施形態の変形例に係るX線CT装置1におけるスタンド13は、外輪165に接続され、駆動部18と保持部20とを外輪165とともに鉛直方向に移動可能な架台移動機構14を有する。また、第2実施形態の変形例に係るX線CT装置1における保持部20は、複数の歯167に嵌合して内輪161の開口に配置された保持ギア201と、スタンド13に搭載されて保持ギア201の回転を駆動する保持モータ205とを有する。
【0073】
これらにより、第2実施形態に係るX線CT装置1は、ベアリング16として内歯167(内輪ギアとも称される)のついたベアリング16を採用し、ベアリング16の内周側に駆動部18と保持部20とを配置することで、ベアリング16の内周に駆動部18と保持部20とが収まる。このため、第2実施形態に係るX線CT装置1は、ベアリング16、駆動部18および保持部20をコンパクトに設計することができる。
【0074】
以上のことから、第2実施形態に係るX線CT装置1によれば、架台11の回転時において、内歯167の回転に伴うバックラッシュを抑制することができるため、被検体Pに関する画像におけるモーションアーチファクトに類する画質の低下を低減できる。第2実施形態に係る他の効果については、第1実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0075】
なお、上記内歯167、駆動ギア181および保持ギア201は、歯車を想定して説明したが、これに限定されない。実施形態の変形例として、駆動ギア181および保持ギア201に関して、例えば、プーリーなどによる接触伝達機構が用いられてもよい。
【0076】
以上説明した少なくとも1つの実施形態などによれば、鉛直方向に沿ったスキャナ部11のストロークを向上させ、かつスキャナ部11のモーメント荷重を支持可能なベアリング16の径を確保し、さらにスタンド13のサイズを小型化可能な片持ちのX線CT装置1を実現することを実現することができる。
【0077】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 X線CT装置
10 架台装置
11 架台(ガントリ、スキャナ部)
12 固定部(メインフレーム、固定フレーム)
13 スタンド(支柱)
14 架台移動機構
15 開口(固定部開口)
16 ベアリング
17 X線管
19 X線検出器
20 保持部(ブレーキ)
21 回転フレーム
23 回転駆動装置
25 架台制御装置
27 移動制御回路
29 操作パネル
31 高電圧発生器
33 DAS(Data Acquisition System)
40 寝台装置
41 基台
42 寝台駆動装置
43 天板
44 天板支持フレーム
100 コンソール装置
101 メモリ
103 ディスプレイ
105 入力インタフェース
107 処理回路
111 システム制御機能
113 前処理機能
115 再構成機能
117 画像処理機能
161 内輪
163 転動体
165 外輪
167 複数の歯(内歯)
181 駆動ギア
183 駆動シャフト
185 駆動モータ
201 保持ギア
203 保持シャフト
205 保持モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7