(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120303
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027007
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 有規
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE11
5E087FF03
5E087GG06
5E087LL04
5E087LL12
5E087LL14
5E087MM04
5E087MM13
5E087MM14
5E087RR12
5E087RR25
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】ハウジングに弾性シール部材を容易に組み付けることができ、且つハウジングの構造が複雑になるのを回避可能なコネクタ装置を提供する。
【解決手段】コネクタ装置10は、ハウジング30と、ハウジング30を保持する筐体20と、ハウジング30に装着される弾性シール部材60と、を備える。ハウジング30は、外周面に、弾性シール部材60を受ける保持溝37を有している。筐体20は、保持溝37と対応する位置においてハウジング30を挟み込んだ状態で合体される第1筐体20Aおよび第2筐体20Bを有している。弾性シール部材60は、保持溝37に配置された状態でハウジング30を全周に亘って囲む環状をなし、第1筐体20Aと第2筐体20Bとの間に配置される。さらに充填シール部80が第1筐体20Aと第2筐体20Bとの間に形成され得る隙間を埋めるように設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングを保持する筐体と、前記ハウジングに装着される弾性シール部材と、を備え、
前記ハウジングは、外周面に、前記弾性シール部材を受ける保持溝を有し、
前記筐体は、前記保持溝と対応する位置において前記ハウジングを挟み込んだ状態で合体される第1筐体および第2筐体を有し、
前記弾性シール部材は、前記保持溝に配置された状態で前記ハウジングを全周に亘って囲む環状をなし、前記第1筐体と前記第2筐体との間に配置され、
前記第1筐体と前記第2筐体との間に形成され得る隙間を埋めるように設けられる充填シール部をさらに備える、コネクタ装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記充填シール部に非接触な状態となるように配置されている、請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記弾性シール部材は、前記筐体に接する弾性接触部位を有し、前記充填シール部は、前記弾性シール部材とは別の部位で前記筐体に接する充填接触部位を有している、請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記弾性シール部材は、外周面に、周方向に延び、前記周方向と交差するシール幅方向に間隔を置いて配置される複数のリップを有しており、
前記充填シール部は、前記複数のリップの間に形成された空間の少なくとも一部を埋めている、請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記弾性シール部材と前記ハウジングのうち、一方は、前記弾性シール部材の周方向と交差するシール幅方向に突出する突部を有し、他方は、前記シール幅方向に凹んで前記突部を嵌合状態で受ける凹部を有している、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コネクタ装置として、コネクタシール構造を例示している。コネクタシール構造は、ハウジングと、ハウジングが取り付けられるケースと、を備えている。ケースは、ハウジングを受ける切欠を有している。ハウジングが切欠に配置された状態で、ケースにはカバーが装着される。ハウジングは、ケースとカバーとの間に挟み込まれて保持される。
【0003】
ハウジングは、外周面に、保持溝を有している。ハウジングの保持溝には、弾性シール部材が装着される。弾性シール部材は、ケースの切欠に密着する。弾性シール部材は、U字状をなしている。ハウジングは、弾性シール部材を係止する端部係止部を有している。ハウジングとカバーとの間には、充填シールが充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の場合、弾性シール部材がU字状をなすため、ハウジングには端部係止部のような弾性シール部材を抜け止め状態に係止する係止構造を設ける必要があった。このため、ハウジングの構造が複雑になるという問題があった。また、弾性シール部材がU字状であると、ハウジングに弾性シール部材を容易に組み付けることができないという問題もあった。
【0006】
そこで、本開示は、ハウジングに弾性シール部材を容易に組み付けることができ、且つハウジングの構造が複雑になるのを回避可能なコネクタ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタ装置は、ハウジングと、前記ハウジングを保持する筐体と、前記ハウジングに装着される弾性シール部材と、を備え、前記ハウジングは、外周面に、前記弾性シール部材を受ける保持溝を有し、前記筐体は、前記保持溝と対応する位置において前記ハウジングを挟み込んだ状態で合体される第1筐体および第2筐体を有し、前記弾性シール部材は、前記保持溝に配置された状態で前記ハウジングを全周に亘って囲む環状をなし、前記第1筐体と前記第2筐体との間に配置され、前記第1筐体と前記第2筐体との間に形成され得る隙間を埋めるように設けられる充填シール部をさらに備える、コネクタ装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ハウジングに弾性シール部材を容易に組み付けることができ、且つハウジングの構造が複雑になるのを回避可能なコネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1において、コネクタ装置の正面図である。
【
図2】
図2は、第1筐体にコネクタを組み付けるときの状態を斜め上前方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、第1筐体にコネクタを組み付け、第1筐体の側壁の上端面に充填シール部が塗布された状態を斜め上後方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、第1筐体に第2筐体を組み付けるときの状態を斜め上前方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、各突部が各凹部に嵌合された位置で切断したコネクタ装置の横断面図である。
【
図6】
図6は、ハウジングを斜め上前方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、弾性シール部材を斜め上後方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態2において、充填シール部が各リップ間に配置された状態を拡大して示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタ装置は、
(1)ハウジングと、前記ハウジングを保持する筐体と、前記ハウジングに装着される弾性シール部材と、を備え、前記ハウジングは、外周面に、前記弾性シール部材を受ける保持溝を有し、前記筐体は、前記保持溝と対応する位置において前記ハウジングを挟み込んだ状態で合体される第1筐体および第2筐体を有し、前記弾性シール部材は、前記保持溝に配置された状態で前記ハウジングを全周に亘って囲む環状をなし、前記第1筐体と前記第2筐体との間に配置され、前記第1筐体と前記第2筐体との間に形成され得る隙間を埋めるように設けられる充填シール部をさらに備える。
【0011】
筐体(合体状態にある第1筐体および第2筐体)とハウジングとの間は、弾性シール部材と充填シール部とによってシールをとることができる。弾性シール部材がハウジングを全周に亘って囲む環状をなすため、ハウジングに弾性シール部材を容易に組み付けることができる。また、弾性シール部材は、自身の緊迫力(弾性復元力)でハウジングに保持可能である。このため、ハウジングには、弾性シール部材の脱落を阻止するための複雑な係止構造を設ける必要がない。その結果、ハウジングの構造が複雑になるのを回避できる。
【0012】
(2)上記(1)に記載のコネクタ装置において、前記ハウジングは、前記充填シール部に非接触な状態となるように配置されていることが好ましい。
【0013】
弾性シール部材がハウジングを全周に亘って包囲するので、ハウジングと充填シール部とを非接触な状態としても、ハウジングと筐体との間のシールをとることができる。その結果、ハウジングと充填シール部との接着等を考慮する必要がなくなり、コネクタ装置におけるシール構造の簡素化を図ることができる。
【0014】
(3)上記(1)または(2)に記載のコネクタ装置において、前記弾性シール部材は、前記筐体に接する弾性接触部位を有し、前記充填シール部は、前記弾性シール部材とは別の部位で前記筐体に接する充填接触部位を有していることが好ましい。
【0015】
筐体が弾性接触部位と接する部分には充填シール部を設ける必要がない。このため、上記構成は、充填シール部の使用量を削減することができる。
【0016】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載のコネクタ装置において、前記弾性シール部材は、外周面に、周方向に延び、前記周方向と交差するシール幅方向に間隔を置いて配置される複数のリップを有しており、前記充填シール部は、前記複数のリップの間に形成された空間の少なくとも一部を埋めていることが好ましい。
【0017】
充填シール部は、弾性シール部材と接触することができる。ここで、充填シール部が弾性シール部材における複数のリップの間に形成された空間を埋めることにより、充填シール部が弾性シール部材から漏れ出るのを回避できる。その結果、充填シール部が第1筐体と第2筐体との間の隙間を埋める状態を適正に実現することができる。
【0018】
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載のコネクタ装置において、前記弾性シール部材と前記ハウジングのうち、一方は、前記弾性シール部材の周方向と交差するシール幅方向に突出する突部を有し、他方は、前記シール幅方向に凹んで前記突部を嵌合状態で受ける凹部を有していることが好ましい。
【0019】
突部が凹部に嵌合状態で受けられることにより、弾性シール部材がハウジングに対して位置決め状態に装着される。よって、弾性シール部材を装着したハウジングが筐体に組み付けられる際に、弾性シール部材が筐体と接触しても、ハウジングに対して弾性シール部材が位置ずれするのを防止できる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施形態1>
実施形態1のコネクタ装置10は、
図1および
図4に示すように、筐体20と、筐体20に保持されるハウジング30と、ハウジング30に装着される弾性シール部材60と、筐体20に供給される充填シール部80と、ハウジング30に装着される複数の端子金具90と、を備えている。ハウジング30、端子金具90および弾性シール部材60は、コネクタ100を構成する。ハウジング30は、回路基板200に設置される。各端子金具90は、回路基板200の図示しない導電路に電気的に接続される。ハウジング30は、図示しない相手コネクタに嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については、ハウジング30が相手コネクタと嵌合する側を前側とする。上下方向は、
図1および
図4の上下方向を基準とする。本実施形態1の場合、回路基板200の表裏方向が上下方向に相当する。左右方向は、
図1および
図4の左右方向を基準する。
図1および
図4における符号X、YおよびZは、それぞれ前側、左側および上側を示す。これら方向は、コネクタ装置10が車両等に搭載された状態における方向とは必ずしも一致しない。
【0022】
(筐体20)
筐体20は、金属製または樹脂製であって、回路基板200を収容するケースとしての第1筐体20Aと、第1筐体20Aに被せ付けられるカバーとしての第2筐体20Bと、を有している。
第1筐体20Aは、箱状をなし、
図2に示すように、底壁21と、底壁21から立ち上がる側壁22と、を有している。第1筐体20Aの上方は、開放されている。回路基板200は、底壁21上に設置される。側壁22は、図示しないが平面視で四角形をなし、回路基板200の周りを包囲している。なお、
図2は、側壁22における四隅の一角を含む部分のみを表している。側壁22は、前後方向に壁面を向けた壁部23を有している。壁部23の前後方向の厚みは、弾性シール部材60の前後幅(シール幅)に対応している。
【0023】
壁部23は、上端面に開口する正面視U字状の受容凹部24を有している。受容凹部24には、弾性シール部材60を装着したハウジング30が上方から挿入される(
図1を参照)。受容凹部24は、受容凹部24の深さ方向の底側に位置する底面25と、底面25の左右両側の端部から壁部23の上端面にかけて左右両側に拡開して配置される一対の側面26と、を有している。つまり、受容凹部24は、上方に行くほど左右方向の開口幅を大きくする形状になっている。
【0024】
第2筐体20Bは、
図4に示すように、平面視矩形の平板状をなしている。本実施形態1の場合、第2筐体20Bの上下方向の厚み(板厚)は、第1筐体20Aの側壁22の前後方向の厚みよりも小さくされている。
図1に示すように、第2筐体20Bの下面は、第1筐体20Aの側壁22の上端面(壁部23の上端面を含む)と平行となるように平坦に設けられている。第2筐体20Bは、ハウジング30の後部と、ハウジング30の後部から引き出された端子金具90と、回路基板200とを、上方から覆うように配置される。第2筐体20Bの下面の周縁部と第1筐体20Aの側壁22の上端面との間には、後述する弾性接触部位67および充填接触部位81が介在して、シールがとられる。第2筐体20Bは、例えば、図示しないボルト等の固定手段によって第1筐体20Aに固定される。
【0025】
(端子金具90)
各端子金具90は、導電金属製であってピン状またはタブ状をなし、
図3に示すように、前後方向に延びる相手接続部91と、相手接続部91の後端から下方に延びる基板接続部92と、を有している。相手接続部91は、ハウジング30に装着され、図示しない相手端子金具90と電気的に接続される。基板接続部92は、ハウジング30の後方に露出し、回路基板200のスルーホール201に挿入され、回路基板200の導電路に半田付けして電気的に接続される。
【0026】
(ハウジング30)
ハウジング30は合成樹脂製であって、
図6に示すように、壁状の基部31と、基部31から前方に突出する筒状のフード部32と、基部31の左右両側の端部から後方に突出する固定部33(
図6は左側の端部に設けられた固定部33のみを図示)と、を有している。基部31は、受容凹部24に対応する外形形状をなしている。基部31は、前後方向に貫通する複数の端子挿入孔34を有している。端子金具90の相手接続部91は、端子挿入孔34に圧入状態で貫通して保持されている(
図1を参照)。
【0027】
ハウジング30は、
図6に示すように、基部31の外周面における前後方向に間隔を置いた部位から外側に張り出す一対のフランジ部35,36を有している。各フランジ部35,36は、互いに平行に対向し、基部31の外周に設けられている。基部31は、各フランジ部35,36間に、全周に亘る凹状の保持溝37を有している。保持溝37には、弾性シール部材60が取り付けられる(
図1および
図5を参照)。保持溝37の深さ方向(基部31の軸心側に向かう方向)の底側に位置する溝奥面は、基部31の周方向に連続しており、後述する弾性シール部材60の形状と対応するように、上側に行くほど左右方向の幅寸法を拡大させる台形の断面形状をなしている。
【0028】
一対のフランジ部35,36のうち、後側のフランジ部35は、
図6に示すように、保持溝37に臨む前面に、後方(弾性シール部材60のシール幅方向)に凹む複数の凹部38を有している。各凹部38は、フランジ部35の前面における上側と左右両側とに周方向に間隔を置いて設けられている(
図5を参照)。上側の凹部38は、
図6に示すように、平面視矩形に左右方向に長く切り欠かれた形状をなし、フランジ部35の前面における左右方向の中央部に設けられている。左右両側の各凹部38は、底面視矩形に上下方向に長く開口する形状をなし、フランジ部35の上下方向の中間部に貫通して設けられている。各凹部38には、
図5に示すように、弾性シール部材60の後述する各突部68が嵌合状態に配置される。なお、後側のフランジ部35の上端面は、第2筐体20Bによって覆われるため、前側のフランジ部36の上端面よりも一段低く配置される(後述する他の形態(実施形態2)に対応した図面になるが、
図8の符号35,36を参照)。
【0029】
フード部32は、
図6に示すように、四隅が丸い四角筒状をなし、前側のフランジ部36から前方に突出している。各端子金具90の相手接続部91の前端部は、
図1および
図2に示すように、フード部32の内部に突出して配置される。図示しない相手コネクタは、フード部32の内部に前方から嵌合される。フード部32は、ハウジング30が筐体20に保持された状態において、壁部23から前方に突出(露出)して配置される(
図1および
図3を参照)。
【0030】
各固定部33は、
図6に示すように、板面を上下方向に向けた底板部39を有し、後側のフランジ部35から後方に突出している。各固定部33の底板部39は、
図3に示すように、回路基板200の上面に沿って配置される。各固定部33は、底板部39の後端側に、上下方向に貫通する平面視円形の締結孔41を有している。締結孔41の内側には、カラー42が嵌め込まれている。締結孔41のカラー42には、図示しないボルトが挿通される。ボルトは、回路基板200に固定される。ハウジング30は、ボルトを介して回路基板200に保持される。各固定部33は、底板部39から立ち上がる側板部44を有している。各固定部33の側板部44は、相手接続部91の後端部と基板接続部92とを側方から覆って保護する。
【0031】
(弾性シール部材60)
弾性シール部材60は、シリコンゴム等のゴム製であって、
図7に示すように、周方向に切り目なく連続する環状をなしている。弾性シール部材60は、ハウジング30の保持溝37に嵌め付けられた状態で、受容凹部24に挿入されて第1筐体20Aと接触し、さらに上方から被せられる第2筐体20Bと接触して、第1筐体20Aおよび第2筐体20Bとハウジング30との間に圧縮状態で挟み込まれる(
図1を参照)。
【0032】
具体的には、弾性シール部材60は、
図7に示すように、左右方向に延びる底部61と、底部61の左右両側の端部から上方に互いに拡開するように延びる一対の側部62と、左右方向に延びて各側部62の上端部間をつなぐ上部63と、を有している。底部61と上部63とは互いに平行に配置される。上部63は、底部61よりも左右方向に長く形成されている。各側部62は、上方へ行くほど左右方向に互いに大きく離間するように配置される。端的には、弾性シール部材60は、上方に向けて拡開する台形状、詳細には等脚台形状をなしている。弾性シール部材60は、左右方向の中央を通る軸線を挟んで線対称な形状になっている。弾性シール部材60の四隅部(底部61の左右両側の端部および各側部62の上端部)には丸みが付けられている。
【0033】
弾性シール部材60は、前後方向に一定のシール幅(前後幅)を有している。弾性シール部材60のシール幅は、壁部23の厚み(受容凹部24の前後寸法)および保持溝37の前後寸法に対応している。弾性シール部材60は、外周面に、シール幅方向(前後方向)に間隔を置いて突設される一対のリップ64を有している。各リップ64は、互いに同一形状で且つ同じ大きさの山型の断面形状を有している。各リップ64は、弾性シール部材60の外周面に全周に亘って設けられている。各リップ64は、第2筐体20Bの下面および第1筐体20Aの受容凹部24の内面(底面25、各側面26)に密着する弾性接触部位67になっている。
【0034】
図7に示すように、弾性シール部材60の内周面(
図7において、弾性シール部材60の中心側(内側)を向く面)は、リップ64のような突出形状を有さず、周方向に平坦に形成されている。弾性シール部材60の内周面は、ハウジング30の保持溝37の溝奥面に全周に亘って密着する(
図1を参照)。また、弾性シール部材60は、径方向の厚み部分から後方(シール幅方向)に突出する複数の突部68を有している。各突部68は、弾性シール部材60の後面における上側と左右両側とに周方向に間隔を置いて突設されている。上側の突部68は、左右方向に長い平面視矩形の板片状をなし、上部63の後面における左右方向の中央部に配置される。左右両側の各突部68は、上下方向に長い側面視矩形の板片状をなし、各側部62の後面における上下方向の中央部に配置される。弾性シール部材60がハウジング30の保持溝37に挿入された状態で、各突部68は対応する凹部38に嵌合状態で配置される(
図5を参照)。これにより、弾性シール部材60はハウジング30に対して位置決め状態に保持される。
【0035】
(充填シール部80)
充填シール部80は、接着剤等の流動性をもった液状シールとして供給され、液状シールを固化した固形シールによって構成される。充填シール部80としては、例えば、シリコン樹脂系接着剤を使用可能である。
図1に示すように、充填シール部80は、第1筐体20Aと第2筐体20Bとの間の隙間を埋めるように、隙間に充填されている。本実施形態1の場合、充填シール部80は、第1筐体20Aの側壁22の上端面(壁部23の上端面を含む)に塗布される。第2筐体20Bが第1筐体20Aに被せ付けられると、第1筐体20Aに塗布された充填シール部80は、第2筐体20Bの下面に密着する。充填シール部80は、第1筐体20Aの上端面と第2筐体20Bの下面とに密着する充填接触部位81を構成する。
【0036】
(コネクタ装置10の製造方法および作用)
弾性シール部材60は、ハウジング30に前方から組み付けられる。弾性シール部材60は、組み付け過程で、フード部32の外周面を摺動して弾性的に押し広げられる。その後、弾性シール部材60は、保持溝37に嵌まり込み、各突部68が各凹部38に前方から進入することで、ハウジング30に位置決め状態に保持される。
【0037】
弾性シール部材60を装着したハウジング30(以下、コネクタ100と言う)は、
図2に示すように、第1筐体20Aの壁部23の受容凹部24に対し、
図2の矢印方向に沿って挿入される。具体的には、弾性シール部材60が受容凹部24に上方から挿入される。ここで、受容凹部24は上方に行くほど左右方向の開口幅を大きくする形状になっており、弾性シール部材60も上方に向けて左右方向に拡開する形状になっている。このため、弾性シール部材60は、挿入過程で受容凹部24の各側面26に強く接触するのを回避でき、第1筐体20Aに対する組み付け抵抗を低減させることができる。しかも、弾性シール部材60の各突部68は、ハウジング30の各凹部38に対し、受容凹部24への弾性シール部材60の挿入方向(本実施形態1の場合は下方)と交差する方向(本実施形態1の場合は前方)から挿入されて嵌合されている。このため、仮に、弾性シール部材60が挿入過程で受容凹部24の各側面26に接触しても、弾性シール部材60がハウジング30に対して位置ずれするのを防止できる。よって、弾性シール部材60は、受容凹部24に適正な状態で挿入可能となる。
【0038】
弾性シール部材60が受容凹部24に挿入された状態において、各フランジ部35,36は壁部23を前後方向に挟み込むように配置される。これにより、コネクタ100は、壁部23に対して前後方向に位置決めされた状態に保持される。このとき、各リップ64の上端部は、壁部23の上端面よりも上方に突出するように配置される。
【0039】
続いて、
図3に示すように、充填シール部80が側壁22の上端面に塗布される。もっとも、充填シール部80は、コネクタ100が壁部23に保持される前に、側壁22の上端面に塗布されていてもよい。なお、
図3等に示す充填シール部80は、模式図であって、実際の充填シール部の厚み、塗布量を表していない。
【0040】
本実施形態1の場合、充填シール部80は、壁部23の上端面において、弾性シール部材60の上部63が露出する部分を除く部位に、塗布される。壁部23の上端面において、充填シール部80の充填接触部位81は、弾性シール部材60の弾性接触部位67を挟んだ両側に、弾性接触部位67と左右方向に並んで配置される。
【0041】
次いで、第2筐体20Bが第1筐体20Aに被せ付けられる。具体的には、第2筐体20Bが第1筐体20Aの側壁22の上端面に載せられる。充填シール部80は、第2筐体20Bの下面に付着される。その後、充填シール部80の充填接触部位81は、固化され、第1筐体20Aと第2筐体20Bとに接着される。弾性シール部材60の弾性接触部位67(上部63の各リップ64)は、第2筐体20Bの下面に密着される。第1筐体20Aと第2筐体20Bとがボルト締め等されて合体状態に固定されることにより、第2筐体20Bに対する弾性接触部位67の密着状態が維持される。ハウジング30と筐体20との間は、弾性シール部材60および充填シール部80によって封止され、シールがとられる。合体状態にある第1筐体20Aと第2筐体20Bとの間は、充填シール部80によって封止され、シールがとられる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態1によれば、弾性シール部材60および充填シール部80によって、筐体20(合体状態にある第1筐体20Aおよび第2筐体20B)とコネクタ100との間のシールをとることができる。ここで、弾性シール部材60は、ハウジング30を全周に亘って囲む環状をなしている。このため、本実施形態1は、ハウジング30に弾性シール部材60を容易に組み付けることができる。また、弾性シール部材60は、自身の緊迫力(弾性復元力)でハウジング30に保持可能である。このため、本実施形態1は、ハウジング30に、弾性シール部材60の脱落を阻止するための複雑な係止構造を設ける必要がない。よって、本実施形態1は、ハウジング30の構造が複雑になるのを回避できる。
【0043】
ハウジング30の外周は、筐体20と対応する位置において、弾性シール部材60によって全周に亘ってシールされている。言い換えれば、ハウジング30と筐体20との間には弾性シール部材60が介在している。このため、ハウジング30が充填シール部80に非接触な状態に配置されていても、ハウジング30と筐体20との間のシールをとることができる。その結果、ハウジング30と充填シール部80との接着等を考慮する必要がなくなり、コネクタ装置10におけるシール構造の簡素化を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態1の場合、弾性シール部材60が筐体20に接する弾性接触部位67を有し、充填シール部80が弾性シール部材とは別の部位で筐体20に接する充填接触部位81を有している。このため、本実施形態1は、筐体20における弾性接触部位67と対応する部分に充填シール部80を設ける必要がない。結果として、本実施形態1の構成は、充填シール部80の使用量を削減することができる。
【0045】
<実施形態2>
本開示の実施形態2は、
図8に示すように、弾性シール部材60と充填シール部80とが部分的に接触する接触部15を有し、接触部15でもシールをとる構造になっている。その他は、実施形態1と同様であり、実施形態1と同様の構成には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0046】
接触部15は、例えば、弾性シール部材60の各側部62の上端部(上端の左右角部)と、充填シール部80が受容凹部24に臨む部分と、の間に形成されている。
図8に示すように、接触部15は、弾性シール部材60の各リップ64間に形成された空間に充填シール部80の一部が進入し、空間を埋めるように充填されることによって構成される。充填シール部80は、接触部15において各リップ64間の空間に収容され、弾性シール部材60から漏れ出ないように構成されている。充填シール部80の漏れ防止構造は、例えば、各リップ64間や溝深さ等を調整して実現できる。このため、充填シール部80が第1筐体20Aと第2筐体20Bとの間の隙間を埋める状態を適正に実現することができる。
【0047】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1に場合、弾性シール部材の外周面には前後方向に間隔を置いて一対のリップが突設されていた。これに対し、他の実施形態によれば、弾性シール部材の外周面には、前後方向に間隔を置いて3つ以上のリップが突設されていても良く、あるいは1つのリップが突設されているだけも良い。さらに、弾性シール部材の外周面には、リップが設けられていなくても良い。
上記実施形態1の場合、第1筐体が回路基板等を収容するケースとして構成され、第2筐体が第1筐体の上面開口を覆うカバーとして構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、第1筐体および第2筐体は、ケースとカバーとの区別なく構成されていても良い。要は、第1筐体および第2筐体は、コネクタ(ハウジングおよび弾性シール部材)を間に挟んで合体可能な形状であれば良い。
上記実施形態1の場合、充填シール部は、まず第1筐体に塗布され、第1筐体と第2筐体との合体によって第2筐体に付着される構成であった。これに対し、他の実施形態によれば、充填シール部は、まず第2筐体に塗布され、第1筐体と第2筐体との合体によって第1筐体に付着される構成としても良い。さらに、充填シール部は、合体状態にある第1筐体と第2筐体との間に形成された隙間にコーキングガン等を用いて注入充填される構成であっても良い。
上記実施形態2の場合、接触部は、弾性シール部材の上端の左右角部と充填シール部の端部との間に形成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、接触部は、例えば、弾性接触部位の上部と、第2筐体との間に、上部の左右方向の全長に亘って充填シール部が充填されて構成されても良い。この場合、充填シール部は、実施形態2と同様、弾性シール部材の各リップ間に形成された空間を埋めるように充填されると良い。
【符号の説明】
【0048】
10…コネクタ装置
15…接触部
20…筐体
20A…第1筐体
20B…第2筐体
21…底壁
22…側壁
23…壁部
24…受容凹部
25…底面
26…側面
30…ハウジング
31…基部
32…フード部
33…固定部
34…端子挿入孔
35…(後側の)フランジ部
36…(前側の)フランジ部
37…保持溝
38…凹部
39…底板部
41…締結孔
42…カラー
44…側板部
60…弾性シール部材
61…底部
62…側部
63…上部
64…リップ
67…弾性接触部位
68…突部
80…充填シール部
81…充填接触部位
90…端子金具
91…相手接続部
92…基板接続部
100…コネクタ
200…回路基板
201…スルーホール