(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120306
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】地盤の凍結方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20240829BHJP
E21D 11/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
E21D9/06 301R
E21D11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027013
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝仁
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一成
【テーマコード(参考)】
2D054
2D155
【Fターム(参考)】
2D054AC01
2D054FA04
2D155BA01
2D155JA00
(57)【要約】
【課題】凍土とシールドトンネルとの良好な凍着を実現する。
【解決手段】地盤の凍結方法は、シールド機1でシールドトンネル10を構築する際に、シールド機1のテールブラシ21間に充填材(例えばテールグリース22)を充填し、テールブラシ21の後方のテールボイド31内に裏込め材35を充填すること(ステップS1)、少なくとも、シールドトンネル10の外周面33とテールボイド31内の裏込め材35との間を、洗浄すること(ステップS2)、及び、この洗浄が行われた後に、シールドトンネル10の周辺の地盤を、テールボイド31内の裏込め材35と共に凍結すること(ステップS3)、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機でシールドトンネルを構築する際に、前記シールド機のテールブラシ間に充填材を充填し、前記テールブラシの後方のテールボイド内に裏込め材を充填すること、
少なくとも、前記シールドトンネルの外周面と前記テールボイド内の前記裏込め材との間を、洗浄すること、及び、
前記洗浄が行われた後に、前記シールドトンネルの周辺の地盤を、前記テールボイド内の前記裏込め材と共に凍結すること、
を含む、地盤の凍結方法。
【請求項2】
シールド機でシールドトンネルを構築する際に、前記シールド機のテールブラシ間に充填材を充填し、前記テールブラシの後方のテールボイド内に裏込め材を充填すること、
少なくとも、前記シールドトンネルの外周面と前記テールボイド内の前記裏込め材との間を、洗浄すること、及び、
前記洗浄に先立って、前記シールドトンネルの周辺の地盤を、前記テールボイド内の前記裏込め材と共に凍結すること、
を含む、地盤の凍結方法。
【請求項3】
前記洗浄することは、前記シールドトンネルの外周面と前記テールボイド内の前記裏込め材との間に洗浄液を注入することを含み、
前記充填材は油脂を含み、前記洗浄液は界面活性剤を含む、請求項1又は請求項2に記載の地盤の凍結方法。
【請求項4】
前記洗浄液は、前記シールドトンネルを内外に貫通する第1貫通孔を介して、前記シールドトンネルの外周面と前記テールボイド内の前記裏込め材との間に注入される、請求項3に記載の地盤の凍結方法。
【請求項5】
前記洗浄に用いられた後の前記洗浄液は、前記シールドトンネルを内外に貫通する第2貫通孔を介して、前記シールドトンネル内に回収される、請求項4に記載の地盤の凍結方法。
【請求項6】
前記洗浄が行われた後に、前記シールドトンネルの外周面と前記テールボイド内の前記裏込め材との間に隙間埋め材を充填することを更に含む、請求項1又は請求項2に記載の地盤の凍結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの周辺の地盤を凍結する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中にトンネルを構築する際に用いられる工法の一例としてシールド工法を挙げることができる。シールド工法では、例えば、地山に発進立坑と到達立坑とを構築し、発進立坑から到達立坑へ向けてシールド機(シールド掘進機)で地山を掘削しながら、シールド機の後部で次々にセグメントをトンネル周方向に組み立ててセグメントリングを構築すると共に、隣接するセグメントリング同士をトンネル軸方向で連結することで筒状の覆工体(シールドトンネル)を構築する。この工法では、シールド機は、その後方の既設セグメントリングを推進ジャッキで後方へ押圧し、その反力として発生する推力によって、地山を掘削しながら前進する。また、一般的なシールド機の後部では、テールブラシ間にテールグリースが充填されており、このテールグリースをテールブラシでシールドトンネルの外周面に塗布することで、シールド機の後部での地下水に対する止水性能を確保している。更に、テールブラシの後方のテールボイド内には裏込め材が充填される。
【0003】
特許文献1は、地盤凍結工法の一例として、シールドトンネルの周辺の地盤を凍結する方法を開示している。特許文献1では、シールドトンネルを構成するセグメントに設けられた凍結管内に冷媒を流通させることにより、シールドトンネルの周辺の地盤及び裏込め材の凍結を行っている(特許文献1の段落0052等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の塗布されたテールグリースについては、シールド機の通過後もシールドトンネルの外周面(換言すれば、セグメントの外面、及び、セグメントリングの外周面)に残存し得る。
【0006】
この点、例えばシールドトンネルの地中切り拡げなどを行う際に、補助工法として地盤凍結工法を採用する場合には、凍土(前述の凍結される地盤及び裏込め材)とシールドトンネルとの界面の凍着強度(例えば凍着せん断強さ)に期待するが、当該界面にテールグリースが存在すると、その分、当該界面の凍着強度が低下する虞があった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑み、凍土とシールドトンネルとの良好な凍着を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため本発明の第1態様において、地盤の凍結方法は、
シールド機でシールドトンネルを構築する際に、前記シールド機のテールブラシ間に充填材を充填し、前記テールブラシの後方のテールボイド内に裏込め材を充填すること、
少なくとも、前記シールドトンネルの外周面と前記テールボイド内の前記裏込め材との間を、洗浄すること、及び、
前記洗浄が行われた後に、前記シールドトンネルの周辺の地盤を、前記テールボイド内の前記裏込め材と共に凍結すること、
を含む。
【0009】
本発明の第2態様において、地盤の凍結方法は、
シールド機でシールドトンネルを構築する際に、前記シールド機のテールブラシ間に充填材を充填し、前記テールブラシの後方のテールボイド内に裏込め材を充填すること、
少なくとも、前記シールドトンネルの外周面と前記テールボイド内の前記裏込め材との間を、洗浄すること、及び、
前記洗浄に先立って、前記シールドトンネルの周辺の地盤を、前記テールボイド内の前記裏込め材と共に凍結すること、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シールドトンネルの外周面とテールボイド内の裏込め材との間に残存していたテールグリースなどの充填材を、前述の洗浄によって減少又は除去できるので、前述の凍土とシールドトンネルとの良好な凍着を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるシールド機の概略構成図
【
図2】前記第1実施形態におけるテールグリースの塗布状況を示す図
【
図3】前記第1実施形態における地盤凍結方法を示すフローチャート
【
図4】前記第1実施形態における洗浄システムの概略構成を示す図
【
図5】前記第1実施形態における洗浄方法の一例を示す図
【
図6】前記第1実施形態における洗浄方法の一例を示す図
【
図7】本発明の第2実施形態における地盤凍結方法を示すフローチャート
【
図8】前記第2実施形態における隙間埋め材充填システムの概略構成を示す図
【
図9】前記第2実施形態における洗浄及び隙間埋め材充填方法の一例を示す図
【
図10】前記第2実施形態における洗浄及び隙間埋め材充填方法の一例を示す図
【
図11】本発明の第3実施形態における地盤凍結方法を示すフローチャート
【
図12】本発明の第4実施形態における地盤凍結方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態におけるシールド機(シールド掘進機)1の概略構成を示す図である。本実施形態では、便宜上、トンネル掘進方向を前進方向として前後左右を規定している。本実施形態では、いわゆる泥土圧式のシールド機を例にとってシールド機の構成を説明するが、シールド機の種類はこれに限らない。
【0014】
シールドトンネル10の構築に用いられるシールド機1は、その本体をなす筒状(例えば円筒状)のスキンプレート2と、スキンプレート2の前端部に設けられる掘削用のカッタヘッド3と、カッタヘッド3の後方に離間してスキンプレート2に配置されるシールド隔壁(バルクヘッド)4とを含んで構成される。
【0015】
カッタヘッド3はシールド隔壁4に回転自在に支持されている。カッタヘッド3は、シールド隔壁4の後面に設置された駆動用モータ5を駆動源として、回転しながら地山を掘削する。カッタヘッド3とシールド隔壁4との間には、これらとスキンプレート2とによりカッタチャンバ6が区画形成されている。カッタチャンバ6内では、カッタヘッド3による掘削で生じた掘削土砂が滞留する。このカッタチャンバ6内の掘削土砂は、スクリューコンベア7などの土砂搬送手段によって、シールド隔壁4の後方に搬出される。
【0016】
シールド機1は、カッタヘッド3及びシールド隔壁4の後方のスキンプレート2内にエレクタ装置8を備える。エレクタ装置8は把持部9を備える。エレクタ装置8は、弧状断面(例えば円弧状断面)を有するセグメントSを把持部9で把持しつつ、セグメントSをトンネル内外方向(例えばトンネル径方向)、トンネル周方向、及びトンネル軸方向に適宜移動させることができる。エレクタ装置8は、スキンプレート2内にて、その周方向に沿って複数のセグメントSを連結することでセグメントリングSRを構築する。そして、このセグメントリングSRがトンネル軸方向に順次構築されることにより、筒状(例えば円筒状)の覆工体からなるシールドトンネル10が構築される。尚、セグメントSについては、例えば鋼製又はコンクリート製であり得る。つまり、セグメントSは、例えば、鋼製セグメント、RCセグメント、及び、合成セグメントのいずれかであり得る。
【0017】
シールド機1のスキンプレート2より内側には、複数の推進ジャッキ11が、スキンプレート2の内周面に沿って周方向に互いに間隔を空けて配置されている。推進ジャッキ11は、シリンダ12とロッド13とにより構成される油圧ジャッキである。シリンダ12は、その一端がスキンプレート2に固定されており、他端側にて、ロッド13が進出・退入可能となっている。推進ジャッキ11のロッド13の先端部を既設のセグメントSに当接させた状態で推進ジャッキ11を伸長作動させることにより、シールド機1は推進力を得ることができる。このようにして、推進ジャッキ11は、既設のセグメントSから反力を取ってシールド機1を推進させる。
【0018】
スキンプレート2のテール部(後端部)2aには、その外縁に沿って、前後複数列(
図1では3列)のテールブラシ21が設けられている。尚、テールブラシ21については、
図1に示すような3列の配置に限るものではなく、2列以上の任意の列数の配置とすることができる。各列におけるテールブラシ21は、スキンプレート2のテール部2aの内周面に沿うリング状をなしている。そして、各列のリング状のテールブラシ21が前後方向に互いに間隔を空けて並んでいる。テールブラシ21は例えば金属製のブラシ(ワイヤブラシ)である。尚、テールブラシ21については、金属製に限らず、例えば、ウレタンなどの樹脂製であってもよい。
【0019】
前後方向に間隔を空けて並ぶリング状のテールブラシ21同士の間にはテールグリース22が充填されている。ここにおいて、テールグリース22は、本発明の「テールブラシ間に充填される充填材」の一例である。テールグリース22は油脂を含む。
【0020】
テールブラシ21は、シールド機1の掘進(前進)に伴って、シールドトンネル10の外周面(換言すれば、セグメントSの外面、及び、セグメントリングSRの外周面)に当接しつつそれに沿って移動する。この移動時には、テールブラシ21によってテールグリース22がシールドトンネル10の外周面に塗布され得る。
【0021】
シールド機1については、スキンプレート2のテール部2aに、テールブラシ21及びテールグリース22を含んで構成されるテールシール部23を有することにより、周辺地盤から土砂や水などがスキンプレート2の内周面とシールドトンネル10の外周面との間からシールド機1内に流入することを防止することができる。
【0022】
図2は、テールグリース22の塗布状況を示す図であり、
図1の部分Pに対応するものである。
【0023】
シールド機1によってシールドトンネル10を構築する際には、シールドトンネル10の外径(換言すれば、セグメントリングSRの外径)とシールド機1の掘削外径との差により、テールボイド31が形成される。ここにおいて、テールボイド31は、例えば、シールド機1の掘進より形成された掘削面(周辺地盤Gの露出面である坑壁面)32と、シールドトンネル10の外周面33との間に生じる空隙である。テールボイド31内には裏込め材35が充填される。裏込め材35は、例えば、セメント系充填材である。また、裏込め材35は、例えば、セメントと水ガラスとを含む流動性の固化材である。尚、裏込め材35を注入するための設備(裏込め材注入設備)は、シールド機1に装備されているのが好ましい。
【0024】
テールブラシ21によってシールドトンネル10の外周面33に塗布されたテールグリース22については、シールド機1の通過後もシールドトンネル10の外周面33に残存し得る。この点、
図2には、この残存するテールグリース22aが図示されている。この残存するテールグリース22aの厚さは、例えば1mm程度である。本実施形態では、この残存するテールグリース22aを減少又は除去するために、少なくとも、シールドトンネル10の外周面33とテールボイド31内の裏込め材35との間(境目C)を洗浄する。この洗浄には、後述する洗浄システム40(
図4参照)が用いられ得る。
【0025】
次に、この洗浄の工程を含む、本実施形態における地盤凍結方法について、前述の
図1及び
図2に加えて、
図3~
図6を用いて説明する。
図3は、本実施形態における地盤凍結方法を示すフローチャートである。
図4は、洗浄システム40の概略構成を示す図である。
図5(ア)~
図6(エ)は、本実施形態における洗浄方法の一例を示す図である。
尚、この地盤凍結方法は、例えば、シールドトンネル10の地中切り拡げなどを行う際に、補助工法として採用され得るものである。
【0026】
まず、
図3に示す地盤凍結方法のステップS1に関連して、シールド機1でシールドトンネル10を構築する際には、シールド機1のテールブラシ21間にテールグリース22が充填されている。また、シールド機1の掘進によりテールブラシ21の後方に形成されるテールボイド31には、前述の裏込め材注入設備などを用いて、裏込め材35が充填される。このテールボイド31内に充填された裏込め材35とシールドトンネル10の外周面33との間(境目C)には、テールグリース22aが残存している(
図2参照)。
【0027】
次に、
図3に示す地盤凍結方法のステップS2では、テールボイド31内に充填された裏込め材35とシールドトンネル10の外周面33との間(境目C)を、洗浄システム40を用いて洗浄する。
【0028】
図4に示すように、洗浄システム40は、洗浄液注入システム41と廃液回収システム42とを備える。洗浄液注入システム41は、高圧噴出機43の作動により、洗浄液を、注入管44の先端に設けられた噴射ノズル45から噴出するように構成されている。廃液回収システム42は、真空ポンプ46の作動により、廃液を、排出管47の先端部48から吸引して廃液タンク49に回収するように構成されている。ここにおいて、洗浄液は、例えば水と界面活性剤とを含む。
【0029】
シールドトンネル10には第1貫通孔51と第2貫通孔52とが設けられている。第1貫通孔51と第2貫通孔52とは、各々が、シールドトンネル10を内外に貫通している。第1貫通孔51には、シールドトンネル10内から注入管44が差し込まれる。第2貫通孔52には、シールドトンネル10内から排出管47が差し込まれる。尚、第1貫通孔51及び第2貫通孔52の少なくとも一方については、エレクタ装置8によるセグメントSの組み立てに先立ってセグメントSに設けられてもよく、又は、セグメントSの組み立て後(覆工体からなるシールドトンネル10の構築後)に設けられてもよい。
【0030】
尚、第1貫通孔51と第2貫通孔52とには、それぞれ、止水弁などの止水手段(図示せず)が設けられている。ゆえに、第1貫通孔51に注入管44が差し込まれた状態であっても、当該止水手段によって止水性が確保され得、また、第2貫通孔52に排出管47が差し込まれた状態であっても、当該止水手段によって止水性が確保され得る。
【0031】
噴射ノズル45は、注入管44の延在方向に対して直交する方向に向いている。また、噴射ノズル45は、注入管44の中心軸を回転中心として、注入管44に対して回転自在に注入管44に取り付けられている。尚、
図4中に符号Rで示した矢印は、噴射ノズル45が回転自在であることを示している。注入管44については、その先端の噴射ノズル45が前述の境目Cに臨むように、シールドトンネル10内から第1貫通孔51に差し込まれる。尚、前述の高圧噴出機43は、シールドトンネル10内に配置されている。
【0032】
排出管47については、その先端部48が前述の境目Cに臨むように、シールドトンネル10内から第2貫通孔52に差し込まれる。尚、前述の真空ポンプ46及び廃液タンク49は、シールドトンネル10内に配置されている。
【0033】
前述のステップS2では、洗浄液注入システム41において、高圧噴出機43を作動させつつ、噴射ノズル45を注入管44に対して回転させながら、洗浄液を前述の境目Cに向かって噴射することで、当該境目Cに残存するテールグリース22aを押し流す(つまり、当該テールグリース22aを減少又は除去する)。ここで、洗浄液は界面活性剤を含んでいるので、テールグリース22aを乳化させて流動性を増加させることができ、その結果、テールグリース22aの除去を促進することができる。
【0034】
噴射ノズル45からの洗浄液の噴射で当該洗浄液と共に押し流されたテールグリース22aを含む廃液については、廃液回収システム42の真空ポンプ46を作動させることで、当該廃液を前述の境目Cから排出管47の先端部48を介して吸引して廃液タンク49に回収する。この廃液の回収に伴って、境目C内に洗浄液が徐々に浸透する。ここにおいて、廃液タンク49に回収される廃液におけるテールグリース22aの含有率が所定値以下になった時点で、洗浄システム40の作動を停止してもよい。
【0035】
尚、
図4は、注入管44(第1貫通孔51)と排出管47(第2貫通孔52)とが、トンネル軸方向に沿って交互にかつ間隔を空けて並ぶ形態を示しているが、この他、注入管44(第1貫通孔51)と排出管47(第2貫通孔52)とが、トンネル周方向に沿って交互にかつ間隔を空けて並ぶ形態としてもよい。また、シールドトンネル10の展開図において、注入管44(第1貫通孔51)と排出管47(第2貫通孔52)とが、交互にかつ間隔を空けて、マトリクス状又は千鳥状に配置されてもよい。いずれの場合においても、洗浄液注入システム41の作動により発生した廃液が廃液回収システム42のよって良好に回収され得るように、注入管44(第1貫通孔51)と排出管47(第2貫通孔52)とが適宜配置され得る。
【0036】
前述のステップS2での洗浄については、トンネル周方向にいくつかの領域に分割して、下方の領域(高圧側の領域)から上方の領域(低圧側の領域)に向かって順に洗浄を進めていくのが好ましい。この点、
図5(ア)~
図6(エ)は、当該洗浄方法の一例を示している。
【0037】
まず、
図5(ア)及び(イ)に示すように、最下端の第1貫通孔51aを用いる、洗浄システム40による洗浄により、前述の境目Cにおける領域A1を洗浄する。
【0038】
次に、
図6(ウ)に示すように、左下の第1貫通孔51bと右下の第1貫通孔51cとを用いる、洗浄システム40による洗浄により、前述の境目Cにおける領域A2,A3を洗浄する。尚、この領域A2,A3での洗浄は、前述の領域A1の上部に達してもよい。
【0039】
次に、
図6(エ)に示すように、左上の第1貫通孔51dと右上の第1貫通孔51eと最上端の第1貫通孔51fとを用いる、洗浄システム40による洗浄により、前述の境目Cにおける領域A4を洗浄する。尚、この領域A4での洗浄は、前述の領域A2,A3の上部に達してもよい。
【0040】
以上のようにして、前述のステップS2における洗浄が実施され得る。
【0041】
次に、ステップS3では、前述の洗浄が実施された境目Cを含むように、周辺地盤Gを、テールボイド31内の裏込め材35と共に凍結する。従って、凍結される周辺地盤G及び裏込め材35からなる凍土とシールドトンネル10との良好な凍着を実現することができる。尚、当該凍土を形成するための凍結工法については、周知のものを採用することができる。すなわち、例えば地上又はシールドトンネル10内から周辺地盤Gに向けて凍結管を挿入し、当該凍結管内に冷媒を流通させることにより、周辺地盤G及び裏込め材35の凍結を行ってもよい。又は、シールドトンネル10を構成するセグメントSに設けられた凍結管内に冷媒を流通させることにより、周辺地盤G及び裏込め材35の凍結を行ってもよい。
【0042】
本実施形態によれば、地盤の凍結方法は、シールド機1でシールドトンネル10を構築する際に、シールド機1のテールブラシ21間に充填材(例えばテールグリース22)を充填し、テールブラシ21の後方のテールボイド31内に裏込め材35を充填すること(ステップS1)、シールドトンネル10の外周面33とテールボイド31内の裏込め材35との間(境目C)を洗浄すること(ステップS2)、及び、この洗浄が行われた後に、シールドトンネル10の周辺の地盤(周辺地盤G)を、テールボイド31内の裏込め材35と共に凍結すること(ステップS3)、を含む。従って、凍結される周辺地盤G及び裏込め材35からなる凍土とシールドトンネル10との良好な凍着を実現することができる。
【0043】
また本実施形態によれば、前述の境目Cを洗浄することは、シールドトンネル10の外周面33とテールボイド31内の裏込め材35との間(当該境目C)に洗浄液を注入することを含む。充填材(例えばテールグリース22,22a)は油脂を含み、洗浄液は界面活性剤を含む。従って、洗浄液中の界面活性剤による乳化作用により、テールグリース22aを乳化させて流動性を増加させることができるので、当該境目Cからのテールグリース22aの除去を促進することができる。
【0044】
また本実施形態によれば、洗浄液は、シールドトンネル10を内外に貫通する第1貫通孔51を介して、シールドトンネル10の外周面33とテールボイド31内の裏込め材35との間(境目C)に注入される。これにより、シールドトンネル10内から洗浄液を容易に当該境目Cに注入することができる。
【0045】
また本実施形態によれば、前述の境目Cの洗浄に用いられた後の洗浄液(前述の廃液)は、シールドトンネル10を内外に貫通する第2貫通孔52を介して、シールドトンネル10内に回収される。これにより、前述の境目Cからテールグリース22aを容易に回収することができる。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態について、
図7~
図10を用いて説明する。
図7は、本実施形態における地盤凍結方法を示すフローチャートである。
図8は、隙間埋め材充填システム60の概略構成を示す図である。
図9(ア)~
図10(エ)は、本実施形態における洗浄及び隙間埋め材充填方法の一例を示す図である。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0047】
本実施形態において、
図7に示す地盤凍結方法のステップS2’では、テールボイド31内に充填された裏込め材35とシールドトンネル10の外周面33との間(境目C)を洗浄システム40を用いて洗浄した後に、それに続けて、隙間埋め材充填システム60を用いて、当該洗浄箇所に隙間埋め材70(
図9(イ)~
図10(エ)参照)を充填する。
【0048】
図8に示すように、隙間埋め材充填システム60は、前述の洗浄液注入システム41が撤去された後に、その撤去場所に配置される。隙間埋め材充填システム60は、圧力ポンプ61の作動により、隙間埋め材70を、注入管62の先端部63から前述の境目C(洗浄済みである)に圧入するように構成されている。ここにおいて、隙間埋め材70は、例えば、地盤沈下を防止するための、懸濁型の沈下防止充填材であり得る。
【0049】
注入管62については、その先端部63が前述の境目C(洗浄済みである)に臨むように、シールドトンネル10内から第1貫通孔51に差し込まれる。尚、前述の圧力ポンプ61は、シールドトンネル10内に配置されている。
【0050】
本実施形態におけるステップS2’では、隙間埋め材充填システム60において、圧力ポンプ61を作動させつつ、注入管62の先端部63から隙間埋め材70を前述の境目C(洗浄済みである)に圧入することで、当該境目C内の洗浄液を隙間埋め材70に置換する。
【0051】
この置換によって生じる廃液については、廃液回収システム42の真空ポンプ46を作動させることで、当該廃液を前述の境目Cから排出管47の先端部48を介して吸引して廃液タンク49に回収する。ここにおいて、廃液タンク49に回収される廃液が隙間埋め材70自体となった時点で、隙間埋め材70の充填が完了したとして、隙間埋め材充填システム60及び廃液回収システム42の作動を停止してもよい。
【0052】
尚、
図8は、注入管62(第1貫通孔51)と排出管47(第2貫通孔52)とが、トンネル軸方向に沿って交互にかつ間隔を空けて並ぶ形態を示しているが、この他、注入管62(第1貫通孔51)と排出管47(第2貫通孔52)とが、トンネル周方向に沿って交互にかつ間隔を空けて並ぶ形態としてもよい。また、シールドトンネル10の展開図において、注入管62(第1貫通孔51)と排出管47(第2貫通孔52)とが、交互にかつ間隔を空けて、マトリクス状又は千鳥状に配置されてもよい。いずれの場合においても、隙間埋め材充填システム60の作動により発生した廃液が廃液回収システム42のよって良好に回収され得るように、注入管62(第1貫通孔51)と排出管47(第2貫通孔52)とが適宜配置され得る。
【0053】
本実施形態におけるステップS2’での洗浄液による洗浄及び隙間埋め材70の充填については、トンネル周方向にいくつかの領域に分割して、下方の領域(高圧側の領域)から上方の領域(低圧側の領域)に向かって順に洗浄を進めていくのが好ましい。この点、
図9(ア)~
図10(エ)は、当該洗浄及び隙間埋め材充填方法の一例を示している。
【0054】
まず、
図9(ア)及び(イ)に示すように、最下端の第1貫通孔51aを用いる、洗浄システム40による洗浄により、前述の境目Cにおける領域A1を洗浄する。この洗浄に続けて、当該領域A1に対して、隙間埋め材充填システム60によって、隙間埋め材70が充填される。
【0055】
次に、
図10(ウ)に示すように、左下の第1貫通孔51bと右下の第1貫通孔51cとを用いる、洗浄システム40による洗浄により、前述の境目Cにおける領域A2,A3を洗浄する。この洗浄に続けて、当該領域A2,A3に対して、隙間埋め材充填システム60によって、隙間埋め材70が充填される。
【0056】
次に、
図10(エ)に示すように、左上の第1貫通孔51dと右上の第1貫通孔51eと最上端の第1貫通孔51fとを用いる、洗浄システム40による洗浄により、前述の境目Cにおける領域A4を洗浄する。この洗浄に続けて、当該領域A4に対して、隙間埋め材充填システム60によって、隙間埋め材70が充填される。
【0057】
以上のようにして、本実施形態のステップS2’における洗浄液による洗浄及び隙間埋め材70の充填が実施され得る。
【0058】
本実施形態におけるステップS3では、前述の洗浄液による洗浄及び隙間埋め材70の充填が実施された境目Cを含むように、周辺地盤Gを、テールボイド31内の裏込め材35と共に凍結する。尚、隙間埋め材70については、凍結される周辺地盤G及び裏込め材35からなる凍土とシールドトンネル10との凍着を促進するような成分(換言すれば、当該凍着を阻害しないような成分)で構成されていることが好ましい。
【0059】
特に本実施形態によれば、地盤の凍結方法は、シールドトンネル10の外周面33とテールボイド31内の裏込め材35との間(境目C)の洗浄が行われた後に、当該境目Cに隙間埋め材70を充填することを含む(ステップS2’)。これにより、当該洗浄に続けて、地盤沈下の発生防止対策を効率よく実施することができる。
【0060】
次に、本発明の第3実施形態について、
図11を用いて説明する。
図11は、本実施形態における地盤凍結方法を示すフローチャートである。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0061】
本実施形態では、前述の第1実施形態に対して、前述のステップS2,S3の順序を入れ替えている。すなわち、本実施形態では、シールドトンネル10の外周面33とテールボイド31内の裏込め材35との間(境目C)の洗浄が行われるに先立って、周辺地盤Gを、テールボイド31内の裏込め材35と共に凍結する。また、少なくとも、この凍結された領域にて、前述の境目Cの洗浄が行われる。
【0062】
特に本実施形態によれば、地盤の凍結方法は、シールド機1でシールドトンネル10を構築する際に、シールド機1のテールブラシ21間に充填材(例えばテールグリース22)を充填し、テールブラシ21の後方のテールボイド31内に裏込め材35を充填すること(ステップS1)、シールドトンネル10の外周面33とテールボイド31内の裏込め材35との間(境目C)を洗浄すること(ステップS2)、及び、この洗浄に先立って、シールドトンネル10の周辺の地盤(周辺地盤G)を、テールボイド31内の裏込め材35と共に凍結すること(ステップS3)、を含む。この凍結状態であっても、当該境目C内を洗浄液が流通できるので、当該洗浄液による洗浄を実現することができる。
【0063】
次に、本発明の第4実施形態について、
図12を用いて説明する。
図12は、本実施形態における地盤凍結方法を示すフローチャートである。
前述の第2実施形態と異なる点について説明する。
【0064】
本実施形態では、前述の第2実施形態に対して、前述のステップS2’,S3の順序を入れ替えている。すなわち、本実施形態では、シールドトンネル10の外周面33とテールボイド31内の裏込め材35との間(境目C)の洗浄及び隙間埋め材70の充填が行われるに先立って、周辺地盤Gを、テールボイド31内の裏込め材35と共に凍結する。また、少なくとも、この凍結された領域にて、前述の境目Cの洗浄及び隙間埋め材70の充填が行われる。
【0065】
特に本実施形態によれば、地盤の凍結方法は、シールド機1でシールドトンネル10を構築する際に、シールド機1のテールブラシ21間に充填材(例えばテールグリース22)を充填し、テールブラシ21の後方のテールボイド31内に裏込め材35を充填すること(ステップS1)、シールドトンネル10の外周面33とテールボイド31内の裏込め材35との間(境目C)を洗浄し、この洗浄が行われた後に、当該境目Cに隙間埋め材70を充填すること(ステップS2’)、及び、この洗浄及び隙間埋め材70の充填に先立って、シールドトンネル10の周辺の地盤(周辺地盤G)を、テールボイド31内の裏込め材35と共に凍結すること(ステップS3)、を含む。この凍結状態であっても、当該境目C内を洗浄液が流通できるので、当該洗浄液による洗浄を実現することができる。また、この凍結状態であっても、当該境目C内を隙間埋め材70が流通できるので、当該隙間埋め材70の充填を実現することができる。
【0066】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1…シールド機、2…スキンプレート、2a…テール部、3…カッタヘッド、4…シールド隔壁、5…駆動用モータ、6…カッタチャンバ、7…スクリューコンベア、8…エレクタ装置、9…把持部、10…シールドトンネル、11…推進ジャッキ、12…シリンダ、13…ロッド、21…テールブラシ、22,22a…テールグリース、23…テールシール部、31…テールボイド、32…掘削面、33…外周面、35…裏込め材、40…洗浄システム、41…洗浄液注入システム、42…廃液回収システム、43…高圧噴出機、44…注入管、45…噴射ノズル、46…真空ポンプ、47…排出管、48…先端部、49…廃液タンク、51,51a~51f…第1貫通孔、52…第2貫通孔、60…隙間埋め材充填システム、61…圧力ポンプ、62…注入管、63…先端部、70…隙間埋め材、A1~A4…領域、C…境目、G…周辺地盤、S…セグメント、SR…セグメントリング