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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120313
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】物理量検出器および物理量検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/10 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
G01P15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027022
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】大戸 正之
(57)【要約】
【課題】錘部を可動部に接合する工程を簡略化できる物理量検出器を提供する。
【解決手段】基部と、物理量に応じて変位する可動部と、前記可動部を前記基部に接続する括れ部と、前記括れ部を跨いで前記基部と前記可動部とに接合されている物理量検出素子と、前記基部を支持する支持部と、前記可動部の主面に接合されている錘部と、を備え、前記錘部は、前記主面の垂線方向から見て、前記可動部および前記支持部と重なる本体部と、前記本体部から前記可動部に向けて突出し、前記可動部に接合されることにより前記可動部と前記本体部との隙間を規定する第1突出部と、を有し、前記本体部と前記第1突出部は、一体に設けられている、物理量検出器。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
物理量に応じて変位する可動部と、
前記可動部を前記基部に接続する括れ部と、
前記括れ部を跨いで前記基部と前記可動部とに接合されている物理量検出素子と、
前記基部を支持する支持部と、
前記可動部の主面に接合されている錘部と、
を備え、
前記錘部は、
前記主面の垂線方向から見て、前記可動部および前記支持部と重なる本体部と、
前記本体部から前記可動部に向けて突出し、前記可動部に接合されることにより前記可動部と前記本体部との隙間を規定する第1突出部と、
を有し、
前記本体部と前記第1突出部は、一体に設けられている、物理量検出器。
【請求項2】
請求項1において、
前記支持部は、第1支持腕と、第2支持腕と、を備え、
前記第1支持腕および前記第2支持腕は、前記主面の垂線方向から見て、前記本体部と重なる、物理量検出器。
【請求項3】
請求項1において、
前記錘部は、前記主面の垂線方向から見て、前記本体部の前記支持部および前記可動部に重ならない領域に、前記第1突出部と同じ方向に突出する第2突出部を有している、物理量検出器。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1突出部は、前記主面に接合される接合面を有し、
前記接合面には、凹部が形成されている、物理量検出器。
【請求項5】
請求項4において、
前記凹部は、端部が前記第1突出部の側面に接続されている溝である、物理量検出器。
【請求項6】
請求項1において、
前記第1突出部は、前記主面の垂線方向から見て、前記錘部の重心と重なる、物理量検出器。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の物理量検出器と、
前記物理量検出器の出力信号に基づいて、物理量を算出する処理回路と、
を備える、物理量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出器および物理量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物理量の変化に応じて変位する可動部を有するカンチレバーと、可動部の変位に応じて物理量を検出する物理量検出素子と、可動部に配置された質量部と、可動部と質量部とを接合するスペーサーと、を備えた物理量検出器が開示されている。特許文献1に開示された物理量検出器では、スペーサーの厚さで可動部と質量部との隙間を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-160553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された物理量検出器では、質量部はスペーサーを介して可動部に接合されるため、質量部を可動部に接合するためには、可動部とスペーサーを接合する工程とスペーサーと質量部を接合する工程の2回の接合工程が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る物理量検出器の一態様は、
基部と、
物理量に応じて変位する可動部と、
前記可動部を前記基部に接続する括れ部と、
前記括れ部を跨いで前記基部と前記可動部とに接合されている物理量検出素子と、
前記基部を支持する支持部と、
前記可動部の主面に接合されている錘部と、
を備え、
前記錘部は、
前記主面の垂線方向から見て、前記可動部および前記支持部と重なる本体部と、
前記本体部から前記可動部に向けて突出し、前記可動部に接合されることにより前記可動部と前記本体部との隙間を規定する第1突出部と、
を有し、
前記本体部と前記第1突出部は、一体に設けられている。
【0006】
本発明に係る物理量検出装置の一態様は、
上記物理量検出器と、
前記物理量検出器の出力信号に基づいて、物理量を算出する処理回路と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す斜視図。
図2】第1実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す平面図。
図3】第1実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す断面図。
図4】第1実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す断面図。
図5】第2実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す平面図。
図6】第2実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す断面図。
図7】第3実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す平面図。
図8】第3実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す断面図。
図9】第4実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す平面図。
図10】第4実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す断面図。
図11】第5実施形態に係る物理量検出装置を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1. 第1実施形態
1.1. 物理量検出器
まず、第1実施形態に係る物理量検出器について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る物理量検出器100を模式的に示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る物理量検出器100を模式的に示す平面図である。図3および図4は、第1実施形態に係る物理量検出器100を模式的に示す断面図である。なお、図3は、図2のIII-III線断面図である。また、図4は、図2のIV-IV線断面図である。図1図4には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0010】
物理量検出器100は、図1図4に示すように、基部10と、可動部20と、括れ部30と、物理量検出素子40と、支持部50と、錘部60と、パッケージ70と、を備えている。なお、便宜上、図1では、パッケージ70の図示を省略している。
【0011】
基部10、可動部20、括れ部30、および支持部50は、水晶基板で形成されている。基部10、可動部20、括れ部30、および支持部50は、一体に設けられている。すなわち、基部10、可動部20、括れ部30、および支持部50は、1つの水晶基板でモノリシックに構成されている。
【0012】
基部10は、基部10の厚さ方向から見て、すなわち、Z軸に沿った方向から見て、長方形状である。基部10には、括れ部30および支持部50が接続されている。
【0013】
可動部20は、加速度や圧力などの物理量に応じてZ軸に沿って変位する。可動部20は、括れ部30を介して基部10に接続されている。可動部20は、括れ部30を支点として変位する。可動部20および括れ部30は、物理量に応じて変位するカンチレバーを構成している。可動部20は、板状である。可動部20は、第1主面22aと、第1主面22aとは表裏の関係にある第2主面22bと、を有している。第1主面22aは、+Z方向を向く面であり、第2主面22bは、-Z方向を向く面である。
【0014】
括れ部30は、基部10と可動部20との間に配置されている。括れ部30は、基部10と可動部20を接続している。括れ部30は、基部10および可動部20よりも薄い。図示の例では、X軸に沿った溝を形成することによって、括れ部30が基部10および可動部20よりも薄く形成されている。括れ部30がヒンジとして機能することによって、可動部20を変位しやすくできる。
【0015】
物理量検出素子40は、括れ部30を跨いで基部10と可動部20とに接合されている。物理量検出素子40は、第1振動梁部42aと、第2振動梁部42bと、第1振動基部44aと、第2振動基部44bと、を備えている。第1振動梁部42aおよび第2振動梁部42bは、基部10と可動部20を結ぶ方向に延在し、当該結ぶ方向と直交する方向に屈曲振動する。すなわち、第1振動梁部42aおよび第2振動梁部42bは、Y軸に沿って延在し、X軸に沿って屈曲振動する。第1振動基部44aは、接着剤などの接合部材2によって基部10に接合されている。第2振動基部44bは、接合部材2によって可動部20に接合されている。第1振動基部44aは、第1振動梁部42aの+Y方向の端部、および第2振動梁部42bの+Y方向の端部に配置され、第2振動基部44bは、第1振動梁部42aの-Y方向の端部、および第2振動梁部42bの-Y方向の端部に配置されている。物理量検出素子40は、双音叉型の水晶振動子である。物理量検出素子40は、物理量として、例えば、加速度や圧力を検出する。
【0016】
なお、物理量検出素子40は、双音叉型の水晶振動子に限定されない。例えば、物理量検出素子40の材質は、水晶に限定されず、タンタル酸リチウム(LiTaO)、四ホウ酸リチウム(Li)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電材料、または酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体を皮膜として備えたシリコンなどの半導体材料であってもよい。
【0017】
支持部50は、基部10を支持している。支持部50は、第1支持腕52と、第2支持腕54と、第3支持腕56と、を有している。第1支持腕52、第2支持腕54、および第3支持腕56は、それぞれ基部10に接続されている。第1支持腕52と第2支持腕54との間には、可動部20が配置されている。第1支持腕52は、ベース72の第1台座73aに接合されている。第2支持腕54は、ベース72の第2台座73bに接合されている。第3支持腕56は、ベース72の第3台座73cに接合されている。図3に示す例では、第3支持腕56は、接着剤などの接合部材4で第3台座73cに接合されている。
【0018】
第1支持腕52は、屈曲している。そのため、XY平面内での広がりを抑えつつ、第1支持腕52の長さを長くできる。同様に、第2支持腕54は屈曲しているため、第2支持腕54の長さを長くできる。同様に、第3支持腕56は、屈曲しているため、第3支持腕56の長さを長くできる。このように、第1支持腕52の長さ、第2支持腕54の長さ、および第3支持腕56の長さを長くすることによって、第1支持腕52、第2支持腕54、および第3支持腕56が変形しやすくなるため、外部から加わる衝撃や、応力歪みを効果的に緩和できる。
【0019】
なお、支持部50が備える支持腕の数や配置は特に限定されず、支持腕は2本以下であってもよいし、4本以上であってもよい。また、支持部50の形状は、上述の腕状に限定されず、例えば、枠状であってもよい。
【0020】
錘部60は、可動部20の第1主面22aに接合されている。錘部60は、可動部20の自由端側に配置されている。可動部20に錘部60を配置することによって、小さな物理量でも可動部20が変位しやすくなり、物理量検出器100の分解能が向上する。錘部60は、例えば、銅(Cu)、金(Au)、タングステン(W)、各種合金などの金属材料で構成されている。
【0021】
錘部60は、本体部62と、第1突出部64と、を有している。本体部62は、第1主面22aの垂線方向から見て、すなわち、Z軸に沿った方向から見て、可動部20および支持部50と重なっている。図4に示すように、本体部62の-X方向の端部が、第1支持腕52と重なっている。また、本体部62の+X方向の端部は、第2支持腕54と重なっている。本体部62と第1支持腕52とは、隙間を介して対向している。本体部62と第2支持腕54とは、隙間を介して対向している。本体部62が第1支持腕52および第2支持腕54と重なっていることにより、可動部20が-Z方向に変位した場合に、本体部62が第1支持腕52および第2支持腕54に接触し、可動部20の変位が規制される。つまり、錘部60は、可動部20の-Z方向への過度な変位を規制するストッパーとして機能する。
【0022】
第1突出部64は、本体部62から可動部20に向けて突出している。図示の例では、第1突出部64は、本体部62から-Z方向に突出している。第1突出部64は、本体部62の可動部20と重なっている部分から突出している。第1突出部64は、可動部20に接合される接合面65を有している。第1突出部64の接合面65は、第1突出部64の先端に位置している。第1突出部64の接合面65は、可動部20の第1主面22aに接合されている。第1突出部64の接合面65と可動部20の第1主面22aは、例えば、エポキシ樹脂などの接着剤6で接合されている。
【0023】
第1突出部64は、可動部20と本体部62との隙間Cを規定している。可動部20と本体部62との隙間Cの大きさは、第1突出部64の突出方向の大きさによって決定される。隙間Cの大きさは、例えば、80μmである。第1突出部64と可動部20を接着剤6で接合した場合、隙間Cの大きさは、第1突出部64の突出方向の大きさと接着剤6の厚さの和となる。隙間Cの大きさによって、本体部62と第1支持腕52との隙間の大きさ、および本体部62と第2支持腕54との隙間の大きさが決まる。
【0024】
本体部62と第1突出部64は、一体に設けられている。すなわち、本体部62および第1突出部64は、同一材料でモノリシックに構成されている。例えば、金属材料を金型に押し付けることによって、本体部62および第1突出部64を一体に形成できる。また、例えば、金属粉末を金型に充填して成形し、焼結することによって本体部62および第1突出部64を一体に形成してもよい。錘部60は、切削加工により形成されてもよい。
【0025】
第1突出部64は、可動部20の第1主面22aの垂線方向から見て、錘部60の重心Gと重なる。第1突出部64を錘部60の重心Gと重なる位置に配置することによって、可動部20に加わる力のモーメントを低減できる。
【0026】
錘部60には、切り欠き61が形成されている。錘部60に切り欠き61を形成することによって、錘部60と物理量検出素子40が重ならない。
【0027】
パッケージ70は、図2図4に示すように、ベース72と、リッド74と、を備えている。なお、便宜上、図2では、リッド74の図示を省略している。
【0028】
ベース72は、例えば、セラミックスで構成されている。ベース72は、凹部を備えている。ベース72は、第1台座73a、第2台座73b、第3台座73c、および第4台座73dを備えている。第1台座73aには、第1支持腕52が接合されている。第2台座73bには、第2支持腕54が接合されている。第3台座73cには、第3支持腕56が接合されている。第4台座73dには、第1内部端子76aおよび第2内部端子76bが配置されている。第1内部端子76aおよび第2内部端子76bは、ワイヤー5を介して物理量検出素子40に電気的に接続されている。
【0029】
ベース72の外面には、第1外部端子78aおよび第2外部端子78bが配置されている。第1外部端子78aは、ベース72に形成された、図示しない配線を介して、第1内部端子76aに電気的に接続されている。第2外部端子78bは、ベース72に形成された、図示しない配線を介して、第2内部端子76bに電気的に接続されている。したがって、第1外部端子78aおよび第2外部端子78bを介して、外部機器と物理量検出素子40との電気的な接続が可能となる。
【0030】
リッド74は、ベース72の凹部の開口を塞いでいる。リッド74は、例えば、板状の部材である。リッド74は、接合部材8を介してベース72に接合されている。リッド74は、例えば、コバール等の金属材料で構成されている。
【0031】
ベース72とリッド74によって、基部10、可動部20、括れ部30、物理量検出素子40、支持部50、および錘部60を収容する空間が形成される。ベース72およびリッド74によって形成される空間は、例えば、減圧状態である。
【0032】
物理量検出器100では、括れ部30を支点として可動部20が加速度や圧力などの物理量に応じてZ軸に沿って変位する。この結果、括れ部30を跨いで基部10と可動部20とに接合された物理量検出素子40に可動部20の変位に応じた応力が加わる。物理量検出素子40に加わる応力に応じて、物理量検出素子40の振動周波数が変化する。物理量検出器100では、この物理量検出素子40の振動周波数の変化に基づいて、物理量を検出する。
【0033】
1.2. 物理量検出器の製造方法
まず、水晶基板をエッチングして、基部10、可動部20、括れ部30、および支持部50を一体に形成する。
【0034】
次に、物理量検出素子40を準備する。物理量検出素子40は、例えば、水晶基板をエッチングして、第1振動梁部42a、第2振動梁部42b、第1振動基部44a、および第2振動基部44bを形成し、第1振動梁部42aおよび第2振動梁部42bに励振電極を形成することによって製造できる。
【0035】
次に、物理量検出素子40を、括れ部30を跨いで、基部10と可動部20とに接合部材2を介して接合する。
【0036】
次に、ベース72を準備し、第1支持腕52を第1台座73aに接合し、第2支持腕54を第2台座73bに接合し、第3支持腕56を第3台座73cに接合する。次に、物理量検出素子40を、ワイヤー5を介して、第1内部端子76aおよび第2内部端子76bに電気的に接続する。
【0037】
次に、錘部60を可動部20に接合する。具体的には、まず、錘部60と可動部20とのアライメントを調整する。次に、錘部60の第1突出部64の先端の接合面65を、可動部20の第1主面22aに接着剤6を介して接合する。これにより、本体部62と可動部20との間に隙間Cを形成できる。以上の工程により、錘部60を可動部20に接合できる。
【0038】
錘部60を可動部20に接合する工程では、本体部62が、第1主面22aの垂線方向から見て、可動部20、第1支持腕52、および第2支持腕54に重なるように、錘部60が可動部20に接合される。これにより、本体部62と第1支持腕52とは、隙間を介して対向する。また、本体部62と第2支持腕54とは、隙間を介して対向する。したがって、錘部60を可動部20の-Z方向への過度な変位を規制するストッパーとして機能させることができる。
【0039】
ここで、第1突出部64は、第1主面22aの垂線方向から見て、錘部60の重心Gと重なる。そのため、錘部60を可動部20に接合する工程において、錘部60の第1突出部64を可動部20の第1主面22a上に配置したときに、錘部60が傾いたり、錘部60が倒れたりすることを防ぐことができる。したがって、錘部60を可動部20に接合する工程において、容易に錘部60を可動部20の第1主面22aの所望の位置に配置でき、錘部60を正確に位置決めできる。
【0040】
次に、ベース72にリッド74を接合する。以上の工程により、物理量検出器100を製造できる。
【0041】
1.3. 作用効果
物理量検出器100は、基部10と、物理量に応じて変位する可動部20と、可動部20を基部10に接続する括れ部30と、括れ部30を跨いで基部10と可動部20とに接合されている物理量検出素子40と、基部10を支持する支持部50と、可動部20の第1主面22aに接合されている錘部60と、を備えている。また、錘部60は、第1主面22aの垂線方向から見て、可動部20および支持部50と重なる本体部62と、本体部62から可動部20に向けて突出し、可動部20に接合されることにより可動部20と本体部62との隙間Cを規定する第1突出部64と、を有している。また、本体部62と第1突出部64は、一体に設けられている。そのため、物理量検出器100では、1回の接合工程で錘部60を可動部20に接合できる。
【0042】
例えば、錘部60を、錘部60と可動部20との隙間Cを規定するためのスペーサーを介して可動部20に接合する場合、可動部20とスペーサーを接合する工程とスペーサーと錘部60を接合する工程の2回の接合工程が必要である。これに対して、物理量検出器100では、本体部62と第1突出部64が一体に設けられているため、1回の接合工程で錘部60を可動部20に接合できる。したがって、物理量検出器100では、錘部60を可動部20に接合する工程を簡略化できる。
【0043】
物理量検出器100では、接合工程を1回にできることによって、錘部60を可動部20に接合するためのアライメント工程を1回にできる。例えば、錘部60と可動部20との隙間Cを規定するためのスペーサーを介して可動部20に接合する場合、可動部20とスペーサーとのアライメントを調整する工程と、スペーサーと錘部60とのアライメントを調整する工程の2回のアライメント工程が必要である。これに対して、物理量検出器100では、錘部60を可動部20に接合するためのアライメント工程を1回にできるため、アライメント精度の低下を抑制しつつ製造工程を簡略化できる。
【0044】
また、物理量検出器100では、1回の接合工程で錘部60を可動部20に接合できるため、接着剤6の層を1層にできる。例えば、錘部60をスペーサーを介して可動部20に接合する場合、接着剤6の層が2層になる。接着剤6の層を1層にすることによって、接着剤6の層が2層の場合と比べて、接着剤6の量を低減できる。ここで、エポキシ樹脂などの接着剤の線膨張係数と、水晶の線膨張係数とは、大きく異なる。したがって、物理量検出器100では、接着剤6の量を低減できるため、錘部60と可動部20との接合部に生じる応力を低減できる。
【0045】
物理量検出器100では、支持部50は、第1支持腕52と、第2支持腕54と、を備え、第1支持腕52および第2支持腕54は、可動部20の第1主面22aの垂線方向から見て、本体部62と重なる。そのため、物理量検出器100では、錘部60を、可動部20の-Z方向への過度な変位を規制するストッパーとして機能させることができる。これにより、可動部20の過度な変形を低減できる。
【0046】
物理量検出器100では、第1突出部64は、可動部20の第1主面22aの垂線方向から見て、錘部60の重心Gと重なる。そのため、物理量検出器100では、可動部20に加わる力のモーメントを低減できる。
【0047】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る物理量検出器について図面を参照しながら説明する。図5は、第2実施形態に係る物理量検出器200を模式的に示す平面図である。図6は、第2実施形態に係る物理量検出器200を模式的に示す断面図である。なお、図6は、図5のVI-VI線断面図である。以下、第2実施形態に係る物理量検出器200において、上述した第1実施形態に係る物理量検出器100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0048】
物理量検出器200では、図5および図6に示すように、錘部60は、可動部20の第1主面22aの垂線方向から見て、本体部62の支持部50および可動部20に重ならない領域に、第1突出部64と同じ方向に突出する第2突出部66を有している。
【0049】
図示の例では、錘部60は、2つの第2突出部66を有している。2つの第2突出部66のうちの一方は、第1主面22aの垂線方向から見て、第1支持腕52と可動部20との間に配置されている。2つの第2突出部66のうちの他方は、第1主面22aの垂線方向から見て、第2支持腕54と可動部20との間に配置されている。第2突出部66が可動部20の第1主面22aの垂線方向から見て、本体部62の支持部50および可動部20に重ならない領域に配置されることによって、可動部20が変位しても第2突出部66が支持部50および可動部20に接触しない。
【0050】
なお、第2突出部66の位置は、第1主面22aの垂線方向から見て、本体部62の支持部50および可動部20に重ならない領域であれば特に限定されない。また、図示の例では、錘部60は、2つの第2突出部66を有しているが、錘部60は、1つの第2突出部66を有していてもよいし、3以上の第2突出部66を有していてもよい。
【0051】
第1突出部64は、本体部62から-Z方向の突出しており、第2突出部66は、本体部62から-Z方向に突出している。Z軸に沿った方向において、第2突出部66の大きさは、例えば、第1突出部64の大きさと同じである。なお、Z軸に沿った方向において、第2突出部66の大きさは、第1突出部64の大きさよりも小さくてもよいし、第1突出部64の大きさよりも大きくてもよい。
【0052】
本体部62、第1突出部64、および第2突出部66は、一体に設けられている。すなわち、本体部62、第1突出部64、および第2突出部66は、同一材料でモノリシックに構成されている。例えば、金属材料を金型に押し付けて本体部62、第1突出部64、および第2突出部66を一体に形成できる。また、例えば、金属粉末を金型に充填して成形し、焼結することによって本体部62、第1突出部64、および第2突出部66を一体に形成してもよい。錘部60は、切削加工により形成されてもよい。なお、第2突出部66は、本体部62および第1突出部64と一体に設けられていなくてもよい。例えば、第2突出部66は、本体部62に接着剤などの接合部材を介して接合されていてもよい。
【0053】
物理量検出器200では、錘部60は、第1主面22aの垂線方向から見て、本体部62の支持部50および可動部20に重ならない領域に、第1突出部64と同じ方向に突出する第2突出部66を有している。そのため、物理量検出器200では、錘部60を重くできる。したがって、物理量検出器200では、小さな物理量でも可動部20が変位しやすくなり、物理量検出器200の分解能を向上できる。また、物理量検出器200では、第2突出部66は、本体部62の支持部50および可動部20に重ならない領域に、第1突出部64と同じ方向に突出しているため、小型化を図りつつ、分解能を向上できる。
【0054】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る物理量検出器について図面を参照しながら説明する。図7は、第3実施形態に係る物理量検出器300を模式的に示す平面図である。図8は、第3実施形態に係る物理量検出器300を模式的に示す断面図である。なお、図8は、図7のVIII-VIII線断面図である。以下、第3実施形態に係る物理量検出器300において、上述した第1実施形態に係る物理量検出器100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0055】
物理量検出器300では、図7および図8に示すように、第1突出部64は第1主面22aに接合される接合面65を有し、接合面65には凹部68が形成されている。凹部68は、接合面65に形成された窪みである。接合面65に凹部68が形成されることによって、錘部60を可動部20に接合する工程において、凹部68に余った接着剤6が入り込むため、接着剤6の接合面65からのはみだしを低減できる。
【0056】
図示の例では、接合面65には、1つの凹部68が形成されている。なお、接合面65には、複数の凹部68が形成されていてもよい。
【0057】
物理量検出器300では、接合面65に凹部68が形成されているため、接着剤6の接合面65からのはみだしを低減できる。したがって、物理量検出器300では、接着剤6がはみ出すことによる接着位置のばらつきや接着面積のばらつきを低減できる。
【0058】
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態に係る物理量検出器について図面を参照しながら説明する。図9は、第4実施形態に係る物理量検出器400を模式的に示す平面図である。図10は、第4実施形態に係る物理量検出器400を模式的に示す断面図である。なお、図10は、図9のX-X線断面図である。以下、第4実施形態に係る物理量検出器400において、上述した第3実施形態に係る物理量検出器300の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
物理量検出器400では、凹部68は、Y軸に沿って延びる溝である。第1突出部64は、図9に示すように、第1側面64aと、第2側面64bと、を有している。凹部68を構成する溝は、一方の端部が第1側面64aに接続され、他方の端部が第2側面64bに接続されている。すなわち、凹部68を構成する溝の両端部は、開放されている。そのため、錘部60を可動部20に接合する工程において、凹部68に接着剤6が入り込む際に凹部68内の空気を溝の両端部から排出できる。したがって、物理量検出器400では、余った接着剤6を、効率よく凹部68に入り込ませることができる。
【0060】
第1突出部64の側面は、第1突出部64の突出方向に垂直な垂線を持つ面である。第1側面64aの垂線および第2側面64bの垂線は、第1突出部64の突出方向に垂直である。図示の例では、第1突出部64の突出方向は-Z方向であり、第1側面64aの垂線はY軸に平行であり、第2側面64bの垂線はY軸に平行である。第1突出部64の側面は、曲面であってもよい。
【0061】
図示の例では、接合面65に凹部68が2つ形成されているが、凹部68の数は特に限定されない。また、図示の例では、凹部68は、一方の端部が第1側面64aに接続され、他方の端部が第2側面64bに接続された溝であるが、溝の一方の端部のみが第1突出部64の側面に接続されていてもよい。また、図示の例では、凹部68は、Y軸に沿って延びる溝であるが、凹部68は、X軸に沿って延びる溝であってもよい。
【0062】
物理量検出器400では、凹部68は、端部が第1突出部64の側面に接続されている溝であるため、錘部60を可動部20に接合する工程において、凹部68に接着剤6が入り込む際に凹部68内の空気を溝の端部から排出できる。したがって、物理量検出器400では、余った接着剤6を、効率よく凹部68に入り込ませることができ、接着剤6がはみ出すことによる接着位置のばらつきや接着面積のばらつきを低減できる。
【0063】
5. 第5実施形態
次に、第5実施形態に係る物理量検出装置について図面を参照しながら説明する。図11は、第5実施形態に係る物理量検出装置500を模式的に示す分解斜視図である。
【0064】
物理量検出装置500は、3つの物理量検出器100と、回路基板510と、処理回路520と、コネクター基板530と、ベース540と、リッド550と、を備えている。
【0065】
3つの物理量検出器100は、回路基板510に実装されている。3つの物理量検出器100の各々は、検出軸に沿った物理量を検出する。3つの物理量検出器100の検出軸は、互いに直交している。3つの物理量検出器100は、互いに直交する検出軸に沿った物理量を検出できるように、検出軸に合わせた向きで回路基板510に実装されている。物理量検出装置500では、互いに直交する3つの軸に沿った物理量を検出できる。
【0066】
回路基板510には、物理量検出器100の出力信号に基づいて物理量を算出する処理回路520が実装されている。処理回路520は、例えば、回路基板510の3つの物理量検出器100が実装された面とは反対側の面に実装されている。処理回路520は、3つの物理量検出器100の出力信号に基づいて、互いに直交する3つの検出軸に沿った物理量を算出する。例えば、物理量検出装置500が設置された位置の傾斜角度に応じた信号を出力する傾斜計である場合、処理回路520は、3つの物理量検出器100の出力信号に基づいて、傾斜角度を算出する。処理回路520は、例えば、汎用IC(Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)により実現できる。処理回路520は、コネクター基板530と電気的に接続されており、コネクター基板530を介して外部機器と電気的に接続される。
【0067】
3つの物理量検出器100と処理回路520が実装された回路基板510、およびコネクター基板530は、ベース540とリッド550で構成されるパッケージに収容される。
【0068】
物理量検出装置500は、例えば、設置された位置の傾斜角度に応じた信号を出力する傾斜計である。物理量検出装置500は、例えば、3軸に沿った方向の加速度を検出する3つの物理量検出器100と、3軸周りの角速度を検出する3つの角速度センサーと、を備えた慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)であってもよい。また、物理量検出装置500は、例えば、物理量検出器100を利用して構造物の傾斜を監視するか構造物監視装置であってもよい。また、物理量検出装置500は、3軸に沿った方向の加速度を検出する3つの物理量検出器100を備えた移動体であってもよい。
【0069】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0071】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0072】
物理量検出器の一態様は、
基部と、
物理量に応じて変位する可動部と、
前記可動部を前記基部に接続する括れ部と、
前記括れ部を跨いで前記基部と前記可動部とに接合されている物理量検出素子と、
前記基部を支持する支持部と、
前記可動部の主面に接合されている錘部と、
を備え、
前記錘部は、
前記主面の垂線方向から見て、前記可動部および前記支持部と重なる本体部と、
前記本体部から前記可動部に向けて突出し、前記可動部に接合されることにより前記可動部と前記本体部との隙間を規定する第1突出部と、
を有し、
前記本体部と前記第1突出部は、一体に設けられている。
【0073】
この物理量検出器によれば、1回の接合工程で錘部を可動部に接合できる。
【0074】
上記物理量検出器の一態様において、
前記支持部は、第1支持腕と、第2支持腕と、を備え、
前記第1支持腕および前記第2支持腕は、前記主面の垂線方向から見て、前記本体部と重なっていてもよい。
【0075】
この物理量検出器によれば、錘部を、可動部の過度な変位を規制するストッパーとして機能させることができる。
【0076】
上記物理量検出器の一態様において、
前記錘部は、前記主面の垂線方向から見て、前記本体部の前記支持部および前記可動部に重ならない領域に、前記第1突出部と同じ方向に突出する第2突出部を有していてもよい。
【0077】
この物理量検出器によれば、錘部を重くできるため、小さな物理量でも可動部が変位しやすくなり、分解能を向上できる。
【0078】
上記物理量検出器の一態様において、
前記第1突出部は、前記主面に接合される接合面を有し、
前記接合面には、凹部が形成されていてもよい。
【0079】
この物理量検出器によれば、錘部を可動部に接合する工程において、余った接着剤が凹部に入り込むため、接着剤の接合面からのはみだしを低減できる。
【0080】
上記物理量検出器の一態様において、
凹部は、端部が前記第1突出部の側面に接続されている溝であってもよい。
【0081】
この物理量検出器によれば、錘部を可動部に接合する工程において、凹部に接着剤が入り込む際に凹部内の空気を溝の端部から排出できる。したがって、余った接着剤を、効率よく凹部に入り込ませることができる。
【0082】
物理量検出装置の一態様は、
上記物理量検出器と、
前記物理量検出器の出力信号に基づいて、物理量を算出する処理回路と、
を備える。
【符号の説明】
【0083】
2…接合部材、4…接合部材、5…ワイヤー、6…接着剤、8…接合部材、10…基部、20…可動部、22a…第1主面、22b…第2主面、30…括れ部、40…物理量検出素子、42a…第1振動梁部、42b…第2振動梁部、44a…第1振動基部、44b…第2振動基部、50…支持部、52…第1支持腕、54…第2支持腕、56…第3支持腕、60…錘部、61…切り欠き、62…本体部、64…第1突出部、64a…第1側面、64b…第2側面、65…接合面、66…第2突出部、68…凹部、70…パッケージ、72…ベース、73a…第1台座、73b…第2台座、73c…第3台座、73d…第4台座、74…リッド、76a…第1内部端子、76b…第2内部端子、78a…第1外部端子、78b…第2外部端子、100…物理量検出器、200…物理量検出器、300…物理量検出器、400…物理量検出器、500…物理量検出装置、510…回路基板、520…処理回路、530…コネクター基板、540…ベース、550…リッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11