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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120314
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】オイル吸収体
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/14 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
D21H21/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027023
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】中村 友亮
(72)【発明者】
【氏名】金 英憲
(72)【発明者】
【氏名】藤田 徹司
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA11
4L055AC09
4L055AG99
4L055AH37
4L055EA08
4L055EA10
4L055EA16
4L055EA32
4L055FA11
4L055GA46
(57)【要約】
【課題】ロボットの回転駆動部から漏れ出したオイル成分を良好に吸収し、保持することができるオイル吸収体を提供すること。
【解決手段】ロボットの回転駆動部の周囲に設置され、オイル成分を吸収するオイル吸収体であって、繊維を解繊した解繊物と、前記解繊物の繊維同士を結合させる結合材と、を含むことを特徴とするオイル吸収体。また、前記回転駆動部は、モーターと、前記モーターの一端部に接続された減速機と、を有し、前記オイル吸収体は、前記減速機の外周部、前記モーターの周囲、および前記モーターの他端部のうちの少なくとも1ヵ所に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの回転駆動部の周囲に設置され、オイル成分を吸収するオイル吸収体であって、
繊維を解繊した解繊物と、
前記解繊物の繊維同士を結合させる結合材と、を含むことを特徴とするオイル吸収体。
【請求項2】
シート状に成形されたものである請求項1に記載のオイル吸収体。
【請求項3】
かさ密度が0.01g/cm以上2.0g/cm以下である請求項2に記載のオイル吸収体。
【請求項4】
前記繊維は、古紙または再生紙を由来とするセルロース繊維である請求項1に記載のオイル吸収体。
【請求項5】
前記繊維の平均長さは、0.1mm以上5mm以下であり、
前記繊維の平均径は、0.5μm以上200μm以下である請求項1に記載のオイル吸収体。
【請求項6】
前記結合材は、熱可塑性樹脂である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のオイル吸収体。
【請求項7】
前記結合材の含有率は、前記解繊物に対し、5重量%以上90重量%以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のオイル吸収体。
【請求項8】
前記結合材は、繊維状の芯材と、前記芯材の外周部を被覆する被覆層とを有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のオイル吸収体。
【請求項9】
前記回転駆動部は、モーターと、前記モーターの一端部に接続された減速機と、を有し、
前記オイル吸収体は、前記減速機の外周部、前記モーターの周囲、および前記モーターの他端部のうちの少なくとも1ヵ所に配置されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のオイル吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているロボットは、ベースと、ベースに回転可能に接続された第1アームと、第1アームに回転可能に接続された第2アームと、第2アームに回転可能に接続された第3アームと、第1アームを回転駆動する第1駆動部と、第2アームを回転駆動する第2駆動部と、を有する。
【0003】
第1駆動部および第2駆動部は、それぞれ、モーターと減速機とを有する。減速機は、内部にグリスが充填され、減速機内部に設置された各歯車同士の円滑な回転を実現している。また、各駆動部の駆動によりグリスのオイル成分が駆動部の外部に漏れ出すおそれがあるため、各駆動部の周囲には、オイル吸収体が設置されている。このオイル吸収体は、スポンジのような多孔質体で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-148077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来のオイル吸収体は、オイル成分の吸収特性が不十分である。特に、従来のオイル吸収体は、オイルが滴下された部分から拡散し難いとともに、オイル吸収体が一旦吸収したオイル成分の保持力が弱く、オイル吸収体から再度外部に漏れ出してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオイル吸収体は、ロボットの回転駆動部の周囲に設置され、オイル成分を吸収するオイル吸収体であって、
繊維を解繊した解繊物と、
前記解繊物の繊維同士を結合させる結合材と、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明のオイル吸収体を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示すオイル吸収体が備える繊維および結合材の拡大模式図である。
図3図3は、図2に示す繊維および結合材の拡大図である。
図4図4は、図1に示すオイル吸収体をロボット内部に配置した状態を示す部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のオイル吸収体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<実施形態>
図1は、本発明のオイル吸収体を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示すオイル吸収体が備える繊維および結合材の拡大模式図である。図3は、図2に示す繊維および結合材の拡大図である。図4は、図1に示すオイル吸収体をロボット内部に配置した状態を示す部分断面側面図である。
【0010】
なお、以下では、説明の都合上、図1および図4の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「先端側」、右側を「基端側」と言うことがある。
【0011】
図1に示すオイル吸収体1は、図4に示すように、ロボット3の回転駆動部4の周囲に設置され、すなわち回転駆動部4の上方、下方、側方、外周部等であって、回転駆動部4から比較的近い位置に設置される。
【0012】
図2に示すように、オイル吸収体1は、繊維100を解繊した解繊物10と、解繊物10の繊維100同士を結合させる結合材20と、を含む。解繊物10は、繊維100の集合体であり、繊維100同士の間に無数の微小な隙間6または空孔を有し、この隙間6にオイル成分Gを吸収し、保持することができる。これにより、ロボット3の回転駆動部4の周囲に漏れた、例えば後述するグリス由来のオイル成分Gを迅速かつ効率よく吸収し、保持することができる。
【0013】
ロボット3の回転駆動部4には、例えば歯車同士の回転や軸の回転を円滑に行うために、グリス(潤滑油)が充填されている。グリスは、主にオイル成分Gを含み、また、その他の成分として、例えば、増調剤等の添加剤が含まれている。オイル吸収体1は、オイル成分Gやその他の成分を含む液体を吸収することができるが、以下、オイル吸収体1が吸収する液体をオイル成分Gとして説明する。
【0014】
まず、解繊物10について説明する。
図2に示すように、解繊物10は、複数の繊維100で構成されており、例えばグリス由来のオイル成分Gの液滴、微小な液粒、霧状物等が接触した場合、これを速やかに吸収するとともに、解繊物10内に広範囲に拡散する機能を有する。さらに、解繊物10は、吸収、拡散した、すなわち捕捉したオイル成分Gを保持する機能を有し、捕捉したオイル成分Gを外部に漏れ出すのを防止または抑制することができる。特に、ロボット3の作動に伴い、回転駆動部4またはその周囲に種々の応力、慣性力、振動、衝撃等が加わった場合でも、オイル吸収体1は、優れたオイル成分Gの保持機能を発揮する。
【0015】
なお、オイル吸収体1がオイル成分Gの保持機能に優れるのは、吸収したオイル成分Gを広範囲に拡散した状態で保持するからであると考えられる。
【0016】
解繊物10の形状は、繊維100が束になった線状または帯状ものや、繊維100同士が絡み合って塊状となった状態のもの、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態のもの等が挙げられる。
【0017】
繊維100は、例えば、針葉樹、広葉樹を原料とした木材セルロース繊維、綿、リンター、カボック等の種子毛セルロース繊維、麻、ラミー、楮等の靭皮セルロール繊維、バナナ、マニラ麻等の葉茎セルロース繊維等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、このなかでも、木材セルロース繊維を主とするのが好ましい。木材セルロース繊維はパルプの形態で入手が容易である。パルプとしては、バージンパルプ、クラフトパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、合成パルプ、古紙または再生紙に由来するパルプ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロース、すなわち狭義のセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、レーヨン、キュプラ等再生セルロースや、ヘミセルロース、リグニンを含むものが該当する。
【0018】
繊維100は、古紙または再生紙を由来とするセルロース繊維であるのが好ましい。これにより、廃棄物の削減、資源の有効活用、環境保護等の観点から有利である。
【0019】
古紙は、紙にインク等が付与された使用済みの紙である。再生紙は、古紙またはバージンペーパーが再生された紙である。この再生は、例えば、特開2022-176652号公報に記載されているようなシート製造装置によってなされる。
【0020】
原料を解繊する方法としては、例えば、高速回転するローターと、ローターの外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成された解繊装置を用いる方法が挙げられる。解繊装置は、例えば、特開2022-176652号公報に記載されているような解繊装置によってなされる。
【0021】
繊維100の平均長さは、特に限定されないが、0.1mm以上5mm以下であるのが好ましく、0.2mm以上3mm以下であるのがより好ましい。これにより、液滴の滴下等によりオイル吸収体1と接触したオイル成分Gを速やかに吸収し、広範囲に拡散することができるとともに、オイル吸収体1の内部に拡散したオイル成分Gを十分に保持し、外部に漏れ出すのを効果的に防止または抑制することができる。
【0022】
繊維100の平均径(平均幅)は、特に限定されないが、0.5μm以上200μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上100μm以下であるのがより好ましい。これにより、滴下されたオイル成分Gを速やかにかつ広範囲に拡散することができるとともに、拡散したオイル成分Gを保持して外部に漏れ出すのを効果的に防止または抑制することができる。
【0023】
このように、繊維100の平均長さは、0.1mm以上5mm以下であり、繊維100の平均径は、0.5μm以上200μm以下であることが好ましい。これにより、オイル吸収体1と接触したオイル成分Gを速やかに吸収し、広範囲に拡散することができるとともに、オイル吸収体1の内部に拡散したオイル成分Gを十分に保持し、外部に漏れ出すのを効果的に防止または抑制することができる。
【0024】
繊維100の平均アスペクト比(平均幅に対する平均長さの比率)は、特に限定されないが、上記繊維長と同様の観点から、10以上1000以下であるのが好ましく、15以上500以下であるのがより好ましい。
【0025】
オイル吸収体1中における繊維100の含有率は、特に限定されないが、0.5重量%以上80重量%以下であるのが好ましく、1.0重量%以上70重量%以下であるのがより好ましく、3.0重量%以上67重量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、繊維100を含むことによる上記効果をより顕著に発揮することができる。
【0026】
次に、結合材20について説明する。
結合材20は、解繊物10の繊維100同士を結合させるバインダーとしての機能を有する。
【0027】
結合材20としては、上記機能を発揮するものであれば特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用いることができるが、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66等のポリアミド(ナイロン:登録商標)、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、PVAやPAP等の水溶性ポリマー、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂として、ポリエステルまたはこれを含むものを用いる。
【0028】
硬化性樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等が挙げられ、具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン等を用いることができる。
【0029】
このように、結合材20が、熱可塑性樹脂であることにより、解繊物10の繊維100同士を結合させるバインダーとしての機能をより顕著に発揮することができるとともに、材料の選定が容易となる。また、熱可塑性樹脂を含む結合材20は、上述した解繊物10のオイル成分Gの吸収機能および保持機能を阻害し難いという利点もある。
【0030】
結合材20は、熱可塑性樹脂以外の樹脂材料であってもよく、樹脂以外の材料、例えば、澱粉、たんぱく質系接着剤、木材成分系接着剤、PLA(ポリ乳酸)等の天然由来の材料であってもよい。また、熱可塑性樹脂と、それ以外の材料とを所定の比率で、例えば1:9~9:1の重量比で混合したものでもよい。
【0031】
図1図3に示すように、結合材20は、繊維状をなすものとしてオイル吸収体1に含まれている。これにより、繊維100と絡み合い、繊維100同士を結合する箇所を増やすことができる。よって、繊維100同士を良好に、すなわち過不足なく結合し、オイル吸収体1の剛性を十分に確保することができるとともに、オイル吸収体1を所望の形状に成形する場合に当該成形を良好に行うことができる。
【0032】
図3に示すように、結合材20は、芯材201と、芯材201の外周部を被覆する被覆層202とを有する2層構成になっている。
【0033】
芯材201および被覆層202の構成材料としては、それぞれ、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂のいずれをも用いることができるが、主に、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。
【0034】
中でも、芯材201は、ポリエチレンテレフタレートで構成されているのが好ましい。これにより、結合材20の剛性、いわゆるコシを強くすることができ、その結果、オイル吸収体1の剛性を十分に高めることができる。
【0035】
また、被覆層202は、ポリオレフィンおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種で構成されているのが好ましい。これにより、解繊物10の繊維100との結着がより良好になされる。すなわち、このような被覆層202は、バインダーとしての機能に優れる。
【0036】
芯材201および被覆層202の熱的特性は、特に限定されないが、芯材201の軟化点は、被覆層202の軟化点よりも高いのが好ましい。この場合、芯材201と被覆層202との軟化点の差は10℃以上であるのが好ましく、20℃以上であるのがより好ましい。
【0037】
以上述べたように、結合材20は、繊維状の芯材201と、芯材201の外周部を被覆する被覆層202と、を有する。これにより、結合材20の剛性を十分に確保することと、結合材20のバインダーとしての機能を高めることを両立することができる。
【0038】
また、結合材20が繊維状であると、解繊物10と共にオイル吸収体1全体が繊維状のもので構成されていることとなるため、所望のサイズの隙間6が十分に、かつ均一に形成されることとなる。その結果、上述した効果、すなわちオイル吸収体1と接触したオイル成分Gを速やかに吸収し、広範囲に拡散することができるとともに、オイル吸収体1の内部に拡散したオイル成分Gを十分に保持し、外部に漏れ出すのを防止または抑制するという効果を十分に発揮することができる。
【0039】
芯材201と被覆層202との境界部は明確でなくてもよい。例えば、結合材20は、中心側から外周側に向って、材料の組成や軟化点が徐々に低くなっている構成であってもよく、この場合も、上述した効果が得られる。
【0040】
また、結合材20は、単層、すなわち、全体が同じ材料で構成された繊維状をなしていてもよい。
【0041】
繊維状をなす結合材20の平均繊維長さは、特に限定されないが、解繊物10の繊維100の平均繊維長さよりも長いことが好ましい。結合材20の平均繊維長さは、1.0mm以上20mm以下であるのが好ましく、1.2mm以上10mm以下であるのがより好ましい。これにより、解繊物10の繊維100との結着をより良好に行うことができるとともに、オイル吸収体1の剛性を十分に確保することができる。
【0042】
結合材20の平均繊維幅(繊維径)は、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であるのが好ましく、15μm以上50μm以下であるのがより好ましい。これにより、解繊物10の繊維100との結着をより良好に行うことができるとともに、オイル吸収体1の剛性を十分に確保することができる。
【0043】
なお、結合材20は、オイル吸収体1を製造する際に、別途添加してもよいが、以下に述べる原理で、オイル吸収体1に含まれていてもよい。
【0044】
使用済みの古紙等には、その抄紙の際に樹脂成分が含まれている場合がある。この樹脂成分は、古紙等を解繊した解繊物10にもそのまま残存するが、この樹脂成分が結合材20として機能する場合がある。この古紙等を原料として解繊物10を得、この解繊物10の繊維100をオイル吸収体1として用いた場合には、元から繊維100に結合材20が付着していたり、解繊物10に結合材20が含まれていたりすることとなる。このような解繊物10を用いてオイル吸収体1を製造する場合には、オイル吸収体1に既に結合材20が含まれていることとなる。このように、オイル吸収体1に含まれる結合材20の全部または一部は、解繊物10の原料由来のものであってもよい。解繊物10の原料由来の結合材20のみではその量が不十分な場合は、別途結合材20を添加すればよい。
【0045】
オイル吸収体1中の結合材20の含有率は、特に限定されないが、解繊物10に対し、5重量%以上90重量%以下であることが好ましく、10重量%以上80重量%以下であることがより好ましい。これにより、オイル成分Gの吸収機能および保持機能と、繊維100同士を結合するバインダーとしての機能とを十分に発揮することができる。
【0046】
なお、上記では、結合材20は、繊維状のものとして説明したが、本発明ではこれに限定されず、結合材20は、例えば、粒子状、鱗片状等、繊維状以外の形状であってもよい。
【0047】
粒子状をなす結合材20を用いる場合、その平均粒径は、特に限定されないが、5μm以上150μm以下であるのが好ましく、15μm以上100μm以下であることがより好ましい。これにより、より良好なバインダーとしての機能を得ることができる。
【0048】
また、粒子状をなす結合材20を用いる場合、結合材20の含有率は、特に限定されないが、解繊物10に対し、8重量%以上95重量%以下であることが好ましく、15重量%以上85重量%以下であることがより好ましい。これにより、オイル成分Gの吸収機能および保持機能と、繊維100同士を結合するバインダーとしての機能とを十分に発揮することができる。
【0049】
オイル吸収体1は、前述した以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、フィラー、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等の着色剤、難燃剤、流動性向上剤等の各種添加物が挙げられる。
【0050】
オイル吸収体1中における上記その他の成分の含有率は、特に限定されないが、解繊物10および結合材20の合計の重量に対し、10重量%以下であるのが好ましく、5.0重量%以下であるのがより好ましい。
【0051】
図1に示すように、オイル吸収体1は、シート状に成形されたものである。これにより、ハンドリング性に優れるとともに、オイル成分Gが接触する面をより大きく確保することができる。このようなシート状のオイル吸収体1は、可撓性を有するものであるのが好ましい。
【0052】
ここで、ハンドリング性について説明すると、例えばシート状をなすオイル吸収体の原反に対し適宜切断加工、打ち抜き加工等を施して、所望形状のシート状のオイル吸収体1を1枚または複数枚得ることができる。すなわち、1枚の原反から同一または異なる形状の複数のシート状のオイル吸収体1を製造することができる。所望の形状に切断されたシート状のオイル吸収体1は、後述する設置場所A、BおよびCのような回転駆動部4の周囲の適所に、例えば接着等の方法により設置することができ、シート状のオイル吸収体1が可撓性を有することとも相まって、上記の設置作業を容易に行うことができる。このように、シート状のオイル吸収体1は、製造、加工および設置においてハンドリング性に優れる。
【0053】
シート状をなすオイル吸収体1の平均厚さdは、特に限定されないが、1mm以上50mm以下であるのが好ましく、5mm以上20mm以下であるのがより好ましい。これにより、オイル成分Gを十分に吸収し、保持することができるとともに、ハンドリング性がより向上する。
【0054】
図示されていないが、シート状をなすオイル吸収体1は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成されていてもよい。また、シート状をなすオイル吸収体1は、その片面または両面に対し、溝、スリット、微小突起(エンボス)等が複数形成されていてもよい。例えば、シート状をなすオイル吸収体1の片面に一定間隔で平行に形成された複数の溝またはスリットを有する場合、オイル吸収体1を前記溝またはスリットが並ぶ方向に湾曲変形させ易くなる。後述するように、オイル吸収体1を挿通孔312、322の内周面に沿って湾曲させて設置する場合、オイル吸収体1をモーター41や減速機42の外周面に巻き付けて設置する場合等に、オイル吸収体1の湾曲変形を補助することができ、オイル吸収体1の設置におけるハンドリング性が向上する。
【0055】
なお、本発明において、オイル吸収体1の形態、形状等は、シート状に限定されず、例えば、棒状、ブロック状、シートを粗砕して得られた粗砕片等、シート状以外の形状をなしていてもよい。
【0056】
本発明では、オイル吸収体1の比重や、かさ密度は特に限定されないが、オイル吸収体1は、かさ密度が0.01g/cm以上2.0g/cmであるのが好ましく、0.1g/cm以上1.0g/cmであるのがより好ましい。これにより、オイル吸収体1の量に対する吸収させるべきオイル成分Gの量(比率)が比較的大きい場合であっても、オイル成分Gを十分に吸収し、保持することができ、オイル吸収体1から外部にオイル成分Gが漏れ出すのを防止または抑制することができる。
【0057】
このようなオイル吸収体1は、例えば、図4に示すようなロボット3の回転駆動部4の周囲に設置されて用いられる。以下、ロボット3の構造について説明する。なお、図4に示すロボット3は、スカラロボットであるが、本発明は、スカラロボット以外、例えば、6軸多関節ロボット、双腕ロボットにも適用することができる。
【0058】
図4に示すように、ロボット3は、基台33と、第1アーム31と、第2アーム32と、基台33に対し第1アーム31を回転軸O1回りに回転駆動する回転駆動部5と、第1アーム31に対し第2アーム32を回転軸O2回りに回転駆動する回転駆動部4と、を有する。第1アーム31と、第2アーム32と、回転駆動部4とにより、ロボットアーム30が構成される。
【0059】
第1アーム31の基端側の下方には、基台33が設置されている。基台33は、床面Fに設置、固定されている。第1アーム31は、基台33に対し回転可能に接続されており、回転駆動部5の作動により回転軸O1回りに回転駆動する。第1アーム31の先端側の上方には、第2アーム32が設置されている。第2アーム32は、第1アーム31に対し回転可能に接続されており、回転駆動部4の作動により回転軸O2回りに回転駆動する。回転軸O1および回転軸O2は、それぞれ、鉛直方向に沿った軸である。
【0060】
回転駆動部4は、モーター41と、減速機42とを有し、回転駆動部5は、モーター51と、減速機52とを有する。回転駆動部4と回転駆動部5とは、互いの上下方向が逆となるように設置されているが、両者の構造は実質的に同一であるため、以下、回転駆動部4について代表的に説明する。
【0061】
第1アーム31は、筐体311を有する。筐体311は、回転駆動部4が挿通される挿通孔312を有する。第2アーム32は、筐体321を有する。筐体321は、回転駆動部4が挿通される挿通孔322を有する。図示の構成では、挿通孔312および挿通孔322は、円形をなしている。
【0062】
回転駆動部4は、円筒状をなし、挿通孔312および挿通孔322に一括して挿通されている。回転駆動部4の一端部、すなわち上端部は、第2アーム32の筐体321内に位置し、図示しない固定部材を介して筐体321に固定されている。回転駆動部4の他端部、すなわち下端部は、第1アーム31の筐体311内に位置し、図示しない固定部材を介して筐体311に固定されている。
【0063】
回転駆動部4は、モーター41と、モーター41の一端部、すなわち上端部に接続された減速機42とを有している。モーター41および減速機42は、下側からこの順で並んで配置され、これらは連結されている。
【0064】
モーター41は、図示しない出力軸を有し、当該出力軸に減速機42の入力軸が接続されている。このため、モーター41の出力軸が回転すると、減速機42の入力軸が回転する。モーター41の出力軸の回転速度は、減速機42内部の図示しない減速機構によって減速され、減速機42の図示しない出力軸が、所定の減速比で減速された回転速度で回転する。
【0065】
モーター41は、第1アーム31の筐体311内の底部313に図示しない固定部材を介して固定されている。減速機42の出力軸は、第2アーム32の筐体321内の挿通孔322の縁部に、図示しない固定部材を介して固定されている。
【0066】
このような構成により、モーター41を回転駆動すると、第2アーム32が第1アーム31に対して回転軸O2回りに回転することができる。
【0067】
減速機42としては、偏心揺動型減速機、遊星歯車型減速機、波動歯車型減速機等が挙げられる。
【0068】
このような減速機42では、オイル成分Gを含むグリスが内部、例えば、歯車間に充填されている。回転駆動部4の駆動とともに回転駆動部4全体の温度が上昇し、グリスの粘度が下がると、オイル成分Gが減速機42の外部に漏れ出すことがある。この漏れ出したオイル成分Gを吸収するために、オイル吸収体1は、例えば、図4中に示す以下のような設置場所A、設置場所Bおよび設置場所Cに設置される。
【0069】
1.設置場所A
オイル吸収体1は、減速機42の外周部、すなわち挿通孔312の内周部および挿通孔322の内周部にそれぞれ設けられている。設置場所Aでは、帯状のオイル吸収体1を一方の主面が挿通孔312の内周面と接するようにリング状に変形させて設置するとともに、帯状のオイル吸収体1を一方の主面が挿通孔322の内周面と接するようにリング状に変形させて設置する。この場合、オイル吸収体1は、挿通孔312および挿通孔322の内周面に対し、あるいは減速機42の外周面に対し、接着剤や粘着テープ等を用いて接合されていてもよく、減速機42との間に嵌入または圧入されていてもよい。
【0070】
なお、図示とは異なり、減速機42の挿通孔322より上方に突出した部位の外周面の全周または一部に、シート状のオイル吸収体1を巻き付けて設置してもよい。また、減速機42の挿通孔312より下方に突出した部位の外周面の全周または一部に、シート状のオイル吸収体1を巻き付けて設置してもよい。
【0071】
このような設置場所Aにオイル吸収体1を設置することにより、減速機42から漏れ出し、減速機42の外周面を伝って流下するオイル成分Gを直接吸収し、保持することができる。
【0072】
2.設置場所B
オイル吸収体1は、モーター41の周囲、すなわち第1アーム31の筐体311の内面のうち、モーター41の外周部に臨む部分に設置されている。図4に示す構成では、オイル吸収体1は、筐体311の内面のうち、モーター41より先端側の側面(先端面)に設置されている。この場合、オイル吸収体1は、モーター41の外周面に対し所定距離離間して設置されているが、本発明では、オイル吸収体1がモーター41の外周面と接触することを妨げるものではない。
【0073】
また、図示の構成に限定されず、筐体311の内面のうち、図4中の奥側や、図4中の手前側にオイル吸収体1を設置してもよい。筐体311の内面のうち、図4中の先端側、奥側および手前側にそれぞれオイル吸収体1を設置した場合、モーター41の周囲の三方をオイル吸収体1で囲む構成とすることができる。
【0074】
なお、図示とは異なり、モーター41の外周面の全周または一部に、シート状のオイル吸収体1を巻き付けて設置してもよい。
【0075】
このような設置場所Bにオイル吸収体1を設置することにより、モーター41から飛散したオイル成分Gを吸収し、保持することができる。
【0076】
3.設置場所C
オイル吸収体1は、モーター41の他端部、すなわちモーター41の下端部に設けられている。図4に示す構成では、モーター41の下端が筐体311の底部313の内面(上面)に当接しているため、オイル吸収体1は、底部313の内面(上面)であってモーター41の外周部に設置されている。設置場所Cでは、オイル吸収体1は、モーター41に対応する部分が、モーター41の下端部の形状に対応して打ち抜かれたシート状をなしている。換言すれば、シート状のオイル吸収体1は、その中心部に例えば円形に打ち抜かれた孔を有し、この孔内にモーター41の下端部が挿入または嵌入された構成となっている。
【0077】
このような設置場所Cにオイル吸収体1を設置することにより、モーター41または減速機42から漏れ出し、モーター41または減速機42の外周面を伝って流下するオイル成分Gをモーター41の下端部において吸収し、保持することができる。
【0078】
なお、図示とは異なり、モーター41の下端と底部313の内面(上面)との間にシート状のオイル吸収体1が挿入されていてもよい。この場合、オイル吸収体1は、モーター41の下端面を包含するような形状、すなわちモーター41の下端の外周縁より外方へ突出するような形状とするのが好ましい。
【0079】
以上のような設置場所A、設置場所Bおよび設置場所Cにオイル吸収体1を設置することにより、オイル成分Gを効果的に吸収し、保持することができる。なお、オイル吸収体1は、設置場所A、設置場所Bおよび設置場所Cのうち、少なくとも1ヵ所に配置されていればよく、この場合でも上記効果を十分に発揮することができる。
【0080】
前記回転駆動部4と同様に、回転駆動部5の周囲にも、オイル吸収体1を設置することができる。この場合、回転駆動部5に対応する前記設置場所A、設置場所Bおよび設置場所Cのうちの少なくとも1ヵ所、好ましくはこれら全てにオイル吸収体1を設置することができる。
【0081】
また、オイル吸収体1は、ロボット3の前記設置場所A、設置場所Bおよび設置場所C以外の箇所に設置してもよい。
【0082】
以上説明したように、オイル吸収体1は、ロボット3の回転駆動部4または5の周囲に設置され、オイル成分Gを吸収するものである。オイル吸収体1は、繊維100を解繊した解繊物10と、解繊物10の繊維100同士を結合させる結合材20と、を含む。これにより、オイル吸収体1は、回転駆動部4または5から漏れ出したオイル成分Gを速やかに吸収するとともに、オイル吸収体1の内部において広範囲に拡散することができ、拡散したオイル成分Gを保持することができる。その結果、オイル成分Gが外部に漏れ出すのを防止または抑制することができる。
【0083】
また、回転駆動部4は、モーター41と、モーター41の一端部に接続された減速機42と、を有し、オイル吸収体1は、減速機42の外周部、モーター41の周囲、およびモーター41の他端部のうちの少なくとも1ヵ所に配置されている。これにより、回転駆動部4から漏れ出したオイル成分Gを効率よく吸収し、保持することができる。
【0084】
以上、本発明のオイル吸収体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、オイル吸収体を構成する各成分は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、オイル吸収体には、任意の機能を有する層が付加されていてもよい。例えば、オイル吸収体は、難燃性の高い難燃層、接着剤または粘着剤を有する接着層等を有していてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…オイル吸収体、3…ロボット、4…回転駆動部、5…回転駆動部、6…隙間、10…解繊物、20…結合材、30…ロボットアーム、31…第1アーム、32…第2アーム、33…基台、41…モーター、42…減速機、51…モーター、52…減速機、100…繊維、201…芯材、202…被覆層、311…筐体、312…挿通孔、313…底部、321…筐体、322…挿通孔、A…設置場所、B…設置場所、C…設置場所、d…平均厚さ、F…床面、G…オイル成分、O1…回転軸、O2…回転軸
図1
図2
図3
図4