(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120322
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】異常検知方法及び異常検知システム
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20240829BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H02B3/00 M
G05B23/02 302S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027034
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145207
【弁理士】
【氏名又は名称】酒本 裕明
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】千林 暁
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA30
3C223BA01
3C223EA04
3C223FF04
3C223FF26
3C223FF35
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH08
3C223HH24
3C223HH26
(57)【要約】
【課題】電気設備において水分侵入を検知でき、結露及び水分付着による絶縁劣化を未然に防止できる異常検知方法及び異常検知システムを提供する。
【解決手段】異常検知方法は、電気設備に配置された温度センサ及び湿度センサの測定データを取得し、容積絶対湿度を算出し(306)、乖離値を算出し(308)、温度センサ及び湿度センサの対毎に移動平均値を算出し(310)、学習期間における乖離値及び移動平均値の時系列データからK1、K2及びK3を決定し、乖離値及び移動平均値に関して、K1、K2及びK3から複数のしきい値を算出し(312)、学習期間の後、測定データから算出された乖離値及び移動平均値と、複数のしきい値とを比較することにより、電気設備における水分侵入の異常発生の有無を判定する(320)。これにより、水分侵入の異常判定のためのしきい値を、比較的簡単な演算により自動的に、且つ精度よく決定できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nを2以上の整数として、電気設備に配置された、1対1に対応するN組の温度センサ及び湿度センサから、同じタイミングにおいて測定された温度データ及び相対湿度データを取得する第1ステップと、
前記温度データと、当該温度データに対応する前記相対湿度データとを用いて、容積絶対湿度を算出する第2ステップと、
前記第2ステップにより算出されたN個の前記容積絶対湿度の少なくとも一部から平均値を算出する第3ステップと、
N個の前記容積絶対湿度の各々の乖離値を、前記容積絶対湿度/前記平均値-1により算出する第4ステップと、
前記第1ステップ、前記第2ステップ、前記第3ステップ及び前記第4ステップを所定期間繰返し実行することにより得られた前記乖離値を用いて、前記温度センサ及び前記湿度センサの対毎に移動平均値を算出する第5ステップと、
学習期間において、前記第1ステップ、前記第2ステップ、前記第3ステップ、前記第4ステップ及び前記第5ステップが繰返されることにより生成された前記乖離値及び前記移動平均値の各々の時系列データを、大きい順に並べ替える第6ステップと、
前記乖離値及び前記移動平均値の各々に関して、前記第6ステップにより並べ替えられた後のデータの中から、最上位から数えて、前記時系列データの総数のL1%、L2%及びL3%に対応する順位のデータを、それぞれK1、K2及びK3として決定する第7ステップと、
前記乖離値及び前記移動平均値の各々に関して、各々に対応するK1、K2及びK3から複数のしきい値を算出する第8ステップと、
前記学習期間の後、前記温度センサ及び前記湿度センサにより測定された温度データ及び相対湿度データから算出された前記乖離値及び前記移動平均値と、前記複数のしきい値とを比較することにより、前記電気設備における水分侵入の異常発生の有無を判定する第9ステップとを含み、
L2は、L1より大きく、
L3は、L2より大きいことを特徴とする、異常検知方法。
【請求項2】
前記第3ステップにおいて算出される前記平均値は、N個の前記容積絶対湿度から、前記第4ステップにおいて算出される前記乖離値に対応する容積絶対湿度を除いて算出されることを特徴とする、請求項1に記載の異常検知方法。
【請求項3】
前記第9ステップは、
前記学習期間の後に測定された前記温度データ及び前記相対湿度データから算出された前記乖離値及び前記移動平均値を、前記複数のしきい値と比較してポイントを設定する第10ステップと、
前記ポイントが所定値以上であれば、前記電気設備において水分侵入の異常が発生したと判定する第11ステップとを含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の異常検知方法。
【請求項4】
L1は、0.1より大きく0.3より小さく、
L2は、1より大きく5より小さく、
L3は、10より大きく20より小さいことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の異常検知方法。
【請求項5】
Nを2以上の整数として、電気設備に配置された、1対1に対応するN組の温度センサ及び湿度センサと、
演算装置とを含み、
前記演算装置は、
前記N組の前記温度センサ及び前記湿度センサの各々により、同じタイミングにおいて測定された温度データ及び相対湿度データを取得する第1処理と、
前記温度データと、当該温度データに対応する前記相対湿度データとを用いて、容積絶対湿度を算出する第2処理と、
前記第2処理により算出されたN個の前記容積絶対湿度の少なくとも一部から平均値を算出する第3処理と、
N個の前記容積絶対湿度の各々の乖離値を、前記容積絶対湿度/前記平均値-1により算出する第4処理と、
前記第1処理、前記第2処理、前記第3処理及び前記第4処理を所定期間繰返し実行することにより得られた前記乖離値を用いて、前記温度センサ及び前記湿度センサの対毎に移動平均値を算出する第5処理と、
学習期間において、前記第1処理、前記第2処理、前記第3処理、前記第4処理及び前記第5処理が繰返されることにより生成された前記乖離値及び前記移動平均値の各々の時系列データを、大きい順に並べ替える第6処理と、
前記乖離値及び前記移動平均値の各々に関して、前記第6処理により並べ替えられた後のデータの中から、最上位から数えて、前記時系列データの総数のL1%、L2%及びL3%に対応する順位のデータを、それぞれK1、K2及びK3として決定する第7処理と、
前記乖離値及び前記移動平均値の各々に関して、各々に対応するK1、K2及びK3から複数のしきい値を算出する第8処理と、
前記学習期間の後、前記温度センサ及び前記湿度センサにより測定された温度データ及び相対湿度データから算出された前記乖離値及び前記移動平均値と、前記複数のしきい値とを比較することにより、前記電気設備における水分侵入の異常発生の有無を判定する第9処理とを実行し、
L2は、L1より大きく、
L3は、L2より大きいことを特徴とする、異常検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電盤等の電気設備における水分の侵入を検知し、電気設備の動作停止等の不具合の発生、及び、短絡及び地絡等の重大事故の発生を未然に防止できる異常検知方法及び異常検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤等の電気設備は、風雨にさらされる屋外に配置され、高温及び多湿等、劣悪な環境に設置されることがあり、設置されてから同じ環境で長期間使用される。配電盤等の電気設備に絶縁劣化等の異常が発生すると、電力の供給先の全ての機器に影響が生じることになる。また、異常の発生は、火災等の重大事故にもつながる可能性がある。したがって、電気設備における絶縁劣化の原因となる結露及び水分付着への対策として、相対湿度をセンサにより測定し、しきい値(例えば、60%RH)を超えるとスペースヒータに通電して相対湿度を下げる、という湿度制御方法が行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、電気機器が収納された筐体内部における結露発生を予測する結露検出ユニットが開示されている。この結露検出ユニットは、電気設備に配置されたヒータ又はファン等の温度制御機器を制御する精度を高めるために、電気設備の筐体の表面温度と、電気設備内部の温度及び湿度とを測定し、測定結果に基づき温度制御機器を制御する。
【0004】
下記特許文献2には、連結され並べて設置された複数の配電盤(列盤)の設置場所における環境変化等、外部環境による影響を受けることなく電気設備の異常を検知できる異常検知方法が開示されている。この異常検知方法は、複数の配電盤の各々に配置した温度センサの測定データを相対評価することにより、温度異常を検知する。具体的には、各温度センサの測定データから代表値(平均値)を求め、測定データと代表値との差分を算出し、差分の時系列データの移動平均値及び移動標準偏差値を算出して、それらの算出結果に基づき温度異常を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-32281号公報
【特許文献2】特開2020-9184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
列盤として構成される電気設備(例えば配電盤)においては、ピット等からの水分侵入及び雨水侵入(例えば、通風口、又は、パッキン及び筐体の劣化により生じる隙間からの侵入)により、特定の盤に結露又は水分付着による絶縁劣化が生じ、不具合が発生することがある。特許文献1及び2のいずれによっても、このような列盤における特定の盤への水分侵入のリスクを検知できない。飽和水蒸気量の温度依存性が非線形(即ち指数関数状の曲線)であることを考慮すると、特許文献1のように、測定データと代表値との差分を用いる方法を相対湿度の測定データに適用しても、水分侵入を精度よく検知することはできない。
【0007】
また、複数の配電盤により構成される列盤に限らず、複数の機器が同じ環境で使用される電気設備において、特定の機器に結露又は水分付着が発生することを検知できれば好ましい。なお、水分侵入とは、液体か気体かを問わず、電気設備内に水が侵入することを意味する。即ち、液体の水が侵入する場合に限らず、例えば、湿度の高い空気が電気設備内に侵入して結露する場合も、水分侵入に含まれる。
【0008】
したがって、本発明は、電気設備(電気機器を含む)において水分侵入を検知でき、結露及び水分付着による絶縁劣化を未然に防止できる異常検知方法及び異常検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の第1の局面に係る異常検知方法は、Nを2以上の整数として、電気設備に配置された、1対1に対応するN組の温度センサ及び湿度センサから、同じタイミングにおいて測定された温度データ及び相対湿度データを取得する第1ステップと、温度データと、当該温度データに対応する相対湿度データとを用いて、容積絶対湿度を算出する第2ステップと、第2ステップにより算出されたN個の容積絶対湿度の少なくとも一部から平均値を算出する第3ステップと、N個の容積絶対湿度の各々の乖離値を、容積絶対湿度/平均値-1により算出する第4ステップと、第1ステップ、第2ステップ、第3ステップ及び第4ステップを所定期間繰返し実行することにより得られた乖離値を用いて、温度センサ及び湿度センサの対毎に移動平均値を算出する第5ステップと、学習期間において、第1ステップ、第2ステップ、第3ステップ、第4ステップ及び第5ステップが繰返されることにより生成された乖離値及び移動平均値の各々の時系列データを、大きい順に並べ替える第6ステップと、乖離値及び移動平均値の各々に関して、第6ステップにより並べ替えられた後のデータの中から、最上位から数えて、時系列データの総数のL1%、L2%及びL3%に対応する順位のデータを、それぞれK1、K2及びK3として決定する第7ステップと、乖離値及び移動平均値の各々に関して、各々に対応するK1、K2及びK3から複数のしきい値を算出する第8ステップと、学習期間の後、温度センサ及び湿度センサにより測定された温度データ及び相対湿度データから算出された乖離値及び移動平均値と、複数のしきい値とを比較することにより、電気設備における水分侵入の異常発生の有無を判定する第9ステップとを含み、L2は、L1より大きく、L3は、L2より大きい。
【0010】
これにより、電気設備における水分侵入の異常を精度よく検知できる。また、水分侵入の異常判定のためのしきい値を、比較的簡単な演算により自動的に、且つ精度よく決定できる。そのため、しきい値を決定するために人の判断が不要になり、水分侵入の異常検知システムの運用が容易になる。また、比較的簡単な演算によりしきい値を決定できるので、高性能の演算素子が不要であり、システムの製造費用を低減できる。
【0011】
(2)上記(1)において、第3ステップにおいて算出される平均値は、N個の容積絶対湿度から、第4ステップにおいて算出される乖離値に対応する容積絶対湿度を除いて算出されることができる。これにより、水分侵入の異常を検知するためのしきい値として、より適切な値を決定できる。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)において、第9ステップは、学習期間の後に測定された温度データ及び相対湿度データから算出された乖離値及び移動平均値を、複数のしきい値と比較してポイントを設定する第10ステップと、ポイントが所定値以上であれば、電気設備において水分侵入の異常が発生したと判定する第11ステップとを含むことができる。これにより、電気設備における水分侵入の異常検知が容易になる。
【0013】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、L1は、0.1より大きく0.3より小さくてもよく、L2は、1より大きく5より小さくてもよく、L3は、10より大きく20より小さくてもよい。これにより、水分侵入の異常をより精度よく検知できる。
【0014】
(5)本発明の第2の局面に係る異常検知システムは、Nを2以上の整数として、電気設備に配置された、1対1に対応するN組の温度センサ及び湿度センサと、演算装置とを含み、演算装置は、N組の温度センサ及び湿度センサの各々により、同じタイミングにおいて測定された温度データ及び相対湿度データを取得する第1処理と、温度データと、当該温度データに対応する相対湿度データとを用いて、容積絶対湿度を算出する第2処理と、第2処理により算出されたN個の容積絶対湿度の少なくとも一部から平均値を算出する第3処理と、N個の容積絶対湿度の各々の乖離値を、容積絶対湿度/平均値-1により算出する第4処理と、第1処理、第2処理、第3処理及び第4処理を所定期間繰返し実行することにより得られた乖離値を用いて、温度センサ及び湿度センサの対毎に移動平均値を算出する第5処理と、学習期間において、第1処理、第2処理、第3処理、第4処理及び第5処理が繰返されることにより生成された乖離値及び移動平均値の各々の時系列データを、大きい順に並べ替える第6処理と、乖離値及び移動平均値の各々に関して、第6処理により並べ替えられた後のデータの中から、最上位から数えて、時系列データの総数のL1%、L2%及びL3%に対応する順位のデータを、それぞれK1、K2及びK3として決定する第7処理と、乖離値及び移動平均値の各々に関して、各々に対応するK1、K2及びK3から複数のしきい値を算出する第8処理と、学習期間の後、温度センサ及び湿度センサにより測定された温度データ及び相対湿度データから算出された乖離値及び移動平均値と、複数のしきい値とを比較することにより、電気設備における水分侵入の異常発生の有無を判定する第9処理とを実行し、L2は、L1より大きく、L3は、L2より大きい。
【0015】
これにより、電気設備における水分侵入の異常を精度よく検知できる。また、水分侵入の異常判定のためのしきい値を、比較的簡単な演算により自動的に、且つ精度よく決定できる。そのため、しきい値を決定するために人の判断が不要になり、水分侵入の異常検知システムの運用が容易になる。また、比較的簡単な演算によりしきい値を決定できるので、高性能の演算素子が不要であり、システムの製造費用を低減できる。
【0016】
(6)上記の(1)から(5)のいずれか1つにおいて、複数のしきい値は、K1又はK2に、K1とK2との差である第1差分値、K2とK3との差である第2差分値、K1とK3との差である第3差分値、又は、第1差分値、第2差分値及び第3差分値のいずれかの整数倍を加算して算出されてもよい。
【0017】
(7)上記の(1)から(6)のいずれか1つにおいて、学習期間は、異常発生の有無の判定を開始するときより前の1か月以上の期間、又は、異常発生の有無の判定を行う検知期間に対応する、前年における期間であってもよい。
【0018】
(8)上記の(1)から(7)のいずれか1つにおいて、学習期間は、2か月以上、6か月未満であってもよい。
【0019】
(9)上記の(1)から(8)のいずれか1つにおいて、Nは4以上であってもよい。
【0020】
(10)上記の(1)から(9)のいずれか1つにおいて、電気設備は複数の列盤を含んでいてもよく、複数の列盤が、温度コントロール機能を有する列盤が含まれていれば、当該列盤には、温度センサ及び湿度センサを配置しなくてもよい。
【0021】
(11)上記の(1)から(5)のいずれか1つにおいて、複数のしきい値は、K2又はK3に定数が加算されて得られる値を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電気設備(電気機器を含む)において水分侵入を検知でき、結露及び水分付着による絶縁劣化を未然に防止できる異常検知方法及び異常検知システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る異常検知システムの概略構成を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したセンサユニットの内部構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した演算装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、演算装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、移動平均値の算出方法を説明するためのグラフである。
【
図6】
図6は、しきい値とポイントとの関係を示す図である。
【
図7】
図7は、屋外配電盤の各盤に配置した5つのセンサユニッチにより測定された温度を示すグラフである。
【
図8】
図8は、屋外配電盤の各盤に配置した5つのセンサユニットにより測定された相対湿度を示すグラフである。
【
図9】
図9は、
図7及び
図8の測定データから算出された容積絶対湿度を示すグラフである。
【
図10】
図10は、
図9に示した5つの容積絶対湿度に関する乖離値を示すグラフである。
【
図11】
図11は、
図10に示した乖離値から算出した12時間の移動平均値を示すグラフである。
【
図12】
図12は、
図10に示した乖離値から算出した24時間の移動平均値を示すグラフである。
【
図13】
図13は、
図10に示した乖離値から算出した72時間の移動平均値を示すグラフである。
【
図14】
図14は、
図10に示した乖離値及び
図11から
図13に示した移動平均値の各々から決定されたしきい値とポイントとの関係をテーブル形式により示す図である。
【
図16】
図16は、
図11に示した移動平均値に関して、
図14に示したしきい値を用いて決定したポイントを示すグラフである。
【
図17】
図17は、
図12に示した移動平均値に関して、
図14に示したしきい値を用いて決定したポイントを示すグラフである。
【
図18】
図18は、
図13に示した移動平均値に関して、
図14に示したしきい値を用いて決定したポイントを示すグラフである。
【
図19】
図19は、ポイントの算出方法を変更した場合の解析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施の形態においては、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0025】
(異常検知システムの構成)
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る異常検知システム100は、第1配電盤120、第2配電盤122、第3配電盤124、第4配電盤126及び第5配電盤128のそれぞれに配置された第1センサユニット110、第2センサユニット112、第3センサユニット114、第4センサユニット116及び第5センサユニット118と、演算装置130とを含む。第1配電盤120から第5配電盤128は、同種の配電盤又は類似する配電盤であり、連結され並べて設置された複数の配電盤(以下、列盤ともいう)である。第1センサユニット110から第5センサユニット118は、それぞれ第1配電盤120から第5配電盤128内の下部に配置され、ほぼ同じ位置(例えば同じ高さ)に配置されている。演算装置130は第5配電盤128の外部に配置されている。
【0026】
図2を参照して、第1センサユニット110は、制御部140、記憶部142、通信部144、タイマ146、バス148、A/D変換部150、温度センサ152及び湿度センサ154を含む。制御部140は、第1センサユニット110を構成する各部を制御し、例えばCPU(Central Processing Unit)、マイクロコンピュータ等である。記憶部142は、データを記憶し、例えば、書換可能な不揮発性半導体メモリである。通信部144は、外部と通信するための無線通信モジュールである。タイマ146は、制御部140からの要求を受けて、制御部140に現在時刻を表す情報(以下、単に現在時刻という)を伝送する。
【0027】
温度センサ152は、温度を測定するための素子であり、検出した温度に応じたアナログ信号を出力する。温度センサ152は、例えば測温抵抗体、熱電対等である。湿度センサ154は、相対湿度(%RH)を測定するための素子であり、検出した相対湿度に応じたアナログ信号を出力する。湿度センサ154は、例えば、抵抗式又は容量式の湿度センサである。後述するように、絶対湿度を精度よく算出するためには、温度センサ152及び湿度センサ154は、近接して配置されていることが好ましい。例えば、センシリオン(SENSIRION)社製のSHT-31等の1チップタイプのデジタル温湿度センサを使用できる。
【0028】
A/D変換部150は、所定のタイミングで、温度センサ152及び湿度センサ154から出力されるアナログ信号をデジタルデータに変換して出力する。A/D変換部150から出力されるデジタルデータ(温度及び相対湿度の測定データ)は、記憶部142に記憶される。なお、温度センサ152及び湿度センサ154が、測定値をデジタルデータとして出力可能であれば、A/D変換部150はなくてもよい。各部間でのデータ交換は、バス148を介して行われる。各部への電力供給は、電池を内蔵することにより、又は、各配電盤に設けられているサービスコンセントによりなされる。
【0029】
第2センサユニット112から第5センサユニット118も第1センサユニット110と同様に構成されている。なお、第1センサユニット110から第5センサユニット118の通信部は、それぞれを一意に区別するための情報(通信アドレス等)を持っている。また、第1センサユニット110から第5センサユニット118のそれぞれが有するタイマの時刻は、後述する演算装置130が有するタイマの時刻とそろっている(同時刻)とする。なお、同時刻(時刻がそろっている)とは、完全に同一時刻であることを意味するだけでなく、所定の許容範囲内で一致している場合をも含む意味である。
【0030】
図3を参照して、演算装置130は、制御部170、記憶部172、通信部174、タイマ176、表示部178、操作部180及びバス182を含む。制御部170は、演算装置130を構成する各部を制御し、例えばCPUである。記憶部172は、データを記憶し、例えば、書換可能な不揮発性半導体メモリである。通信部174は、第1センサユニット110から第5センサユニット118と通信するための通信モジュールである。通信部174は、第1センサユニット110から第5センサユニット118と通信するために無線通信機能を有する。タイマ176は、制御部170からの要求を受けて、制御部170に現在時刻を伝送する。表示部178は、視覚情報(テキスト、画像等)を表示する。表示部178は、例えば、液晶ディスプレイパネル等の表示パネルと、表示パネルの各画素を駆動する駆動回路とを備えている。操作部180は、演算装置130に対する指示を入力するためのものであり、例えば、タッチパネルである。演算装置130を構成する各部間でのデータ交換は、バス182を介して行われる。演算装置130は、例えばコンピュータであってもよい。また、演算装置130は、例えばシーケンサーであってもよい。
【0031】
(異常検知システムの動作)
以下では、複数のセンサユニットの代表として第1センサユニット110に関して説明する。第2センサユニット112から第5センサユニット118も第1センサユニット110と同様に動作する。
(センサユニットの動作)
【0032】
第1センサユニット110は、一定の時間間隔で温度センサ152及び湿度センサ154により測定した温度データ及び相対湿度データ(以下、両者を測定データともいう)を、演算装置130に送信する。第1センサユニット110のこの機能は、制御部140が、記憶部142に記憶された所定のプログラムを読出して実行することにより実現される。具体的には、制御部140は、タイマ146から現在時刻を取得し、温度及び湿度を測定する時刻(以下、測定タイミングともいう)になったか否かを判定し、測定タイミングになったと判定すれは、A/D変換部150を制御して、A/D変換部150に入力されているアナログ信号(センサ素子150の測定信号)をデジタルデータに変換して、記憶部142に記憶する。続いて、制御部140は、記憶部142から測定データを読出し、通信部144を介して演算装置130に送信する。このとき、送信される測定データには、温度データ及び相対湿度データが含まれるので、演算装置130が両者を判別できるように送信する。例えば、温度又は湿度を表すコードと測定データとをセットとして送信すればよい。無線通信パケットに含まれるデータの並び順を、予め取り決めておいてもよい(例えば、温度データ、相対湿度データの順)。
【0033】
例えば、第1センサユニット110に、1時間毎に第1配電盤120内部の温度及び湿度を測定して送信させる場合には、測定タイミングの情報として、測定の開始時刻と測定間隔(例えば60分)とを、予め記憶部142に記憶しておけばよい。制御部140は、記憶部142から測定タイミングの情報を読出し、タイマ146により現在時刻を参照して、上記の処理を実現することができる。
【0034】
ここでは、第1センサユニット110から第5センサユニット118は、同じ測定タイミングが設定されているとする。上記したように、第1センサユニット110から第5センサユニット118のタイマの時刻がそろっているので、第1センサユニット110から第5センサユニット118からは、同じタイミングにおいて、それぞれ第1配電盤120から第5配電盤128の内部の温度及び湿度の測定データが送信される。なお、「同じタイミング」とは、「同時刻」に関して上記したことから明らかなように、完全に同一タイミングであることを意味するだけでなく、所定の許容範囲内で一致している場合をも含む意味である。
【0035】
(演算装置の動作)
演算装置130は、第1センサユニット110から第5センサユニット118の各々から送信される測定データ(即ち、温度データ及び相対湿度データ)を受信し、受信した測定データを、第1センサユニット110から第5センサユニット118の各々について、温度データ及び相対湿度データ毎に時系列に記憶部172に記憶する(即ち、過去に受信し、記憶している測定データに追加する)。これにより、合計10(=5×2)の時系列データが記憶部172に記憶される。上記したように、第1センサユニット110から第5センサユニット118の各々からは、同時刻に測定が行われ、測定データが送信されるので、制御部170は、同時刻に測定された測定データを対応させて記憶部172に記憶できる。演算装置130は、第1センサユニット110から第5センサユニット118の各々に関して、所定の期間(以下、学習期間という)測定データを記憶部172に記憶した後、後述するように、解析処理を実行し、水分侵入の異常検知に用いるしきい値を算出する。演算装置130は、学習期間の後、解析結果(即ちしきい値)に基づいて、第1配電盤120から第5配電盤128のいずれかにおいて、水分侵入の異常が発生しているか否か、又は、水分侵入の異常が発生する予兆があるか否かを判定する。
【0036】
演算装置130は、例えば、
図4に示す処理を実行する。
図4の各処理は、制御部170が、所定のプログラムを記憶部172から読出して実行することにより実現される。
【0037】
ステップ300において、制御部170は、通信部174により、第1センサユニット110から第5センサユニット118のいずれかから送信される測定データ(即ち、温度データ及び相対湿度データ)を受信したか否を判定する。受信したと判定された場合、制御はステップ302に移行する。そうでなければ、ステップ300の処理が繰返される。
【0038】
ステップ302において、制御部170は、受信した測定データを記憶部172に記憶する。上記したように、制御部170は、第1センサユニット110から第5センサユニット118の各々に関して、温度データ及び相対湿度データ毎に時系列に測定データを記憶部172に記憶する。
【0039】
ステップ304において、制御部170は、解析を実行するか否かを判定する。具体的には、制御部170は、所定の学習期間における測定データを取得できたか否かを判定する。なお、各センサが測定データを送信する周期が一定である場合には、所定個数の測定データを取得できたか否かを判定してもよい。
【0040】
ステップ306において、制御部170は、第1センサユニット110から第5センサユニット118の各々に関して、1組の測定データ(温度データ及び相対湿度データ)を記憶部172から読出し、それを用いて、容積絶対湿度を算出する。例えば、制御部170は、1組の温度データTm(℃)及び相対湿度データHm(%RH)を用いて、下記の式1により、容積絶対湿度Ym(g/m3)を算出する。mはセンサユニットを特定するためのものであり、m=1から5はそれぞれ第1センサユニット110から第5センサユニット118に対応する。
Ym=217×(6.1078×10K)/(Tm+273.15)×Hm/100 ・・・(式1)
ここでK=7.5×Tm/(Tm+237.3)である。算出された容積絶対湿度Ymは、センサユニット毎に、時系列に記憶部172に記憶される。
【0041】
ステップ308において、制御部170は、ステップ306により算出された容積絶対湿度Ymに関して、乖離値を算出する。具体的には、制御部170は、第1センサユニット110から第5センサユニット118の各々に関して、同じタイミングの測定データから算出された容積絶対湿度Ym(即ち、m=1から5の5個のデータ)を記憶部172から読出す。第mセンサユニット(m=1から5)に関する容積絶対湿度をYmとし、5個1組の容積絶対湿度の内、Ymに関して、Ym以外のデータYn(n≠m)の平均値Yavmを算出し、乖離値Xmを、式2により算出する。
Xm=Ym/Yavm-1・・・(式2)
これにより、1組の容積絶対湿度(即ち5個のデータ)から、1組の乖離値Xm(m=1から5)が算出される。制御部170は、学習期間において算出した容積絶対湿度の全データに関して乖離値Xm(m=1から5)を算出し、記憶部172に記憶する。乖離値Xm(m=1から5)は、センサ毎の時系列データとして記憶される。
【0042】
空気の単位体積当たりに存在可能な水蒸気量(飽和水蒸気量(g/m3))は、温度の増大に伴い指数関数的に増大する。したがって、相対湿度の変化が同じであっても、水蒸気量の変化は温度によって大きく異なる。即ち、相対湿度が所定量変動した場合、高温状態における水蒸気量の変動は、低温状態よりも大きくなる。このことから、湿度の評価において、単に相対湿度の差分を用いて評価すると、低温状態においては、相対湿度の変動に対して感度が鈍くなり、高温状態においては、逆に感度が高くなり、湿度の変動に対して一様な評価ができない。そのために、上記したように算出した平均値に対する倍率(Ym/Yavm)を含む乖離量を用いる。なお、1を減算しているのは、評価値をゼロ付近の値にシフトさせるためのものである。電気設備の容積絶対湿度(1m3当たりの水蒸気量(g))は、他に水分が供給されない限りは外気に含まれる水蒸気量により決定されるので、どの盤もほぼ一定であり、水分侵入の異常がなければ、式2により算出される乖離量Xmはゼロ付近の値となる。
【0043】
ステップ310において、制御部170は、ステップ308により第1センサユニット110から第5センサユニット118の各々に関して算出された乖離値Xm(m=1から5)から、移動平均値Xavm(m=1から5)を算出する。移動平均値Xavmを算出するデータを特定するための所定期間(以下、ウインドウともいう)Tとして、例えば12時間、24時間及び72時間を用いる。
図5を参照して、横軸は時刻を表し、縦軸はm番目の温度センサの乖離値Xmを表している。乖離値Xmを模式的に破線で示す。実際の乖離値Xmはデジタルデータであり、
図5において、その一部を黒丸で示している。m番目の温度センサに関して、所定期間Tにおける複数の乖離値Xmi(i=1からn)の平均値を算出する処理を、平均値を算出する対象データ(即ち、所定期間T内のデータ)をシフト(例えば、t1からt3内のデータからt2からt4内のデータにシフト)しながら繰返す。制御部170は、学習期間において算出した乖離値Xm(m=1から5)を用いて、3つの所定期間Tj(j=1から3)毎の移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)を算出し、記憶部172に記憶する。例えば、T1=12(時間)、T2=24(時間)、T3=72(時間)である。移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)は、センサ及び所定期間の組合せ毎に、時系列データとして記憶される。
【0044】
ステップ312において、制御部170は、ステップ308により算出された乖離値Xm(m=1から5)の時系列データ、及び、ステップ310により算出された移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)の時系列データを用いて、異常を検知するためのしきい値を決定する。しきい値は、合計20の時系列データの各々に関して決定される。
【0045】
具体的には、制御部170は各時系列データに関して、数値が大きいものから順に並べて(即ち、1番目のデータは最大値)、4番目、55番目及び382番目のデータを、それぞれK1、K2及びK3とする。4番目、55番目及び382番目のデータはそれぞれ、各時系列データの集合において概ね最上位から0.135%、2.275%及び15.865%に位置する。これらの数値はそれぞれ、各時系列データが正規分布(標準偏差はσ)するとしたときの3σ、2σ及び1σに対応する。
【0046】
次に、制御部170は、乖離値Xm(m=1から5)及び移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)の各々に対応するポイントを決定するためのしきい値Th1からTh4を決定する。即ち、制御部170は、各時系列データに関して、K2をしきい値Th1、K1をしきい値Th2、2×K1-K2をしきい値Th3、2×K1-K3をしきい値Th4とする。使用されるK1、K2及びK3は、各時系列データに関して、上記したように決定されたものである。制御部170は、各時系列データに関して決定されたしきい値Th1からTh4を記憶部172に記憶する。
【0047】
一例として、
図6を参照して、乖離値Xmの時系列データに関して、4つのしきい値Th1からTh4と、0から4の4つのポイントとの対応を示す。
即ち、Xm<Th1(=K2)であれば、そのXmに0ポイントを対応させる。Th1(=K2)≦Xm<Th2(=K1)であれば、そのXmに1ポイントを対応させる。
Th2(=K1)≦Xm<Th3(=2×K1-K2)であれば、そのXmに2ポイントを対応させる。
Th3(=2×K1-K2)≦Xm<Th4(=2×K1-K3)であれば、そのXmに3ポイントを対応させる。
Xm>Th4(=2×K1-K3)であれば、そのXmに4ポイントを対応させる。
【0048】
同様にして、移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)の各々に関するしきい値Th1からTh4を用いて、移動平均値Xavmjに対応するポイントが決定される。即ち、
図6において、乖離値Xmを移動平均値Xavmjに置換えて、K1からK3には、移動平均値Xavmjの時系列データに関して、上記したように決定されたものを用いる。
【0049】
以上により、学習期間における測定データから算出された容積絶対湿度により、ポイントを決定するためのしきい値Th1からTh4が決定されたので、以降、制御部170は、決定されたしきい値を用いて、異常の検知処理を実行する。
【0050】
ステップ314において、制御部170は、通信部174により、第1センサユニット110から第5センサユニット118の各々から送信される1組の測定データ(即ち、5個の温度データ及び5個の相対湿度データ)を受信したか否を判定する。受信したと判定された場合、制御はステップ316に移行する。そうでなければ、ステップ314の処理が繰返される。制御部170は、受信した測定データを記憶部172に記憶する。
【0051】
ステップ316において、制御部170は、ステップ314において受信した測定データ(即ち、5個の温度データ及び5個の相対湿度データ)から、上記の式1により、各センサユニットに関する容積絶対湿度を算出する。
【0052】
ステップ318において、制御部170は、ステップ316により算出された容積絶対湿度と、それまでに記憶部172に記憶されている容積絶対湿度の時系列データとを用いて、上記したように、式2により乖離値Xmを算出し、乖離値Xmの移動平均値Xavmjを算出する。さらに、制御部170は、記憶部172に記憶されているしきい値K1からK4を用いて、乖離値Xm及び移動平均値Xavmjの各々に対応するポイントを決定する。合計20個のポイントが決定される。後述するように、ステップ318は繰返されるので、制御部170は、決定したポイントを時系列データとして記憶部172に記憶してもよい。その後、制御はステップ320に移行する。
【0053】
ステップ320において、制御部170は、ステップ318により決定された各ポイントが“3”以上であるか否かを判定する。20個のポイントのうち、少なくとも1つのポイントが“3”以上であると判定された場合、制御はステップ322に移行する。そうでなければ、制御はステップ324に移行する。
【0054】
ステップ322において、制御部170は、異常を表すメッセージを提示する。例えば、制御部170は、表示部178に所定のメッセージを含む画像を表示する。例えば、乖離値Xm及び移動平均値Xavmjのいずれかに対応するポイントが“3”以上であれば、第mセンサユニットが配置されている配電盤に水分侵入の異常が発生した(又はその可能性がある)旨のメッセージを提示する。実施例として後述するように、ポイントが“3”又は“4”である状態はまれにしか発生しない。したがって、“3”以上のポイントが発生すれば、水分侵入の疑いがあると判断できる。なお、後述するように、“3”以上のポイントの発生頻度が高いか否かを判定してもよい。
【0055】
ステップ324において、制御部170は、終了の指示を受けたか否かを判定する。終了の指示は、例えば操作部180が操作されることにより成される。終了の指示を受けたと判定された場合、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ314に戻り、制御部170は、上記の処理を繰返す。
【0056】
以上により、異常検知システム100は、列盤における水分侵入の異常を精度よく検知できる。また、水分侵入の異常を判定するためのしきい値を、比較的簡単な演算により自動的に、且つ精度よく決定できる。即ち、乖離値Xm及び移動平均値Xavmjを算出し、それらの時系列データを並べ替えて、水分侵入の異常を判定するためのポイントを決定するためのしきい値(即ちTh1からTh4)を自動的に算出する。これにより、しきい値を決定するために人の判断が不要になり、水分侵入の異常検知システムの運用が容易になる。また、比較的簡単な演算によりしきい値を決定できるので、高性能の演算素子が不要であり、システムの製造費用を低減できる。
【0057】
また、学習期間を調整すれば、水分侵入の異常を検知するためのポイントを決定するためのより適切なしきい値を決定できる。したがって、列盤における水分侵入の異常の検知精度をより高くできる。
【0058】
上記においては、ステップ316において、1つのポイントが“3”以上であるか否かを判定しているが、これに限定されない。“3”以上のポイントの発生頻度が高いか否かを判定してもよい。「発生頻度が高い」とは、例えば、所定の期間(例えば、最後の測定から直近の3日間(即ち72時間))において、“3”以上のポイントが所定回数(例えば10回)以上発生している状態をいう。所定の期間は、最後の測定から直近の2日間から10日間の期間であってもよい。所定回数の代わりに、発生確率を用いてもよく、例えば、所定期間において“3”以上のポイントの発生確率が所定値以上であれば、「発生頻度が高い」と判定してもよい。所定値は、例えば10%以上30%以下の値に設定できる。
【0059】
上記のように、無線通信機能を有するセンサユニットを使用することにより、既設の電気設備に容易に(条件によっては停電させることなく)、センサユニットを設置できる。
【0060】
上記においては、各時系列データに関して、数値が大きいものから順に並べて、4番目、55番目及び382番目のデータを、それぞれK1、K2及びK3とする場合を説明したが、これに限定されない。例えば、各時系列データに関して、数値が大きいものから順に並べて、最上位から数えて、データ総数のL1%、L2%及びL3%(L1<L2<L3とする)に相当する順位の値を、K1、K2及びK3としてもよい。なお、最上位から数えて、総数のL%に対応する順位の値とは、最上位のデータから個数を数えたカウント値が、総数のL%を超えたときのデータ、又は、その1つ前のデータを意味する。L1、L2及びL3は、0.1<L1<0.3、1<L2<5、10<L3<20であればよい。上記した、0.135%、2.275%及び15.865%はこれらを満たす。
【0061】
上記においては、乖離値Xm(m=1から5)及び移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)に関して、4つのしきい値Th1からTh4を用いて、5段階のポイント(即ち0から4)を対応させる場合を説明したが、これに限定されない。6段階以上のポイントを対応させてもよい。例えば、2×K1-K3+(K1-K2)(即ち、6σ相当)をしきい値Th5として用いれば、6段階のポイント(即ち0から5)を対応させることができる。
【0062】
上記においては、しきい値Th1からTh4を、K1、K2、K3及びそれらの演算値から決定しているが、これに限定されない。例えば、K2又はK3に水分侵入の発生と判断する乖離値定数を加算してしきい値としてもよい。例えば、実際の水分侵入があったときの乖離値は0.1程度であると判断し、後述するように、0ポイントから3ポイントに関するしきい値Th1からTh3にしては、上記のように設定し、4ポイントに関するしきい値Th4のみ、上記した2×K1-K3に代えて、K1に定数を加算した値、例えばK1+0.08としてもよい。データのばらつきが少ない場合(即ち、K1からK3の値が小さい場合)には、K1からK3だけに基づいてしきい値を決定すると、異常を過敏に検知することが考えられる。Th4=K1+0.08とすれば、過敏な検知を回避できる。なお、K1に加算する定数は、0.05~0.15の範囲であればよい。
【0063】
上記においては、学習期間の後、温度センサの測定データから算出された乖離値Xm(m=1から5)及び移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)に対して、複数のしきい値を用いてポイントを設定する場合を説明したが、これに限定されない。ポイントを設定するのは、判定処理を分かり易くするためであり、ポイントを設定しなくてもよい。乖離値Xm(m=1から5)及び移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)を、水分侵入の異常と判定するしきい値、例えばしきい値Th3(即ち、それ以上であれば3ポイントを対応させるしきい値)と比較して、水分侵入の異常発生の有無を判定してもよい。例えば、乖離値Xm(m=1から5)及び移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)のいずれかが、しきい値Th3以上である場合、又は、しきい値Th3以上の発生頻度が高い場合に、水分侵入の異常が発生したと判定すればよい。
【0064】
列盤に配置するセンサユニットの数は、異常発生の盤を特定する目的では4以上必要であり、望ましくは5以上である。センサユニットの総数が少ないと、特定の盤の水分侵入による測定データの異常が、代表値に大きく影響するので、他の盤の差分データにも影響し易くなる。温度センサの総数が5以上であれば、そのような影響を抑制できる。
【0065】
また、列盤の一部については、エアコン又は冷却ファン等の温度及び湿度の変動の要因がある盤を含む場合がある。このような盤に温度センサを設置して検知を行うと、乖離量Xmを不必要に大きくし、水分侵入の異常検知の感度を低下させてしまう可能性がある。したがって、そのような盤は検知対象から除外する(即ち、センサユニットを設置しない)ことが望ましい。
【0066】
上記では5台の配電盤により構成される列盤を示したが、これに限定されない。4台以下又は6台以上の配電盤により構成されてもよい。列盤を構成する要素は配電盤に限定されない。配電盤以外の電気設備であってもよい。
【0067】
また、同種又は類似する電気設備を並列させた列盤に限定されない。近接して配置される複数の電気設備であってもよい。さらには、1つの電気設備に複数のセンサユニットが配置されたものであってもよい。
【0068】
上記では、各センサユニットが各配電盤内の下部に配置され、各温度センサ及び各湿度センサの取付け位置の高さがほぼ等しい場合を説明したが、各温度センサ及び各湿度センサの取付け位置は任意である。なお、配電盤内の水分侵入を検知するための湿度相対評価をいう点では、センサユニットを配電盤の下部に配置することが望ましい。また、各温度センサをほぼ同じ高さに配置することにより、周囲環境の各センサユニットへの影響を揃えることができ、配電盤内の水分侵入の異常の検知がより容易になる。
【0069】
上記では、容積絶対湿度の乖離値Xm(m=1から5)及び移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)を全て算出し、各々に関するしきい値Th1からしきい値Th4を決定する場合を説明したが、これに限定されない。容積絶対湿度の乖離値及び複数期間に関する移動平均値の少なくとも1つを算出して、その算出値(例えばXmとする)に関するしきい値Th1からしきい値Th4を決定してもよい。その後、温度センサ及び湿度センサの測定データから容積絶対湿度を算出して、しきい値に対応する算出値Xmを算出し、しきい値を用いて算出値Xmに対応するポイントを決定すれば、そのポイントにより水分侵入の異常を検知できる。
【0070】
また、上記においては、乖離値を算出するための基準となる平均値Yavを、全ての測定値から監視対象の測定値を除いて計算しているが、これに限定されない。監視対象の測定値を含めて全ての測定値の平均値を算出し、その平均値を基準として乖離値を算出してもよい。そのように算出された乖離値を用いても、上記と同様の移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)を算出でき、同様の効果(即ち、水分侵入の異常検知の精度)が得られる。
【0071】
上記では、演算装置130による乖離値Xm(m=1から5)及び移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)の算出は、学習期間の全ての測定データを取得した後に実行される場合を説明したが、これに限定されない。学習期間において、演算装置130が、各センサから、同時に測定された1組の測定データを受信する度に実行してもよい。
【0072】
各センサユニットと演算装置130の間の通信は、有線通信であってもよい。また、演算装置130をデータ収集装置と解析装置とに分離し、データ収集装置を列盤の近傍に配置し、解析装置を、列盤から離隔して配置してもよい。データ収集装置が各センサユニットから測定データを取得し、一時記憶した後、測定データを解析装置に送信し、解析装置が、容積絶対湿度を算出して、容積絶対湿度の乖離値Xm(m=1から5)及び移動平均値Xavmj(m=1から5、j=1から3)を算出する。データ収集装置から解析装置には、無線通信により測定データを送信してもよい。また、データ収集装置と解析装置との間が遠距離であれば、有線の場合、例えば、RS422、RS485等の長距離伝送可能な通信方式を使用すればよい。また、データ収集装置と解析装置とが直接通信する方式でなくてもよい。例えば、収集した測定データを、携帯電話等の電波又はインターネットを介して、所定のデータサーバ又はクラウドに保管しておき、当該データサーバ又はクラウドのデータを解析装置が読出して解析を実施してもよい。また、解析結果は、電子メール等により設備管理者へ連絡されてもよい。
【0073】
上記では、第1センサユニット110から第5センサユニット118が、温度及び湿度を測定する度に測定データを送信する場合を説明したが、これに限定されない。複数回の測定データを記憶しておき、まとめて演算装置130に送信してもよい。第1センサユニット110から第5センサユニット118のそれぞれの測定タイミングは同じであるので、複数のデータをまとめて送信する場合には、送信される複数のデータ間の測定順序が、演算装置130において分かるようになっていれば、同じタイミングで測定された第1センサユニット110から第5センサユニット118の測定データを用いて代表値を決定することができる。
【0074】
上記では、各センサユニットがタイマと記憶部とを持ち、一定間隔で演算装置130に測定データを送付しているが、そうでなくてもよい。例えば、演算装置130がタイマを持ち、一定間隔(例えば1時間毎)で各センサユニットと通信して(例えば、各センサユニットに測定データの送信要求をポーリングにより送信して)温度及び湿度の現在値を取得し、演算装置130の記憶部172にデータロギング(時系列データとして記憶)してもよい。
【0075】
上記では、メッセージを表示部178に提示する場合を説明したが、これに限定されない。音響(音声を含む)又はLED(Light Emitting Diode)の点灯等により提示してもよく、さらには、中央監視盤等の遠隔装置への表示又は電子メール送付等により、水分侵入の異常の発生を提示してもよい。
【0076】
学習期間については、特に屋外盤については季節によって外部環境(日射強度及び日射角度、外気温、降水、風速及び風向等)が変わるため、水分侵入の異常検知の対象期間(以下、検知期間という)に近い季節を含むことが望ましい。例えば、後述する実施例のように、3か月間を学習期間として次の月を検知期間とする。また、前年の測定データがあれば、検知期間に対応する前年の期間の測定データを、学習期間の測定データとすることが望ましい。
【0077】
学習期間はデータ数を確保する観点から2か月間以上、望ましくは3か月間程度が望ましい。一方、学習期間を長くとりすぎると検知期間とは条件が大きく異なるデータも含まれるため、検知精度が低下する。最長でも6か月間程度が望ましい。測定データを記録するタイミング(例えば時間間隔)については、10分間から1時間の間で適宜決定すればよい。通常、1時間に1回、測定データを記録できればよい。
【実施例0078】
以下に実験結果を示し、本発明の有効性を示す。
図1と同様に、屋外に設置された5台の電気設備で構成された列盤の各盤にセンサユニットを配置して、温度及び湿度の測定を行った。測定された温度データ及び相対湿度データを、それぞれ
図7及び
図8に示し、上記したように解析した結果を
図9から
図13に示す。
図7から
図13において、左端の「センサ」の列に示したS1からS5は、
図1の第1センサユニット110から第5センサユニット118と同様に配置されたセンサユニットに対応する。
【0079】
図7は、各センサユニットの温度センサにより測定されたデータを示す。縦軸は温度であり、横軸は日である。10月23日から翌年の3月31日までの期間、1時間毎、温度測定を行った。上記した学習期間は、10月23日から翌年の1月31日までである(
図7のセンサユニットS1に関するグラフの矢印参照)。学習期間に測定されたデータ総数は2407である。学習期間中の測定データを用いて、上記したように、ポイントを決定するためのしきい値を決定した。また、センサユニットS3(第3センサユニットに対応)が設定された盤には加熱源(即ちヒータ)を設置し、学習期間後(即ちしきい値が決定された後)加熱した(
図7のセンサユニットS3に関するグラフの矢印参照)。具体的には、54Wのヒータにより、2月2日から2月10日の間加熱した。2月10日に90Wのヒータに交換し、2月10日から2月17日の間加熱した。2月17日に144Wのヒータに交換し、2月17日から2月24日の間加熱した。2月24日に36Wのヒータに交換し、2月24日から3月3日の間加熱した。
【0080】
図8は、各センサユニットの湿度センサにより測定されたデータを示す。縦軸は相対湿度であり、横軸は日である。上記したように、10月23日から翌年の3月31日までの期間、1時間毎、温度測定を行った。
【0081】
図9は、
図7に示した温度データ及び
図8に示した相対湿度データから、上記の式1により算出された容積絶対湿度を示す。
【0082】
図10は、
図9に示した容積絶対湿度のトレンド(即ちグラフ)を対象として、上記のように算出した乖離値Xmのトレンドを示す。
図11は、
図10に示した乖離値Xmに関して、ウインドウを12時間として算出した移動平均値Xavm1(m=1から5)のトレンドを示す。
図12は、
図10に示した乖離値Xmに関して、ウインドウを24時間として算出した移動平均値Xavm2(m=1から5)のトレンドを示す。
図13は、
図10に示した乖離値Xmに関して、ウインドウを72時間として算出した移動平均値Xavm3(m=1から5)のトレンドを示す。
【0083】
図10に示した乖離値Xm及び
図11から
図13に示した移動平均値Xavmj(j=1から3)の学習期間におけるデータを用いて、上記したようにしきい値を算出した。その結果を
図14に示す。
図14において、しきい値Th1からTh4をテーブル形式により示している。即ち、センサユニットSm(m=1から5)の各テーブルにおいて、乖離値Xm及び移動平均値Xavmj(j=1から3)に関するしきい値Th1からTh4を示す。上記したように、しきい値Th1からTh4は、ポイント0から4の境界値である。
【0084】
上記したように、しきい値Th1(=K2)及びTh2(=K1)は、それぞれ1ポイント及び2ポイントを乖離値Xmに対応させるしきい値と言え、しきい値に対応する乖離値は、上位2.275%、0.135%に相当する乖離値である。しきい値Th3(=2×K1-K2)及びTh4(=2×K1-K3)は、それぞれ3ポイント及び4ポイントを乖離値Xmに対応させるしきい値と言え、K1、K2及びK3から算出される。しきい値Th3(=2×K1-K2)及びTh4(=2×K1-K3)に対応する乖離値は、それぞれ4σ及び5σに相当する乖離値である。
【0085】
図14に示したしきい値を、移動平均値を算出する期間(即ちウインドウ)に関して比較すると、ウインドウが大きくなるほど、しきい値が小さくなっている。したがって、ウインドウが大きくなるほど、水分侵入の異常検知のレスポンスは低下するが、水分侵入の異常検知の感度は高くなることが分かる。なお、レスポンスとは、異常(即ち水分侵入)を検知するのに必要な連続時間を意味し、連続時間が長いとレスポンスは低下する。移動平均値を算出するウインドウが比較的長いと、水分侵入の異常が発生しても、突発的な水分侵入であれば、ウインドウが比較的短い場合よりも移動平均値が小さくなる。したがって、移動平均値を算出するウインドウが比較的長いと、水分侵入の異常が連続して発生していなければ検知しにくく(即ち、検知に必要な連続時間が長く)、レスポンスは低い。逆に、瞬時値である乖離値Xmを用いることにより、感度は低いが、レスポンスの高い水分侵入の異常検知を実現できる。
【0086】
図14に示したしきい値を用いて、
図10に示した乖離値Xm(m=1から5)及び
図11から
図13に示した移動平均値Xavmj(j=1から3)の各々に対応するポイントを決定した。その結果を
図15から
図18に示す。即ち、
図15は、
図10に示した乖離値Xm(m=1から5)に対応するポイントを示す。
図16は、
図11に示した、ウインドウを12時間とした移動平均値Xavm1(m=1から5)に対応するポイントを示す。
図17は、
図12に示した、ウインドウを24時間とした移動平均値Xavm2(m=1から5)に対応するポイントを示す。
図18は、
図13に示した、ウインドウを72時間とした移動平均値Xavm3(m=1から5)に対応するポイントを示す。なお、
図15から
図18において、上記したように、センサユニットS3を配置した盤の加熱期間を矢印により示している。
【0087】
3ポイント及び4ポイントはレアケースであるから、このようなポイントが発生又は発生頻度が高まると、異常発生の疑いがあると判断ができる。乖離値及び移動平均値に関するポイントを示した
図15から
図18を見ると、センサユニットS1、S2、S4及びS5については、学習期間以降も“2”を上回るポイントの発生頻度は低い。ポイントは最大でも“3”であり、ポイントが“3”である頻度も低く、連続して発生していない。これに対して、センサユニットS3に関しては、
図16から
図18のいずれにおいても、過熱を模擬的に実施した期間(即ち加熱期間)において、高ポイント(即ち“3”以上のポイント)が発生していることが分かる。過熱源により盤内の対流、及びそれに伴う外気導入が促進されたためと考えられる。また、乖離値に関するポイントを示した
図15においにおいては、センサユニットS3に関して、“3”以上の高ポイントは発生していないが、これは実験時の異常の種類が、乖離値による検知が難しいものであったためと考えられる。配電盤への水分侵入が顕著な場合(外部からの雨水侵入等)には、乖離値によっても異常を検知可能である。乖離値を用いることにより、異常検知の応答性を高くでき、異常発生から検知までの時間を短くできる。
【0088】
図16から
図18に示した加熱期間におけるセンサユニットS3のポイントの変化を比較すると、移動平均値を算出する期間(即ちウインドウ)による異常検知の感度を比較できる。今回は1週間ずつ一定電力(即ち、順に54W、90W、144W及び36W)により加熱を行っており、ウインドウをより大きくして算出した移動平均値に対応するポイント(
図17及び
図18参照)が、より感度が高く、54W以上のヒータによる過熱について異常検知できている。即ち、ウインドウを24時間及び72時間とした場合に、54W、90W及び144Wにより加熱した期間である2月2日から2月24日の間、“3”以上のポイントが発生し、その頻度は、ウインドウを72時間とした場合が、3種類のウインドウのうち最も高い。また、ウインドウを72時間とした移動平均値に対応するポイント(
図18参照)は、発熱量(即ち、ヒータの電力量)の増加に応じて、高ポイントが継続する時間が長くなっていることが分かる。このように、ウインドウが異なる複数の移動平均値に対応するポイントを、水分侵入の異常検知に用いることにより、検知感度を優先した検知とレスポンスを優先した検知の両方を実施できる。
【0089】
図19は、4ポイントに関するしきい値Th4の算出方法を変更して、センサユニットS3に関するデータを解析した結果を示す。即ち、
図14に示したTh4=2×K1-K3の代わりに、Th4=K1+0.08とした。しきい値Th1からTh3にしては、
図14に示したものと同じである。
図19のグラフを、
図16から
図18におけるセンサユニットS3に関するグラフと比較すると、
図19においては、加熱期間においても最大3ポイントであり、何らかの異常が発生している可能性はある。しかし、水分侵入に至っている可能性は低いと推定できる。
【0090】
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。