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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120331
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】情報送信装置及び交通情報配信装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027060
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】古川 寿也
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB17
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC27
5H181DD07
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL08
5H181MC19
5H181MC22
(57)【要約】
【課題】交通の異常状態に関する情報を適切に伝達するとともに取り扱うデータ量が過大となることを防止した情報送信装置等を提供する。
【解決手段】車両に搭載され取得した情報をサーバSに送信する情報送信装置1を、サーバと通信を行う通信部40と、情報送信が必要な異常状態を判別する異常状態判別部10と、異常状態と判別された場合に通信部からサーバへ所定の一次情報を送信させる一次情報出力部30と、一次情報の送信に応じてサーバが送信する二次情報リクエストを受信した場合にのみ通信部から前記サーバへ一次情報よりもデータ容量が大きい二次情報を送信させる二次情報出力部30とを備える構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され取得した情報をサーバに送信する情報送信装置であって、
前記サーバと通信を行う通信部と、
情報送信が必要な異常状態を判別する異常状態判別部と、
前記異常状態と判別された場合に前記通信部から前記サーバへ所定の一次情報を送信させる一次情報出力部と、
前記一次情報の送信に応じて前記サーバが送信する情報リクエストを受信した場合にのみ前記通信部から前記サーバへ前記一次情報よりもデータ容量が大きい二次情報を送信させる二次情報出力部と
を備えることを特徴とする情報送信装置。
【請求項2】
前記異常状態判別部は、前記車両の減速状態、操舵状態、加速状態を含む運転状態に基づいて前記異常状態を判別し、
前記一次情報は、前記運転状態に関する情報、及び、前記車両の位置情報を含み、
前記二次情報は、前記車両周辺の環境を認識するセンサの出力データを含むこと
を特徴とする請求項1に記載の情報送信装置。
【請求項3】
前記車両の乗員が異常時に操作する操作部を有し、
前記異常状態判別部は、前記操作部の操作を検出した場合には前記運転状態に関わらず前記異常状態であると判別すること
を特徴とする請求項2に記載の情報送信装置。
【請求項4】
情報送信装置が搭載された車両から送信された情報に基づいて交通情報を生成し、前記交通情報を前記車両の周辺の他車両に配信するサーバを有する交通情報配信装置であって、
前記サーバは、前記情報送信装置から送信された異常状態に関する一次情報、及び、前記一次情報よりもデータ容量が大きい二次情報を蓄積する記憶媒体と、
前記一次情報の受信に応じて、同一の異常状態に係る受信済みの二次情報を検索する検索処理部と、
受信済みの二次情報の蓄積量が所定以下である場合に、前記一次情報を送信した前記情報送信装置に対して前記二次情報の送信を要求する情報リクエストを送信する情報リクエスト生成部と、
前記一次情報及び前記二次情報に基づいて前記他車両に配信される交通情報を生成する交通情報生成部と、
前記交通情報を前記他車両に配信する交通情報配信部と
を備えることを特徴とする交通情報配信装置。
【請求項5】
前記交通情報配信部は、同一の異常状態に係る前記一次情報の蓄積数と、同一の異常状態に係る前記一次情報の蓄積開始からの経過時間の少なくとも一方の増加に応じて、前記交通情報が他車両に配信される範囲を拡大すること
を特徴とする請求項4に記載の交通情報配信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される情報送信装置、及び、この情報送信装置が送信した情報に基づいて交通情報を他車両に配信する交通情報配信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等が通行する交通情報の取得等に関する技術として、例えば特許文献1には、交通通信システムにおいて、各車両の処理負荷の増大を抑制しつつ、交通障害物の有無及びその位置について適切な判定を行うため、基地局は、車両から送信される情報を情報に基づいて、道路における車両の走行経路を含む走行挙動を特定し、道路上を走行する複数の車両のそれぞれについて特定された走行挙動に対して統計又は機械学習を行う第1処理と、第1処理の結果に基づいて、道路上の交通障害物の有無及び交通障害物の位置について判定する第2処理とを実行することが記載されている。
特許文献2には、対向車両とすれ違った地点に障害物が存在すると誤判定する可能性を低減する障害物判定システムにおいて、障害物を回避する車両の挙動である回避挙動を検出する回避挙動検出部と、回避挙動が生じた道路が対向車両の回避を要する道路でない場合に、障害物が存在していると判定する障害物判定部とを備え、対向車両の回避を要する道路で回避挙動があった場合には、障害物が存在していると判定しないことが記載されている。また、車両の挙動が所定の条件を満たした場合に、回避挙動を検出するとともに、障害物が存在していると判断した場合に、回避挙動が生じた地点を撮像した撮像画像を障害物画像配信サーバに送信することが記載されている。
特許文献3には、道路上の障害物を車両の運転者に知らせる交通障害物通知システムにおいて、車道走行中の第1の車両の位置を車線レベルの精度で表す複数の位置データを収集して車線レベルの精度で表された経路履歴データを構築し、第2の車両が、無線通信によって受信された経路履歴データに基づいて、第2の車両が走行している車線上に交通障害物が存在しているか否かを決定し、障害物の存在を記述する勧告を第2の車両の運転者に提供することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021- 22221号公報
【特許文献2】特開2018- 97590号公報
【特許文献3】特開2017-228286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行中の車両が、渋滞最後尾や道路上の障害物などの異常状態に関する情報を取得した場合に、交通情報を配信可能なサーバを介して後続車両と情報を共有し、後続車両が事前に情報を取得できれば、事故防止の観点から好ましい。
このような情報は、状況を把握する観点からは例えばカメラ等の各種センサの出力データ等の詳細な情報を含むことが好ましいが、一方で全ての車両から大容量のデータをサーバへ送信した場合、通信負荷やデータ処理負荷が過大となることが懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、交通の異常状態に関する情報を適切に伝達するとともに取り扱うデータ量が過大となることを防止した情報送信装置及び交通情報配信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る情報送信装置は、車両に搭載され取得した情報をサーバに送信する情報送信装置であって、前記サーバと通信を行う通信部と、情報送信が必要な異常状態を判別する異常状態判別部と、前記異常状態と判別された場合に前記通信部から前記サーバへ所定の一次情報を送信させる一次情報出力部と、前記一次情報の送信に応じて前記サーバが送信する情報リクエストを受信した場合にのみ前記通信部から前記サーバへ前記一次情報よりもデータ容量が大きい二次情報を送信させる二次情報出力部とを備えることを特徴とする。
これによれば、異常状態を判別した場合に直ちに送信される一次情報のデータ容量を二次情報に対して抑制し、サーバから情報リクエストを受信した場合にのみ一次情報に対してデータ容量が大きい二次情報を送信することにより、複数の車両からサーバへの大容量のデータ送信が集中することを防止し、交通の異常状態に関する情報を適切に伝達するとともに取り扱うデータ量が過大となることを防止できる。
【0006】
本発明において、前記異常状態判別部は、前記車両の減速状態、操舵状態、加速状態を含む運転状態に基づいて前記異常状態を判別し、前記一次情報は、前記運転状態に関する情報、及び、前記車両の位置情報を含み、前記二次情報は、前記車両周辺の環境を認識するセンサの出力データを含む構成とすることができる。
これによれば、車両の運転状態に基づいて異常状態を適切に判別することができる。
また、一次情報のデータ容量を効果的に低減するとともに、二次情報としてセンサの出力データを送信することにより、情報リクエストを受けた場合には、二次情報として異常状態に係る詳細な情報を提供することができる。
【0007】
本発明において、前記車両の乗員が異常時に操作する操作部を有し、前記異常状態判別部は、前記操作部の操作を検出した場合には前記運転状態に関わらず前記異常状態であると判別する構成とすることができる。
これによれば、乗員が異常状態を認識し一次情報の送信を希望した場合に、乗員の意図に忠実に一次情報の送信を行うことができる。
この場合、操作部として、例えばハザードランプの点灯を行うハザードスイッチや、専用の情報提供スイッチを用いることができる。
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る交通情報配信装置は、情報送信装置が搭載された車両から送信された情報に基づいて交通情報を生成し、前記交通情報を前記車両の周辺の他車両に配信するサーバを有する交通情報配信装置であって、前記サーバは、前記情報送信装置から送信された異常状態に関する一次情報、及び、前記一次情報よりもデータ容量が大きい二次情報を蓄積する記憶媒体と、前記一次情報の受信に応じて、同一の異常状態に係る受信済みの二次情報を検索する検索処理部と、受信済みの二次情報の蓄積量が所定以下である場合に、前記一次情報を送信した前記情報送信装置に対して前記二次情報の送信を要求する情報リクエストを送信する情報リクエスト生成部と、前記一次情報及び前記二次情報に基づいて前記他車両に配信される交通情報を生成する交通情報生成部と、前記交通情報を前記他車両に配信する交通情報配信部とを備えることを特徴とする。
これによれば、上述した情報送信装置に係る発明と同様の効果を得ることができる。
【0009】
本発明において、前記交通情報配信部は、同一の異常状態に係る前記一次情報の蓄積数と、同一の異常状態に係る前記一次情報の蓄積開始からの経過時間の少なくとも一方の増加に応じて、前記交通情報が他車両に配信される範囲を拡大する構成とすることができる。
これによれば、個々の異常状態が周辺の交通に影響を及ぼす範囲を適切に反映させて交通情報が他車両に配信される範囲を設定することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、交通の異常状態に関する情報を適切に伝達するとともに取り扱うデータ量が過大となることを防止した情報送信装置及び交通情報配信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した情報送信装置の実施形態の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明を適用した交通情報配信装置の実施形態の構成を模式的に示す図である。
図3】実施形態の情報送信装置と交通情報配信装置の動作を示すフローチャートである。
図4】通常の渋滞最後尾における車両の運転操作状態と姿勢の推移の一例を示す図である。
図5】通常の渋滞最後尾における車両の運転操作状態と姿勢の推移の他の一例を示す図である。
図6】事故回避が必要な渋滞最後尾における車両の運転操作状態と姿勢の推移の一例を示す図である。
図7】落下物、事故等の障害物を回避する際における車両の運転操作状態と姿勢の推移の一例を示す図である。
図8】ワインディングロードを走行する際における車両の運転操作状態と姿勢の推移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した情報送信装置及び交通情報配信装置の実施形態について説明する。
実施形態の情報送信装置は、例えば公道上を走行する複数の自動車等の車両に搭載され、走行中に渋滞最後尾や障害物(事故車両、落下物等)等に遭遇した異常状態を検出した場合、例えば地上に設けられるサーバである交通情報配信装置に送信するものである。
実施形態の交通情報配信装置は、各車両の情報送信装置から送信された情報が集積され、この情報に基づいて、周辺の車両に異常状態を報知する交通情報を配信するものである。
【0013】
図1は、実施形態の情報送信装置の構成を模式的に示す図である。
情報送信装置1は、異常状態判別ユニット10、環境認識ユニット20、情報送信ユニット30、通信装置40等を有する。
各ユニットは、例えばCPU等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有するコンピュータとして構成することができる。
また、各ユニットは、例えばCAN通信システム等の車載LANを介して、あるいは直接に、相互に通信を行うことが可能となっている。
【0014】
異常状態判別ユニット10は、各種センサの出力等に基づいて、自車両が走行する交通環境に渋滞最後尾や障害物(事故車両、落下物等)に遭遇するなどの異常が発生したことを判別するものである。
異常状態判別ユニット10には、車速センサ11、エンジン制御ユニット12、ブレーキ制御ユニット13、舵角センサ14、加速度センサ15、ヨーレートセンサ16、ハザードスイッチ17、情報提供スイッチ18、交通情報取得装置19等が直接に、あるいは、CAN通信システム等の車載LANを介して接続されている。
【0015】
車速センサ11は、車両の走行速度(車速)を検出するセンサである。
車速センサ11は、車輪を回転可能に支持するハブベアリングハウジングに設けられ、車輪の回転に応じた車速信号を出力する。
【0016】
エンジン制御ユニット12は、車両の走行用動力源であるエンジン及びその補機類を統括的に制御する制御装置である。
エンジン制御ユニット12は、例えば、図示しないアクセルペダルの操作量を検出してドライバ要求トルクを設定し、エンジンが実際に発生するトルクがドライバ要求トルクと一致するようエンジンの出力を制御する。
エンジン制御ユニット12は、ドライバのアクセル操作量に関する情報を異常状態判別ユニット10に伝達する。
【0017】
ブレーキ制御ユニット13は、車両のサービスブレーキである図示しない液圧式ブレーキの制動力を制御する制御装置である。
ブレーキ制御ユニット13は、例えば、ドライバが操作するブレーキペダルと連動するマスタシリンダのブレーキフルード液圧(制動力と相関する)を検出し、異常状態判別ユニット10に伝達する。
【0018】
舵角センサ14は、車両の操向輪(典型的には前輪)に設けられた操舵装置の舵角を検出するセンサである。
加速度センサ15は、車体に作用する前後方向及び左右方向(車幅方向)の加速度を検出するセンサである。
ヨーレートセンサ16は、車体の鉛直軸回りの自転速度であるヨーレートを検出するセンサである。
【0019】
ハザードスイッチ17は、ドライバ等のユーザが、自車両外部に対して危険状態等を警告するハザードランプの点灯操作を入力するスイッチである。
情報提供スイッチ18は、ドライバ等のユーザが、渋滞、障害物等の異常状態に遭遇した際に、サーバSへの情報送信を希望する場合に操作するスイッチである。
ハザードスイッチ17、情報提供スイッチ18が操作された場合には、異常状態判別ユニット10は、乗員(典型的にはドライバ)が自ら異常状態を認識し、外部への通報を意図していると推定することができる。
交通情報取得装置19は、例えばVICS(登録商標)等の公知の路車間通信システムを用いて、外部から提供される渋滞や障害物等に関する交通情報を取得するものである。
【0020】
環境認識ユニット20は、各種センサの出力等に基づいて、自車両周辺の環境を認識する装置である。
環境認識ユニット20には、ステレオカメラ装置21、ミリ波レーダ装置22、レーザスキャナ装置23、ナビゲーション装置24等が接続されている。
【0021】
ステレオカメラ装置21は、自車両の前方を可視光カメラ等の撮像装置によって撮像するものである。
ステレオカメラ装置21は、例えば、水平方向に所定の基線長だけ離間して配置された一対の撮像装置を有する。
このような一対の撮像装置が撮像した画像データに公知のステレオ画像処理を行うことにより、ステレオカメラ装置21は、自車両前方の道路形状、障害物の種類及び形状、傷害物の自車両に対する相対位置などを検出可能となっている。
【0022】
ミリ波レーダ装置22は、例えば30乃至300GHzの周波数帯域の電波を用いたレーダ装置であって、物体の有無及び自車両に対する物体の相対位置を検出する機能を備えている。
【0023】
レーザスキャナ装置23は、例えば近赤外レーザ光をパルス状に照射して車両周辺を走査し、反射光の有無及び反射光が戻るまでの時間差に基づいて、物体の有無、車両に対する物体の相対位置、物体の形状等を検出する機能を備えている。
【0024】
ナビゲーション装置24は、測位装置、及び、高精度地図データベースを備えている。
測位装置は、例えばGPS等の準天頂衛星システムの受信機や、路車間通信装置、自律航法用のジャイロセンサ等を有し、自車両の現在位置を検出するものである。
高精度地図データベースは、自車両の走行が想定される範囲内の高精度3次元地図データ(HDマップ)に係るデータを蓄積するものである。
このデータは、例えば、車線、路肩縁、車線区分線(いわゆる白線)などを、例えばcm単位の分解能で、緯度、経度、高度の情報を含む3次元データとしている。
【0025】
情報送信ユニット30は、異常状態判別ユニット10が異常状態を判別した場合に、当該異常状態に関する情報を、通信装置40を介してサーバSに送信するものである。
情報送信ユニット30における情報送信処理に関しては、後に詳しく説明する。
情報送信ユニット30は、本発明の一次情報出力部、二次情報出力部として機能する。
通信装置40は、情報送信ユニット30とサーバSとの間で、例えば無線通信などによって情報の送受信を行う装置である。
【0026】
実施形態の交通情報配信装置は、情報送信装置1と例えばインターネット等の通信網を介して接続されたサーバSを備えている。
図2は、実施形態の交通情報配信装置の構成を模式的に示す図である。
サーバSは、通信装置110、記憶媒体120、検索処理部130、二次情報リクエスト生成部140、交通情報生成部150、交通情報配信部160等を備えている。
【0027】
通信装置110は、情報送信装置1の通信装置40と通信を行うものである。
記憶媒体120は、情報送信装置1から送信される異常状態に関する情報(一次情報及び二次情報)を蓄積するものである。
検索処理部130は、記憶媒体120に蓄積された複数の一次情報、二次情報から、特定の異常状態に係る情報を検索し抽出するものである。
【0028】
二次情報リクエスト生成部140は、情報送信装置1から受信した一次情報に関して、検索処理部130が記憶媒体120から二次情報を発見しない場合に、当該情報送信装置1に対して、二次情報を送信することを要求する信号(二次情報リクエスト)を生成するものである。
生成された二次情報リクエストは、通信装置110を介して、一次情報を送信してきた情報送信装置1に送信される。
【0029】
交通情報生成部150は、記憶媒体120に蓄積された一次情報、二次情報に基づいて、他車両に配信される交通情報を生成するものである。
交通情報配信部160は、交通情報生成部150が生成した交通情報を、異常状態が検出された地点の周辺を走行する他車両に配信するものである。
【0030】
以下、実施形態の情報送信装置と交通情報配信装置の動作について説明する。
図3は、実施形態の情報送信装置と交通情報配信装置の動作を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0031】
<ステップS01:運転状態・挙動検出>
情報送信装置1の異常状態判別ユニット10は、各センサ等の出力に基づいて、車両の運転状態及び挙動に関する情報を検出する。
車両の運転状態に関する情報として、例えば、車速、アクセル操作(ドライバ要求トルク)、ブレーキ操作(マスタシリンダ液圧)、操舵操作(舵角)などが検出される。
また、挙動に関する情報として、例えば、車体に作用する加速度、ヨーレート等が検出される。
その後、ステップS02に進む。
【0032】
<ステップS02:異常状態判別>
情報送信装置1の異常状態判別ユニット10は、ステップS01で検出した情報に基づいて、自車両が例えば渋滞最後尾や障害物(例えば事故車両、落下物等)に遭遇した異常状態にあるか否かを判別する。
異常状態の判別は、車両の運転状態の推移、及び、挙動に応じて推定される姿勢の推移に基づいて行われる。
【0033】
車両の姿勢は、例えば、以下の三種類に分類して推定することができる。
(1)安定状態:車体に作用する前後方向、左右方向の加速度がいずれも所定の閾値未満である状態
(2)荷重移動状態:車体に作用する前後方向、左右方向の加速度の少なくとも一方が所定の閾値以上でありかつ横加速度とヨーレートの方向が一致している状態
(3)不安定状態:車体に作用する前後方向、左右方向の加速度の少なくとも一方が所定の閾値以上でありかつ横加速度とヨーレートの方向が逆転している状態
不安定状態は、典型的には、車両挙動が例えばオーバーステア等によって乱れた後に、ドライバが回復操作を行っている際に発生する。
【0034】
図4は、通常の渋滞最後尾における車両の運転操作状態と姿勢の推移の一例を示す図である。
図5は、通常の渋滞最後尾における車両の運転操作状態と姿勢の推移の他の一例を示す図である。
通常の渋滞最後尾においては、アクセルオフの時間が長く、かつ、ブレーキ操作の頻度が高いことが特徴である。
車両の姿勢としては、ブレーキ操作に応じて荷重移動状態となる以外は安定状態であり、乱れはほとんどみられない。
【0035】
図6は、事故回避が必要な渋滞最後尾における車両の運転操作状態と姿勢の推移の一例を示す図である。
図7は、落下物、事故等の障害物を回避する際における車両の運転操作状態と姿勢の推移の一例を示す図である。
これらの状態においては、ブレーキとステアリング操作が同時に行われる時間が長く、車両の姿勢も不安定となる時間が発生している。
また、車両の姿勢が不安定となった後に、ドライバが車両挙動を安定化させるためのステアリング操作時間が長くなっている。
【0036】
以上説明した状況においては、異常状態判別ユニット10は、サーバSへの通報(一次情報の送信)が必要な異常状態であると判別する。
このとき、情報送信ユニット30は、異常状態判別ユニット10、環境認識ユニット20に接続された各センサの出力、及び、異常状態が判別された地点の位置情報(例えば緯度及び経度)を所定期間にわたって記録する。
【0037】
一方、以下説明するものは通報が不要な状態(非以上状態)の一例である。
図8は、ワインディングロードを走行する際における車両の運転操作状態と姿勢の推移の一例を示す図である。
ワインディングロードを走行する際には、ブレーキ、ステアリング操作、アクセルオン、アクセルオフが順次繰り返されるが、ステアリング操作はドライバが意図する走行ラインをトレースするよう慎重に行われることが通常であり、車両姿勢が不安定状態になることは少ない。
【0038】
また、異常状態判別ユニット10は、ハザードスイッチ17又は情報提供スイッチ18にオン操作が入力された場合には、乗員が異常状態を認識しているものとして、自車両が異常状態にあるものと判別する。
また、通常の渋滞最後尾においては、ハザードスイッチ17又は情報提供スイッチ18のいずれかがオン操作されたことが、異常状態と判別される条件としてもよい。
【0039】
一方、異常状態判別ユニット10は、上記ロジックにより異常状態が判別された場合であっても、交通情報取得装置19が既に同様の情報を取得している場合には、重複した情報の送信を抑制するため、異常状態とは判別しない構成とすることができる。
異常状態判別ユニット10が異常状態を判別した場合はステップS03に進み、その他の場合はステップS01に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0040】
<ステップS03:一次情報送信>
情報送信装置1の情報送信ユニット30は、ステップS02において判別した異常状態に係る一次情報を生成し、通信装置40を介してサーバSに送信する。
一次情報は、例えば、異常状態を判別した箇所の位置情報(例えば、緯度及び経度)、走行方向、及び、運転操作状態に関する各センサの出力(アクセルペダル、ブレーキペダルの操作状態、舵角等)に関する情報を含む。
一次情報は、後述する二次情報よりもデータ容量が小さい低容量情報である。
その後、ステップS04に進む。
【0041】
<ステップS04:位置データ・状況分析>
サーバSの検索処理部130は、受信した一次情報に基づいて、位置データ及び異常状態の状況を分析する。
その後、ステップS05に進む。
【0042】
<ステップS05:重複データ有無判断>
検索処理部130は、ステップS04において分析した一次情報の位置データ及び異常状態に基づいて、同一箇所又は隣接する箇所において、同様の異常状態に係るデータ(重複データ)が既に記憶媒体120に蓄積されているか否かを判別する。
重複データが存在する場合には、ステップS08に進み、重複データが存在しない場合には、ステップS06に進む。
【0043】
<ステップS06:二次情報リクエスト送信>
サーバSの二次情報リクエスト生成部140は、ステップS03において送信された一次情報に係る異常状態について、より詳細かつデータ容量が大きい情報である二次情報の送信を要求する信号(二次情報リクエスト)を生成し、通信装置110から情報送信装置1へ送信する。
その後、ステップS07に進む。
【0044】
<ステップS07:二次情報送信>
二次情報リクエストを受信した情報送信装置1の情報送信ユニット30は、現在発生している異常状態に係る二次情報を生成し、サーバSに送信する。
二次情報は、例えば、ステレオカメラ装置21、ミリ波レーダ装置22、レーザスキャナ装置23が出力した当該異常状態に係るデータ(例えば渋滞最後尾、障害物の画像データ等)や、異常状態が発生した地点周辺の詳細地図データ等を含む。
二次情報のデータ容量は、上述した一次情報に対して大きい。
二次情報の送信後、ステップS08に進む。
【0045】
<ステップS08:サーバ内データ蓄積>
サーバSの記憶媒体120は、情報送信装置1から受信した一次情報及び二次情報を記録し、検索可能なデータ構造を有するデータベースとして蓄積する。
その後、ステップS09に進む。
【0046】
<ステップS09:交通情報生成・配信範囲設定>
サーバSの交通情報生成部150は、ステップS03で送信された一次情報に係る異常状態を周辺の他車両に報知する交通情報を生成する。
交通情報は、異常状態の発生箇所、異常状態の種類(属性)、二次情報から生成された異常状態に係る画像データなどを含む。
また、交通情報生成部150は、生成した交通情報を配信すべき範囲を設定する。
ここで、配信範囲は、当該異常状態に係る最初の一次情報を受信してからの時間が長くなることに応じて、広くなるよう設定することができる。
また、配信範囲は、同一の異常状態に係る重複した一次情報の個数の増大に応じて、広くなるよう設定することができる。
例えば、最初の一次情報を取得してからの時間、重複した一次情報の個数にそれぞれ所定の閾値を設けて、閾値を超過した場合に段階的に配信範囲が拡大する構成とすることができる。
このような配信範囲の設定を行うことにより、異常状態の周辺への影響度合いの高さに応じた適切な配信範囲を設定することができる。
その後、ステップS10に進む。
【0047】
<ステップS10:交通情報配信>
交通情報配信部160は、ステップS09において生成した交通情報を、ステップS09において設定した配信範囲内の他車両に配信する。
その後、一連の処理を終了する。
【0048】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)異常状態を判別した場合に情報送信装置1から直ちに送信される一次情報のデータ容量を二次情報に対して抑制し、サーバSから二次情報リクエストを受信した場合にのみ一次情報に対してデータ容量が大きい二次情報を送信することにより、複数の車両からサーバSへの大容量のデータ送信が集中することを防止し、交通の異常状態に関する情報を適切に伝達するとともに取り扱うデータ量が過大となることを防止することができる。
(2)車両の減速状態、操舵状態、加速状態を含む運転状態に基づいて異常状態を判別することにより、異常状態を適切に判別することができる。
(3)一次情報は、運転状態に関する情報、及び、車両の位置情報を含み、二次情報は、車両周辺の環境を認識するセンサの出力データを含むことにより、一次情報のデータ容量を効果的に低減するとともに、二次情報としてセンサの出力データを送信することで、二次情報リクエストを受けた場合には異常状態に係る詳細な情報を提供することができる。
(4)車両の乗員が異常時に操作するハザードスイッチ17及び情報提供スイッチ18を有し、各スイッチの操作を検出した場合には運転状態に関わらず異常状態であると判別することにより、乗員が異常状態を認識し一次情報の送信を希望した場合に、乗員の意図に忠実に一次情報の送信を行うことができる。
(5)交通情報配信部160は、同一の異常状態に係る一次情報の蓄積数と、同一の異常状態に係る一次情報の蓄積開始からの経過時間の少なくとも一方の増加に応じて、交通情報が他車両に配信される範囲を拡大することにより、個々の異常状態が周辺の交通に影響を及ぼす範囲を適切に反映させて交通情報が他車両に配信される範囲を設定することができる。
【0049】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)情報送信装置及び交通情報配信装置の構成は、上述した実施形態に限定されることなく、適宜変更することができる。
例えば、異常状態の判別に用いるセンサの構成や、二次情報に用いられる情報を出力するセンサの構成は、適宜変更することができる。
(2)情報送信の対象となる異常状態の種類や判別ロジックは、上述した実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
(3)実施形態においては、重複する一次情報が蓄積されていない場合にのみ二次情報の送信を情報送信装置に要求しているが、本発明はこれに限らず、二次情報を複数の車両(一次情報を送信した車両の一部)に搭載された情報送信装置から取得してもよい。この場合であっても、全ての車両から二次情報に相当する情報を取得する場合に対して、大容量データの集中を抑制することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 情報送信装置 10 異常状態判別ユニット
11 車速センサ 12 エンジン制御ユニット
13 ブレーキ制御ユニット 14 舵角センサ
15 加速度センサ 16 ヨーレートセンサ
17 ハザードスイッチ 18 情報提供スイッチ
19 交通情報取得装置 20 環境認識ユニット
21 ステレオカメラ装置 22 ミリ波レーダ装置
23 レーザスキャナ装置 24 ナビゲーション装置
30 情報送信ユニット 40 通信装置
S サーバ 110 通信装置
120 記憶媒体 130 検索処理部
140 二次情報リクエスト生成部 150 交通情報生成部
160 交通情報配信部
図1
図2
図3
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図8