(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120355
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】太陽光発電システム、電力変換装置、太陽光発電方法、移動体、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05F 1/67 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
G05F1/67 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027094
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 衛郷
(72)【発明者】
【氏名】中山 崇介
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
(72)【発明者】
【氏名】本多 夏人
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420BB14
5H420CC02
5H420DD02
5H420EB26
5H420EB37
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF05
5H420LL10
(57)【要約】
【課題】効率よく最大電力点を検出することが可能な太陽光発電システム、電力変換装置、太陽光発電方法、移動体、及びプログラムを提供する。
【解決手段】太陽光発電システム1は、直列接続された複数の太陽電池クラスタ101と、太陽電池クラスタ101ごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタ101を迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、太陽電池装置の動作点を変化させながら太陽電池装置の出力電力を測定することで太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置20と、を含む。電力変換装置20は、部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行う。離散スキャンは、太陽電池装置の出力電力を測定する電圧値である電圧測定点をバイパス回路の数に応じて設定するスキャン動作である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の太陽電池クラスタと、
前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、
前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備え、
前記電力変換装置は、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行い、
前記離散スキャンは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である太陽光発電システム。
【請求項2】
前記電力変換装置は、フルスキャンを予め設定された設定周期で行い、
前記フルスキャンは、前記電圧測定点が前記離散スキャンに比べて多い前記スキャン動作である
請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記離散スキャンは、前記バイパス回路の数に応じて定まる特定のスキャン範囲での前記電圧測定点が前記フルスキャンに比べて少なく、且つ前記設定周期とは異なる周期で前記電圧測定点を測定する前記スキャン動作である
請求項2に記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記電力変換装置は、前記離散スキャンを行ってから前記設定周期に応じた時間が経過した場合、前記フルスキャンを行う
請求項3に記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記電力変換装置は、前記動作点における動作電流値としての前記太陽電池装置の出力電流値が低下した場合、前記部分影が発生していると判定する
請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
前記電力変換装置は、前記動作点における動作電圧値としての前記太陽電池装置の出力電圧値が上昇した場合、前記部分影が発生していると判定する
請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項7】
前記電力変換装置は、前記動作電圧値としての前記出力電圧値が上昇し、且つ、前記動作点における動作電流値としての前記太陽電池装置の出力電流値が低下した場合、前記部分影が発生していると判定する
請求項6に記載の太陽光発電システム。
【請求項8】
前記太陽電池装置及び前記電力変換装置は、移動体に設けられる
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の太陽光発電システム。
【請求項9】
前記電力変換装置は、前記離散スキャンと前記フルスキャンとのいずれか一方を前記スキャン動作として選択し、選択した前記スキャン動作を行う
請求項2に記載の太陽光発電システム。
【請求項10】
前記出力電力を充電可能なバッテリをさらに備え、
前記電力変換装置は、前記バッテリの充電状態が充電指標閾値より低下傾向にあり、且つ、前記部分影が発生していると判定した場合、前記フルスキャンよりも前記離散スキャンを優先的に選択する
請求項9に記載の太陽光発電システム。
【請求項11】
前記電力変換装置は、前記充電状態が前記充電指標閾値より低下傾向にあると判定する場合、前記設定周期を現在よりも短い周期に設定する
請求項10に記載の太陽光発電システム。
【請求項12】
前記出力電力を充電可能なバッテリをさらに備え、
前記電力変換装置は、前記バッテリの劣化状態が劣化指標閾値より低下傾向にあり、且つ、前記部分影が発生していると判定した場合、前記フルスキャンよりも前記離散スキャンを優先的に選択する
請求項9に記載の太陽光発電システム。
【請求項13】
前記電力変換装置は、前記劣化状態が前記劣化指標閾値より低下傾向にあると判定する場合、前記設定周期を現在よりも長い周期に設定する
請求項12に記載の太陽光発電システム。
【請求項14】
回生電力を発生可能な電動機をさらに備え、
前記電力変換装置は、前記スキャン動作を行うときに前記回生電力を利用する
請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項15】
前記電力変換装置は、予め設定された検査期間において、前記部分影の発生の判定の頻度が規定回数を超えた場合、前記太陽電池装置が故障していると判定する
請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項16】
前記電力変換装置は、前記バイパス回路の数に応じて前記電圧測定点が複数あり、且つ、前記スキャン動作により前記電圧測定点ごとの前記出力電力の極値が複数ある場合、前記部分影が発生していると判定する
請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項17】
前記バイパス回路は、前記太陽電池クラスタに並列接続されたバイパスダイオードを有し、
前記電力変換装置は、前記バイパスダイオードが規定温度よりも高い温度である場合、前記部分影が発生していると判定する
請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項18】
直列接続された複数の太陽電池クラスタと、前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置の出力側に接続される電力変換装置であって、
前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う制御部を備え、
前記制御部は、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行い、
前記離散スキャンは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である
電力変換装置。
【請求項19】
直列接続された複数の太陽電池クラスタと、
前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、
前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備える太陽光発電システムで実行する太陽光発電方法であって、
前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行うステップを有し、
前記離散スキャンを行うステップは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である
太陽光発電方法。
【請求項20】
直列接続された複数の太陽電池クラスタと、
前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、
前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備え、
前記電力変換装置は、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行い、
前記離散スキャンは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である太陽光発電システムを搭載した移動体。
【請求項21】
直列接続された複数の太陽電池クラスタと、
前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、
前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備える太陽光発電システムに、
前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行うステップを実行させ、
前記離散スキャンを行うステップは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽光発電システム、電力変換装置、太陽光発電方法、移動体、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の太陽電池を搭載した移動体が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術においては、例えば、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御が採用されることが多い。MPPT制御においては、例えば、山登り法が採用されることが多い。一般的に、電力変換装置は、山登り法等のMPPT制御を開始する前に、スキャンによって、MPPT制御の開始電圧点を決定する。そして、山登り法では、電力変換装置は、開始電圧点から少し動作電圧をずらして出力電力を測定し、測定前後の2点の電力差からより電力が大きくなる方向に動作電圧を変更し、山を登るように最適動作点に到達させる。これにより、MPPT制御は、太陽電池の出力電力を最大化させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スキャンに長時間を要すると、スキャン中は太陽電池の出力電力を取り出すことが難しいため、太陽電池の発電効率が低下する問題がある。そのため、スキャンを離散的に行うことで、スキャンに要する時間を短縮できるが、開始電圧点が最適動作点からずれている事態を生じさせる可能性が高く、山登り法等のMPPT制御に要する時間が長くなり、最適動作点に到達させるまでには結局多くの時間を要する。
【0005】
そこで、本開示は、効率よく最適動作点に到達させることができる太陽光発電システム、電力変換装置、太陽光発電方法、移動体、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る太陽光発電システムは、直列接続された複数の太陽電池クラスタと、前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備え、前記電力変換装置は、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行い、前記離散スキャンは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である。
【0007】
第2の態様に係る電力変換装置は、直列接続された複数の太陽電池クラスタと、前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置の出力側に接続される電力変換装置であって、前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う制御部を備え、前記制御部は、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行い、前記離散スキャンは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である。
【0008】
第3の態様に係る太陽光発電方法は、直列接続された複数の太陽電池クラスタと、前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備える太陽光発電システムで実行する太陽光発電方法であって、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行うステップを有し、前記離散スキャンを行うステップは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である。
【0009】
第4の態様に係る移動体は、直列接続された複数の太陽電池クラスタと、前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備え、前記電力変換装置は、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行い、前記離散スキャンは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である太陽光発電システムを搭載している。
【0010】
第5の態様に係るプログラムは、直列接続された複数の太陽電池クラスタと、前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備える太陽光発電システムに、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行うステップを実行させ、前記離散スキャンを行うステップは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、効率よく最適動作点に到達させることができる太陽光発電システム、電力変換装置、太陽光発電方法、移動体、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る太陽光発電システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図1の太陽電池モジュールが移動体としての車両に搭載される態様例を示す図である。
【
図3】
図2の車両の各面に設置される太陽電池モジュール内の太陽電池クラスタの態様例を示す図である。
【
図4】
図3の太陽電池モジュールの詳細な構成例を示す図である。
【
図5】
図1の電力変換装置の詳細な構成例を示す図である。
【
図6】
図1の電力変換装置によるスキャン動作中に日射変動が生じたときの太陽電池モジュールのP-V曲線の一例を示す図である。
【
図7】
図1の電力変換装置によるスキャン動作中に日射変動が生じたときのスキャン結果と
図1の電力変換装置によるスキャン動作中に日射変動が生じたときの本来のスキャン結果との対比例を示す図である。
【
図8】
図1の電力変換装置によるスキャン動作が離散スキャンである場合の太陽電池モジュールのP-V曲線の一例を示す図である。
【
図9】
図1の太陽電池モジュールからの出力電流値が低下し、出力電圧値が上昇するときに想定される太陽電池モジュールのP-V曲線の一例を示す図である。
【
図10】
図1の太陽電池モジュールからの出力電流値が低下し、出力電圧値が上昇後の太陽電池モジュールのP-V曲線の一例を示す図である。
【
図11】
図1の太陽電池モジュールからの出力電流値が低下し、出力電圧値が上昇したときの最大電力点の一例を示す図である。
【
図12】
図1の太陽電池モジュールからの出力電流値が低下し、出力電圧値が上昇したときの最大電力点の他の一例を示す図である。
【
図13】第1実施形態に係る太陽光発電システムにおけるスキャン動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら、実施形態に係る太陽光発電システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0014】
(1)実施形態の概要
複数の太陽電池のうちの一部の太陽電池に日陰が生じる場合、最大電力点は変化する。最大電力点とは、スキャンによって特定される最も電力が高くなる動作点である。最大電力点に基づいて、MPPT制御の開始電圧点は決定される。しかし、従来の技術では、開始電圧点が最適動作点からずれているほど、最適動作点に到達させるまでには、多くの時間を要するという問題がある。
【0015】
本開示に係る太陽光発電システムは、直列接続された複数の太陽電池クラスタと、前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、前記太陽電池装置の動作電圧を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備え、前記電力変換装置は、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行い、前記離散スキャンは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作であるという特徴を有する。
【0016】
上述の特徴により、本開示に係る太陽光発電システムは、効率よく最適動作点に到達させることを可能とする。
【0017】
(2)第1実施形態
第1実施形態は、
図1乃至
図13を用いて説明される。
【0018】
(2.1)構成例
図1は、第1実施形態に係る太陽光発電システム1の構成例を示す図である。太陽光発電システム1は、移動体に搭載可能である。太陽光発電システム1が移動体に搭載された場合、太陽光発電システム1から移動体に電力が供給可能となる。
図1に示されるように、太陽光発電システム1は、太陽電池モジュール10-1乃至10-N(N≧1)と、電力変換装置20-1乃至20-N(N≧1)と、制御部30と、バッテリ40と、記憶部50と、を備える。
【0019】
なお、太陽電池モジュール10-1乃至10-Nのいずれかが特に限定されない場合には、太陽電池モジュール10-1乃至10-Nのそれぞれは太陽電池モジュール10と称される。ここで、
図1においては、太陽光発電システム1がN個の太陽電池モジュール10を備える一例が示されるが、太陽電池モジュール10の個数は特に限定されない。
【0020】
また、電力変換装置20-1乃至20-Nのいずれかが特に限定されない場合には、電力変換装置20-1乃至20-Nのそれぞれは電力変換装置20と称される。
【0021】
また、
図1において、各機能ブロックを結ぶ実線は電力を供給する電力線として示される。また、
図1において、破線は制御指令又は各種情報、例えば、太陽電池モジュール10の動作電流値及び動作電圧値を伝達する信号線として示される。実線が電力線として示され、破線が信号線として示される点については、後述する
図5においても同様とする。
【0022】
なお、太陽光発電システム1が搭載される移動体の一例は、
図2を用いて後述される。
【0023】
太陽電池モジュール10は、太陽電池クラスタ101-1乃至101-M(M≧2)を有する。なお、太陽電池クラスタ101-1乃至101-Mのいずれかが特に限定されない場合には、太陽電池クラスタ101-1乃至101-Mのそれぞれは太陽電池クラスタ101と称される。ここで、
図1においては、各太陽電池モジュール10がM個の太陽電池クラスタ101を有する一例が示されているが、太陽電池クラスタ101の個数は特に限定されない。
【0024】
太陽電池クラスタ101は、太陽光から直流電力を発電する。各太陽電池クラスタ101から発電された直流電力を統合した総出力電力は、太陽電池モジュール10の出力電力として出力される。なお、太陽電池クラスタ101の詳細は、
図4を用いて後述される。
【0025】
各太陽電池モジュール10は、各電力変換装置20に接続される。よって、各太陽電池モジュール10から出力される出力電力は、各電力変換装置20に供給される。
【0026】
電力変換装置20は、太陽電池モジュール10から出力された出力電力としての直流電力の電圧値を予め設定された電圧値に変換する。電力変換装置20により電圧値が変換された直流電力は、バッテリ40に供給される。
【0027】
また、電力変換装置20は、制御部30の制御に基づいて、太陽電池モジュール10の動作点を予め設定された範囲で変動させることにより、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を行う。MPPT制御により、太陽電池モジュール10の発電電力は最大化され得る。
【0028】
バッテリ40は、電力変換装置20から供給される直流電流を充電可能な機能を有する。なお、
図1においては、太陽電池モジュール10から出力される出力電力が電力変換装置20を介してバッテリ40に充電される一例が示されるが、特にこれに限定されない。例えば、移動体にエアコンが搭載されている場合には、太陽電池モジュール10から出力される出力電力はエアコンの電動コンプレッサに供給されてもよい。また、例えば、太陽光発電システム1が搭載される移動体が電気自動車である場合には、太陽電池モジュール10から出力される出力電力は電動機に供給されてもよい。
【0029】
制御部30は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)等から構成される。制御部30は、太陽光発電システム1全体を制御する機能を有する。制御部30は、電力変換装置20により取得された各種情報に基づいて、電力変換装置20を制御する。制御部30による電力変換装置20の制御内容は、
図13を用いて後述される。
【0030】
記憶部50は、不揮発性メモリから構成される。不揮発性メモリは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)である。不揮発性メモリは、例えば、SDカード、SSD(Solid State Drive)等の半導体メモリであってもよい。記憶部50は、太陽光発電システム1の各種処理に使用される情報を記憶する。また、記憶部50は、太陽光発電システム1の各種機能を実現する処理内容を記憶する。
【0031】
図2は、
図1の太陽電池モジュール10が移動体としての車両に搭載される態様例を示す図である。
図2の一例では、車両のフロント側、ルーフ側、リア側、右側面側、及び左側面側のそれぞれが面A、面B、面C、面D、及び面Eのそれぞれに対応するものとする。面A乃至Eのそれぞれには、各太陽電池モジュール10が設置されるものとする。なお、
図2では、面A乃至Eのそれぞれに各太陽電池モジュール10が設置される一例が示されるが、特にこれに限定されない。例えば、面Bにのみ太陽電池モジュール10が設置されてもよい。
【0032】
図3は、
図2の車両の各面A乃至Eに設置される太陽電池モジュール10内の太陽電池クラスタ101の態様例を示す図である。
図3の一例では、車両の面A乃至Eの面積に応じて、太陽電池モジュール10-A乃至10-Eのそれぞれの大きさが異なる。なお、面の面積が大きいほど、太陽電池モジュール10の大きさを大きくするようにしてもよい。
【0033】
例えば、太陽電池モジュール10-Aには、太陽電池クラスタA1乃至A4が含まれる。太陽電池クラスタA1乃至A4のそれぞれは直列に接続される。また、例えば、太陽電池モジュール10-Bには、太陽電池クラスタB1乃至B6が含まれる。太陽電池クラスタB1乃至B3は直列に接続される。太陽電池クラスタB4乃至B6は直列に接続される。太陽電池クラスタB1乃至B3の直列接続と、太陽電池クラスタB4乃至B6の直列接続とが並列接続される。また、例えば、太陽電池モジュール10-Cには、太陽電池クラスタC1及びC2が含まれる。太陽電池クラスタC1及びC2は直列に接続される。また、例えば、太陽電池モジュール10-Dには、太陽電池クラスタD1乃至D3が含まれる。太陽電池クラスタD1乃至D3は直列に接続される。また、例えば、太陽電池モジュール10-Eには、太陽電池クラスタE1乃至E3が含まれる。太陽電池クラスタE1乃至E3は直列に接続される。
【0034】
なお、太陽電池モジュール10-A乃至10-Eのそれぞれが特に区別されない場合にも、太陽電池モジュール10-A乃至10-Eのそれぞれは太陽電池モジュール10と称される。また、太陽電池クラスタA1乃至A4、太陽電池クラスタB1乃至B6、太陽電池クラスタC1及びC2、太陽電池クラスタD1乃至D3、及び太陽電池クラスタE1乃至E3のそれぞれが特に区別されない場合にも、太陽電池クラスタA1乃至A4、太陽電池クラスタB1乃至B6、太陽電池クラスタC1及びC2、太陽電池クラスタD1乃至D3、及び太陽電池クラスタE1乃至E3のそれぞれは、太陽電池クラスタ101と称される。
【0035】
次に、太陽電池モジュール10の詳細な構成例が
図4を用いて説明される。
図4は、
図3の太陽電池モジュール10の詳細な構成例を示す図である。
図4に示されるように、太陽電池モジュール10は、太陽電池クラスタ101-1乃至101-3に加え、バイパス回路103-1乃至103-3をさらに有する。
【0036】
なお、
図4においても、太陽電池クラスタ101-1乃至101-3のいずれかが特に限定されない場合にも、太陽電池クラスタ101と称される。また、バイパス回路103-1乃至103-3のいずれかが特に限定されない場合には、バイパス回路103と称される。
図4には、太陽電池モジュール10が3個のバイパス回路103を有する一例が示されるが、特にこれに限定されない。各太陽電池クラスタ101を迂回可能な回路構成を太陽電池モジュール10が有すればよい。
【0037】
また、太陽電池モジュール10には、正極端子P1及び負極端子P2が設けられる。正極端子P1は、各太陽電池モジュール10のうち、直列接続される1つの太陽電池モジュール10の負極端子P2に接続される。負極端子P2は、各太陽電池モジュール10のうち、直列接続される他の1つの太陽電池モジュール10の正極端子P1に接続される。
【0038】
各太陽電池クラスタ101は、正極端子P1と負極端子P2との間に、互いに直列接続される。各太陽電池クラスタ101は、互いに直列接続された複数の太陽電池セル111を有する。
図4には、各太陽電池クラスタ101が16個の太陽電池セル111を有する一例が示されるが、特にこれに限定されない。
【0039】
太陽電池セル111は、光起電力効果を利用することにより、光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。太陽電池セル111の材料は、例えば、シリコン系多結晶太陽電池、シリコン系単結晶太陽電池等のシリコン半導体である。また、例えば、ペロブスカイト太陽電池、具体的には、ペロブスカイト型構造を有する有機無機ハイブリッド材料を用いてもよい。このような構成により、太陽電池セル111は、光エネルギーとしての太陽光のエネルギーを電気エネルギーとしての直流電力に変換する。
【0040】
なお、各太陽電池セル111の材料は、特に限定されない。各太陽電池セル111の材料は、例えば、化合物半導体でもよい。
【0041】
バイパス回路103は、太陽電池クラスタ101に並列接続される。バイパス回路103は、バイパスダイオードBDを有する。バイパスダイオードBDは、順方向電圧を印加したときに電流が流れる半導体素子である。
【0042】
例えば、太陽電池クラスタ101内の全ての太陽電池セル111が発電中である場合、太陽電池クラスタ101間で電圧が上昇し、バイパスダイオードBDには逆方向電圧が印加される。よって、バイパスダイオードBDには、バイパスダイオードBDと並列接続された太陽電池クラスタ101以外の他の太陽電池クラスタ101からの発電電流が流れない。一方、太陽電池クラスタ101に含まれる複数の太陽電池セル111の一部が発電できない場合、発電できない太陽電池セル111は抵抗体となる。よって、太陽電池クラスタ101は、他の太陽電池クラスタ101からの発電電流を消費する。このため、発電できない太陽電池セル111を含む太陽電池クラスタ101では電圧降下が生じる。このとき、バイパスダイオードBDには順方向電圧が印加される。したがって、バイパスダイオードBDには、他の太陽電池クラスタ101からの発電電流が流れる。
【0043】
例えば、太陽電池クラスタ101が正常に発電しない場合、バイパス回路103は、正常に発電しない太陽電池クラスタ101を迂回する回路となる。これにより、正常に発電する太陽電池クラスタ101の発電により流れる電流は、正常に発電しない太陽電池クラスタ101を迂回して流れる。
【0044】
また、太陽電池クラスタ101のいずれかが正常に発電していない場合には、太陽電池モジュール10の出力電力における電圧値は上昇し、太陽電池モジュール10の出力電力における電流値は低下する。
【0045】
具体的には、各太陽電池クラスタ101が正常に発電している場合には、太陽電池モジュール10から出力される出力電圧は太陽電池クラスタ101の個数に応じてリニアに上昇する。すなわち、出力電力は最大電力点に到達するまで上昇し続ける。一方、各太陽電池クラスタ101のうち正常に発電しない太陽電池クラスタ101がある場合には、太陽電池モジュール10から出力される出力電圧は、以下の通りとなる。すなわち、正常に発電している太陽電池クラスタの電圧はリニアに上昇し、正常に発電していない太陽電池クラスタの電圧は上昇せず平衡状態を保つ。よって、例えば、3つの太陽電池クラスタ101が直列接続され、3つの太陽電池クラスタ101のうちの真ん中の太陽電池クラスタ101だけが正常に発電しない場合には、太陽電池モジュール10の出力は以下の通りとなる。すなわち、電圧は、リニアに上昇した後、平衡状態が続き、また、リニアに上昇する。また、平衡状態のときには、抵抗体となる太陽電池クラスタ101により電力を消費している。よって、出力電力は上昇してから下降し、また上昇するという変化が起きる。
【0046】
換言すれば、バイパスダイオードBDを通過した後には、太陽電池モジュール10の出力電力における電圧値は上昇するが、バイパスダイオードBDと並列接続された太陽電池クラスタ101が抵抗体として作用するため、太陽電池モジュール10の出力電力における電流値は低下する。
【0047】
なお、太陽電池クラスタ101と、バイパス回路103と、を含めた構成は、太陽電池装置104と称される。
【0048】
太陽電池モジュール10により発電された直流電力は、太陽光の強さに応じて変動する。特に、太陽光の強さが十分な晴れの日であっても、雲の移動によって日射が急激に減少するような日射急変が発生すると、太陽電池モジュール10のP-V曲線及びI-V曲線は変動する。なお、太陽電池モジュール10のP-V曲線は太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。太陽電池モジュール10のI-V曲線は太陽電池モジュール10の電流電圧特性を示す。
【0049】
そこで、電力変換装置20は、MPPT(Maximum Power Tracking:最大電力点追従)制御を行う。MPPT制御とは、太陽電池モジュール10において発電電力が最も得られる想定で動作させる最適動作点に動作点を追従させる制御である。なお、最適動作点とは、MPPT制御を行う際に太陽電池モジュール10において発電電力が最も得られる想定で動作させる動作点のことである。また、動作点とは、太陽電池モジュール10の動作電圧値及び動作電流値のことである。よって、最適動作点では、I-V曲線上で動作電圧値と動作電流値との積が最も大きくなることが想定されている。以下、電力変換装置20の詳細が、
図5乃至13を用いて説明される。
【0050】
図5は、
図1の電力変換装置20の詳細な構成例を示す図である。
図5に示されるように、電力変換装置20は、コイル210と、コンデンサ211と、スイッチング素子212と、ダイオード213と、コンデンサ214と、電圧測定部220と、電流測定部221と、電圧測定部222と、通信部230と、制御部231と、を有する。
【0051】
スイッチング素子212は、制御部231の制御に応じて、オン状態と、オフ状態とに切り替える機能を有していればよい。スイッチング素子212には、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、FET(Field Effect Transistor)等の半導体素子が用いられる。
【0052】
ダイオード213は、電流が電力変換装置20の出力側から入力側へ逆流しないように接続される。つまり、ダイオード213のアノード側が電力変換装置20の入力側を向き、ダイオード213のカソード側が電力変換装置20の出力側を向くように接続される。
【0053】
また、
図5に示されるように、電力変換装置20には、入力端子P4及びP5、出力端子P6及びP7、並びに接続端子P8が設けられる。入力端子P4及びP5は、太陽電池モジュール10の出力側に接続される。すなわち、入力端子P4及びP5のそれぞれは、太陽電池モジュール10の正極端子P1及び負極端子P2にそれぞれ接続される。出力端子P6及びP7は、バッテリ40の入力側に接続される。接続端子P5は、制御部30に接続される。
【0054】
コイル210は、スイッチング素子212がオン状態であるとき、太陽電池モジュール10からの電流によって、磁気エネルギーを蓄える。また、コイル210は、スイッチング素子212がオン状態からオフ状態に切り替わると、コイル210に誘導起電力が発生する。この結果、太陽電池モジュール10からの直流電力の電圧が昇圧される。昇圧後の直流電力は、逆流防止用のダイオード213を介して、バッテリ40の入力側に供給される。
【0055】
コンデンサ211は、電力変換装置20の入力側の直流電力の電圧を平滑化させる。コンデンサ214は、電力変換装置20の出力側の直流電力の電圧を平滑化させる。
【0056】
電圧測定部220は、太陽電池モジュール10の動作電圧値を測定する。電圧測定部220は、測定した動作電圧値を制御部231に供給する。電流測定部221は、太陽電池モジュール10の動作電流値を測定する。電流測定部221は、測定した動作電流値を制御部231に供給する。電圧測定部222は、昇圧後の直流電力の電圧値を測定する。電圧測定部222は、測定した電圧値を制御部231に供給する。
【0057】
通信部230は、制御部30からの制御信号を受信する。制御信号は、例えば、電力変換装置20を起動させるときのイニシャライズ信号である。
【0058】
制御部231は、制御部30からの制御信号を受信して電力変換装置20が所定の初期化処理を行って起動後に、太陽電池モジュール10の最適動作点に、太陽電池モジュール10の動作電圧値が追従するように、太陽電池モジュール10の動作電圧値を制御する。例えば、制御部231は、電圧測定部220から取得した太陽電池モジュール10の動作電圧値と、電流測定部221から取得した太陽電池モジュール10の動作電流値と、に基づいて、太陽電池モジュール10の発電電力を求める。より具体的には、制御部231は、動作電流値と動作電圧値との積により、発電電力を求める。制御部231は、求めた発電電力が最大化されるように、太陽電池モジュール10の動作電圧値を制御する。これにより、制御部231は、太陽電池モジュール10の出力電力値を調整する。制御部231は、太陽電池モジュール10の出力電力値を制御するために、スイッチング素子212のオン状態とオフ状態とを交互に切り替えるパルス信号のデューティ比を変更する。
【0059】
しかし、電力変換装置20によりMPPT制御が行われたとしても、太陽光発電システム1を搭載した車両の移動先の周囲環境によっては部分影が発生することもある。例えば、車両が駐車又は停車した場所の上方に太陽光を遮蔽する物が設置されている場合、太陽電池モジュール10に部分影が発生する恐れがある。このような部分影によっても、太陽電池モジュール10のP-V曲線及びI-V曲線は多様に変化する。よって、電力変換装置20の最大電力点も多様に変化する。このため、移動体に搭載される太陽光発電システム1は、固定設置される場合に比べ、MPPT制御の開始電圧点が最適動作点から大きくずれる恐れがある。この結果、開始電圧点から最適動作点に到達させるまでに多くの時間を要する恐れがある。したがって、効率よく最適動作点に到達させることができるのが望ましい。
【0060】
そこで、本開示においては、以下の通り、効率よく最適動作点に到達させることが可能な離散スキャンが行われる。
【0061】
図6は、
図1の電力変換装置20によるスキャン動作中に日射変動が生じたときの太陽電池モジュール10のP-V曲線301及び302の一例を示す図である。P-V曲線301は、スキャン動作中に日射変動していない曲線として示される。P-V曲線301は、太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。P-V曲線301は、極値が1つである。すなわち、P-V曲線301には、出力電力のピークが1つだけ含まれる。よって、極値が最適動作点となる。P-V曲線302は、スキャン動作中に日射変動した曲線として示される。P-V曲線302は、太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。P-V曲線302は、極値が複数ある。すなわち、P-V曲線302には、出力電力のピークが複数含まれる。よって、フルスキャンにより、最大電力点のスキャンを開始しても、スキャンによって最大電力点として特定した点が本当に最大電力点であるかがわからない。よって、最大電力点をスキャンするのに時間がかかる。また、
図7を用いて後述するように、最大電力点をスキャンできない可能性もある。ここで、フルスキャンとは、動作点を変化させることにより、最も電力が高くなる点である最大電力点を求め、最大電力点に基づいてMPPT制御の開始電圧点を決定することである。なお、I-V曲線上では、動作点としての動作電流値の変化の範囲はゼロから短絡電流までの範囲である。I-V曲線上における短絡電流とは、太陽電池モジュール10の正極端子P1と負極端子P2との間を短絡させたときに流れる電流である。よって、I-V曲線上における短絡電流時、動作電圧値はゼロとなる。また、I-V曲線上における短絡電流の大きさは、太陽電池モジュール10に照射される光の強さと太陽電池モジュール10の面積とで決定される。一方、I-V曲線上では、動作点としての動作電圧値の変化の範囲はゼロから開放電圧までの範囲である。I-V曲線上における開放電圧とは、太陽電池モジュール10の正極端子P1と負極端子P2との間に負荷等を何も接続せず、開放した状態での電圧である。よって、I-V曲線上における開放電圧時、動作電流値はゼロとなる。また、I-V曲線上における開放電圧の大きさは、太陽電池セル111の材料と太陽電池セル111の直列数で決定される。
【0062】
図7は、
図1の電力変換装置20によるスキャン動作中に日射変動が生じたときのスキャン結果と
図1の電力変換装置20によるスキャン動作中に日射変動が生じたときの本来のスキャン結果との対比例を示す図である。P-V曲線303は、
図1の電力変換装置20によるスキャン動作中に日射変動が生じたときの本来のスキャン結果を示す。P-V曲線303は、太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。P-V曲線304は、
図1の電力変換装置20によるスキャン動作中に日射変動が生じたときのスキャン結果を示す。P-V曲線304は、太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。
図7の一例では、スキャン動作をしても最大電力点をスキャンできない場合があることが示される。具体的には、
図7の一例では、日射変動が生じたことにより、本来の最適動作点とは異なる動作電圧値で最大電力点となることが示されているが、MPPT制御の開始電圧点次第では、日射変動後の最大電力点をスキャンできなくなる。
【0063】
図8は、
図1の電力変換装置20によるスキャン動作が離散スキャンである場合の太陽電池モジュールのP-V曲線の一例を示す図である。P-V曲線305は、太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。
図8の一例では、P-V曲線305には、複数の極値が含まれることが示される。すなわち、P-V曲線305には、出力電力のピークが複数含まれる。P-V曲線305は、太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。複数の極値のうち、極小値は、太陽電池クラスタ101が抵抗体となり、太陽電池モジュール10から出力される電流が減少していることを示す。すなわち、極小値の数は、電流の迂回に利用されたバイパス回路103の数を示す。一方、極大値の数は、バイパス回路103の数+1となる。
【0064】
よって、通常であれば、スキャン動作における電圧測定点の数は、ゼロから開放電圧までの間において一定間隔で決定される数であったところ、電圧測定点をバイパス回路103の数に応じて設定することによりスキャン動作に要する時間が短縮される。具体的には、どの動作電圧点を開始電圧点に決定するかがバイパス回路130で決まる。バイパス回路130に対応する動作電圧点に対応する出力電力のうち、最も高い出力電力に対応する動作電圧点を開始電圧点に決定すればよい。
【0065】
また、太陽電池モジュール10から出力される出力電流が減少したか否かは、電力変換装置20の電流測定部221により測定可能である。
【0066】
図9は、
図1の太陽電池モジュール10からの出力電流値が低下し、出力電圧値が上昇するときに想定される太陽電池モジュール10のP-V曲線の一例を示す図である。P-V曲線306は、P-V曲線301と同様に、スキャン動作中に部分影により日射変動していない曲線として示される。P-V曲線306は、太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。P-V曲線307は、P-V曲線302と同様に、スキャン動作中に日射変動した曲線として示される。P-V曲線307は、太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。
図9の一例においても、スキャン動作中に部分影により日射変動した場合、複数の極値が現れる。よって、本来の最適動作点とは異なる動作電圧点が最適動作点となる可能性があるため、最適動作点を再度求める必要がある。
【0067】
図10は、
図1の太陽電池モジュール10からの出力電流値が低下し、出力電圧値が上昇後の太陽電池モジュールのP-V曲線の一例を示す図である。P-V曲線308は、P-V曲線301と同様に、スキャン動作中に日射変動していない曲線として示される。P-V曲線308は、太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。P-V曲線309は、P-V曲線302と同様に、スキャン動作中に日射変動した曲線として示される。P-V曲線309は、太陽電池モジュール10の電力電圧特性を示す。
図10に示されるように、P-V曲線309には、2つの極大値が含まれている。すなわち、P-V曲線309には、出力電力のピークが複数含まれる。よって、2つの極大値のうち、いずれの極大値が最大電力点に対応するかの特定が必要となる。また、スキャン動作中は、前提として、最大動作点と異なる動作点で発電させていることとなる。この結果、発電により得られる電力が少なくなるので、無駄なスキャン動作を避けることが望ましい。しかし、太陽電池モジュール10から出力される電流に変化があることを契機としたスキャン動作では、即座に日射復帰する可能性があるときにもスキャン動作が実施される可能性がある。
【0068】
そこで、太陽電池モジュール10から出力される電流が減少したことを契機としたスキャン動作であることが望ましい。すなわち、太陽電池モジュール10の出力電流値が低下した場合、部分影が発生していると判定するのが望ましい。
【0069】
しかし、太陽電池モジュール10の出力電流値が低下したという条件だけでは、バイパス回路103が使用されたか否かの特定は難しい。そこで、太陽電池モジュール10から出力される電圧が増加したことも契機としたスキャン動作であることが望ましい。すなわち、太陽電池モジュール10の出力電流値が低下し、且つ、太陽電池モジュール10の出力電圧値が上昇した場合、部分影が発生していると判定するのが望ましい。
【0070】
また、太陽電池モジュール10の出力電流値の低下を考慮せず、太陽電池モジュール10の出力電圧値が上昇した場合、部分影が発生していると判定してもよい。
【0071】
なお、最大電力点は、離散スキャンにより測定された電圧測定点ごとに、電圧測定点と、電圧測定点に対応する電流値とを乗算し、これらの乗算したものの中から最大のものが選択されればよい。また、曲線因子を電圧測定点に対応する電圧と、電圧測定点に対応する電流値とを乗算し、これらの乗算したものの中から最大のものを選択してもよい。
【0072】
図11は、
図1の太陽電池モジュール10からの出力電流値が低下し、出力電圧値が上昇したときの最大電力点の一例を示す図である。P-V曲線310は、複数の太陽電池クラスタ101のうち、2つの太陽電池クラスタ101に部分影が発生していることを示す。P-V曲線310は、太陽電池クラスタ101の電力電圧特性を示す。I-V曲線401は、P-V曲線310に対応する。I-V曲線401は、太陽電池クラスタ101の電流電圧特性を示す。
【0073】
図12は、
図1の太陽電池モジュール10からの出力電流値が低下し、出力電圧値が上昇したときの最大電力点の他の一例を示す図である。P-V曲線311は、複数の太陽電池クラスタ101のうち、1つの太陽電池クラスタ101に部分影が発生していることを示す。P-V曲線311は、太陽電池クラスタ101の電力電圧特性を示す。I-V曲線402は、P-V曲線311に対応する。I-V曲線402は、太陽電池クラスタ101の電流電圧特性を示す。
【0074】
(2.2)動作例
図13は、第1実施形態に係る太陽光発電システム1におけるスキャン動作を説明するフローチャートである。なお、
図13においては、制御部30からの制御指令を受けた電力変換装置20を制御主体とした説明がされる。
【0075】
ステップS11において、電力変換装置20は、日射を検出する。例えば、太陽電池モジュール10からの出力電圧を測定することにより、例えば、測定した出力電圧が予め定めた日射量に相当する電圧に達していれば、日射が検出される。
【0076】
ステップS12において、電力変換装置20は、フルスキャンを行う。フルスキャンを行うことにより、最大電力点が特定される。最大電力点に基づいて、MPPT制御の開始電圧点が決定される。例えば、最大電力点が開始電圧点に決定される。
【0077】
ステップS13において、電力変換装置20は、MPPT制御を行う。MPPT制御を行うことにより、電力変換装置20は、最適動作点を追従する制御を行う。電力変換装置20は、開始電圧点をMPPT制御を行う動作点の起点として設定する。電力変換装置20は、例えば、山登り法を用いることにより、設定した動作点から最適動作点に到達させる。これにより、電力変換装置20は、太陽電池モジュール10の出力を最適動作点で制御することができる。
【0078】
ステップS14において、電力変換装置20は、現在の動作電圧が部分影のない動作電圧、すなわち、影が全くない場合に相当する動作電圧に該当するか否かを判定する。電力変換装置20により現在の動作電圧が部分影のない動作電圧に該当すると判定される場合、ステップS14の処理は、ステップS15の処理に進む。一方、電力変換装置20により現在の動作電圧が部分影のない動作電圧に該当しないと判定される場合、ステップS14の処理は、ステップS18の処理に進む。
【0079】
つまり、部分影が元々ある場合には、離散スキャンの処理ではなく、フルスキャンの処理が行われる。それは、部分影が元々ある場合には最大電力点が変わるため、フルスキャンにより求めた最大電力点に基づいてMPPT制御の開始電圧点を再設定する必要があるからである。
【0080】
ステップS15において、電力変換装置20は、最適動作点における電流が減少し、且つ最適動作点における電圧が規定電圧値より上昇したか否かを判定する。電力変換装置20により最適動作点における電流が減少し、且つ最適動作点における電圧が規定電圧値より上昇したと判定される場合、ステップS15の処理は、ステップS16の処理に進む。一方、電力変換装置20により最適動作点における電流が減少せず、最適動作点における電圧が規定電圧値より上昇していないと判定された場合、ステップS15の処理は、ステップS18の処理に進む。
【0081】
ステップS15の処理は、MPPT制御を行っている間に、部分影が発生したか否かを判定する処理となる。すなわち、電力変換装置20は、最適動作点における電流が減少し、且つ最適動作点における電圧が規定電圧値より上昇したと判定された場合を部分影が発生したと判定する。また、電力変換装置20は、最適動作点における電流が減少せず、最適動作点における電圧が規定電圧値より上昇していないと判定された場合を部分影が発生していないと判定する。
【0082】
ステップS16において、電力変換装置20は、離散スキャンを行う。
【0083】
ステップS17において、電力変換装置20は、フルスキャンの設定周期をリセットする。
【0084】
ステップS18において、電力変換装置20は、前回のフルスキャンから設定周期で定めた時間、例えば、1秒を経過したか否かを判定する。電力変換装置20により前回のフルスキャンから設定周期で定めた時間を経過したと判定された場合、ステップS18の処理は、ステップS19の処理に進む。一方、電力変換装置20により前回のフルスキャンから設定周期で定めた時間を経過していないと判定された場合、ステップS18の処理は、ステップS21の処理に進む。
【0085】
ステップS19において、電力変換装置20は、フルスキャンを行う。
【0086】
ステップS19の処理は、設定周期で定めた時間にフルスキャンを行うことにより、定期的に最大電力点を確認することができる。これにより、曝露に起因する太陽電池モジュール10の経年劣化等による最大電力点の変動に対応することができる。
【0087】
ステップS20において、電力変換装置20は、フルスキャンの設定周期をリセットする。
【0088】
ステップS21において、電力変換装置20は、発電量が規定発電量以下であるか否かを判定する。電力変換装置20により発電量が規定発電量以下であると判定される場合、ステップS21の処理は、ステップS22の処理に進む。一方、電力変換装置20により発電量が規定発電量以下でないと判定された場合、ステップS21の処理は、ステップS13の処理に戻る。
【0089】
ステップS22において、電力変換装置20は、発電を終了する。
【0090】
(2.3)作用効果
以上の説明から、第1実施形態において、太陽光発電システム1は、太陽電池装置104と、電力変換装置20と、を備える。太陽電池装置104は、直列接続された複数の太陽電池クラスタ101と、バイパス回路103と、を有する。バイパス回路103は、太陽電池クラスタ101ごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタ101を迂回する。電力変換装置20は、太陽電池装置104の動作点を変化させながら太陽電池装置104の出力電力を測定することで太陽電池装置104のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う。電力変換装置20は、部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行う。離散スキャンは、太陽電池装置104の出力電力を測定する電圧値である電圧測定点をバイパス回路103の数に応じて設定するスキャン動作である。
【0091】
このような特徴により、部分影が発生しているときには離散スキャンが実行される。離散スキャンにおける電圧測定点はバイパス回路103の数に応じて設定される。例えば、バイパス回路103の数+1の数だけP-V曲線において極大値が生じるため、各極大値に対応する動作電圧点をMPPT制御の開始電圧点としてもよい。
【0092】
よって、離散スキャンにおける電圧測定点は、バイパス回路103の数と大幅に異なる数とはならず、バイパス回路103の数による制約を受ける。したがって、短絡電流から開放電圧の範囲にかけて動作点を変化させるフルスキャンに比べ、離散スキャンにおける電圧測定点の数は大幅に削減される。これにより、開始電圧点を効率よく最適動作点に到達させることが可能となる。
【0093】
また、第1実施形態において、電力変換装置20は、フルスキャンを予め設定された設定周期で行ってもよい。また、フルスキャンは、電圧測定点が離散スキャンに比べて多いスキャン動作であってもよい。このような特徴により、離散スキャンによるスキャン動作とは関係なく、フルスキャンによるスキャン動作は設定周期で実行される。したがって、離散スキャンだけでは測定し得ない全体的なP-V曲線の変動を検出することが可能となる。
【0094】
また、第1実施形態において、離散スキャンは、前記バイパス回路の数に応じて定まる特定のスキャン範囲での前記電圧測定点が前記フルスキャンに比べて少なく、且つ前記設定周期とは異なる周期で前記電圧測定点を測定する前記スキャン動作であってもよい。このような特徴により、離散スキャンは、特定のスキャン範囲での電圧測定点を少なくすることができるため、スキャン動作に要する時間を短縮することができる。また、例えば、離散スキャンの周期がフルスキャンよりも短い場合には、次回のフルスキャンが行われるまでの間に離散スキャンを行うこともできる。これにより、離散スキャンによりMPPT制御の開始電圧点を決定することができるため、MPPT制御を行う際、周囲環境の変化を反映させることができる。
【0095】
また、第1実施形態において、電力変換装置20は、離散スキャンを行ってから設定周期に応じた時間が経過した場合、フルスキャンを行ってもよい。このような特徴により、部分影の発生を契機とする離散スキャンによるスキャン動作後であっても、フルスキャンによるスキャン動作は設定周期で毎回実行される。したがって、太陽電池モジュール10の経年劣化等に起因するP-V曲線の変動を検出することも可能となる。
【0096】
また、第1実施形態において、電力変換装置20は、動作点における動作電流値としての太陽電池装置104の出力電流値が低下した場合、部分影が発生していると判定してもよい。太陽電池装置104の出力電流値が低下するということは、複数の太陽電池クラスタ101の一部が発電を行っていないことを意味する。したがって、太陽電池装置104の出力電流値の低下に基づいた判定処理が実行されることにより、部分影の発生を検出することが可能となる。例えば、電力変換装置20は、動作点における動作電流値としての太陽電池装置104の出力電流値が予め定めた下限電流値よりも低下した場合、部分影が発生していると判定してもよい。
【0097】
また、第1実施形態において、電力変換装置20は、動作点における動作電圧値としての太陽電池装置104の出力電圧値が上昇した場合、部分影が発生していると判定してもよい。太陽電池装置104の出力電圧値が上昇するということは、複数の太陽電池クラスタ101の一部が抵抗体となっていることを意味する。したがって、太陽電池装置104の出力電圧値の上昇に基づいた判定処理が実行されることにより、一時的な日照低下が生じているのではなく、比較的長い時間における部分影の発生を検出することが可能となる。例えば、電力変換装置20は、動作点における動作電圧値としての太陽電池装置104の出力電圧値が予め定めた上限電圧値よりも上昇した場合、部分影が発生していると判定してもよい。
【0098】
また、第1実施形態において、電力変換装置20は、動作電圧値としての太陽電池装置104の出力電圧値が上昇し、且つ、動作点における動作電流値としての太陽電池装置104の出力電流値が低下した場合、部分影が発生していると判定してもよい。このような特徴により、一時的な日照低下が生じているのではなく、比較的長い時間における部分影の発生を確実に検出することが可能となる。
【0099】
また、第1実施形態において、太陽電池装置104及び電力変換装置20は、移動体に設けられてもよい。このような特徴により、周囲環境が刻々と変化する移動体であっても、離散スキャンによるスキャン動作が実行可能となる。したがって、移動体に設けられた太陽光発電システムであっても、MPPT制御が可能となる。
【0100】
(3)その他の実施形態
上述の実施形態では、太陽光発電システム1が移動体としての車両に搭載される一例について説明したが、太陽光発電システム1が搭載される場所は、特にこれに限定されない。例えば、太陽光発電システム1は、船舶、航空機、衛星装置、飛翔体等の移動体に搭載されてもよい。移動体に太陽光発電システム1が搭載されることにより、太陽光発電システム1から移動体に電力を供給することが可能となる。
【0101】
また、例えば、太陽光発電システム1は、移動体に搭載されることに限定されず、需要家施設に設置されてもよい。上述で説明したように、太陽電池モジュール10は電力変換装置20に直流電力を供給する。よって、需要家施設において交流電力が使用され、且つ需要家施設に太陽光発電システム1が設置された場合には、電力変換装置20の出力側に、直流電力を交流電力に変換する機能を含む装置が設置されればよい。
【0102】
また、上述の実施形態では、部分影の発生要因の1つとして雲等の気象条件又は車両の移動先の周囲環境により部分影が発生する一例について説明したが、部分影の発生要因は、特にこれに限定されない。例えば、太陽電池モジュール10の不図示のカバーガラスが曝露により汚損されることにより、太陽電池クラスタ101の一部において入射光が遮断された場合にも、本開示の内容は適用可能である。
【0103】
また、上述の実施形態では、電力変換装置20がスキャン動作の制御主体となる一例について説明したが、特にこれに限定されない。移動体、例えば、車両に搭載されるECU(Engine Control Unit)がスキャン動作の制御主体であってもよい。
【0104】
また、上述の実施形態では、離散スキャンと、フルスキャンとがそれぞれ異なる契機で実行される一例が説明されたが、特にこれに限定されない。例えば、電力変換装置20は、離散スキャンとフルスキャンとのいずれか一方をスキャン動作として選択し、選択したスキャン動作を行ってもよい。このような特徴により、離散スキャンとフルスキャンとの両方のスキャン動作ではなくいずれか一方だけのスキャン動作とすることが可能となる。したがって、臨機応変にスキャン動作が選択可能となる。例えば、電力変換装置20は、部分影が発生すると判定するまでに所定の時間がかかる場合、離散スキャンではなく、フルスキャンを選択し、フルスキャンのスキャン動作を行ってもよい(異常ケースの想定)。これにより、フルスキャンのスキャン動作を行うことができるため、例えば、太陽光発電システム1の一部に異常が発生している場合であっても、スキャン動作を行うことが可能となる。
【0105】
また、上述の実施形態では、離散スキャンとフルスキャンとのいずれか一方をスキャン動作として選択し、選択したスキャン動作を行う一例について説明したが、さらに以下の選択も可能である。例えば、太陽電池装置104の出力電力を充電可能なバッテリ40をさらに備え、電力変換装置20は、バッテリ40の充電状態が充電指標閾値より低下傾向にあり、且つ、部分影が発生していると判定した場合、フルスキャンよりも離散スキャンを優先的に選択してもよい。このような特徴により、バッテリ40の充電状態に基づいて、フルスキャン及び離散スキャンのうち、消費電力のより少ない離散スキャンが選択可能となる。したがって、確実にスキャン動作が実行可能となる。
【0106】
さらに、例えば、電力変換装置20は、バッテリ40の充電状態が充電指標閾値より低下傾向にあると判定する場合、フルスキャンの設定周期を現在よりも短い周期に設定してもよい。このような特徴により、現在の最大電力点と動作点とでずれが生じていることによりバッテリ40に供給可能な太陽電池装置104からの出力電力が低下している場合にはフルスキャンを予定より早めに実行可能となる。
【0107】
また、選択したスキャン動作を行う際、以下の選択も可能である。例えば、太陽電池装置104の出力電力を充電可能なバッテリ40をさらに備え、電力変換装置20は、バッテリ40の劣化状態が劣化指標閾値より低下傾向にあり、且つ、部分影が発生していると判定した場合、フルスキャンよりも離散スキャンを優先的に選択してもよい。このような特徴により、バッテリ40の劣化状態に基づいて、フルスキャン及び離散スキャンのうち、消費電力のより少ない離散スキャンが選択可能となる。したがって、より確実にスキャン動作が実行可能となる。
【0108】
さらに、例えば、電力変換装置20は、バッテリ40の劣化状態が劣化指標閾値より低下傾向にあると判定する場合、フルスキャンの設定周期を現在よりも長い周期に設定してもよい。このような特徴により、バッテリ40の劣化状態に基づいて、フルスキャンによるスキャン動作の回数を減らすことができる。したがって、バッテリ40の寿命を延命させつつ、フルスキャンによるスキャン動作も設定周期で実行可能となる。
【0109】
また、上述の実施形態では、電力変換装置20がバッテリ40の電力を利用してスキャン動作を行う一例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、太陽光発電システム1は、回生電力を発生可能な電動機をさらに備え、電力変換装置20は、スキャン動作を行うときに回生電力を利用してもよい。このような特徴により、回生電力もスキャン動作に利用することが可能となる。したがって、スキャン動作によりバッテリ40の電力の使用を低減させることが可能となる。
【0110】
また、上述の実施形態では、動作点における動作電流値、動作点における動作電圧値等を利用して部分影の発生を判定する処理の一例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、電力変換装置20は、予め設定された検査期間において、部分影の発生の判定の頻度が規定回数を超えた場合、太陽電池装置104が故障していると判定してもよい。複数の太陽電池クラスタ101のうちの一部の太陽電池クラスタ101において部分影が頻繁に発生していると判定される場合には、その一部の太陽電池クラスタ101は故障している可能性がある。よって、上述の特徴により、太陽電池クラスタ101の故障を検出することができる。
【0111】
また、上述の実施形態では、部分影が発生しているときには電圧測定点ごとの太陽電池装置104の出力電力の極値が複数現れることについて説明した。よって、例えば、電力変換装置20は、バイパス回路103の数に応じて電圧測定点が複数あり、且つ、スキャン動作により電圧測定点ごとの出力電力の極値が複数ある場合、部分影が発生していると判定してもよい。このような特徴により、例えば、P-V曲線305を容易に掃引可能なシステム環境であれば、P-V曲線305のモニタリングにより容易に部分影の発生が検知可能となる。
【0112】
また、上述の実施形態では、バイパスダイオードBDは太陽電池クラスタ101を迂回する回路として機能する一例について説明したが、バイパスダイオードBDの機能はこれに限定されない。例えば、バイパス回路103は、太陽電池クラスタ101に並列接続されたバイパスダイオードBDを有し、電力変換装置20は、バイパスダイオードBDが規定温度よりも高い温度である場合、部分影が発生していると判定してもよい。バイパスダイオードBDに電流が流れれば、バイパスダイオードBDは発熱する。よって、バイパスダイオードBDの熱を検知可能であれば、バイパスダイオードBDの熱に基づいて、部分影の発生の検知が可能となる。上述の特徴によれば、より確実に部分影の発生の検知が可能となる。なお、バイパスダイオードBDの熱の検知には、例えば、測温抵抗体、サーミスタ等の温度センサが使用されればよい。また、バイパスダイオードBDの温度を多段階で検知可能とすることで、バイパスダイオードBDの故障も検知可能となる。
【0113】
上述の各動作フローは、別個独立に実施する場合に限らず、2以上の動作フローを組み合わせて実施可能である。例えば、1つの動作フローの一部のステップを他の動作フローに追加してもよいし、1つの動作フローの一部のステップを他の動作フローの一部のステップと置換してもよい。各フローにおいて、必ずしも全てのステップを実行する必要は無く、一部のステップのみを実行してもよい。
【0114】
また、上述の実施形態において、太陽光発電システム1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述の実施形態において、太陽光発電システム1のようなシステムの制御方法として実施されてもよい。さらに、例えば、上述の実施形態において、太陽光発電システム1のようなシステムが実行するプログラムとして実施されてもよい。
【0115】
上述の実施形態に係る動作をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。また、上述の実施形態に係る各装置が行う各処理を実行する回路を集積化し、当該装置の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0116】
本開示で使用されている「に基づいて(based on)」、「に応じて(depending on/in response to)」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」、「のみに応じて」を意味しない。「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」及び「に少なくとも部分的に基づいて」の両方を意味する。同様に、「に応じて」という記載は、「のみに応じて」及び「に少なくとも部分的に応じて」の両方を意味する。「含む(include)」、「備える(comprise)」、及びそれらの変形の用語は、列挙する項目のみを含むことを意味せず、列挙する項目のみを含んでもよいし、列挙する項目に加えてさらなる項目を含んでもよいことを意味する。また、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。さらに、本開示で使用されている「第1」、「第2」等の呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。本開示において、例えば、英語でのa,an,及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0117】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0118】
(3)付記
上述の実施形態に関する特徴について付記する。
【0119】
(付記1)
直列接続された複数の太陽電池クラスタと、
前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、
前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備え、
前記電力変換装置は、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行い、
前記離散スキャンは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である太陽光発電システム。
【0120】
(付記2)
前記電力変換装置は、フルスキャンを予め設定された設定周期で行い、
前記フルスキャンは、前記電圧測定点が前記離散スキャンに比べて多い前記スキャン動作である
付記1に記載の太陽光発電システム。
【0121】
(付記3)
前記離散スキャンは、前記バイパス回路の数に応じて定まる特定のスキャン範囲での前記電圧測定点が前記フルスキャンに比べて少なく、且つ前記設定周期とは異なる周期で前記電圧測定点を測定する前記スキャン動作である
付記2に記載の太陽光発電システム。
【0122】
(付記4)
前記電力変換装置は、前記離散スキャンを行ってから前記設定周期に応じた時間が経過した場合、前記フルスキャンを行う
付記3に記載の太陽光発電システム。
【0123】
(付記5)
前記電力変換装置は、前記動作点における動作電流値としての前記太陽電池装置の出力電流値が低下した場合、前記部分影が発生していると判定する
付記1に記載の太陽光発電システム。
【0124】
(付記6)
前記電力変換装置は、前記動作点における動作電圧値としての前記太陽電池装置の出力電圧値が上昇した場合、前記部分影が発生していると判定する
付記1に記載の太陽光発電システム。
【0125】
(付記7)
前記電力変換装置は、前記動作電圧値としての前記出力電圧値が上昇し、且つ、前記動作点における動作電流値としての前記太陽電池装置の出力電流値が低下した場合、前記部分影が発生していると判定する
付記6に記載の太陽光発電システム。
【0126】
(付記8)
前記太陽電池装置及び前記電力変換装置は、移動体に設けられる
付記1乃至7のいずれか1項に記載の太陽光発電システム。
【0127】
(付記9)
前記電力変換装置は、前記離散スキャンと前記フルスキャンとのいずれか一方を前記スキャン動作として選択し、選択した前記スキャン動作を行う
付記2に記載の太陽光発電システム。
【0128】
(付記10)
前記出力電力を充電可能なバッテリをさらに備え、
前記電力変換装置は、前記バッテリの充電状態が充電指標閾値より低下傾向にあり、且つ、前記部分影が発生していると判定した場合、前記フルスキャンよりも前記離散スキャンを優先的に選択する
付記9に記載の太陽光発電システム。
【0129】
(付記11)
前記電力変換装置は、前記充電状態が前記充電指標閾値より低下傾向にあると判定する場合、前記設定周期を現在よりも短い周期に設定する
付記10に記載の太陽光発電システム。
【0130】
(付記12)
前記出力電力を充電可能なバッテリをさらに備え、
前記電力変換装置は、前記バッテリの劣化状態が劣化指標閾値より低下傾向にあり、且つ、前記部分影が発生していると判定した場合、前記フルスキャンよりも前記離散スキャンを優先的に選択する
付記9に記載の太陽光発電システム。
【0131】
(付記13)
前記電力変換装置は、前記劣化状態が前記劣化指標閾値より低下傾向にあると判定する場合、前記設定周期を現在よりも長い周期に設定する
付記12に記載の太陽光発電システム。
【0132】
(付記14)
回生電力を発生可能な電動機をさらに備え、
前記電力変換装置は、前記スキャン動作を行うときに前記回生電力を利用する
付記1に記載の太陽光発電システム。
【0133】
(付記15)
前記電力変換装置は、予め設定された検査期間において、前記部分影の発生の判定の頻度が規定回数を超えた場合、前記太陽電池装置が故障していると判定する
付記1に記載の太陽光発電システム。
【0134】
(付記16)
前記電力変換装置は、前記バイパス回路の数に応じて前記電圧測定点が複数あり、且つ、前記スキャン動作により前記電圧測定点ごとの前記出力電力の極値が複数ある場合、前記部分影が発生していると判定する
付記1に記載の太陽光発電システム。
【0135】
(付記17)
前記バイパス回路は、前記太陽電池クラスタに並列接続されたバイパスダイオードを有し、
前記電力変換装置は、前記バイパスダイオードが規定温度よりも高い温度である場合、前記部分影が発生していると判定する
付記1に記載の太陽光発電システム。
【0136】
(付記18)
直列接続された複数の太陽電池クラスタと、前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置の出力側に接続される電力変換装置であって、
前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う制御部を備え、
前記制御部は、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行い、
前記離散スキャンは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である
電力変換装置。
【0137】
(付記19)
直列接続された複数の太陽電池クラスタと、
前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、
前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備える太陽光発電システムで実行する太陽光発電方法であって、
前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行うステップを有し、
前記離散スキャンを行うステップは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である
太陽光発電方法。
【0138】
(付記20)
直列接続された複数の太陽電池クラスタと、
前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、
前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備え、
前記電力変換装置は、前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行い、
前記離散スキャンは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である太陽光発電システムを搭載した移動体。
【0139】
(付記21)
直列接続された複数の太陽電池クラスタと、
前記太陽電池クラスタごとに設けられ、部分影が発生している太陽電池クラスタを迂回するバイパス回路と、を有する太陽電池装置と、
前記太陽電池装置の動作点を変化させながら前記太陽電池装置の出力電力を測定することで前記太陽電池装置のMPPT制御の開始電圧点を決定するためのスキャン動作を行う電力変換装置と、を備える太陽光発電システムに、
前記部分影が発生していると判定した場合、離散スキャンを行うステップを実行させ、
前記離散スキャンを行うステップは、前記出力電力を測定する電圧値である電圧測定点を前記バイパス回路の数に応じて設定する前記スキャン動作である
プログラム。
【符号の説明】
【0140】
1 太陽光発電システム、10,10-1,10-N,10-A~10-E 太陽電池モジュール、20,20-1,20-N 電力変換装置、30 制御部、40 バッテリ、50 記憶部、101,101-1,101-M,A1~A4,B1~B6,C1,C2,D1~D3,E1~E3 太陽電池クラスタ、103,103-1~103-3 バイパス回路、104 太陽電池装置、111 太陽電池セル、210 コイル、211,214 コンデンサ、212 スイッチング素子、213 ダイオード、221 電流測定部、230 通信部、231 制御部、301~311 P-V曲線、401,402 I-V曲線、A,B,C,D,E 面、BD,BD1~BD3 バイパスダイオード、P1 正極端子、P2 負極端子、P4,P5 入力端子、P6,P7 出力端子、P8 接続端子。