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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120367
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】発汗計
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61B5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027112
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】517350355
【氏名又は名称】株式会社スキノス
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 英哉
(72)【発明者】
【氏名】坂口 正雄
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB02
4C117XC12
4C117XD14
4C117XE06
4C117XE23
4C117XJ42
4C117XN07
(57)【要約】
【課題】発汗計の小型化を図るとともに、発汗計の消費電力を抑制することができる、省エネルギー型のコンパクトな発汗計を提供すること。
【解決手段】吸気孔と、前記吸気孔から自然空気を吸気して送風する送風機と、前記自然空気の湿度を測定するための第1の湿度センサと、皮膚面に着接される開口部と、前記開口部に連通して前記皮膚面の汗を放散させると共に、放散した前記汗及び前記自然空気が混合して混合空気となる混合室と、前記混合室内の湿度を測定するための第2の湿度センサと、前記混合室から前記汗及び前記自然空気の汗混合空気を排気するための排気孔を有する筐体カプセルを備え、前記開口部の開口面積が0.1cm以上1cm未満である発汗計。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気孔と、前記吸気孔から自然空気を吸気して送風する送風機と、前記自然空気の湿度を測定するための第1の湿度センサと、皮膚面に着接される開口部と、前記開口部に連通して前記皮膚面の汗を放散させると共に、放散した前記汗及び前記自然空気が混合して混合空気となる混合室と、前記混合室内の湿度を測定するための第2の湿度センサと、前記混合室から前記汗及び前記自然空気の汗混合空気を排気するための排気孔を有する筐体カプセルを備え、
前記開口部の開口面積が0.1cm以上1cm未満である発汗計。
【請求項2】
前記送風機の作動を開始及び停止させるON/OFF手段を備える、請求項1に記載の発汗計。
【請求項3】
前記送風機の送風量を制御する送風量制御手段を備える、請求項1に記載の発汗計。
【請求項4】
前記送風機を作動状態から作動停止状態へと移行させる作動停止判定を行う、作動停止判定部を備える、請求項2又は3に記載の発汗計。
【請求項5】
前記作動停止判定部は、前記第2の湿度センサの出力値が閾値を下回った場合と前記第2の湿度センサの出力値と前記第1の湿度センサの出力値の差分値が閾値を下回った場合の少なくとも何れかの場合に、前記作動停止判定を行う、請求項4に記載の発汗計。
【請求項6】
前記送風機を作動停止状態から作動状態へと移行させる作動開始判定を行う、作動開始判定部を備える、請求項2又は3に記載の発汗計。
【請求項7】
前記作動開始判定部は、前記作動停止状態に移行した時点から所定時間経過した場合と、前記第2の湿度センサの出力値と前記第1の湿度センサの出力値の差分値が閾値を上回った場合の少なくとも何れかの場合に、前記作動開始判定を行う、請求項6に記載の発汗計。
【請求項8】
前記所定時間経過を計測する、タイマ手段を備える、請求項7に記載の発汗計。
【請求項9】
前記送風機を作動停止状態から作動状態へと移行させた後、前記第1の湿度センサ及び前記第2の湿度センサの各出力値が安定した場合に、安定判定を行う安定性判定部を備える、請求項2に記載の発汗計。
【請求項10】
前記安定性判定部は、前記第2の湿度センサの出力値と前記第1の湿度センサの出力値の差分値の変動幅が閾値を下回った場合に、前記安定判定を行う、請求項9に記載の発汗計。
【請求項11】
さらに、前記筐体カプセルは、前記吸気孔から吸気した自然空気が送風される送風エリアと、前記送風エリアと前記混合室をつなぐ通気エリアを有し、
前記通気エリアの最小断面積が、前記送風エリアの最大断面積の10~60%である、請求項1に記載の発汗計。
【請求項12】
さらに、前記筐体カプセルは、水蒸気のみ通過する防水シートを、前記開口部に貼付して有する、請求項1に記載の発汗計。
【請求項13】
さらに、前記筐体カプセルは、前記筐体カプセル内の雰囲気温度を上げる昇温部を有する、請求項1に記載の発汗計。
【請求項14】
前記送風機を、常時作動状態とする、常時ON入力部を備える、請求項1に記載の発汗計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発汗計に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚面から蒸散する発汗量を測定する技術に関し、送風機を用いて皮膚を換気する系に2つの湿度センサを入れ、皮膚通過前の空気の湿度と、皮膚通過後の空気の湿度の差をもとに、皮膚から蒸散する水分量(発汗量)を測定する技術がある(以下、「換気カプセル法」という)。換気カプセル法によれば、発汗量の変化を簡便かつ連続的に測定することができる。
【0003】
換気カプセル法で用いる発汗量検出プローブに関し、本出願人は、自然空気と汗が混合した混合空気となる混合室を構成する1つの筐体カプセル内に、送風機及び2つの湿度センサを組み込んで、小型化する技術を開示している(特許文献1)。
【0004】
しかし、送風機は消費電力が大きいため、送風機を組み込んだ発汗量検出プローブを含む発汗計の駆動には大容量のバッテリーの搭載が必要となり、発汗計全体を小型化することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6561421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、発汗計の小型化を図るとともに、発汗計の消費電力を抑制することができる、省エネルギー型のコンパクトな発汗計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の手段を提供する。
【0008】
[1]
吸気孔と、前記吸気孔から自然空気を吸気して送風する送風機と、前記自然空気の湿度を測定するための第1の湿度センサと、皮膚面に着接される開口部と、前記開口部に連通して前記皮膚面の汗を放散させると共に、放散した前記汗及び前記自然空気が混合して混合空気となる混合室と、前記混合室内の湿度を測定するための第2の湿度センサと、前記混合室から前記汗及び前記自然空気の汗混合空気を排気するための排気孔を有する筐体カプセルを備え、前記開口部の開口面積が0.1cm以上1cm未満である発汗計。
[2]
前記送風機の作動を開始及び停止させるON/OFF手段を備える、[1]の発汗計。
[3]
前記送風機の送風量を制御する送風量制御手段を備える、[1]の発汗計。
[4]
前記送風機を作動状態から作動停止状態へと移行させる作動停止判定を行う、作動停止判定部を備える、[2]又は[3]の発汗計。
[5]
前記作動停止判定部は、前記第2の湿度センサの出力値が閾値を下回った場合と前記第2の湿度センサの出力値と前記第1の湿度センサの出力値の差分値が閾値を下回った場合の少なくとも何れかの場合に、前記作動停止判定を行う、[4]の発汗計。
[6]
前記送風機を作動停止状態から作動状態へと移行させる作動開始判定を行う、作動開始判定部を備える、[2]又は[3]の発汗計。
[7]
前記作動開始判定部は、前記作動停止状態に移行した時点から所定時間経過した場合と前記第2の湿度センサの出力値と前記第1の湿度センサの出力値の差分値が閾値を上回った場合の少なくとも何れかの場合に、前記作動開始判定を行う、[6]の発汗計。
[8]
前記所定時間経過を計測する、タイマ手段を備える、[7]の発汗計。
[9]
前記送風機を作動停止状態から作動状態へと移行させた後、前記第1の湿度センサ及び前記第2の湿度センサの各出力値が安定した場合に、安定判定を行う安定性判定部を備える[2]の発汗計。
[10]
前記安定性判定部は、前記第2の湿度センサの出力値と前記第1の湿度センサの出力値の差分値の変動幅が閾値を下回った場合に、前記安定判定を行う、[9]の発汗計。
[11]
さらに、前記筐体カプセルは、前記吸気孔から吸気した自然空気が送風される送風エリアと、前記送風エリアと前記混合室をつなぐ通気エリアを有し、
前記通気エリアの最小断面積が、前記送風エリアの最大断面積の10~60%である、[1]の発汗計。
[12]
さらに、前記筐体カプセルは、水蒸気のみ通過する防水シートを、前記開口部に貼付して有する、[1]の発汗計。
[13]
さらに、前記筐体カプセルは、前記筐体カプセル内の雰囲気温度を上げる昇温部を有する、[1]の発汗計。
[14]
前記送風機を、常時作動状態とする、常時ON入力部を備える、[1]の発汗計。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発汗計の小型化を図るとともに、発汗計の消費電力を抑制することができる、省エネルギー型のコンパクトな発汗計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態における発汗計の概略説明図である。
図2】他の実施形態における発汗計の概略説明図である。
図3】一実施形態における送風機の制御方法のフロー図である。
図4】他の実施形態における送風機の制御方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発汗計]
図1に示すように、本開示における発汗計(8)は、吸気孔(1)と、前記吸気孔(1)から自然空気を吸気して送風する送風機(2)と、前記自然空気の湿度を測定するための第1の湿度センサ(3)と、皮膚面に着接される開口部(4)と、前記開口部(4)に連通して前記皮膚面の汗を放散させると共に、放散した前記汗及び前記自然空気が混合して混合空気となる混合室(5)と、前記混合室(5)内の湿度を測定するための第2の湿度センサ(6)と、前記混合室(5)から前記汗及び前記自然空気の汗混合空気を排気するための排気孔(19)を有する筐体カプセル(7)を備え、前記開口部(4)の開口面積が0.1cm以上1cm未満である。
【0012】
発汗計(8)の消費電力抑制のためには、送風機(2)の出力を下げることが有効である。
送風機(2)は、混合室(5)内の空気が飽和状態となることを防止する役割を持つため、送風機(2)の出力を下げた場合、混合室(5)内の空気が飽和状態となりやすい。混合室(5)内の空気が飽和状態となると、汗が皮膚面に水分として残り、発汗量の正確な測定の妨げとなる。
開口部(4)の開口面積を小さくすることで、混合室(5)に放出される水分量を絞り、混合室(5)内の空気が飽和状態となりにくくすることができるが、一方で、絞りすぎると、開口部(4)が着接される皮膚面に存在する能動汗腺の数が少なくなる。開口部(4)が着接される皮膚面に存在する能動汗腺の数が少なくなるほど、筐体カプセル(7)内に放散される汗(すなわち水分量)が減少して検出感度が低下するため、全身の発汗状態を推定しにくくなる。これらの観点から、従来、開口部(4)の開口面積は1cmに設定されてきた。
【0013】
本発明者らは、発汗計(8)の検出感度と開口部(4)の開口面積の関係に関し検討を行い、開口部(4)の開口面積が1cm未満でも1cmと同等の感度での検出が可能であることを見出した。すなわち、開口部(4)の開口面積を絞り筐体カプセル(7)内に放出される汗が減少したとしても、換気量を減少させれば放出された水分量が長い時間筐体カプセル(7)内に留まるため、感度が向上する。特に、後述するON/OFF手段(9)を介して送風機(2)を停止して筐体カプセル(7)内に汗を一時的に溜め込んだ後、排出して第1の湿度センサ(3)と第2の湿度センサ(6)が安定した時に発汗量を取得することで発汗量の検出感度が高まることを見出した。すなわち、開口部(4)の開口面積の縮小とON/OFF手段(9)を介した送風機(2)の作動制御を組み合わせることで高感度かつ低消費電力の発汗計(8)が実現できる。また、皮膚における汗腺の密度には個人差があるものの、女性や子供など能動汗腺の数が少ない被験者の場合でも、前腕部皮膚の0.1cmの範囲には数個程度の能動汗腺が存在することを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。なお、設定した開口面積から得られる発汗量を単位面積1cmに換算すれば、従来の1cmあたり発汗量を出力することもできる。
【0014】
簡便さを重視する設計では、開口部(4)の開口面積は、0.1cm以上0.5未満であってもよい。
検出精度を重視する設計では、開口部(4)の開口面積は、0.5cm以上1cm未満であってもよい。
【0015】
<ON/OFF手段(9)>
発汗計(8)は、送風機(2)の作動を開始及び停止させるON/OFF手段(9)を備えることができる。
皮膚面からの発汗量が少ない状態(以下、低発汗状態)では、混合室(5)内の空気が飽和状態となりにくいため、低発汗状態では送風機(2)の作動を停止しても、発汗量の正確な測定の妨げとはならない。低発汗状態では送風機(2)の作動を停止することで、発汗計(8)の消費電力の抑制と、発汗量の正確な測定を両立することができる。
【0016】
<常時ON入力部(15)>
発汗計(8)は、送風機(2)を常時作動状態とする常時ON入力部(15)を備えてもよい。
皮膚から筐体カプセル(7)を外しても、筐体カプセル(7)内に湿度の高い空気が滞留し、発汗量が高値を示し続ける場合などに、ユーザーの判断で、常時ON入力部(15)を介して、送風機(2)を常時作動状態に切り替えることができる。
【0017】
発汗計(8)にはバッテリー(16)が搭載され、当該バッテリー(16)は、外部電源(図示しない)に繋いで充電される。
常時ON入力部(15)を介して、送風機(2)を常時作動状態に切り替えた際には、バッテリー(16)充電用に外部電源から供給される電力を用いて、送風機(2)を作動させる回路を設けることもできる。
【0018】
発汗計(8)は、第1の湿度センサ(3)や第2の湿度センサ(6)に過度な水分が吸着したことを検知する水分吸着検知手段(図示しない)を備えてもよく、前記検知がなされた際に、常時ON入力部(15)が作動し、送風機(2)を常時作動状態に切り替える回路を設けることもできる。
【0019】
<作動停止判定部(10)>
発汗計(8)は、送風機(2)を作動状態から作動停止状態へと移行させる作動停止判定を行う作動停止判定部(10)を備えることができる。
【0020】
作動停止判定部(10)は、例えば、前記第2の湿度センサ(6)の出力値が閾値を下回った場合と前記第2の湿度センサ(6)の出力値と前記第1の湿度センサ(3)の出力値の差分値が閾値を下回った場合の少なくとも何れかの場合に、低発汗状態であると判断して、前記作動停止判定を行う。
作動停止判定部(10)の作動停止判定は、OR回路(20)を介して、ON/OFF手段(9)に伝えられ、送風機(2)の作動を停止する。
【0021】
<作動開始判定部(11)>
発汗計(8)は、送風機(2)を作動停止状態から作動状態へと移行させる作動開始判定を行う作動開始判定部(11)を備えることができる。
【0022】
作動開始判定部(11)は、例えば、前記作動停止状態に移行した時点から所定時間経過した場合と前記第2の湿度センサ(6)の出力値と前記第1の湿度センサ(3)の出力値の差分値が閾値を上回った場合の少なくとも何れかの場合に、前記作動開始判定を行う。
作動開始判定部(11)の作動開始判定は、OR回路(20)を介して、ON/OFF手段(9)に伝えられ、送風機(2)の作動を開始する。
【0023】
一般的に明確な発汗を認めなくても皮膚からは微量な水分蒸散(不感蒸泄)があり、通風が無ければ混合室(5)及び筐体カプセル(7)内の湿度は徐々に上昇する。そのため、発汗量の取得や低発汗状態の判定は、通風下で筐体カプセル(7)内の空気をリフレッシュした後、実施することが望ましい。
作動開始判定部(11)が、前記作動停止状態に移行した時点から所定時間経過した場合に前記作動開始判定を行って、定期的に送風機(2)を作動させることで、不感蒸泄に起因する筐体カプセル(7)内の湿度の上昇を抑制することができる。発汗計(8)は、前記作動停止状態に移行した時点から所定時間経過等を計測するタイマ手段(12A)を備えることができる。
【0024】
<タイマ手段(12B)>
発汗計(8)は、送風機(2)の作動停止状態や作動状態の経過時間を計測して、所定時間の経過をON/OFF手段(9)に伝え、送風機(2)を作動停止状態から作動状態へ、又は、作動状態から作動停止状態へと移行させるタイマ手段(12B)を備えることもできる。
【0025】
<安定性判定部(13)>
図2に示すように、発汗計(8)は、前記送風機(2)を作動停止状態から作動状態へと移行させた後、第2の湿度センサ(6)及び第1の湿度センサ(3)の各出力値が安定した場合に、安定判定を行う安定性判定部(13)を備えることができる。
前記送風機(2)を作動停止状態から作動状態へと移行させた直後は、第2の湿度センサ(6)及び第1の湿度センサ(3)の出力値が不安定となるが、安定性判定部(13)による安定判定の後に、低発汗状態の判定や発汗量の測定を行うことで、より正確な判定や測定が可能となる。
【0026】
前記安定性判定部(13)は、例えば、前記第2の湿度センサ(6)の出力値と前記第1の湿度センサ(3)の出力値の差分値の変動幅が閾値を下回った場合に、前記安定判定を行う。
【0027】
発汗計(8)は、送風機(2)の送風量を制御する送風量制御手段(図示しない)を備えてもよい。
例えば、バッテリー(16)の充電時や、作動停止判定部(10)が停止判定を行った場合でも、送風機(2)の作動を完全には停止せず、送風量を絞って送風機(2)を作動させ続けることで、送風機(2)を作動停止状態から作動状態へと移行させた後に、第2の湿度センサ(6)及び第1の湿度センサ(3)の各出力値が安定するまでの時間を短縮することができる。
【0028】
<筐体カプセル(7)>
発汗計(8)を構成する筐体カプセル(7)は、前記吸気孔(1)から吸気した自然空気が送風される送風エリア(18)と、前記送風エリア(18)と前記混合室(5)をつなぐ通気エリア(17)を有することができる。
炎天下での運動時などの多量の発汗を測定する際には、筐体カプセル(7)の換気効率を高めることで、正確な測定が可能となる。
筐体カプセル(7)の換気効率を高めるためには、通気エリア(17)流路を太くし抵抗を減らすことが有効である。
例えば、通気エリア(17)の最小断面積を、前記送風エリア(18)の最大断面積の10~60%とすることで、筐体カプセル(7)の換気効率を高めることができる。通気エリア(17)の最小断面積は20~55%であってもよく、30~50%であってもよい。
なお、換気効率を最適化するには流路全体の抵抗を考慮する必要があるため、吸気孔(1)と排気孔(19)の最小断面積についても、通気エリア(17)の最小断面積と同様の考え方で設計されるのが望ましい。
【0029】
筐体カプセル(7)は、水蒸気のみ通過する防水シート(図示しない)を、前記開口部(4)に貼付して有することができる。
送風機(2)の出力を落とした場合、換気が不十分で皮膚に水分が残りやすくなる。皮膚に残った水分が湿度センサ等の電子回路に流入して故障することを防止するため、皮膚装着部に水蒸気のみ通過する防水シートを貼り付けることが望ましい。
【0030】
<昇温部(14)>
発汗計(8)は、筐体カプセル(7)内の雰囲気温度を上げる昇温部(14)を備えることができる。
送風機(2)の作動制御によって混合室(5)内の空気が飽和状態となると、第2の湿度センサ(6)及び第1の湿度センサ(3)に水分が吸着して発汗量の正確な測定の妨げとなるが、昇温部(14)を備えることで、第2の湿度センサ(6)及び第1の湿度センサ(3)に吸着した水分の蒸発を促し、より正確な測定が可能となる。
昇温部(14)は、特に、第2の湿度センサ(6)の近傍に設けることが好ましい。
昇温部(14)はヒーターであってもよい。
昇温部(14)は、熱伝導性の良い金属製で構成した筐体カプセル(7)自体であって、発汗計に搭載する電子部品の発熱や皮膚温を利用して、筐体カプセル(7)内の温度を上昇させるものであってもよい。
【0031】
<補正手段>
発汗計(8)は、バッテリー(16)の充電中など、発汗量の測定を行っていない時に、第2の湿度センサ(6)及び第1の湿度センサ(3)のセンサ感度のズレを補正する手段を備えることができる。例えば、充電中は発汗計(8)が皮膚に装着されていないので、開口部(4)を、水分を含まない素材で密閉し、送風機(2)をONにすれば第2の湿度センサ(6)と第1の湿度センサ(3)は同じ湿度を示すはずである。この時、第2の湿度センサ(6)と第1の湿度センサ(3)の出力にズレがある場合は、同じ出力となるように補正する。すなわち、第2の湿度センサ(6)及び第1の湿度センサ(3)のいずれかの出力に加減算・乗算・除算することで、もう一方の出力と等しくなる補正値を算出し、以降、この補正値を使用中の発汗量算出に用いる。これを実現するために、例えば、充電と開口部(4)の密閉を同時に行う充電器を用意するとよい。
【0032】
[一実施形態における送風機の制御方法]
低発汗状態において送風機(2)の作動を停止して、発汗計(8)の消費電力を抑制する手段として、例えば、図3に示すフローで送風機(2)の制御を行う方法を例示できる。
本実施形態に係る方法は、第2の湿度センサ(6)及び第1の湿度センサ(3)の出力差から、送風機(2)をOFFとする条件である「低発汗状態」を検出する制御方法である。本実施形態に係る方法は、使用環境の湿度が低く、発汗量が少ない場合に好適である。
【0033】
一般的に明確な発汗を認めなくても皮膚からは微量な水分蒸散(不感蒸泄)があり、通風が無ければ混合室(5)及び筐体カプセル(7)内の湿度は徐々に上昇する。そのため、送風機(2)をOFF状態でT_OFF[秒]経過後に、送風機(2)をT_ON[秒]の間ONにして、筐体カプセル(7)内に溜まった空気をリフレッシュした後、湿度センサの出力を得る(ST1)。
湿度センサの出力を取得するサンプリング周期T_SR[秒]は、T_OFF[秒]とT_ON[秒]の和とすることができる。
第1の湿度センサ(3)と第2の湿度センサ(6)の出力値の差分値が小さいとき送風機(2)をOFFにし、差が大きい間は送風機(2)ONを継続して、T_SR[秒]毎に発汗量を取得する。差が小さくなったら、送風機(2)をOFFにする(ST2)。
【0034】
[他の実施形態における送風機の制御方法]
低発汗状態において送風機(2)の作動を停止して、発汗計(8)の消費電力を抑制する手段として、例えば、図4に示すフローで送風機(2)の制御を行う方法を例示できる。
本実施形態に係る方法は、第2の湿度センサ(6)のみの出力から、送風機(2)をOFFとする条件である「低発汗状態」を検出する制御方法である。
【0035】
T_OFF[秒]経過時、または第2の湿度センサ(6)の出力値が閾値TH_ONを上回ったとき送風機(2)をONにする(ST1’)。これによって、自然空気の湿度が高い場合はT_OFF時間を短くすることができる。
第1の湿度センサ(3)と第2の湿度センサ(6)の値が落ち着いたことをもって筐体カプセル(7)内に溜まった空気のリフレッシュが完了したことを検知し、2つの湿度センサの値を取得、差分から発汗量を得る(ST2’)。「センサの値が安定したこと」は、両湿度センサの出力変化の微分値がある値以下になったことをもって検出することができる。これによって、適切にカプセル内の空気をリフレッシュすることができる。
第2の湿度センサ(6)の湿度が閾値TH_ONを下回ったときに送風機(2)をOFFにする。混合室(5)の湿度(第2の湿度センサ(6)の出力値)が閾値TH_ONを上回っている間は送風機(2)ONを継続し、発汗量を得て保持する。閾値を下回ったら、送風機(2)をOFFにする(ST3’)。
発汗量を取得する周期は一定でないため、算出した発汗量は保持され、サンプリング周期T_SR[秒]毎にサンプリングする。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の発汗計は、消費電力が抑制され、小型のバッテリーで動作するため、例えば腕時計型のようなウェアラブルデバイスへの組み込むことができるが、特にこれら例示の用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 吸気孔
2 送風機
3 第1の湿度センサ
4 開口部
5 混合室
6 第2の湿度センサ
7 筐体カプセル
8 発汗計
9 ON/OFF手段
10 作動停止判定部
11 作動開始判定部
12A タイマ手段
12B タイマ手段
13 安定性判定部
14 昇温部
15 常時ON入力部
16 バッテリー
17 通気エリア
18 送風エリア
19 排気孔
20 OR回路
図1
図2
図3
図4