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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120368
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】フロア変形装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/06 20060101AFI20240829BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240829BHJP
   B60N 3/04 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B60N3/06
B60N2/90
B60N3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027113
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】建部 崇典
(72)【発明者】
【氏名】古川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 直人
【テーマコード(参考)】
3B087
3B088
【Fターム(参考)】
3B087DE09
3B087DE10
3B088JA02
3B088JB01
(57)【要約】
【課題】加速度が作用した際の下肢の動きを抑制したフロア変形装置を提供する。
【解決手段】車両のシート1に着座した乗員Pの足部Fが乗せられるフロアを変形させるフロア変形装置100を、足部の下方に設けられたフロアベース110と、可撓性を有する材料によって形成されるとともにフロアベースの上面部を覆って設けられ足部が乗せられる可動パネル120と、可動パネルを変形させて可動パネルの側部121,122を中央部124に対して昇降させるアクチュエータ140,150とを備える構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートに着座した乗員の足部が乗せられるフロアを変形させるフロア変形装置であって、
前記足部の下方に設けられたフロアベースと、
可撓性を有する材料によって形成されるとともに前記フロアベースの上面部を覆って設けられ前記足部が乗せられる可動パネルと、
前記可動パネルを変形させて前記可動パネルの側部を中央部に対して昇降させるアクチュエータと
を備えることを特徴とするフロア変形装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記可動パネルの側部を中央部に対して上昇させる際に前記可動パネルの前部を中央部に対して上昇させること
を特徴とする請求項1に記載のフロア変形装置。
【請求項3】
前記車両に横加速度が作用する頻度が高い特定の走行状態を検出する走行状態検出部と、
前記特定の走行状態が検出された場合に前記アクチュエータに前記可動パネルの前記側部を上昇させるアクチュエータ制御部と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフロア変形装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記可動パネルと前記フロアベースとの間に設けられ流体を充填されることにより拡張するバッグ部を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフロア変形装置。
【請求項5】
前記シートに対する前記乗員の左右方向位置を検出する乗員位置検出部を備え、
前記アクチュエータが前記可動パネルの前記側部を中央部に対して上昇させた際に前記中央部に形成される凹部の位置を前記乗員の左右方向位置に応じて変化させるアクチュエータ制御部を備えること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフロア変形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員の足部が乗せられるフロア部に設けられるフロア変形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の乗員の姿勢保持に関する技術として、例えば、特許文献1には、乗員が車両挙動に対応した姿勢を迅速かつ確実に取ることができるようにするため、前後Gセンサ、左右Gセンサにより検出された加速度が乗員の姿勢変化を生じさせるものであるか否かを判別し、車両挙動が乗員の姿勢変化を生じさせるものである場合、制御部が車両挙動に対応する位置に乗員の脚を着地させるよう構成された車両用フットレスト装置が記載されている。
特許文献2には、自動運転車両の運転姿勢調整装置において、運転者が容易に下肢を伸ばすことを可能とするため、自動運転の実行時に、運転者による姿勢変更の意思を検出する姿勢変更意思判断部と、運転者の姿勢を変化させる足置き部可動機構、及びシート座面可動機構と、運転者による姿勢変更の意思が検出された際に、各可動機構が可動するように制御する可動制御部を備えるものが記載されている。
特許文献3には、簡素な構造で、より大きくシートを傾斜させキャビン内における左右方向の居住性を向上できる車両用シート傾動装置において、左右方向に並んで配置されたシートが固定されたシート固定フロアと、シート固定フロアをロール方向に傾動するロール方向駆動装置と、シート固定フロアをピッチ方向に傾動するピッチ方向駆動装置とを備え、制御部は、車両の左右旋回時に、シート固定フロアが旋回方向に傾斜するようにロール方向駆動装置を制御し、車両の加速時に、シート固定フロアが前方に傾斜するようにピッチ方向駆動装置を制御し、車両の減速時に、シート固定フロアが後方に傾斜するようにピッチ方向駆動装置を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010- 6167号公報
【特許文献2】特開2016-196224号公報
【特許文献3】特開2021-138287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の走行時には、路面からの入力や車両の挙動によって横向きの加速度が発生する。このような加速度は、外力として乗員に働き、疲労の要因となる。
これに対し、シートの形状等により骨盤部分を保持することができれば効果的であるものの、乗員の体形に対応する必要があり、汎用性の点で問題がある。また、シートにおける骨盤部分のホールド性を高めた場合、圧迫感や乗降性の悪化につながることが懸念される。
また、昨今の電動車両の増加により、バッテリがフロア下部に格納される場合が増えており、車室のフロアがフラットになる傾向がある。
フロアがフラット化した場合、フロア深さ方向のスペースが取りにくくなり、着席時に下肢の踏ん張りが効き難い傾向となる。
車両の横向き加速度によって下肢の膝や太腿(大腿骨)が動かされると、人間が立っているときに骨盤を支える筋肉群(内転筋群等)も追従して動かされるため、着座時の不安定さにつながり、乗員の疲労が悪化してしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、加速度が作用した際の下肢の動きを抑制したフロア変形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係るフロア変形装置は、車両のシートに着座した乗員の足部が乗せられるフロアを変形させるフロア変形装置であって、前記足部の下方に設けられたフロアベースと、可撓性を有する材料によって形成されるとともに前記フロアベースの上面部を覆って設けられ前記足部が乗せられる可動パネルと、前記可動パネルを変形させて前記可動パネルの側部を中央部に対して昇降させるアクチュエータとを備えることを特徴とする。
これによれば、車両に横加速度が作用する際に、可動パネルの側部を中央部に対して上昇(隆起)させることにより、乗員の足裏の外側(小指側)部分を支え、大腿部等の下肢が外側に開く方向に動くことを抑制することができる。
また、車両に横加速度が作用しない場合には、可動パネルの側部を中央部に対して下降させることにより、可動パネルをフラットとし、乗降性、車室内移動の際の利便性を確保することができる。
【0006】
本発明において、前記アクチュエータは、前記可動パネルの側部を中央部に対して上昇させる際に前記可動パネルの前部を中央部に対して上昇させる構成とすることができる。
これによれば、乗員の爪先が可動パネルから浮き上がることを防止し、上述した効果をより効果的に得ることができる。
【0007】
本発明において、前記車両に横加速度が作用する頻度が高い特定の走行状態を検出する走行状態検出部と、前記特定の走行状態が検出された場合に前記アクチュエータに前記可動パネルの前記側部を上昇させるアクチュエータ制御部とを備える構成とすることができる。
これによれば、車両の走行状態に応じて自動的にアクチュエータを作動させることにより、利便性を向上することができる。
この場合、例えば、曲線路の通過頻度が高いワインディング路(屈曲路)走行時や悪路(不整路)走行時に可動パネルの側部を上昇させる構成とすることができる。
【0008】
本発明において、前記アクチュエータは、前記可動パネルと前記フロアベースとの間に設けられ流体を充填されることにより拡張するバッグ部を有する構成とすることができる。
これによれば、可動パネルの側部を上昇させない場合には、アクチュエータから流体を排出して収縮させることにより、アクチュエータのサイズをコンパクト化して可動パネルとフロアベースとの間隔が狭小な場合であっても収容することができる。
【0009】
本発明において、前記シートに対する前記乗員の左右方向位置を検出する乗員位置検出部を備え、前記アクチュエータが前記可動パネルの前記側部を中央部に対して上昇させた際に前記中央部に形成される凹部の位置を前記乗員の左右方向位置に応じて変化させるアクチュエータ制御部を備える構成とすることができる。
これによれば、シートの中心に対して乗員が左右方向にオフセットして着座している場合であっても、乗員の左右方向位置に応じて凹部の位置を変化させることにより、上述した効果を適切に得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、加速度が作用した際の下肢の動きを抑制したフロア変形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用したフロア変形装置の第1実施形態が設けられた車両の助手席シート周辺部を上方から見た平面図である。
図2図1のII-II部矢視断面図であって、通常状態(可動パネルの非隆起状態)を示す図である。
図3図2と同一断面を示す断面図であって、可動パネルの左右側端部が隆起した状態を示す図である。
図4】第1実施形態のフロア変形装置の制御システムの構成を模式的に示す図である。
図5】第1実施形態のフロア変形装置の動作を示すフローチャートである。
図6】シートに着座した乗員に横加速度が作用した場合の挙動を模式的に示す図である。
図7】本発明を適用したフロア変形装置の第2実施形態が設けられた車両の助手席シート周辺部を上方から見た平面図である。
図8】本発明を適用したフロア変形装置の第3実施形態が設けられた車両の助手席シート周辺部を上方から見た平面図である。
図9】第3実施形態のフロア変形装置の制御システムの構成を模式的に示す図である。
図10】本発明を適用したフロア変形装置の第4実施形態が設けられた車両の助手席シート周辺部を上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用したフロア変形装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態のフロア変形装置は、例えば乗用車等の自動車において、シートに着座した乗員の足部が乗せられるフロア部に設けられるものである。
フロア変形装置は、例えば、助手席シート、2列目シート以降のシートの前方側や、自動運転を行う場合がある車両の運転席シートの前方側に設けることができる。
【0013】
図1は、第1実施形態のフロア変形装置が設けられた車両の助手席シート周辺部を上方から見た平面図である。
助手席用のシート1は、座面部10、バックレスト20、ヘッドレスト30等を有する。
座面部10は、乗員の臀部及び大腿部が乗せられる部分である。
バックレスト20は、乗員の背部の後方側に設けられる部分である。
バックレスト20は、座面部10の後端部近傍から上方へ張り出している。
ヘッドレスト30は、乗員の頭部の後方側に設けられる部分である。
ヘッドレスト30は、バックレスト20の上部に取り付けられている。
【0014】
フロア変形装置100は、座面部10の前方側において、乗員P(図6参照)の足部Fが乗せられる領域の周辺のフロア部に設けられている。
図2は、図1のII-II部矢視断面図であって、通常状態(可動パネルの非隆起状態)を示す図である。
図3は、図2と同一断面を示す断面図であって、可動パネルの左右側端部が隆起した状態を示す図である。
フロア変形装置100は、フロアベース110、可動パネル120、固定部130、右アクチュエータ140、左アクチュエータ150、前アクチュエータ160(図1参照)等を有する。
【0015】
フロアベース110は、車両のボディ構造体の一部を構成するとともに、乗員等が収容される車室の床面部を構成する部分である。
フロアベース110は、例えば、鋼板やアルミニウム系合金等の可動パネル120の材質よりも硬質の材質によって形成されている。
フロアベース110の上面部は、水平面に沿って延在する平板状に形成されている。
【0016】
可動パネル120は、フロアベース110の上面部に沿って配置され、通常時(左右側部及び前部が隆起していない時)には平板状に形成された部材である。
可動パネル120は、例えば、フロアベース110の上面部を覆うフロアマットとして構成することができる。
可動パネル120は、例えば樹脂系材料などの可撓性及び弾性を有するシート状の材料によって形成されている。
可動パネル120は、一体に形成された右側部121、左側部122、前部123、中央部124等を有する。
右側部121及び左側部122は、乗員の足部Fが載置される領域の右側、左側にそれぞれ設けられ、前後方向に延在する帯状の領域である。
前部123は、可動パネル120の前縁部に沿って配置され、上方から見たときに前方側が凸となる半円の円弧状の帯状の領域である。
前部123の右、左の後端部は、右側部121、左側部122の前端部と接続されている。
右側部121、左側部122、前部123は、右アクチュエータ140、左アクチュエータ150、前アクチュエータ160によって、中央部124に対して昇降可能となっている。
中央部124は、右側部121、左側部122、前部123により囲まれた内側の領域である。
中央部124の側端部は、右側部121、左側部122とそれぞれ接続されている。
中央部124の前端部は、上方から見た平面形が前方側に凸となる円弧状に形成され、前部123と接続されている。
【0017】
固定部130は、可動パネル120の中央部124の中心付近に設けられ、可動パネル120とフロアベース110とを固定する部分である。
固定部130によってフロアベース110に固定された中央部124は、各アクチュエータが可動パネル120の右側部121、左側部122、前部123を上昇させ隆起させた場合には、下方にすり鉢状に凹んだ凹部の底面部を形成する。
【0018】
右アクチュエータ140、左アクチュエータ150、前アクチュエータ160は、可動パネル120の右側部121、左側部122、前部123をそれぞれ昇降させる駆動装置である。
右アクチュエータ140、左アクチュエータ150、前アクチュエータ160は、例えばゴム系などの可撓性を有する材料によってバッグ状に構成された本体部を有する。
【0019】
右アクチュエータ140、左アクチュエータ150、前アクチュエータ160は、後述する制御システムによって、例えば空気等の作動流体をコンプレッサから充填されることによって拡張し、可動パネル120の右側部121、左側部122、前部123を上昇させる。
このとき、右前部121、左前部122、前部123には、中央部124側が低くなる傾斜が発生する。
また、右アクチュエータ140、左アクチュエータ150、前アクチュエータ160に作動流体を充填しない状態においては、これらはほぼ平坦な状態に収縮してフロアベース110と可動パネル120との間で挟持される。
この状態では、可動パネル120は、実質的に平板状となっている。
【0020】
図4は、第1実施形態のフロア変形装置の制御システムの構成を模式的に示す図である。
フロア変形装置は、さらに、アクチュエータ制御ユニット200、横加速度センサ201、上下加速度センサ202、コンプレッサ210等を有する。
アクチュエータ制御ユニット200は、横加速度センサ201、上下加速度センサ202の出力に基づいて、コンプレッサ210に指示を与える制御装置である。
アクチュエータ制御ユニット200は、例えば、CPU等の情報処理部、ROMやRAMなどの記憶部、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有するコンピュータとして構成することができる。
アクチュエータ制御ユニット200は、本発明のアクチュエータ制御部である。
【0021】
横加速度センサ201は、車両に作用する横方向の加速度を検出するセンサである。
上下加速度センサ202は、車両に作用する上下方向の加速度を検出するセンサである。
上下加速度センサ202は、例えば、サスペンション装置のバネ下部品(サスペンションアーム、ハブベアリングハウジング、ストラットのシエルケース等)に設けることができる。
横加速度センサ201、上下加速度センサ202は、アクチュエータ制御ユニット200と協働して、本発明の走行状態検出部として機能する。
【0022】
コンプレッサ210は、例えば電動モータ等の動力源によって空気を圧縮して吐出するものである。
コンプレッサ210は、アクチュエータ制御ユニット200からの指令に応じてオンオフされる。
コンプレッサ210がオンされると、各アクチュエータは圧縮空気が導入されて拡張する。
コンプレッサ210がオフされると、各アクチュエータは圧縮空気が排気されて縮小する。
【0023】
図5は、第1実施形態のフロア変形装置の動作を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS01:ワインディング路走行状態判断>
アクチュエータ制御ユニット200は、横加速度センサ201の出力履歴に基づいて、曲線路が頻出するワインディング路(屈曲路)を自車両が走行しているか否かを判別する。
ワインディング路の判別は、例えば、直近の所定の期間内において、横加速度センサ201が所定以上の横加速度を検出する頻度に基づいて行うことができる。
ワインディング路走行状態は、車両に横加速度が作用する頻度が高い特定の走行状態の一つである。
また、ワインディング路の判別手法はこれに限らず、例えば、自車両前方の走行レーン形状を認識する環境認識装置の認識結果や、ナビゲーション装置が有する地図データと自車位置測位結果に基づいてワインディング路走行を判別してもよい。
ワインディング路走行状態であると判別された場合はステップS03に進み、その他の場合はステップS02に進む。
【0024】
<ステップS02:悪路走行状態判断>
アクチュエータ制御ユニット200は、上下加速度センサ202の出力履歴に基づいて、自車両が凹凸の大きい悪路(不整地路)を走行しているか否かを判別する。
悪路の判別は、例えば、直近の所定の期間内において、上下加速度センサ202が所定以上の上下加速度を検出する頻度に基づいて行うことができる。
悪路走行状態は、車両に横加速度が作用する頻度が高い特定の走行状態の一つである。
悪路走行状態であると判別された場合はステップS03に進み、その他の場合はステップS04に進む。
【0025】
<ステップS03:各アクチュエータ拡張状態>
アクチュエータ制御ユニット200は、コンプレッサ210にオン指令を与え、コンプレッサ210を作動させる。
これにより、右アクチュエータ140、左アクチュエータ150、前アクチュエータ160に圧縮空気が導入され、各アクチュエータは拡張する。
各アクチュエータの拡張に伴い、可動パネル120の右側部121、左側部122、前部123は、中央部124に対して上昇し、可動パネル120は、中央部124がすり鉢状に凹んだ形状を呈する。
その後、一連の処理を終了する。
【0026】
<ステップS04:各アクチュエータ収縮状態>
アクチュエータ制御ユニット200は、コンプレッサ210にオフ指令を与え、コンプレッサ210を停止状態とする。
これにより、右アクチュエータ140、左アクチュエータ150、前アクチュエータ160は排気され、平坦な状態に収縮する。
各アクチュエータの収縮に伴い、可動パネル120は平坦な状態とされる。
その後、一連の処理を終了する。
【0027】
以下、第1実施形態のフロア変形装置の効果について説明する。
図6は、シートに着座した乗員に横加速度が作用した場合の挙動を模式的に示す図である。
乗員Pの足部Fが乗せられるフロア部が平坦である場合、車両に横加速度が作用すると、足部Fが左右に振られる挙動を示す。
この挙動に追従し、乗員Pの大腿部Tも左右に振られることになる。
大腿部Tが動いた場合、乗員Pが立っている場合に上体を支える筋肉である内転筋群が同時に動いてしまうため、乗員Pの着座姿勢が不安定となってしまい、不快感や疲労の原因となる。
【0028】
これに対し、第1実施形態においては、可動パネル120の右側部121、左側部122、前部123を中央部124に対して相対的に上昇させ、中央部124を底部とするすり鉢状の凹部を形成することにより、足裏の外側部を支え、足部F及び大腿部Tを身体中心側(内側)で保持することが容易となり、大腿部T等の動きを抑制することができる。
これにより、乗員Pの着座姿勢が安定化し、不快感や疲労の発生を抑制することができる。
【0029】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)車両に横加速度が作用する際に、可動パネル120の右側部121、左側部122を中央部124に対して上昇(隆起)させることにより、乗員Pの足裏の外側(小指側)部分を支え、大腿部T等の下肢が外側に開く方向に動くことを抑制することができる。
また、車両に横加速度が作用しない場合には、可動パネル120の右側部121、左側部122を中央部124に対して下降させることにより、可動パネル120をフラットとし、乗降性、車室内移動の際の利便性を確保することができる。
(2)可動パネル120の右側部121、左側部122を上昇させる際に前部123も中央部124に対して上昇させることにより、乗員Pの爪先が可動パネルから浮き上がることを防止し、上述した効果をより効果的に得ることができる。
(3)ワインディング路(屈曲路)走行時、及び、悪路(不整路)走行時に自動的に各アクチュエータを作動させることにより、利便性を向上することができる。
(4)各アクチュエータは、可動パネル120とフロアベース110との間に設けられ圧縮空気を充填されることにより拡張するバッグ部を有する構成とすることにより、可動パネル120の右側部121、左側部122等を上昇させない場合には、各アクチュエータから流体を排出して収縮させることにより、各アクチュエータのサイズをコンパクト化して可動パネル120とフロアベース110との間隔が狭小な場合であっても収容することができる。
【0030】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用したフロア変形装置の第2実施形態について説明する。
以下説明する各実施形態において、従前の実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図7は、第2実施形態のフロア変形装置が設けられた車両の助手席シート周辺部を上方から見た平面図である。
【0031】
第2実施形態においては、第1実施形態の右アクチュエータ140、左アクチュエータ150、前アクチュエータ160に代えて、単一のアクチュエータ170を備えている。
アクチュエータ170は、可動パネル120の右側部121の下方から、前部123の下方を経由して、左側部122の下方まで、連続して形成されている。
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、部品点数を低減して装置の構成を簡素化することができる。
【0032】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用したフロア変形装置の第3実施形態について説明する。
図8は、第3実施形態のフロア変形装置が設けられた車両の助手席シート周辺部を上方から見た平面図である。
第3実施形態においては、第1実施形態の右アクチュエータ140に代えて、左右方向に配列された右外側アクチュエータ141、右内側アクチュエータ142を備えている。
また、第1実施形態の左アクチュエータ150に代えて、左右方向に配列された左外側アクチュエータ151、左内側アクチュエータ152を備えている。
右内側アクチュエータ142は、右外側アクチュエータ141に対して左右方向内側(中央部124側・左側)に配置されている。
左内側アクチュエータ152は、左外側アクチュエータ151に対して左右方向内側(中央部124側・右側)に配置されている。
【0033】
図9は、第3実施形態のフロア変形装置の制御システムの構成を模式的に示す図である。
第3実施形態においては、コンプレッサ210と各アクチュエータとの間に制御弁220が設けられている。
制御弁220は、アクチュエータ制御ユニット200からの指令に応じて、各アクチュエータに供給される圧縮空気の圧力を個別に調節する機能を有する。
また、第3実施形態においては、アクチュエータ制御ユニット200には、さらに座面面圧センサ203が接続されている。
座面面圧センサ203は、シート1の座面部10に設けられ、乗員Pの臀部、大腿部から受ける荷重(面圧)の分布を検出するセンサである。
座面面圧センサ203は、シート1に対する乗員Pの左右方向位置を検出する乗員位置検出部である。
【0034】
第3実施形態においては、アクチュエータ制御ユニット200は、座面面圧センサ203の出力に基づいて、乗員Pの重心位置のシート1の左右方向中心に対するオフセット量を認識可能となっている。
アクチュエータ制御ユニット200は、認識されたオフセット量に応じて、右外側アクチュエータ141、右内側アクチュエータ142、左外側アクチュエータ151、左内側アクチュエータ152の拡張状態(圧縮空気の供給状態)を制御する。
【0035】
例えば、図8に示すように、乗員Pの重心CGがシート1の中心に対して右側にオフセットしている場合には、右外側アクチュエータ141、右内側アクチュエータ142の拡張量を抑制するとともに左外側アクチュエータ151、左内側アクチュエータ152の拡張量を増加させることにより、可動パネル120における上昇量が比較的小さい領域である中央部124(可動パネル120が凹んで形成される凹部)の位置を、通常時に対して右側へシフトさせている。
アクチュエータ制御ユニット200は、中央部124のシフト量が乗員Pの重心CGのオフセット量と実質的に等しくなるよう各アクチュエータの拡張量を制御する構成とすることができる。
【0036】
以上説明した第3実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、さらにシート1の中心に対して乗員Pが左右方向にオフセットして着座している場合であっても、乗員Pの左右方向位置に応じて凹部の位置を変化させることにより、上述した効果を適切に得ることができる。
【0037】
<第4実施形態>
次に、本発明を適用したフロア変形装置の第4実施形態について説明する。
図10は、第4実施形態のフロア変形装置が設けられた車両の助手席シート周辺部を上方から見た平面図である。
第4実施形態においては、可動パネル120の右側部121と前部123との間、及び、左側部122と前部123の間に、スリットSを形成している。
【0038】
スリットSは、可動パネル120を上下方向に貫通した溝部(長穴部)として形成されている。
スリットSは、平面視において円弧状に形成された前部123に対して放射状となるよう、左右方向外側の端部が左右方向内側の端部に対して前進するよう、前後方向及び左右方向に対してそれぞれ傾斜して延在している。
スリットSの外側の端部は、可動パネル120の外周縁部において開放されている。
以上説明した第4実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果に加えて、さらに、可動パネル120の右側部121、左側部122、前部123を中央部124に対して上昇させる際の各アクチュエータへの追従性が良好となり、上述した効果をより確実に得ることができる。
【0039】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)フロア変形装置、シート、車両の構成は、上述した実施形態の構成に限らず適宜変更することができる。
例えば、実施形態においてシートは一例として助手席用のシートであったが、本発明はこれに限らず、例えば自動運転を行う車両の運転席シートや、2列目以降の後席シートの前方側に設けられる構成としてもよい。
(2)実施形態においては、アクチュエータとして、圧縮空気を供給されることで拡張するバッグ部を有する構成としているが、このようなバッグ部を拡張させる作動流体は圧縮空気に限らず、他の気体や液体であってもよい。
また、アクチュエータの構成もこのようなバッグ部を有する構成に限らず、例えば電動モータ、気圧シリンダ、液圧シリンダを有する構成等、適宜変更することができる。
(3)各実施形態における可動パネルの形状やアクチュエータの配置は一例であって、適宜変更することが可能である。
(4)各実施形態においては、自車両の走行状態に基づいて自動的にアクチュエータを作動させているが、本発明はこれに限らず、乗員等のユーザの操作に応じてアクチュエータを作動させ、可動パネルの左右端部等を昇降させる構成としてもよい。
(5)実施形態における特定の走行状態(ワインディング路走行状態、悪路走行状態)を判別する手法は一例であって、適宜変更することができる。
例えば、操舵装置のトルクセンサ、舵角センサや、車両挙動を測定するジャイロセンサ等の出力に基づいて、特定の走行状態を判別するようにしてもよい。
(6)各実施形態においては、アクチュエータを可動パネルとは独立して設けているが、アクチュエータを可動パネルに設ける構成としてもよい。例えば、可動パネルがフロアマットとして構成される場合に、アクチュエータをフロアマットに取り付けたり、あるいは、アクチュエータをフロアマットと一体化した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
P 乗員 F 足部
T 大腿部
1 シート 10 座面部
20 バックレスト 30 ヘッドレスト
100 フロア変形装置 110 フロアベース
120 可動パネル 121 右側部
122 左側部 123 前部
124 中央部 S スリット
130 固定部 140 右アクチュエータ
141 右外側アクチュエータ 142 右内側アクチュエータ
150 左アクチュエータ 151 左外側アクチュエータ
152 左内側アクチュエータ 160 前アクチュエータ
170 アクチュエータ
200 アクチュエータ制御ユニット
201 横加速度センサ 202 上下加速度センサ
203 座面面圧センサ
210 コンプレッサ 220 制御弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10