(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120373
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】漏れ検査装置および漏れ検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/26 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
G01M3/26 L
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027124
(22)【出願日】2023-02-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】山下 祥弘
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA22
2G067AA25
2G067BB40
2G067CC04
2G067DD04
(57)【要約】
【課題】複数の流路を有する製品の漏れ状態を効率的に検査する。
【解決手段】第1中間部材を介して外部空間と隔てられ第2中間部材を介して互いに隔てられる第1、第2流路を有する製品の漏れ状態を検査する漏れ検査装置200は、第1流路に第1圧力、第2流路に第1圧力より低い第2圧力で検査ガスを供給するガス供給部210,241~243と、各流路からの流出流量を測定する測定部251~253と、コンピュータ300とを備える。コンピュータは、供給後の第1期間の流量に基づいて各流路から外部空間への漏れの有無を判定する第1判定ステップと、第1期間の後の第2期間の流量に基づいて第1流路から第2流路への漏れの有無を判定する第2判定ステップとを実行する。各判定ステップでは、漏れありと判定されると各中間部材に欠陥ありと判定する一方、漏れなしと判定されると各中間部材に欠陥なしと判定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中間部材を介してそれぞれ外部空間と隔てられるとともに、第2中間部材を介して互いに隔てられる第1流路と第2流路とを有する製品の漏れ状態を検査する漏れ検査装置であって、
前記第1流路に第1圧力で検査ガスを供給するとともに、前記第2流路に前記第1圧力より低い第2圧力で前記検査ガスを供給するガス供給部と、
前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから流出する前記検査ガスの流量を測定する測定部と、
コンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、
前記検査ガスの供給後の第1期間に前記測定部により測定された流量に基づいて、前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから前記外部空間への前記検査ガスの漏れの有無を判定する第1判定ステップと、
前記第1期間の後の第2期間に前記測定部により測定された流量に基づいて、前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れの有無を判定する第2判定ステップと、を実行するように構成され、
前記第1判定ステップでは、前記第1期間に前記外部空間への前記検査ガスの漏れがあったと判定されると、前記第1中間部材に欠陥があると判定する一方、前記第1期間に前記外部空間への前記検査ガスの漏れがなかったと判定されると、前記第1中間部材に欠陥がないと判定し、
前記第2判定ステップでは、前記第2期間に前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れがあったと判定されると、前記第2中間部材に欠陥があると判定する一方、前記第2期間に前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れがなかったと判定されると、前記第2中間部材に欠陥がないと判定することを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の漏れ検査装置において、
前記第1中間部材の透過係数と前記第2中間部材の透過係数とは異なることを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の漏れ検査装置において、
前記製品は、燃料電池スタックまたは発電セルであり、
前記第1流路および前記第2流路のそれぞれは、燃料ガスが流れるアノード流路、酸化剤ガスが流れるカソード流路、および冷却媒体が流れる冷却流路のいずれかであり、
前記第2中間部材は、前記アノード流路と前記カソード流路とを隔てるガス透過性部材または前記アノード流路および前記カソード流路と前記冷却流路とを隔てるガス非透過性部材であることを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の漏れ検査装置において、
前記第1流路および前記第2流路のそれぞれを封止する封止部をさらに備え、
前記測定部は、前記ガス供給部から前記第1流路および前記第2流路のそれぞれに供給される前記検査ガスの流量を測定することで、前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから流出する前記検査ガスの流量を測定することを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項5】
第1中間部材を介してそれぞれ外部空間と隔てられるとともに、第2中間部材を介して互いに隔てられる第1流路と第2流路とを有する製品の漏れ状態を検査する漏れ検査方法であって、
前記第1流路に第1圧力で検査ガスを供給するとともに、前記第2流路に前記第1圧力より低い第2圧力で前記検査ガスを供給するガス供給工程と、
前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから流出する前記検査ガスの流量を測定する測定工程と、
前記検査ガスの供給後の第1期間に測定された流量に基づいて、前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから前記外部空間への前記検査ガスの漏れの有無を判定する第1判定工程と、
前記第1期間の後の第2期間に測定された流量に基づいて、前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れの有無を判定する第2判定工程と、を含み、
前記第1判定工程では、前記第1期間に前記外部空間への前記検査ガスの漏れがあったと判定されると、前記第1中間部材に欠陥があると判定する一方、前記第1期間に前記外部空間への前記検査ガスの漏れがなかったと判定されると、前記第1中間部材に欠陥がないと判定し、
前記第2判定工程では、前記第2期間に前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れがあったと判定されると、前記第2中間部材に欠陥があると判定する一方、前記第2期間に前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れがなかったと判定されると、前記第2中間部材に欠陥がないと判定することを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載の漏れ検査方法において、
前記第1流路および前記第2流路のそれぞれを封止する封止工程をさらに含み、
前記測定工程では、前記ガス供給ステップで前記第1流路および前記第2流路のそれぞれに供給される前記検査ガスの流量を測定することで、前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから流出する前記検査ガスの流量を測定することを特徴とする漏れ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流路を有する製品の漏れ状態を検査する漏れ検査装置および漏れ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料電池スタックの漏れ状態を検査するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、燃料電池スタックのアノード流路に燃料ガスを導入し、所定時間経過後の単位時間当たりに燃料電池スタックの外部へ流出するガス量が所定値以下のとき、燃料ガスがシール材を透過している透過状態であると判定し、所定値より大きいとき、燃料ガスが隙間から漏れているリーク状態であると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池スタックや発電セル等の製品は、アノード流路、カソード流路、冷却流路といった複数の流路を有するため、複数の流路の漏れ状態を検査することが好ましい。しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、単一の流路の漏れ状態を検査するだけであり、複数の流路の漏れ状態を効率的に検査することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、第1中間部材を介してそれぞれ外部空間と隔てられるとともに、第2中間部材を介して互いに隔てられる第1流路と第2流路とを有する製品の漏れ状態を検査する漏れ検査装置である。漏れ検査装置は、第1流路に第1圧力で検査ガスを供給するとともに、第2流路に第1圧力より低い第2圧力で検査ガスを供給するガス供給部と、第1流路および第2流路のそれぞれから流出する検査ガスの流量を測定する測定部と、コンピュータと、を備える。コンピュータは、検査ガスの供給後の第1期間に測定部により測定された流量に基づいて、第1流路および第2流路のそれぞれから外部空間への検査ガスの漏れの有無を判定する第1判定ステップと、第1期間の後の第2期間に測定部により測定された流量に基づいて、第1流路から第2流路への検査ガスの漏れの有無を判定する第2判定ステップと、を実行するように構成される。第1判定ステップでは、第1期間に外部空間への検査ガスの漏れがあったと判定されると、第1中間部材に欠陥があると判定する一方、第1期間に外部空間への検査ガスの漏れがなかったと判定されると、第1中間部材に欠陥がないと判定する。第2判定ステップでは、第2期間に第1流路から第2流路への検査ガスの漏れがあったと判定されると、第2中間部材に欠陥があると判定する一方、第2期間に第1流路から第2流路への検査ガスの漏れがなかったと判定されると、第2中間部材に欠陥がないと判定する。
【0006】
本発明の一態様は、第1中間部材を介してそれぞれ外部空間と隔てられるとともに、第2中間部材を介して互いに隔てられる第1流路と第2流路とを有する製品の漏れ状態を検査する漏れ検査方法である。漏れ検査方法は、第1流路に第1圧力で検査ガスを供給するとともに、第2流路に第1圧力より低い第2圧力で検査ガスを供給するガス供給工程と、第1流路および第2流路のそれぞれから流出する検査ガスの流量を測定する測定工程と、検査ガスの供給後の第1期間に測定された流量に基づいて、第1流路および第2流路のそれぞれから外部空間への検査ガスの漏れの有無を判定する第1判定工程と、第1期間の後の第2期間に測定された流量に基づいて、第1流路から第2流路への検査ガスの漏れの有無を判定する第2判定工程と、を含む。第1判定工程では、第1期間に外部空間への検査ガスの漏れがあったと判定されると、第1中間部材に欠陥があると判定する一方、第1期間に外部空間への検査ガスの漏れがなかったと判定されると、第1中間部材に欠陥がないと判定する。第2判定工程では、第2期間に第1流路から第2流路への検査ガスの漏れがあったと判定されると、第2中間部材に欠陥があると判定する一方、第2期間に第1流路から第2流路への検査ガスの漏れがなかったと判定されると、第2中間部材に欠陥がないと判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の流路を有する製品の漏れ状態を効率的に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る漏れ検査装置が適用される燃料電池スタックの全体構成を概略的に示す斜視図。
【
図2】
図1の燃料電池スタックに含まれる電極アッセンブリの概略構成を示す斜視図。
【
図3】
図1の発電セルの上端部付近の構成の一例を示す部分断面図。
【
図4A】後側から見た
図3の溶接ラインの配設例を示すセパレータの正面図。
【
図4B】後側から見た
図3のシールラインの配設例を示すセパレータの正面図。
【
図4C】前側から見た
図3のシールラインの配設例を示すセパレータの正面図。
【
図5】
図3のアノード流路とカソード流路と冷却流路と外部空間との関係を説明するための概念図。
【
図6】本発明の実施形態に係る漏れ検査装置の要部構成の一例を概略的に示すブロック図。
【
図7】
図6のコントローラによる漏れの状態の判定について説明するための図。
【
図8】本発明の実施形態に係る漏れ検査装置により実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図8を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る漏れ検査装置は、複数の流路を有する製品の漏れ検査に適用され、特に、燃料電池スタックや発電セルのアノード流路、カソード流路、および冷却流路の漏れ検査に適用される。燃料電池スタックは、燃料電池の構成要素であり、発電セルは、燃料電池スタックの構成要素である。燃料電池は、例えば車両に搭載され、車両駆動用の電力を発生することができる。まず、燃料電池スタックの全体構成を概略的に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る漏れ検査装置が適用される燃料電池スタック100の全体構成を概略的に示す斜視図である。以下では、便宜上、図示のように互いに直交する三軸方向を、前後方向、左右方向および上下方向と定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。これらの方向は、車両の前後方向、左右方向および上下方向と同一であるとは限らない。例えば
図1の前後方向は、車両の前後方向であってもよく、左右方向であってもよく、上下方向であってもよい。
【0011】
図1に示すように、燃料電池スタック100は、複数の発電セル1を前後方向に積層して構成されたセル積層体101と、セル積層体101の前後両端部に配置されたエンドユニット102とを有し、全体が略直方体形状を呈する。セル積層体101の左右方向の長さは、上下方向の長さよりも長い。
図1には、便宜上、単一の発電セル1が示される。発電セル1は、電解質膜と電極とを含む接合体を有する電極アッセンブリ2と、電極アッセンブリ2の前後両側に配置され、電極アッセンブリ2を挟持するセパレータ3,3と、を有する。電極アッセンブリ2とセパレータ3とは、前後方向に交互に配置される。
【0012】
セパレータ3は、断面が波板状の前後一対の金属製の薄板を有し、これら薄板の外周同士を接合して一体に構成される。セパレータ3には耐腐食性に優れた導電性の材料が用いられ、例えばチタン、チタン合金、ステンレス等を用いることができる。セパレータ3の内部には、冷却媒体が流れる冷却流路がプレス成形などによって形成され、冷却媒体の流れにより発電セル1の発電面が冷却される。冷却媒体としては例えば水を用いることができる。電極アッセンブリ2に対向するセパレータ3の表面(前面および後面)は、電極アッセンブリ2の接合体との間にガス流路を形成するように凹凸状に構成される。
【0013】
電極アッセンブリ2の前側のセパレータ3は、例えばアノード側のセパレータ(アノードセパレータ)であり、アノードセパレータ3と電極アッセンブリ2の接合体との間に、燃料ガスが流れるアノード流路が形成される。電極アッセンブリ2の後側のセパレータ3は、例えばカソード側のセパレータ(カソードセパレータ)であり、カソードセパレータ3と電極アッセンブリ2の接合体との間に、酸化剤ガスが流れるカソード流路が形成される。燃料ガスとしては例えば水素ガスを、酸化剤ガスとしては例えば空気を用いることができる。燃料ガスと酸化剤ガスとを区別せずに、これらを反応ガスと呼ぶこともある。
【0014】
図2は、電極アッセンブリ2の概略構成を示す斜視図である。
図2に示すように、電極アッセンブリ2は、略矩形状の接合体20と、接合体20を支持するフレーム21と、を有する。接合体20は膜電極接合体(いわゆるMEA;Membrane Electrode Assembly)であり、電解質膜と、電解質膜の前面に設けられたアノード電極と、電解質膜の後面に設けられたカソード電極とを有する。
【0015】
電解質膜は、例えば固体高分子電解質膜であり、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜を用いることができる。フッ素系電解質に限らず、炭化水素系電解質を用いることもできる。
【0016】
アノード電極は、電解質膜の前面に形成された触媒層と触媒層の前面に形成されたガス拡散層とを有する。カソード電極は、電解質膜の後面に形成された触媒層と触媒層の後面に形成されたガス拡散層とを有する。各電極の触媒層には、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素の電気化学反応を促進する触媒金属、プロトン伝導性を有する電解質、および電子伝導性を有するカーボン粒子等が含まれる。各電極のガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材、例えばカーボン多孔質体により構成される。
【0017】
アノード電極では、アノード流路およびガス拡散層を介して供給された燃料ガス(水素)が、触媒の作用によってイオン化され、電解質膜を通過してカソード電極側へ移動する。このとき生じた電子は、外部回路を通過し、電気エネルギとして取り出される。カソード電極では、カソード流路およびガス拡散層を介して供給された酸化剤ガス(酸素)と、アノード電極から導かれた水素イオンおよびアノード電極から移動した電子とが反応し、水が生成される。生成された水は、電解質膜に適度な湿度を与え、余剰な水は電極アッセンブリ2の外部へ排出される。
【0018】
フレーム21は、略矩形状を呈する薄板であり、絶縁性を有する樹脂やゴム等により構成される。フレーム21の中央部には、略矩形状の開口部21aが設けられ、開口部21aの全体を覆うように接合体20が設けられる。フレーム21の開口部21aの左側には、フレーム21を前後方向に貫通する3つの貫通孔211~213が上下方向に並んで開口され、開口部21aの右側には、フレーム21を前後方向に貫通する3つの貫通孔214~216が上下方向に並んで開口される。
【0019】
図1に示すように、電極アッセンブリ2の前後のセパレータ3には、フレーム21の貫通孔211~216に対応する位置に、セパレータ3を前後方向に貫通する貫通孔311~316がそれぞれ開口される。貫通孔311~316は、フレーム21の貫通孔211~216にそれぞれ連通する。これら互いに連通する貫通孔211~216,311~316の集合により、セル積層体101を貫通して前後方向に延在する流路PA1~PA6(便宜上、矢印で示す)が形成される。流路PA1~PA6は、マニホールド(排出マニホールド)と呼ばれることもある。流路PA1~PA6は、燃料電池スタック100の外部のマニホールドに接続される。
【0020】
貫通孔211,311を介して前方に延びる流路PA1(実線矢印)は、燃料ガス供給流路である。貫通孔216,316を介して後方に延びる流路PA6(実線矢印)は、燃料ガス排出流路である。燃料ガス供給流路PA1および燃料ガス排出流路PA6は、接合体20の前面に対向するアノード流路と連通し、実線矢印に示すように、燃料ガス供給流路PA1と燃料ガス排出流路PA6とを介して、アノード流路を左右方向に燃料ガスが流れる。燃料ガス排出流路PA6を流れる燃料ガスは、アノード電極で一部が使用された後の燃料ガスであり、これを燃料排ガスと呼ぶことがある。
【0021】
貫通孔214,314を介して前方に延びる流路PA4(点線矢印)は、酸化剤ガス供給流路である。貫通孔213,313を介して後方に延びる流路PA3(点線矢印)は、酸化剤ガス排出流路である。酸化剤ガス供給流路PA4および酸化剤ガス排出流路PA3は、接合体20の後面に対向するカソード流路と連通し、点線矢印に示すように、酸化剤ガス供給流路PA4と酸化剤ガス排出流路PA3とを介して、カソード流路を左右方向に酸化剤ガスが流れる。酸化剤ガス排出流路PA3を流れる酸化剤ガスは、カソード電極で一部が使用された後の酸化剤ガスであり、これを酸化剤排ガスと呼ぶことがある。燃料排ガスと酸化剤排ガスとを区別せずに、これらを反応排ガスと呼ぶこともある。
【0022】
貫通孔215,315を介して前方に延びる流路PA5(一点鎖線矢印)は、冷却媒体供給流路である。貫通孔212,312を介して後方に延びる流路PA2(一点鎖線矢印)は、冷却媒体排出流路である。冷却媒体供給流路PA5および冷却媒体排出流路PA2は、セパレータ3の内部の冷却流路と連通しており、冷却媒体供給流路PA5と冷却媒体排出流路PA2とを介して、冷却流路を冷却媒体が流れる。
【0023】
セル積層体101の前後両側に配置されたエンドユニット102は、それぞれターミナルプレート4と、絶縁プレート5と、エンドプレート6とを有する。なお、前側のエンドユニット102をドライ側エンドユニット、後側のエンドユニット102をウェット側エンドユニットと呼ぶこともある。前後一対のターミナルプレート4,4は、セル積層体101を挟んでその前後両側に配置される。前後一対の絶縁プレート5,5は、ターミナルプレート4,4を挟んでその前後両側に配置される。前後一対のエンドプレート6,6は、絶縁プレート5,5を挟んでその前後両側に配置される。
【0024】
ターミナルプレート4は、金属製の略矩形状の板状部材であり、セル積層体101で電気化学反応により生成された電力を取り出すための端子部を有する。絶縁プレート5は、非導電性を有する樹脂製またはゴム製の略矩形状の板状部材であり、ターミナルプレート4とエンドプレート6とを電気的に絶縁する。エンドプレート6は、金属製または高強度に構成された樹脂製の板状部材であり、エンドプレート6には、例えば前後のエンドプレート6,6同士を連結する前後方向細長の連結部材がボルトにより固定される。燃料電池スタック100は、連結部材を介してエンドプレート6,6により前後方向に押圧された状態で、保持される。
【0025】
後側のエンドユニット102には、エンドユニット102を前後方向に貫通する複数の貫通孔102a~102fが開口される。なお、貫通孔102a~102fは、それぞれターミナルプレート4を貫通する貫通孔、絶縁プレート5を貫通する貫通孔およびエンドプレート6を貫通する貫通孔を含むが、
図1では、便宜上、これらをまとめて貫通孔102a~102fとして示す。貫通孔102aは、燃料ガス供給流路PA1の延長線上に開口され、燃料ガス供給流路PA1に連通する。貫通孔102bは、冷却媒体排出流路PA2の延長線上に開口され、冷却媒体排出流路PA2に連通する。貫通孔102cは、酸化剤ガス排出流路PA3の延長線上に開口され、酸化剤ガス排出流路PA3に連通する。貫通孔102dは、酸化剤ガス供給流路PA4の延長線上に開口され、酸化剤ガス供給流路PA4に連通する。貫通孔102eは、冷却媒体供給流路PA5の延長線上に開口され、冷却媒体供給流路PA5に連通する。貫通孔102fは、燃料ガス排出流路PA6の延長線上に開口され、燃料ガス排出流路PA6に連通する。
【0026】
より詳しくは、貫通孔102aには、エジェクタ、インジェクタなどを介して、高圧の燃料ガスが貯留された燃料ガスタンクが接続され、燃料ガスタンク内の燃料ガスが貫通孔102aを介して燃料電池スタック100に供給される。貫通孔102fには、気液分離機が接続され、貫通孔102fを介して排出された燃料ガス(燃料排ガス)は、気液分離機で燃料ガスと水とに分離される。分離された燃料ガスは、エジェクタを介して吸い込まれ、燃料電池スタック100に再び供給される。分離された水は、ドレン流路を介して外部に排出される。
【0027】
貫通孔102dには、酸化剤ガス供給用のコンプレッサが接続され、コンプレッサで圧縮された酸化剤ガスが貫通孔102dを介して燃料電池スタック100に供給される。貫通孔102cからは、酸化剤ガス(酸化剤排ガス)が外部に流出する。貫通孔102bには、冷却媒体供給用のポンプが接続され、貫通孔102bを介して燃料電池スタック100に冷却媒体が供給される。貫通孔102eからは冷却媒体が排出される。排出された冷却媒体は、ラジエータでの熱交換により冷却され、貫通孔102bを介して再び燃料電池スタック100に供給される。
【0028】
以上が燃料電池スタック100の概略構成である。燃料電池スタック100は略ボックス状のケースに収納され、車両に搭載される。
【0029】
このような燃料電池スタック100や発電セル1は、車両への搭載等で実際に製品として使用される前に健全性を確認する必要がある。この場合、アノード流路、カソード流路、および冷却流路のそれぞれについて漏れ状態を検査し、各流路の健全性を確認することで、各流路を構成する部材を含む燃料電池スタック100や発電セル1全体の健全性を確認することができる。各流路を構成する部材およびその代表的な欠陥について説明する。
【0030】
図3は、発電セル1の上端部付近の構成の一例を示す部分断面図である。
図3に示すように、電極アッセンブリ2の接合体20は、電解質膜22と、電解質膜22の前面に設けられたアノード電極23と、電解質膜22の後面に設けられたカソード電極24とを有する。接合体20の前面、すなわちアノード電極23の表面は、接合体20のアノード面20aを構成する。接合体20の後面、すなわちカソード電極24の表面は、接合体20のカソード面20bを構成する。セパレータ3は、前後一対の薄板3a,3bを有する。
【0031】
燃料ガスが流れるアノード流路Anは、電極アッセンブリ2の前側のアノードセパレータ3の後側の薄板3aと、接合体20のアノード面20aとの間に形成される。酸化剤ガスが流れるカソード流路Caは、電極アッセンブリ2の後側のカソードセパレータ3の前側の薄板3bと、接合体20のカソード面20bとの間に形成される。冷却媒体が流れる冷却流路Coは、セパレータ3の前後一対の薄板3a,3bの間に形成される。
【0032】
アノード流路Anとカソード流路Caとは、電極アッセンブリ2の接合体20とセパレータ3とを介して互いに隔てられる。接合体20の電解質膜22は、固体高分子電解質膜等のガス透過性を有する材質で構成され、所定の透過係数でガスを透過させる。セパレータ3は、金属製であり、ガス透過性を有しない。電解質膜22は、極薄いため、表面や内部に生じた亀裂が進展して破断(欠陥)が生じる場合がある。あるいは、電解質膜22とフレーム21との間に隙間(欠陥)が生じる場合がある。この場合、
図3に矢印Aで示すように、アノード流路Anとカソード流路Caとが連通する。
【0033】
アノード流路Anおよびカソード流路Caの上端側には、電極アッセンブリ2のフレーム21と、セパレータ3との間に、樹脂やゴム等のシール部材により構成されるシールライン7が設けられる。アノード流路Anおよびカソード流路Caは、それぞれシールライン7を介して外部空間EXと隔てられる。冷却流路Coの上端側には、セパレータ3の前後一対の薄板3a,3bを接合する溶接箇所である溶接ライン8が設けられる。冷却流路Coは、溶接ライン8を介して外部空間EXと隔てられる。
【0034】
溶接ライン8は、溶接箇所における前後一対の薄板3a,3bの間に多少でも空間が存在すると、空間内の空気等が溶接時の高温により熱膨張することで、溶接箇所のセパレータ3に破断(欠陥)が生じる場合がある。この場合、
図3に矢印Bで示すように、アノード流路Anおよびカソード流路Caのそれぞれと、冷却流路Coとが連通する。
【0035】
図4Aは、後側から見た溶接ライン8の配設例を示すセパレータ3の正面図であり、セパレータ3の前後一対の薄板3a,3bの溶接箇所を示す。
図4Aに示すように、溶接ライン8は、薄板3a,3bの間に形成された冷却流路Co全体を囲むように設けられ、これにより冷却流路Coと外部空間EXとが隔てられる。また、溶接ライン8は、貫通孔311(燃料ガス供給流路PA1)および貫通孔316(燃料ガス排出流路PA6)のそれぞれを囲むように設けられ、これにより冷却流路Coとアノード流路Anとが隔てられる。さらに、溶接ライン8は、貫通孔314(酸化剤ガス供給流路PA4)および貫通孔313(酸化剤ガス排出流路PA3)のそれぞれを囲むように設けられ、これにより冷却流路Coとカソード流路Caとが隔てられる。
【0036】
図4Bは、後側から見たシールライン7の配設例を示すセパレータ3の正面図であり、アノード流路Anに面するセパレータ3(薄板3a)の表面を示す。
図4Bに示すように、シールライン7は、貫通孔311(燃料ガス供給流路PA1)および貫通孔316(燃料ガス排出流路PA6)を含むアノード流路An全体を囲むように設けられ、これによりアノード流路Anと外部空間EXとが隔てられる。また、シールライン7は、貫通孔314(酸化剤ガス供給流路PA4)および貫通孔313(酸化剤ガス排出流路PA3)のそれぞれを囲むように設けられ、これによりカソード流路Caと外部空間EXとが隔てられる。さらに、シールライン7は、貫通孔312(冷却媒体排出流路PA2)および貫通孔315(冷却媒体供給流路PA5)のそれぞれを囲むように設けられ、これにより冷却流路Coと外部空間EXとが隔てられる。
【0037】
図4Cは、前側から見たシールライン7の配設例を示すセパレータ3の正面図であり、カソード流路Caに面するセパレータ3(薄板3b)の表面を示す。
図4Cに示すように、シールライン7は、貫通孔314(酸化剤ガス供給流路PA4)および貫通孔313(酸化剤ガス排出流路PA3)を含むカソード流路Ca全体を囲むように設けられ、これによりカソード流路Caと外部空間EXとが隔てられる。また、シールライン7は、貫通孔311(燃料ガス供給流路PA1)および貫通孔316(燃料ガス排出流路PA6)のそれぞれを囲むように設けられ、これによりアノード流路Anと外部空間EXとが隔てられる。さらに、シールライン7は、貫通孔312(冷却媒体排出流路PA2)および貫通孔315(冷却媒体供給流路PA5)のそれぞれを囲むように設けられ、これにより冷却流路Coと外部空間EXとが隔てられる。
【0038】
シールライン7は、樹脂やゴム等のガス透過性を有する材質で構成され、電解質膜22の透過係数とは異なる所定の透過係数でガスを透過させる。電極アッセンブリ2のフレーム21やセパレータ3は、可撓性を有するため、延在方向(左右方向または上下方向)の中央付近において、
図3に示すシールライン7と電極アッセンブリ2のフレーム21との間に隙間(欠陥)が生じる場合がある。この場合、
図3、
図4B、および
図4Cに矢印Cで示すように、アノード流路Anと外部空間EX、カソード流路Caと外部空間EX、あるいは冷却流路Coと外部空間EXとがそれぞれ連通する。
【0039】
図5は、アノード流路Anとカソード流路Caと冷却流路Coと外部空間EXとの関係を説明するための概念図である。アノード流路Anとカソード流路Caとは、電解質膜22を含む電極アッセンブリ2を介して互いに隔てられる。電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)に欠陥がない場合、アノード流路Anとカソード流路Caとの間を、差圧および電解質膜22の透過係数に応じてガスが透過する(点線矢印)。電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)に欠陥がある場合、アノード流路Anとカソード流路Caとが連通し、差圧に応じてガスが移動する(矢印A)。
【0040】
アノード流路Anおよびカソード流路Caのそれぞれと冷却流路Coとは、溶接ライン8を含むセパレータ3を介して互いに隔てられる。セパレータ3は、金属製であり、ガス透過性を有しないため、セパレータ3(溶接ライン8)に欠陥がない場合、アノード流路Anおよびカソード流路Caのそれぞれと冷却流路Coとの間をガスが移動することはない。セパレータ3(溶接ライン8)に欠陥がある場合、アノード流路Anおよびカソード流路Caのそれぞれと冷却流路Coとが連通し、差圧に応じてガスが移動する(矢印B)。
【0041】
アノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coは、それぞれシールライン7を介して外部空間EXと隔てられる。シールライン7(周辺)に欠陥がない場合、アノード流路Anと外部空間EX、カソード流路Caと外部空間EX、あるいは冷却流路Coと外部空間EXとの間を、差圧およびシールライン7を構成するシール部材の透過係数に応じてガスが透過する(点線矢印)。シールライン7(周辺)に欠陥がある場合、アノード流路Anと外部空間EX、カソード流路Caと外部空間EX、あるいは冷却流路Coと外部空間EXとが連通し、差圧に応じてガスが移動する(矢印C)。
【0042】
したがって、アノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれについて漏れ状態を検査することで、燃料電池スタック100や発電セル1の健全性を確認するとともに欠陥のある箇所を特定することができる。本実施形態では、燃料電池スタック100や発電セル1の複数の流路のそれぞれからの漏れ状態を効率的に検査することができるよう、以下のように漏れ検査装置を構成する。
【0043】
図6は、本発明の実施形態に係る漏れ検査装置(以下、装置)200の要部構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図6に示すように、装置200は、高圧の検査ガスが貯留された検査ガスタンク210と、検査ガスタンク210と燃料電池スタック100のアノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれに連通する貫通孔102a,102d,102bとを接続する供給ライン221~223と、供給ライン221~223を開閉する開閉弁230と、供給ライン221~223にそれぞれ設けられたレギュレータ241~243および流量計251~253とを備える。検査ガスタンク210とレギュレータ241~243とは、ガス供給部を構成する。
【0044】
装置200は、さらに、燃料電池スタック100のアノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれに連通する貫通孔102c,102f,102eに接続される排出ライン260と、排出ライン260を開閉する開閉弁270と、排出ライン260に設けられた酸素濃度センサ280および真空ポンプ290とを備える。装置200は、開閉弁230,270、流量計251~253、酸素濃度センサ280、および真空ポンプ290に電気的に接続されたコントローラ300も備える。開閉弁230,270および真空ポンプ290は、コントローラ300により制御される。流量計251~253および酸素濃度センサ280による測定値は、コントローラ300に入力される。
【0045】
装置200による漏れ検査を適用する燃料電池スタック100は、完全なセル積層体101を有するものとしてもよく、一部の発電セル1(例えば単一の発電セル1)のみを積層したセル積層体101を有するものとしてもよい。完全なセル積層体101を有する燃料電池スタック100について漏れ検査を行う場合、いずれの発電セル1にも欠陥がなく、燃料電池スタック100全体に欠陥がないことを迅速に確認することができる。一部の発電セル1のみ(例えば単一の発電セル1)について漏れ検査を行う場合、欠陥があり、交換すべき発電セル1を迅速に特定することができる。予め健全性が確認された発電セル1と検査対象の発電セル1とを組み合わせて積層したセル積層体101を有する燃料電池スタック100について漏れ検査を行ってもよい。
【0046】
ガス供給部が供給する検査ガスとしては、酸化剤ガスである空気よりも透過性の高いガスを用いることが好ましく、例えばヘリウム等の分子量の小さいガスを用いることができる。アノード流路Anへの検査ガスの供給圧力は、レギュレータ241の設定圧力P1として予め設定され、大気圧P0より十分高い圧力(例えば200[kPa])に設定される(P0<P1)。カソード流路Caへの検査ガスの供給圧力は、レギュレータ242の設定圧力P2として予め設定され、アノード流路Anの設定圧力P1より十分低く、大気圧より十分高い圧力(例えば100[kPa])に設定される(P0<P2<P1)。冷却流路Coへの検査ガスの供給圧力は、レギュレータ243の設定圧力P3として予め設定され、アノード流路Anの設定圧力P1より十分低く、カソード流路Caの設定圧力P2より十分高い圧力(例えば150[kPa])に設定される(P0<P2<P3<P1)。
【0047】
漏れ検査では、開閉弁270が閉鎖され、排出ライン260が閉鎖されることで、各流路An,Ca,Coが封止される。また、開閉弁230が開放され、供給ライン221~223が開放されることで、検査ガスが連続的に供給され、各流路An,Ca,Coの圧力が設定圧力P1~P3に維持される。このような状態で、流量計251~253により各流路An,Ca,Coに供給される検査ガスの流量VAn,VCa,VCoを測定することで、各流路An,Ca,Coから外部空間EXに流出する検査ガスの流量VAn,VCa,VCoを間接的に測定することができる。
【0048】
コントローラ300は、CPU、RAM、ROM、I/Oインタフェース、その他の周辺回路を有するコンピュータを含んで構成される。コントローラ300は、流量計251~253により測定された、各流路An,Ca,Coから外部空間EXに流出する検査ガスの流量VAn,VCa,VCo(例えば、体積流量[mm3/min])に基づいて、各流路からの漏れの状態を判定する。
【0049】
図7は、コントローラ300による漏れの状態の判定について説明するための図であり、検査ガス供給後に各流路An,Ca,Coから外部空間EXに流出した検査ガスの流出量(例えば、流出体積[mm
3])の時間変化を示す。検査ガスの流出量は、検査ガス供給開始時点から現時点までに、流量計251~253により所定周期で測定された時系列の流量V
An,V
Ca,V
Coに基づいて算出することができる。
【0050】
図7に示すように、各流路An,Ca,Coと外部空間EXとを隔てるシールライン7(周辺)に欠陥がある場合は、設定圧力P1~P3の検査ガスを供給した直後から、換言すると検査ガス供給後、所定時間が経過するまでの第1期間に流出量が発生する。一方、各流路An,Ca,Coと外部空間EXとを隔てるシールライン7(周辺)に欠陥がない場合は、第1期間には流出量が発生しない。
【0051】
<第1判定>
第1期間に流量計251~253により測定された流量VAn,VCa,VCoが“0”を超え、流出量が発生していると判定されると、その供給ライン221~223に対応する流路An,Ca,Coから外部空間EXへの漏れがあると判定することができる。また、漏れがあると判定された流路An,Ca,Coと外部空間EXとを隔てるシールライン7(周辺)に欠陥があると判定することができる。
【0052】
一方、第1期間に流量計251~253により測定された流量VAn,VCa,VCoが“0”であり、流出量が発生していないと判定されると、その供給ライン221~223に対応する流路An,Ca,Coから外部空間EXへの漏れがないと判定することができる。また、漏れがないと判定された流路An,Ca,Coと外部空間EXとを隔てるシールライン7(周辺)に欠陥がないと判定することができる。
【0053】
流路An,Ca,Co間を隔てる電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)やセパレータ3(溶接ライン8)に欠陥がある場合は、相対的に低い設定圧力P2,P3で検査ガスが供給される流路Ca,Coの圧力が上昇する。すなわち、アノード流路Anとカソード流路Caとを隔てる電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)に欠陥がある場合は、カソード流路Caの圧力が、カソード流路Caが連通するアノード流路Anの設定圧力P1まで上昇する。
【0054】
また、アノード流路Anおよびカソード流路Caのそれぞれと冷却流路Coとを隔てるセパレータ3(溶接ライン8)に欠陥がある場合は、カソード流路Caがアノード流路Anおよびカソード流路Caのそれぞれと連通する。この場合、先ず冷却流路Coの圧力が、冷却流路Coが連通するアノード流路Anの設定圧力P1まで上昇し、次いでカソード流路Caの圧力が、カソード流路Caが連通する冷却流路Coの上昇した圧力P1まで上昇する。
【0055】
各流路An,Ca,Coと外部空間EXとを隔てるシールライン7(周辺)に欠陥がない場合は、設定圧力P1~P3の検査ガスを供給した後、所定時間が経過した後、換言すると第1期間の後の第2期間に入ると流出量が発生する。すなわち、各流路An,Ca,Coの圧力と大気圧P0との差圧に応じて、検査ガスがシールライン7を透過し、各流路An,Ca,Coから外部空間EXに流出する。検査ガスがシールライン7を透過するときの流量VAn,VCa,VCoと差圧との関係は、下式(i)で表される。
流量[mm3/min]=差圧[Pa]×透過係数[mm2/Pa・min]
×透過面積[mm2]/透過幅[mm] ・・・(i)
【0056】
式(i)において、シールライン7を構成するシール部材の透過係数、各流路An,Ca,Coと外部空間EXとを隔てるシールライン7の透過面積および透過幅は、既知の定数である。したがって、式(i)と、第2期間に流量計251~253により測定された流量VAn,VCa,VCoとに基づいて、各流路An,Ca,Coの圧力と大気圧P0との差圧を算出し、各流路An,Ca,Coの圧力を算出することができる。
【0057】
<第2判定>
第1判定でシールライン7(周辺)に欠陥がないと判定されると、第2判定が行われる。第2判定では、第2期間に流量計252により測定された流量VCaに基づいてカソード流路Caの圧力を算出し、カソード流路Caの圧力が設定圧力P2に維持されているか否かを判定する。カソード流路Caの圧力が設定圧力P2に維持されていない、すなわちアノード流路Anの設定圧力P1まで上昇していると判定されると、アノード流路Anからカソード流路Caへの漏れがあると判定することができる。この場合、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)またはセパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定することができる。
【0058】
一方、カソード流路Caの圧力が設定圧力P2に維持されていると判定されると、アノード流路Anからカソード流路Caへの漏れがないと判定することができる。この場合、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)にもセパレータ3(溶接ライン8)にも欠陥がないと判定することができる。
【0059】
<第3判定>
第2判定で電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)またはセパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定されると、第3判定が行われる。第3判定では、第2期間に流量計252により測定された流量VCoに基づいて冷却流路Coの圧力を算出し、冷却流路Coの圧力が設定圧力P3に維持されているか否かを判定する。冷却流路Coの圧力が設定圧力P3に維持されていない、すなわちアノード流路Anの設定圧力P1まで上昇していると判定されると、アノード流路Anから冷却流路Coへの漏れがあると判定することができる。この場合、セパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定することができる。
【0060】
一方、冷却流路Coの圧力が設定圧力P3に維持されていると判定されると、アノード流路Anから冷却流路Coへの漏れがないと判定することができる。この場合、セパレータ3(溶接ライン8)には欠陥がないと判定することができる。
【0061】
第2判定および第3判定では、カソード流路Caや冷却流路Coの圧力の算出に代えて、流量計251~253により測定された流量VAn,VCa,VCoや、各流路An,Ca,Coから外部空間EXへの検査ガスの流出量の時間変化を比較してもよい。すなわち、各流路An,Ca,Coと外部空間EXとを隔てるシールライン7の透過係数および透過幅は等しく、透過面積も概ね等しいため、圧力の高い流路から順に透過による流出が開始する。また、圧力の高い流路ほど流量が大きくなる。
【0062】
第2判定では、第2期間に流量計251,252により測定された流量V
An,V
Caの時間変化に基づいて、アノード流路Anおよびカソード流路Caからの流出が同時期に開始し、流量V
An,V
Ca(
図7の流出量の増加率)が同程度であるか否かを判定してもよい。アノード流路Anおよびカソード流路Caからの流出が同時期に開始し、流量V
An,V
Caが同程度であると判定されると、カソード流路Caの圧力がアノード流路Anの設定圧力P1まで上昇していると判定することができる。この場合、アノード流路Anからカソード流路Caへの漏れがあり、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)またはセパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定することができる。
【0063】
一方、アノード流路Anおよびカソード流路Caからの流出が同時期に開始せず、流量VAn,VCaが同程度でないと判定されると、カソード流路Caの圧力が設定圧力P2に維持されていると判定することができる。この場合、アノード流路Anからカソード流路Caへの漏れがなく、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)にもセパレータ3(溶接ライン8)にも欠陥がないと判定することができる。なお、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)にもセパレータ3(溶接ライン8)にも欠陥がなく、流路間の漏れがない場合は、各流路An,Ca,Coの圧力が設定圧力P1~P3に維持されている。この場合、設定圧力P1~P3(P1>P3>P2)が高いアノード流路An、冷却流路Co、カソード流路Caの順に流出が開始し、流量VAn,VCa,VCoもこの順に大きくなる(VAn>VCo>VCa)。
【0064】
第3判定では、第2期間に流量計251~253により測定された流量VAn,VCa,VCoに基づいて、各流路An,Ca,Coからの流出が同時期に開始し、流量VAn,VCa,VCoが同程度であるか否かを判定してもよい。各流路An,Ca,Coからの流出が同時期に開始し、流量VAn,VCa,VCoが同程度であると判定されると、カソード流路Caおよび冷却流路Coの圧力がアノード流路Anの設定圧力P1まで上昇していると判定することができる。この場合、アノード流路Anから冷却流路Co、冷却流路Coからカソード流路Caへの漏れがあり、セパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定することができる。
【0065】
一方、各流路An,Ca,Coからの流出が同時期に開始せず、流量VAn,VCa,VCoが同程度でないと判定されると、冷却流路Coの圧力が設定圧力P3に維持されていると判定することができる。この場合、アノード流路Anから冷却流路Coへの漏れがなく、セパレータ3(溶接ライン8)には欠陥がないと判定することができる。なお、セパレータ3(溶接ライン8)に欠陥がなく、アノード流路Anから冷却流路Co、冷却流路Coからカソード流路Caへの漏れがない場合は、冷却流路Coの圧力が設定圧力P3に維持されている。この場合、設定圧力P1のアノード流路Anおよびアノード流路Anの設定圧力P1まで圧力が上昇しているカソード流路Caからの流出が開始した後、設定圧力P3(P3<P1)の冷却流路Coからの流出が開始する。また、冷却流路Coから流出する流量VCoは、アノード流路Anおよびカソード流路Caから流出する流量VAn,VCaより小さくなる(VAn=VCa>VCo)。
【0066】
図8は、装置200のコントローラ300により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、先ずステップS1で、検査ガスにより各流路An,Ca,Coを掃気する。この場合、開閉弁230,270を開放するように制御し、供給ライン221~223と排出ライン260とを開放し、真空ポンプ290を作動するように制御し、酸素濃度センサにより測定された排出ライン260の酸素濃度が規定濃度以下になるまで待機する。
【0067】
ステップS1で酸素濃度が規定濃度以下になると、ステップS2に進み、開閉弁270を閉鎖するように制御し、排出ライン260を閉鎖することで各流路An,Ca,Coを封止し、真空ポンプ290を停止するように制御し、漏れ検査を開始する。ステップS2で各流路An,Ca,Coが封止されると、各流路An,Ca,Coの圧力が対応するレギュレータ241~243の設定圧力P1~P3に到達する。次いでステップS3で、所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS3は、肯定されるまで繰り返される。
【0068】
ステップS3で肯定されると、ステップS4に進み、第1期間に流量計251~253により測定された流量VAn,VCa,VCoに基づいて、各流路An,Ca,Coから外部空間EXへの漏れがあるか否かを判定する(第1判定)。ステップS4で肯定されると、ステップS5に進み、シールライン7(周辺)に欠陥があると判定してステップS11に進む。
【0069】
ステップS4で否定されると、ステップS6に進み、第2期間に流量計251~253により測定された流量VAn,VCa,VCoに基づいて、カソード流路Caの圧力が設定圧力P2に維持されているか否かを判定する(第2判定)。ステップS6で肯定されると、ステップS7に進み、シールライン7(周辺)、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)、およびセパレータ3(溶接ライン8)のいずれにも欠陥がないと判定してステップS11に進む。ステップS6で否定されると、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)またはセパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定し、ステップS8に進む。
【0070】
ステップS8では、第2期間に流量計251~253により測定された流量VAn,VCa,VCoに基づいて、冷却流路Coの圧力が設定圧力P3に維持されているか否かを判定する(第3判定)。ステップS8で肯定されると、ステップS9に進み、シールライン7(周辺)およびセパレータ3(溶接ライン8)には欠陥がなく、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)に欠陥があると判定してステップS11に進む。ステップS8で否定されると、ステップS10に進み、シールライン7(周辺)および電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)には欠陥がなく、セパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定してステップS11に進む。
【0071】
ステップS11では、開閉弁230を閉鎖するように制御し、供給ライン221~223を閉鎖することで検査ガスの供給を停止する。また、開閉弁270を開放するように制御し、排出ライン260を開放することで各流路An,Ca,Coを大気開放し、漏れ検査を終了する。
【0072】
このように、複数の流路An,Ca,Coに異なる設定圧力P1~P3で同時に検査ガスを供給し、各流路An,Ca,Coから流出する流量VAn,VCa,VCoを監視することで、燃料電池スタック100や発電セル1の漏れ状態を効率的に検査することができる。すなわち、1回の漏れ検査で各流路An,Ca,Coから外部空間EXへの漏れ状態(S4,S5,S7)と流路間の漏れ状態(S6~S10)とを同時に検査できるため、燃料電池スタック100や発電セル1全体の漏れ検査に要する時間を短縮し、検査ガスの消費量を削減することができる。
【0073】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)装置200は、シールライン7を介してそれぞれ外部空間EXと隔てられるとともに、電解質膜22を含む電極アッセンブリ2を介して互いに隔てられるアノード流路Anおよびカソード流路Caと、溶接ライン8を含むセパレータ3を介してアノード流路Anおよびカソード流路Caのそれぞれと隔てられる冷却流路Coと、を有する燃料電池スタック100または発電セル1の漏れ状態を検査する(
図5)。
【0074】
装置200は、アノード流路Anに設定圧力P1、カソード流路Caに設定圧力P2(P2<P1)、冷却流路Coに設定圧力P3(P2<P3<P1)で検査ガスを供給するガス供給部(検査ガスタンク210、レギュレータ241~243)と、アノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれから流出する検査ガスの流量を測定する流量計251~253と、コントローラ300と、を備える(
図6)。
【0075】
コントローラ300は、検査ガスの供給後、所定時間が経過するまでの第1期間に流量計251~253により測定された流量に基づいて、アノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれから外部空間EXへの検査ガスの漏れの有無を判定する第1判定ステップS4と、検査ガスの供給後、所定時間が経過した後の第2期間に流量計251~253により測定された流量に基づいて、アノード流路Anからカソード流路Caへの検査ガスの漏れの有無を判定する第2判定ステップS6と、第2期間に流量計251~253により測定された流量に基づいて、アノード流路Anから冷却流路Coへの検査ガスの漏れの有無を判定する第3判定ステップS8と、を実行するように構成される(
図8)。
【0076】
第1判定ステップS4では、第1期間に外部空間EXへの検査ガスの漏れがあったと判定されると、シールライン7(周辺)に欠陥があると判定する(ステップS5)。一方、第1期間に外部空間EXへの検査ガスの漏れがなかったと判定されると、シールライン7(周辺)に欠陥がないと判定する(ステップS7)。
【0077】
第2判定ステップS6では、第2期間にアノード流路Anからカソード流路Caへの検査ガスの漏れがあったと判定されると、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)またはセパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定する(ステップS9,S10)。一方、第2期間にアノード流路Anからカソード流路Caへの検査ガスの漏れがなかったと判定されると、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)およびセパレータ3(溶接ライン8)に欠陥がないと判定する(ステップS7)。
【0078】
第3判定ステップS8では、第2期間にアノード流路Anから冷却流路Coへの検査ガスの漏れがあったと判定されると、セパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定する(ステップS10)。一方、第2期間にアノード流路Anから冷却流路Coへの検査ガスの漏れがなかったと判定されると、セパレータ3(溶接ライン8)に欠陥がないと判定し、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)に欠陥があると判定する(ステップS9)。
【0079】
このように、複数の流路に同時に検査ガスを供給し、各流路から流出する流量を監視することで、燃料電池スタック100や発電セル1等の複数の流路を有する製品の漏れ状態を効率的に検査することができる。また、複数の流路に異なる設定圧力で検査ガスを供給することで、各流路から外部空間への漏れ状態と流路間の漏れ状態とを同時に検査することができる。これにより、製品全体の漏れ検査に要する時間を短縮し、検査ガスの消費量を削減することができる。
【0080】
(2)装置200は、アノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれを封止する開閉弁270をさらに備える(
図6)。流量計251~253は、ガス供給部からアノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれに供給される検査ガスの流量を測定することで、アノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれから流出する検査ガスの流量を測定する。これにより、簡易な構成で精度よく各流路から流出する流量を測定することができる。
【0081】
上記実施形態では、燃料電池スタック100または発電セル1の漏れ検査を行う例を説明したが、複数の流路を有する製品は、このようなものに限らず、例えば電気分解装置や電気化学反応装置、その他の製品であってもよい。
【0082】
上記実施形態では、アノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coの3つの流路を有する燃料電池スタック100または発電セル1の漏れ検査を行う例を説明したが、流路の数は、3本に限らず、2本や4本以上であってもよい。
【0083】
以上では、本発明を漏れ検査装置として説明したが、本発明は、シールライン7を介してそれぞれ外部空間EXと隔てられるとともに、電解質膜22を含む電極アッセンブリ2を介して互いに隔てられるアノード流路Anおよびカソード流路Caと、溶接ライン8を含むセパレータ3を介してアノード流路Anおよびカソード流路Caのそれぞれと隔てられる冷却流路Coと、を有する燃料電池スタック100または発電セル1の漏れ状態を検査する漏れ検査方法として用いることもできる。
【0084】
漏れ検査は、アノード流路Anに設定圧力P1、カソード流路Caに設定圧力P2(P2<P1)、冷却流路Coに設定圧力P3(P2<P3<P1)で検査ガスを供給するガス供給工程と、アノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれから流出する検査ガスの流量を測定する測定工程と、検査ガスの供給後、所定時間が経過するまでの第1期間に測定された流量に基づいて、アノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれから外部空間EXへの検査ガスの漏れの有無を判定する第1判定工程(ステップS4)と、検査ガスの供給後、所定時間が経過した後の第2期間に測定された流量に基づいて、アノード流路Anからカソード流路Caへの検査ガスの漏れの有無を判定する第2判定工程(ステップS6)と、第2期間に測定された流量に基づいて、アノード流路Anから冷却流路Coへの検査ガスの漏れの有無を判定する第3判定工程(ステップS8)と、を含む(
図8)。
【0085】
第1判定工程では、第1期間に外部空間EXへの検査ガスの漏れがあったと判定されると、シールライン7(周辺)に欠陥があると判定する(ステップS5)。一方、第1期間に外部空間EXへの検査ガスの漏れがなかったと判定されると、シールライン7(周辺)に欠陥がないと判定する(ステップS7)。
【0086】
第2判定工程では、第2期間にアノード流路Anからカソード流路Caへの検査ガスの漏れがあったと判定されると、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)またはセパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定する(ステップS9,S10)。一方、第2期間にアノード流路Anからカソード流路Caへの検査ガスの漏れがなかったと判定されると、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)およびセパレータ3(溶接ライン8)に欠陥がないと判定する(ステップS7)。
【0087】
第3判定工程では、第2期間にアノード流路Anから冷却流路Coへの検査ガスの漏れがあったと判定されると、セパレータ3(溶接ライン8)に欠陥があると判定する(ステップS10)。一方、第2期間にアノード流路Anから冷却流路Coへの検査ガスの漏れがなかったと判定されると、セパレータ3(溶接ライン8)に欠陥がないと判定し、電極アッセンブリ2(電解質膜22周辺)に欠陥があると判定する(ステップS9)。
【0088】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 発電セル、2 電極アッセンブリ、3 セパレータ、3a,3b 薄板、7 シールライン、8 溶接ライン、20 接合体、20a アノード面、20b カソード面、21 フレーム、22 電解質膜、23 アノード電極、24 カソード電極、100 燃料電池スタック、102a~102f 貫通孔、200 漏れ検査装置(装置)、210 検査ガスタンク、221~223 供給ライン、230 開閉弁、241~243 レギュレータ、251~253 流量計、260 排出ライン、270 開閉弁、280 酸素濃度センサ、290 真空ポンプ、300 コントローラ、311~316 貫通孔、An アノード流路、Ca カソード流路、Co 冷却流路、EX 外部空間、PA1 燃料ガス供給流路、PA2 冷却媒体供給流路、PA3 酸化剤ガス排出流路、PA4 酸化剤ガス供給流路、PA5 冷却媒体排出流路、PA6 燃料ガス排出流路
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中間部材を介してそれぞれ外部空間と隔てられるとともに、第2中間部材を介して互いに隔てられる第1流路と第2流路とを有する製品の漏れ状態を検査する漏れ検査装置であって、
前記製品は、膜電極接合体を有する電極アッセンブリとセパレータとの間に前記第1流路および前記第2流路が形成された燃料電池の発電セルまたはセル積層体であり、
前記第1中間部材は、前記電極アッセンブリと前記セパレータとの間に設けられたシール部材であり、
前記第1流路に第1圧力で検査ガスを供給するとともに、前記第2流路に前記第1圧力より低い第2圧力で前記検査ガスを供給するガス供給部と、
前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから流出する前記検査ガスの流量を測定する測定部と、
コンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、
前記検査ガスの供給後の第1期間に前記測定部により測定された流量に基づいて、前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから前記外部空間への前記検査ガスの漏れの有無を判定する第1判定ステップと、
前記第1期間の後の第2期間に前記測定部により測定された流量に基づいて各流路の圧力と大気圧との差圧を算出し、前記差圧に基づいて前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れの有無を判定する第2判定ステップと、を実行するように構成され、
前記第1判定ステップでは、前記第1期間に前記外部空間への前記検査ガスの漏れがあったと判定されると、前記第1中間部材に欠陥があると判定する一方、前記第1期間に前記外部空間への前記検査ガスの漏れがなかったと判定されると、前記第1中間部材に欠陥がないと判定し、
前記第2判定ステップでは、前記第2期間に前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れがあったと判定されると、前記第2中間部材に欠陥があると判定する一方、前記第2期間に前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れがなかったと判定されると、前記第2中間部材に欠陥がないと判定することを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の漏れ検査装置において、
前記第1中間部材の透過係数と前記第2中間部材の透過係数とは異なることを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の漏れ検査装置において、
前記製品は、燃料電池スタックまたは発電セルであり、
前記第1流路および前記第2流路のそれぞれは、燃料ガスが流れるアノード流路、酸化剤ガスが流れるカソード流路、および冷却媒体が流れる冷却流路のいずれかであり、
前記第2中間部材は、前記アノード流路と前記カソード流路とを隔てるガス透過性部材または前記アノード流路および前記カソード流路と前記冷却流路とを隔てるガス非透過性部材であることを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の漏れ検査装置において、
前記第1流路および前記第2流路のそれぞれを封止する封止部をさらに備え、
前記測定部は、前記ガス供給部から前記第1流路および前記第2流路のそれぞれに供給される前記検査ガスの流量を測定することで、前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから流出する前記検査ガスの流量を測定することを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項5】
第1中間部材を介してそれぞれ外部空間と隔てられるとともに、第2中間部材を介して互いに隔てられる第1流路と第2流路とを有する製品の漏れ状態を検査する漏れ検査方法であって、
前記製品は、膜電極接合体を有する電極アッセンブリとセパレータとの間に前記第1流路および前記第2流路が形成された燃料電池の発電セルまたはセル積層体であり、
前記第1中間部材は、前記電極アッセンブリと前記セパレータとの間に設けられたシール部材であり、
前記第1流路に第1圧力で検査ガスを供給するとともに、前記第2流路に前記第1圧力より低い第2圧力で前記検査ガスを供給するガス供給工程と、
前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから流出する前記検査ガスの流量を測定する測定工程と、
前記検査ガスの供給後の第1期間に測定された流量に基づいて、前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから前記外部空間への前記検査ガスの漏れの有無を判定する第1判定工程と、
前記第1期間の後の第2期間に測定された流量に基づいて各流路の圧力と大気圧との差圧を算出し、前記差圧に基づいて前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れの有無を判定する第2判定工程と、を含み、
前記第1判定工程では、前記第1期間に前記外部空間への前記検査ガスの漏れがあったと判定されると、前記第1中間部材に欠陥があると判定する一方、前記第1期間に前記外部空間への前記検査ガスの漏れがなかったと判定されると、前記第1中間部材に欠陥がないと判定し、
前記第2判定工程では、前記第2期間に前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れがあったと判定されると、前記第2中間部材に欠陥があると判定する一方、前記第2期間に前記第1流路から前記第2流路への前記検査ガスの漏れがなかったと判定されると、前記第2中間部材に欠陥がないと判定することを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載の漏れ検査方法において、
前記第1流路および前記第2流路のそれぞれを封止する封止工程をさらに含み、
前記測定工程では、前記ガス供給工程で前記第1流路および前記第2流路のそれぞれに供給される前記検査ガスの流量を測定することで、前記第1流路および前記第2流路のそれぞれから流出する前記検査ガスの流量を測定することを特徴とする漏れ検査方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明の一態様は、第1中間部材を介してそれぞれ外部空間と隔てられるとともに、第2中間部材を介して互いに隔てられる第1流路と第2流路とを有する製品の漏れ状態を検査する漏れ検査装置である。製品は、膜電極接合体を有する電極アッセンブリとセパレータとの間に第1流路および第2流路が形成された燃料電池の発電セルまたはセル積層体である。第1中間部材は、電極アッセンブリとセパレータとの間に設けられたシール部材である。漏れ検査装置は、第1流路に第1圧力で検査ガスを供給するとともに、第2流路に第1圧力より低い第2圧力で検査ガスを供給するガス供給部と、第1流路および第2流路のそれぞれから流出する検査ガスの流量を測定する測定部と、コンピュータと、を備える。コンピュータは、検査ガスの供給後の第1期間に測定部により測定された流量に基づいて、第1流路および第2流路のそれぞれから外部空間への検査ガスの漏れの有無を判定する第1判定ステップと、第1期間の後の第2期間に測定部により測定された流量に基づいて各流路の圧力と大気圧との差圧を算出し、差圧に基づいて第1流路から第2流路への検査ガスの漏れの有無を判定する第2判定ステップと、を実行するように構成される。第1判定ステップでは、第1期間に外部空間への検査ガスの漏れがあったと判定されると、第1中間部材に欠陥があると判定する一方、第1期間に外部空間への検査ガスの漏れがなかったと判定されると、第1中間部材に欠陥がないと判定する。第2判定ステップでは、第2期間に第1流路から第2流路への検査ガスの漏れがあったと判定されると、第2中間部材に欠陥があると判定する一方、第2期間に第1流路から第2流路への検査ガスの漏れがなかったと判定されると、第2中間部材に欠陥がないと判定する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様は、第1中間部材を介してそれぞれ外部空間と隔てられるとともに、第2中間部材を介して互いに隔てられる第1流路と第2流路とを有する製品の漏れ状態を検査する漏れ検査方法である。製品は、膜電極接合体を有する電極アッセンブリとセパレータとの間に第1流路および第2流路が形成された燃料電池の発電セルまたはセル積層体である。第1中間部材は、電極アッセンブリとセパレータとの間に設けられたシール部材である。漏れ検査方法は、第1流路に第1圧力で検査ガスを供給するとともに、第2流路に第1圧力より低い第2圧力で検査ガスを供給するガス供給工程と、第1流路および第2流路のそれぞれから流出する検査ガスの流量を測定する測定工程と、検査ガスの供給後の第1期間に測定された流量に基づいて、第1流路および第2流路のそれぞれから外部空間への検査ガスの漏れの有無を判定する第1判定工程と、第1期間の後の第2期間に測定された流量に基づいて各流路の圧力と大気圧との差圧を算出し、差圧に基づいて第1流路から第2流路への検査ガスの漏れの有無を判定する第2判定工程と、を含む。第1判定工程では、第1期間に外部空間への検査ガスの漏れがあったと判定されると、第1中間部材に欠陥があると判定する一方、第1期間に外部空間への検査ガスの漏れがなかったと判定されると、第1中間部材に欠陥がないと判定する。第2判定工程では、第2期間に第1流路から第2流路への検査ガスの漏れがあったと判定されると、第2中間部材に欠陥があると判定する一方、第2期間に第1流路から第2流路への検査ガスの漏れがなかったと判定されると、第2中間部材に欠陥がないと判定する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
貫通孔102dには、酸化剤ガス供給用のコンプレッサが接続され、コンプレッサで圧縮された酸化剤ガスが貫通孔102dを介して燃料電池スタック100に供給される。貫通孔102cからは、酸化剤ガス(酸化剤排ガス)が外部に流出する。貫通孔102eには、冷却媒体供給用のポンプが接続され、貫通孔102eを介して燃料電池スタック100に冷却媒体が供給される。貫通孔102bからは冷却媒体が排出される。排出された冷却媒体は、ラジエータでの熱交換により冷却され、貫通孔102eを介して再び燃料電池スタック100に供給される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
図6は、本発明の実施形態に係る漏れ検査装置(以下、装置)200の要部構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図6に示すように、装置200は、高圧の検査ガスが貯留された検査ガスタンク210と、検査ガスタンク210と燃料電池スタック100のアノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれに連通する貫通孔102a,102d,102
eとを接続する供給ライン221~223と、供給ライン221~223を開閉する開閉弁230と、供給ライン221~223にそれぞれ設けられたレギュレータ241~243および流量計251~253とを備える。検査ガスタンク210とレギュレータ241~243とは、ガス供給部を構成する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
装置200は、さらに、燃料電池スタック100のアノード流路An、カソード流路Ca、および冷却流路Coのそれぞれに連通する貫通孔102f,102c,102bに接続される排出ライン260と、排出ライン260を開閉する開閉弁270と、排出ライン260に設けられた酸素濃度センサ280および真空ポンプ290とを備える。装置200は、開閉弁230,270、流量計251~253、酸素濃度センサ280、および真空ポンプ290に電気的に接続されたコントローラ300も備える。開閉弁230,270および真空ポンプ290は、コントローラ300により制御される。流量計251~253および酸素濃度センサ280による測定値は、コントローラ300に入力される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】