(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120376
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240829BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240829BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H05K7/20 N
H01L23/46 Z
G06F1/20 C
G06F1/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027129
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 寛隆
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA05
5E322AA11
5E322DA01
5E322DA04
5E322DC01
5E322EA11
5E322FA01
5E322FA04
5F136CB07
5F136CB08
5F136JA03
(57)【要約】
【課題】外部電源を要せずに、水中音響機器内で用いられる発熱部品を効率的に冷却する冷却装置を提供することを目的とする。
【解決手段】冷却装置は、水中音響機器で用いられる冷却装置であって、内部を熱媒体が循環する循環部と、発熱部品から生じた熱が伝わる第1の面と、循環部を流れる熱媒体に発熱部品から伝わった熱を伝える第2の面と、を有するペルチェ素子と、ペルチェ素子と電線によって接続され、第1の面と第2の面との温度差によって生じる電力によって動作して、循環部の内部に熱媒体を循環させるポンプと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中音響機器で用いられる冷却装置であって、
内部を熱媒体が循環する循環部と、
発熱部品から生じた熱が伝わる第1の面と、前記循環部を流れる熱媒体に前記発熱部品から伝わった熱を伝える第2の面と、を有するペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子と電線によって接続され、前記第1の面と前記第2の面との温度差によって生じる電圧によって動作して、前記循環部の内部に熱媒体を循環させるポンプと、を備える
冷却装置。
【請求項2】
前記ポンプは、
前記第1の面と前記第2の面との前記温度差が第1の温度の場合、第1の流量で動作し、
前記温度差が前記第1の温度より大きい第2の温度の場合、前記第1の流量より大きい第2の流量で動作する
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記ペルチェ素子の前記第1の面は、前記発熱部品と熱伝導体を介して接続される
請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記循環部は、
熱媒体を貯留する1つの貯留部と、
前記貯留部との間で流通し、前記第2の面で熱交換される熱媒体が流れる複数の処理部と、を有し、
前記ペルチェ素子及び前記ポンプは、前記複数の処理部のそれぞれに対応して複数設けられる
請求項1又は2に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中音響機器内で用いられる発熱部品を冷却する冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、動作中に発熱する電子部品を冷却する冷却装置においては、冷却効果のより一層の向上が求められている。特許文献1には、電子部品が載置された放熱部の内部に熱媒体を流すための媒体流路を設け、媒体流路内にファンによる強制的な媒体の流れを作ることで電子部品の冷却効果を向上させようとした冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の冷却装置では、ファンを動作させるために、冷却装置の外部に設けられた外部電源による電力が必要となる。外部電源を要することで、特に冷却装置をソナー等の水中音響機器で用いるような場合において、冷却装置の設置が煩雑な作業となっていた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を背景としたものであり、外部電源を要せずに、水中音響機器内で用いられる発熱部品を効率的に冷却する冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る冷却装置は、水中音響機器で用いられる冷却装置であって、内部を熱媒体が循環する循環部と、発熱部品から生じた熱が伝わる第1の面と、循環部を流れる熱媒体に発熱部品から伝わった熱を伝える第2の面と、を有するペルチェ素子と、ペルチェ素子と電線によって接続され、第1の面と第2の面との温度差によって生じる電力によって動作して、循環部の内部に熱媒体を循環させるポンプと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る冷却装置は、ペルチェ素子の第1の面と第2の面との温度差によって生じた電圧によって、循環部に熱媒体を循環させるポンプを動作させている。このため、冷却装置は、外部電源を要せずに、発熱部品を効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る冷却装置を示す概略構成図である。
【
図2】実施の形態1に係るペルチェ素子を示す概略構成図である。
【
図3】実施の形態2に係る冷却装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る冷却装置1を示す概略構成図である。冷却装置1は、水中音響機器内で用いられる。冷却装置1は、例えば音響信号等の時系列データをリアルタイムで処理するため、常時動作が求められる信号処理システムに用いられ、信号処理を行う信号処理基板91に搭載された信号処理部品92を冷却するものである。信号処理部品92は、例えばファームウェア等の信号処理用論理回路を実装可能なFPGAチップ等の信号処理デバイスである。冷却装置1は、信号処理部品92を冷却して、処理が高負荷になった際に発生する熱を原因とする信号処理部品92の熱暴走を抑制する。なお、信号処理部品92は、本開示の「発熱部品」に相当する。発熱部品は、発熱を生じさせる電子部品であればよく、信号の処理を行うものでなくてもよい。冷却装置1は、循環部2、ペルチェ素子5、ポンプ6、及び熱伝導体7を有する。
【0010】
循環部2では、ペルチェ素子5との間で熱交換を行う熱媒体が流れる。循環部2の内部は、熱媒体で満たされている。熱媒体は、例えば水である。循環部2は、貯留部3及び処理部4を有する。貯留部3は、熱媒体を貯留する槽である。貯留部3に貯留された熱媒体は、空気中に放熱することで、温度が低下する。処理部4は、貯留部3から流出し、ペルチェ素子5と熱交換され、貯留部3に流入する熱媒体が流れる。具体的に、処理部4は、往き配管41、熱交換部42、及び戻り配管43を有する。
【0011】
往き配管41は、貯留部3から流出し、熱交換部42に流入する熱媒体が流れる配管である。往き配管41の内部の空間は、貯留部3の内部の空間と開口411を介して連通し、熱交換部42の内部の空間と開口412を介して連通している。熱交換部42は、ペルチェ素子5との間で熱交換が行われる熱媒体が流れる槽である。熱交換部42の外郭には、ペルチェ素子5が設けられている。熱交換部42は、例えば金属製であり、ペルチェ素子5から熱交換部42を介して、熱媒体に熱が伝わる。つまり、信号処理部品92で生じた熱が、熱伝導体7、ペルチェ素子5、及び熱交換部42の外郭を介して熱媒体に移動することで、信号処理部品92が冷却される。戻り配管43は、熱交換部42から流出し、貯留部3に流入する熱媒体が流れる配管である。戻り配管43の内部の空間は、熱交換部42の内部の空間と開口431を介して連通し、貯留部3の内部の空間と開口432を介して連通している。
【0012】
図2は、実施の形態1に係るペルチェ素子5を示す概略構成図である。
図2に示すように、ペルチェ素子5は、信号処理部品92から生じた熱が熱伝導体7を介して伝わる第1の面51、及び循環部2を流れる熱媒体Mに信号処理部品92から伝わった熱を伝える第2の面52、を有する。第1の面51は熱伝導体7と密着しており、第2の面52は熱交換部42に密着している。ペルチェ素子5では、第1の面51と第2の面52との温度差、即ち、熱伝導体7と熱媒体Mとの温度差がゼーベック効果によって電圧に変換される。ペルチェ素子5が有する電極(図示せず)とポンプ6が有する電極(図示せず)とが電線53を介して接続されている。これにより、ペルチェ素子5において発生した電圧がポンプ6に印加される。ペルチェ素子5で発生する電圧の大きさは、第1の面51と第2の面52との温度差の大きさに比例する。なお、
図1では、電線53の図示を簡略化しているが、電線53は、処理部4を貫通せず、迂回して設けられる。
【0013】
図1に戻り、ポンプ6は、往き配管41の内部に設けられ、熱媒体を送出する装置である。ポンプ6は、ペルチェ素子5から電線53を介して印加された電圧によって動作して、循環部2に熱媒体を循環させる。つまり、冷却装置1では、冷却を行う対象としている信号処理部品92自体の発熱を元にポンプ6を稼働させる電圧を発生させている。
【0014】
また、ポンプ6は、印加された電圧が大きいほど、流量が大きくなる。つまり、ポンプ6は、第1の面51と第2の面52との温度差が第1の温度の場合、第1の流量で動作し、温度差が第1の温度より大きい第2の温度の場合、第1の流量より大きい第2の流量で動作する。なお、流量とは、単位時間あたりの熱媒体の移動量を意味する。信号処理部品92の発熱量に応じて循環部2を流れる熱媒体の流量が変動することにより、熱交換部42と熱媒体との熱伝達率が自動的に変動する。具体的に、信号処理部品92は、より高負荷の処理が行われる場合ほど、発熱量が大きくなり、熱伝導体7を介して接続されたペルチェ素子5の第1の面51の温度も高温となる。ペルチェ素子5からポンプ6に印加される電圧が第1の面51と第2の面52との温度差に比例するため、信号処理部品92の発熱量が大きいほど、循環部2を流れる熱媒体の流量が増加する。そして、熱交換部42と熱媒体との熱伝達率は、熱媒体の流量が速いほど大きいため、熱媒体の流量が増加することで熱交換部42と熱媒体との熱伝達率が増加する。
【0015】
熱伝導体7は、例えば金属製であり、信号処理部品92からペルチェ素子5に熱を伝える。熱伝導体7は、吸熱部71、接続部72、及び排熱部73を有する。吸熱部71は、信号処理部品92に密着して、一部を覆うように、信号処理基板91上に設けられている。吸熱部71は、信号処理部品92から吸熱する。接続部72は、吸熱部71と排熱部73とを接続する部品である。接続部72は、吸熱部71から排熱部73に熱を伝える。排熱部73は、ペルチェ素子5の第1の面51に密着して設けられている。排熱部73は、ペルチェ素子5に排熱する。
【0016】
ペルチェ素子5の第1の面51は、信号処理部品92と熱伝導体7を介して接続されるため、信号処理基板91及び信号処理部品92と、循環部2とは、熱伝導体7の長さの分だけ隔離されている。信号処理基板91と熱媒体が充填された循環部2とが熱伝導体7を介して距離を保って接続されるため、循環部2から漏水が発生した際にも、電子回路への直接の影響が生じることを抑制することができる。
【0017】
以上のように、実施の形態1に係る冷却装置1は、ペルチェ素子5の第1の面51と第2の面52との温度差によって生じた電圧によって、循環部2に熱媒体を循環させるポンプ6を動作させている。このため、冷却装置1は、外部電源を要せずに、発熱部品を効率的に冷却することができる。
【0018】
また、概して信号処理部品92の冷却に自然対流を用いる場合、信号処理部品92の高負荷時に発熱量が冷却装置1の放熱量を容易に上回り、熱暴走に至りやすい。一方で、実施の形態1によれば、ポンプ6で熱媒体を循環させることで、信号処理部品92の熱暴走を効率的に抑制することができる。特に、実施の形態1によれば、信号処理部品92の発熱量に応じて、熱交換部42での熱伝達率が変動することから、信号処理部品92の高負荷時にも冷却効果を上げて対応することができる。
【0019】
また、実施の形態1によれば、ペルチェ素子5の第1の面51と信号処理部品92とを、熱伝導体7を介して接続されるため、循環部2から漏水が発生した際にも、電子回路への直接の影響が生じることを抑制することができる。
【0020】
また、実施の形態1によれば、外部電源を要しないため、外部電源とポンプ6とを接続するための配線も省略されている。ペルチェ素子5とポンプ6とを接続する電線53は、外部電源とポンプ6とを接続する配線と比較して、長さを短縮することができる。また、ペルチェ素子5とポンプ6とを接続する電線53は、冷却装置1外に露出しないため、冷却装置1を取り付ける際における作業性を向上させることができる。
【0021】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る冷却装置10を示す概略構成図である。
図3に示すように、実施の形態2に係る冷却装置10は、複数の信号処理部品92に対応した形態である点で実施の形態1の冷却装置10と相違する。以下では、実施の形態1と共通点についての説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0022】
冷却装置10は、信号処理基板91A~91Cに設けられた信号処理部品92A~92Cを対象にして冷却を行う。以下では、信号処理基板91A~91C、及び信号処理部品92A~92Cを区別しない場合、単に信号処理部品92、及び信号処理基板91と称する。
【0023】
冷却装置10は、3組の冷却部8A~8Cを有している。冷却部8Aは信号処理部品92Aで生じた熱を処理し、冷却部8Bは信号処理部品92Bで生じた熱を処理し、冷却部8Cは信号処理部品92Cで生じた熱を処理する。以下では、冷却部8A~8Cを区別しない場合、単に冷却部8と称する。1組の冷却部8は、1つの処理部4、1つのペルチェ素子5、1つのポンプ6、及び1つの熱伝導体7からなる。なお、
図3では、最上部の冷却部8が有する処理部4、ペルチェ素子5、ポンプ6、及び熱伝導体7にのみ符号をつけて示している。また、
図3に示す例では、冷却部8が3組である場合を示しているが、冷却部8の数は信号処理部品92の数に対応して設けられればよく、3組以外の数であってもよい。
【0024】
実施の形態2の処理部4、ペルチェ素子5、ポンプ6、及び熱伝導体7は、何れも実施の形態1で説明した処理部4、ペルチェ素子5、ポンプ6、及び熱伝導体7と同一の構成及び作用を有する。つまり、それぞれの冷却部8では、ペルチェ素子5及びポンプ6は、複数の処理部4のそれぞれに対応して設けられる。また、ペルチェ素子5が熱伝導体7を介して信号処理部品92から伝わった熱を、処理部4を流れる熱媒体に移動させる。また、ポンプ6は、ペルチェ素子5における第1の面51と第2の面52との間の温度差によって生じた電圧が印加されることで動作する。
【0025】
冷却装置10は、1つの貯留部3を有する。貯留部3には、全ての処理部4の戻り配管43から熱媒体が流入する。また、貯留部3から全ての処理部4の往き配管41に熱媒体を流出させる。つまり、冷却装置10は、貯留部3から複数の処理部4が分岐した構成である。
【0026】
実施の形態2によれば、冷却装置1は、各冷却部8において、ペルチェ素子5の第1の面51と第2の面52との温度差によって生じた電圧によって、循環部2に熱媒体を循環させるポンプ6を動作させている。このため、冷却装置1は、外部電源を要せずに、複数の信号処理部品92を効率的に冷却することができる。
【0027】
また、実施の形態2によれば、各信号処理部品92の発熱状況に合わせて、対応する冷却部8のポンプ6の流量が変化するため、複数の信号処理部品92の負荷ごとに冷却能力を調整することができる。つまり、ある信号処理基板91の負荷が高く、信号処理部品92の温度が高い一方で、他の信号処理基板91の負荷が低く、信号処理部品92の温度が低いといった場面においても、高負荷が掛かっている信号処理部品92の冷却を行うことができる。
【0028】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明は、上記の実施の形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形又は組み合わせが可能である。例えば、実施の形態1及び2において、ポンプ6は、印加される電力に応じて流量が変化せず、一定であってもよい。
【0029】
また、実施の形態1及び2において、ポンプ6は、往き配管41ではなく、戻り配管43に設けるようにしてもよい。
【0030】
また、実施の形態1及び2において、熱伝導体7を省略し、ペルチェ素子5の第1の面51と発熱部品とが直接接触するようにしてもよい。
【0031】
また、実施の形態1及び2において、ペルチェ素子5は、第2の面52が内部を流れる熱媒体に直接接触するように熱交換部42の内部に設けられていてもよい。
【0032】
また、実施の形態2において、2つ以上の冷却部8によって1つの信号処理部品92を冷却するようにしてもよい。また、冷却装置1は、1つの信号処理基板91に複数設けられた信号処理部品92の冷却を行ってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 冷却装置、2 循環部、3 貯留部、4 処理部、5 ペルチェ素子、6 ポンプ、7 熱伝導体、8、8A、8B、8C 冷却部、10 冷却装置、41 往き配管、42 熱交換部、43 戻り配管、51 第1の面、52 第2の面、53 電線、71 吸熱部、72 接続部、73 排熱部、91、91A、91B、91C 信号処理基板、92、92A、92B、92C 信号処理部品、411 開口、412 開口、431 開口、432 開口。