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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120378
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】スペーサー
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/291 20210101AFI20240829BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240829BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240829BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240829BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240829BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240829BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240829BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/209
H01M50/293
H01M10/647
H01M10/658
H01M10/613
H01M50/204 401H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027132
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕教
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】御崎 晶嗣
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE03
5H031EE04
5H031KK02
5H040AA27
5H040AS05
5H040AS07
5H040AS13
5H040AS14
5H040AS19
5H040AT02
5H040AY03
5H040AY06
5H040LL04
5H040LL06
(57)【要約】
【課題】パウチフィルムの内部に空気が残留しにくいスペーサーを提供することを課題とする。
【解決手段】スペーサー1は、複数のバッテリーセル92の積層体91において、積層方向に隣り合う任意の一対のバッテリーセル92間に介在し、袋状のパウチフィルム2と、パウチフィルム2に収容され、断熱部材30を有する被収容部材3と、を備える。パウチフィルム2は、自身の内外を連通する空気孔24を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーセルの積層体において、積層方向に隣り合う任意の一対の前記バッテリーセル間に介在し、
袋状のパウチフィルムと、
前記パウチフィルムに収容され、断熱部材を有する被収容部材と、
を備える平板状のスペーサーであって、
前記パウチフィルムは、自身の内外を連通する空気孔を有することを特徴とするスペーサー。
【請求項2】
前記被収容部材は、前記断熱部材に積層される弾性部材を有する請求項1に記載のスペーサー。
【請求項3】
前記パウチフィルムは、前記断熱部材に前記積層方向に対向する断熱部材対向壁部を有し、
前記空気孔は、前記パウチフィルムのうち、前記断熱部材対向壁部以外の部分に配置される請求項2に記載のスペーサー。
【請求項4】
前記パウチフィルムは、前記弾性部材に前記積層方向に対向する弾性部材対向壁部を有し、
前記空気孔は、前記パウチフィルムのうち、前記弾性部材対向壁部以外の部分に配置される請求項2に記載のスペーサー。
【請求項5】
前記積層方向に対して交差する方向を沿層方向として、
前記パウチフィルムは、前記被収容部材に前記沿層方向に対向する沿層方向対向壁部を有し、
前記空気孔は、前記沿層方向対向壁部に配置される請求項2に記載のスペーサー。
【請求項6】
前記沿層方向対向壁部は、前記断熱部材に対向する断熱部材対向区間を有し、
前記空気孔は、前記沿層方向対向壁部のうち、前記断熱部材対向区間以外の区間に配置される請求項5に記載のスペーサー。
【請求項7】
前記沿層方向対向壁部は、前記弾性部材に対向する弾性部材対向区間を有し、
前記空気孔は、前記沿層方向対向壁部のうち、前記弾性部材対向区間以外の区間に配置される請求項5に記載のスペーサー。
【請求項8】
前記パウチフィルムの表裏方向から見て、前記空気孔の孔縁は全周的に曲線状を呈する請求項1に記載のスペーサー。
【請求項9】
前記パウチフィルムの表裏方向断面において、前記空気孔の孔縁は曲線部を有し、
前記曲線部は、前記パウチフィルムの他の部分よりも、硬質である請求項1に記載のスペーサー。
【請求項10】
前記断熱部材は、粒状物質により形成される多孔質体である粒状多孔質材料の圧縮成形品である請求項1に記載のスペーサー。
【請求項11】
前記粒状多孔質材料は、シリカエアロゲルである請求項10に記載のスペーサー。
【請求項12】
前記被収容部材の前記積層方向両面は、前記パウチフィルムに当接する請求項1に記載のスペーサー。
【請求項13】
前記パウチフィルムの少なくとも一部は、熱収縮材料製である請求項1に記載のスペーサー。
【請求項14】
前記パウチフィルムは、第一機能部と、材料および構造のうち少なくとも一方が前記第一機能部と異なる第二機能部と、を有する請求項1に記載のスペーサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリーモジュールの積層体に配置されるスペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電池の隣り合うセル間には、断熱材が介装されている。断熱材は、断熱部と、緩衝部と、発塵防止材と、を備えている。発塵防止材は、複合体(断熱部、緩衝部)を収容する、袋状の成形体である。発塵防止材は、断熱部からの発塵を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-140968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発塵防止材は袋状を呈している。このため、複合体を発塵防止材に収容する際に、発塵防止材の内部に空気が残留しやすい。したがって、発塵防止材と複合体との間に気泡が発生しやすい。よって、発塵防止材の内面と複合体とが密着しにくい。また、発塵防止材の外面とセルとが密着しにくい。そこで、本開示は、パウチフィルムの内部に空気が残留しにくいスペーサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するため、本開示のスペーサーは、複数のバッテリーセルの積層体において、積層方向に隣り合う任意の一対の前記バッテリーセル間に介在し、袋状のパウチフィルムと、前記パウチフィルムに収容され、断熱部材を有する被収容部材と、を備える平板状のスペーサーであって、前記パウチフィルムは、自身の内外を連通する空気孔を有することを特徴とする。
【0006】
スペーサーは断熱部材を備えている。このため、スペーサーを介して隣り合う一対のバッテリーセル間の伝熱を抑制することができる。また、断熱部材は、袋状のパウチフィルムに収容されている。このため、断熱部材の粉がスペーサーの外部に漏出するのを、抑制することができる。
【0007】
パウチフィルムは、空気孔を有している。空気孔を介して、パウチフィルムの内部(袋内部)から外部(袋外部)に、空気を逃がすことができる。このため、パウチフィルムの内部に空気が残留するのを、抑制することができる。したがって、パウチフィルム内面と被収容部材との密着性を向上させることができる。また、気泡に起因する凹凸がパウチフィルム外面に発現しにくいため、パウチフィルムとバッテリーセルとの密着性を向上させることができる。また、被収容部材とパウチフィルムとバッテリーセルとを密着させやすいため、断熱部材の有する断熱性を効果的に発揮することができる。また、スペーサーを小型化することができる。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、弾性部材を有する構成とする方がよい。本構成によると、弾性部材の弾性力により、スペーサーとバッテリーセルとの密着性を向上させることができる。また、充放電に伴うバッテリーセルの変形(膨張、収縮など)を弾性的に吸収することができる。
【0009】
(2-1)上記(2)の構成において、前記被収容部材は前記弾性部材を有し、前記弾性部材は前記断熱部材に積層される構成とする方がよい。本構成によると、弾性部材を、断熱部材と共に、パウチフィルムに収容することができる。このため、バッテリーセルとの組付けが容易になる。
【0010】
また、弾性部材は、バッテリーモジュールの筐体に積層体を取り付ける際、バッテリーモジュール駆動時にバッテリーセルが変形する際、筐体から積層体を取り外す際などに、弾性的に変形する。パウチフィルムは空気孔を有している。このため、弾性部材の変形時に、空気孔を介して、パウチフィルムの内部と外部との間で、空気を流動させることができる。したがって、弾性部材の変形がパウチフィルムに拘束されるのを抑制することができる。
【0011】
(3)上記いずれかの構成において、前記パウチフィルムは、前記断熱部材に前記積層方向に対向する断熱部材対向壁部を有し、前記空気孔は、前記パウチフィルムのうち、前記断熱部材対向壁部以外の部分に配置される構成とする方がよい。
【0012】
断熱部材対向壁部は、断熱部材と、バッテリーセルと、の間に介在している。本構成によると、空気孔は、断熱部材対向壁部以外の部分に配置されている。このため、断熱部材やバッテリーセルにより空気孔が閉塞されるのを、抑制することができる。また、断熱部材対向壁部の強度が低下するのを、抑制することができる。また、断熱部材の粉が外部に漏出するのを、抑制することができる。
【0013】
(4)上記いずれかの構成において、前記パウチフィルムは、前記弾性部材に前記積層方向に対向する弾性部材対向壁部を有し、前記空気孔は、前記パウチフィルムのうち、前記弾性部材対向壁部以外の部分に配置される構成とする方がよい。
【0014】
弾性部材対向壁部は、弾性部材と、バッテリーセルと、の間に介在している。本構成によると、空気孔は、弾性部材対向壁部以外の部分に配置されている。このため、弾性部材やバッテリーセルにより空気孔が閉塞されるのを、抑制することができる。また、弾性部材対向壁部の強度が低下するのを、抑制することができる。
【0015】
(5)上記いずれかの構成において、前記積層方向に対して交差する方向を沿層方向として、前記パウチフィルムは、前記被収容部材に前記沿層方向に対向する沿層方向対向壁部を有し、前記空気孔は、前記沿層方向対向壁部に配置される構成とする方がよい。
【0016】
パウチフィルムの積層方向対向壁部(被収容部材に積層方向に対向する壁部。例えば、断熱部材対向壁部、弾性部材対向壁部など)は、被収容部材と、バッテリーセルと、の間に介在している。積層方向対向壁部に空気孔を配置すると、被収容部材やバッテリーセルにより空気孔が閉塞されてしまう。この点、本構成によると、空気孔は、沿層方向対向壁部に配置されている。このため、空気孔が閉塞されるのを抑制することができる。また、積層方向対向壁部の強度が低下するのを、抑制することができる。
【0017】
(6)上記(5)の構成において、前記沿層方向対向壁部は、前記断熱部材に対向する断熱部材対向区間を有し、前記空気孔は、前記沿層方向対向壁部のうち、前記断熱部材対向区間以外の区間に配置される構成とする方がよい。
【0018】
本構成によると、空気孔が断熱部材対向区間に配置されている場合と比較して、断熱部材対向区間の強度が低下するのを、抑制することができる。また、断熱部材の粉が外部に漏出するのを、抑制することができる。
【0019】
(7)上記いずれかの構成において、前記沿層方向対向壁部は、前記弾性部材に対向する弾性部材対向区間を有し、前記空気孔は、前記沿層方向対向壁部のうち、前記弾性部材対向区間以外の区間に配置される構成とする方がよい。本構成によると、空気孔が弾性部材対向区間に配置されている場合と比較して、弾性部材対向区間の強度が低下するのを、抑制することができる。
【0020】
(8)上記いずれかの構成において、前記パウチフィルムの表裏方向から見て、前記空気孔の孔縁は全周的に曲線状を呈する構成とする方がよい。本構成によると、孔縁が角部を有する場合と比較して、孔縁の一部に応力が集中するのを抑制することができる。このため、パウチフィルムの強度が低下するのを、抑制することができる。
【0021】
(9)上記いずれかの構成において、前記パウチフィルムの表裏方向断面において、前記空気孔の孔縁は曲線部を有し、前記曲線部は、前記パウチフィルムの他の部分よりも、硬質である構成とする方がよい。本構成によると、パウチフィルムが全体的に均一な硬度を有する場合と比較して、空気孔の孔縁を局所的に補強することができる。
【0022】
(10)上記いずれかの構成において、前記断熱部材は、粒状物質により形成される多孔質体である粒状多孔質材料の圧縮成形品である構成とする方がよい。
【0023】
空気は、熱伝導率が小さく、断熱性が高い。粒状多孔質材料の圧縮成形品は、内部に多数の孔を有しており、当該孔内には空気が滞留している。このため、本構成によると、断熱部材の断熱性を高くすることができる。
【0024】
(11)上記(10)の構成において、前記粒状多孔質材料は、シリカエアロゲルである構成とする方がよい。シリカエアロゲルは、他の多孔質材料と比較して気孔率が高い。このため、本構成によると、断熱部材の断熱性を高くすることができる。
【0025】
(12)上記いずれかの構成において、前記被収容部材の前記積層方向両面は、前記パウチフィルムに当接する構成とする方がよい。本構成によると、被収容部材とパウチフィルムとの間に隙間がない。このため、スペーサーを小型化することができる。
【0026】
(13)上記いずれかの構成において、前記パウチフィルムの少なくとも一部は、熱収縮材料製である構成とする方がよい。本構成によると、熱収縮性を利用して、パウチフィルムと被収容部材との間の隙間を小さくすることができる。このため、スペーサーがかさばるのを、抑制することができる。また、被収容部材の位置決めが容易である。また、パウチフィルムが収縮する際、空気孔を介して、パウチフィルムの内部から外部に、空気を逃がすことができる。
【0027】
(14)上記いずれかの構成において、前記パウチフィルムは、第一機能部と、材料および構造のうち少なくとも一方が前記第一機能部と異なる第二機能部と、を有する構成とする方がよい。本構成によると、第一機能部と第二機能部との間に、意図的に機能差を設定することができる。
【発明の効果】
【0028】
本開示のスペーサーによると、パウチフィルムの内部に空気が残留するのを、抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、第一実施形態のスペーサーを備えるバッテリーモジュールの分解斜視図である。
図2図2は、同スペーサーの初期状態における前後方向断面図である。
図3図3は、図2の枠III内の拡大図である。
図4図4は、図3の円IV内の拡大図である。
図5図5は、図4の区間Vの矢印Y1に係る矢視図である。
図6図6は、同スペーサーの製造方法の収容工程における、第一加工前フィルムと、被収容部材と、第二加工前フィルムと、の分解斜視図である。
図7図7は、同製造方法の熱収縮工程における、同スペーサーの前後方向断面図である。
図8図8は、同スペーサーの待機状態における前後方向部分断面図である。
図9図9は、第二実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図である。
図10図10は、第三実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図である。
図11図11は、第四実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図である。
図12図12は、第五実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向断面図である。
図13図13は、第六実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図である。
図14図14は、第七実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図である。
図15図15は、その他の実施形態(その1)のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図である。
図16図16(A)~図16(D)は、その他の実施形態(その2~その5)の空気孔の正面図である。
図17図17は、その他の実施形態(その6)のスペーサーの初期状態における前後方向断面図である。
図18図18は、その他の実施形態(その7)のスペーサーの初期状態における前後方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示のスペーサーの実施の形態について説明する。
【0031】
<第一実施形態>
以下、スペーサーがバッテリーセルと積層される前の状態を「初期状態」と、スペーサーが筐体に取り付けられた後であってバッテリーモジュール駆動前の状態を「待機状態」と、バッテリーモジュール駆動中の状態を「駆動状態」と、各々称す。図1に、本実施形態のスペーサーを備えるバッテリーモジュールの分解斜視図を示す。図2に、同スペーサーの初期状態における前後方向断面図を示す。図3に、図2の枠III内の拡大図を示す。図4に、図3の円IV内の拡大図を示す。図5に、図4の区間Vの矢印Y1に係る矢視図を示す。なお、図2においては、被収容部材3の前後方向厚みを強調して示す。
【0032】
[スペーサーの配置、構成]
まず、本実施形態のスペーサーの配置、構成について説明する。図1に示すように、本実施形態のスペーサー1は、車載用のバッテリーモジュール9に組み込まれている。バッテリーモジュール9は、筐体90と積層体91とを備えている。
【0033】
筐体90は、樹脂製であって、上向きに開口する有底箱状を呈している。筐体90は、前後方向(積層体91の積層方向)に延在している。積層体91は、複数のバッテリーセル(二次電池)92と、複数のスペーサー1と、を備えている。バッテリーセル92とスペーサー1とは前後方向に交互に積層されている。
【0034】
バッテリーセル92は、沿層方向(積層方向に対して交差(直交)する方向。上下左右方向)に延在する扁平の直方体状を呈している。すなわち、バッテリーセル92は角型セルである。バッテリーセル92は、二つの端子920を備えている。前後方向に隣り合うバッテリーセル92の端子920同士は、バスバー(図略)により、電気的に接続されている。
【0035】
図1に示すように、スペーサー1は、積層体91において、前後方向に隣り合う任意の一対のバッテリーセル92間に介装されている。スペーサー1は、沿層方向に延在(展開)する平板状を呈している。
【0036】
図2図3に示すように、スペーサー1は、パウチフィルム2と、被収容部材3と、を備えている。被収容部材3は、パウチフィルム2の内部に収容されている。被収容部材3は、断熱部材30と、弾性部材31と、を備えている。断熱部材30は、沿層方向に延在する長方形板状を呈している。断熱部材30は、シリカエアロゲルの圧縮成形品である。弾性部材31は、断熱部材30の後側(積層方向一方)に積層されている。弾性部材31は、発泡ゴム製であって、沿層方向に延在する長方形板状を呈している。初期状態において、前後方向から見て、弾性部材31は、断熱部材30の内側に配置されている。
【0037】
パウチフィルム2は、第一フィルム20と、第二フィルム21と、を備えている。第一フィルム20、第二フィルム21は、各々、熱収縮材料(熱可塑性樹脂を含む材料)製であって、透明な膜状を呈している。すなわち、第一フィルム20、第二フィルム21はシュリンクフィルムである。パウチフィルム2は、前側の第一フィルム20と、後側の第二フィルム21と、が合体して形成されている。パウチフィルム2は袋状を呈している。第一フィルム20と第二フィルム21との継ぎ目には、接合部Aが配置されている。接合部Aにおいては、第一フィルム20と第二フィルム21とが互いに溶着されている。接合部Aは、フランジ状を呈している。
【0038】
パウチフィルム2は、積層方向対向壁部22と、沿層方向対向壁部23と、空気孔24と、を備えている。積層方向対向壁部22は、断熱部材対向壁部220と、弾性部材対向壁部221と、を備えている。断熱部材対向壁部220は被収容部材3の前側に、弾性部材対向壁部221は被収容部材3の後側に、分かれて配置されている。断熱部材対向壁部220は、沿層方向に延在する長方形膜状を呈している。断熱部材対向壁部220は、断熱部材30の前側(積層方向他方)に配置されている。断熱部材対向壁部220は、断熱部材30に前後方向に対向している。図2に示す初期状態において、断熱部材対向壁部220は、断熱部材30に、全面的に密着(面接触)している。
【0039】
弾性部材対向壁部221は、沿層方向に延在する長方形膜状を呈している。弾性部材対向壁部221は、弾性部材31の後側に配置されている。弾性部材対向壁部221は、弾性部材31に前後方向に対向している。図2に示す初期状態において、弾性部材対向壁部221は、弾性部材31に、全面的に密着している。
【0040】
沿層方向対向壁部23は、断熱部材対向壁部220と弾性部材対向壁部221との間に配置されている。沿層方向対向壁部23は、断熱部材対向区間230と、弾性部材対向区間231と、を備えている。断熱部材対向区間230と弾性部材対向区間231とは前後方向に連なっている。断熱部材対向区間230は、沿層方向に延在する長方形枠状を呈している。断熱部材対向区間230は、断熱部材30の沿層方向外側に配置されている。断熱部材対向区間230は、断熱部材30に沿層方向に対向している。図2に示す初期状態において、断熱部材対向区間230は、断熱部材30に、全面的に密着している。
【0041】
弾性部材対向区間231は、沿層方向に延在する長方形枠状を呈している。弾性部材対向区間231は、弾性部材31の沿層方向外側に配置されている。弾性部材対向区間231は、弾性部材31に沿層方向に対向している。弾性部材対向区間231には、前述の接合部Aが配置されている。接合部Aは、弾性部材対向区間231の枠延在方向に沿って、長方形環状に延在している。図3に示すように、初期状態において、弾性部材対向区間231と弾性部材31との間には、隙間Cが確保されている。空気孔24は、第一フィルム20の後寄りに穿設されている。空気孔24は、弾性部材対向区間231の左壁の上下方向中央に、一つだけ配置されている。空気孔24は、隙間Cに開口している。空気孔24は、パウチフィルム2の内部(隙間C)と外部とを連通している。
【0042】
図4にクロスハッチングで示すように、空気孔24の周囲には、補強部241が配置されている。補強部241は、空気孔24の孔軸Bの軸方向(パウチフィルム2の表裏方向)に延在する、短軸円筒状を呈している。補強部241は、パウチフィルム2の他の部分よりも、膜厚が大きい。補強部241の表側端部241aは、第一フィルム(補強部241以外の部分)20の表面から表側(袋外側)に突出している。補強部241の裏側端部241bは、第一フィルム(補強部241以外の部分)20の裏面から裏側(袋内側)に突出している。空気孔24の孔縁(空気孔24の孔内空間と径方向に対向する部分)240は、補強部241の内周面に配置されている。
【0043】
図4に示すように、パウチフィルム2の表裏方向断面において、空気孔24の孔縁240には、孔軸Bの軸方向全長に亘って、径方向内側にC字状に膨らむ曲線部240a(断面視で曲線、外観視で曲面)が形成されている。曲線部240aは、パウチフィルム2の他の部分よりも、硬質である。
【0044】
図5に示すように、パウチフィルム2の表側(表裏方向)から見て、空気孔24の孔縁240は、最大径部240b(図4に示す表側端部241aの端、裏側端部241bの端)から最小径部240cに亘って、真円状を呈している。孔縁240は、全周的に曲線状を呈している。
【0045】
[スペーサーの製造方法]
次に、本実施形態のスペーサーの製造方法について説明する。スペーサー1の製造方法は、空気孔形成工程と、収容工程と、熱収縮工程と、を有している。図6に、同スペーサーの製造方法の収容工程における、第一加工前フィルムと、被収容部材と、第二加工前フィルムと、の分解斜視図を示す。図7に、同製造方法の熱収縮工程における、同スペーサーの前後方向断面図を示す。なお、図7においては、被収容部材3の前後方向厚みを強調して示す。
【0046】
図6に示すように、空気孔形成工程においては、第一加工前フィルム20Aに、熱針加工により、空気孔24を穿設する。具体的には、第一加工前フィルム20Aにおける「図2に示す空気孔24に対応する部分」に、熱針(加熱された針)を刺すことにより、空気孔24を形成する。空気孔24の形成時に、第一加工前フィルム20Aの素材(肉)は、熱針からの伝熱により溶融し、表面張力により丸くなる。このため、空気孔24の周囲に図4に示す補強部241が形成される。
【0047】
図6に示すように、収容工程においては、第一加工前フィルム20Aと、第二加工前フィルム21Aとの間に、被収容部材3を配置する。そして、第一加工前フィルム20Aと第二加工前フィルム21Aとを重ね合わせ、第一加工前フィルム20Aおよび第二加工前フィルム21Aを、周縁部20a、21aの外縁の位置で溶断する。溶断により、周縁部20aと周縁部21aとは溶着する。溶着により、図1図3に示す接合部Aが形成される。また、袋状のパウチフィルム2が形成される。被収容部材3は、パウチフィルム2の内部に封入される。
【0048】
図7に示すように、熱収縮工程においては、熱処理炉(図略)の中に、被収容部材3入りのパウチフィルム2を配置する。そして、当該パウチフィルム2を加熱する。図中、矢印Y2で示すように、パウチフィルム2は熱収縮する。この際、矢印Y3で示すように、空気孔24を介して、パウチフィルム2の内部から外部に、空気が流出する。このため、パウチフィルム2は、隙間Cを除いて、被収容部材3に密着する。
【0049】
[バッテリーモジュール9の組立方法]
次に、バッテリーモジュール9の組立方法について説明する。図8に、本実施形態のスペーサーの待機状態における前後方向部分断面図を示す。なお、図8に示す部分は、図2図3の枠IIIに対応している。
【0050】
まず、図1に示すように、バッテリーセル92とスペーサー1とを前後方向に交互に積層することにより、筐体90の外部において、積層体91を作成する。次に、積層体91を、筐体90に挿入する。この際、スペーサー1は、図3に示す初期状態から、図8に示す待機状態に切り替わる。図3に示すように、初期状態において、弾性部材対向区間231と弾性部材31との間には、隙間Cが確保されている。図1に示すように積層体91を筐体90に挿入すると、図8に矢印Y4で示すように弾性部材31が前後方向に圧縮される。このため、図8に矢印Y5で示すように、弾性部材31は、隙間Cを消費しながら、沿層方向に伸張する。ここで、弾性部材31の沿層方向外側には、空気孔24が開設されている。空気孔24は、隙間Cに連通している。このため、図8に矢印Y6で示すように、空気孔24を介して、パウチフィルム2の内部(隙間C)から外部に、空気を逃がすことができる。したがって、パウチフィルム2により弾性部材31の変形が拘束されるのを、抑制することができる。
【0051】
図1に示す待機状態において、弾性部材31には、弾性エネルギーが蓄積されている。当該弾性エネルギーにより、バッテリーセル92とスペーサー1とは密着している。また、スペーサー1のパウチフィルム2と断熱部材30と弾性部材31とは密着している。
【0052】
なお、駆動状態においては、充放電に伴いバッテリーセル92が変形(膨張、収縮)する。当該変形に応じて、弾性部材31も変形する。この際も、図8に示すように、弾性部材31の変形に応じて、空気孔24を介して、パウチフィルム2の内部から外部に、あるいは外部から内部に、空気を流動させることができる。このため、パウチフィルム2により弾性部材31の変形が拘束されるのを、抑制することができる。
【0053】
[作用効果]
次に、本実施形態のスペーサーの作用効果について説明する。図2に示すように、被収容部材3は、断熱部材30を備えている。このため、スペーサー1を介して前後方向に隣り合う一対のバッテリーセル92間の伝熱を、抑制することができる。また、断熱部材30は、袋状のパウチフィルム2に収容されている。このため、断熱部材30の粉(塊状の圧縮成形品である断熱部材30の少なくとも一部が崩れて発生する粉)がスペーサー1の外部に漏出するのを、抑制することができる。
【0054】
図3に示すように、パウチフィルム2は、空気孔24を有している。空気孔24を介して、パウチフィルム2の内部(袋内部)から外部(袋外部)に、空気を逃がすことができる。このため、パウチフィルム2の内部に空気が残留するのを、抑制することができる。また、パウチフィルム2の内面と被収容部材3との密着性を向上させることができる。また、気泡に起因する凹凸がパウチフィルム2の外面に発現しにくいため、パウチフィルム2とバッテリーセル92との密着性を向上させることができる。また、被収容部材3とパウチフィルム2とバッテリーセル92とを密着させやすいため、被収容部材3の有する機能(断熱部材30の断熱性、弾性部材31の弾性)を効果的に発揮することができる。また、スペーサー1を小型化することができる。
【0055】
図2に示すように、被収容部材3は、弾性部材31を備えている。このため、弾性部材31の弾性力により、スペーサー1とバッテリーセル92との密着性を向上させることができる。また、バッテリーセル92の変形(膨張、収縮など)を弾性的に吸収することができる。また、弾性部材31は、断熱部材30と共に、パウチフィルム2に収容されている。このため、弾性部材31がパウチフィルム2に収容されていない場合と比較して、バッテリーセル92との組付けが容易である。
【0056】
図3図8に示すように、弾性部材31は、初期状態から待機状態に移行する際、駆動状態においてバッテリーセル92が変形する際、待機状態から初期状態に移行する際などに、弾性的に変形する。パウチフィルム2は空気孔24を有している。このため、弾性部材31の変形時に、空気孔24を介して、パウチフィルム2の内部と外部との間で、空気を流動させることができる。したがって、弾性部材31の変形がパウチフィルム2に拘束されるのを抑制することができる。
【0057】
図2図3に示すように、空気孔24は、弾性部材対向区間231に配置されている。すなわち、空気孔24は、積層方向対向壁部22(断熱部材対向壁部220、弾性部材対向壁部221)、断熱部材対向区間230以外の区間に配置されている。
【0058】
空気孔24が断熱部材対向壁部220に配置されている場合と比較して、断熱部材30やバッテリーセル92により空気孔24が閉塞されるのを、抑制することができる。また、断熱部材対向壁部220の強度が低下するのを、抑制することができる。また、断熱部材30の粉が外部に漏出するのを、抑制することができる。
【0059】
また、空気孔24が弾性部材対向壁部221に配置されている場合と比較して、弾性部材31やバッテリーセル92により空気孔24が閉塞されるのを、抑制することができる。また、弾性部材対向壁部221の強度が低下するのを、抑制することができる。
【0060】
また、空気孔24が断熱部材対向区間230に配置されている場合と比較して、断熱部材対向区間230の強度が低下するのを、抑制することができる。また、断熱部材30の粉が外部に漏出するのを、抑制することができる。
【0061】
図5に示すように、パウチフィルム2の表裏方向から見て、空気孔24の孔縁240は全周的に曲線状を呈している。このため、孔縁240が角部を有する場合と比較して、孔縁240の一部に応力が集中するのを抑制することができる。したがって、パウチフィルム2の強度が低下するのを、抑制することができる。
【0062】
図4に示すように、パウチフィルム2の表裏方向断面において、空気孔24の孔縁240は曲線部240aを有している。曲線部240aは、パウチフィルム2の他の部分(例えば、パウチフィルム2のうち、補強部241、接合部Aを除く部分)よりも、硬質である。このため、空気孔24の孔縁240を補強することができる。したがって、空気孔24の形状保持性を高くすることができる。図4にクロスハッチングで示す補強部241は、パウチフィルム2の他の部分よりも、膜厚が大きい。この点においても、孔縁240を補強することができる。
【0063】
断熱部材30は、シリカエアロゲルの圧縮成形品である。シリカエアロゲルは、他の多孔質材料と比較して気孔率が高い。このため、断熱部材30の断熱性を高くすることができる。また、シリカエアロゲルは化学的安定性に優れているため、断熱部材30が変質しにくい。
【0064】
図2図3に示すように、初期状態において、被収容部材3の前後方向両面は、パウチフィルム2に当接している。すなわち、被収容部材3とパウチフィルム2との間には隙間がない。したがって、スペーサー1を小型化することができる。よって、筐体90延いてはバッテリーモジュール9を小型化することができる。
【0065】
図3に示すように、初期状態において、フランジ状の接合部Aは、空気孔24に対して、沿層方向外側に張り出している。図8に示すように、待機状態においては、接合部Aが筐体90の内面に当接している。このため、筐体90の内面と空気孔24との間に、隙間C1を確保することができる。すなわち、筐体90により空気孔24が閉塞されるのを、抑制することができる。また、空気孔24は、接合部Aの裾部分A1に配置されている。このため、筐体90の内面と空気孔24との間に、簡単に隙間C1を確保することができる。
【0066】
第一フィルム20、第二フィルム21は、熱収縮材料製である。このため、熱収縮性を利用して、パウチフィルム2と被収容部材3との間の隙間を小さくすることができる。また、スペーサー1がかさばるのを、抑制することができる。また、被収容部材3の位置決めが容易である。また、パウチフィルム2が収縮する際、空気孔24を介して、パウチフィルム2の内部から外部に、空気を逃がすことができる。また、第一フィルム20、第二フィルム21は、透明である。このため、パウチフィルム2の外部から、被収容部材3を視認することができる。
【0067】
<第二実施形態>
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとの相違点は、空気孔が、弾性部材対向区間ではなく、断熱部材対向区間に配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0068】
図9に、本実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図を示す。なお、図9に示す部分は、図2図3の枠IIIに対応している。図3と対応する部位については、同じ符号で示す。空気孔24は、断熱部材対向区間230に配置されている。すなわち、空気孔24は、積層方向対向壁部22(断熱部材対向壁部220、弾性部材対向壁部221)、弾性部材対向区間231以外の区間に配置されている。
【0069】
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のスペーサーによると、図3に示すように空気孔24が弾性部材対向区間231に配置されている場合(第一実施形態)と比較して、弾性部材対向区間231の強度が低下するのを、抑制することができる。
【0070】
<第三実施形態>
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとの相違点は、空気孔が、弾性部材対向区間ではなく、弾性部材対向壁部に配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0071】
図10に、本実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図を示す。なお、図10に示す部分は、図2の枠Xに対応している。図2と対応する部位については、同じ符号で示す。空気孔24は、第二フィルム21の弾性部材対向壁部221に配置されている。すなわち、空気孔24は、図2に示す断熱部材対向壁部220、沿層方向対向壁部23(断熱部材対向区間230、弾性部材対向区間231)以外の区間に配置されている。
【0072】
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のスペーサーによると、図3に示すように空気孔24が弾性部材対向区間231に配置されている場合(第一実施形態)と比較して、弾性部材対向区間231の強度が低下するのを、抑制することができる。
【0073】
<第四実施形態>
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとの相違点は、空気孔が、弾性部材対向区間ではなく、断熱部材対向壁部に配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0074】
図11に、本実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図を示す。なお、図11に示す部分は、図2の枠XIに対応している。図2と対応する部位については、同じ符号で示す。空気孔24は、第一フィルム20の断熱部材対向壁部220に配置されている。すなわち、空気孔24は、図2に示す弾性部材対向壁部221、沿層方向対向壁部23(断熱部材対向区間230、弾性部材対向区間231)以外の区間に配置されている。
【0075】
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のスペーサーによると、図3に示すように空気孔24が弾性部材対向区間231に配置されている場合(第一実施形態)と比較して、弾性部材対向区間231の強度が低下するのを、抑制することができる。
【0076】
<第五実施形態>
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとの相違点は、被収容部材が、弾性部材を備えていない点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図12に、本実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。また、被収容部材3の前後方向厚みを強調して示す。被収容部材3は、断熱部材30だけを備えている。空気孔24は、断熱部材対向区間230に配置されている。
【0077】
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のスペーサー1のように、図2に示す弾性部材31が不要の場合(例えば、図1に示すバッテリーセル92が変形しにくい場合など)は、被収容部材3が断熱部材30だけを備えていてもよい。本実施形態のスペーサー1によると、スペーサー1を小型化することができる。なお、スペーサー1が、図12に示すパウチフィルム2および被収容部材3と、このパウチフィルム2の前側および後側のうち少なくとも一方に積層される図2に示す弾性部材31と、を備えていてもよい。すなわち、パウチフィルム2の外側に弾性部材31が配置されていてもよい。
【0078】
<第六実施形態>
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとの相違点は、第一フィルムと第二フィルムとの膜厚が異なる点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図13に、本実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図を示す。なお、図13に示す部分は、図2図3の枠IIIに対応している。図3と対応する部位については、同じ符号で示す。パウチフィルム2の全体に亘って、第二フィルム21の膜厚T2は、第一フィルム20の膜厚T1よりも、大きく設定されている。第一フィルム20は、本開示の「第一機能部」の概念に含まれる。第二フィルム21は、本開示の「第二機能部」の概念に含まれる。
【0079】
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のスペーサーによると、第一フィルム20と第二フィルム21との間に、構造差(膜厚差)に起因する機能差(強度差)を設定することができる。具体的には、第一フィルム20の膜厚T1に対して、第二フィルム21の膜厚T2つまり弾性部材対向壁部221、弾性部材対向区間231の膜厚T2を大きくすることができる。このため、弾性部材対向壁部221、弾性部材対向区間231を補強することができる。
【0080】
なお、図13とは反対に、パウチフィルム2の全体に亘って、第一フィルム20の膜厚T1を、第二フィルム21の膜厚T2よりも、大きく設定してもよい。この場合、第一フィルム20の膜厚T1つまり断熱部材対向壁部220、断熱部材対向区間230の膜厚を大きくすることができる。このため、断熱部材対向壁部220、断熱部材対向区間230を補強することができる。
【0081】
<第七実施形態>
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとの相違点は、空気孔形成工程において、熱を伴わない加工により、空気孔が形成されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図14に、本実施形態のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図を示す。なお、図14に示す部分は、図3図4の円IVに対応している。図4と対応する部位については、同じ符号で示す。空気孔24の孔縁240の裏側端部240dには、塊状のバリDが連なっている。
【0082】
本実施形態のスペーサーの製造方法は、収容工程と、空気孔形成工程と、熱収縮工程と、を有している。すなわち、空気孔形成工程は、収容工程の後に行われる。前出の図6に示す収容工程後においては、袋状のパウチフィルム2が形成されている。被収容部材3は、パウチフィルム2の内部に封入されている。
【0083】
空気孔形成工程においては、収容工程後の第一フィルム20に、表側から裏側に向かって、熱針ではなく、常温の針を刺すことにより、空気孔24を形成する。空気孔24の形成時に、空気孔24の孔縁240の裏側には、ヒレ状のバリDが発生する。熱収縮工程においては、被収容部材3入りのパウチフィルム2が加熱される。この際、バリDは、孔縁240に向かって熱収縮し、図14に模式的に示すように、孔縁240の裏側端部240dに塊状に連なる。
【0084】
本実施形態のスペーサーと、第一実施形態のスペーサーとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のスペーサーのように、常温の針を刺すことにより、空気孔24を形成してもよい。空気孔形成工程の前に、既にパウチフィルム2の内部には被収容部材3が封入されている。このため、パウチフィルム2に針を刺すと、針が被収容部材3に干渉するおそれがある。この点、空気孔24は、弾性部材対向区間231に形成される。このため、空気孔24形成時に針を刺しても、図3に示すように、針が干渉する可能性があるのは、断熱部材30ではなく、弾性変形可能な弾性部材31である。したがって、針が干渉しても、被収容部材3(弾性部材31)が損傷を受けるのを、抑制することができる。
【0085】
また、空気孔形成工程の前に、既にパウチフィルム2の内部には被収容部材3が封入されている。このため、パウチフィルム2と被収容部材3との位置関係、つまり空気孔24と弾性部材31との位置関係を確認してから、パウチフィルム2に針を刺すことができる。したがって、空気孔24の位置決めが簡単である。また、空気孔24の位置決め精度が高い。
【0086】
また、空気孔形成工程後のバリDは、裏側端部240dに繋がっている。このため、バリDがパウチフィルム2の内部に脱落するのを、抑制することができる。また、図8に矢印Y5で示すように、待機状態や駆動状態において、パウチフィルム2は、弾性部材31から押圧されやすい。このため、図14に矢印Y7、一点鎖線で示すように、バリDは、空気孔24の孔内に入りやすい。したがって、空気孔24の開口面積を小さくすることができる。よって、空気孔24を介して断熱部材30の粉が外部に漏出するのを、抑制することができる。
【0087】
<その他>
以上、本開示のスペーサーの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0088】
[構造、製造方法について]
空気孔24の形成方法は特に限定しない。図15に、その他の実施形態(その1)のスペーサーの初期状態における前後方向部分断面図を示す。なお、図15に示す部分は、図3図4の円IVに対応している。図4と対応する部位については、同じ符号で示す。空気孔形成工程においては、図6に示す第一加工前フィルム20Aに、打抜き加工により、空気孔24を穿孔する。このため、図15に示すように、孔縁240の表側端部240e、裏側端部240dは、角張っている。本実施形態のスペーサーのように、打抜き加工(剪断加工)により、空気孔24を形成してもよい。こうすると、空気孔24の形状精度を高くすることができる。
【0089】
図16(A)~図16(D)に、その他の実施形態(その2~その5)の空気孔の正面図(外面図)を示す。なお、図16(A)~図16(D)は、図5に対応している。また、図16(A)~図16(D)の空気孔24は、前述の熱針加工により形成される。図16(A)~図16(D)に示すように、パウチフィルム2の表側(表裏方向)から見て、空気孔24は、楕円状(図16(A))、長円状(図16(B))、角の丸い四角形状(図16(C))、両端の丸いスリット状(図16(D))などであってもよい。
【0090】
図16(A)に示すように、空気孔24の孔縁240を全周的に丸くしてもよい。こうすると、全周的に応力を緩和することができる。図16(B)~図16(D)に示すように、空気孔24の孔縁240を局所的に丸くしてもよい。こうすると、局所的に応力を緩和することができる。図16(D)に示すように、空気孔24を線状(スリット状)としてもよい。こうすると、空気孔24の開口面積を小さくすることができる。図16(c)に示す空気孔24の形状は特に限定しない。四角形状以外の他の多角形状(三角形状、五角形状、六角形状など)であってもよい。空気孔24が異方性を有する場合(例えば、図16(A)、図16(B)、図16(D))、配置方向(長軸xの延在方向)は特に限定しない。例えば、図2に示す前後方向(積層方向)、左右方向(沿層方向)、上下方向(沿層方向)、これらの方向に対して傾斜する方向などであってもよい。このように、空気孔24の形状、配置方向は特に限定しない。
【0091】
図17に、その他の実施形態(その6)のスペーサーの初期状態における前後方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。また、被収容部材3の前後方向厚みを強調して示す。図17に示すように、単一のパウチフィルム2で被収容部材3を包んでもよい。なお、パウチフィルム2は、半折フィルムである。収容工程においては、パウチフィルム2の内側に被収容部材3が収容された状態で、パウチフィルム2の三辺(左辺、上辺、下辺)が溶断される。
【0092】
図18に、その他の実施形態(その7)のスペーサーの初期状態における前後方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。また、被収容部材3の前後方向厚みを強調して示す。図18に示すように、パウチフィルム2が、第一フィルム20、第二フィルム21に加えて、第三フィルム25を備えていてもよい。すなわち、第三フィルム25を、前側の第一フィルム20と、後側の第二フィルム21と、の間に介装してもよい。このように、パウチフィルム2を構成するフィルム数は、特に限定しない。
【0093】
また、図18に示すように、被収容部材3が、前側から後側に向かって、第一の弾性部材31と、断熱部材30と、第二の弾性部材31と、を備えていてもよい。また、初期状態において、前後方向から見て、断熱部材30と弾性部材31とが同じ大きさであってもよい。また、被収容部材3が、断熱部材30、弾性部材31以外の部材を備えていてもよい。このように、被収容部材3の構成は特に限定しない。
【0094】
また、図18に示すように、パウチフィルム2の全体に、複数の空気孔24を分布させてもよい。各部(弾性部材対向壁部221、断熱部材対向区間230、弾性部材対向区間231)間における空気孔24の形状、配置数は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0095】
上述の第一実施形態からその他の実施形態(その7)までのスペーサー1のうち、任意の実施形態のスペーサー1の任意の部材は、他の実施形態のスペーサー1に、組み込むことができる。例えば、図14に示すスペーサーのバリD付きの空気孔24を、図9に示すスペーサーの断熱部材対向区間230の空気孔24や、図11に示すスペーサーの断熱部材対向壁部220の空気孔24として、転用してもよい。こうすると、空気孔24の開口面積を小さくすることができるため、断熱部材30の粉の漏出を、効果的に抑制することができる。
【0096】
空気孔形成工程における空気孔24の形成方法は特に限定しない。例えば、熱針加工の代わりに、レーザー加工を用いてもよい。この場合であっても、加工熱により、空気孔24の周囲に図4に示す補強部241を形成することができる。また、曲線部240aを硬化させることができる。収容工程における接合部Aの形成方法は特に限定しない。例えば、周縁部20aと周縁部21aとを接着することにより、接合部Aを形成してもよい。熱収縮工程におけるパウチフィルム2の加熱方法は特に限定しない。ヒートガンなどを用いてパウチフィルム2を加熱してもよい。
【0097】
複数のフィルム(例えば、第一フィルム20、第二フィルム21、第三フィルム25など)間に機能差を設定してもよい。機能差は、複数のフィルム間の材料の違いにより設定してもよい。例えば、第一フィルム20をシュリンクフィルム、第二フィルム21をPETフィルム(熱収縮用の延伸処理を施していない樹脂フィルム)としてもよい。機能差は、複数のフィルム間の構造の違いにより設定してもよい。例えば、第一フィルム20を単層構造、第二フィルム21を複層構造としてもよい。機能差の設定対象である機能は、特に限定しない。熱収縮性、強度、剛性、硬度、絶縁性、耐熱性などであってもよい。なお、図1に示すように、積層体91を筐体90に収容する際、前後方向に隣り合うバッテリーセル92とスペーサー1とが両面テープにより仮固定される場合がある。この場合、機能差の設定対象である機能は、両面テープに対する貼着性であってもよい。上述の機能差に関する事項は、単一のフィルムに部分毎に機能差を設ける場合も同様である。
【0098】
積層体91におけるスペーサー1とバッテリーセル92との積層方向は特に限定しない。水平方向(前後方向、左右方向)、垂直方向(上下方向)、これらの方向に対して傾斜する方向などであってもよい。筐体90の形状は特に限定しない。例えば、筐体90は、前後一対の端板と、一対の端板間を繋ぐ左右一対のタイロッドと、を備えていてもよい。バッテリーセル92の種類は特に限定しない。角型セル、円筒型セル、ラミネート型セルなどであってもよい。二次電池の種類は特に限定しない。リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ナトリウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などであってもよい。バッテリーモジュール9の用途は特に限定しない。例えば、ハイブリッド車、電気自動車などに用いてもよい。また、電動アシスト付き自転車、携帯電話、電動工具、ノートパソコンなどに用いてもよい。
【0099】
[材料]
スペーサー1を構成する各部材(パウチフィルム2、断熱部材30、弾性部材31)の材質は特に限定しない。パウチフィルム2の材質は特に限定しない。パウチフィルム2の少なくとも一部にシュリンクフィルムを用いる場合、シュリンクフィルムの材質は、塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などであってもよい。パウチフィルム2は、シュリンクフィルム以外のフィルムであってもよい。熱可塑性樹脂を含有しない樹脂フィルムであってもよい。例えば、真空パック用の袋状のフィルムであってもよい。筐体90の材質は特に限定しない。例えば、ポリプロピレンなどの樹脂、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属であってもよい。
【0100】
弾性部材31の材質は特に限定しない。例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(FMQ、FVMQ、VMQなど)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)などのエラストマー(ゴムを含む)の発泡体であってもよい。弾性部材31の形態は特に限定しない。発泡体、織布、不織布、中空体、中実体などであってもよい。弾性部材31は、断熱部材30よりも、積層方向に弾性変形容易であればよい。
【0101】
断熱部材30の材質は特に限定しない。断熱部材30用の粒状多孔質材料の種類は特に限定しない。一次粒子として、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどが挙げられる。なかでも化学的安定性に優れるという理由から、一次粒子がシリカである、すなわち複数のシリカ微粒子が連結して骨格をなすシリカエアロゲルが望ましい。また、複数のヒュームドシリカ微粒子が連結して骨格をなす凝集性構造体も好適である。
【0102】
シリカエアロゲルの製造方法は、特に限定されず、乾燥工程を常圧で行ったものでも、超臨界で行ったものでも構わない。例えば、疎水化処理を乾燥工程前に行うと、超臨界で乾燥する必要がなくなる、すなわち常圧で乾燥すればよいため、より容易かつ低コストに製造することができる。エアロゲルを製造する際の乾燥方法の違いにより、常圧で乾燥したものを「キセロゲル」、超臨界で乾燥したものを「エアロゲル」と呼び分けることがあるが、本明細書においては、その両方を含めて「エアロゲル」と称す。
【0103】
断熱部材30は、粒状多孔質材料の他、赤外線遮蔽粒子、無機繊維などを含有していてもよい。赤外線遮蔽粒子は、熱源からの熱を吸収し、それを熱源側の表面から再放出することにより、熱源からの輻射熱を遮断して、特に高温下における断熱性の向上に寄与する。赤外線遮蔽粒子としては、炭化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、窒化ケイ素、マイカ、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化インジウムスズ、酸化セリウム、炭化ホウ素、酸化マンガン、酸化スズ、酸化ビスマス、酸化鉄、酸化マグネシウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナ繊維などのセラミック繊維が好適である。
【符号の説明】
【0104】
1:スペーサー、2:パウチフィルム、20:第一フィルム(第一機能部)、20A:第一加工前フィルム、20a:周縁部、21:第二フィルム(第二機能部)、21A:第二加工前フィルム、21a:周縁部、22:積層方向対向壁部、220:断熱部材対向壁部、221:弾性部材対向壁部、23:沿層方向対向壁部、230:断熱部材対向区間、231:弾性部材対向区間、24:空気孔、240:孔縁、240a:曲線部、240b:最大径部、240c:最小径部、240d:裏側端部、240e:表側端部、241:補強部、241a:表側端部、241b:裏側端部、25:第三フィルム、3:被収容部材、30:断熱部材、31:弾性部材、9:バッテリーモジュール、90:筐体、91:積層体、92:バッテリーセル、920:端子、A:接合部、A1:裾部分、B:孔軸、C:隙間、C1:隙間、D:バリ、T1:膜厚、T2:膜厚、x:長軸
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