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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120383
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ロータコア
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20240829BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027139
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】寺田 康一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓次
(72)【発明者】
【氏名】尾関 慧
(72)【発明者】
【氏名】山田 純平
(72)【発明者】
【氏名】山本 竹真
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA14
5H622CB01
(57)【要約】
【課題】ロータコアにおいて磁石収容孔に対して径方向外側に形成された薄肉部に作用する応力を減少させる。
【解決手段】円筒状のロータコア(20)には、シャフトが圧入される中心孔と、永久磁石(13)をそれぞれ収容する複数の磁石収容孔(23)とが形成され、複数の磁石収容孔に対してロータコアの径方向外側にそれぞれ薄肉部(29)が形成されている。中心孔が形成されたロータコアの内周縁部(22)には、ロータコアの径方向外側にへこみ且つロータコアの軸線方向に延びる複数の凹部(27)が形成され、内周縁部において複数の凹部の間の部分により、ロータコアの径方向内側に突出し且つロータコアの軸線方向に延びる複数の凸部(26)が形成されている。ロータコアの周方向における凹部の幅(W1)よりも、ロータコアの径方向における凹部の深さ(H)が大きい。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(11)が圧入される中心孔(21)と、永久磁石(13)をそれぞれ収容する複数の磁石収容孔(23)とが形成された円筒状のロータコア(20)であって、
前記複数の磁石収容孔に対して前記ロータコアの径方向外側にそれぞれ薄肉部(29)が形成され、
前記中心孔が形成された前記ロータコアの内周縁部(22)には、前記ロータコアの径方向外側にへこみ且つ前記ロータコアの軸線方向に延びる複数の凹部(27)が形成され、
前記内周縁部において前記複数の凹部の間の部分により、前記ロータコアの径方向内側に突出し且つ前記ロータコアの軸線方向に延びる複数の凸部(26)が形成され、
前記ロータコアの周方向における前記凹部の幅よりも、前記ロータコアの径方向における前記凹部の深さが大きい、ロータコア。
【請求項2】
前記周方向において、前記凹部の幅よりも前記凸部の幅が広い、請求項1に記載のロータコア。
【請求項3】
前記複数の磁石収容孔に対して前記径方向内側に、前記軸線方向に延びる中間孔(25)がそれぞれ形成され、
複数の前記中間孔に対して前記径方向内側に、前記凸部がそれぞれ配置されている、請求項1又は2に記載のロータコア。
【請求項4】
前記径方向において、前記凹部の底面(27a)から前記中間孔までの距離よりも前記凹部の深さが大きい、請求項3に記載のロータコア。
【請求項5】
前記凹部に対して前記径方向外側に、前記中間孔と前記中間孔との間の肉部(31)の全体が配置されている、請求項3に記載のロータコア。
【請求項6】
前記中間孔に対して前記径方向内側に、前記凸部の全体が配置されている、請求項3に記載のロータコア。
【請求項7】
前記凹部において、前記径方向外側の端部(27d)の前記周方向の幅よりも、前記径方向内側の端部(27c)の前記周方向の幅が広い、請求項3に記載のロータコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に適用されるロータコアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータコアにおいて、シャフトが圧入される中心孔と、永久磁石を収容する磁石収容孔と、径方向内方へ突設されて頂辺を含む内周円によって前記中心孔を形成する複数の凸部と、凸部間の凹部と、が形成されたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-72904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のロータコアでは、磁石収容孔に対して径方向外方(磁石収容孔の径方向外側)に薄肉部が形成されている。この薄肉部には、シャフト圧入時に凸部に作用した圧縮力が伝わるとともに、ロータ回転時の遠心力や磁石の熱変形により生じた応力が作用する。このため、特許文献1に記載のロータコアでは、薄肉部に作用する応力が過大となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ロータコアにおいて磁石収容孔に対して径方向外側に形成された薄肉部に作用する応力を減少させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
シャフト(11)が圧入される中心孔(21)と、永久磁石(13)をそれぞれ収容する複数の磁石収容孔(23)とが形成された円筒状のロータコア(20)であって、
前記複数の磁石収容孔に対して前記ロータコアの径方向外側にそれぞれ薄肉部(29)が形成され、
前記中心孔が形成された前記ロータコアの内周縁部(22)には、前記ロータコアの径方向外側にへこみ且つ前記ロータコアの軸線方向に延びる複数の凹部(27)が形成され、
前記内周縁部において前記複数の凹部の間の部分により、前記ロータコアの径方向内側に突出し且つ前記ロータコアの軸線方向に延びる複数の凸部(26)が形成され、
前記ロータコアの周方向における前記凹部の幅よりも、前記ロータコアの径方向における前記凹部の深さが大きい。
【0007】
上記構成によれば、円筒状のロータコアには、シャフトが圧入される中心孔と、永久磁石をそれぞれ収容する複数の磁石収容孔とが形成されている。ロータコアには、前記複数の磁石収容孔に対して前記ロータコアの径方向外側にそれぞれ薄肉部が形成されている。薄肉部は、周囲の部分よりも肉の厚みが薄い部分である。薄肉部には、ロータ回転時の遠心力や磁石の熱変形により生じた応力が作用する。
【0008】
前記中心孔が形成された前記ロータコアの内周縁部には、前記ロータコアの径方向外側にへこみ且つ前記ロータコアの軸線方向に延びる複数の凹部が形成されている。そして、前記内周縁部において前記複数の凹部の間の部分により、前記ロータコアの径方向内側に突出し且つ前記ロータコアの軸線方向に延びる複数の凸部が形成されている。このため、中心孔にシャフトが圧入されると、シャフト圧入時に凸部に作用した圧縮力が薄肉部に伝わり、ロータ回転時の遠心力や磁石の熱変形により生じた応力と相俟って、薄肉部に作用する応力が過大になるおそれがある。
【0009】
この点、前記ロータコアの周方向における前記凹部の幅よりも、前記ロータコアの径方向における前記凹部の深さが大きい。このため、凸部の両隣に凹部により切り込みが入っている効果を大きくすることができ、凸部の剛性を下げることができる。したがって、シャフト圧入時に凸部に作用した圧縮力が薄肉部に伝わることを抑制することができ、薄肉部に作用する応力を減少させることができる。さらに、凸部の剛性を下げることができるため、中心孔にシャフトを圧入するために必要な力を低下させることができる。
【0010】
前記ロータコアの周方向において、前記凹部の幅を広げることにより前記凸部の幅を狭くして、凸部の剛性を下げることはできる。しかし、その場合は、凸部の頂面とシャフトの外周面との接触面積が小さくなり、ロータコアとシャフトとの固定力が低下するおそれがある。
【0011】
この点、第2の手段では、前記周方向において、前記凹部の幅よりも前記凸部の幅が広い。このため、凸部の頂面とシャフトの外周面との接触面積が小さくなることを抑制しつつ、前記周方向における前記凹部の幅よりも前記径方向における前記凹部の深さを大きくすることで、凸部の剛性を下げることができる。
【0012】
第3の手段では、前記複数の磁石収容孔に対して前記径方向内側に、前記軸線方向に延びる中間孔(25)がそれぞれ形成され、複数の前記中間孔に対して前記径方向内側に、前記凸部がそれぞれ配置されている。
【0013】
上記構成によれば、前記複数の磁石収容孔に対して前記径方向内側(磁石収容孔の前記径方向内側)に、前記ロータコアの軸線方向に延びる中間孔がそれぞれ形成されている。このため、磁石収容孔に磁石が収容された状態において、磁気の短絡を防ぐフラックスバリアとして中間孔を機能させることができる。そして、前記中間孔に対して前記径方向内側(前記中間孔の前記径方向内側)に、前記凸部がそれぞれ配置されている。このため、シャフト圧入時に凸部に作用した圧縮力が、ロータコアの径方向に伝わることを中間孔により抑制することができる。これにより、凸部に作用した圧縮力は、中間孔をよけながらロータコアの周方向へ伝わった後に径方向へ伝わることとなる。このとき、前記ロータコアの周方向における前記凹部の幅よりも、前記ロータコアの径方向における前記凹部の深さが大きいため、圧縮力がロータコアの周方向へ伝わる経路の一部を凹部により遮断しやすくなる。その結果、圧縮力が薄肉部に伝わることをさらに抑制することができ、薄肉部に作用する応力をさらに減少させることができる。
【0014】
第4の手段では、前記径方向において、前記凹部の底面から前記中間孔までの距離よりも前記凹部の深さが大きい。こうした構成によれば、シャフト圧入時に凸部に作用した圧縮力をロータコアの周方向へ伝える部分の厚みを凹部の深さに対して小さくできるため、圧縮力が薄肉部に伝わることを抑制することができる。
【0015】
第5の手段では、前記凹部に対して前記径方向外側(前記凹部の前記径方向外側)に、前記中間孔と前記中間孔との間の肉部の全体が配置されている。こうした構成によれば、シャフト圧入時に凸部に作用した圧縮力が、凸部からロータコアの径方向外側へ中間孔をよけずに肉部を介して伝わることを抑制することができる。したがって、圧縮力がロータコアの径方向に伝わることを、中間孔により効果的に抑制することができる。
【0016】
第6の手段では、前記中間孔に対して前記径方向内側(前記中間孔の前記径方向内側)に、前記凸部の全体が配置されている。こうした構成によれば、シャフト圧入時に凸部に作用した圧縮力を、凸部から中間孔をよけずにロータコアの径方向外側へ直接伝える部分をなくすことができる。したがって、圧縮力がロータコアの径方向に伝わることを、中間孔により効果的に抑制することができる。
【0017】
第7の手段では、前記凹部において、前記径方向外側の端部(27d)の前記周方向の幅よりも、前記径方向内側の端部(27c)の前記周方向の幅が広い。こうした構成によれば、凸部において、前記径方向外側の端部の前記周方向の幅よりも、前記径方向内側の端部の前記周方向の幅を狭くしやすくなる。このため、凸部においてシャフト圧入時に圧縮力が作用する前記径方向内側の端部から、ロータコアの肉部を伝わって薄肉部に至るまでの距離を長くしやすくなる。したがって、圧縮力が薄肉部に伝わることを抑制することができ、薄肉部に作用する応力を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ロータコアの断面図。
図2】ロータコアの部分断面図。
図3】比較例のロータコアの部分断面図。
図4】ロータコアの部分断面図。
図5】ロータコアの部分断面図。
図6】ロータコアの部分断面図。
図7】ロータコアの部分断面図。
図8】ロータコアの変更例の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、回転電機に適用されるロータコアに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1に示すロータコア20は、円筒状に形成され、回転電機に適用される。回転電機は、例えば車両用モータとして用いられるものであって、ステータと、ロータ(ロータコア20)と、永久磁石13(図2参照)と、シャフト11とを備える。
【0021】
ステータは、卷回されたステータコイルを有し、その内孔には内周面と所定間隙を保って回転自在となしたロータがシャフト11で軸支して配設される。
【0022】
ロータコア20は、電磁鋼板を多数枚積層したものである。ロータコア20は、打ち抜き加工された電磁鋼板を積層することにより、中心孔21、磁石収容孔23、フラックスバリア25等を形成している。
【0023】
図2に併せて示すように、ロータコア20の磁石収容孔23には、永久磁石13が挿入されて埋設される。永久磁石13は、磁極(本実施形態では八極)の中心である各磁極中心P(d軸位置)を対称面として、ロータコア20の径方向外側に向かって互いに広がるV字状となるよう配置される。なお、隣り合う磁極中心Pの中央がq軸位置Qとなっている。
【0024】
ロータコア20の中心開口の内周面の磁極中心P位置には、断面形状を略台形とする凸部26が内方へ突設されている。凸部26は、各磁極中心P位置に関して対称になっている。凸部26の頂辺を含む内周円によって中心孔21が形成されている。凸部26の頂辺の長さは、中心孔21の内周を磁極数で除した値より小さくなるよう設定されているので、各凸部26間には凹部27が形成されている。凹部27は、各q軸位置Qに関して対称になっている。換言すれば、中心孔21が形成されたロータコア20の内周縁部22には、ロータコア20の径方向外側(以下、単に「径方向外側」という)にへこみ且つロータコア20の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に延びる複数の凹部27が形成されている。内周縁部22において複数の凹部27の間の部分により、ロータコア20の径方向内側(以下、単に「径方向内側」という)に突出し且つ軸線方向に延びる複数の凸部26が形成されている。
【0025】
フラックスバリア25(中間孔)は、磁石収容孔23のロータコア中心側と凸部26との間に、各磁極中心Pを対称面としてロータコア20の周方向(以下、単に「周方向」という)の両側に設けられている。すなわち、複数の磁石収容孔23に対して径方向内側(磁石収容孔23の径方向内側)に、軸線方向に延びるフラックスバリア25がそれぞれ形成されている。複数のフラックスバリア25に対して径方向内側(フラックスバリア25の径方向内側)に、凸部26がそれぞれ配置されている。フラックスバリア25は、磁石収容孔23に永久磁石13が収容された状態において磁気の短絡を防ぎ、磁極中央部分での磁気抵抗を大きくしてリラクタンストルクを増加させるためのものである。
【0026】
磁石収容孔23及びフラックスバリア25の磁極中心P位置には、磁石収容孔23及びフラックスバリア25の空間を磁極中心P位置で面対称に区画するように、ブリッジ28が設けられている。磁石収容孔23の径方向外側とロータコア20外周面との間には、梁部24が形成されている。ブリッジ28は、梁部24と凸部26とが力学構成的に接続されるように設けられる。ブリッジ28の一方端は、梁部24の磁極中心P位置に接続され、ブリッジ28の他方端は、凸部26の径方向外側に形成される肉部30の磁極中心P位置に接続されている。ロータコア20において、磁石収容孔23がロータコア20の外周面に最も近付く部分の径方向外側には、外周ブリッジ29が形成されている。すなわち、複数の磁石収容孔23に対して径方向外側(磁石収容孔23の径方向外側)にそれぞれ外周ブリッジ29が形成されている。外周ブリッジ29(薄肉部)は、梁部24を肉部32に接続する部分であり、梁部24及び肉部32(周囲の部分)よりも肉の厚みが薄い部分である。肉部32は、q軸位置Qにおける2つの磁石収容孔23の間の部分である。
【0027】
次に、凸部26、凹部27、及びその周辺の構成について、詳細に説明する。
【0028】
凹部27の周方向の幅W1は、径方向で(径方向の位置にかかわらず)一定となっている。凸部26の周方向の幅は、径方向内側ほど狭くなっている。凸部26において径方向内側の端部の周方向の幅は幅W2である。凸部26において径方向内側の端部の周方向の幅W2は、凹部27の周方向の幅W1よりも広くなっている(W2>W1)。すなわち、周方向において、凹部27の幅W1よりも凸部26の幅が広くなっている。
【0029】
周方向における凹部27の幅W1よりも、径方向における凹部27の深さHが大きくなっている(H>W1)。ロータコア20の内周縁部22において複数の凹部27の間の部分により、複数の凸部26が形成されているため、凸部26の高さは凹部27の深さHと等しい。凸部26において径方向内側の端部の周方向の幅W2は、凸部26の高さ(凹部27の深さH)よりも大きくなっている。すなわち、凸部26の周方向の幅は、凸部26の径方向の高さよりも大きくなっている。
【0030】
図3は、比較例のロータコア920の部分断面図である。なお、本実施形態の部材と同一の部材については同一の符号を付し、本実施形態の部材に対応する部材には本実施形態の符号に900を加えた符号を付している。
【0031】
ロータコア920では、周方向における凹部927の幅W9よりも、径方向における凹部927の深さH9が小さくなっている(H9<W9)。ロータコア920の中心孔にシャフトが圧入されると、圧縮力F1が凸部926に作用する。なお、圧縮力F1の大きさは、シャフト及び凸部926の寸法公差内であっても、シャフトの外径のばらつき及び凸部926の寸法のばらつきにより増減する。圧縮力F1は、経路rt1で示すように凸部926、肉部930,931,932を伝わって、外周ブリッジ29に応力σ8を作用させる。すなわち、圧縮力F1は、凹部927により遮断されずに外周ブリッジ29に伝わりやすい。さらに、ロータ(ロータコア920)の回転時には、梁部24に作用する遠心力F2により外周ブリッジ29に応力が作用する。加えて、永久磁石13の熱変形により外周ブリッジ29に応力σ9が作用する。これらにより、外周ブリッジ29に作用する応力が過大になるおそれがある。
【0032】
これに対して、上述したように、ロータコア20では、周方向における凹部27の幅W1よりも、径方向における凹部27の深さHが大きくなっている(H>W1)。このため、凹部27の深さHは比較例の凹部927の深さH9よりも深くなっており、凸部26の剛性は比較例の凸部926の剛性よりも下がっている。ロータコア20の中心孔21にシャフト11が圧入されると(図1参照)、図4に示すように、圧縮力F1が凸部26に作用する。圧縮力F1は、経路rt1で示すように凸部26、肉部30,31,32を経由して、外周ブリッジ29に伝わろうとする。肉部31は、q軸位置Q(図1参照)における2つのフラックスバリア25の間の部分である。しかし、経路rt1の途中に凹部27が存在するため、圧縮力F1が経路rt1に沿って周方向に伝わりにくくなる。すなわち、圧縮力F1が凸部26から外周ブリッジ29まで伝わる経路rt1が、凹部27により遮断されている。このため、圧縮力F1により外周ブリッジ29に作用する応力σ1は、比較例の応力σ8よりも小さくなる(σ1<σ8)。なお、ロータ(ロータコア20)の回転時には、梁部24に作用する遠心力により外周ブリッジ29に応力が作用し、永久磁石13の熱変形により外周ブリッジ29に応力が作用する。
【0033】
図5に示すように、径方向において、凹部27の底面27aからフラックスバリア25までの距離hよりも、凹部27の深さHが大きくなっている(H>h)。すなわち、肉部30(凸部26とフラックスバリア25との間の部分)の厚みは距離hと等しく、凹部27の深さHよりも小さくなっている。ロータコア20の中心孔21にシャフト11が圧入されると、圧縮力F1が凸部26に作用する。圧縮力F1は、凸部26から径方向に伝わろうとするが、凸部26の径方向外側にはフラックスバリア25が形成されている。このため、経路rt2で示すように、圧縮力F1は、凸部26から径方向外側へ伝わった後、フラックスバリア25の手前で肉部30を介して周方向に伝わり、その後に肉部31を介して径方向外側へ伝わる。ここで、肉部30の厚み(距離h)は凹部27の深さHよりも小さくなっているため、圧縮力F1は肉部30を介して周方向に伝わりにくくなる。したがって、圧縮力F1により外周ブリッジ29に作用する応力σ2は、比較例の応力σ8よりも小さくなる(σ2<σ8)。
【0034】
図6に示すように、フラックスバリア25に対して径方向内側に、凸部26がそれぞれ配置されている。そして、肉部31の周方向の幅W3は、凹部27の周方向の幅W1よりも狭くなっている(W3<W1)。すなわち、凹部27に対して径方向外側(凹部27の径方向外側)に、フラックスバリア25とフラックスバリア25との間の肉部31の全体が配置されている。換言すれば、図7に示すように、凸部26の周方向両端からロータコア20の中心Cへ引いた直線がなす中心角θ1は、凸部26の径方向外側に位置する一対のフラックスバリア25の周方向両端からロータコア20の中心Cへ引いた直線がなす中心角θ2よりも小さくなっている(θ1<θ2)。すなわち、フラックスバリア25に対して径方向内側(フラックスバリア25の径方向内側)に、凸部26の全体が配置されている。上記構成によれば、図6に示すように、ロータコア20の中心孔21へのシャフト11の圧入時に、凸部26の周方向端部に作用した圧縮力F3は、フラックスバリア25をよけなければ径方向へ伝わることができなくなる。
【0035】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0036】
・ロータコア20の周方向における凹部27の幅W1よりも、ロータコア20の径方向における凹部27の深さHが大きい。このため、凸部26の両隣に凹部27により切り込みが入っている効果を大きくすることができ、凸部26の剛性を下げることができる。したがって、シャフト11圧入時に凸部26に作用した圧縮力F1が外周ブリッジ29に伝わることを抑制することができ、外周ブリッジ29に作用する応力を減少させることができる。さらに、凸部26の剛性を下げることができるため、中心孔21にシャフト11を圧入するために必要な力を低下させることができる。
【0037】
・ロータコア20の周方向において、凹部27の幅W1を広げることにより凸部26の幅W2を狭くして、凸部26の剛性を下げることはできる。しかし、その場合は、凸部26の頂面とシャフト11の外周面との接触面積が小さくなり、ロータコア20とシャフト11との結合力(固定力)が低下するおそれがある。この点、周方向において、凹部27の幅W1よりも凸部26の幅W2が広くなっている。このため、凸部26の頂面とシャフト11の外周面との接触面積が小さくなることを抑制しつつ、周方向における凹部27の幅W1よりも径方向における凹部27の深さHを大きくすることで、凸部26の剛性を下げることができる。
【0038】
・複数の磁石収容孔23に対して径方向内側(磁石収容孔23の径方向内側)に、ロータコア20の軸線方向に延びるフラックスバリア25がそれぞれ形成されている。そして、フラックスバリア25に対して径方向内側(フラックスバリア25の径方向内側)に、凸部26がそれぞれ配置されている。このため、シャフト11圧入時に凸部26に作用した圧縮力F1,F3が、ロータコア20の径方向に伝わることをフラックスバリア25により抑制することができる。これにより、凸部26に作用した圧縮力F1,F3は、フラックスバリア25をよけながらロータコア20の周方向へ伝わった後に径方向へ伝わることとなる。このとき、ロータコア20の周方向における凹部27の幅W1よりも、ロータコア20の径方向における凹部27の深さHが大きいため、圧縮力F1がロータコア20の周方向へ伝わる経路rt1の一部を凹部27により遮断しやすくなる。その結果、圧縮力F1が外周ブリッジ29に伝わることをさらに抑制することができ、外周ブリッジ29に作用する応力をさらに減少させることができる。
【0039】
・径方向において、凹部27の底面27aからフラックスバリア25までの距離hよりも凹部27の深さHが大きい。こうした構成によれば、シャフト11圧入時に凸部26に作用した圧縮力F1をロータコア20の周方向へ伝える肉部30の厚みを凹部27の深さHに対して小さくできるため、圧縮力F1が外周ブリッジ29に伝わることを抑制することができる。
【0040】
・凹部27に対して径方向外側(凹部27の径方向外側)に、フラックスバリア25とフラックスバリア25との間の肉部31の全体が配置されている。こうした構成によれば、シャフト11圧入時に凸部26に作用した圧縮力F3が、凸部26からロータコア20の径方向外側へフラックスバリア25をよけずに肉部31を介して伝わることを抑制することができる。したがって、圧縮力F3がロータコア20の径方向に伝わることを、フラックスバリア25により効果的に抑制することができる。
【0041】
・フラックスバリア25に対して径方向内側(フラックスバリア25の径方向内側)に、凸部26の全体が配置されている。こうした構成によれば、シャフト11圧入時に凸部26に作用した圧縮力F3を、凸部26からフラックスバリア25をよけずにロータコア20の径方向外側へ直接伝える部分をなくすことができる。したがって、圧縮力F3がロータコア20の径方向に伝わることを、フラックスバリア25により効果的に抑制することができる。
【0042】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0043】
・径方向において、凹部27の底面27aからフラックスバリア25までの距離hよりも凹部27の深さHが小さくてもよい。
【0044】
図8に示すように、凹部27において、径方向外側の端部27dの周方向の幅W5よりも、径方向内側の端部27cの周方向の幅W4を広くしてもよい(W4>W5)。すなわち、凹部27の底面27aと側面27bとの角度θ3を90°よりも大きくしてもよい。こうした構成によれば、凸部26において、径方向外側の端部の周方向の幅W6よりも、径方向内側の端部の周方向の幅W2を狭くしやすくなる。このため、凸部26においてシャフト11圧入時に圧縮力F1が作用する径方向内側の端部(頂面)から、ロータコア20の肉部30を伝わって外周ブリッジ29に至るまでの距離を長くしやすくなる。したがって、圧縮力F1が外周ブリッジ29に伝わることを抑制することができ、外周ブリッジ29に作用する応力を減少させることができる。
【0045】
・ロータコア20とシャフト11との結合力(固定力)が低下するおそれがなければ、周方向において、凹部27の幅W1よりも凸部26の幅W2が狭くなっていてもよい。
【0046】
・凸部26は、フラックスバリア25に対して径方向内側(フラックスバリア25の径方向内側)に配置されていない部分を含んでいてもよい。すなわち、凸部26の周方向の端部の一方又は両方が、フラックスバリア25の周方向の端よりも外側に配置されていてもよい。
【0047】
・フラックスバリア25とフラックスバリア25との間の肉部31は、凹部27に対して径方向外側(凹部27の径方向外側)に配置されていない部分を含んでいてもよい。すなわち、肉部31の周方向の端部の一方又は両方が、凹部27の周方向の端よりも外側に配置されていてもよい。
【0048】
・フラックスバリア25に対して径方向内側(フラックスバリア25の径方向内側)に、凹部27がそれぞれ配置されている構成を採用することもできる。この場合であっても、ロータコア20の周方向における凹部27の幅W1よりも、ロータコア20の径方向における凹部27の深さHが大きければ、凸部26の両隣に凹部27により切り込みが入っている効果を大きくすることができ、凸部26の剛性を下げることができる。したがって、シャフト11圧入時に凸部26に作用した圧縮力F1が外周ブリッジ29に伝わることを抑制することができ、外周ブリッジ29に作用する応力を減少させることができる。
【0049】
・ロータ(ロータコア20)に設けられる磁極の数は、8極に限らず、12極や、16極等であってもよい。
【0050】
・ロータコア20が適用される回転電機は、モータに限らず、発電機や、モータジェネレータであってもよい。
【0051】
なお、上記実施形態及びその変更例を、組み合わせ可能な範囲で組み合わせて実施することもできる。
【0052】
以下、上述した実施形態及び変更例から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
シャフト(11)が圧入される中心孔(21)と、永久磁石(13)をそれぞれ収容する複数の磁石収容孔(23)とが形成された円筒状のロータコア(20)であって、
前記複数の磁石収容孔に対して前記ロータコアの径方向外側にそれぞれ薄肉部(29)が形成され、
前記中心孔が形成された前記ロータコアの内周縁部(22)には、前記ロータコアの径方向外側にへこみ且つ前記ロータコアの軸線方向に延びる複数の凹部(27)が形成され、
前記内周縁部において前記複数の凹部の間の部分により、前記ロータコアの径方向内側に突出し且つ前記ロータコアの軸線方向に延びる複数の凸部(26)が形成され、
前記ロータコアの周方向における前記凹部の幅よりも、前記ロータコアの径方向における前記凹部の深さが大きい、ロータコア。
[構成2]
前記周方向において、前記凹部の幅よりも前記凸部の幅が広い、構成1に記載のロータコア。
[構成3]
前記複数の磁石収容孔に対して前記径方向内側に、前記軸線方向に延びる中間孔(25)がそれぞれ形成され、
複数の前記中間孔に対して前記径方向内側に、前記凸部がそれぞれ配置されている、構成1又は2に記載のロータコア。
[構成4]
前記径方向において、前記凹部の底面(27a)から前記中間孔までの距離よりも前記凹部の深さが大きい、構成3に記載のロータコア。
[構成5]
前記凹部に対して前記径方向外側に、前記中間孔と前記中間孔との間の肉部(31)の全体が配置されている、構成3又は4に記載のロータコア。
[構成6]
前記中間孔に対して前記径方向内側に、前記凸部の全体が配置されている、構成3~5のいずれか1つに記載のロータコア。
[構成7]
前記凹部において、前記径方向外側の端部(27d)の前記周方向の幅よりも、前記径方向内側の端部(27c)の前記周方向の幅が広い、構成3~6のいずれか1つに記載のロータコア。
【符号の説明】
【0053】
11…シャフト、13…永久磁石、20…ロータコア、21…中心孔、22…内周縁部、23…磁石収容孔、26…凸部、27…凹部、29…外周ブリッジ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8