(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120389
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20240829BHJP
H01R 13/64 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
H01R13/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027151
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏 龍龍
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC36
5E021FC38
5E021HC09
5E021KA06
(57)【要約】
【課題】ロックアームの係止状態を適正に維持できるコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング20は、相手ハウジング90に嵌合される過程で弾性変形し、相手ハウジング90に嵌合されたときに相手ハウジング90を係止するロックアーム22を有している。検知部材60は、検知位置において、ロックアーム22が弾性変形する撓み空間27に配置される解除規制部62,64を有している。解除規制部62,64は、検知部材60に、検知部材60の移動方向と交差する幅方向に間隔を置いて複数設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手ハウジングに嵌合可能なハウジングと、
前記ハウジングに対して待機位置から検知位置へと移動可能とされ、前記ハウジングが前記相手ハウジングに嵌合されたときに前記検知位置への移動が許容される検知部材と、を備え、
前記ハウジングは、前記ハウジングが前記相手ハウジングに嵌合される過程で弾性変形し、前記ハウジングが前記相手ハウジングに嵌合されたときに前記相手ハウジングを係止するロックアームを有し、
前記検知部材は、前記検知位置において、前記ロックアームが弾性変形する撓み空間に配置される解除規制部を有し、
前記解除規制部は、前記検知部材に、前記検知部材の移動方向と交差する幅方向に間隔を置いて複数設けられている、コネクタ。
【請求項2】
前記検知部材が前記ハウジングに対して前記待機位置から前記検知位置へと前方に移動するとした場合に、複数の前記解除規制部は、いずれも、前記待機位置において、弾性変形する前記ロックアームに対して後方から接触可能に配置される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記解除規制部は、前記検知位置において、前記ロックアームの前記幅方向の中間部に対向して配置される第1解除規制部と、前記ロックアームの前記幅方向の両端部にそれぞれ対向して配置される、一対の第2解除規制部と、を有している、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記ロックアームとの間に前記撓み空間を形成するハウジング本体を有し、
前記一対の第2解除規制部は、それぞれ、前記検知位置において、前記ロックアームが弾性変形する方向に起立して前記ロックアームの前記幅方向の両端部と前記ハウジング本体とに接触可能な壁状をなしている、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記検知部材が前記ハウジングに対して前記待機位置から前記検知位置へと前方に移動するとした場合に、前記検知部材は、前記幅方向に延びる基部と、前記基部の前記幅方向の両端部から前方に突出する、一対の係止部と、を有し、
前記一対の係止部は、前記待機位置において、前記ハウジングを係止するものであり、
前記一対の第2解除規制部は、前記一対の係止部から前方に連続して設けられている、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ロックアームは、アーム本体と、前記アーム本体から前記幅方向の両側にそれぞれ突出する、一対の突部と、を有し、
前記解除規制部は、前記検知位置において、前記第1解除規制部を前記アーム本体に対向させ、前記一対の第2解除規制部を前記一対の突部にそれぞれ対向させており、
前記ハウジングは、前記一対の突部の各々と対向し、前記一対の突部の少なくとも一方に当たることで、前記ロックアームが前記撓み空間とは反対側に弾性変形するのを規制する、一対の反転規制部を有している、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は開示されたコネクタは、相手ハウジング(雄ハウジング)に嵌合可能なハウジング(雌ハウジング)と、ハウジングに対して待機位置から検知位置への移動を可能に配置される検知部材と、を備えている。ハウジングは、嵌合時に相手ハウジングを係止する弾性変形可能なロックアームを有している。検知部材の検知位置への移動は、ハウジングが相手ハウジングに嵌合されたときに可能となる。検知部材の移動が規制される場合には、ハウジングが相手ハウジングに嵌合されていないと認識(検知)される。検知部材は、検知位置において、ロックアームが弾性変形する撓み空間に進入する検知部を有している。ハウジングが相手ハウジングに嵌合され、且つ検知部材が検知位置にあるときに、ロックアームを係止解除する不正な操作は、検知部によって規制可能となっている。検知部材を備えたコネクタは、特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-141145号公報
【特許文献2】特開2004-103551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、例えば、検知部に不具合がある場合に、ロックアームを強引に押し込むと、ロックアームが幅方向に傾く等し、ロックアームが不用意に係止解除されるおそれがあった。
【0005】
そこで、本開示は、ロックアームの係止状態を適正に維持できるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、相手ハウジングに嵌合可能なハウジングと、前記ハウジングに対して待機位置から検知位置へと移動可能とされ、前記ハウジングが前記相手ハウジングに嵌合されたときに前記検知位置への移動が許容される検知部材と、を備え、前記ハウジングは、前記ハウジングが前記相手ハウジングに嵌合される過程で弾性変形し、前記ハウジングが前記相手ハウジングに嵌合されたときに前記相手ハウジングを係止するロックアームを有し、前記検知部材は、前記検知位置において、前記ロックアームが弾性変形する撓み空間に配置される解除規制部を有し、前記解除規制部は、前記検知部材に、前記検知部材の移動方向と交差する幅方向に間隔を置いて複数設けられている、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ロックアームの係止状態を適正に維持できるコネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1において、検知部材、ハウジングおよび相手ハウジングの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、ハウジングが相手ハウジングに嵌合され、検知部材がハウジングに対して検知位置に留め置かれた状態におけるコネクタを、端子金具を省略して示す背面図である。
【
図4】
図4は、検知部材がハウジングに対して待機位置に留め置かれ、第1解除規制部の第1規制突起がロックアームのロック突起に係止可能に配置された状態を拡大して示す側断面図である。
【
図5】
図5は、
図4と同じ状態のときに、係止部の前端部が第1係止突起と第2係止突起とに係止可能に配置され、第2解除規制部が突部よりも後方で且つ凹部の底面上に配置された状態を拡大して示す側断面図である。
【
図6】
図6は、
図4および
図5と同じ状態のときに、第1解除規制部がロックアームに係止可能に配置され、且つ各係止部が第1係止突起および第2係止突起に係止可能に配置された状態を拡大して示す平断面図である。
【
図7】
図7は、ハウジングと相手ハウジングとの嵌合過程でロックアームがロック部と接触して弾性変形し、且つ第1解除規制部もロックアームに押圧されて弾性変形した状態を拡大して示す側断面図である。
【
図8】
図8は、
図6と同じ状態のときに、第2解除規制部が突部と接触し、検知部材の検知位置への移動が規制された状態を拡大して示す側断面図である。
【
図9】
図9は、
図2の要部拡大図に相当し、検知部材がハウジングに対して検知位置に至り、第1解除規制部の第1規制突起がロックアームの進入凹部に進入した状態を拡大して示す側断面図である。
【
図10】
図10は、
図8と同じ状態のときに、第2解除規制部が凹部の底面と突部との間の空間に入り込み、ロックアームの係止解除方向への弾性変形が規制された状態を拡大して示す側断面図である。
【
図11】
図11は、ハウジングを斜め上後方から見た斜視図である。
【
図12】
図12は、ハウジングの上端部の左右中央側を拡大して示す背面図である。
【
図13】
図13は、検知部材を斜め上前方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)相手ハウジングに嵌合可能なハウジングと、前記ハウジングに対して待機位置から検知位置へと移動可能とされ、前記ハウジングが前記相手ハウジングに嵌合されたときに前記検知位置への移動が許容される検知部材と、を備え、前記ハウジングは、前記ハウジングが前記相手ハウジングに嵌合される過程で弾性変形し、前記ハウジングが前記相手ハウジングに嵌合されたときに前記相手ハウジングを係止するロックアームを有し、前記検知部材は、前記検知位置において、前記ロックアームが弾性変形する撓み空間に配置される解除規制部を有し、前記解除規制部は、前記検知部材に、前記検知部材の移動方向と交差する幅方向に間隔を置いて複数設けられている。
【0010】
上記構成は、検知部材に複数の解除規制部が設けられているため、仮に1つの解除規制部に不具合が生じても、残りの解除規制部によって、ロックアームが不用意に係止解除される事態を回避することができる。また、複数の解除規制部が検知部材に幅方向に間隔を置いて設けられているため、ロックアームが幅方向に傾いて係止解除される事態を回避することもできる。
【0011】
(2)上記(1)に記載のコネクタにおいて、前記検知部材が前記ハウジングに対して前記待機位置から前記検知位置へと前方に移動するとした場合に、複数の前記解除規制部は、いずれも、前記待機位置において、弾性変形する前記ロックアームに対して後方から接触可能に配置されることが好ましい。
【0012】
上記構成は、ハウジングが相手ハウジングに嵌合される過程で、待機位置にある検知部材が不用意に検知位置に向けて移動する事態を、高い確率で回避することができる。よって、検知部材の検知機能の信頼性を高めることができる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)に記載のコネクタにおいて、前記解除規制部は、前記検知位置において、前記ロックアームの前記幅方向の中間部に対向して配置される第1解除規制部と、前記ロックアームの前記幅方向の両端部にそれぞれ対向して配置される、一対の第2解除規制部と、を有していることが好ましい。
【0014】
上記構成は、ロックアームが幅方向に傾いて係止解除される事態を、高い確率で回避することができる。
【0015】
(4)上記(3)に記載のコネクタにおいて、前記ハウジングは、前記ロックアームとの間に前記撓み空間を形成するハウジング本体を有し、前記一対の第2解除規制部は、それぞれ、前記検知位置において、前記ロックアームが弾性変形する方向に起立して前記ロックアームの前記幅方向の両端部と前記ハウジング本体とに接触可能な壁状をなしていると良い。
【0016】
上記構成は、ロックアームが不用意に係止解除される事態を、いっそう高い確率で回避することができる。
【0017】
(5)上記(3)または(4)に記載のコネクタにおいて、前記検知部材が前記ハウジングに対して前記待機位置から前記検知位置へと前方に移動するとした場合に、前記検知部材は、前記幅方向に延びる基部と、前記基部の前記幅方向の両端部から前方に突出する、一対の係止部と、を有し、前記一対の係止部は、前記待機位置において、前記ハウジングを係止するものであり、前記一対の第2解除規制部は、前記一対の係止部から前方に連続して設けられている、と良い。
【0018】
上記構成は、各第2解除規制部が各係止部から前方に連続して設けられているため、各係止部の不用意な弾性変形を規制することができ、係止部がハウジングを係止する信頼性を高めることができる。各第2解除規制部は、ロックアームの係止解除を規制する機能に加え、各係止部を補強する機能を兼ね備えることができる。
【0019】
(6)上記(3)から(5)のいずれかに記載のコネクタにおいて、前記ロックアームは、アーム本体と、前記アーム本体から前記幅方向の両側にそれぞれ突出する、一対の突部と、を有し、前記解除規制部は、前記検知位置において、前記第1解除規制部を前記アーム本体に対向させ、前記一対の第2解除規制部を前記一対の突部にそれぞれ対向させており、前記ハウジングは、前記一対の突部の各々と対向し、前記一対の突部の少なくとも一方に当たることで、前記ロックアームが前記撓み空間とは反対側に弾性変形するのを規制する、一対の反転規制部を有していると良い。
【0020】
各突部は、各第2解除規制部とともにロックアームの係止解除を規制する機能と、各反転規制部とともにロックアームの反転を規制する機能と、を兼ね備えることができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
<実施形態1>
実施形態1に係るコネクタ10は、
図1に示すように、相手ハウジング90に嵌合可能なハウジング20と、ハウジング20に対して待機位置と検知位置とに移動可能に配置される検知部材60と、を備えている。
図3に示すように、ハウジング20には端子金具50が収容される。なお、以下の説明において、前後方向については、ハウジング20および相手ハウジング90が嵌合開始時に互いに対向する面側を前側とする。コネクタ10の場合、
図1の矢印X側が前側である。左右方向は、コネクタ10を前側から見た場合の左右方向を基準とする。
図1の矢印Y側が右側である。上下方向についてはは、
図1の矢印Z側が上側になる。これらの方向は、コネクタ10が車両等に搭載された状態における方向と必ずしも一致しない。
【0023】
(相手ハウジング90)
相手ハウジング90は合成樹脂製であって、
図1および
図3に示すように、端子収容部91と、端子収容部91から前方に突出する角筒状のフード部92と、を有している。
図3に示すように、端子収容部91には、複数の相手端子金具95が収容されている。相手端子金具95は導電金属製であって、フード部92内に突出するタブ96を有している。また、相手端子金具95は、電線98の端末部に接続されている。電線98は端子収容部91から後方に引き出される。フード部92にはロック部93が設けられている。ロック部93はフード部92の内面から突出している。
【0024】
(ハウジング20および端子金具50)
ハウジング20は合成樹脂製であって、
図1および
図11に示すように、ハウジング本体21と、ハウジング本体21の上面側に突設されたロックアーム22と、を有している。ハウジング本体21は、フード部92内に嵌合可能な角ブロック状をなしている。ハウジング本体21は、
図3に示すように、前後方向に延びる複数のキャビティ23を有している。
【0025】
端子金具50は、ハウジング本体21のキャビティ23に後方から挿入される。端子金具50は導電金属製であって、筒状の接続部51を有している。ハウジング20と相手ハウジング90との嵌合時に、接続部51にタブ96が挿入され、端子金具50が相手端子金具95に接続される。端子金具50は電線55の端末部に接続されている。電線55はハウジング本体21から後方に引き出される。
【0026】
図1および
図11に示すように、ハウジング本体21は、上面の左右中央部に、凹部24を有している。凹部24の底面は、ハウジング本体21の左右両端部より一段低い位置に左右方向に平坦に配置されている。
【0027】
ロックアーム22は、
図4に示すように、凹部24の底面の前端部から起立する基端部25と、基端部25から後方に延びるアーム本体26と、を有している。ロックアーム22は、基端部25側の部位を支点として上下方向に弾性変形可能とされている。アーム本体26は、左右方向に幅広の板状をなしている。ハウジング20は、アーム本体26の下面と凹部24の底面(ハウジング本体21の上面)との間に、ロックアーム22の弾性変形を許容する撓み空間27を有している。
【0028】
ロックアーム22は、アーム本体26の前後中間部(前後両端部を除く部分)から上方に突出するロック突起28と、アーム本体26の後端部から上方に突出する押圧部29と、を有している。ロック突起28は、アーム本体26の左右中央部に配置され、
図9も示すように、相手ハウジング90のロック部93に係止可能とされている。アーム本体26は、ロック突起28の下方に、アーム本体26の下面に開口する進入凹部31を有している。そして、アーム本体26は、前後方向に延びるロック孔32を有している。ロック孔32の前端は、進入凹部31に連通し、ロック突起28で閉塞されている。ロック孔32の後端は、アーム本体26の後方に開放されている。
図11に示すように、押圧部29は、ロックアーム22の全幅に亘る板状をなし、上面がロック突起28よりも高い位置に配置されている。
【0029】
ロックアーム22は、
図1および
図12に示すように、アーム本体26の前後中間部から左右両側に張り出す一対の突部33を有している。各突部33は、平面視矩形の板状をなし(
図6を参照)、アーム本体26の左右両端面に連結されている。
【0030】
図11に示すように、ハウジング本体21は、凹部24の左右の対向面から左右中央側に突出する一対の反転規制部34を有している。各反転規制部34は、平面視矩形の板状をなし、
図12に示すように、各突部33に上方から対向して配置されている。各突部33が上方(撓み空間27とは反対方向)に変位して各反転規制部34に突き当たることにより、ロックアーム22のそれ以上上方への弾性変形が規制される。
【0031】
ハウジング本体21は、凹部24の後部上端側における左右の対向面から左右中央側に突出する一対の張出部35を有している。張出部35は、平面視矩形の板状をなし、
図5に示すように、反転規制部34よりも上方の位置に、前後方向および上下方向の各寸法に関して、反転規制部34よりも大きいサイズで形成されている。
図11に示すように、押圧部29の左右両端面は、各張出部35の突出方向の先端面に隙間を置いて対向している。
【0032】
図6に示すように、ハウジング本体21は、凹部24の左右の対向面から左右中央側に突出する一対ずつの第1係止突起36および第2係止突起37を有している。
図5に示すように、張出部35は、第1係止突起36および第2係止突起37を上方から覆う位置に配置されている。第1係止突起36は、第2係止突起37よりも前方で且つ第1係止突起36よりも上方に配置されている。第1係止突起36および第2係止突起37は、後述する係止部63を係止し、検知部材60をハウジング20に対して待機位置と検知位置とに留め置く機能を有している。
【0033】
(検知部材60)
検知部材60は合成樹脂製であって、
図13に示すように、左右方向に延びる壁状の基部61と、基部61の左右中央部から前方に突出する第1解除規制部62と、基部61の左右両端部から前方に突出する一対の係止部63と、各係止部63から前方に連続して突出する一対の第2解除規制部64と、を有している。
【0034】
基部61は、壁面を前後に向けて配置されている。検知部材60は、基部61の後側の壁面を押圧することにより、待機位置から検知位置へと移動することが可能とされている。基部61の上端面の後端部には、左右方向に延びる突条部65が設けられている。検知部材60は、突条部65を後方へ引っ張ることにより、検知位置から待機位置へと戻ることが可能とされている。
【0035】
第1解除規制部62は、前方へ向けて上傾しつつ延びる延出部66と、延出部66の前端側から上方に突出する第1規制突起67と、を有している。第1解除規制部62は、基部61側の部位を支点として上下方向に弾性変形可能とされている。第1規制突起67は、待機位置ではロック突起28の後面に接触し(
図4を参照)、検知位置では進入凹部31に進入するように配置される(
図9を参照)。
【0036】
図13に示すように、各係止部63は、側面視矩形の枠状をなし、左右方向に貫通する矩形の係止孔68を有している。各係止部63は、基部61側の部位を支点として左右方向に弾性変形可能とされている。
図5および
図6に示すように、第2係止突起37が係止部63の係止孔68に嵌まり、係止部63の前端部が第1係止突起36と第2係止突起37との間に挟み込まれることにより、検知部材60がハウジング20に対して待機位置に留め置かれる。また、
図10に示すように、第1係止突起36および第2係止突起37が係止部63の係止孔68に嵌まり、係止部63の前端部が第1係止突起36の前面に係止可能に対向することにより、検知部材60がハウジング20に対して検知位置から待機位置に戻ることが規制される。
【0037】
各係止部63の下端部は、各係止部63の他の部位と比べて左右方向に厚肉に形成されており、
図6および
図13に示すように、他の部位よりも左右中央側に、増肉部分としての付設部69を有している。
図13に示すように、各第2解除規制部64は、各係止部63の前端部の内側に連なり、且つ付設部69から前方に突出している。各第2解除規制部64は、側面視矩形の壁状(板状)をなし、壁面を左右方向に向けて配置される。第2解除規制部64は、上下方向に弾性変形しない剛性を有している。
図10に示すように、第2解除規制部64は、凹部24の底面から突部33(ロックアーム22が弾性変形していない自然状態にあるときの高さ位置に配置された突部33)までの上下方向の離間距離よりも少し小さい高さ寸法を有している。第2解除規制部64は、検知位置において、凹部24の底面に支持された状態で各突部33に下方から対向し、ロックアーム22の下方への弾性変形を規制する。
【0038】
(コネクタ10の作用)
検知部材60は、ハウジング20の撓み空間27に後方から挿入され、待機位置に組み付けられる。組み付けの過程で、第1解除規制部62の第1規制突起67がロック孔32に進入し、各第2解除規制部64が凹部24の底面を摺動する。各係止部63は、凹部24の底面と各張出部35との間に上下方向の動きが規制された状態に配置される。これにより、検知部材60の組み付け動作(移動)がガイドされる。また、各係止部63は、組み付け過程で、各第2係止突起37と接触して左右中央側に弾性変形させられる。
【0039】
検知部材60が待機位置に至ると、
図5に示すように、係止部63が弾性復帰して係止部63の前端部が第1係止突起36と第2係止突起37とに係止可能に配置され、検知部材60が待機位置に移動規制状態に保持される。本実施形態1の場合、第2解除規制部64が係止部63に連続して設けられているため、係止部63の不用意な弾性変形を規制することが可能となっている。また、
図4に示すように、第1解除規制部62の第1規制突起67がロック突起28の後面に接触可能に対向し、検知部材60の検知位置への移動が規制される。
【0040】
続いて、ハウジング20が相手ハウジング90のフード部92内に挿入されて嵌合される。ハウジング20の嵌合開始時、
図7に示すように、ロック突起28がロック部93に接触し、ロックアーム22が下方(撓み空間27側)に弾性変形させられる。ロック突起28が下方に変位するのと同時に、第1規制突起67も下方に変位してロック突起28に接触する状態を維持する。よって、この段階で基部61を前方に押圧しても、検知部材60が検知位置に向けて移動するのを規制できる。さらに、この段階では、
図8に示すように、突部33が第2解除規制部64に前方から接触可能に対向し、これによって検知部材60の検知位置への移動が高い確率で規制される。
【0041】
その後、ハウジング20が相手ハウジング90のフード部92内に正規深さで挿入され、ハウジング20が相手ハウジング90に嵌合される。嵌合時、ロックアーム22が弾性復帰し、ロック突起28が上方に変位してロック部93に係止可能に配置される(
図9を参照)。これにより、ハウジング20が相手ハウジング90に嵌合状態に保持される。ロック突起28が上方に変位するとき、第1規制突起67はロック部93に接触する位置に留まってロック突起28から離間する。これにより、検知部材60の検知位置への移動が可能な状態となる。この時点で、基部61が前方に押し込まれると、各係止部63の前端部が第1係止突起36を弾性的に乗り越え、検知部材60が検知位置に向けて移動する。移動の過程で、各係止部63および各第2解除規制部64が凹部24の底面を摺動し、各係止部63が凹部24の底面と各張出部35との間でガイドされる(
図5および
図10を参照)。
【0042】
検知部材60が検知位置に至ると、第1規制突起67が進入凹部31に進入するとともに、
図2および
図10に示すように、各第2解除規制部64が凹部24の底面と各突部33との間の空間(撓み空間27)に入り込み、各突部33の下面に接触可能に配置される。これにより、各突部33の下方への変位が規制される。係止部63の前端部が第1係止突起36に係止可能に配置されることにより、検知部材60の待機位置への移動が規制される。
【0043】
ところで、ハウジング20が相手ハウジング90に嵌合された状態で、押圧部29の上面が押圧される等し、ロックアーム22に対してロック部93との係止を解除させる力が作用することがある。本実施形態1の場合、上記力が作用したときに、ロックアーム22の左右中央部において、第1解除規制部62の第1規制突起67がロック突起28の下方に位置してロック突起28の下方への変位を規制することができる(
図9を参照)。さらに、ロックアーム22の左右両端部において、第2解除規制部64が突部33の下面に接触して突部33の下方への変位を規制することができる(
図10を参照)。
【0044】
このため、本実施形態1の構成は、ロックアーム22が不用意に弾性変形して係止解除される事態を高い確率で回避することができる。特に、本実施形態1の構成は、第1解除規制部62と各第2解除規制部64のうち、いずれか1つの解除規制部62,64に不具合が生じても残りの解除規制部62,64によってロックアーム22の不用意な係止解除を規制できる。例えば、ロックアーム22の左右中央部で、第1解除規制部62に不具合が生じても、ロックアーム22の左右中央部において、各第2解除規制部64が各突部33の下方への変位を規制できる。このため、ロックアーム22の不用意な弾性変形を規制でき、且つロックアーム22が幅方向に傾倒して係止解除される事態も回避できる。その結果、本実施形態1の構成は、ロックアーム22の係止状態を適正に維持できる。特に、
図10に示すように、第2解除規制部64が凹部24の底面と突部33との間の撓み空間27を埋めるように上下方向に起立する壁状をなしているため、ロックアーム22が不用意に係止解除される事態を、いっそう高い確率で回避することができる。
【0045】
また、第1解除規制部62および各第2解除規制部64がいずれも嵌合過程で弾性変形するロックアーム22に対し、検知部材60の検知位置への移動を規制可能とされるため、嵌合過程で検知部材60が不用意に検知位置に向けて移動する事態を、高い確率で回避することができる。よって、検知部材60の検知機能の信頼性を高めることができる。
【0046】
また、各第2解除規制部64が各係止部63から前方に連続して設けられているため、各係止部63の不用意な弾性変形を規制することができ、係止部63がハウジング20を係止する信頼性を高めることができる。各第2解除規制部64は、ロックアーム22の係止解除を規制する機能に加え、各係止部63を補強する機能を兼ね備えることができる。さらに、各突部33は、各第2解除規制部64とともにロックアーム22の係止解除を規制する機能と、各反転規制部34とともにロックアーム22の反転を規制する機能と、を兼ね備えることができる。
【0047】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、複数の解除規制部は、第1解除規制部と一対の第2解除規制部とによって構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、複数の解除規制部は、第1解除規制部と一対の第2解除規制部とに加え、さらなる解除規制部を備えていても良い。あるいは、複数の解除規制部は、第1解除規制部と一つの第2解除規制部とによって構成されるだけでも良い。
上記実施形態1の場合、第2解除規制部は、係止位置において、アーム本体から張り出す突部に接触可能な構成であった。これに対し、他の実施形態によれば、ロックアームが突部を有さず、第2解除規制部は、係止位置において、アーム本体の幅方向端部に接触可能な構成であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
10…コネクタ
20…ハウジング
21…ハウジング本体
22…ロックアーム
23…キャビティ
24…凹部
25…基端部
26…アーム本体
27…撓み空間
28…ロック突起
29…押圧部
31…進入凹部
32…ロック孔
33…突部
34…反転規制部
35…張出部
36…第1係止突起
37…第2係止突起
50…端子金具
51…接続部
55…(端子金具に接続される)電線
60…検知部材
61…基部
62…第1解除規制部(解除規制部)
63…係止部
64…第2解除規制部(解除規制部)
65…突条部
66…延出部
67…第1規制突起
68…係止孔
69…付設部
90…相手ハウジング
91…端子収容部
92…フード部
93…ロック部
95…相手端子金具
96…タブ
98…(相手端子金具に接続される)電線