(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120391
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ジャケットヒーター
(51)【国際特許分類】
H05B 3/40 20060101AFI20240829BHJP
F16L 53/35 20180101ALI20240829BHJP
【FI】
H05B3/40 A
F16L53/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027153
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593228933
【氏名又は名称】サーモス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章
(72)【発明者】
【氏名】福田 啓一
(72)【発明者】
【氏名】石 大作
(72)【発明者】
【氏名】飯田 研二
(72)【発明者】
【氏名】田口 進
【テーマコード(参考)】
3H025
3K092
【Fターム(参考)】
3H025AA13
3H025AB02
3K092PP11
3K092QA02
3K092QB02
3K092RA06
3K092RB01
3K092RD12
3K092UA05
3K092UA06
3K092VV40
(57)【要約】
【課題】 温度を正確に検知することができる温度センサーを備えたジャケットヒーターを提供する。
【解決手段】 被加熱体に装着して使用されるジャケットヒーターであって、被加熱体に接触する内層と、外層と、前記内層と前記外層との間に設けられ熱源として電熱線を有する発熱層と、温度を検知する温度センサーと、を有し、前記温度センサーの温度検知点は、前記被加熱体と前記内層の接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に設けられている、ジャケットヒーター。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱体に装着して使用されるジャケットヒーターであって、
被加熱体に接触する内層と、外層と、前記内層と前記外層との間に設けられ熱源として電熱線を有する発熱層と、温度を検知するための温度センサーと、を有し、
前記温度センサーの温度検知点は、前記被加熱体と前記内層の接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に設けられている、ジャケットヒーター。
【請求項2】
前記温度センサーが熱電対である、請求項1に記載のジャケットヒーター。
【請求項3】
前記熱電対は、前記温度検知点を含む一部の部位が、前記内層の内表面に露出するとともに、前記内層の前記内表面に露出する全ての部位が、前記接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に設けられている、請求項2に記載のジャケットヒーター。
【請求項4】
前記熱電対は、前記温度検知点を含む一部の部位が、前記内層と前記発熱層との間に位置するとともに、前記内層と前記発熱層との間に位置する全ての部位が、前記接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に設けられている、請求項2に記載のジャケットヒーター。
【請求項5】
前記温度センサーがサーモスタットである、請求項1に記載のジャケットヒーター。
【請求項6】
被加熱体に装着して使用されるジャケットヒーターの製造方法であって、
被加熱体に接触する内層、外層、及び、前記内層と前記外層との間に設けられ熱源として電熱線を有する発熱層を含む積層体であって、温度センサーが固定された積層体を形成する工程を有し、
前記温度センサーの温度検知点は、前記被加熱体と前記内層の接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に配置されることを特徴とするジャケットヒーターの製造方法。
【請求項7】
配管を覆って前記配管内部を加熱する加熱部であって、
配管に接触する内層と、外層と、前記内層と前記外層との間に設けられ熱源として電熱線を有する発熱層と、温度を検知するための温度センサーと、を有し、
前記温度センサーの温度検知点は、前記配管と前記内層の接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に設けられている、加熱部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱体に装着して使用されるジャケットヒーターに関し、特に温度センサーを備えるジャケットヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子やFPD(フラットパネルディスプレイ)等の製造過程には、様々なプロセスガスを使用する成膜工程やエッチング工程がある。これらの工程では、副生成物や排ガスが発生するが、それらを排出するための配管の内部において副生成物や排ガスが凝固して析出することが知られている。
【0003】
配管内部で副生成物や排ガスが凝固したり析出したりすることを抑制するため、それらを排出する配管には、配管加熱用のヒーターが使用されることがある。配管に装着されるヒーターは、ジャケットヒーター(又はマントルヒーター)とも呼ばれており、配管の外表面に接触した状態で配管を加熱する(例えば、特許文献1)。
【0004】
図7は、周知のジャケットヒーター1000の斜視図である。ジャケットヒーター1000は、
図7に示されるように、被加熱体である配管Pに接触する内層1100と、ジャケットヒーター1000の最外層を構成する外層1200を有する。内層1100と外層1200の間には、熱源として電熱線1310を有する発熱層1300が設けられており、電熱線1310に給電されることで発熱層1300が発熱し、ジャケットヒーター1000を装着した配管Pを加熱する。
【0005】
このようなジャケットヒーターの中には、被加熱体やジャケットヒーター内部の温度を検知するための温度センサーを備えたジャケットヒーターがある。温度センサーを備えたジャケットヒーターは、電熱線に対する給電を制御する給電制御機構(給電制御装置)に接続して使用することができ、被加熱体の温度を検知(予測)しながら被加熱体の温度を調整することができる。これにより、被加熱体を所望の温度範囲に維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、温度センサーを備えた従来のジャケットヒーターは、発熱層から発生する熱の影響により、被加熱体やジャケットヒーター内部の温度を精度よく検知できないという問題があった。また、温度センサーを備えた従来のジャケットヒーターは、被加熱体やジャケットヒーター内部の温度を精度よく検知できないため、接続される給電制御機構が誤った給電制御を行ってしまい、被加熱体を所望の温度範囲で維持できないという問題もあった。
【0008】
本発明は、温度を正確に検知することができる温度センサーを備えたジャケットヒーターを提供することを目的とする。また、本発明のジャケットヒーターを給電制御機構(給電制御装置)に接続して使用すれば、被加熱体を所望の温度範囲に維持することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]被加熱体に装着して使用されるジャケットヒーターであって、被加熱体に接触する内層と、外層と、前記内層と前記外層との間に設けられ熱源として電熱線を有する発熱層と、温度を検知するための温度センサーと、を有し、前記温度センサーの温度検知点は、前記被加熱体と前記内層の接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に設けられている、ジャケットヒーター。
[2]前記温度センサーが熱電対である、[1]に記載のジャケットヒーター。
[3]前記熱電対は、前記温度検知点を含む一部の部位が、前記内層の内表面に露出するとともに、前記内層の前記内表面に露出する全ての部位が、前記接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に設けられている、[2]に記載のジャケットヒーター。
[4] 前記熱電対は、前記温度検知点を含む一部の部位が、前記内層と前記発熱層との間に位置するとともに、前記内層と前記発熱層との間に位置する全ての部位が、前記接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に設けられている、[2]に記載のジャケットヒーター。
[5]前記温度センサーがサーモスタットである、[1]に記載のジャケットヒーター。
[6]前記電熱線は、所定方向に並ぶように前記発熱層内を折返しながら延伸しており、前記サーモスタットは、前記電熱線の折返し部に囲まれるように配置されている、[5]に記載のジャケットヒーター。
[7]前記発熱層と前記外層との間に設けられる断熱層をさらに有し、前記温度センサーは、前記被加熱体に接触する前記内層の内表面に露出する温度検知点と前記温度検知点から延びるケーブル部とを備える温度センサーであり、前記ケーブル部は、前記内層から前記外層に向かって、前記内層、前記発熱層、前記断熱層、及び前記外層を貫通するとともに、前記内層、前記発熱層、前記断熱層、及び前記外層のうちの少なくとも1つの隣接する層間において、隣接する層の一方の層から導出される導出部から他方の層に導入される導入部までの部位が、前記導出部と前記導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されている、[1]に記載のジャケットヒーター。
[8]前記断熱層は、前記発熱層と前記外層との間に設けられる第1の断熱層と、前記第1の断熱層と前記外層側との間に設けられる第2の断熱層とからなり、前記ケーブル部は、前記内層、前記発熱層、前記第1の断熱層、前記第2の断熱層、及び前記外層のうちの少なくとも1つの隣接する層間において、隣接する層の一方の層から導出される導出部から他方の層に導入される導入部までの部位が、前記導出部と前記導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されている、[7]に記載のジャケットヒーター。
[9]前記発熱層と前記外層との間に設けられる断熱層をさらに有し、前記温度センサーは、前記内層と前記発熱層との間に位置する温度検知点と前記温度検知点から延びるケーブル部とを備える温度センサーであり、前記ケーブル部は、前記内層と前記発熱層との間から前記外層に向かって、前記発熱層、前記断熱層、及び前記外層を貫通するとともに、前記発熱層、前記断熱層、及び前記外層のうちの少なくとも1つの隣接する層間において、隣接する層の一方の層から導出される導出部から他方の層に導入される導入部までの部位が、前記導出部と前記導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されている、[1]に記載のジャケットヒーター。
[10]前記断熱層は、前記発熱層と前記外層との間に設けられる第1の断熱層と、前記第1の断熱層と前記外層側との間に設けられる第2の断熱層とからなり、前記ケーブル部は、前記発熱層、前記第1の断熱層、前記第2の断熱層、及び前記外層のうちの少なくとも1つの隣接する層間において、隣接する層の一方の層から導出される導出部から他方の層に導入される導入部までの部位が、前記導出部と前記導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されている、[9]に記載のジャケットヒーター。
[11]前記ケーブル部は、前記外層と前記断熱層の層間に位置する部位が、前記導出部と前記導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されている、[7]又は[9]に記載のジャケットヒーター。
[12]前記発熱層と前記外層との間に設けられる断熱層をさらに有し、前記電熱線には、前記電熱線に電気を供給するための電熱線ケーブルが接続されており、前記電熱線ケーブルは、前記発熱層から前記外層に向かって、前記断熱層、及び前記外層を貫通するとともに、前記断熱層、及び前記外層のうちの少なくとも1つの隣接する層間において、隣接する層の一方の層から導出される導出部から他方の層に導入される導入部までの部位が、前記導出部と前記導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されている、[1]に記載のジャケットヒーター。
[13]前記断熱層は、前記発熱層と前記外層との間に設けられる第1の断熱層と、前記第1の断熱層と前記外層側との間に設けられる第2の断熱層とからなり、前記電熱線ケーブルは、前記第1の断熱層、前記第2の断熱層、及び前記外層のうちの少なくとも1つの隣接する層間において、隣接する層の一方の層から導出される導出部から他方の層に導入される導入部までの部位が、前記導出部と前記導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されている、[12]に記載のジャケットヒーター。
[14]前記ジャケットヒーターは、前記発熱層と前記外層との間に設けられる断熱層をさらに有するととともに、前記温度センサーとしてサーモスタットを有し、前記断熱層は、前記サーモスタットの外形に沿って形成され、前記サーモスタットの収容スペースを形成する収容部を有する、[1]に記載のジャケットヒーター。
[15]前記収容部は、前記断熱層を貫通する貫通孔であることを特徴とする[14]に記載のジャケットヒーター。
[16]前記収容部は、前記被加熱体に向かって開口した凹部であることを特徴とする[14]に記載のジャケットヒーター。
[17]前記電熱線は、前記断熱層の表面において、所定の配置パターンに沿って配置されており、前記電熱線の一部は、前記収容部から所定距離だけ離れた位置で前記収容部に沿って配置されていることを特徴とする[14]に記載のジャケットヒーター。
[18]前記発熱層は、前記電熱線が固定される支持体を有しており、前記支持体は前記サーモスタットを貫通させる開口部を有し、前記サーモスタットに設けられたフランジ部が前記支持体に取り付けられていることを特徴とする[14]に記載のジャケットヒーター。
[19]前記支持シートは無機繊維シートであり、前記開口部の縁が補強糸によって縫製されていることを特徴とする[18]に記載のジャケットヒーター。
[20]被加熱体に装着して使用されるジャケットヒーターの製造方法であって、被加熱体に接触する内層、外層、及び、前記内層と前記外層との間に設けられ熱源として電熱線を有する発熱層を含む積層体であって、温度センサーが固定された積層体を形成する工程を有し、前記温度センサーの温度検知点は、前記被加熱体と前記内層の接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に配置されることを特徴とするジャケットヒーターの製造方法。
[21]配管を覆って前記配管内部を加熱する加熱部であって、配管に接触する内層と、外層と、前記内層と前記外層との間に設けられ熱源として電熱線を有する発熱層と、温度を検知するための温度センサーと、を有し、前記温度センサーの温度検知点は、前記配管と前記内層の接触面に対して垂直な方向において、前記電熱線と重ならない位置に設けられている、加熱部。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、温度を正確に検知することができる温度センサーを備えたジャケットヒーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は第1実施形態のジャケットヒーター100の斜視図である。
【
図2】
図2は熱電対150の構造を説明するための図である。
【
図3a】
図3aはサーモスタット160の構造を説明するための図である。
【
図3b】
図3bはサーモスタット160の構造を説明するための図である。
【
図4】
図4は
図1に示すジャケットヒーター100のA-A’断面図である。
【
図5】
図5は
図1に示すジャケットヒーター100の展開図である。
【
図6】
図6は給電制御装置に接続したジャケットヒーター100を示す図である。
【
図7】
図7は従来のジャケットヒーター1000の斜視図である。
【
図8】
図8は第2実施形態のジャケットヒーター100の斜視図である。
【
図9】
図9は
図8に示すジャケットヒーター100のA-A’断面図である。
【
図10】
図10は
図9に示すジャケットヒーター100のケーブル部152に引張力が加わったときの状態を示す図である。
【
図12】
図12は第2実施形態のジャケットヒーター100の変形例1である。
【
図13】
図13は第2実施形態のジャケットヒーター100の変形例2である。
【
図14】
図14は第2実施形態のジャケットヒーター100の変形例3である。
【
図15】
図15は第2実施形態のジャケットヒーター100の変形例6である。
【
図16】
図16は、第4実施形態のジャケットヒーター100に設けられるサーモスタット160の側面図である。
【
図17】
図17は、第4実施形態のジャケットヒーター100に設けられるサーモスタット160の底面図である。
【
図18】
図18は、第4実施形態のジャケットヒーター100にサーモスタット160を埋め込んだ構造を示す断面図である。
【
図19】
図19は、サーモスタット160を収容する部分を示す断熱層140の概略図である。
【
図20】
図20は、サーモスタット160を支持体132に固定する構造と、サーモスタット160及び電熱線131の位置関係を説明する図である。
【
図21】
図21は、サーモスタット160を支持体132に固定する構造と、サーモスタット160及び電熱線131の位置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1~
図6を用いて説明する。なお、以下に示す実施形態では、ジャケットヒーター100について説明するが、本発明は、配管を覆って配管内部を加熱できる加熱部であれば、ジャケットヒーター100に限定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のジャケットヒーター100は、被加熱体である配管Pに接触する内層110と、ジャケットヒーター100の最外層を構成する外層120とを有している。内層110と外層120の間には発熱層130が設けられており、発熱層130は熱源である電熱線131を有している。電熱線131には、電気を供給するための電熱線ケーブル131C(
図1では不図示)が接続されており、電熱線ケーブル131Cを介して給電されることで電熱線131が発熱する。
【0014】
ジャケットヒーター100の内部には、配管Pを収容可能な収容スペースが形成されている。収容スペースに配管Pを収容できるよう、ジャケットヒーター100には、ジャケットヒーター100の外表面から収容スペースまで延びるスリットSが設けられている。ジャケットヒーター100は、スリットSを介して配管Pを収容スペースに収容し、ベルト等の固定手段(不図示)を用いて配管Pに固定されることで装着される。
【0015】
内層110及び外層120は、電熱線131(発熱層130)から伝わる熱に耐え得る材料で構成されていればよく、その材料について特に限定されるものではないが、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフロライド)等のフッ素系樹脂からなるフッ素樹脂製シート、あるいは前述したフッ素系樹脂の繊維を編んだフッ素樹脂繊維製クロス(織布)、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維といった無機繊維からなる無機繊維製クロス(織布)、前述した無機繊維製クロスに前述したフッ素系樹脂をコーティング処理したフッ素樹脂コーティング無機繊維製クロス、前述した無機繊維製クロスにシリコーン樹脂をコーティング処理したシリコーン樹脂コーティング無機繊維製クロスを使用できる。
【0016】
なお、内層110及び外層120は、前述したフッ素系樹脂以外の材料により構成されていてもよく、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフタルアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテンにより構成されていてもよい。
【0017】
発熱層130における電熱線131は、給電されることで発熱するものであればよく、特に限定されるものではないが、ニクロム線やステンレス線を用いることができる。
【0018】
電熱線131は、漏電を防止するため、電気的に絶縁されていることが好ましい。電熱線131の絶縁は、例えば、ガラス繊維や、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維といった無機繊維からなる無機繊維製スリーブで電熱線131を被覆したり、電熱線131に樹脂をコーティングしたりすることで行うことができる。
【0019】
発熱層130は、熱源である電熱線131の他に、支持体132を有していてもよい。支持体132は、電熱線131を固定(支持)するための材料であり、例えば、ガラス繊維や、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維といった無機繊維からなる無機繊維製クロスを用いることができる。支持体132に対する電熱線131の固定は、例えば、耐熱性を有する縫い糸により電熱線131を支持体132に縫い付けることで行うことができる。
【0020】
内層110と外層120の間には、発熱層130のみが設けられていてもよいが、
図1に示すように、発熱層130に加えて断熱層140が設けられていてもよい。断熱層140は、発熱層130(電熱線131)から発生する熱が外層120を介して外部に放熱されないよう、外層120と発熱層130の間に設けられることが好ましい。すなわち、本実施形態のジャケットヒーター100は、最内層から最外層に向かって内層110、発熱層130、断熱層140、外層120の順で各層が積層した形態であることが好ましい。
【0021】
断熱層140を構成する材料には、例えば、ガラスファイバー、セラミックファイバー、シリカファイバー等を集成し、ニードル加工を施した無機繊維マットを使用できる。なお、無機繊維マットは、コロイダルシリカやアルミナゾル、ケイ酸ソーダ等の無機質バインダーや、でんぷんなどの有機質バインダーをさらに添加して、マット状に成形してもよい。また、断熱層140は、アラミドやポリアミド、ポリイミド等の耐熱性の有機樹脂製多孔質成形体であってもよい。こうした断熱性を有する材料の厚さは、5~100mmであることが好ましく、5~50mmであることがより好ましく、8~30mmであることがさらにより好ましい。
【0022】
上述した材料のほかに、断熱層140には、エアロゲルが充填された繊維体(エアロゲル繊維体)を使用することもできる。エアロゲル繊維体は、繊維基材にエアロゲルが充填されてなる断熱材であり、例えば、国際公開第2012/077648号に記載されるエアロゲル繊維体を用いることができる。
【0023】
本実施形態のジャケットヒーター100は、
図1に示すように、温度センサーとして熱電対150とサーモスタット160を有している。ジャケットヒーター100に設けられる温度センサーは、温度を検知できるものであればよく、熱電対150やサーモスタット160の他に、金属の電気抵抗率の変化から温度を求める測温抵抗体や、抵抗値から温度を求めるサーミスタや、温度ヒューズが用いられていてもよい。なお、本明細書において、温度センサーとは、測定対象物の温度を特定するためのセンサーだけでなく、測定対象物が所定の温度に達しているか否か判断するためのセンサーも含まれる。
【0024】
熱電対150は、熱起電力から測定対象物の温度を求めるための温度センサーであり、温度検知点151とケーブル部152から構成される。具体的な熱電対150としては、例えば、
図2に示す熱電対150を例示することができる。
図2に示す熱電対150は、金属で形成されるプラス側熱電対素線Aと、プラス側熱電対素線Aとは異なる種類の金属で形成されるマイナス側熱電対素線Bと、プラス側熱電対素線A及びマイナス側熱電対素線Bを絶縁するためのマグネシア(MgO)等の無機絶縁材Dと、これらを内部収容するシースCを含む。
図2に示す熱電対150において、温度検知点151は、プラス側熱電対素線151とマイナス側熱電対素線152の接点Iが存在する熱電対150の先端部であり、ケーブル部152は、熱電対150の先端部を除いた部分(温度検知点151を除いた部分)である。
図2に示す熱電対150は、プラス側熱電対素線Aとマイナス側熱電対素線Bの間の温度差に応じた起電力を発生させ、測定対象物の温度を検知することができる。
【0025】
なお、熱電対150の構成は、
図2に示したものに限定されず、従来公知の構成を採用することができる。
【0026】
サーモスタット160は、測定対象物の温度が所定の温度に達したときに動作(出力)する温度センサーであり、例えば、
図3aに示すように、測定対象物の温度を検知するとともに検知した温度が所定温度に達したときに動作する温度検知部160a(すわなち、温度検知点)と、温度検知部160aからの動作により電気的な接続を遮断する仕掛け部160bからなる。温度検知部160aは、測定対象物に接する金属キャップ160a1と、金属キャップ160a1との間にスペース160Sを形成するリテーナ160a2と、スペース160Sに設置される熱膨張率の異なる2枚状の金属板をはり合わせて球面状にしたバイメタル160a3からなる。仕掛け部160bは、ケース160b1と、ケース160b1の内部に設けられる電気接点160b3を有する固定板160b2と、電気接点160b3に対向する電気接点160b4を有する可動板160b5と、可動板160b5及びバイメタル160a3とに固定されるピン160b8と、固定板160b2と導通するケース160b1外部の端子160b6と、可動板160b5と導通するケース160b1外部の端子160b7からなる。なお、端子160b6及び端子160b7には、後述するサーモスタットケーブル160Cが接続される。
【0027】
金属キャップ160a1に接する測定対象物の温度が上昇して所定温度に達すると、バイメタル160a3がその温度変化によって
図3bのように反転動作し、それに伴ってピン160b8がバイメタル160a3の変形を可動板160b5に伝達する。これにより、電気接点160b3と電気接点160b4が開動作するように作用する。電気接点160b3、160b4による開動作は、電気接点160b3と電気接点160b4との間の電気的な接続を遮断するため、この電気的な接続が遮断されたことを検知することで、測定対象物の温度が所定温度に達したと判断することができる。なお、
図3bのように反転したバイメタル160a3は、測定対象物の温度が所定温度よりも低い第2の所定温度未満まで冷却されると、
図3aに示す元の状態に復元する。これにより電気接点160b3と電気接点160b4との間の電気的な接続が回復する。電気的な接続が回復したことを検知することで、測定対象物の温度が所定温度よりも低い第2の所定温度未満になったと判断することができる。
【0028】
なお、サーモスタット160の構成は、
図3a、3bに示したものに限定されず、従来公知の構成を採用することができる。また、サーモスタット160は、電気的な接続を遮断する所定温度よりも低い第2の所定温度未満になると電気的な接続を自動的に回復させる上述した自動復帰タイプに限定されるものではなく、遮断された電気的な接続を手動で回復させる手動復帰タイプや、電気的な接続を遮断する所定温度よりも低い第2の所定温度が室温よりも低い温度であることを特徴とするワンショットタイプのものなどが用いられてもよい。
【0029】
図4は、
図1に示すジャケットヒーター100のA-A’断面図である。
図4に示すように、本実施形態のジャケットヒーター100では、熱電対150のうち、温度検知点151と温度検知点151に接続するケーブル部152の一部分は、内層110の内表面(配管Pに接触する表面)に露出して固定されている。温度検知点151が内層110の内表面に露出することで、熱電対150は配管Pの温度を検知(温度を特定)することができる。
【0030】
なお、ケーブル部152のうち、内層110の内表面に露出する部分を除いた部分については、内層110から外層120に向かって、内層110、発熱層130、断熱層140、及び外層120を貫通し、端部を含む一部分が外層120の外表面から露出して固定されている(不図示)。
【0031】
サーモスタット160は、
図4に示すように、内層110、発熱層130及び断熱層140の一部を貫通してこれらの3層に囲まれた位置に固定されている。温度検知点である温度検知部160aの金属キャップ160a1については、内層110の表面(内表面)から露出しており、配管Pに接することができる。金属キャップ160a1が内層110の表面(内表面)から露出することで、サーモスタット160は配管Pの温度を検知(所定の温度に達したか否か)することができる。内層110、発熱層130及び断熱層140に対するサーモスタット160の固定方法は、特に限定されるものではなく、熱電対150と同様に、例えば、耐熱性を有する縫い糸により、サーモスタット160を内層110や発熱層130や断熱層140に縫い付ける方法を用いることができる
【0032】
サーモスタット160(端子160b6及び端子160b7)には、後述するサーモスタットケーブル160C(
図4では不図示)を接続して使用することができる。サーモスタット160に接続されるサーモスタットケーブル160Cは、例えば、断熱層140の一部及び外層120を貫通して、端部を含む一部分が外層120の外表面から露出する。
【0033】
なお、
図4に示すジャケットヒーター100では、熱電対150やサーモスタット160が配管Pの温度を検知できるようにしているが、ジャケットヒーター100内部の温度を検知できるようにしてもよい。例えば、熱電対150の温度検知点151が内層110と発熱層130との間に位置するように固定し、熱電対150の温度検知点151が接する内層110の温度を測定検知できるようにしてもよい。熱電対150の温度検知点151が内層110と発熱層130との間に位置する場合、熱電対150のケーブル部152は、温度検知点151に接続する一部分が、内層110と発熱層130との間に位置し、それを除いた部分が、内層110から外層120に向かって、内層110、発熱層130、断熱層140、及び外層120を貫通し、端部を含む一部分が外層120の外表面から露出する。また、例えば、サーモスタット160の金属キャップ160a1が発熱層130の内表面(内層110に接する表面)から露出するように、サーモスタット160を発熱層130及び断熱層140の2層に囲まれた位置に固定し、金属キャップ160a1が接する内層110の温度を検知できるようにしてもよい。
【0034】
本実施形態のジャケットヒーター100において、熱電対150及びサーモスタット160の温度検知点(温度検知点151及び温度検知部160a)は、
図4に示すように、被加熱体である配管Pと内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられている。配管Pと内層110の接触面CSに対して垂直な方向とは、言い換えれば、内層110、発熱層130、断熱層140、及び外層120の積層方向であり、熱電対150及びサーモスタット160の温度検知点(すなわち、温度検知点151及び温度検知部160a)は、当該積層方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられている。また、温度検知点が電熱線131と重ならないとは、温度検知点の全ての部位が電熱線131と重ならないことを指すものである。
【0035】
なお、配管Pと内層110の接触面CSが、
図4に示すような曲面である場合、接触面CSに対して垂直な方向とは、より具体的には、接触面CSの法線方向(接触面CSに接する接線に対して垂直な方向)であり、これは、筒状の配管Pの径方向でもある。
【0036】
熱電対150及びサーモスタット160の温度検知点と電熱線131の位置関係を、
図5を用いてさらに具体的に説明する。
図5は、外層120側から見たジャケットヒーター100の展開図である。
図5における熱電対150については、内層110の内表面に露出する部位を破線で示している。
図5において、X-Y平面は接触面CSに対して平行な面であり、Z軸は接触面CSに対して垂直な方向である。
【0037】
図5に示すように、電熱線131は、配管Pを均等に加熱できるよう、所定方向(
図5では、Y軸方向)に並ぶように発熱層130内(X-Y平面内)を折返しながら延伸している。このように延伸する電熱線131は、略コの字形状(略U字形状)の折返し部131tの一端部が、直線状に延びる直線部131rの一端部に接続されるとともに、この直線部131rの他端部が他の折返し部131tの他端部に接続され、これが繰り返される形態となっている。つまり、電熱線131は、千鳥状に配列する複数の折返し部131tが、互いに平行に並ぶ複数の直線部131rを介して、接続された形態となっている。熱電対150及びサーモスタット160は、Z軸方向から視た平面視において、電熱線131の間に位置するように配置されている。より具体的には、熱電対150及びサーモスタット160は、Z軸方向から視た平面視において、折返し部131tに囲まれるように配置されている。これにより、熱電対150の温度検知点151とサーモスタット160の温度検知点である温度検知部160a(
図5において墨付きで示す部位)は、Z軸方向において電熱線131と重ならないように配置されている。
【0038】
なお、サーモスタット160は、電熱線131が設けられる発熱層130を貫通しているため、電熱線131が延伸する面内(X-Y平面内)において、電熱線131の直線部131rに挟まれる位置に配置したり、電熱線131の折返し部131tに囲まれる位置に配置したりすることができるが、直線部131rに挟まれる位置に配置するよりも、
図5に示すように、折返し部131tに囲まれる位置に配置することが好ましい。サーモスタット160が折返し部131tに囲まれる位置に配置されると、サーモスタット160の周囲が電熱線131でより広く囲まれるが、サーモスタット160の周囲に位置する電熱線131は、サーモスタット160のX軸方向やY軸方向への移動を規制する規制体のように働くため、ジャケットヒーター100の装着時や保守・点検時に発生するサーモスタット160の位置ズレをより抑制することができる。このため、サーモスタット160は、正確な温度検知を維持し続けることができる。
【0039】
熱電対150とサーモスタット160は、温度検知点(温度検知点151及び温度検知部160a)がZ軸方向において電熱線131と重ならないように配置されていればよく、温度検知点以外の部位は、電熱線131と重なるように配置されていてもよい。より正確に温度を検知する観点からは、熱電対150は、
図5に示すように、温度検知点151を含め、内層110の内表面に露出するすべての部位(温度検知点151とケーブル部152のうちの内層110の内表面に露出する部位)が、Z軸方向において電熱線131と重ならないように配置されていることが好ましい。なお、
図5では、熱電対150の温度検知点151が内層110の内表面から露出している例を示しているが、熱電対150の温度検知点151は、内層110と発熱層130との間に位置していてもよい。この場合には、温度検知点151を含め、内層110と発熱層130との間に位置するすべての部位(温度検知点151とケーブル部152のうちの内層110と発熱層130との間に位置する部位)が、Z軸方向において電熱線131と重ならないように配置されていることが好ましい。
【0040】
また、熱電対150とサーモスタット160の位置関係は、温度検知点(温度検知点151及び温度検知部160a)がZ軸方向において電熱線131と重ならないようなものであれば、特に限定されるものではない。例えば、熱電対150とサーモスタット160は、
図5に示すようにY軸方向に並んで配置されていてもよく、X軸方向に並んで配置されるようにしてもよい。また、熱電対150とサーモスタット160は、X軸方向やY軸方向に並んで配置されていなくてもよい。
【0041】
次に、本実施形態のジャケットヒーターの使用方法について
図6を用いて説明する。本実施形態のジャケットヒーター100は、
図6に示すように、外部電源に接続する給電制御装置と接続して使用することができる。より具体的には、ジャケットヒーター100は、電熱線131に接続される電熱線ケーブル131C、熱電対150のケーブル部152、及びサーモスタット160に接続されるサーモスタットケーブル160Cを介して、給電制御装置に接続して使用することができる。
【0042】
給電制御装置は、電熱線ケーブル131Cを介して、電熱線131に給電を行う。電熱線131に給電が行われることで、電熱線131が加熱される。また、給電制御装置は、熱電対150のケーブル部152を介して伝えられた熱(温度差)に基づく熱起電力を受信し、熱起電力から求められる測定対象物(配管P)の温度が所定範囲内にあるか否かを判断する。測定対象物の温度が所定範囲内にあると判断された場合、給電制御装置は、電熱線131に対して、被加熱体の温度がその温度で維持されるような給電制御を行う。一方、測定対象物(配管P)の温度が所定範囲よりも高いと判断された場合、給電制御装置は、電熱線131に対して、被加熱体(配管P)の温度がその温度よりも低くなるような給電制御を行い、測定対象物(配管P)の温度が所定範囲よりも低いと判断された場合、給電制御装置は、電熱線131に対して、被加熱体(配管P)の温度がその温度よりも高くなるような給電制御を行う。
【0043】
また、給電制御装置は、サーモスタットケーブル160Cを介して、サーモスタット160に給電を行う。測定対象物(配管P)の温度が上昇して所定の温度に達すると、サーモスタット160が動作して給電制御装置とサーモスタット160の間の電気的な接続が遮断される。給電制御装置とサーモスタット160の間の電気的な接続が遮断されると、給電制御装置は、測定対象物(配管P)の温度が所定の温度を超えたと判断し、熱電対150によって測定される配管Pの温度に基づく給電制御を停止し、電熱線131に対する給電を停止する制御を行う。電熱線131に対する給電の停止後、サーモスタット160が冷却され被加熱体(配管P)が所定の温度未満になると、給電制御装置とサーモスタット160の間の電気的な接続が回復する。給電制御装置とサーモスタット160の間の電気的な接続が回復すると、給電制御装置は、測定対象物(配管P)の温度が所定の温度未満になったと判断し、熱電対150によって測定される配管Pの温度に基づく給電制御を再開する。
【0044】
本実施形態のジャケットヒーター100を上述した給電制御装置に接続して使用することで、被加熱体の温度を検知しながら被加熱体の温度を調整することができ、これにより、被加熱体を所望の温度範囲に維持することができる。
【0045】
なお、給電制御装置による給電制御は、上述した給電制御に限定されるものではなく、従来公知の給電制御を用いてもよい。また、
図6では、電熱線131と給電制御装置(外部電源)の間の電気回路とは別に、サーモスタット160と給電制御装置(外部電源)との間に電気回路を設けていたが、必ずしもサーモスタット160と給電制御装置(外部電源)との間に電気回路を設けなくてもよい。この場合、電熱線131と給電制御装置(外部電源)からなる電気回路にサーモスタット160を直列につなげる。電熱線131と給電制御装置(外部電源)からなる電気回路に直列につなげられたサーモスタット160は、測定対象物(配管P)の温度が上昇して所定の温度に達すると動作して、電熱線と給電制御装置(外部電源)からなる電気回路における電気的な接続を遮断し、電熱線131に対する給電が停止する。測定対象物の温度が低下して所定の温度よりも低い第2の所定温度未満になると、サーモスタット160は、動作して、電熱線と給電制御装置(外部電源)からなる電気回路における電気的な接続を回復し、電熱線131に対する給電が再開する。このように、電熱線と給電制御装置(外部電源)からなる電気回路にサーモスタット160を直列につなげれば、電熱線131と給電制御装置(外部電源)の間の電気回路とは別に、サーモスタット160と給電制御装置(外部電源)の間の電気回路を設けなくても、サーモスタット160によって検知した温度に基づく温度制御を行うことができる。このとき、サーモスタット160は、温度センサーとして機能するだけなく、給電制御装置としても機能する。
【0046】
また、上述した給電制御は、自動復帰タイプのサーモスタット160を用いた給電制御の一例を示したものであるが、サーモスタット160として、遮断された電気的な接続を手動で回復させる手動復帰タイプのサーモスタット160や、電気的な接続を遮断する所定温度よりも低い第2の所定温度が室温よりも低い温度であることを特徴とするワンショットタイプのサーモスタット160を用いる場合には、電気的な接続の回復条件に応じた給電制御を行うことができる。
【0047】
以上説明した本実施形態のジャケットヒーター100では、温度センサーである熱電対150及びサーモスタット160の温度検知点(温度検知点151及び温度検知部160a)が、被加熱体である配管Pと内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられている。このため、本実施形態のジャケットヒーター100は、温度検知点が接触面CSに対して垂直な方向において電熱線131と重なっているジャケットヒーターと比較して、電熱線131と温度検知点との距離を広げることができる。従って、本実施形態のジャケットヒーター100に設けられる温度センサー(熱電対150及びサーモスタット160)は、電熱線131から発生する熱の影響を受けづらく、測定対象の温度をより正確に検知することができる。
【0048】
また、本実施形態のジャケットヒーター100は、測定対象の温度をより正確に検知することができるため、給電制御機構を接続して使用したときに、適切な給電制御を行うことができ、被加熱体を所望の温度範囲に維持することができる。
【0049】
なお、
図1~6に示す本実施形態のジャケットヒーター100は、温度センサーとして、熱電対150とサーモスタット160の2つを備えるものであったが、温度センサーの数は、特に限定されるものではなく、1つ或いは3つ以上であってもよい。このような場合であっても、温度センサーの温度検知点が、被加熱体である配管Pと内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられていれば、温度センサーの温度検知点が接触面CSに対して垂直な方向において電熱線131と重なるジャケットヒーターと比較して、電熱線131と温度検知点との距離を広げることができる。このため、温度センサーの数が1つ或いは3つ以上であっても、電熱線131から発生する熱の影響を受けづらく、測定対象の温度をより正確に検知することができる。また、測定対象の温度をより正確に検知することができるため、給電制御機構を接続して使用すれば、被加熱体を所望の温度範囲に維持することができる。
【0050】
本実施形態のジャケットヒーター100は、内層110、外層120、及び、内層110と外層120との間に設けられ熱源として電熱線131を有する発熱層130を含む積層体であって、温度センサー150が固定された積層体を形成する工程を含む方法により製造することができる。積層体を形成する工程において、温度センサー150の温度検知点は、被加熱体と内層110の接触面に対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に配置する。積層体の形成方法や温度センサーの固定方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。
【0051】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態のジャケットヒーターについて説明する。
【0052】
本実施形態のジャケットヒーター100は、第1実施形態のジャケットヒーター100と同様に、温度センサーの温度検知点が、被加熱体(配管P)と内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられているが、これに加えて、熱電対150のケーブル部152が、内層110、発熱層130、断熱層140、及び外層120を貫通するとともに、内層110、発熱層130、断熱層140、及び外層120のうちの少なくとも1つの隣接する層間において、隣接する層の一方の層から導出される導出部から他方の層に導入される導入部までの部位が、導出部と導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されていることを特徴とする。
【0053】
本実施形態のジャケットヒーター100は、
図8に示すように、内層110と外層120を有している。内層110は、ジャケットヒーター100の最内層を構成する層であり、被加熱体である配管Pに接触する。外層120は、ジャケットヒーター100の最外層を構成する層である。内層110と外層120の間には、発熱層130が設けられており、発熱層130と外層120の間には、断熱層140が設けられている。発熱層130は、熱源を有しており、熱源からの熱によって発熱する。断熱層140は、発熱層130で発生する熱が外層120を介して外部に放熱されることを抑制する。
【0054】
ジャケットヒーター100の内部には、被加熱体である配管Pを収容可能な収容スペースが形成されている。収容スペースに配管Pを収容できるよう、ジャケットヒーター100には、ジャケットヒーター100の外表面から収容スペースまで延びるスリットSが設けられている。ジャケットヒーター100は、スリットSを介して配管Pを収容スペースに収容され、ベルト等の固定手段(不図示)を用いて配管Pに固定されることで装着される。
【0055】
図9は、
図8に示すジャケットヒーター100のA-A’断面図である。
図9に示すように、本実施形態のジャケットヒーター100は、温度センサーとして、温度検知点と温度検知点から延びるケーブル部を備える温度センサーを有する。温度検知点とケーブル部を備える温度センサーは、温度検知点で検知された熱に応じた電気的信号がケーブル部を介して伝えられることで、測定対象物の温度を検知するセンサーであり、このような温度センサーとしては、例えば、熱電対や測温抵抗体を例示することができる。以下の説明では、温度検知点とケーブル部を備える温度センサーとして熱電対150を用いた実施形態について説明する。熱電対150は、測定対象物の温度を検知する温度検知点151と、温度検知点151から延びるケーブル部152からなり、ケーブル部152を介して温度検知点151で検知された熱に応じた電気的信号が伝えられる。なお、本実施形態のジャケットヒーター100は、熱電対150に加えて、熱電対150以外の他の温度センサーを備えていてもよい。このような温度センサーは、温度を検知できるものであればよく、前述したサーモスタット160や、抵抗値から温度を求めるサーミスタや、温度ヒューズを用いることができる。
【0056】
図9に示すように、熱電対150のうち、温度検知点151と温度検知点151に接続するケーブル部152の一部分は、内層110の内表面(配管Pに接触する表面)に露出して固定されている。ケーブル部152のうち、内層110の内表面に露出する部分を除いた部分については、内層110から外層120に向かって、内層110、発熱層130、断熱層140、及び外層120を貫通し、端部を含む一部分が外層120の外表面から露出して固定されている。内層110の内表面や外層120外表面に対するケーブル部152の固定方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ケーブル部152を、耐熱性を有する縫い糸Yにより内層110の内表面や外層120外表面に縫い付ける方法を用いることができる。
【0057】
ケーブル部152のうち、内層110、発熱層130、断熱層140、及び外層120を貫通する部分(内層110の内表面や外層120の外表面から露出していない部分)には、断熱層140から断熱層140と外層120の間に導出される部位である断熱層導出部152aと、断熱層140と外層120の間から外層120に導入される部位である外層導入部152bがある。本実施形態のジャケットヒーター100では、断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位は、
図9に示すように、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されている。言い換えれば、本実施形態のジャケットヒーター100では、ケーブル部152のうちの断熱層140と外層120との間に位置する部位については、断熱層導出部152aと外層導入部152bを迂回する迂回経路上に配置されている。
【0058】
断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位(ケーブル部152のうちの断熱層140と外層120との間に位置する部位)が配置される迂回経路は、具体的には、断熱層導出部152aからD1方向に延びるとともに、D1方向に対して垂直なD2方向に屈曲して延び、さらに、D2方向に垂直で且つD1に平行なD3方向に屈曲して外層導入部152bまで延びる経路である。D1~D3方向のように、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線方向(D方向)に対して所定角度をなす方向に延びる経路が迂回経路に含まれることで、迂回経路は、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線経路に対して迂回した経路となっている。なお、迂回経路は、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線経路に対して迂回した経路であればよく、
図9に示す迂回経路に限定されるものではない。
【0059】
迂回経路上に配置される断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位は、断熱層140(断熱層140の外表面(外層120に接する面))や外層120(外層120の内表面(断熱層140に接する面))に固定されていてもよい。断熱層140や外層120に対する固定方法は、特に限定されるものではなく、例えば、耐熱性を有する縫い糸により、断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位を断熱層140や外層120に縫い付ける方法を用いることができる。なお、ケーブル部152は、縫い付ける層に対して直接縫い付けられてもよいが、ケーブル部152を固定しやくするために、縫い付ける層の表面にガラス繊維クロスなどの無機繊維製クロスをあて、そのクロスを介してケーブル部152を縫い付けてもよい。また、層に縫い付けられたケーブル部152をガラス繊維クロスで覆い、ケーブル部152を縫い付けた層に対してそのガラス繊維クロスをさらに縫い付けたりしてもよい。
【0060】
本実施形態のジャケットヒーター100は、ケーブル部152のうちの断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位(ケーブル152のうちの断熱層140と外層120との間に位置する部位)が、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されているため、断熱層導出部152aと外層導入部152bの間に弛みが生じている。このため、外層120の外表面から露出するケーブル部152に引張力が加わったとしても、断熱層導出部152aと外層導入部152bの間の弛みが解消されるまで(断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位が、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線経路上に配置されるようになるまで)は、
図10に示すように、外層120の外表面から露出するケーブル部152の長さが長くなるだけで、ケーブル部152に過度な引張力が加わらない。このため、本実施形態のジャケットヒーター100は、ケーブル部152に引張力が加わったとしても、ケーブル部152が断線しにくい。なお、本明細書において、ケーブル部152の断線とは、ケーブル部152そのものの断線だけでなく、ケーブル部152の内部に収容される素線(導線)の断線を含む概念である。
【0061】
また、
図10に示すように、外層120の外表面から露出するケーブル部152に引張力が加わり、外層120の外表面から露出するケーブル部152の長さが長くなっても、断熱層導出部152aと外層導入部152bの間の弛みが解消されるまでは、ケーブル部152における外層導入部152bの位置が変化するだけで、ケーブル部152における断熱層導出部152aの位置は殆ど変化しない。このため、本実施形態のジャケットヒーター100では、断熱層導出部152aから温度検知点151に至るまでのケーブル部152に引張力が伝わりにくいため、温度検知点151の位置ずれが生じにくい。
【0062】
このように、本実施形態のジャケットヒーター100では、ケーブル部152において、迂回経路上に配置される断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位に弛みが生じているため、外層120の外表面から露出するケーブル部152に引張力が加わっても、弛みとなっている断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位が緩衝部として作用する。従って、第1実施形態の特徴に加えて、熱電対150のケーブル部152のうちの断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位が、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されているという特徴を有する本実施形態のジャケットヒーター100は、測定対象の温度をより正確に検知することができることに加え、ケーブル部152が断線しにくく、また、温度検知点151の位置ずれが生じにくい。
【0063】
次に、本実施形態のジャケットヒーター100の使用方法について
図11を用いて説明する。
図11は、外層120側から見たジャケットヒーター100の展開図である。本実施形態のジャケットヒーター100は、
図11に示すように、外部電源に接続する給電制御装置と接続して使用することができる。より具体的には、ジャケットヒーター100は、電熱線131に接続される電熱線ケーブル131C及び熱電対150のケーブル部152を介して、給電制御装置に接続して使用することができる。
【0064】
給電制御装置は、電熱線ケーブル131Cを介して、電熱線131に給電を行う。電熱線131に給電が行われることで、電熱線131が発熱する。また、給電制御装置は、熱電対150のケーブル部152を介して伝えられた熱(温度差)に基づく熱起電力を受信し、熱起電力から求められる測定対象物(配管P)の温度が所定範囲内にあるか否かを判断する。測定対象物の温度が所定範囲内にあると判断された場合、給電制御装置は、電熱線131に対して、被加熱体の温度がその温度で維持されるような給電制御を行う。一方、測定対象物(配管P)の温度が所定範囲よりも高いと判断された場合、給電制御装置は、電熱線131に対して、被加熱体(配管P)の温度がその温度よりも低くなるような給電制御を行い、測定対象物(配管P)の温度が所定範囲よりも低いと判断された場合、給電制御装置は、電熱線131に対して、被加熱体(配管P)の温度がその温度よりも高くなるような給電制御を行う。
【0065】
本実施形態のジャケットヒーター100は、上述した通り、測定対象の温度をより正確に検知することができるため、給電制御機構を接続して使用したときに、適切な給電制御を行うことができ、被加熱体を所望の温度範囲に維持することができる。なお、給電制御装置による給電制御は、上述した給電制御に限定されるものではなく、従来公知の給電制御を用いることができる。
【0066】
以下、本実施形態のジャケットヒーター100の変形例について説明する。なお、各変形例において、本実施形態のジャケットヒーター100と同じ構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0067】
[第2実施形態の変形例1]
図8~
図11に示す本実施形態のジャケットヒーター100では、ケーブル部152の断熱層導出部152aと外層導入部152bが、内層110、発熱層130、断熱層140、及び外層120の積層方向において重ならない位置に設けられているが(特に、
図9~
図11を参照)、本変形例1のジャケットヒーターでは、
図12に示すように、断熱層導出部152aと外層導入部152bが積層方向において重なる位置に設けられている。このようなジャケットヒーター100であっても、断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位(ケーブル部152のうちの断熱層140と外層120との間に位置する部位)が、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されていれば、断熱層導出部152aと外層導入部152bの間に弛みが生じる。従って、断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位が緩衝部として作用することから、本変形例1のジャケットヒーター100であっても、ケーブル部152が断線しにくく、また、温度検知点151の位置ずれが生じにくい。そして、本変形例1のジャケットヒーター100は、第1実施形態の特徴(温度センサーの温度検知点が、被加熱体(配管P)と内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられている)も有していることから、測定対象の温度をより正確に検知することもできる。
【0068】
[第2実施形態の変形例2]
図8~
図11に示す本実施形態のジャケットヒーター100では、断熱層140と外層120の層間において、ケーブル部152の断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位(ケーブル部152のうちの断熱層140と外層120との間に位置する部位)が、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されているが、本変形例2のジャケットヒーター100では、
図13に示すように、発熱層130と断熱層140の層間において、発熱層導出部152cから断熱層導入部152dまでの部位が、発熱層導出部152cと断熱層導入部152dを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されている。言い換えれば、本変形例2のジャケットヒーター100では、ケーブル部152のうちの発熱層130と断熱層140との間に位置する部位が、発熱層導出部152cと断熱層導入部152dを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されている。なお、発熱層導出部152cは、発熱層130から発熱層130と断熱層140の間に導出される部位であり、断熱層導入部152dは、発熱層130と断熱層140の間から断熱層140に導入される部位である。
【0069】
本変形例2のジャケットヒーター100であっても、ケーブル部152のうちの発熱層導出部152cから断熱層導入部152dまでの部位(発熱層130と断熱層140との間に位置する部位)が、発熱層導出部152cと断熱層導入部152dを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されているため、発熱層導出部152cと断熱層導入部152dの間の部位に弛みが生じている。このため、発熱層導出部152cから断熱層導入部152dまでの部位が緩衝部として作用することから、本変形例2のジャケットヒーター100であっても、ケーブル部152が断線しにくく、また、温度検知点151の位置ずれが生じにくい。そして、本変形例2のジャケットヒーター100は、第1実施形態の特徴(温度センサーの温度検知点が、被加熱体(配管P)と内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられている)も有していることから、測定対象の温度をより正確に検知することもできる。
【0070】
[第2実施形態の変形例3]
図8~
図11に示す本実施形態のジャケットヒーター100では、断熱層140と外層120の層間において、ケーブル部152の断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位(ケーブル部152のうちの断熱層140と外層120との間に位置する部位)が、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されているが、本変形例3のジャケットヒーター100では、
図14に示すように、内層110と発熱層130の層間において、内層導出部152eから発熱層導入部152fまでの部位が、内層導出部152eと発熱層導入部152fを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されている。言い換えれば、本変形例3のジャケットヒーター100では、ケーブル部152のうちの内層110と発熱層130との間に位置する部位が、内層導出部152eと発熱層導入部152fを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されている。なお、内層導出部152eは、内層110から内層110と発熱層130の間に導出される部位であり、発熱層導入部152fは、内層110と発熱層130の間から発熱層130に導入される部位である。
【0071】
本変形例3のジャケットヒーター100であっても、ケーブル部152のうちの内層導出部152eから発熱層導入部152fまでの部位(内層110と発熱層130との間に位置する部位)が、内層導出部152eと発熱層導入部152fを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されているため、内層導出部152eと発熱層導入部152fの間に弛みが生じている。このため、内層導出部152eから発熱層導入部152fまでの部位が緩衝部として作用することから、本変形例3のジャケットヒーター100であっても、ケーブル152が断線しにくく、また、温度検知点151の位置ずれが生じにくい。そして、本変形例3のジャケットヒーター100は、第1実施形態の特徴(温度センサーの温度検知点が、被加熱体(配管P)と内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられている)も有していることから、測定対象の温度をより正確に検知することもできる。
【0072】
[第2実施形態の変形例4]
図8~
図14に示すジャケットヒーター100では、ケーブル部152のうち、断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位(断熱層140と外層120との間に位置する部位)、発熱層導出部152cから断熱層導入部152dまでの部位(発熱層130と断熱層140との間に位置する部位)、及び内層導出部152eから発熱層導入部152fまでの部位(内層110と発熱層130との間に位置する部位)のいずれか一つの部位が迂回経路上に配置されているが、本変形例4のジャケットヒーター100では、これらの部位の中の2つ以上の部位が迂回経路上に配置されている(不図示)。
【0073】
前述したとおり、ケーブル部152のうちの迂回経路上に配置される部位は弛みとなるため、迂回経路上に配置される部位が2つ以上であっても弛みが生じる。この弛みは緩衝部として作用することから、断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位(断熱層140と外層120との間に位置する部位)、発熱層導出部152cから断熱層導入部152dまでの部位(発熱層130と断熱層140との間に位置する部位)、及び内層導出部152eから発熱層導入部152fまでの部位(内層110と発熱層130との間に位置する部位)の中の2つ以上の部位が迂回経路上に配置される本変形例4のジャケットヒーター100であっても、ケーブル部152が断線しにくく、また、温度検知点151の位置ずれが生じにくい。そして、本変形例4のジャケットヒーター100は、第1実施形態の特徴(温度センサーの温度検知点が、被加熱体(配管P)と内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられている)も有していることから、測定対象の温度をより正確に検知することもできる。
【0074】
[第2実施形態の変形例5]
図8~
図14に示すジャケットヒーター100では、断熱層140を1層で構成しているが、本変形例5のジャケットヒーター100は、断熱層140が2層で構成される。より具体的には、本変形例5のジャケットヒーター100は、発熱層130と外層120との間に設けられる第1の断熱層と、第1の断熱層と外層120との間に設けられる第2の断熱層の2つの断熱層140で構成される(不図示)。そして、第1の断熱層と第2の断熱層の層間において、ケーブル部152のうち、第1の断熱層導出部から第2の断熱層導入部までの部位が、第1の断熱層導出部と第2の断熱層導入部を結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されている(不図示)。言い換えれば、本変形例5のジャケットヒーター100では、ケーブル部152のうちの第1の断熱層と第2の断熱層との間に位置する部位が、第1の断熱層導出部と第2の断熱層導入部を結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されている。なお、第1の断熱層導出部は、第1の断熱層から第1の断熱層と第2の断熱層の間に導出される部位であり、第2の断熱層導入部は、第1の断熱層と第2の断熱層の間から第2の断熱層に導入される部位である。
【0075】
本変形例5のジャケットヒーター100であっても、ケーブル部152のうちの第1の断熱層導出部から第2の断熱層導入部までの部位(第1の断熱層と第2の断熱層との間に位置する部位)が、第1の断熱層導出部と第2の断熱層導入部を結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されているため、第1の断熱層導出部と第2の断熱層導入部の間に弛みが生じている。このため、第1の断熱層導出部から第2の断熱層導入部までの部位が緩衝部として作用することから、本変形例5のジャケットヒーター100であっても、ケーブル152が断線しにくく、また、温度検知点151の位置ずれが生じにくい。そして、本変形例5のジャケットヒーター100は、第1実施形態の特徴(温度センサーの温度検知点が、被加熱体(配管P)と内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられている)も有していることから、測定対象の温度をより正確に検知することもできる。なお、本変形例5では、ケーブル部152のうちの迂回経路上に配置される部分が、第1の断熱層と第2の断熱層との間に位置しているが、第2の断熱層と外層120との間や、第1の断熱層と発熱層130との間や、内層110と発熱層130との間に位置していてもよい。
【0076】
[第1実施形態の変形例6]
図8~
図14に示すジャケットヒーター100では、熱電対150の温度検知点151が、内層110の内表面に露出していたが、本変形例6のジャケットヒーター100は、
図15に示すように、温度センサー150の温度検知点151が、内層110と発熱層130との間に位置している。そして、温度検知点151から延びるケーブル部152の一部分は、内層110と発熱層130との間で固定され、内層110と発熱層130との間で固定される部分を除く部分については、内層110と発熱層130の間から外層120に向かって、発熱層130、断熱層140、及び外層120を貫通し、端部を含む一部分が外層120の外表面から露出して固定されている。
【0077】
本変形例6のジャケットヒーター100であっても、断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位(断熱層140と外層120との間に位置する部位)が、断熱層導出部152aと外層導入部152bを結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されているため、弛みが生じている。このため、断熱層導出部152aから外層導入部152bまでの部位が緩衝部として作用することから、本変形例6のジャケットヒーター100であっても、ケーブル部152が断線しにくく、また、温度検知点151の位置ずれが生じにくい。なお、
図15に示す本変形例6では、ケーブル部152のうちの迂回経路上に配置される部分が、断熱層140と外層120との間に位置しているが、断熱層140と発熱層130との間に位置していてもよい。また、断熱層140が、変形例5のように、第1の断熱層と第2の断熱層の2層で構成される場合には、ケーブル部152のうちの迂回経路上に配置される部分が、第1の断熱層と第2の断熱層の間に位置していてもよい。
【0078】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態のジャケットヒーターについて説明する。
【0079】
本実施形態のジャケットヒーターは、第1実施形態のジャケットヒーター100と同様に、温度センサーの温度検知点が、被加熱体(配管P)と内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられているが、これに加えて、電熱線131に接続する電熱線ケーブル131Cが、発熱層130から外層120に向かって、断熱層140、及び外層120を貫通するとともに、発熱層130、断熱層140、及び外層120のうちの少なくとも1つの隣接する層間において、隣接する層の一方の層から導出される導出部から他方の層に導入される導入部までの部位が、導出部と導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されていることを特徴とする。
【0080】
第2実施形態における熱電対150のケーブル部152は、内層110、発熱層130、断熱層140、及び外層120のうちの少なくとも1つの隣接する層間において、隣接する層の一方の層から導出される導出部から他方の層に導入される導入部までの部位が、導出部と導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されているのに対し、本実施形態における電熱線131に接続する電熱線ケーブル131Cは、発熱層130、断熱層140、及び外層120のうちの少なくとも1つの隣接する層間において、隣接する層の一方の層から導出される導出部から他方の層に導入される導入部までの部位が、導出部と導入部を結ぶ直線経路を迂回する経路上に配置されている。これ以外の電熱線ケーブル131Cの配置は、第2実施形態における熱電対150のケーブル部152の配置態様と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0081】
本実施形態のジャケットヒーターは、電熱線131に接続する電熱線ケーブル131Cのうちの導出部と導入部までの部位が、導出部と導入部を結ぶ直線経路を迂回する迂回経路上に配置されているため、導出部と導入部の間の部位に弛みが生じる。このため、導出部から導入部までの部位が緩衝部として作用することから、本実施形態のジャケットヒーターは、電熱線ケーブル131が断線しにくく、また、電熱線131の位置ずれが生じにくい。そして、本実施形態のジャケットヒーター100は、第1実施形態の特徴(温度センサーの温度検知点が、被加熱体(配管P)と内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられている)も有していることから、測定対象の温度をより正確に検知することもできる。
【0082】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態のジャケットヒーターについて説明する。
【0083】
本実施形態のジャケットヒーター100は、第1実施形態のジャケットヒーター100と同様に、温度センサーの温度検知点が、被加熱体(配管P)と内層110の接触面CSに対して垂直な方向において、電熱線131と重ならない位置に設けられているが、これに加えて、温度センサーとしてサーモスタット160を有するとともに、断熱層140がサーモスタット160の外形に沿って形成され、サーモスタット160の収容スペースを形成する収容部を有することを特徴とする。
【0084】
以下、本実施形態のジャケットヒーター100について、
図16~
図21を用いて説明する。なお、第1実施形態のジャケットヒーター100で説明した構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、本実施形態のジャケットヒーター100は、
図8などに示すように、内層110と外層120と発熱層130と断熱層140を有しており、スリットSを介して配管Pを収容スペースに収容され、ベルト等の固定手段(不図示)を用いて配管Pに固定されることで装着されるジャケットヒーターである。
【0085】
本実施形態のジャケットヒーター100には、
図16や
図17に示すサーモスタット160が設けられている。サーモスタット160は、バイメタル式のサーモスタットであり、配管Pの温度に応じて電熱線131の通電/非通電を切り替えるために使用される。サーモスタット160は、配管Pの外周面に接触するように配置されており、配管Pの熱がサーモスタット160に伝わるようになっている。これにより、配管Pの温度に応じてサーモスタット160を動作させることができる。
【0086】
図16及び
図17を用いて、サーモスタット160の構造(一例)について説明する。
図16は、サーモスタット160の一側面図であり、
図17は、
図16に示す矢印D1の方向からサーモスタット160を見たときの図(底面図)である。なお、サーモスタット160の構造は、
図16及び
図17に示す構造に限るものではない。
【0087】
サーモスタット160の内部には、バイメタル(不図示)が配置されており、バイメタルは、温度に応じて変形することにより、スイッチのオン/オフを切り替える。サーモスタット160を電熱線131と外部電源からなる電気回路に直列につなげたときには、スイッチがオンであると、電熱線131への通電を許容し、スイッチがオフであると、電熱線131への通電を遮断する。
【0088】
サーモスタット160は、電熱線131が接続される一対の端子161と、サーモスタット160を固定するための一対のフランジ162とを有する。一対の端子161は、上述したバイメタルによってオン/オフが切り替えられるスイッチに接続されている。
図17に示すように、各フランジ162には開口部162aが形成されており、開口部162aに糸を通しながら支持体132に糸を縫い付けることにより、サーモスタット160を支持体132に固定することができる。
【0089】
なお、本実施形態では、糸を用いてサーモスタット160を支持体132に固定しているが、これに限るものではない。すなわち、サーモスタット160を支持体132に固定することができればよく、例えば、接着剤を用いて、サーモスタット160のフランジ162を支持体132に固定することができる。また、フランジ162が設けられていないサーモスタット160であっても、公知の固定手段(例えば、接着剤)を用いることにより、支持体132に固定することができる。
【0090】
図18は、サーモスタット160を支持体132に固定した状態を示す断面図である。なお、
図18では、外層120を省略している。支持体132には、サーモスタット160を貫通させる開口部132aが形成されており、内層110にも、サーモスタット160を貫通させる開口部111が形成されている。これにより、サーモスタット160を配管Pの外周面に接触させることができる。
【0091】
断熱層140には、サーモスタット160の一部を収容する収容部141が設けられている。収容部141は、
図19に示すように、断熱層140を貫通する貫通孔であり、サーモスタット160の外形に沿った形状に形成されている。ここで、収容部141は、サーモスタット160の外形に厳密に沿っている必要は無く、収容部141の少なくとも一部がサーモスタット160の外面に接触してサーモスタット160を位置決めできればよい。
【0092】
図18に示すように、サーモスタット160のフランジ162は、支持体132及び内層110の間に配置されており、上述したように支持体132に縫い付けられる。フランジ162を支持体132に縫い付けることによっても、サーモスタット160を位置決めすることができる。
【0093】
図20は、フランジ162を支持体132に縫い付けた状態(一例)を示しており、
図18に示す矢印D2の方向からサーモスタット160を見たときの図である。
図20では、
図18に示す内層110を省略している。また、
図21は、
図18に示す矢印D3の方向からサーモスタット160を見たときの図であり、
図21では、外層120及び断熱層140を省略している。
【0094】
図20に示すように、フランジ162の開口部162aには糸61が通されており、糸61は、支持体132に縫い付けられている。また、支持体132には、開口部132aの縁に沿って補強糸62が縫い付けられており、開口部132aの強度を確保している。
【0095】
図21に示すように、支持体132には、サーモスタット160が配置された領域を避けるように電熱線131が配置されている。具体的には、電熱線131は、支持体132の開口部132aから所定距離だけ離れた位置において、開口部132aに沿って配置されている。例えば、糸(不図示)によって電熱線131を支持体132に押さえつけるように、糸を支持体132に縫い付けることにより、電熱線131を支持体132に固定することができる。
【0096】
上述したように支持体132を配置することにより、電熱線131から発生した熱がサーモスタット160に伝わりにくくすることができ、電熱線131からの熱によってサーモスタット160が誤作動することを防止できる。
【0097】
なお、支持体132のうち、サーモスタット160が配置されていない領域については、電熱線131からの熱が配管Pの全体に伝わりやすくするように、所定の配置パターンに沿って電熱線131を配置することができる。例えば、支持体132の表面上において、電熱線131を折り返しながら所定の間隔を空けて並ぶように電熱線131を配置することができる。ここで、電熱線131の熱を配管Pの全体に効率良く伝達させる場合には、上述した電熱線131の間隔がサーモスタット160の外径よりも小さくなりやすい。この場合には、電熱線131及びサーモスタット160が干渉してしまうため、上述したように開口部132aに沿って電熱線131を配置することに意義がある。
【0098】
本実施形態によれば、断熱層140の収容部141は、サーモスタット160の外形に沿って形成されてサーモスタット160を収容しているため、ジャケットヒーター100において、サーモスタット160を位置決めすることができる。これにより、配管Pに対して、サーモスタット160をずれることなく接触させることができ、配管Pの熱をサーモスタット160に効率良く伝達することができる。そして、配管Pの温度に応じてサーモスタット160を適切に動作させることができる。また、本実施形態のジャケットヒーター100は、第1実施形態の特徴を備えるため、測定対象の温度をより正確に検知することができ、給電制御機構を接続して使用したときには、被加熱体を所望の温度範囲に維持することができる。
【0099】
なお、本実施形態では、収容部141が断熱層140を貫通しているが、これに限るものではない。具体的には、収容部141は、断熱層140を貫通せずに、配管Pに向かって開口した凹部であってもよい。この凹部の側面は、サーモスタット160の外側面に沿った形状に形成されている。凹部にサーモスタット160を収容した場合であっても、上述した本実施形態の効果を得ることができる。なお、サーモスタット160を凹部に収容する場合には、サーモスタット160の端子161が凹部の底面側に位置することになるため、端子161に接続される電熱線131を通すための通路を断熱層140に形成することができる。
【符号の説明】
【0100】
100 ジャケットヒーター
110 内層
120 外層
130 発熱層
131 電熱線
131C 電熱線ケーブル
132 支持体
140 断熱層
150 熱電対
151 温度検知点
152 ケーブル部
152a 断熱層導出部
152b 外層導入部
152c 発熱層導出部
152d 断熱層導入部
152e 内層導出部
152f 発熱層導入部
160 サーモスタット
160a 温度検知部160a
160b 仕掛け部
S スリット
P 配管
CS 配管Pと内層110の接触面