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  • 特開-プロピレン系樹脂成形体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120400
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20240829BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08L23/10
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027167
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】栗原 英夫
(72)【発明者】
【氏名】北出 愼一
(72)【発明者】
【氏名】川島 寛正
【テーマコード(参考)】
4J002
4J128
【Fターム(参考)】
4J002BB121
4J002BB122
4J002BB141
4J002BB142
4J002BB151
4J002BB152
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD06
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA01B
4J128BA03A
4J128BB01B
4J128BB03A
4J128BC15A
4J128BC15B
4J128DA02
4J128EA01
4J128EB04
4J128EC01
4J128GA05
4J128GA26
4J128GB01
(57)【要約】

【課題】ブレンド材のプロピレン系樹脂を用いても、透明性が高く、且つ十分な剛性を維持したプロピレン系樹脂成形体を、良好なエネルギーコストで製造可能な製造方法を提供する。
【解決手段】 担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)を50質量%~99質量%およびチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)を1質量%~50質量%含むプロピレン系樹脂(X)を、前記プロピレン系樹脂(X)の融点以上の温度で加熱することにより溶融プロピレン系樹脂とし、溶融プロピレン系樹脂を溶融状態のプロピレン系樹脂成形体に成形し、当該溶融状態のプロピレン系樹脂成形体を冷却速度80℃/秒以上で冷却することによりプロピレン系樹脂成形体を得る工程を含む、プロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)を50質量%~99質量%およびチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)を1質量%~50質量%含むプロピレン系樹脂(X)を、前記プロピレン系樹脂(X)の融点以上の温度で加熱することにより溶融プロピレン系樹脂とし、溶融プロピレン系樹脂を溶融状態のプロピレン系樹脂成形体に成形し、当該溶融状態のプロピレン系樹脂成形体を冷却速度80℃/秒以上で冷却することによりプロピレン系樹脂成形体を得る工程を含む、プロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記担持されたメタロセン触媒が、以下の成分(A)および成分(B)から得られる触媒である、請求項1に記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
成分(A):メタロセン化合物
成分(B):下記(b-1)および(b-2)からなる群から選択される1種以上を含有する成分
(b-1)固体酸成分
(b-2)イオン交換性層状化合物
【請求項3】
前記加熱する温度が、120℃以上300℃以下である、請求項1に記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記成分(B)が、(b-2)イオン交換性層状化合物である、請求項2に記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
前記プロピレン系樹脂(P1)及びプロピレン系樹脂(P2)が、プロピレン単独重合体またはコモノマー含量10質量%以下のプロピレン共重合体である、請求項1に記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
前記コモノマーが、エチレン、炭素数4~20の非環状及び環状オレフィン、並びに(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6に記載のプロピレン系樹脂成形体が、プロピレン系樹脂シートである、プロピレン系樹脂シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂成形体の製造方法に関し、詳しくは、ブレンド材を使用しても高透明で充分な剛性を維持したプロピレン系樹脂成形体の製造方法、プロピレン系樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題などへの意識の高まりとともに、ポリ塩化ビニル樹脂に変わる新しい樹脂シートが要求されている。このようなシートとして、プロピレン系樹脂シートが注目されている。
【0003】
単一のチーグラーナッタ触媒系プロピレン系樹脂は、従来の製造方法において高透明で適度な物性を有した材料となるが、分子量分布が広いことから低分子量成分のブリードアウトなどの問題がある。このようなブリードアウトを改善するためにメタロセン触媒系エチレン系樹脂とのブレンドを行う方法が開示されている(非特許文献1)。
【0004】
メタロセン触媒系プロピレン系樹脂は分子量分布が狭いため、低分子量、低規則性成分が少なく、ブリードしやすい成分が少ない特長がある。その一方で、狭い分子量分布のプロピレン系樹脂は、溶融粘度の剪断速度依存性が小さく、高剪断時の粘度低下が小さく、また溶融強度が小さいといった、産業利用上極めて重要となる成形加工性に劣るという欠点がある(非特許文献2)。
【0005】
そこで、分子量分布の広いチーグラーナッタ触媒系プロピレン系樹脂をメタロセン触媒系プロピレン系樹脂にブレンドすることにより、各樹脂の特性を併せ持つ、ブリードが少なく成形加工性の良い材料の開発が可能となると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-13357号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】成形加工、第18巻、第5号、2006、p.340-344
【非特許文献2】高分子、46巻、7月号、1997年、p.476-479
【非特許文献3】次世代ポリオレフィン総合研究、三恵社、2018年12月10日初版発行、Vol.12、p.137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ブレンド材により従来の製造方法で得られる成形体は、透明性が低下するという問題があった。
【0009】
ポリプロピレンシートの透明性を阻害する要因として、ミクロンサイズの球晶が考えられており、このような球晶が生じ難いよう、ポリプロピレン溶融物を急速冷却することによりスメクチック晶を形成させる方法が知られている。しかし、スメクチック晶を持つシートは高透明であるものの、剛性はα晶より低い。
【0010】
このようなシートの剛性を改良する方法として例えば、特許文献1では、従来にない高剛性を有した高透明性のポリプロピレン成形品の製造方法を開示する。ポリプロピレン成形品の製造方法では、具体的には、アイソタクティックペンタッド分率が95%モル以上の立体規則性を有するポリプロピレン溶融物を流動させる流動工程と、当該ポリプロピレン溶融物を、温度範囲-200℃以上50℃以下に冷却し、かつ0.1秒以上100秒以下で維持して、中間相もしくは単斜晶(α晶)のドメインおよび非晶相を主要組成とする急冷ポリプロピレン高次構造体を得る急冷工程と、この急冷工程で得られた前記急冷ポリプロピレン高次構造体を、吸熱性転移を示す温度域かつこの急冷ポリプロピレン高次構造体の融解温度以下の温度に昇温し、かつ0.1秒以上1,000秒以下で維持する熱処理を実施する熱処理工程と、を実施する。しかしながら、この特許文献1のような製造方法から得られるポリプロピレン成形品には、透明性を阻害する球晶あるいはラメラ構造の集合体など大きな結晶構造体が含まれているとされている(非特許文献3)。
【0011】
球晶のα晶を含むポリプロピレンシートは、安定で製造が容易で高剛性であるが、透明性が低いという問題を抱えていた。また、特許文献1の急冷ポリプロピレン高次構造体は、透明性の高いスメクチック晶の成型品である一方で、剛性が低く、さらには熱によりα晶に転移することから熱安定性が低いという欠点があった。そのため、特許文献1のポリプロピレン成形品の製造方法では、透明性の高いスメクチック晶フィルムを作製した後、安定なα晶に転移させるために熱処理も行う必要がある。このような製造方法は複数の処理工程のため製造にかかわる時間と手間がかかるだけでなく、製造エネルギーが多く必要であり、高コストという問題を抱えていた。
【0012】
そこで、本発明は、ブレンド材のプロピレン系樹脂を用いても、透明性が高く、且つ十分な剛性を維持したプロピレン系樹脂成形体を、良好なエネルギーコストで製造可能な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討した結果、担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂と、チーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂とを含むプロピレン系樹脂を、当該プロピレン系樹脂の融点以上の温度で加熱し、続いて冷却速度80℃/秒以上で冷却することにより、単一の工程で、透明性が高く、且つ十分な剛性を維持したプロピレン系樹脂成形体を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は以下の[1]~[7]のプロピレン系重合体の製造方法に関する。
[1]担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)を50質量%~99質量%およびチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)を1質量%~50質量%含むプロピレン系樹脂(X)を、前記プロピレン系樹脂(X)の融点以上の温度で加熱することにより溶融プロピレン系樹脂とし、溶融プロピレン系樹脂を溶融状態のプロピレン系樹脂成形体に成形し、当該溶融状態のプロピレン系樹脂成形体を冷却速度80℃/秒以上で冷却することによりプロピレン系樹脂成形体を得る工程を含む、プロピレン系樹脂成形体の製造方法。
[2]前記担持されたメタロセン触媒が、以下の成分(A)および成分(B)から得られる触媒である、前記[1]に記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
成分(A):メタロセン化合物
成分(B):下記(b-1)および(b-2)からなる群から選択される1種以上を含有する成分
(b-1)固体酸成分
(b-2)イオン交換性層状化合物
[3]前記加熱する温度が、120℃以上300℃以下である、前記[1]又は[2]に記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
[4]前記成分(B)が、(b-2)イオン交換性層状化合物である、前記[2]又は[3]に記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。

[5]前記プロピレン系樹脂(P1)及び前記プロピレン樹脂(P2)が、プロピレン単独重合体またはコモノマー含量10質量%以下のプロピレン共重合体である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
[6]前記コモノマーが、エチレン、炭素数4~20の非環状及び環状オレフィン、並びに(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[5]に記載のプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
[7][1]~[6]に記載のプロピレン系樹脂成形体が、プロピレン系樹脂シートである、プロピレン系樹脂シートの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブレンド材のプロピレン系樹脂を用いても、透明性が高く、且つ十分な剛性を維持したプロピレン系樹脂成形体を、良好なエネルギーコストで製造可能な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1、比較例1、及び比較例10のプロピレン系樹脂シートのX線回折測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のプロピレン系樹脂成形体の製造方法について、工程ごとに詳細に説明する。また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
なお、本発明において、「シート」とは、JIS-K6900の定義におけるシートとフィルムを含む意味である。JIS-K6900での定義では、シートとは薄く一般にその厚さが長さと幅のわりには小さい平らな製品をいい、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう。したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、シートとフィルムの境界は定かではなく、明確に区別しにくいので、本発明では、厚みの厚いもの及び薄いものの両方の意味を含めて、「シート」と定義する。
【0018】
本発明のプロピレン系樹脂成形体の製造方法は、担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)を50質量%~99質量%およびチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)を1質量%~50質量%含むプロピレン系樹脂(X)を、前記プロピレン系樹脂(X)の融点以上の温度で加熱することにより溶融プロピレン系樹脂とし、当該溶融プロピレン系樹脂を冷却速度80℃/秒以上で冷却することによりプロピレン系樹脂成形体を得る工程を含むことを特徴とする。
【0019】
I.プロピレン系樹脂(X)
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(X)は、担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)を50質量%~99質量%およびチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)を1質量%~50質量%含む。
【0020】
1.担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)
(1)担持されたメタロセン触媒
本発明で用いられる担持されたメタロセン触媒は、活性点前駆体であるメタロセン化合物を担体に担持したメタロセン触媒である。
【0021】
本発明で用いられる担持されたメタロセン触媒は、以下の成分(A)および成分(B)から得られる触媒であってよい。
成分(A):メタロセン化合物
成分(B):下記(b-1)および(b-2)からなる群から選択される1種以上を含有する成分
(b-1)固体酸成分
(b-2)イオン交換性層状化合物
【0022】
[成分(A):メタロセン化合物]
本発明に用いられるメタロセン化合物としては、共役五員環配位子を少なくとも1つを有するメタロセン化合物が挙げられる。かかる遷移金属化合物として好ましいものとしては、例えば、下記一般式(1)~(4)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
【化1】
[上記一般式(1)~(4)中、AおよびA’は、置換基を有してもよい共役五員環配位子(同一化合物内においてAおよびA’は同一でも異なっていてもよい)を示し、
Qは、二つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を示し、Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素基を示し、Z’は、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、又は炭化水素基を示す。
Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を示し、Mは、周期表第4族から選ばれる金属原子を示し、XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン原子含有炭化水素基またはケイ素原子含有炭化水素基(同一化合物内においてX及びYは、同一でも異なっていてもよい。)を示す。]
【0024】
AおよびA’の共役五員環配位子としては、例えば、シクロペンタジエンやインデン、テトラヒドロインデン、フルオレン、アズレン、テトラヒドロアズレンから誘導される共役五員環配位子が挙げられる。これらは非置換でもよく、置換されていてもよい。この中で、特に好ましいものは、置換または非置換のインデニル基またはアズレニル基である。
【0025】
共役五員環配位子上の置換基としては、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~30の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が置換した炭素数1~30の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1~12のアルコキシ基、例えば、-Si(R)(R)(R)で示されるケイ素原子含有炭化水素基、-P(R)(R)で示されるリン原子含有炭化水素基、または-B(R)(R)で示されるホウ素含有炭化水素基が挙げられる。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい。
上述のR、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、炭素数1~24、好ましくは炭素数1~18のアルキル基を示す。
また、共役五員環配位子上の置換基は、少なくとも1つの周期表第15及び16族元素(すなわち、ヘテロ元素)を有してもよい。このような置換基として好ましくは、5員又は6員環中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びリン原子よりなる群から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含有する単環式又は多環式置換基が挙げられる。さらに好ましくは置換していてもよいヘテロ芳香族化合物から誘導される置換基であり、特に好ましくは置換していてもよいフリル基、置換していてもよいチエニル基が挙げられる。一般式(2)または(4)で表される架橋基をもつ化合物の場合、これらの置換基は、特に制限は無いが、共役五員環配位子上のα位(架橋基との結合部位を基準とする)にあることが好ましい。
【0026】
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZで示される基を架橋する結合性基を表す。
QおよびQ’の具体例としては、次の基が挙げられる。
(イ)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、ジメチルメチレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基類
(ロ)ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル-t-ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基、シラシクロブチレン基等のシリレン基類
(ハ)炭化水素基で置換された置換ゲルミレン基、置換リン基、置換アミノ基、置換硼素基若しくは置換アルミレン基
【0027】
さらに、具体的には、(CHGe、(CGe、(CH)P、(C)P、(C)N、(C)N、(C)B、(C)B、(C)Al、(CO)Alで示される基等である。好ましいものは、アルキレン基類、又は、シリレン基類である。
【0028】
また、Mは、金属原子を表し、特に周期表第4族から選ばれる遷移金属原子を示す。Mの例を挙げるならば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等である。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
さらに、Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を示し、Z’は、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、又は炭化水素基を示す。
Z及びZ’の好ましい具体例としては、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18の酸素原子含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のイオウ原子含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のケイ素原子含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18の窒素原子含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のリン原子含有炭化水素基、炭素数1~20の炭化水素基が挙げられる。Zの好ましい具体例としては、水素原子、塩素原子、臭素原子が更に追加される。
【0029】
XおよびYは、各々水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10のアルコキシ基、アミノ基、ジフェニルフォスフィノ基等の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12のリン原子含有炭化水素基、またはトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12のケイ素原子含有炭化水素基である。
XとYは同一でも異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、および炭素数1~12のアミノ基が特に好ましい。
【0030】
本発明で使用する成分(A)としては、前記一般式(2)で示される化合物であってよく、より具体的に下記一般式(2-1)で示される化合物であってよい。
【0031】
【化2】
[式(2-1)中、
は、Ti、Zr又はHfであり、
とXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基、又は、置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基である。
は、炭素数6~18のアリール基で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20の炭化水素基で置換されていてもよいシリレン基、又は、炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換ゲルミレン基、置換リン基、置換アミノ基、置換硼素基若しくは置換アルミレン基である。
11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24,R25及びR26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、トリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、置換されていてもよいフリル基、又は、置換されていてもよいチエニル基である。また、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24,R25及びR26は、隣接する置換基双方で5~7員環を構成してもよく、該5~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。]
【0032】
式(2-1)中、Mは、Ti、Zr又はHfである。Mは、触媒の高活性化の点から、好ましくはZr、又はHfである。
式(2-1)中、XとXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基、又は、置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基である。
式(2-1)中、ハロゲン原子の具体例としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子を挙げることができる。
式(2-1)中、炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。
また、炭素数1~6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などを挙げることができる。
【0033】
式(2-1)中、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,1,1-テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、5-クロロペンチル基、5,5,5-トリクロロペンチル基、5-フルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、6-クロロヘキシル基、6,6,6-トリクロロヘキシル基、6-フルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基を挙げることができる。
式(2-1)中、炭素数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジ-i-プロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基などを挙げることができる。
【0034】
また、炭素数6~18のアリール基は、置換されていてもよく、XとXにおけるアリール基の置換基としては、炭素数1~6の炭化水素基、またはハロゲン原子が好ましい。すなわち、XとXにおけるアリール基は、炭素数1~6の炭化水素基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基であることが好ましい。炭素数1~6の炭化水素基としては、炭素数1~6のアルキル基であってよい。
炭素数1~6の炭化水素基で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2-i-プロピルフェニル基、3-i-プロピルフェニル基及び4-i-プロピルフェニル基、2-t-ブチルフェニル基、3-t-ブチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、2,4-ジt-ブチルフェニル基、2,5-ジt-ブチルフェニル基、2,6-ジt-ブチルフェニル基、3,5-ジt-ブチルフェニル基、ビフェニリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、アントリル基などを挙げることができる。
また、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基の具体例としては、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、2,3,4-トリフルオロフェニル基、2,4,5-トリフルオロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、2,4,6-トリクロロフェニル基、2,3,4-トリクロロフェニル基、2,4,5-トリクロロフェニル基、3,4,5-トリクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、3,5-ジメチル-4-クロロフェニル基、3,5-ジクロロ-4-ビフェニリル基などが挙げられる。
【0035】
とXは、中でも、触媒の高活性化の点から、ハロゲン原子、又は炭素数1~6の炭化水素基が好ましく、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、i-ブチル基、またはフェニル基が特に好ましい。
【0036】
は、炭素数6~18のアリール基で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20の炭化水素基で置換されていてもよいシリレン基、又は、炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換ゲルミレン基、置換リン基、置換アミノ基、置換硼素基若しくは置換アルミレン基である。
炭素数6~18のアリール基で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基において、アルキレン基は、直鎖、分岐、環状又はこれらの組み合わせであってよい。炭素数6~18のアリール基で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基としては、炭素数6~10のアリール基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基であることが好ましく、フェニル基で置換されていてもよい炭素数1~2のアルキレン基であることがより好ましい。
炭素数6~18のアリール基で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。
【0037】
置換されていてもよい炭化水素基としては、直鎖、分岐、環状又はこれらの組み合わせであってよいアルキル基、当該アルキル基が置換されていてもよいアリール基、当該アリール基が置換されていてもよいアルキル基などが挙げられ、置換されている炭化水素基同士が互いに結合して、ケイ素原子、又はゲルマニウム原子と共に環を形成していてもよい。当該環を形成している場合の炭化水素基には不飽和結合を含んでいてもよい。また、当該環を形成している場合、4~7員環を形成することが好ましく、4又は5員環を形成することがより好ましい。
炭素数1~20の炭化水素基で置換されていてもよいシリレン基の具体例としては、シリレン基、ジメチルシリレン基、シラシクロブチレン基、シラシクロペンチレン基、シラシクロヘキシレン基、フェニルメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基などが挙げられる。
炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換ゲルミレン基の具体例としては、(CHGe基、(CGe基などが挙げられ、炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換リン基の具体例としては、(CH)P基、(C)P基などが挙げられ、炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基の具体例としては、(C)N基、(C)N基などが挙げられ、炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換硼素基の具体例としては、(CH)B基、(C)B基、(C)B基などが挙げられ、炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アルミレン基の具体例としては、(C)Al基などが挙げられる。
【0038】
は、中でも、触媒の高活性化の点から、炭素数6~18のアリール基で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基、又は炭素数1~20の炭化水素基で置換されていてもよいシリレン基であることが好ましく、フェニル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基、又は、炭素数1~12の炭化水素基で置換されていてもよいシリレン基であることがより好ましい。Qは、その中でも、炭素数1~7の炭化水素基で置換されていてもよいシリレン基であることがよりさらに好ましく、具体例としては、ジメチルシリレン基、シラシクロブチレン基、シラシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、フェニルメチルシリレン基などが挙げられる。
【0039】
11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24,R25及びR26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、トリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、置換されていてもよいフリル基、又は、置換されていてもよいチエニル基である。また、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24,R25及びR26は、隣接する置換基双方で5~7員環を構成してもよく、該5~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24,R25及びR26において、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基については、X及びXにおいて説明したものと同様であってよい。
【0040】
トリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、(トリメチルシリル)メチル基、(トリエチルシリル)メチル基、(t-ブチルジメチルシリル)メチル基、(トリメチルシリル)エチル基などを挙げることができる。
炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基とは、それぞれ独立して炭素数1~6の炭化水素基3個がケイ素原子上に置換されている置換基であり、炭素数1~6の炭化水素基とは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、およびフェニル基を含み、フェニル基はアルキル基等で置換されていてもよい。具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-n-ブチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリビニルシリル基、トリアリルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0041】
置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、置換されていてもよいフリル基、又は、置換されていてもよいチエニル基は、置換または非置換の炭素数6~18のアリール基、置換または非置換のフリル基、又は置換または非置換のチエニル基である。
11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24,R25及びR26におけるアリール基、フリル基、又はチエニル基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、トリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基が挙げられる。ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、トリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基、及び炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基の具体例としては、前記と同様であってよい。
【0042】
置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基の具体例としては、前記炭素数1~6の炭化水素基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基と同様のものが挙げられ、更に、4-メトキシフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-トリメチルシリルフェニル基等が挙げられる。
【0043】
置換されていてもよいフリル基の具体例としては、2-フリル基、2-(5-メチルフリル)基、2-(5-エチルフリル)基、2-(5-n-プロピルフリル)基、2-(5-i-プロピルフリル)基、2-(5-t-ブチルフリル)基、2-(5-トリメチルシリルフリル)基、2-(5-トリエチルシリルフリル)基、2-(5-フェニルフリル)基、2-(5-トリルフリル)基、2-(5-フルオロフェニルフリル)基、2-(5-クロロフェニルフリル)基、2-(4,5-ジメチルフリル)基、2-(3,5-ジメチルフリル)基、2-ベンゾフリル基、3-フリル基、3-(5-メチルフリル)基、3-(5-エチルフリル)基、3-(5-n-プロピルフリル)基、3-(5-i-プロピルフリル)基、3-(5-t-ブチルフリル)基、3-(5-トリメチルシリルフリル)基、3-(5-トリエチルシリルフリル)基、3-(5-フェニルフリル)基、3-(5-トリルフリル)基、3-(5-フルオロフェニルフリル)基、3-(5-クロロフェニルフリル)基、3-(4,5-ジメチルフリル)基、3-ベンゾフリル基などが挙げられる。
置換されていてもよいチエニル基の具体例としては、2-チエニル基、2-(5-メチルチエニル)基、2-(5-エチルチエニル)基、2-(5-n-プロピルチエニル)基、2-(5-i-プロピルチエニル)基、2-(5-t-ブチルチエニル)基、2-(5-トリメチルシリルチエニル)基、2-(5-トリエチルシリルチエニル)基、2-(5-フェニルチエニル)基、2-(5-トリルチエニル)基、2-(5-フルオロフェニルチエニル)基、2-(5-クロロフェニルチエニル)基、2-(4,5-ジメチルチエニル)基、2-(3,5-ジメチルチエニル)基、2-ベンゾチエニル基、3-チエニル基、3-(5-メチルチエニル)基、3-(5-エチルチエニル)基、3-(5-n-プロピルチエニル)基、3-(5-i-プロピルチエニル)基、3-(5-t-ブチルチエニル)基、3-(5-トリメチルシリルチエニル)基、3-(5-トリエチルシリルチエニル)基、3-(5-フェニルチエニル)基、3-(5-トリルチエニル)基、3-(5-フルオロフェニルチエニル)基、3-(5-クロロフェニルチエニル)基、3-(4,5-ジメチルチエニル)基、3-ベンゾチエニル基、などを挙げることができる。
また、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24,R25及びR26は、隣接する置換基双方で5~7員環を構成してもよく、該5~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
【0044】
11とR21は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換されていてもよいフリル基、又は、置換されていてもよいチエニル基であって、RとR11の片方または両方が、置換されていてもよいフリル基、又は、置換されていてもよいチエニル基のいずれかであることが、触媒の高活性化の点から好ましい。R11とR21は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよいフリル基、又は、置換されていてもよいチエニル基であることがより好ましく、置換されていてもよいフリル基、又は、置換されていてもよいチエニル基であることが更に好ましい。
置換されていてもよいフリル基、又は、置換されていてもよいチエニル基として、特に好ましいものは、下記式(2-1a)で表すことができる。
【0045】
【化3】
(式(2-1a)中、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、R50及びR51は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基または炭素数6~18のアリール基である。また、R50及びR51は、隣接する置換基双方で5~7員環を構成してもよく、該5~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。)
【0046】
式(2-1a)中、R51は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1~6のアルキル基である。R50は、好ましくはハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基であり、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基である。
【0047】
12とR22は、触媒の高活性化の点からいずれも水素原子であることがより好ましい。
【0048】
13とR23は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1~6のアルキル基、フリル基、チエニル基、置換基を有しているフリル基または置換基を有しているチエニル基、又は、置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基又は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基であることがより好ましい。
【0049】
14とR24は、触媒の高活性化の点から、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、トリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基またはハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基であって、水素原子または炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基であることがより好ましく、水素原子またはメチル基が特に好ましい。
【0050】
15とR25は、触媒の高活性化の点から、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、トリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基またはハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基であることが好ましく、中でも、水素原子または炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましく、水素原子またはメチル基が特に好ましい。
【0051】
14、R15、R24及びR25は、隣接する置換基双方で5~7員環を構成してもよく、該5~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
【0052】
また、R16とR26は、触媒の高活性化の点から、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0053】
前記一般式(2-1)で表されるメタロセン錯体は、中でも、触媒の高活性化の点から、下記一般式(2-2)で表されるメタロセン錯体であることがより好ましい。
【0054】
【化4】
[式(2-2)中、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、R50、R51、R52及びR53は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基または炭素数6~18のアリール基である。また、R50、R51、R52及びR53は、隣接する置換基双方で5~7員環を構成してもよく、該5~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。R61、R62、R63、R64、R65、R71、R72、R73、R74、及びR75は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、トリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、置換されていてもよいフリル基、又は、置換されていてもよいチエニル基である。また、R61、R62、R63、R64、R65、R71、R72、R73、R74、及びR75は、隣接する置換基双方で5~7員環を構成してもよく、該5~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
、X、X、Q、R12、R14、R15、R16、R22、R24,R25及びR26は、それぞれ前記一般式(2-1)の記載と同義である。]
【0055】
は、酸素原子または硫黄原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
51、R53の置換基として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1~6のアルキル基である。R50、R52の置換基として、好ましくはハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基であり、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0056】
61、R62、R63、R64、R65、R71、R72、R73、R74、及びR75は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、トリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~18のアリール基であることが好ましく、中でも、R61、R65、R71、及びR75は、好ましくは水素原子である。
61、R62、R63、R64、R65、R71、R72、R73、R74、及びR75は、隣接する置換基双方で5~7員環を構成してもよく、該5~7員環が不飽和結合を含んでいてもよく、具体的には、インデニル環の4位の置換基として、1-ナフチル基、2-ナフチル基、5,6,7,8-テトラヒドロ-1-ナフチル基、5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基などを挙げることができる。
【0057】
以下により具体的な遷移金属化合物を挙げるが、これらに限定されるものではない。
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、
(1)ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス(1、3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(4)ビス(1-n-ブチル-3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス(1-メチル-3-トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)ビス(1-メチル-3-トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)ビス(1-メチル-3-フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ビス(2-メチル-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0058】
前記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-イソプロピル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(2)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ジメチルシリレンビス〔1-{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(4)ジメチルシリレンビス[1-{2-メチル-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(5)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,6-ジイソプロピル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(6)ジフェニルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(7)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(8)エチレンビス{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレンビス{1-[2-エチル-4-(2-フルオロ-4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス{1-[2-メチル-4-(2’,6’-ジメチル-4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(11)ジメチルシリレン{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、
(12)ジメチルシリレン{1-(2-エチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(13)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニル-7-フルオロ-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(14)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-インドリル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(15)ジメチルシリレンビス[1-{2-エチル-4-(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)-4H-アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(16)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、
(17)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(18)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(19)ジメチルシリレンビス〔1-{2-メチル-4-(1-ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(20)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,6-ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
【0059】
(21)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(22)エチレン-1,2-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(23)エチレン-1,2-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(24)イソプロピリデンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(25)エチレン-1,2-ビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(26)イソプロピリデンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(27)ジメチルゲルミレンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(28)ジメチルゲルミレンビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(29)フェニルホスフィノビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(30)ジメチルシリレンビス[3-(2-フリル)-2,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(31)ジメチルシリレンビス[2-(2-フリル)-3,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(32)ジメチルシリレンビス[2-(2-フリル)-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(33)ジメチルシリレンビス[2-(2-(5-メチル)フリル)-4,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(34)ジメチルシリレンビス[2-(2-(5-トリメチルシリル)フリル)-4,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(35)ジメチルシリレンビス[2-(2-チエニル)-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(36)ジメチルシリレン[2-(2-(5-メチル)フリル)-4-フェニルインデニル][2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
(37)ジメチルシリレンビス(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(38)ジメチルシリレンビス(2,3-ジメチル-5-エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(39)ジメチルシリレンビス(2,5-ジメチル-3-フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(40)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
【0060】
(41)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(42)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(43)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(44)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(45)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(46)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(47)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(48)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(49)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(50)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(51)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(52)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(53)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(54)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(55)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(56)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(57)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(58)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(59)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(60)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
【0061】
(61)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(62)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(63)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(64)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(65)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(66)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(67)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(68)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(69)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(70)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(71)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(72)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(73)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(74)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(75)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(76)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(77)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(78)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(79)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(80)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
【0062】
(81)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(82)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(83)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(84)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(85)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(86)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(87)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(88)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-5,5,7,7-テトラメチル-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(89)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-5,5,7,7-テトラメチル-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(90)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2,5-ジメチル-4-フェニル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(91)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(92)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(93)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(94)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(95)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(96)シラシクロペンチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(97)シラシクロペンチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(98)シラシクロペンチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(99)シラシクロペンチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0063】
前記一般式(3)で表される化合物としては、例えば、
(1)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(2)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスイソプロピルアミド)ジクロリド、
(3)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスシクロドデシルアミド)ジクロリド、
(4)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド)}ジクロリド、
(5)(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド}ジクロリド、
(6)(2-メチルインデニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(7)(フルオレニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(8)(3、6-ジイソプロピルフルオレニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(9)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(フェノキシド)ジクロリド、(10)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(2、6-ジイソプロピルフェノキシド)ジクロリド、
等が挙げられる。
【0064】
前記一般式(4)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(2)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタニウムジクロリド、
(3)ジメチルシランジイル(2-メチルインデニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(4)ジメチルシランジイル(フルオレニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0065】
これらの例示化合物のジクロリドは、ジブロマイド、ジフルオライド、ジメチル、ジフェニル、ジベンジル、ビスジメチルアミド、ビスジエチルアミド等に置き換えた化合物も、同様に例示される。さらに、例示化合物中のジルコニウムは、ハフニウムまたはチタニウムに、チタニウムは、ハフニウムまたはジルコニウムに置き換えた化合物も、同様に、例示される。
【0066】
本発明に用いられる成分(A)のメタロセン化合物は、従来公知の方法で調製することができる。
【0067】
本発明に用いられる成分(A)のメタロセン化合物としては、前記一般式(2)で示される化合物、中でも前記一般式(2-1)で示される化合物が好ましい。
なお、成分(A)のメタロセン化合物は、1種を用いることも、2種以上を併用して用いることもできる。
【0068】
[成分(B)]
本発明で用いられる成分(B)は、下記(b-1)および(b-2)からなる群から選択される1種以上を含有する成分である。
(b-1)固体酸成分
(b-2)イオン交換性層状化合物
本発明において、成分(B)は、前記成分(A)のメタロセン化合物を担持する担体として機能するだけではなく、重合反応において助触媒として働くものである。
【0069】
(b-1)固体酸成分において、固体酸としては、アルミナ、シリカ-アルミナ、ゼオライトなどの固体酸が挙げられる。
【0070】
(b-2)イオン交換性層状化合物は、粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩とは、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。
大部分のイオン交換性層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、イオン交換性層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
なお、本発明においては、化学処理を加える前段階でイオン交換性を有していれば、該処理によって物理的、化学的な性質が変化し、イオン交換性や層構造がなくなった珪酸塩もイオン交換性層状珪酸塩であるとして取り扱う。
【0071】
イオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、例えば、白水晴雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)、などに記載される公知のイオン交換性層状珪酸塩であって、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイトなどのカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライトなどの蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、テニオライト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族、バーミキュライトなどのバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
【0072】
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
スメクタイト族の代表的なものとしては、一般にはモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントライト、ヘクトライト、ソーコナイトなどである。「ベンクレイSL」(水澤化学工業社製)、「クニピア」、「スメクトン」(いずれもクニミネ工業社製)、「モンモリロナイトK10」(アルドリッチ社製、ジュートヘミー社製)、「K-Catalystsシリーズ」(ジュートヘミー社製)などの市販品を利用することもできる。雲母族の代表的なものとしては、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライ
トなどがある。市販品の「合成雲母ソマシフ」(コープケミカル社製)、「フッ素金雲母」、「フッ素四ケイ素雲母」、「テニオライト」(いずれもトピー工業社製)などの市販品を利用することもできる。更に好ましいのは「ベンクレイSL」などのスメクタイト族である。
【0073】
これらのイオン交換性層状珪酸塩は化学処理がなされていてもよく、特にモンモリロナイトや、これを主成分とする鉱物であるベントナイト及び活性白土等を化学処理して使用することが好ましい。
ここで化学処理とは、(イ)酸処理、(ロ)アルカリ処理、(ハ)塩類処理、(ニ)有機物処理などが挙げられる。
【0074】
これらの処理は、表面の不純物を取り除く、層間の陽イオンを交換する、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させるなどの作用をし、その結果、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離及び固体酸性度などを変えることができる。これらの処理は単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
化学処理に用いられる(イ)酸としては、無機酸或いは有機酸どちらでもよく、好ましくは例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸などがあげられ、(ロ)アルカリとしては、NaOH、KOH、NHなどが挙げられる。(ハ)塩類としては、2族から14族原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンとハロゲン原子又は無機酸若しくは有機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンとからなる化合物が好ましい。
更に好ましいものは、Li、Mg、Ca、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mn、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Ge又はSn由来のイオンを陽イオンとするもの、Cl、SO、NO、OH、C及びPO由来のイオンを陰イオンとするものである。(ニ)有機物としては、アルコール(炭素数1~4の脂肪族アルコール、好ましくは例えばメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、炭素数6~8の芳香族アルコール、好ましくは例えばフェノール)、高級炭化水素(炭素数5~10、好ましくは5~8のもの、好ましくは例えばヘキサン、ヘプタンなど)が挙げられる。また、ホルムアミド、ヒドラジン、ジメチルスルホキシド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアニリンなどが好ましく挙げられる。塩類及び酸は、2種以上であってもよい。
【0075】
塩類処理と酸処理を組み合わせる場合においては、塩類処理を行った後、酸処理を行う方法、酸処理を行った後、塩類処理を行う方法、及び塩類処理と酸処理を同時に行う方法がある。塩類及び酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類及び酸濃度は、0.1質量%~50質量%、処理温度は室温~沸点、処理時間は、5分~24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類及び酸は、トルエン、n-ヘプタン、エタノールなどの有機溶媒中で、又は塩類、酸が処理温度において液体状であれば、無溶媒で用いることもできるが、好ましくは水溶液として用いられる。
【0076】
本発明に用いられる成分(B)は、粉砕、造粒、分粒、分別などによって粒子性状を制御することができる。その方法は触媒性能を阻害しない限り任意のものであり得る。
特に造粒法について示せば、例えば噴霧造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、ブリケッティング法、コンパクティング法、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法及び液中造粒法などが挙げられる。特に好ましい造粒法は、上記の内、噴霧造粒法と転動造粒法及び圧縮造粒法である。
【0077】
前記成分(B)は(b-2)イオン交換性層状化合物であることが好ましい。
【0078】
[成分(C)]
本発明のオレフィン重合用触媒は、更に、下記成分(C)を含んでもよい。
成分(C) : 有機アルミニウム化合物
有機アルミニウム化合物は、前記成分(A)として遷移金属化合物のハロゲン化物を用いた場合の炭化水素化剤として働くと共に、系内に導入される溶媒やモノマーに同伴される不純物に対して、スカベンジャーとして働く化合物である点から、少なくとも1つの炭化水素基がアルミニウムに直接結合している化合物を使用することが好ましい。
好ましい有機アルミニウム化合物としては例えば、次の一般式で示される化合物が挙げられる。
AlR81 3-j ・・・(5)
(式中、R81は炭素数1~20の炭化水素基、Xは水素原子、ハロゲン原子、又はアルコキシ基、jは0<j≦3の数を示す。)
【0079】
81は、炭素数1~20の炭化水素基であるが、好ましくは1~12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
中でも、良好な助触媒である点から、前記一般式(5)で表される有機アルミニウム化合物において、jは3であり、一般式(5’):Al(R81(式中、R41は、炭素数1~20の炭化水素基である。)ことが好ましい。
【0080】
具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジオクチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムモノハライド、ジエチルアルミニウムメトキシドなどのジアルキルアルミニウムモノアルコキシドが好ましく用いられる。中で、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムモノハライドが更に好ましく、トリアルキルアルミニウムが特に好ましい。
【0081】
上記の有機アルミニウム化合物は2種以上併用してもよい。また、上記のアルミニウム化合物をアルコール、フェノールなどで変性して用いてもよい。これらの変性剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、フェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノールなどが例示され、好ましい具体例は、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノールである。
【0082】
[各成分の含有量]
成分(A)の含有量は、成分(B)1g当たり、0.001mmol~100mmolが好ましく、0.005mmol~1mmolがより好ましく、0.01mmol~0.1mmolが更に好ましい。
成分(C)を含有する場合の含有量は、成分(B)1g当たり、0.01mmol~10,000mmolが好ましく、0.1mmol~500mmolがより好ましい。
成分(A)中の遷移金属原子と成分(C)中のアルミニウム原子のモル比((成分(A)中の遷移金属原子(mol):成分(C)中のアルミニウム原子(mol))は1:0.01~1:100,000が好ましく、1:0.1~1:30,000がより好ましく、1:1~1:1,000が更に好ましく、1:2~1:500がより更に好ましく、1:2~1:100が特に好ましい。
【0083】
本発明に用いられる触媒は、前記成分(A)および成分(B)を含む担持触媒を製造することができれば、その製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法を適宜選択して用いることができる。
また、前記成分(A)、及び成分(B)を混合して製造する触媒をオレフィン重合用(本重合)の触媒として使用する前に、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどのオレフィンを予備的に少量重合する(予備重合)ことができる。予備重合は、特に重合初期に見られる反応熱の除熱不良による塊生成やファウリングを防止する等の効果があることが知られている。また、重合反応条件とは独立に反応温度や反応時間を制御することが可能であることなどから、活性点の形成を促進しつつ粒子破砕による微粉ポリマーの生成を防ぐ等の効果があるため好ましい。
【0084】
このエチレンなどによる予備的な重合は、その効果が失われない限りにおいて、触媒製造における全工程の、前、間、後、いずれにおいても実施可能であり、不活性溶媒中又は無溶媒中(或いは液状α-オレフィンを予備重合に使用する場合は該α-オレフィン中でもよい)、上記各成分の接触下、必要に応じて新たに前記成分(C)のような有機アルミニウムを追加して、エチレン、プロピレンなどを供し、触媒成分1g当たり0.01g~1,000g、好ましくは0.1g~100gの重合体が生成するように行うことが望ましい。予備重合温度は-100℃~100℃、好ましくは-60℃~100℃であり、予備重合時間は0.1時間~100時間、好ましくは0.1時間~20時間である。
【0085】
(2)プロピレン系樹脂(P1)を得る工程
プロピレン系樹脂(P1)は、前記担持されたメタロセン触媒の存在下、プロピレンを単独重合又は共重合することにより、得ることができる。
プロピレンを共重合する際のコモノマーとしては、エチレン、炭素数4~20の非環状及び環状オレフィン、並びに(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0086】
上記の非環状オレフィンとしては、炭素数4~12のα-オレフィンがより好ましく、例えば、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、2-メチル-1-ヘキセン、2,3-ジメチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ペンテン、1-オクテン、2-エチル-1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ヘキセン、2-プロピル-1-ヘプテン、2-メチル-3-エチル-1-ヘプテン、2,3,4-トリメチル-1-ペンテン、2-プロピル-1-ペンテン、2,3-ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等が挙げられる。特に共重合性の観点から、好ましくは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンであり、より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセンである。
【0087】
上記の環状オレフィンとしては、炭素数4~12の環状オレフィンがより好ましく、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等が挙げられる。
【0088】
上記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、一般式:CH=C(R91)CO(R92)で表される。ここで、R91は、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。R92は、炭素数1~30の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。さらに、R92内の任意の位置にヘテロ原子を含有していてもよい。
91の炭素数が11以上であると、十分な重合活性が発現しない傾向がある。したがって、R91は、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基であるが、好ましい(メタ)アクリル酸エステルとしては、R91が水素原子または炭素数1~5の炭化水素基であるものが挙げられる。より好ましい(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、R91がメチル基であるメタクリル酸エステルまたはR91が水素原子であるアクリル酸エステルが挙げられる。同様に、R92の炭素数が30を超えると、重合活性が低下する傾向がある。よって、R92の炭素数は1~30であるが、R92は、好ましくは炭素数1~12であり、さらに好ましくは炭素数1~8である。
また、R92内に含まれていてもよいヘテロ原子としては、酸素、硫黄、セレン、リン、窒素、ケイ素、フッ素、ホウ素等が挙げられる。これらのヘテロ原子のうち、酸素、ケイ素、フッ素が好ましく、酸素が更に好ましい。また、R92は、ヘテロ原子を含まないものも好ましい。
【0089】
さらに好ましい(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸-2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。なお、単独の(メタ)アクリル酸エステルを使用してもよいし、複数の(メタ)アクリル酸エステルを併用してもよい。
【0090】
前記プロピレン系樹脂(P1)としては、プロピレン単独重合体またはコモノマー含量10質量%以下のプロピレン共重合体であることが好ましい。
【0091】
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサンなどの不活性炭化水素や単量体である液化オレフィンなどの溶媒存在下、或いは実質的に溶媒や単量体の液相が存在しない状態で気相重合により行うのが好ましい。気相重合は、例えば流動床、撹拌床、撹拌・混合機を備えた撹拌流動床などの反応装置を用いて行うことができる。
【0092】
重合温度、重合圧力などの条件は特に限定されないが、重合温度は、一般に-50℃~250℃、好ましくは0℃~100℃であり、また、重合圧力は通常、常圧~約2,000kgf/cm、好ましくは常圧~200kgf/cm、更に好ましくは常圧~50kgf/cmの範囲である。また、重合系内に水素を存在させてもよい。水素は重合体の分子量を調節する作用の他、触媒活性を向上させる効果を持つこともあり、重合系に水素を添加、共存させることは好ましい実施形態の一つである。
【0093】
2.チーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)
本発明において、チーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)は、チーグラーナッタ触媒を用いて得られたプロピレン系樹脂であれば、特に限定されず用いることができる。
チーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)としては、結晶性プロピレン系樹脂であり、アイソタクティックないしはシンジオタクティックおよび種々の程度の立体規則性を示すプロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、またはプロピレンを主成分とし、これとエチレンや炭素数4以上のα-オレフィンとを共重合させた共重合体を使用することができる。この共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
前記プロピレン系樹脂(P2)としても、プロピレン単独重合体またはコモノマー含量10質量%以下のプロピレン共重合体であることが好ましい。
共重合する際に用いるモノマー混合物におけるプロピレンの含有量は90質量%以上であり、90~99質量%が好ましく、93~98質量%であることがより好ましい。共重合する際に炭素数4以上のα-オレフィンを用いる場合、その炭素数は4~20であることが好ましく、4~12であることがより好ましい。結晶性プロピレン系樹脂を提供するためのモノマー混合物には、プロピレン以外のモノマーが複数種含まれていてもよい。
【0094】
本発明で用いるチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)の物性に関して、例えば融点は、100℃~170℃であってよく、120~168℃であってよく、140~165℃であってよい。
【0095】
本発明で用いるチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)の物性に関して、例えば、MFRは、0.01g/10分~10,000g/10分の範囲内であってよく、0.1g/10分~1,000g/10分の範囲内であってもよい。
プロピレン系樹脂(P2)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限されないが、5以下であってよく、3以下であってよい。
プロピレン系樹脂(P2)の非晶成分としての40℃可溶分(質量%)は、用途によって好ましい範囲が異なるのが一般的である。例えば、一般射出用途などの硬い成形体が好まれる用途においては、ポリプロピレンの場合、40℃可溶分の上限値が1.4質量%以下であってよい。
【0096】
チーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)は、従来公知の製造方法で製造することができ、例えば、特開2009-73890公報、特開2019-26751公報、特開2008-88347公報等を参照することができる。
また、チーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)としては、市販品を適宜選択して用いてもよく、例えば、日本ポリプロ(株)製のノバテックPP FW4BT(商品名)やノバテックPP FY4(商品名)などを挙げることができる。
【0097】
[プロピレン系樹脂(X)]
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(X)は、担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)を50質量%~99質量%およびチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)を1質量%~50質量%含む。
プロピレン系樹脂(P1)とプロピレン系樹脂(P2)の含有割合は、用途に応じて、適宜選択されればよく、特に限定されない。
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(X)は、結晶構造形成の点からは、担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)を55質量%~85質量%およびチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)を15質量%~45質量%含んでもよく、担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)を60質量%~80質量%およびチーグラー触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)を20質量%~40質量%含んでもよい。
【0098】
プロピレン系樹脂(P1)とプロピレン系樹脂(P2)を混合する方法としては、プロピレン系樹脂(P1)とプロピレン系樹脂(P2)がペレット又は粉体で個別に供給されてペレット及び/又は粉体の混合物として得てもよいし、プロピレン系樹脂(P1)とプロピレン系樹脂(P2)とを混錬して、ペレット化して得てもよい。
【0099】
本発明の成形体の製造に用いられるプロピレン系樹脂(X)には、性能をより高めるために、あるいは他の性能を付与するために、本発明の機能を損なわない範囲内で添加剤を配合することもできる。
この付加的成分としては、ポリオレフィン樹脂用配合剤として汎用されるフェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌剤、防黴剤、蛍光増白剤、着色剤といった各種添加剤を加えることができる。これら添加剤の配合量は、一般に組成物100質量%に対して0.0001質量%~3質量%、好ましくは0.001質量%~1質量%である。
【0100】
II.プロピレン系樹脂成形体を得る工程
本発明の製造方法は、前記プロピレン系樹脂(X)の融点以上の温度で加熱することにより溶融プロピレン系樹脂とし、溶融プロピレン系樹脂を溶融状態のプロピレン系樹脂成形体に成形し、当該溶融状態のプロピレン系樹脂成形体を冷却速度80℃/秒以上で冷却することによりプロピレン系樹脂成形体を得る工程を含むことを特徴とする。
当該工程によって、ブレンド材でありながら、単一の工程により、球晶の生成が抑制されて透明性が良好であり、かつ良好な剛性が維持されて、熱安定性の高いα晶を有するプロピレン系樹脂成形体(樹脂シート)を製造することができる。
【0101】
1.溶融プロピレン系樹脂とする工程
前記工程で得られた前記プロピレン系樹脂(X)を溶融させ、溶融プロピレン系樹脂とする工程においては、使用するプロピレン系樹脂(X)の融点、すなわち、プロピレン系樹脂(X)に含まれる前記プロピレン系樹脂(P1)の融点およびプロピレン系樹脂(P2)の融点のいずれか高い融点以上の温度に加熱を行う必要がある。
なお、溶融プロピレン系樹脂とは、少なくともプロピレン系樹脂(X)を融点以上の温度に加熱し非晶化させた状態のプロピレン系樹脂をいう。
溶融させるために加熱する温度は、使用するプロピレン系樹脂(X)の融点以上かつ120~350℃の温度で行うことが可能であり、樹脂のMFRや量によって任意に変更する事が可能である。加熱する温度が350℃を超えるとプロピレン系樹脂が分解する恐れがあり、また、120℃以下ではプロピレン系樹脂が十分に溶融しない恐れがある。加熱する温度は、中でも、120℃以上300℃以下であることが好ましく、160℃以上300℃以下が好ましく、180℃以上280℃以下がより好ましく、190℃以上250℃以下がさらに好ましい。
【0102】
また、プロピレン系樹脂(X)を溶融させる工程はプロピレン系樹脂(X)が十分に溶融するまで行う必要があり、溶融させるための加熱時間は、10秒~1時間の範囲で選ぶ事が出来る。時間が短すぎるとプロピレン系樹脂が十分に溶融しない恐れがあり、また、時間が長すぎるとプロピレン系樹脂が分解してしまう恐れがある。加熱時間は15秒以上45分未満が好ましく、30秒以上30分未満がより好ましく、1分以上20分未満がさらに好ましく、1分以上10分未満がよりさらに好ましい。
【0103】
2.溶融プロピレン系樹脂を溶融状態のプロピレン系樹脂成形体に成形する工程
溶融したプロピレン系樹脂を溶融状態のプロピレン系樹脂膜等の溶融状態のプロピレン系樹脂成形体に成形する方法としては、押出成形、熱プレス成形等が挙げられる。中でも、流動結晶化が起こり難い、熱プレス成形を用いることが好ましい。熱プレス成形は、従来技術の押出成形のように剪断応力がかからず、流動結晶化が起こり難く、分子の配向が残留し難いため、球晶あるいはラメラ構造の集合体など大きな結晶構造体が含まれ難くなる。
【0104】
熱プレス成形に用いられるプレス装置としては、大きさや種類は適宜選択されればよく、特に限定されるものではない。プレス装置としては、例えば、東洋精機(株)製プレス装置mini TESTPRESS-10が挙げられるが、アズワン社製小型熱プレス機AH2001の様に小型なプレス装置から1000トンの圧力をかけることが可能な超大型プレス機も使用可能である。このようなプレス装置は、通常、圧力をかけずに樹脂を加熱することが可能であり、前記プロピレン系樹脂を溶融させる工程を行うことができる。
【0105】
例えば、圧力をかけ溶融状態のプロピレン系樹脂膜を得る場合においては、十分に加圧を行い溶融状態のプロピレン系樹脂をシート状に薄く広げる必要がある。プロピレン系樹脂が溶融している状態で行う必要があるので、加圧時の温度は、プロピレン系樹脂を溶融させる温度と同じ温度範囲で任意に選ぶことが可能である。溶融状態のプロピレン系樹脂に圧力をかける際に、圧力が大きすぎると樹脂膜が薄くなりすぎて破損する恐れがあり、圧力が小さすぎると所望の厚みの膜を得られない恐れがある。
加圧時の圧力は、0.001~100,000MPaまでの範囲で任意に選択する事が可能であるが、0.01~1,000MPaであることが好ましく、0.1~100MPaであることがより好ましく、0.5~50MPaであることがさらに好ましく、1~40MPaであることがよりさらに好ましい。また、加圧時間は長すぎると樹脂が劣化する恐れがあり、短すぎると溶融樹脂が十分に押し広げられない恐れがある。加圧時間は、1秒以上60分未満が好ましく、10秒以上30分未満がより好ましく、30秒以上20分未満がさらに好ましく、1分以上10分未満がよりさらに好ましい。
溶融状態のプロピレン系樹脂膜の厚みとしては、特に限定されないが、均一に冷却しやすい点から、2mm以下であってよく、1mm以下であってよい。
【0106】
3.冷却することによりプロピレン系樹脂成形体を得る工程
続いて、前記溶融状態のプロピレン系樹脂成形体を冷却速度80℃/秒以上で冷却することによりプロピレン系樹脂成形体を得る。
本発明においては、前記溶融プロピレン系樹脂を冷却速度80℃/秒以上で急冷することにより、球晶が抑制されたα晶を含む固体状態のプロピレン系樹脂成形体を得ることができる。
なお、本発明において冷却速度とは、溶融プロピレン系樹脂が結晶化するまでの冷却速度(℃/秒)をいい、[冷却速度(℃/秒)=(冷却前の溶融状態のプロピレン樹脂成形体の温度-当該プロピレン系樹脂の結晶化温度)÷当該プロピレン系樹脂の結晶化温度に達するまでにかかった時間(秒)]により求めることができる。
冷却速度は80℃/秒以上であればよいが、100℃/秒以上であってよく、110℃/秒以上であってよく、120℃/秒以上であってもよい。冷却速度の上限は特に限定されないが、装置の上限の観点から、4000℃/秒以下であってよい。
【0107】
冷却温度は、-200℃以上20℃以下にすることが好ましく、-50℃以上10℃以下にすることがより好ましい。冷却時間は、適宜選択されればよいが、0.1秒以上300秒以下にすることが好ましく、1秒以上120秒以下にすることがより好ましい。
【0108】
溶融状態のプロピレン系樹脂成形体を80℃/秒以上で冷却して固体状態にすることができれば冷却手段は特に限定されない。冷却手段としては、例えば所定の温度以下に冷却した金属ベルトと金属ロールの間に挿入されて冷却されるような金属接触冷却、流水冷却(流水が循環式も含む)、氷水浴のような液体に浸漬する冷却手段が挙げられる。
例えば、溶融状態のプロピレン系樹脂膜を加熱プレス装置から取り出し、冷却プレス装置を使用してもよいし、液体に浸漬してもよい。
液体に浸漬する場合の液体としては、固体を含んでいてもよく、それらの種類は特に限定されない。例えば、水、エタノール等の有機溶媒、液体窒素、ドライアイスや氷、あるいはそれらの混合物が挙げられる。
溶融状態のプロピレン系樹脂膜を急冷する方法としては、中でも、冷却速度を高くし試料全体を均一に素早く冷却できる点から、液体に浸漬する方法が好ましく、例えば氷水に浸漬する方法が好適に挙げられる。
【0109】
また、当該工程で得られるα晶を含むプロピレン系樹脂成形体は、10μm以上のような大きさの球晶を含まないものであることが好ましい。このような球晶を含まないことは、光学顕微鏡や電子顕微鏡によって確認することができる。
【0110】
本発明の製造方法で得られるプロピレン系樹脂成形体は、プロピレン系樹脂シートであってよい。
本発明の製造方法で得られるプロピレン系樹脂シートの厚みは特に限定されるものではないが、シートの加工性、取り扱いやすさの点から厚み1mm以下のシートであることが好ましく、更に厚み0.5mm以下のシートであることがより好ましい。
【0111】
3.プロピレン系樹脂シートの特性
本発明の製造方法で得られるプロピレン系樹脂シートは、透明であり、かつ十分な剛性を有し、熱安定性の高いα晶を有するプロピレン系樹脂シートとなる。
【0112】
α晶を有するプロピレン系樹脂シートは、回折角(2θ)が10度~28度の範囲でのX線回折測定において、14.1度付近、16.7度付近、18.5度付近および21.4度付近の4つのシャープな回折ピークを有する。本発明の製造方法で得られるプロピレン系樹脂シートは、結晶形態がα晶に由来するプロファイルを有し、回折角が13.5度~14.5度の範囲にピークが現れる。
なお、X線回折測定は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0113】
また、本発明の製造方法で得られるプロピレン系樹脂シートは、球晶が抑制されて良好な透明性を有する。本発明の製造方法で得られるプロピレン系樹脂シートは、ヘイズが厚さ寸法0.1mm以上0.55mm以下の場合で20%以下、厚さ寸法0.1mm以上0.45mm以下の場合で17%以下、厚さ寸法0.1mm以上0.35mm以下の場合で15%以下の高い透明性を得ることができる。
なお、ヘイズは、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0114】
また、本発明の製造方法で得られるプロピレン系樹脂シートは、良好な剛性を有する。本発明の製造方法で得られるプロピレン系樹脂シートは、引張弾性率が700MPa以上であることが好ましく、720MPa以上であることがより好ましく、750MPa以上であることがさらに好ましい。
なお、引張弾性率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0115】
4.プロピレン系樹脂シートの用途
本発明で製造されるプロピレン系樹脂シートは透明であり、かつ高剛性で熱安定性の高いα晶を有するので、例えば、医療用バッグ、シリンジ、加飾用フィルム、加熱用ラップフィルム、ガラス面の保護フィルム等に好適に用いることができる。
【実施例0116】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[評価法]
【0117】
1.プロピレン系樹脂の結晶化温度の測定
TAインスツルメント社製DSC、Q2000を用いて測定した。サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、-10℃まで10℃/分の降温速度で冷却させ、その後、-10℃で5分間保持した後、200℃まで10℃/分昇温速度で加熱した。降温時に得られた結晶化曲線のピークトップ温度を結晶化温度とし、昇温時における融解曲線のピークトップ温度を融点とした。
【0118】
2.溶融状態のプロピレン系樹脂成形体の冷却速度
本願実施例のプロピレン系樹脂成形体の温度は、横河計測社製デジタル温度計(TX10-01)に付属の測定用K熱電対を取り付け、その先端をプレス型内樹脂充填部位に貼り付けることにより測定した。あらかじめ求めておいたプロピレン系樹脂の結晶化温度を用いて、溶融状態のプロピレン系樹脂成形体の冷却速度を以下の式から算出した。
[冷却前の溶融状態のプロピレン系樹脂成形体の温度-当該プロピレン系樹脂の結晶化温度]÷当該プロピレン系樹脂の結晶化温度に達するまでにかかった時間(秒)
なお、プロピレン系樹脂(X)の結晶化温度は、プロピレン系樹脂(P1)及びプロピレン系樹脂(P2)の結晶化温度のうち、より高温の結晶化温度をプロピレン系樹脂(X)の結晶化温度とした。
【0119】
3.成形体の厚み
成形体の厚みは、直進式デジマチックミクロンマイクロメーター(株式会社ミツトヨ製OMV-25MX)を用いて測定した。
【0120】
4.透明性(HAZE)
ASTM D1003に準拠し、各実験例から得られた成形体の透明性を日本電飾工業製ヘイズメータNDH 7000SPで測定した。得られた値が小さいほど、透明性に優れるものと評価した(単位:%)。
【0121】
5.剛性(引張弾性率、TM)
各実験例から得られた厚さ約0.1mmのポリプロピレン系樹脂を10mm×60mmの短冊状にカットし、島津社製引張試験機AG-X plusにてチャック間距離40mmにて1mm/分の速度で試料を延伸し、ひずみが0.05%から0.25%における応力とひずみの関係より引張弾性率を算出した。
【0122】
6.プロピレン系樹脂および成形体の結晶系の評価(成形体の熱安定性評価)
プロピレン系樹脂の結晶相はX線回折を用いて確認した。測定は以下の装置及び条件で行った。測定サンプルは、各実験例の成形体から40mm×20mmのサイズを切り出して使用した。
<X線回折測定>
装置:リガク製SmartLab
線源:Cu-kα 50kV,40mA
測定範囲:2θ=5度~40度
検出間隔:2θ=0.1度
【0123】
α晶に由来する回折プロファイルとは、回折角(2θ)が10度~28度の範囲でのX線回折測定において観測される、14.1度付近、16.7度付近、18.5度付近および21.4度付近の4つのシャープな回折ピークからなるものである。スメクチック晶に由来する回折プロファイルとは、14.6度付近と21.2度付近の2つのブロードなピークからなるものである。また、非晶に由来する回折プロファイルとは18.5度付近の1つのブロードなピークである。ポリプロピレン系樹脂の結晶形態がα晶かスメクチック晶に由来するプロファイルであるかは、回折角が13.5度~14.5度の範囲にピークが現れるか否かで判定し、この範囲にピークを有するプロピレン系樹脂をα晶、ピークを有さないプロピレン系樹脂をスメクチック晶と判断した。
【0124】
成形体の熱安定性の評価基準は、以下とした。
◎:α晶
○:混晶(α晶とスメクチック晶)
×:スメクチック晶
【0125】
7.透明性と物性のバランス
評価基準は以下とした。
○:透明性(HAZE)が15%以下で、且つ、剛性(引張弾性率、TM)が700MPa以上である。
×:透明性(HAZE)が15%超過、および/または、剛性(引張弾性率、TM)が700MPa未満である。
【0126】
[製造例1]
1.イオン交換性層状化合物の調製
(i)イオン交換性層状化合物として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)の造粒品(メジアン径33.0μm)を準備した。
(ii)イオン交換性層状化合物の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水585gを投入し、96%硫酸75gを滴下した。当該フラスコを内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。内温が95℃に到達したところで、上記(i)のイオン交換性層状化合物90gを当該フラスコに添加し、95℃を保ちながら混合物を505分反応させた。
この反応溶液を900mlの蒸留水に注ぐことで反応を停止し、得られたスラリーを吸引濾過後、固体分を450mlの蒸留水で洗浄した。
(iii)イオン交換性層状化合物の化学処理(2)
上記(ii)の固体分268.6gと蒸留水357.6gを1Lフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を22.1g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーのpHは、5.50であった。
反応スラリーを900mlの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を900mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、化学処理されたイオン交換性層状化合物59.9gを得た。
【0127】
2.遷移金属化合物の調製
特開2022-51551を参照することにより、(r)-シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリドを調製した。
【0128】
3.オレフィン重合用触媒、及び予備重合触媒の製造
内容積1000mLのフラスコに上記1(iii)で得たイオン交換性層状化合物10.0g、ヘプタン66mlを加え撹拌した。そこへトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液34ml(24.5mmol-Al)を加え、室温で1時間撹拌した。
その後、得られたスラリーをヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を50mLに調製した。ここへトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液31mL(12.2mmol)を加え、イオン交換性層状化合物スラリーを得た。
別のフラスコ(容積200mL)中で、(r)-シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド287μmolとトルエン30mLを混合した溶液を調製した。当該触媒溶液を、イオン交換性層状化合物スラリーに添加し、当該スラリーを40℃で60分間撹拌して反応させた。
上記反応後、当該スラリーにヘプタンを加え全量を300mLに調整した。当該スラリーを、充分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに移送した。
スラリーの温度を40℃とし、プロピレンを10g/時間の速度で2時間供給した。
プロピレンの供給を停止した後、圧力が0.025MPaGとなるまでプロピレンの重合反応を行った。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。
回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残留した固体成分に、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液8.5mL(6mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥して、オレフィン重合用の固体触媒(予備重合触媒)を得た。
予備重合倍率(予備重合触媒収量÷(イオン交換性層状化合物+メタロセン錯体量)-1)は2.36g/g-触媒であった
【0129】
4.プロピレンホモ重合
窒素流通加熱乾燥後、冷却した内容積3Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した後に、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液5.6mL(4.04mmol)を加え、水素330mL、液体プロピレン750mLを導入し、65℃に昇温した。
上記3.で得られた予備重合触媒をヘプタンにスラリー化し、固体触媒として(イオン交換性層状化合物量とメタロセン錯体量の和)11.5mgを圧入し、重合を開始した。
65℃で1時間重合した後、エタノール5mLを加え重合反応を停止させた。残存したプロピレンをパージ後、ポリマーを回収し、90℃で1時間窒素流通乾燥することにより、プロピレン系樹脂1を得た。プロピレン系樹脂1の物性は、表1にまとめた。
【0130】
[製造例2]
製造例1において、4.プロピレンホモ重合時の水素量を400mLとした以外は製造例1と同様に重合を行って、プロピレン系樹脂2を得た。プロピレン系樹脂2の物性は、表1にまとめた。
【0131】
[製造例3]
製造例1において、4.プロピレンホモ重合時の水素量を550mLとした以外は製造例1と同様に重合を行って,プロピレン系樹脂3を得た。プロピレン系樹脂3の物性は、表1にまとめた。
【0132】
[製造例4]
製造例1において、4.プロピレンホモ重合時の水素量を570mLとした以外は製造例1と同様に重合を行って,プロピレン系樹脂4を得た。プロピレン系樹脂4の物性は、表1にまとめた。
【0133】
[製造例5]
製造例1において、4.プロピレンホモ重合時の水素量を590mLとした以外と製造例1と同様に重合を行って,プロピレン系樹脂5を得た。プロピレン系樹脂5の物性は、表1にまとめた。
【0134】
以下のように、チーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)として、プロピレン系樹脂P2-1及びプロピレン系樹脂P2-2を準備した。
[プロピレン系樹脂P2-1]
日本ポリプロ株式会社製のホモポリプロピレンで、グレード名はFY4。
[プロピレン系樹脂P2-2]
日本ポリプロ株式会社製のホモポリプロピレンで、グレード名はFY6。
【0135】
【表1】
【0136】
[実施例1]
1.プロピレン系樹脂(X)の調製
200℃に設定したオランダDSM社製卓上型小型混練機Xploreに、合計が10gになる様、プロピレン系樹脂(P1)としてプロピレン系樹脂P1-1を8g(80質量%)と、プロピレン系樹脂(P2)としてプロピレン系樹脂P2-1を2g(20質量%)とを投入した。その後、回転速度100rpmで1分間混練することによりブレンドのプロピレン系樹脂X1のペレットを作製した。
【0137】
2.プロピレン系樹脂成形体の製造
縦120mm,横120mm,厚さ0.1mmのプレス型に上記で得られたプロピレン系樹脂X1を1.44g置き、上下それぞれ厚さ0.05mmのPETフィルム、厚さ0.1mmのアルミフィルム、鏡面加工した厚さ3mmのステンレスプレス板の順に挟んだ。また、横河計測社製デジタル温度計(TX10-01,以下温度計という。)に付属の測定用K熱電対を取り付け、その先端をプレス型内樹脂充填部位に貼り付けることにより、プロピレン系樹脂X1の温度を測定した。前記プレス板で挟んだプロピレン系樹脂X1を、210℃に設定した熱プレス機(東洋精機製MP-20)を用いて、加圧せず3分加熱した。その後、前記プレス板で挟んだプロピレン系樹脂X1を、10MPaまで加圧し、1分間プレスした。このとき、温度計は210℃を示していた。1分後、脱圧しプレス板を除いた、アルミとPETに挟まれたままの溶融状態のプロピレン系樹脂成形体をただちに0℃の氷水浴に投入した。210℃から結晶化温度(119℃)までの到達時間は0.73秒であったから、冷却速度は125℃/秒であった。以上の手順により、厚さ0.1mmのプロピレン系樹脂成形体1を製造した。得られた成形体について、結晶系、透明性および剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。また、X線回折測定結果を図1に示す。
【0138】
[実施例2]
実施例1において、プロピレン系樹脂X1の替わりに、表2に示すプロピレン系樹脂X2を使用した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体2を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0139】
[実施例3]
実施例1において、プロピレン系樹脂X1の替わりに、表2に示すプロピレン系樹脂X3を使用した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体3を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0140】
[実施例4]
実施例1において、プロピレン系樹脂X1の替わりに、表2に示すプロピレン系樹脂X4を使用した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体4を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0141】
[実施例5]
実施例1において、プロピレン系樹脂X1の替わりに、表2に示すプロピレン系樹脂X5を使用した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体5を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0142】
[実施例6]
実施例1において、プロピレン系樹脂X1の替わりに、表2に示すプロピレン系樹脂X6を使用した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体6を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0143】
[実施例7]
実施例1において、プロピレン系樹脂X1の替わりに、表2に示すプロピレン系樹脂X7を使用した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体7を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0144】
[実施例8]
実施例1において、プロピレン系樹脂X1の替わりに、表2に示すプロピレン系樹脂X8を使用した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体8を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0145】
[実施例9]
実施例1において、プロピレン系樹脂X1の替わりに、表2に示すプロピレン系樹脂X9を使用した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体9を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0146】
[比較例1]
実施例1において、加圧加熱後に上水を用いた冷却プレス(東洋精機製MP-20)にて10MPa、結晶化温度到達後も冷却を継続し、総冷却時間3分冷却した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体C1を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。また、X線回折測定結果を図1に示す。
【0147】
[比較例2~9]
実施例2~9において、加圧加熱後に上水を用いた冷却プレス(東洋精機製MP-20)にて10MPa、3分冷却した以外は、実施例2~9と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体C2~C9を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0148】
[比較例10]
実施例1において、プロピレン系樹脂X1の替わりに、表2に示すプロピレン系樹脂P2-1のみを使用した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体C10を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。また、X線回折測定結果を図1に示す。
【0149】
[比較例11]
実施例1において、プロピレン系樹脂X1の替わりに、表2に示すプロピレン系樹脂P2-2のみを使用した以外は、実施例1と同様に行って、プロピレン系樹脂成形体C11を製造した。得られた成形体について、透明性と剛性の評価を行い、結果を表2にまとめた。
【0150】
【表2】
【0151】
(結果のまとめ)
担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)とチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)とを混合したブレンド材のプロピレン系樹脂(X)を、従来の製造方法により製造した比較例1~9のプロピレン系樹脂成形体(樹脂シート)は、結晶系がα晶となり、剛性は良好であったものの、球晶が生成されており、透明性が劣るものであった。
また、従来のチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂のみを用いて、実施例と同様に溶融プロピレン系樹脂を冷却速度80℃/秒以上で冷却することにより製造した比較例10~11のプロピレン系樹脂成形体(樹脂シート)は、結晶系がスメクチック晶となり、透明性は良好であったものの剛性が劣るものであった。結晶系がスメクチック晶である場合、熱安定性が低く、加熱でα晶に転移して物性が変わってしまう点にも問題がある。
それに対して、実施例1~9により、本発明のプロピレン系樹脂成形体の製造方法によれば、担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)とチーグラーナッタ触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)とを混合したブレンド材のプロピレン系樹脂(X)を用いて、単一の工程により、球晶の生成が抑制されて透明性が良好であり、かつ良好な剛性が維持されて、熱安定性の高いα晶を有するプロピレン系樹脂成形体(樹脂シート)を製造することができることが明らかにされた。本発明のプロピレン系樹脂成形体の製造方法は、特許文献1の透明性の高いスメクチックフィルムを作製した後、安定なα晶に転移させるために熱処理も行う製法に比べて、省エネルギーを達成でき、経済的な製造方法である。また、本発明のプロピレン系樹脂成形体の製造方法は、担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)とチーグラー触媒から得られたプロピレン系樹脂(P2)とを混合したブレンド材のプロピレン系樹脂(X)を用いることから、担持されたメタロセン触媒から得られたプロピレン系樹脂(P1)のみを用いた場合に比べて、成形加工性が向上し、エネルギーコストも向上する。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明によれば、ブレンド材のプロピレン系樹脂を用いても、透明性が高く、且つ十分な剛性を維持したプロピレン系樹脂成形体乃至樹脂シートを良好なエネルギーコストで製造することができる。本発明のプロピレン系樹脂成形体乃至樹脂シートの製造方法は、前記のような特性を活かせる分野への応用に有用であり、産業上、利用可能性が高いものである。
図1