(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120403
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】局側装置、光通信ネットワーク、及び、帯域割当方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
H04L12/44 B
H04L12/44 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027173
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 将蔵
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA02
5K033CA12
5K033CB19
5K033DA15
5K033DB22
(57)【要約】
【課題】上り帯域割当パラメータの入力に対する実帯域反映までの時間を短縮する。
【解決手段】PON物理レイヤ機能部は、一定の周期ごとに、第1割込及び第2割込を上り帯域割当制御部に送る。上り帯域割当制御部は、第1割込を契機として、加入者側装置からPON物理レイヤ機能部が受け取った帯域割当要求情報を、PON物理レイヤ機能部から受け取る。そして、第2割込を契機として、局側装置の外部からPONプロトコル制御部が受け取った帯域割当パラメータを、PONプロトコル制御部から受け取り、帯域割当要求情報及び帯域割当パラメータに基づいて加入者側装置に対する帯域割当計算を行い、帯域割当計算の結果をPON物理レイヤ機能部に送る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの局側装置が、複数の加入者側装置に接続されて構成される光通信ネットワークで用いられる局側装置であって、
当該局側装置と前記加入者側装置との間の通信に用いられるハードウェア機能部であるPON物理レイヤ機能部と、
当該局側装置と前記加入者側装置との間の、論理リンク確立及び送受信の制御に用いられるソフトウェア機能部であるPONプロトコル制御部と、
前記加入者側装置から当該局側装置に向けて送られる上り信号の送信タイミングを決定するソフトウェア機能部である上り帯域割当制御部と
を備え、
前記PON物理レイヤ機能部は、一定の周期ごとに、第1割込及び第2割込を前記上り帯域割当制御部に送り、
前記上り帯域割当制御部は、
前記第1割込を契機として、前記加入者側装置から前記PON物理レイヤ機能部が受け取った帯域割当要求情報を受け取り、
前記第2割込を契機として、当該局側装置の外部から前記PONプロトコル制御部が受け取った帯域割当パラメータを受け取り、前記帯域割当要求情報及び前記帯域割当パラメータに基づいて前記加入者側装置に対する帯域割当計算を行って上り信号の送信タイミングを決定し、前記送信タイミングを前記PON物理レイヤ機能部に通知する
局側装置。
【請求項2】
1つの局側装置が、複数の加入者側装置に接続されて構成される光通信ネットワークであって、
前記局側装置が、
当該局側装置と前記加入者側装置との間の通信に用いられるハードウェア機能部であるPON物理レイヤ機能部と、
当該局側装置と前記加入者側装置との間の、論理リンク確立及び送受信の制御に用いられるソフトウェア機能部であるPONプロトコル制御部と、
前記加入者側装置から当該局側装置に向けて送られる上り信号の送信タイミングを決定するソフトウェア機能部である上り帯域割当制御部と
を備え、
前記PON物理レイヤ機能部は、一定の周期ごとに、第1割込及び第2割込を前記上り帯域割当制御部に送り、
前記上り帯域割当制御部は、
前記第1割込を契機として、前記加入者側装置から前記PON物理レイヤ機能部が受け取った帯域割当要求情報を受け取り、
前記第2割込を契機として、当該局側装置の外部から前記PONプロトコル制御部が受け取った帯域割当パラメータを受け取り、前記帯域割当要求情報及び前記帯域割当パラメータに基づいて前記加入者側装置に対する帯域割当計算を行って上り信号の送信タイミングを決定し、前記送信タイミングを前記PON物理レイヤ機能部に通知する
光通信ネットワーク。
【請求項3】
1つの局側装置が、複数の加入者側装置に接続されて構成される光通信ネットワークにおける帯域割当方法であって、
当該局側装置と前記加入者側装置との間の通信に用いられるハードウェア機能部であるPON物理レイヤ機能部と、
当該局側装置と前記加入者側装置との間の論理リンク確立及び送受信の制御に用いられるソフトウェア機能部であるPONプロトコル制御部と、
前記加入者側装置から当該局側装置に向けて送られる上り信号の送信タイミングを決定するソフトウェア機能部である上り帯域割当制御部と
を備える前記局側装置の前記上り帯域割当制御部で行われる、
前記PON物理レイヤ機能部から、第1割込を受け取る過程と、
第1割込の受け取りを契機として行われる、前記加入者側装置から前記PON物理レイヤ機能部が受け取った帯域割当要求情報を受け取る過程と、
前記PON物理レイヤ機能部から、第2割込を受け取る過程と、
第2割込の受け取りを契機として行われる、
当該局側装置の外部から前記PONプロトコル制御部が受け取った帯域割当パラメータを受け取る過程、
前記帯域割当要求情報及び前記帯域割当パラメータに基づいて前記加入者側装置に対する帯域割当計算を行って上り信号の送信タイミングを決定する過程、及び、
前記送信タイミングを前記PON物理レイヤ機能部に通知する過程とを
備える帯域割当方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、受動型光加入者ネットワーク(PON:Passive Optical Network)に用いられる局側装置、この局側装置を備える光通信ネットワーク、及び、この局側装置で行われる帯域割当方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光アクセス系ネットワークの一形態として、受動型光加入者ネットワーク(PON)がある。PONは、局内に設けられる1つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、複数の加入者宅内にそれぞれ設けられる加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、光スプリッタとを備えて構成される。OLT及び各ONUと、光スプリッタとは、光ファイバで接続される。
【0003】
OLTと光スプリッタの間の接続には、一芯の光ファイバが用いられる。この一芯の光ファイバは、複数のONUにより共有される。
【0004】
PONでは、各ONUからOLTに送られる通信信号(以下、上り信号と称することもある。)は、光スプリッタで合波されてOLTに送信される。一方、OLTから各ONUに送られる通信信号(以下、下り信号と称することもある。)は、光スプリッタで分波されて各ONUに送信される。
【0005】
PONで用いられる代表的な多重技術として、時間軸上の短い区間を各ONUに割り当てる時分割多重(TDM:Time Division Multiplex)技術がある。TDM技術を用いるPONでは、OLTがONUに対して上り信号の送信タイミングを通知することで、異なるONUからの上り信号同士が衝突しないように制御される。
【0006】
PONに収容される全てのONUの上り信号が衝突せずに、かつ、各ONUに収容されるユーザからの上り信号を効率よくOLTに送信するために、OLTには上り帯域割当アルゴリズムが実装される。この上り帯域割当アルゴリズムは、全てのONUの帯域割当計算を行い、上り信号の送信タイミングを決定する。上り帯域割当アルゴリズムの例として、動的帯域割当(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図5を参照して、一般的な上り帯域割当アルゴリズムを説明する。
図5は、一般的な上り帯域割当アルゴリズムの処理フローを示す図である。
【0008】
OLTは、例えば、PON物理レイヤ機能部(PON-HW)、PONプロトコル制御部(PON-FW)、及び、上り帯域割当制御部(DBA-FW)を備えて構成される。PON-HWは、OLTとONU間のフレーム同期や転送に代表される物理レイヤ機能を実現するハードウェア機能部である。PON-FWは、OLTとONU間の論理リンク確立とトラフィック導通を制御するソフトウェア機能部である。DBA-FWは、PONリンクが確立しているONUの論理リンクに対して、上りトラフィック送信タイミングを決定するソフトウェア機能部である。
【0009】
ステップ(S)320において、外部から入力される帯域割当パラメータの収集が行われる。S320は、PON-FWへの情報入力処理である。PON-FWへの情報入力処理は、インタフェースを経て行われるオペレータによる入力処理や、他装置からのインタフェースを経た受信などである。PON-FWへの情報入力処理により入力された帯域割当パラメータは、DBA-FWに送られる。
【0010】
次に、S340において、ONUから通知される帯域割当要求情報の収集が行われる。S340は、PON-HWから読み出された各ONUからの帯域割当要求情報を、DBA-FWが、PON-HWから受け取る処理である。
【0011】
次に、S360において、上り帯域割当アルゴリズムの演算処理が行われる。S360は、DBA-FWが、S320において受け取った帯域割当パラメータと、S340において受け取った帯域割当要求情報に基づいて、各ONUへの帯域割当計算を行う処理である(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
次に、S380において、DBA-FWは、ONUごとの上り帯域割当の帯域割当計算の演算結果に基づいて、上り送信タイミングを決定して、PON-HWに送る。PON-HWは、各ONUの送信タイミングを当該PON-HWに書き込む。この上り送信タイミングは、各ONUに通知される。
【0013】
この上り帯域割当アルゴリズムによる上り帯域割当処理は、一定の周期で実行され、PONにおける物理的な光波長帯域を上限とする帯域割当を実現する。この一定の帯域割当周期をDBA周期と呼ぶ。
【0014】
S380において、あるDBA周期(例えば、第k(kは整数)のDBA周期)で決定された上り帯域割当の演算結果は、当該PON-HWに書き込まれて、各ONUの送信タイミングが設定される。この設定された各ONUの送信タイミングは、次のDBA周期(例えば、第k+1のDBA周期)における送信タイミングに反映される。
【0015】
一般的なOLTでは、DBA-FWで行われるS320~S380の処理は、PON-HWからの割り込み入力(S310)を契機として行われる。なお、1DBA周期内にS320~S380の一連の処理を完了する必要がある。ここで、S320~S380の処理のうち、S340及びS380の処理は、情報入出力の対象となるデータ量が非常に多いため、DBA周期に占める処理時間の割合が非常に大きい。従って、収容されているONUの数、並びに、CPU処理性能、及び、ハードウェアのバス速度などのOLTの性能にも依存するが、S320及びS360の合計処理時間に対して、S340及びS380の処理時間は、桁違いに長くなる傾向がある。例えば、DBA周期1m秒内の処理時間の内訳として、S320及びS360の合計処理時間が数十μ秒で実現可能なところ、S340及びS380の処理時間は、それぞれ数百μ秒となる。
【0016】
PONの上り帯域は、DBA周期ごとに割当帯域を更新するPONシステムの方式上、外部からの帯域割当パラメータの入力から実帯域への反映までに、DBA周期に依存する割り当て遅延が発生する。DBA-FWに送られる帯域割当に用いられる情報としては、S320における外部からの帯域割当パラメータと、S340におけるONUからの帯域割当要求通知情報があるが、ここでは、オペレータによる入力や他装置からの受信により、帯域割当パラメータが入力されるタイミングに着目する。
【0017】
図6を参照して、外部からの帯域割当パラメータの入力から実帯域への反映までの時間を説明する。
図6は、帯域割当パラメータの入力から実帯域への反映までの時間を説明するための模式図である。
図6(A)は、外部からの帯域割当パラメータの入力が、第kのDBA周期の満了に近いタイミングでなされる例を示している。
図6(B)は、外部からの帯域割当パラメータの入力が、第kのDBA周期の開始に近いタイミングでなされる例を示している。
【0018】
例えば、
図6(A)に示すように、第kのDBA周期の満了に近いタイミングで、外部から帯域割当パラメータが入力された場合(
図6(A)中、Iで示す。)、第k+1のDBA周期のS320において、外部からの帯域割当要求は、DBA-FWに送られ、S340~S380の処理が行われて、各ONUに割当帯域が通知される。その結果、第k+2のDBA周期では、外部からの帯域割当要求を受けて決定された割当帯域で上り信号が送信される。この場合、帯域割当パラメータが上り信号の送信タイミングに反映されるまで、1DBA周期程度の時間を要する。
【0019】
また、
図6(B)に示すように、第k(kは1以上の整数)のDBA周期の開始に近いタイミングで、外部から帯域割当パラメータが入力された場合(
図6(B)中、IIで示す。)、第k+1のDBA周期のS320において、外部からの帯域割当パラメータが、DBA-FWに送られた後、S340~S380の処理が行われて、各ONUに送信タイミングが通知される。その結果、第k+2のDBA周期では、外部からの帯域割当パラメータの入力を受けて決定された送信タイミングで上り信号が送信される。この場合、入力された帯域割当パラメータが上り信号の送信タイミングに反映されるまで、2DBA周期に近い時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
図6を参照して説明した、上り帯域割当要求に対する実帯域反映までの時間は、トラフィック遅延に影響を与える要素である。このため、リアルタイム処理性能が要求されるアプリケーションのトラフィックにおいて、上り帯域割当要求に対する実帯域反映までの時間を短くすることは、PONにおいて解決されることが期待される課題である。実帯域反映までの時間を短くするために、しばしばDBA周期を極力小さくするアプローチが行われる。しかし、S340のPON物理レイヤ機能部からの読み出し、及び、S380のPON物理レイヤ機能部への書き込みがハードウェアアクセスとなり、この処理時間がボトルネックとなり、DBA周期を短くするには限度がある。
【0022】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、上り帯域割当パラメータの入力に対する実帯域反映までの時間を短縮するOLT、局側装置、この局側装置を備える光通信ネットワーク、及び、この局側装置で行われる帯域割当方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述した目的を達成するために、この発明の局側装置は、1つの局側装置が、複数の加入者側装置に接続されて構成される光通信ネットワークで用いられる局側装置であって、PON物理レイヤ機能部と、PONプロトコル制御部と、上り帯域割当制御部とを備えて構成される。PON物理レイヤ機能部は、局側装置と加入者側装置との間の通信に用いられるハードウェア機能部である。PONプロトコル制御部は、局側装置と加入者側装置との間の、論理リンク確立及び送受信の制御に用いられるソフトウェア機能部である。上り帯域割当制御部は、加入者側装置から局側装置に向けて送られる上り信号の送信タイミングを決定するソフトウェア機能部である。
【0024】
ここで、PON物理レイヤ機能部は、一定の周期ごとに、第1割込及び第2割込を上り帯域割当制御部に送る。上り帯域割当制御部は、第1割込を契機として、加入者側装置からPON物理レイヤ機能部が受け取った帯域割当要求情報を、PON物理レイヤ機能部から受け取る。そして、第2割込を契機として、局側装置の外部からPONプロトコル制御部が受け取った帯域割当パラメータを、PONプロトコル制御部から受け取り、帯域割当要求情報及び帯域割当パラメータに基づいて加入者側装置に対する帯域割当計算を行い、帯域割当計算の結果に基づいて上り信号の送信タイミングを決定して、PON物理レイヤ機能部に通知する。
【0025】
上述した目的を達成するために、この発明の光通信ネットワークは、1つの局側装置が、複数の加入者側装置に接続されて構成される。局側装置は、PON物理レイヤ機能部と、PONプロトコル制御部と、上り帯域割当制御部とを備えて構成される。PON物理レイヤ機能部は、局側装置と加入者側装置との間の通信に用いられるハードウェア機能部である。PONプロトコル制御部は、局側装置と加入者側装置との間の、論理リンク確立及び送受信の制御に用いられるソフトウェア機能部である。上り帯域割当制御部は、加入者側装置から局側装置に向けて送られる上り信号の送信タイミングを決定するソフトウェア機能部である。
【0026】
ここで、PON物理レイヤ機能部は、一定の周期ごとに、第1割込及び第2割込を上り帯域割当制御部に送る。上り帯域割当制御部は、第1割込を契機として、加入者側装置からPON物理レイヤ機能部が受け取った帯域割当要求情報を、PON物理レイヤ機能部から受け取る。そして、第2割込を契機として、局側装置の外部からPONプロトコル制御部が受け取った帯域割当パラメータを、PONプロトコル制御部から受け取り、帯域割当要求情報及び帯域割当パラメータに基づいて加入者側装置に対する帯域割当計算を行い、帯域割当計算の結果に基づいて上り信号の送信タイミングを決定して、PON物理レイヤ機能部に通知する。
【0027】
上述した目的を達成するために、この発明の帯域割当方法は、1つの局側装置が、複数の加入者側装置に接続されて構成される光通信ネットワークにおける帯域割当方法であって、局側装置と加入者側装置との間の通信に用いられるハードウェア機能部であるPON物理レイヤ機能部と、局側装置と加入者側装置との間の論理リンク確立及び送受信の制御に用いられるソフトウェア機能部であるPONプロトコル制御部と、加入者側装置から局側装置に向けて送られる上り信号の送信タイミングを決定するソフトウェア機能部である上り帯域割当制御部とを備える局側装置の上り帯域割当制御部で行われる。
【0028】
まず、PON物理レイヤ機能部から、第1割込を受け取る過程が行われる。次に、加入者側装置からPON物理レイヤ機能部が受け取った帯域割当要求情報を受け取る過程が、第1割込の受け取りを契機として行われる。次に、PON物理レイヤ機能部から、第2割込を受け取る過程が行われる。次に、局側装置の外部からPONプロトコル制御部が受け取った帯域割当パラメータを受け取る過程、帯域割当要求情報及び帯域割当パラメータに基づいて加入者側装置に対する帯域割当計算を行う過程、及び、帯域割当計算の結果に基づいて上り信号の送信タイミングを決定して、PON物理レイヤ機能部に通知する過程が、第2割込の受け取りを契機として行われる。
【発明の効果】
【0029】
この発明の局側装置、この局側装置を備える光通信ネットワーク、及び、この局側装置で行われる帯域割当方法によれば、DBA周期ごとに割込が2回行われ、1回目の割込では、ONUからの通知情報の読み込みを行い、2回目の割込では、外部からの帯域割当パラメータの入力及び帯域割当演算処理、帯域割当結果に基づく送信タイミングの出力を行うため、外部から入力される帯域割当パラメータを反映するまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】この発明の光通信ネットワークを説明するための模式図である。
【
図2】この発明の帯域割当方法の処理フローを示す図である。
【
図3】この発明の帯域割当方法を説明するための模式図である。
【
図4】この発明の、帯域割当パラメータの入力から実帯域への反映までの時間を説明するための模式図である。
【
図5】従来の帯域割当方法の処理フローを示す図である。
【
図6】従来の帯域割当パラメータの入力から実帯域への反映までの時間を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各図は、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0032】
(光通信ネットワーク)
図1を参照して、この発明の光通信ネットワークについて説明する。
図1は、光通信ネットワークの構成例を示す概略図である。
【0033】
この発明の光通信ネットワーク及び帯域割当方法は、上り帯域割当制御部が、PON物理レイヤ機能部から、1つのDBA周期において、第1割込及び第2割込の2つの割り込みが入力される点と、上り帯域割当制御部における処理の順番が従来技術と異なっている。それ以外は、従来技術と同様に構成できるので、重複する説明を省略する場合がある。
【0034】
この発明の光通信ネットワークは、1つの局側装置(OLT)10と、複数の加入者側装置(ONU)30を備えて構成される、いわゆるPONである。OLT10と各ONU30は、光スプリッタ20を介して、光ファイバで接続されている。
【0035】
各ONU30からOLT10へ向かう信号を上り信号と称する。また、OLT10から各ONU30へ向かう信号を下り信号と称する。
【0036】
OLT10は、例えば、PON物理レイヤ機能部(PON-HW)12、PONプロトコル制御部(PON-FW)14、及び、上り帯域割当制御部(DBA-FW)16を備えて構成される。PON-HW12は、OLT10とONU30の間のフレーム同期や転送に代表される物理レイヤ機能を実現するハードウェア機能部である。PON-FW14は、OLT10とONU30の間の論理リンク確立とトラフィック導通を制御するソフトウェア機能部である。DBA-FW16は、PONリンクが確立しているONU30の論理リンクに対して、上りトラフィック送信タイミングを決定するソフトウェア機能部である。
【0037】
図2及び
図3を参照して、この発明の帯域割当方法を説明する。
図2は、この発明の帯域割当方法の処理フローを示す図である。
図3は、この発明の帯域割当処理を説明するための模式図である。
【0038】
S110において、DBA-FW16は、PON-HW12から第1割込を受け取る。第1割込を受けたDBA-FW16は、S140において、ONU30から通知されて、PON-HW12に格納されている帯域割当要求情報を読み出して収集する。
【0039】
次に、S210において、DBA-FW16は、PON-HW12から第2割込を受け取る。第2割込を受けたDBA-FW16は、S220において、外部からPON-FW14に入力された帯域割当パラメータを収集する。S220は、インタフェースを経て行われる、オペレータによる入力処理や他装置40からの受信などにより、PON-FW14に格納されている情報を、DBA-FW16が受け取る処理である。
【0040】
次に、S260において、上り帯域割当アルゴリズムの演算処理が行われる。S260では、DBA-FW16が、S140において受け取った帯域割当パラメータと、S220において受け取った帯域割当要求情報に基づいて、各ONUへの帯域割当の演算を行う。この帯域割当の演算は、例えば、固定帯域割当や保証帯域割当、固定帯域割当や保証帯域割当による残余帯域の算出、及び、ベストエフォート帯域割当など、任意好適な従来公知の技術を用いて行うことができる。
【0041】
次に、S280において、DBA-FW16は、ONUごとの上り帯域割当の演算結果に基づいて上り信号の送信タイミングを決定して、PON-HW12に通知する。PON-HWは、上り信号の送信タイミングを当該PON-HWに書き込む。
【0042】
この上り帯域割当アルゴリズムによる上り帯域割当処理は、一定の帯域割当周期で実行され、PONにおける物理的な光波長帯域を上限とする帯域割当を実現する。この一定の帯域割当周期をDBA周期と呼ぶ。
【0043】
S280において、あるDBA周期(例えば、第kのDBA周期)で決定された上り信号の送信タイミングは、次のDBA周期(例えば、第k+1のDBA周期)における上り信号の送信タイミングに反映される。
【0044】
この発明の光通信ネットワーク及び帯域割当方法では、上り帯域割当の処理時間でボトルネックとなる、S140及びS280の2つの処理を、異なる割り込み契機で別々に実行する。すなわち、第1割込がDBA-FW16に入力された時点で、S140の、ONUから通知される帯域割当要求情報の収集を行い、第2割込がDBA-FW16に入力された時点で、S220、S260及びS280の処理が行われる。
【0045】
図4を参照して、帯域割当パラメータの入力から実帯域への反映までの時間を説明する。
図4は、この発明の、帯域割当パラメータの入力から実帯域への反映までの時間を説明するための模式図である。
図4(A)は、外部からの帯域割当パラメータの入力が、第kのDBA周期の満了に近いタイミングでなされる例を示している。
図4(B)は、外部からの帯域割当パラメータの入力が、第kのDBA周期の開始に近いタイミングでなされる例を示している。
【0046】
ここでは、第1割込が、DBA周期の開始時点で行われ、第2割込が、DBA周期の1/2が経過した時点で行われるように設定される。なお第1割込から第2割込までの間に、S140の処理が完了し、第2割込からDBA周期が満了するまでの間にS220~S280の処理が完了するように、第1割込及び第2割込のタイミングが設定されていればよく、第2割込のタイミングが、DBA周期の1/2が経過した時点でなくてもよい。
【0047】
図4(A)に示すように、第kのDBA周期の満了に近いタイミングで、外部からの帯域割当要求をうけた場合(
図4(A)中、Iで示す。)、第k+1のDBA周期のS110において、第1割込が行われたのち、S140の処理が行われ、同じ、第k+1のDBA周期のS210において、第2割込が行われた後、S220~S280の処理が行われて、各ONUに割当帯域が通知される。その結果、第k+2のDBA周期では、外部からの帯域割当パラメータの入力を受けて決定された送信タイミングで上り信号が送信される。この場合、外部から入力された、帯域割当パラメータが上り割当帯域に反映されるまで、従来技術と同様に1DBA周期程度の時間を要する。
【0048】
また、
図4(B)に示すように、第kのDBA周期の開始に近いタイミングで、外部からの帯域割当要求をうけた場合(
図4(B)中、IIで示す。)、第kのDBA周期のS110において、第1割込が行われた後、S140の処理が行われ、同じ、第kのDBA周期のS210において、第2割込が行われたのち、S220~S280の処理が行われて、各ONUに割当帯域が通知される。その結果、第k+1のDBA周期では、外部からの帯域割当パラメータの入力を受けて決定された送信タイミングで上り信号が送信される。この場合、帯域割当パラメータが上り割当帯域に反映されるまで、従来技術よりも短く1DBA以内の時間である。
【0049】
図6(A)及び
図6(B)を参照して説明した、従来技術では、外部からの帯域割当要求情報の入力が、割込の直前の場合、帯域割当要求情報の入力から実帯域への反映までの時間が最短の1DBA周期となる。一方、外部からの帯域割当要求情報の入力が、割込の直後の場合、帯域割当要求情報の入力から実帯域への反映までの時間が最長の2DBA周期となる。
【0050】
これに対し、
図4(A)及び
図4(B)を参照して説明した、この発明の光通信ネットワーク及び帯域割当方法では、外部からの帯域割当要求情報の入力が、第2割込の直後の場合、帯域割当要求情報の入力から実帯域への反映までの時間が最長の1.5DBA周期となる。一方、外部からの帯域割当要求情報の入力が、第2割込の直前の場合、帯域割当要求情報の入力から実帯域への反映までの時間が最短の0.5DBA周期となる。
【0051】
このように、従来技術では、反映時間が、1~2DBA周期であったものが、この発明では、0.5~1.5DBA周期となるので、帯域割当パラメータの入力から実帯域反映までの時間として、0.5DBA周期分の短縮効果が得られる。
【符号の説明】
【0052】
10 局側装置(OLT)
12 PON物理レイヤ機能部(PON-HW)
14 PONプロトコル制御部(PON-FW)
16 上り帯域割当制御部(DBA-FW)
20 光スプリッタ
30 加入者側装置(ONU)