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特開2024-120406糖尿病を予防または治療するための組成物および組合せ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120406
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】糖尿病を予防または治療するための組成物および組合せ
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20240829BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20240829BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240829BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20240829BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/745
A61P3/10
A61K31/198
A23L33/175
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027185
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】305018395
【氏名又は名称】協同乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】生田 かよ
(72)【発明者】
【氏名】松本 光晴
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD19
4B018MD87
4B018ME03
4B018MF02
4B018MF14
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC59
4C087CA08
4C087MA02
4C087MA52
4C087NA05
4C087ZC35
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA32
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA05
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】 本発明は、糖尿病を予防または治療するための組成物および組合せに関する。
【解決手段】 本発明の組成物および組合せは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物およびアルギニンを含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物およびアルギニンを含む、糖尿病を予防または治療するための組成物。
【請求項2】
ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物が、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(寄託番号FERM P-21998)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
対象の血漿グルコース濃度を低下させる、または、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
対象の血漿インスリン濃度を上昇させる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
単回投与される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
継続的に2回以上投与される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
飲食品である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
医薬品である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
糖尿病を予防または治療するための、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンとの組合せ。
【請求項10】
ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物が、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(寄託番号FERM P-21998)である、請求項9に記載の組合せ。
【請求項11】
対象の血漿グルコース濃度を低下させる、または、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する、請求項9または10に記載の組合せ。
【請求項12】
対象の血漿インスリン濃度を上昇させる、請求項9または10に記載の組合せ。
【請求項13】
単回投与される、請求項9または10に記載の組合せ。
【請求項14】
継続的に2回以上投与される、請求項9または10に記載の組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病を予防または治療するための組成物および糖尿病を予防または治療するための組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
肥満や糖尿病など生活習慣の悪化により発症する疾患は腸内細菌叢バランスおよび多様性が乱れることが報告されている。同時に、腸内細菌叢の操作が症状緩和に効果的である研究成果も報告されている。
【0003】
ポリアミンは細胞の健全性維持に必須の生理活性アミンであり、核酸保護や翻訳伸長に関与することから、細胞増殖をはじめ、細胞分化や細胞活動に多大な影響を及ぼしている。ポリアミンは生体細胞が自ら生合成するが、加齢に伴いその生合成能が低下する。しかしながら、産生能が低下した場合は、食事および腸内細菌叢が産生する外因性ポリアミンから生体に補充できる。食事から摂取するポリアミンは小腸で大部分が吸収されるため一過性であるが、腸内細菌叢が産生するポリアミンは栄養素等の腸管腔内環境の条件が整っている限り持続的供給が可能であり、ポリアミン供給源としての可能性を秘めている。
【0004】
本発明者らは、これまでに腸内細菌叢由来ポリアミン産生促進は、マウスにおいて大腸上皮細胞増殖維持や寿命延伸、ヒト試験ではアテローム性動脈硬化症発症リスク低減作用などを誘導することを報告してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-071604
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sientific Reports 4:4548,2014|DOI:10.1038/srep04548
【非特許文献2】Nutrients 2019, 11, 1188; doi:10.3390/nu11051188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、腸内細菌叢の操作による効果が、菌種構成の変化に伴う腸内菌叢の代謝産物の変化に依存している可能性を探索してきた。そして、ポリアミン産生食品であるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンの併用投与により、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する、および、血漿インスリン濃度を上昇する、という効果が得られることを見出し、本発明を想到した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
限定されるわけではないが、本発明は、以下の態様を含む。
[1]
ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物およびアルギニンを含む、糖尿病を予防または治療するための組成物。
[2]
ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物が、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(寄託番号FERM P-21998)である、[1]に記載の組成物。
[3]
対象の血漿グルコース濃度を低下させる、または、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
対象の血漿インスリン濃度を上昇させる、[1]または[2]に記載の組成物。
[5]
単回投与される、[1]または[2]に記載の組成物。
[6]
継続的に2回以上投与される、[1]または[2]に記載の組成物。
[7]
飲食品である、[1]または[2]に記載の組成物。
[8]
医薬品である、[1]または[2]に記載の組成物。
[9]
糖尿病を予防または治療するための、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンとの組合せ。
[10]
ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物が、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(寄託番号FERM P-21998)である、[9]に記載の組合せ。
[11]
対象の血漿グルコース濃度を低下させる、または、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する、[9]または[10]に記載の組合せ。
[12]
対象の血漿インスリン濃度を上昇させる、[9]または[10]に記載の組合せ。
[13]
単回投与される、[9]または[10]に記載の組合せ。
[14]
継続的に2回以上投与される、[9]または[10]に記載の組合せ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物または組合せにより、血糖値の上昇を抑制することができる。本発明の組成物または組合せにより、糖尿病を予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、高脂肪食(HFD)摂取マウスへのビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(LKM512)とアルギニンの併用投与(3回/週)が、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)において、(a)血漿グルコース濃度および(b)血漿インスリン濃度推移、に及ぼす影響を調べた結果である(試験食はOGTTの前日投与)。「PBS(生理的リン酸バッファー)」(黒丸実線)は、コントロール群、「LKM512+Arg」は、LKM512とアルギニンの併用投与群(白丸点線)である。縦軸は、(a)血漿グルコース濃度(mg/dL)、(b)血漿インスリン濃度(ng/mL)である。横軸は、OGTT試験(グルコース投与)開始からの時間(分)を示す。データは平均値±標準誤差で示す。N=5/群 *p<0.05(群間差) 。P値は、2元配置分散分析を用いて検定し、検定の多重性に伴うP値補正はBonferroni法を用いた。
図2図2は、高脂肪食(HFD)摂取マウスへのビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(LKM512)とアルギニンの併用投与(3回/週)が、OGTTのインスリンインデックスに及ぼす影響を調べた結果である(試験食はOGTTの前日投与)。「PBS」は、コントロール群、「LKM512+Arg」は、LKM512とアルギニンの併用投与群である。インスリンインデックスとは、OGTT開始30分間の血糖値変化に対する血中インスリン増加量を示す。インスリンインデックスは以下の式で算出した。 インスリンインデックス = ΔIRI(30分値-0分値)μU/ml ÷ ΔpGlu(30分値-0分値)mg/dL ユニット換算:マウスのU/mgは報告がないことから、ヒトで使用されている26IU/mgを使用して換算
図3図3は、高脂肪食(HFD)摂取マウスへのビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(LKM512)とアルギニンの併用投与(3回/週)が、OGTTにおいて、(a)血漿グルコース濃度および(b)血漿インスリン濃度推移、に及ぼす影響を調べた結果である(試験食はOGTTの2時間前投与)。「PBS」(黒丸実線)はコントロール群、「LKM512+Arg」(白丸点線)は、LKM512とアルギニンの併用投与群である。縦軸は、(a)血漿グルコース濃度(mg/dL)、(b)血漿インスリン濃度(ng/mL)である。横軸は、OGTT試験(グルコース投与)開始からの時間(分)を示す。データは平均値±標準誤差で示す。N=5/群 *p<0.05(群間差) 。P値は、2元配置分散分析を用いて検定し、検定の多重性に伴うP値補正はBonferroni法を用いた。
図4図4は、高脂肪食(HFD)摂取マウスへのビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(LKM512)とアルギニンの単回併用投与が、OGTTにおいて、血漿グルコース濃度(OGTT)に及ぼす影響を調べた結果である(試験食はOGTTの2時間前に単回投与し、それ以前には投与していない)。「PBS」(黒丸実線)はコントロール群、「LKM512+Arg」(白丸点線)は、LKM512とアルギニンの併用投与群である。縦軸は、血漿グルコース濃度(mg/dL)を示す。データは平均値±標準誤差で示す。N=5/群 *p<0.05(群間差) 。P値は、2元配置分散分析を用いて検定し、検定の多重性に伴うP値補正はBonferroni法を用いた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書において他に断りがない限り、本明細書で使用される技術および科学用語は、当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。本明細書に開示された物質、材料および例は単なる例示であり、制限することを意図していない。本明細書において「一態様において」と言及する場合は、その態様に限定されない、即ち、非限定的であることを意味する。
【0012】
1.組成物
一態様において、本発明は、糖尿病を予防または治療するための組成物に関する。非限定的に、当該組成物は、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)に属する微生物とアルギニン含む。非限定的に、当該組成物は、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物およびアルギニンを含む。
【0013】
「ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス」は、ビフィドバクテリウム・アニマリス種の亜種で、複数の菌株が知られている。非限定的に、LKM512株(登録商標)、GCL2505株(商標)、BE80株(登録商標)(DN-173 010)、HN019(登録商標)、BB-12株(登録商標)等が含まれる。
【0014】
一態様において、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物は、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(寄託番号FERM P-21998)である。ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスLKM512株は、寄託番号FERM P-21998として2010年8月10日に独立行政法人 製品評価技術基盤機構 NITE特許微生物寄託センター(NITE-IPOD:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8;独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターより2012年4月に業務承継)に寄託されている。
【0015】
前記組成物は、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物に加えて、アルギニンを含む。
【0016】
「糖尿病」とは、血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)値が適正値よりも高い状態が慢性的に続く病気で、血液中のブドウ糖を細胞へ届けるインスリンの分泌不足・分泌異常・作用低下が生じることで発症する。糖尿病は発症の原因によって、1型糖尿病と2型糖尿病、その他、妊娠糖尿病に分類される。
【0017】
前記組成物は、「血漿グルコース濃度の上昇を抑制する」、および/または、「血漿インスリン濃度を上昇する」効果を奏し、糖尿病を予防または治療するために使用することができる。前記組成物は、対象の血漿グルコース濃度を低下させる、または、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する。本明細書において、「血漿グルコース濃度の上昇を抑制する」と記載する場合、血漿グルコース濃度を低下させることの意味も含む。一態様において、前記組成物は、対象の血漿インスリン濃度を上昇させる。
【0018】
本発明は一態様において、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物およびアルギニンを含む組成物であって、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する、および/または、血漿インスリン濃度を上昇するための、前記組成物、に関する。
【0019】
「血漿グルコース濃度の上昇を抑制する」とは、前記組成物を投与しない場合と比較して、血漿グルコース濃度の上昇を抑制することを意味する。非限定的に、前記組成物は、前記組成物を投与しない場合と比較して、血漿グルコース濃度の上昇を最大5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、80%以上抑制する。血漿グルコース濃度の上昇を抑制の度合いは、時間とともに変化する。「最大」とは、グルコース負荷後、血漿グルコース濃度の上昇が最も抑制されるタイミングにおいて、の意味である。
【0020】
「血漿インスリン濃度を上昇する」とは、前記組成物を投与しない場合と比較して、血漿インスリン濃度を上昇することを意味する。非限定的に、前記組成物は、前記組成物を投与しない場合と比較して、血漿インスリン濃度が最大5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、80%以上上昇する。血漿インスリン濃度は、時間とともに変化する。「最大」とは、グルコース負荷後、血漿インスリン濃度が最も上昇するタイミングにおいて、の意味である。
【0021】
非限定的に、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンは、糖尿病を予防または治療するために有効な量で摂取(本明細書において「摂取」には「投与」の意味も含む)されることが好ましい。用量は、対象となる動物の種類、体重、体長、年齢、体長とによって適宜調整し得る。例えば、ヒトを対象とする場合、1回用量あたり、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物は、1×10~1×1011cfu、好ましくは1×10~1×1011cfu、1×10~1×1010cfu、1×10~1×1011cfu、1×10~1×1010cfuである。ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンを組み合わせる場合のアルギニンの量は、1回用量あたり、10mg~20000mg、好ましくは10mg~2000mg、50mg~1000mg、100mg~1000mg、200mg~1000mg、300mg~800mgである。
【0022】
前記組成物の摂取回数、摂取期間、摂取頻度は特に限定されない。糖尿病を予防または治療する効果が確認できる回数、期間、摂取することが望ましい。組成物の成分であるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物、アルギニンはいずれも人体への安全性が確認されているものである。糖尿病を予防または治療する効果が持続的に確認できるまでの回数、期間、継続的に摂取してもよい。非限定的に、摂取回数は1回、1回以上、2回以上、3回以上、5回以上、8回以上、10回以上、12回以上、15回以上、20回以上、25回以上、30回以上である。摂取回数の上限は特にない。一態様において摂取期間は、1日以上、2日以上、3日以上、5日以上、7日以上、10日以上、14日以上、20日以上である。摂取期間の上限は特にない。摂取頻度も特に限定されない。一態様において、1日3回、1日2回、1日1回、2日1回、3日1回、4日1回、5日に1回、1週間に1回、10日に1回、2週間に1回、1か月に1回である。一態様において、1週間に1回程度、あるいはそれ以上の頻度で摂取する。
【0023】
一態様において、前記組成物は、継続的に2回以上投与される。
【0024】
前記組成物の摂取のタイミングは限定されない。前記組成物の摂取の飲食前の最後の摂取は、飲食の直前、飲食前10分以内、1時間以内、2時間以内、4時間以内、6時間以内、8時間以内、10時間以内、12時間以内、15時間以内、18時間以内、24時間以内であってよい。前記組成物は食事中、また飲食後に摂取を始めてもよい。前記組成物の飲食後の最初の摂取は、飲食の直後、飲食後10分以内、1時間以内、2時間以内、4時間以内、6時間以内、8時間以内、10時間以内、12時間以内、15時間以内、18時間以内、24時間以内であってよい。
【0025】
本明細書の実施例1、2において、前記組成物は経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)試験の前日に摂取した場合、2時間前に摂取した場合のいずれも、摂取しない場合と比較して、血漿グルコース濃度の上昇を抑制し、そして、血漿インスリン濃度を上昇させた。
【0026】
本明細書の実施例3において、前記組成物は単回投与でも、血漿グルコース濃度の上昇を抑制した。前記組成物は、単回投与でもよい。
【0027】
前記組成物の摂取方法も特に限定されない。好ましくは、経口摂取である。
【0028】
前記組成物の対象は、糖尿病を発症する可能性がある動物であれば、特に限定されない。例えば、愛玩動物、産業用動物等が含まれる。一態様において対象は、ヒトである。一態様において、非ヒト哺乳動物を対象としていてもよい。非ヒト哺乳動物の例は、ヒト以外の霊長類(サル、チンパンジー、ゴリラ等)、イルカ、アシカ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ等が含まれる。
【0029】
一態様において、前記組成物は、飲食品または医薬品であってもよい。前記組成物は、医薬品または食品(例えば、機能性食品、健康食品、サプリメントなど)として継続的な摂取が行いやすいように、例えば顆粒剤(ドライシロップを含む)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、錠剤(チュアブル剤などを含む)、散剤(粉末剤)、丸剤などの各種の固形製剤、または内服用液剤(液剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)などの液状製剤などの形態で調製することができるが、特に限定されるものではない。ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物およびアルギニンは腸溶コーティングされていても、されていなくてもよい。
【0030】
腸溶コーティングは、当業者に公知のものを使用でき、特に限定されない。例えば、腸溶コーティングされた錠剤として、有用な成分を含む素錠の表面に、アンダーコート層と、大腸崩壊性基剤層と、第1の腸溶性基剤層と、第2の腸溶性基剤層とを、この順に被覆してなり、前記第1の腸溶性基剤層がゼインを含み、前記第2の腸溶性基剤層がシェラックを含む、大腸ドラッグデリバリーシステム錠剤を使用することができる。
【0031】
前記組成物は、必要に応じ、従来公知の着色剤、保存剤、香料、風味剤、コーティング剤などの成分を配合して調製することもできる。
【0032】
前記組成物が飲食品である場合、以下のような形態であってもよい。例えば、飲料、発酵食品、菓子類、パン類、スープ類等の各種食品若しくはその添加成分として;または、ドッグフード、キャットフードなどの各種ペットフード若しくはその添加成分として使用することができる。これらの食品の製造方法は、前記組成物の効果を損なわないものであれば特に限定されず、各用途で当業者に使用されている方法に従えばよい。前記組成物を適用できる食品は、例えば、対象が日常的に摂取する食品だけでなく、特定保健用食品、栄養機能食品、特別用途食品、機能性表示食品等の機能性食品にも適用できる。前記組成物が適用可能な飲食品の具体例としては、牛乳、ヨーグルト、発酵乳、乳酸菌飲料、チーズ、プリン、アイスクリーム、氷菓、清涼飲料水(フルーツジュース、緑茶、紅茶、烏龍茶、およびコーヒー等を含む)、サプリメント、および豆乳等が挙げられる。固形食品に前記組成物を加える場合には、例えば顆粒剤、および粉剤等の形態で加えることが好ましい。また、飲料、ペースト状食品に前記組成物を加える場合には、例えばマイクロカプセルの形態で加えることが好ましい。
【0033】
前記医薬品は、有効成分をそのまま用いてもよいし、薬学的に許容できる担体、賦形剤、添加剤等を加えて製剤化してもよい。剤形としては、例えば、液剤(例えば注射剤)、分散剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、坐剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤等が挙げられる。製剤化は、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解剤、溶解補助剤、着色剤、矯味矯臭剤、安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤などを適宜使用し、常法により行うことができる。
【0034】
製剤化に用いられる成分の例としては、精製水、食塩水、リン酸緩衝液、デキストロース、グリセロール、エタノール等薬学的に許容される有機溶剤、動植物油、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ソルビトール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、コーンスターチ、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ぺクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガント、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、高級アルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0035】
前記医薬品が丸剤または錠剤の場合、糖衣、胃溶性、腸溶性物質で被覆してもよい。
【0036】
例えば、液剤の形態にする場合は、ペクチン、キサンタンガム、グアガムなどの増粘剤を配合することができる。また、コーティング剤を用いてコーティング錠剤にすることも、ペースト状の膠剤とすることもできる。さらに、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。
【0037】
2.組合せ
一態様において、本発明は、糖尿病を予防または治療するための組合せ、に関する。非限定的に、当該組合せは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンとの組合せである。
【0038】
一態様において、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物が、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(寄託番号FERM P-21998)である。
【0039】
前記組合せにおいて、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンとは、同時に摂取しても、逐次摂取してもよい。逐次摂取する場合に、摂取の順番は問わない。逐次摂取する場合には、非限定的に、双方を2時間以内、1時間以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、5分以内に摂取するのが好ましい。
【0040】
一態様において、前記組合せは、飲食品、または、医薬品である。1種類の飲食品または医薬品に、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンの双方が含まれていてもよいし、あるいは、2種類以上の飲食品または医薬品に、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンが別々に含まれていてもよい。
【0041】
一態様において、前記組合せは、対象の血漿グルコース濃度を低下させる、または、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する。一態様において、前記組合せは、対象の血漿インスリン濃度を上昇させる。
【0042】
一態様において、前記組合せは、単回投与される。一態様において、前記組合せは、継続的に2回以上投与される。
【0043】
前記組合せは、「血漿グルコース濃度の上昇を抑制する」、および/または、「血漿インスリン濃度を上昇する」効果を奏し、糖尿病を予防または治療するために使用することができる。前記組合せは、対象の血漿グルコース濃度を低下させる、または、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する。一態様において、前記組合せは、対象の血漿インスリン濃度を上昇させる。
【0044】
本発明は一態様において、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物およびアルギニンを含む組成物であって、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する、および/または、血漿インスリン濃度を上昇するための、前記組合せ、に関する。
【0045】
上記各用語の説明は、「1.組成物」において説明した通りである。
【0046】
本発明は一態様において、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物およびアルギニンを含む組合せであって、血漿グルコース濃度の上昇を抑制する、および/または、血漿インスリン濃度を上昇するための、前記組合せ、に関する。
【0047】
特に不都合がない場合には、「1.組成物」において記載した事項は、本項目の組合せにも適用する。
【0048】
3.使用、方法等
本発明はまた、糖尿病を予防または治療するためのめの方法であって、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンとを、対象に投与することを含む、方法に関する。
【0049】
本発明はまた、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンの、糖尿病を予防または治療するための方法への使用に関する。
【0050】
本発明はまた、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンの、糖尿病を予防または治療するための組成物の製造への使用に関する。
【0051】
本発明はまた、糖尿病を予防または治療するための方法へ使用される、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスに属する微生物とアルギニンの組合せに関する。
【0052】
上記「糖尿病を予防または治療するための」は、「血漿グルコース濃度の上昇を抑制する、および/または、血漿インスリン濃度を上昇するための」であってもよい。
【0053】
上記各用語の説明は、「1.組成物」、「2.組合せ」において説明した通りである。
【0054】
特に不都合がない場合には、「1.組成物」、「2.組合せ」において記載した事項は、本項目の組合せにも適用する。
【実施例0055】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
実施例1 長期投与マウスを用いた経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)
本実施例では、フィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株とアルギニンを含む組成物を長期投与した場合の、ブドウ糖負荷に対する効果を調べた。
方法
雄性B6D2F1マウス(4週齢)を日本エスエルシー株式会社より購入した。5週齢より高脂肪食負荷(自由摂取、期間を通しておよそ2-4g/日)を開始し、16週間の試験を実施した。高脂肪食はD12492N(60kcal%脂肪含有量、齧歯類用超高脂肪飼料、染料無し、RESEARCH DIETS INC.(登録商標)製)を用いた。D12492Nの組成は以下の通りである。
【0057】
【表1】
体重の平均値が同じになるよう2グループに分け、1グループを、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株(寄託番号FERM P-21998)とアルギニンとの併用摂取(「LKM512+Arg摂取」)群とし、生理食塩水を摂取する別の1グループをコントロール群とした。LKM512+Arg群は、Arg水溶液(pH7.0)にMRS寒天培地(Becton,Dickinson and Company,USA)で48時間培養したLKM512をシャーレ1枚分のコロニー懸濁し、Argが0.3mg/g体重となるように、週3回胃ゾンデにて強制経口投与した。コントロール群は生理的リン酸バッファー(PBS)を同様に強制経口投与した。
【0058】
高脂肪食負荷開始から16週間後に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施した。前日13時に試験食(LKM512+Arg)投与を行い、14時から絶食を開始した。試験当日9時半から10時の間に、体重測定およびOGTT実施前採血を行い、それが終わった個体から順次D-グルコースを経口投与し、投与後15分、30分、60分、120分の血液を採取した。D-グルコースは2g/kg体重となるように負荷し、血液はヘパリン処理後遠心分離(4℃、3000×g、15分)し、血漿を採取し、測定まで-20℃で保存した。血漿グルコース濃度は、ラボアッセイ(商標)Glucose(富士フィルムワコーシバヤギ(株))で測定した。血漿インスリン濃度は、マウス/ラットインスリン測定キット(株式会社森永生科学研究所)で測定した。
【0059】
インスリン早期追加分泌の指標であるインスリンインデックスを算出した。インスリンインデックスとは、OGTT開始30分間の血糖値変化に対する血中インスリン増加量を示す。インスリンインデックスは以下の式で算出した。
【0060】
インスリンインデックス =
ΔIRI(30分値-0分値)μU/ml ÷ ΔpGlu(30分値-0分値)mg/dL
ユニット換算:マウスのU/mgは報告がないことから、ヒトで使用されている26IU/mgを使用して換算
結果
LKM512+Arg群では、グルコース投与後60分での血糖値が有意に低下し、耐糖能異常の改善がみられた。血漿インスリン値では、LKM512+Arg群で空腹時インスリン値が低い傾向が見られたが、グルコース投与30分後、60分後には高い傾向を示した(図1)。
【0061】
インスリンインデックスは、コントロール群が0未満であったが、LKM512+Arg群は0.36と高かった(図2)。インスリンインデックスは、0.4未満で糖尿病とされることから、コントロール群は初期追加分泌の障害が生じていると考えられたが、LKM512+Arg群では改善が認められ正常値付近になることが認められた。
【0062】
実施例2 長期投与+直前投与によるOGTT
本実施例では、実施例1と同様にビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株とアルギニンを含む組成物を長期投与した場合の、ブドウ糖負荷に対する効果、特に、OGTTの直前に投与した場合の効果を評価した。
方法
実施例1と同様に、B6D2F1マウスに、16週間の高脂肪食負荷および各試験溶液を投与した。ただし、試験食(LKM512+Arg)の最終投与は実施例1と異なり、前日ではなく、OGTTの2時間前とした。すなわち、食前摂取による血糖値上昇の予防効果を調べた。
【0063】
具体的には、5時間の絶食後、LKM512+ArgあるいはPBS(コントロール群)を投与し、2時間後にOGTTを実施した。採血は、試験液投与前(-120分)、OGTT直前(0分)、OGTT後15分、30分で行った。採血後すぐにEDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびDPP-4 inhibitor (millipore)で処理し、遠心分離により血漿を採取した。血漿グルコース濃度はラボアッセイ(商標)Glucose(富士フィルムワコーシバヤギ(株))、血漿インスリン濃度はマウス/ラットインスリン測定キット(株式会社森永生科学研究所)で測定した。
結果
LKM512+Arg群は、試験食投与後の全ての測定ポイントでコントロール群と比べ有意に血糖値が低値を示し、OGTT時の急激な血糖上昇が抑制され、耐糖能異常の改善が認められた(図3a)。血漿インスリン値はコントロール群ではOGTT時に全く変化が見られないのに対して、LKM512+Arg群ではインスリン値の有意な上昇が確認された(図3b)。
【0064】
実施例3 単回投与によるOGTT
本実施例では、フィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス LKM512株とアルギニンを含む組成物を、実施例1、実施例2とは異なり、単回投与した場合の、ブドウ糖負荷に対する効果を評価した。
方法
23週間の高脂肪食負荷を行いその期間中PBSを胃ゾンデで週3回投与したB6D2F1マウスを用いて、OGTT2時間前のLKM512+Arg単回投与による効果を検討した(僅か1回の食事前摂取の効果の検討)。同一個体で、LKM512+Arg投与およびPBS投与(コントロール)の試験を、間隔を空けて実施した。
【0065】
具体的には、5時間の絶食後PBS投与を行い、その2時間後にOGTTを実施した(図4:PBS群)。その4日後に、同様に5時間絶食させ、LKM512+Arg投与を行い、2時間後にOGTTを実施した(図4:LKM512+Arg)。実施例2と同様に採血処理および血糖値の測定を実施した。
結果
PBS投与で見られたOGTT時の血糖値上昇の推移は、LKM512+Argの2時間前投与により改善が見られ、血糖の急激な上昇を抑制することが認められた(図4)。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明により、糖尿病を予防または治療することができる、組成物(組合せ)が提供される。
図1
図2
図3
図4