(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120407
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027186
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 都至
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA17
3J027GB03
3J027GC02
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE14
(57)【要約】
【課題】生産性の向上を図ることができる減速機を提供する。
【解決手段】減速機は、入力軸と、第1軸受と、サイクロイド歯車と、複数の内周ピンと、内周ピンホルダと、第2軸受と、複数の外周ピンと、外周ピンの軸方向の両端側に配置され、外周ピンの移動を規制する一対の保持リングと、を備える。各保持リングは、軸方向に貫通するリング貫通穴が径方向の中央に設けられ、軸方向において外周ピンの端面と対向する円環状のリング平板部と、リング平板部の内径側の端部から軸方向に延び、外周ピンの内径側に配置されるリング鍔部と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心軸に対して偏心した偏心部を含み、前記回転中心軸を回転中心として回転する入力軸と、
前記偏心部と共に回転する第1内輪および前記第1内輪の外径側に配置される第1外輪を含む第1軸受と、
前記入力軸の外径側に配置され、外周面に周方向に沿って並ぶ複数の外歯を有し、前記入力軸が貫通する第1貫通穴および前記第1貫通穴の外径側において周方向に間隔をあけて配置される複数の第2貫通穴が設けられているサイクロイド歯車と、
前記第2貫通穴を軸方向に貫通する複数の内周ピンと、
前記複数の内周ピンの軸方向の両端部を保持し、前記入力軸の外周面を取り囲む内周ピンホルダと、
前記サイクロイド歯車の外径側に配置され、出力軸を構成する第2内輪および前記第2内輪の外径側に配置される第2外輪を含む第2軸受と、
前記第2内輪の内径側に配置され、前記サイクロイド歯車の前記外歯と噛み合う円筒状の複数の外周ピンと、
前記外周ピンの軸方向の両端側に配置され、前記外周ピンの移動を規制する一対の保持リングと、を備え、
各前記保持リングは、
軸方向に貫通するリング貫通穴が径方向の中央に設けられ、軸方向において前記外周ピンの端面と対向する円環状のリング平板部と、
前記リング平板部の内径側の端部から軸方向に延び、前記外周ピンの内径側に配置されるリング鍔部と、を含む、減速機。
【請求項2】
前記保持リングの軸方向の両端側に配置され、前記保持リングの軸方向の移動を規制する止め輪をさらに備え、
前記止め輪は、周方向に切断されている、請求項1に記載の減速機。
【請求項3】
前記止め輪の周方向の両端間には、隙間が設けられている、請求項2に記載の減速機。
【請求項4】
前記第2内輪の内径側には、外径側に凹み、前記止め輪が嵌め込まれる環状溝が形成されている、請求項2に記載の減速機。
【請求項5】
前記リング鍔部には、外径側から内径側に凹み、前記外周ピンの外周面を受け入れる円弧状のリング凹部が周方向に並んで複数形成されている、請求項1または請求項2に記載の減速機。
【請求項6】
前記リング鍔部の外周面は、軸方向に沿って延びており、周方向に円弧状に連なっている、請求項1または請求項2に記載の減速機。
【請求項7】
前記リング鍔部の軸方向の端面は、平面であって、軸方向において前記サイクロイド歯車と対向している、請求項1または請求項2に記載の減速機。
【請求項8】
前記第2内輪のうち、径方向において前記外周ピンが配置される位置の外径側には、軸方向に凹む取り付け穴が形成されている、請求項1または請求項2に記載の減速機。
【請求項9】
前記第2内輪の内周面には、前記外周ピンの外形形状を受け入れる円弧状の外周ピン収容溝が設けられており、
前記外周ピンは、軸方向の両側から前記第2内輪の内径側に配置可能である、請求項1または請求項2に記載の減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、減速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
入力軸からの入力に対して減速して出力軸から出力する減速機の歯車機構に関する技術が、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された歯車機構は、偏心揺動型の歯車装置であって、内周に回転可能に保持された多数のピンを内歯とする内歯歯車と、内歯歯車の内側に配置されて内歯と噛み合う外歯を有する外歯歯車と、外歯歯車に係合してこれを偏心駆動させるクランク軸と、クランク軸を回転自在に支持する支持体と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減速機においては、内輪に保持される多数のピンを適切に保持する必要がある。この場合、出力軸を構成する内輪の内径側にピンを保持する機構を設けようとすると、この内輪の加工が困難となり、コストアップ等、生産性の低下を招くこととなる。減速機において、生産性の向上が求められる。
【0006】
そこで、生産性の向上を図ることができる減速機を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従った減速機は、回転中心軸に対して偏心した偏心部を含み、回転中心軸を回転中心として回転する入力軸と、偏心部と共に回転する第1内輪および第1内輪の外径側に配置される第1外輪を含む第1軸受と、入力軸の外径側に配置され、外周面に周方向に沿って並ぶ複数の外歯を有し、入力軸が貫通する第1貫通穴および第1貫通穴の外径側において周方向に間隔をあけて配置される複数の第2貫通穴が設けられているサイクロイド歯車と、第2貫通穴を軸方向に貫通する複数の内周ピンと、複数の内周ピンの軸方向の両端部を保持し、入力軸の外周面を取り囲む内周ピンホルダと、サイクロイド歯車の外径側に配置され、出力軸を構成する第2内輪および第2内輪の外径側に配置される第2外輪を含む第2軸受と、第2内輪の内径側に配置され、サイクロイド歯車の外歯と噛み合う円筒状の複数の外周ピンと、外周ピンの軸方向の両端側に配置され、外周ピンの移動を規制する一対の保持リングと、を備える。各保持リングは、軸方向に貫通するリング貫通穴が径方向の中央に設けられ、軸方向において外周ピンの端面と対向する円環状のリング平板部と、リング平板部の内径側の端部から軸方向に延び、外周ピンの内径側に配置されるリング鍔部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
上記減速機によれば、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1における減速機を示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2中の線分V-Vで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図5中の領域VIに示す減速機の断面の一部を拡大して示す図である。
【
図7】
図7は、
図2中の線分VII-VIIで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
【
図8】
図8は、
図3中の線分VIII-VIIIで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
【
図9】
図9は、後述する第1ホルダ部、第2ホルダ部、保持リングおよびスラストワッシャを取り除いた状態の
図1に示す減速機の概略斜視図である。
【
図10】
図10は、入力軸および入力軸に取り付けられた第1軸受の一部を示す概略斜視図である。
【
図14】
図14は、第1軸受に含まれる第1内輪を示す概略断面図である。
【
図15】
図15は、内周ピンの一部を破線で示した概略斜視図である。
【
図16】
図16は、第1ホルダ部と第2ホルダ部とを組み合わせて内周ピンを保持した状態を示す内周ピンホルダの概略斜視図である。
【
図25】
図25は、
図22中の線分XXV-XXVで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
【
図27】
図27は、
図26中の線分XXVII-XXVIIで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
【
図28】
図28は、本開示の実施の形態2における減速機に含まれる保持リングを示す概略背面図である。
【
図29】
図29は、
図28中の線分XXIX-XXIXで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態の概要]
本開示の減速機は、回転中心軸に対して偏心した偏心部を含み、回転中心軸を回転中心として回転する入力軸と、偏心部と共に回転する第1内輪および第1内輪の外径側に配置される第1外輪を含む第1軸受と、入力軸の外径側に配置され、外周面に周方向に沿って並ぶ複数の外歯を有し、入力軸が貫通する第1貫通穴および第1貫通穴の外径側において周方向に間隔をあけて配置される複数の第2貫通穴が設けられているサイクロイド歯車と、第2貫通穴を軸方向に貫通する複数の内周ピンと、複数の内周ピンの軸方向の両端部を保持し、入力軸の外周面を取り囲む内周ピンホルダと、サイクロイド歯車の外径側に配置され、出力軸を構成する第2内輪および第2内輪の外径側に配置される第2外輪を含む第2軸受と、第2内輪の内径側に配置され、サイクロイド歯車の外歯と噛み合う円筒状の複数の外周ピンと、外周ピンの軸方向の両端側に配置され、外周ピンの移動を規制する一対の保持リングと、を備える。各保持リングは、軸方向に貫通するリング貫通穴が径方向の中央に設けられ、軸方向において外周ピンの端面と対向する円環状のリング平板部と、リング平板部の内径側の端部から軸方向に延び、外周ピンの内径側に配置されるリング鍔部と、を含む。
【0011】
このような構成によると、外周ピンは、一対の保持リングによって移動が規制される。そうすると、第2内輪において、外周ピンを保持する機構を設ける必要がないため、第2内輪の加工が容易になる。なお、上記構成の保持リングは、比較的シンプルな形状であるため、保持リングも安価に製造することができる。したがって、生産性の向上を図ることができる。この場合、外周ピンを保持する機構を第2内輪に設ける必要が無い。したがって、外周ピンを収容する溝の加工難易度を低下させ、より細い径の外周ピンの適用の容易化を図ることができる。したがって、高減速比の適用が容易となる。
【0012】
上記減速機において、保持リングの軸方向の両端側に配置され、保持リングの軸方向の移動を規制する止め輪をさらに備えてもよい。止め輪は、周方向に切断されていてもよい。このようにすることにより、保持リングの軸方向の移動を止め輪によって規制することができ、保持リングの案内に利用することができる。また、このような止め輪は、周方向に切断されているため、第2内輪の内径側に組み込んで配置する際に容易に組み込むことができる。
【0013】
上記減速機において、止め輪の周方向の両端間には、隙間が設けられていてもよい。このようにすることにより、止め輪の切断箇所が把握し易くなり、また、弾性変形しやすくなり、止め輪の組み込みをより容易にすることができる。
【0014】
上記減速機において、第2内輪の内径側には、外径側に凹み、止め輪が嵌め込まれる環状溝が形成されていてもよい。このようにすることにより、第2内輪に形成された環状溝を利用して、止め輪の軸方向の移動を規制することができる。したがって、より確実に保持リングを第2内輪の内径側に保持することができる。
【0015】
上記減速機において、リング鍔部には、外径側から内径側に凹み、外周ピンの外周面を受け入れる円弧状のリング凹部が周方向に並んで複数形成されていてもよい。このようにすることにより、外周ピンの外周面に沿ったリング凹部を利用して、適切に外周ピンを保持することができる。したがって、外周ピンの周方向の位置をより適切にすることができる。したがって、より円滑に減速機を作動させることができる。
【0016】
上記減速機において、リング鍔部の外周面は、軸方向に沿って延びており、周方向に円弧状に連なっていてもよい。このような形状の保持リングは、比較的シンプルな構造である。したがって、さらに安価に製造することができる。
【0017】
上記減速機において、リング鍔部の軸方向の端面は、平面であって、軸方向においてサイクロイド歯車と対向していてもよい。このようにすることにより、一対の保持リングに設けられたリング鍔部の軸方向の端面によって、サイクロイド歯車を軸方向において適切に案内することができる。したがって、サイクロイド歯車の軸方向の移動を規制して、より円滑に減速機を作動させることができる。
【0018】
上記減速機において、第2内輪のうち、径方向において外周ピンが配置される位置の外径側には、軸方向に凹む取り付け穴が形成されていてもよい。このようにすることにより、第2内輪に取り付け穴を形成する場合において、取り付け穴を設けるための第2内輪の肉厚を十分に確保しながら、第2内輪の軸方向の長さを短くして、減速機全体として軸方向の長さを小さくすることができ、装置のコンパクト化を図ることが容易となる。
【0019】
上記減速機において、第2内輪の内周面には、外周ピンの外形形状を受け入れる円弧状の外周ピン収容溝が設けられていてもよい。外周ピンは、軸方向の両側から第2内輪の内径側に配置可能であってもよい。このようにすることにより、外周ピンを第2内輪の内径側に配置する際に、軸方向のいずれか一方の好ましい側から挿入するようにして配置することができる。したがって、組み立ての自由度をアップさせることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0020】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の減速機の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0021】
(実施の形態1)
まず、本開示の実施の形態である実施の形態1について説明する。
図1は、本開示の実施の形態1における減速機を示す概略斜視図である。
図2は、
図1に示す減速機の概略正面図である。
図3は、
図1に示す減速機の概略側面図である。
図4は、
図1に示す減速機の概略背面図である。
図5は、
図2中の線分V-Vで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
図6は、
図5中の領域VIに示す減速機の断面の一部を拡大して示す図である。
図5および
図6は、X-Z平面に平行な断面で切断した場合を示す。
図7は、
図2中の線分VII-VIIで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
図7は、後述する取り付け穴を含む周方向の位置で切断した場合の断面図である。
図8は、
図3中の線分VIII-VIIIで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
図8は、Y-Z平面に平行な断面で切断した場合を示す。
図9は、後述する第1ホルダ部、第2ホルダ部、保持リングおよびスラストワッシャを取り除いた状態の
図1に示す減速機の概略斜視図である。なお、
図1等に示す矢印Xで示す方向で軸方向を示し、矢印Yで示す方向および矢印Zで示す方向で径方向を示す。矢印Yと矢印Zは90度で交差している。また、
図1以下に示す一点鎖線により、減速機10aの回転中心軸Rを示す。
【0022】
図1~
図9を参照して、本開示の実施の形態1における減速機10aは、高速で回転する入力軸11aの回転速度を減速して後述する出力軸から出力する。本実施形態においては、減速比は、1/36である。すなわち、例えば入力軸の回転数が3000rpm(revolutions per minute)であった時、出力軸の回転数は、約83.3rpmとなる。なお、減速比についてはもちろん要求に応じて、いずれも後述するサイクロイド歯車の歯数や外周ピンの数、第1内輪の偏心度合い等に応じて任意に定められる。
【0023】
減速機10aは、入力軸11aと、第1軸受31a,31bと、サイクロイド歯車13a,13bと、複数の内周ピン14aと、内周ピンホルダ15aと、第2軸受16aと、複数の外周ピン17aと、一対の保持リング18a,18bと、一対の止め輪19a,19bと、を含む。第1軸受31a,31bおよびサイクロイド歯車13a,13bはそれぞれ、軸方向に並べて一対配置されている。以下、各構成要素について説明する。
【0024】
図10は、入力軸11aおよび入力軸11aに取り付けられた第1軸受31a,31bの一部を示す概略斜視図である。
図11は、
図10中の線分XI-XIで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
図11は、X-Z平面に平行な断面で切断した場合を示す。
図12は、入力軸11aを示す概略斜視図である。
【0025】
図10、
図11および
図12を併せて参照して、入力軸11aは、回転中心軸Rを回転中心として回転する。後述するように、高速で回転する入力軸11aからの入力を、低速で回転する出力軸で出力する。入力軸11aは、中空円筒状の形状を有する。具体的には、入力軸11aには、軸方向の一方側の端部である第1軸端部21aから軸方向の他方側の端部である第2軸端部22aに至るまで軸方向に貫通する軸貫通穴23aが設けられている。軸貫通穴23aを構成する入力軸11aの内周面25aには、軸内周面キー溝24aが設けられている。軸内周面キー溝24aは、内周面25aの周方向の一部を外径側に凹ませるようにして設けられている。このような軸内周面キー溝24aを利用して、入力軸11aにモータの回転軸(図示せず)を連結した際に、回転軸に対して入力軸11aが回転方向に滑ることを抑制することができる。なお、必要に応じて、入力軸11aは、中実円筒状としてもよい。
【0026】
入力軸11aは、回転中心軸Rに対して偏心した偏心部26a,26bを含む。偏心部26a,26bは、軸方向に間隔をあけて並べて形成されている。偏心部26a,26bは、周方向に180度位相をずらして形成されている。偏心部26a,26bの軸方向の間には、外径側へ突出し、軸方向に見て円板状の仕切り部27aが形成されている。軸方向において第1軸端部21a側の偏心部26aの境界には、外周面25bを円環状に連なって溝状に凹ませた第1溝部28aが形成されている(特に
図6参照)。軸方向において第2軸端部22a側の偏心部26bの境界には、外周面25bを円環状に連なって溝状に凹ませた第2溝部28bが形成されている。
【0027】
入力軸11aの材質としては、例えば金属が挙げられる。本実施形態においては、入力軸11aの材質として、アルミニウムが採用されている。なお、入力軸11aの材質としては、モータのトルクを受けることができる材質であればよく、例えば、樹脂であってもよい。
【0028】
入力軸11aには、入力軸11aを支持する2つの軸受である第1入力軸用軸受29aおよび第2入力軸用軸受29bが取り付けられている。第1入力軸用軸受29aは、第1軸端部21a側に取り付けられ、第2入力軸用軸受29bは、第2軸端部22a側に取り付けられている。第1入力軸用軸受29aと第2入力軸用軸受29bとは、軸方向に間隔をあけて配置されている。第1入力軸用軸受29aの内輪および第2入力軸用軸受29bの内輪は共に、入力軸11aに固定されている。第1入力軸用軸受29aの外輪および第2入力軸用軸受29bの外輪は共に、固定部である後述の内周ピンホルダ15aに固定されている。第1入力軸用軸受29aおよび第2入力軸用軸受29bはそれぞれ、例えば深溝玉軸受である。このような第1入力軸用軸受29aおよび第2入力軸用軸受29bによって、入力軸11aは、回転可能に支持されている。なお、第1入力軸用軸受29aは、内周ピンホルダ15aに含まれる第1ホルダ部71aの段部78aと軸方向において接触しており、軸方向の移動が規制されている。また、第2入力軸用軸受29bは、内周ピンホルダ15aに含まれる第2ホルダ部71bの段部78bと軸方向において接触しており、軸方向の移動が規制されている。
【0029】
図13は、第1軸受31aの一部を示す概略斜視図である。
図14は、第1軸受31aに含まれる第1内輪32aを示す概略断面図である。
図13および
図14を併せて参照して、第1軸受31aは、第1内輪32aと、第1外輪33aと、ニードルケージ36aと、を含む。
図13は、第1内輪32aにニードルケージ36aを組み込んだ状態を示している。第1内輪32aは、偏心部26aに固定される。入力軸11aが回転すると、第1内輪32aは、偏心部26aと共に回転中心軸Rに対して偏心した回転運動を行う。なお、第1軸受31aに含まれる第1外輪33aは、後述するサイクロイド歯車13aの内径側に位置する環状部によって構成されている。ニードルケージ36aは、第1内輪32aと第1外輪33aとの径方向の間に配置される複数の転動体としてのローラ34aおよび複数のローラ34aを保持する保持器35aから構成される。ローラ34aは、第1内輪32aの外周面および第1外輪33aの内周面をそれぞれ軌道面として転動する。第1内輪32aの軸方向の端部には、外径側に延びる鍔部37aが設けられている。軸方向において鍔部37aが仕切り部27aと反対側となるように第1内輪32aは偏心部26aに取り付けられる。ニードルケージ36aは、鍔部37aおよび仕切り部27aにより軸方向の移動が規制される。
【0030】
第1軸受31bは、第1内輪32bと、第1外輪33bと、ニードルケージ36bと、を含む。第1内輪32bは、偏心部26bに固定される。入力軸11aが回転すると、第1内輪32bは、偏心部26bと共に回転中心軸Rに対して偏心した回転運動を行う。なお、第1軸受31bに含まれる第1外輪33bは、後述するサイクロイド歯車13bの内径側に位置する環状部によって構成されている。ニードルケージ36bは、第1内輪32bと第1外輪33bとの径方向の間に配置される複数の転動体としてのローラ34bおよび複数のローラ34bを保持する保持器35bから構成される。ローラ34bは、第1内輪32bの外周面および第1外輪33bの内周面をそれぞれ軌道面として転動する。第1内輪32bの軸方向の端部には、第1内輪32aと同様に外径側に延びる鍔部37bが設けられている。軸方向において鍔部37bが仕切り部27aと反対側となるように第1内輪32bは偏心部26bに取り付けられる。ニードルケージ36bは、鍔部37bおよび仕切り部27aにより軸方向の移動が規制される。
【0031】
第1軸受31a,31bはそれぞれ、軸方向において第1入力軸用軸受29aと第2入力軸用軸受29bとの間に配置される。第1入力軸用軸受29aと第1軸受31aとが軸方向に隣り合うように配置され、第2入力軸用軸受29bと第1軸受31bとが軸方向に隣り合うように配置される。
【0032】
次に、内周ピン14aの構成について説明する。
図15は、内周ピン14aの一部を破線で示した概略斜視図である。なお、理解を容易にする観点から、内周ピン14aを構成する部材の一部を可視化すると共に破線で示している。
図15を併せて参照して、内周ピン14aは、中空円筒状の軸部61aと、それぞれ軸部61aの外径よりも大きい内径を有する円環状の2つの内周ピン外輪62a,62bと、軸部61aの外周面と内周ピン外輪62a,62bの内周面との間にそれぞれ配置される複数の転動体としてのローラ63aと、スラスト方向に配置される複数のスラストワッシャ64a,64b,64c,64dと、を含む。すなわち、内周ピン14aは、複数のローラ63aを転動体とした転がり軸受で構成されている。内周ピン外輪62a,62bは、スラストワッシャ64b,64cを挟んで軸方向に並べて配置されている。スラストワッシャ64a,64b,64c,64dはそれぞれ、例えばPEEK(Polyetheretherketone)等の熱可塑性樹脂から構成されるが、これに限定されない。内周ピン14aは、いわゆる保持器を含まず、総ころ形式である。なお、内周ピン14aは、滑り軸受で構成されていてもよい。内周ピン14aは、いわゆる遊星軸として機能する。本実施形態においては、内周ピン14aは、合計6つ設けられている。内周ピン14aはそれぞれ、後述するサイクロイド歯車の13a,13bの第2貫通穴52aを軸方向に貫通する。
【0033】
次に、内周ピンホルダ15aの構成について説明する。
図16は、第1ホルダ部71aと第2ホルダ部71bとを組み合わせて内周ピン14aを保持した状態を示す内周ピンホルダ15aの概略斜視図である。
図16においては、理解を容易にする観点から、後述する第2外輪81b、第1入力軸用軸受29aおよび第2入力軸用軸受29b等も併せて図示している。
図17は、第1ホルダ部71aの概略斜視図である。
図18は、第2ホルダ部71bの概略正面図である。
図16、
図17および
図18を併せて参照して、内周ピンホルダ15aは、第1ホルダ部71aと、第2ホルダ部71bと、を含む。内周ピンホルダ15aは、複数の内周ピン14aの軸方向の両端部を保持し、入力軸11aの外周面25bを取り囲む。内周ピンホルダ15aは、内周ピン14a、具体的には、内周ピン14aに含まれる軸部61aの両端を支持する。内周ピンホルダ15aは、内周ピン14aの軸部61aを遊星軸とした場合において、遊星軸を支持する遊星軸支持部として機能する。
【0034】
第1ホルダ部71aは、厚さ方向に貫通する貫通穴が径方向の中央に設けられた円板状の板状部72aと、板状部72aの厚さ方向の一方の面から厚さ方向に突出する複数の支持柱73aと、を含む。板状部72aと複数の支持柱73aは、一体で成形されている。本実施形態においては、支持柱73aは、120度間隔で3つ設けられている。板状部72aには、内周ピン14aの軸部61aの一方端部を圧入可能な圧入穴74aが周方向に間隔をあけて複数設けられている。圧入穴74aは、板状部72aの厚さ方向に貫通しており、内周ピン14aの数に合わせて合計6つ設けられている。
【0035】
支持柱73aは、第1ホルダ部71aの板状部72aと第2ホルダ部71bとを繋ぐ部分である。支持柱73aはそれぞれ、減速機10aに組み込まれた際に、後述するサイクロイド歯車13a,13bのそれぞれの第2貫通穴52a,52b内に配置される。支持柱73aの周方向の両側面は、内周ピン14aに含まれる内周ピン外輪62a,62bの外形形状に沿うよう、軸方向に見て周方向に円弧状に凹んだ形状である。支持柱73aの径方向の両側面は、軸方向に見て円弧状である。支持柱73aにはそれぞれ、板状部72aの厚さ方向に凹み、第2ホルダ部71bに第1ホルダ部71aを取り付ける際に利用されるネジ穴76aが設けられている。本実施形態においては、ネジ穴76aは、周方向に120度の間隔をあけて3つ設けられている。
【0036】
第2ホルダ部71bは、厚さ方向に貫通する貫通穴が径方向の中央に設けられた円板状である。第2ホルダ部71bは、径方向の中央側に配置される第1部分72bと、第1部分72bの外径側に配置され、第1部分72bよりも薄い第2部分73bと、第2部分73bの外径側に配置され、第2部分73bよりも厚い第3部分74bと、を含む。第1部分72bには、内周ピン14aの軸部61aの他方端部を圧入可能な圧入穴75bが周方向に間隔をあけて複数設けられている。圧入穴75bは、第2ホルダ部71bの厚さ方向に貫通しており、内周ピン14aの数に合わせて合計6つ設けられている。第1部分72bには、第1部分72bの厚さ方向に貫通し、第2ホルダ部71bに第1ホルダ部71aを取り付ける際に利用される貫通穴76bが周方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態においては、ネジ穴76aの数および配置に応じて、貫通穴76bは120度間隔で3つ設けられている。第2ホルダ部71bの第2部分73bは、軸方向において後述する第2軸受16aの第2内輪81aと隣り合って配置される。また、第2ホルダ部71bの第3部分74bには、厚さ方向に貫通する貫通穴77bが周方向に間隔をあけて複数設けられている。この貫通穴77bは、後述する第2軸受16aの第2外輪81bと第2ホルダ部71bとをボルト45aにより締結して固定する際に、ボルト穴として利用される。すなわち、ボルト45aを介して第2外輪81bは、第2ホルダ部71bに固定される。
【0037】
内周ピンホルダ15aの組み立て方法の一例について簡単に説明すると、以下の通りである。まず、第1ホルダ部71aの6つの圧入穴74aに、6つの内周ピン14aの軸部61aの一方端部をそれぞれ圧入する。第2ホルダ部71bの6つの圧入穴75bに内周ピン14aの軸部61aの他方端部をそれぞれ圧入する。その後、準備した3つのボルト79aを用いて、背面側からボルト79aの胴部のそれぞれを3つの貫通穴76bに貫通させ、3つのネジ穴76aを利用して締結することにより、内周ピンホルダ15aが組み立てられる。なお、2つの内周ピン14aおよび2つの内周ピン14aの周方向の間に配置される支持柱73aは、後述するサイクロイド歯車13a,13bのそれぞれの第2貫通穴52a内に配置される。
【0038】
次に、サイクロイド歯車13aの構成について説明する。
図19は、サイクロイド歯車13aの概略斜視図である。
図20は、サイクロイド歯車13aの概略背面図である。
図20は、サイクロイド歯車13aを軸方向から見た図である。
図19および
図20を併せて参照して、サイクロイド歯車13aは、入力軸11aの外径側に配置される。サイクロイド歯車13aは、外周面に周方向に沿って並ぶ複数の外歯53aを有する。本実施形態においては、外歯53aは、エピトロコイド平行曲線の形状を有している。外歯53aの数は、本実施形態においては、35である。サイクロイド歯車13aには、入力軸11aが貫通する丸穴状の第1貫通穴51aおよび第1貫通穴51aの外径側において周方向に間隔をあけて配置される複数の第2貫通穴52aが設けられている。本実施形態においては、第2貫通穴52aは、3つ設けられている。サイクロイド歯車13aの第1貫通穴51aの外径側の領域は、第1軸受31aの第1外輪33aを構成する。本実施形態においては、サイクロイド歯車13aと第1軸受31aに含まれる第1外輪33aとは、一体となるように構成されている。すなわち、第1貫通穴51aの内周面が、ローラ34aが転動する軌道面となる。第2貫通穴52aはそれぞれ、周方向に沿って延びる長穴状であり、径方向(内径側および外径側)に位置する壁面がそれぞれ円弧状の部分を有する。減速機10aの組み立て時において、第2貫通穴52aと、第2貫通穴52a内に配置される2つの内周ピン14aとの間には、周方向の隙間を有する。また、サイクロイド歯車13aと後述する外周ピン17aとの間にも、隙間を有する。
【0039】
サイクロイド歯車13bは、サイクロイド歯車13aと同様に、外周面に周方向に沿って並ぶ複数の外歯53bを有する。また、サイクロイド歯車13bは、サイクロイド歯車13aと同様に、入力軸11aの外径側に配置され、第1貫通穴と、複数、本実施形態においては、3つの第2貫通穴と、を含む。サイクロイド歯車13bの第1貫通穴の外径側の領域は、第1軸受31bの第1外輪33bを構成する。本実施形態においては、サイクロイド歯車13bと第1軸受31bに含まれる第1外輪33bとは、一体となるように構成されている。すなわち、第1貫通穴の内周面が、ローラ34bが転動する軌道面となる。サイクロイド歯車13bの構成は、サイクロイド歯車13aの構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。サイクロイド歯車13aとサイクロイド歯車13bとは、軸方向に並べて配置される。サイクロイド歯車13aとサイクロイド歯車13bとの軸方向の間には、スラストワッシャ65aが配置される。
【0040】
次に、外周ピン17aの構成について簡単に説明する。外周ピン17aは、中実円筒状である。外周ピン17aの軸方向の両端には、面取りが施されている。外周ピン17aは、軸方向が矢印Xで示す方向となるように、減速機10a内において配置される。本実施形態においては、外周ピン17aの数は、36である。すなわち、上記したサイクロイド歯車13a、13bのそれぞれの外歯53a,53bの歯数よりも1つ多い構成となっている。外周ピン17aは、サイクロイド歯車13a,13bのそれぞれの外歯53a,53bと噛み合う。なお、外周ピン17aは、後述する一対の保持リングによって軸方向の移動が規制される。これについては、後に詳述する。
【0041】
次に、主軸受である第2軸受16aの構成について説明する。減速機10aの主軸受である第2軸受16aは、軌道面82a,82bを有する第2内輪81aと、軌道面83a,83bを有する第2外輪81bと、複数の円筒ころ84aと、円筒ころ84aを保持する保持器85aと、を含む。本開示の実施の形態1の減速機10aについては、第2軸受16aの第2内輪81aが、入力軸11aの回転を減速させて出力する出力軸となっている。
【0042】
第2軸受16aは、クロスローラベアリングである。すなわち、主軸受に含まれる複数の円筒ころ84aはそれぞれ、第2内輪81aと第2外輪81bとの径方向の間に設けられた空間において、交互に直交させるようにして配置されている。具体的には、周方向に隣り合う2つの円筒ころ84aの転動軸は、それぞれ互いに直交している。
【0043】
第2外輪81bは、円環状である。軌道面83a,83bは、断面V字状に外径側に凹むように設けられている。軌道面83a,83bは、軸方向に対してそれぞれ45度傾斜している。第2外輪81bには、周方向に間隔をあけて複数のボルト穴89bが形成されている。このボルト穴と第2ホルダ部に設けられた貫通穴を利用して、ボルトにより第2外輪81bは、第2ホルダ部71bに締結されている。第2ホルダ部71bは、固定軸であるため、第2外輪81bも固定されている。すなわち、第2外輪81bについても固定部となり、内周ピンホルダ15aと同様に自転および公転しない部材となっている。
【0044】
次に、第2内輪81aの構成について説明する。
図21は、第2内輪81aの概略斜視図である。
図21において、理解を容易にする観点から、外周ピン17aも併せて図示している。
図22は、第2内輪81aの概略正面図である。
図23および
図24は、第2内輪81aの概略斜視図である。
図23および
図24は、それぞれ異なる向きから見た図である。
図25は、
図22中の線分XXV-XXVで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
図22~
図25において、理解を容易にする観点から、一対の保持リング18a,18bおよび一対の止め輪19a,19bも併せて図示している。
【0045】
併せて
図21~
図25を参照して、第2内輪81aは、円環状の部材であって、外周面に円筒ころ84aが転動する軌道面82a,82aが設けられている。軌道面82a,82bは、断面V字状に内径側に凹むように設けられている。軌道面82a,82bは、軸方向に対してそれぞれ45度傾斜している。
【0046】
第2内輪81aには、軸方向の端面から円筒ころ84aが配置される領域に至るまで貫通し、円筒ころ84aを挿入する挿入穴41aが設けられている。挿入穴41aから複数の円筒ころ84aが順次挿入される。全ての円筒ころ84aが挿入された後、挿入穴41aは蓋部42aによって塞がれる。蓋部42aはボルトにより固定される。
【0047】
第2内輪81aには、軸方向に凹む取り付け穴43aが形成されている。具体的には、取り付け穴43aの開口は、軸方向において第1軸端部21a側となるように設けられている。取り付け穴43aは、周方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態においては、周方向に間隔をあけて16個設けられている。取り付け穴43aは、第2内輪81aのうち、径方向において外周ピン17aが配置される位置の外径側に形成される。取り付け穴43aは、出力軸である第2内輪81aからの出力を利用する際に有効に用いられる。すなわち、取り付け穴43aを利用して第2内輪81aと他部材とをボルト等を介して連結し、他部材からの減速された出力を得ることができる。
【0048】
第2内輪81aの内周面86aには、外周ピン17aの外形形状を受け入れる円弧状の外周ピン収容溝87aが設けられている。外周ピン収容溝87aを構成する壁面は、軸方向に見て円弧面の一部を構成する曲面を含む。第2内輪81aの内周面86aには、軸方向に見て単に外径側へ凹む溝部87bも設けられている。外周ピン収容溝87aと溝部87bとは、周方向に沿って1つおきに並んで配置される。すなわち、外周ピン17aは、第2内輪81aの内径側の溝状に凹んだ部分において、周方向に1つおきに配置される。
【0049】
第2内輪81aの内周面86aには、外径側に環状に凹み、止め輪19a,19bが嵌め込まれる環状溝88a,88bが形成されている。環状溝88a,88bは、軸方向に間隔をあけて一対設けられている。一対の環状溝88a,88bは、外周ピン収容溝87aの軸方向の両外側、すなわち、軸方向において外周ピン収容溝87aの両端部側に形成されている。
【0050】
次に、保持リング18aの構成について説明する。
図26は、保持リング18aの概略背面図である。
図27は、
図26中の線分XXVII-XXVIIで示す断面で切断した場合の概略断面図である。
【0051】
図26および
図27を併せて参照して、保持リング18aの全体形状は、円環状である。保持リング18aは、軸方向に貫通するリング貫通穴91aが径方向の中央に設けられている。保持リング18aは、軸方向において外周ピン17aの端面と対向する円環状のリング平板部92aと、リング平板部92aの内径側の端部から軸方向に延びるリング鍔部93aと、を含む。保持リング18aは、外周ピン17aの軸方向の一方端部側、具体的には、軸方向において入力軸11aの第1軸端部21a側に配置される。
【0052】
保持リング18aの外径寸法は、周方向に並んで配置される外周ピン17aの外接円径の寸法と同等である。保持リング18aの内径寸法は、第1ホルダ部71aの外径寸法よりもやや大きく構成されている。このようにすることにより、保持リング18aと第1ホルダ部71aとの径方向における干渉を回避することができる。なお、保持リング18bは、第2ホルダ部71bとも径方向において干渉を回避するよう構成されている。
【0053】
リング鍔部93aには、外径側から内径側に凹み、外周ピン17aの外周面を受け入れる円弧状のリング凹部94aが設けられている。リング凹部94aは、周方向に並んで複数形成されている。
【0054】
保持リング18aは、外周ピン17aの移動を規制する。具体的には、リング平板部92aにより、外周ピン17aの軸方向の移動が規制される。また、リング鍔部93aにより外周ピン17aの径方向、具体的には内径側への移動が規制される。
【0055】
なお、保持リング18bは、保持リング18aと同様の構成であるため、その説明を省略する。保持リング18bは、外周ピン17aの軸方向の他方端部側、具体的には、軸方向において、入力軸11aの第2軸端部22a側に配置される。すなわち、一対の保持リング18a,18bは、軸方向において、リング鍔部93aが向かい合うように配置される。なお、保持リング18aのリング鍔部93aの軸方向の端面95aは、平面である。保持リング18aのリング鍔部93aの端面95aは、軸方向においてサイクロイド歯車13aと対向している。また、保持リング18bのリング鍔部の軸方向の端面は、平面である。保持リング18bのリング鍔部の端面は、軸方向においてサイクロイド歯車13bと対向している。
【0056】
止め輪19aは、円弧状であって平板状である。止め輪19aは、環状の平板の部材の一部を切り欠いた形状である。すなわち、止め輪19aは、周方向に切断されている。止め輪19aの周方向の両端間には、隙間96aが設けられている。止め輪19aの外径寸法は、保持リング18aの外径寸法よりもやや大きい。止め輪19aの外径寸法は、減速機10aの取り付け時において、第2内輪81aの内周面86aに設けられた環状溝88aに嵌め込み可能な寸法である。止め輪19aの内径寸法は、保持リング18aの内径寸法よりもやや大きく構成されている。止め輪19aは、保持リング18aの軸方向の一方端部側、具体的には、軸方向において入力軸11aの第1軸端部21a側に配置される。止め輪19aは、内径側に縮径させた状態で、第2内輪81aの内径側に配置させることができる。配置後、止め輪19aは、弾性変形により元の形状に戻り、環状溝に嵌め込まれる。このようにして、保持リング18aの軸方向の移動が規制される。
【0057】
止め輪19bの周方向の両端間には、隙間96bが設けられている。止め輪19bの構成は、止め輪19aの構成と同様であるため、その説明を省略する。止め輪19bは、保持リング18aの軸方向の他方端部側、具体的には、軸方向において入力軸11aの第2軸端部22a側に配置される。止め輪19bは、内径側に縮径させた状態で、第2内輪81aの内径側に配置させることができる。配置後、止め輪19bは、弾性変形により元の形状に戻り、環状溝に嵌め込まれる。このようにして、保持リング18bの軸方向の移動が規制される。
【0058】
次に、上記した減速機10aの組み立て方法の一例について簡単に説明する。予め第1ホルダ部71aに入力軸11a、サイクロイド歯車13a,13b、内周ピン14a等を組み込んでおく。また、第2内輪81aに第2外輪81b、円筒ころ84aおよび保持器85aを組み合わせ、第2軸受16aを組み立てておく。そして、入力軸11aの第1軸端部21a側の保持リング18aを第2内輪81aに取り付け、止め輪19aを第2内輪81aの内径側の環状溝88aに嵌め込んでおく。次に、第1ホルダ部71aを下側に向けて、上側から第2内輪81aを第1ホルダ部71aに嵌める。この際、サイクロイド歯車13a,13bのそれぞれの外歯53a,53bと外周ピン収容溝87aの位相とを合わせる。その後、上側から外周ピン収容溝87aに1つずつ外周ピン17aを順次組み込んでいく。その後、上側から保持リング18bを取り付け、止め輪19bを環状溝88bに嵌め込む。最後に第2ホルダ部71bを上側から取り付け、第2ホルダ部71bと第1ホルダ部71aとをボルト79aで締結して固定する。また、第2ホルダ部71bと第2外輪81bとをボルト45aにて締結して固定する。このようにして、上記した減速機10aを組み立てる。
【0059】
次に、上記した本開示の実施の形態1における減速機10aの動作について説明する。まず、モータ(図示せず)が駆動すると、モータに取り付けられた入力軸11aが高速で回転する。これに伴って、サイクロイド歯車13a,13bの中心が入力軸11aの中心の周りを回転(公転)すると共に、サイクロイド歯車13a,13bのそれぞれの外歯53a,53bが外周ピン17aに接触する。このとき、サイクロイド歯車13a,13bは、第2内輪81aの内周側において揺動するが、内周ピンホルダ15aが第2外輪81bに固定されているため、自転しない。また、内周ピン14aの内周ピン外輪62a,62bは、サイクロイド歯車13a,13bの第2貫通穴52aの内側面との接触によって回転する。そして、第2内輪81aが低速で回転して出力される。このようにして減速機10aは動作する。
【0060】
本開示の減速機10aによると、外周ピン17aは、一対の保持リング18a,18bによって移動が規制される。そうすると、第2内輪81aにおいて、外周ピン17aを保持する機構を設ける必要がないため、第2内輪81aの加工が容易になる。なお、上記構成の保持リング18a,18bは、比較的シンプルな形状であるため、保持リング18a,18bも安価に製造することができる。したがって、生産性の向上を図ることができる。
【0061】
本実施形態においては、保持リング18a,18bの軸方向の両端側に配置され、保持リング18a,18bの軸方向の移動を規制する止め輪19a,19bを含む。止め輪19a,19bは、周方向に切断されている。よって、保持リング18a,18bの軸方向の移動を止め輪19a,19bによって規制することができ、保持リング18a,18bの案内に利用することができる。また、このような止め輪19a,19bは、周方向に切断されているため、第2内輪81aの内径側に組み込んで配置する際に容易に組み込むことができる。
【0062】
本実施形態においては、止め輪19a,19bの周方向の両端間には、隙間96a,96bが設けられている。よって、止め輪19a,19bの切断箇所が把握し易くなり、また、弾性変形しやすくなり、止め輪19a,19bの組み込みをより容易にすることができる。
【0063】
本実施形態においては、第2内輪81aの内径側には、外径側に凹み、止め輪19a,19bが嵌め込まれる環状溝88a,88bが形成されている。よって、第2内輪81aに形成された環状溝88a,88bを利用して、止め輪19a,19bの軸方向の移動を規制することができる。したがって、より確実に保持リング18a,18bを第2内輪81aの内径側に保持することができる。
【0064】
本実施形態においては、リング鍔部93aには、外径側から内径側に凹み、外周ピン17aの外周面を受け入れる円弧状のリング凹部94aが周方向に並んで複数形成されている。よって、外周ピン17aの外周面に沿ったリング凹部94aを利用して、適切に外周ピン17aを保持することができる。したがって、外周ピン17aの周方向の位置をより適切にすることができる。したがって、より円滑に減速機10aを作動させることができる。
【0065】
本実施形態においては、リング鍔部93aの軸方向の端面95aは、平面であって、軸方向においてサイクロイド歯車13aと対向している。よって、一対の保持リング18a,18bに設けられたリング鍔部93aの軸方向の端面95aによって、サイクロイド歯車13a,13bを軸方向において適切に案内することができる。したがって、サイクロイド歯車13a,13bの軸方向の移動を規制して、より円滑に減速機10aを作動させることができる。
【0066】
本実施形態においては、第2内輪81aのうち、径方向において外周ピン17aが配置される位置の外径側には、軸方向に凹む取り付け穴43aが形成されている。よって、第2内輪81aに取り付け穴43aを形成する場合において、取り付け穴43aを設けるための第2内輪の肉厚を十分に確保しながら、第2内輪81aの軸方向の長さを短くして、減速機10a全体として軸方向の長さを小さくすることができ、装置のコンパクト化を図ることが容易となる。
【0067】
本実施形態においては、第2内輪81aの内周面86aには、外周ピン17aの外形形状を受け入れる円弧状の外周ピン収容溝87aが設けられている。外周ピン17aは、軸方向の両側から第2内輪81aの内径側に配置可能である。よって、外周ピン17aを第2内輪81aの内径側に配置する際に、軸方向のいずれか一方の好ましい側から挿入するようにして配置することができる。したがって、組み立ての自由度をアップさせることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0068】
(実施の形態2)
他の実施の形態である実施の形態2について説明する。
図28は、本開示の実施の形態2における減速機に含まれる保持リングを示す概略背面図である。
図29は、
図28中の線分XXIX-XXIXで示す断面で切断した場合の概略断面図である。実施の形態2における減速機は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2の減速機は、保持リングの構成が、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0069】
図28および
図29を併せて参照して、保持リング18cは、リング貫通穴91cが設けられており、軸方向において外周ピン17aの端面と対向する円環状のリング平板部92cと、リング平板部92cの内径側の端部から軸方向に延びるリング鍔部93cと、を含む。保持リング18cは、外周ピン17aの軸方向の一方端部側、具体的には例えば、軸方向において入力軸11aの第1軸端部21a側に配置される。
【0070】
保持リング18cの外径寸法および内径寸法は、実施の形態1における保持リング18aの外形寸法および内径寸法と同様である。ここで、リング鍔部93cの外周面96cは、実施の形態1の場合と異なり、軸方向に沿って延びており、周方向に円弧状に連なっている。すなわち、リング鍔部93cの外周面96cは軸方向に沿って真っ直ぐに延びる形状である。
【0071】
このような形状の保持リング18cは、比較的シンプルな構造である。したがって、さらに安価に製造することができる。
【0072】
(他の実施の形態)
なお、上記の実施の形態においては、止め輪の周方向の両端間には、隙間が設けられていることとしたが、これに限らず、止め輪の周方向の両端間に隙間を設けず、単に止め輪の周方向の一部が切断されていてもよい。また、止め輪の周方向の両端部のうちの一方の外周側には、内径側に凹む切り欠きが形成されていることとしたが、この切り欠きは、両端部の外周側に形成されていることとしてもよい。すなわち、止め輪の周方向の両端部のうちの少なくともいずれか一方の外周側には、内径側に凹む切り欠きが形成されていることとしてもよい。また、この切り欠きを設けない構成を採用してもよい。
【0073】
また、上記の実施の形態においては、保持リングは、止め輪によって軸方向の移動が規制されることとしたが、これに限らず、保持リングは、ボルトを用いた他の部材との締結等、保持リングと他の部材とを固定することにより軸方向の移動が規制されることにしてもよい。
【0074】
なお、上記の実施の形態においては、サイクロイド歯車を軸方向に並んで一対設けることとしたが、これに限らず、減速機は、サイクロイド歯車を一つ含む構成としてもよい。
【0075】
また、上記の実施の形態においては、単列のクロスローラベアリングを採用することとしたが、これに限らず、複列としてもよいし、アンギュラベアリングを採用することにしてもよい。また、第1軸受および第2軸受の少なくともいずれか一方は、他の軸受、例えばラジアル軸受とアキシアル軸受を組み合わせたものを採用することにしてもよい。また、滑り軸受であってもよい。
【0076】
なお、上記の実施の形態においては、クロスローラベアリングは、円筒ころを保持する保持器を含むこととしたが、これに限らず、円筒ころ間に配置されるセパレータを含むこととしてもよいし、円筒ころを保持する部材を含まず、総ころ形式としてもよい。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
10a 減速機、11a 入力軸、13a,13b サイクロイド歯車、14a 内周ピン、15a 内周ピンホルダ、16a 第2軸受、17a 外周ピン、18a,18b,18c 保持リング、19a,19b 止め輪、21a 第1軸端部、22a 第2軸端部、23a 軸貫通穴、24a 軸内周面キー溝、25a,86a 内周面、25b,96c 外周面、26a,26b 偏心部、27a 仕切り部、28a 第1溝部、28b 第2溝部、29a 第1入力軸用軸受、29b 第2入力軸用軸受、31a,31b 第1軸受、32a,32b 第1内輪、33a,33b 第1外輪、34a,34b,63a ローラ、35a,35b,85a 保持器、36a,36b ニードルケージ、37a,37b 鍔部、41a 挿入穴、42a 蓋部、43a 取り付け穴、45a,79a ボルト、51a 第1貫通穴、52a 第2貫通穴、53a,53b 外歯、61a 軸部、62a,62b 内周ピン外輪、64a,64b,64c,64d,65a スラストワッシャ、71a 第1ホルダ部、71b 第2ホルダ部、72a 板状部、73a 支持柱、74a,75b 圧入穴、76a ネジ穴、76b,77b 貫通穴、78a,78b 段部、81a 第2内輪、81b 第2外輪、82a,82b,83a,83b 軌道面、84a 円筒ころ、87a 外周ピン収容溝、87b 溝部、88a,88b 環状溝、89b ボルト穴、91a,91c リング貫通穴、92a,92c リング平板部、93a,93c リング鍔部、94a リング凹部、95a 端面、96a,96b 隙間