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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120408
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】難燃性布帛及び作業服
(51)【国際特許分類】
   A41D 31/08 20190101AFI20240829BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A41D31/08
A41D13/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027188
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】河内 渉
(72)【発明者】
【氏名】内堀 恵太
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AB01
3B011AC14
3B211AB01
3B211AC14
(57)【要約】
【課題】染色が簡便であり、燃焼性試験において高い難燃性を示す難燃性布帛及びそれを含む作業服を提供する。
【解決手段】本発明の1以上の実施態様は、シリカ含有セルロース繊維を20質量%以上40質量%未満、リン系難燃剤を含有する難燃セルロース繊維を25~55質量%、アラミド繊維を10~50質量%含む、難燃性布帛に関する。本発明の1以上の実施態様は、前記難燃性布帛を含む作業服に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ含有セルロース繊維を20質量%以上40質量%未満、リン系難燃剤を含有する難燃セルロース繊維を25~55質量%、アラミド繊維を10~50質量%含む、難燃性布帛。
【請求項2】
前記シリカ含有セルロース繊維は、シリカ含有レーヨン繊維を含む、請求項1に記載の難燃性布帛。
【請求項3】
前記難燃セルロース繊維は、難燃レーヨン繊維を含む、請求項1に記載の難燃性布帛。
【請求項4】
前記アラミド繊維が、パラアラミド繊維及びメタアラミド繊維からなる群から選ばれる一つ以上を含む、請求項1に記載の難燃性布帛。
【請求項5】
GB8965.1-2020で規定のGB/T 5455-2014に基づいた燃焼性試験で測定した炭化長が20mm以下である、請求項1に記載の難燃性布帛。
【請求項6】
前記シリカ含有セルロース繊維は、シリカを10~30質量%含有する、請求項1に記載の難燃性布帛。
【請求項7】
前記難燃性布帛は、シリカを3.0~9.0質量%含む、請求項1に記載の難燃性布帛。
【請求項8】
前記シリカ含有セルロース繊維、前記難燃セルロース繊維、および前記アラミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維の繊維長が、38~127mmである、請求項1に記載の難燃性布帛。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の難燃性布帛を含む、作業服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維及びアラミド繊維を含む難燃性布帛及びそれを含む作業服に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性布帛として、モダクリル繊維等を含む布帛が広く用いられている。例えば、特許文献1には、モダクリル繊維、FRレーヨン繊維、及びアラミド繊維を含むアークおよび火災防護に使用する布帛が記載されている。また、特許文献2には、アンチモン化合物を含むモダクリル繊維、アラミド繊維等の耐熱繊維及びセルロース系繊維を含む難燃性繊維複合体を用いて布帛を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-529690号公報
【特許文献2】国際公開公報2004/097088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の布帛の場合、セルロース系繊維やアラミド繊維は反応染料で染色可能であるが、モダクリル繊維は反応染料で染色することができず、染色が煩雑であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、染色が簡便であり、燃焼性試験において高い難燃性を示す難燃性布帛及びそれを含む作業服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1以上の実施態様は、シリカ含有セルロース繊維を20質量%以上40質量%未満、リン系難燃剤を含有する難燃セルロース繊維を25~55質量%、アラミド繊維を10~50質量%含む、難燃性布帛に関する。
【0007】
本発明の1以上の実施態様は、前記難燃性布帛を含む作業服に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、染色が簡便であり、燃焼性試験において高い難燃性を示す難燃性布帛及びそれを含む作業服を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発明者は、難燃性が高く、染色が簡便な布帛を得るために検討を重ねた。その結果、アラミド繊維と、シリカ含有セルロース繊維及びリン系難燃剤を含有する難燃セルロース繊維を併用するとともに、布帛におけるシリカ含有セルロース繊維の配合量を所定の範囲にすることで、染色が簡便であり、燃焼性試験において高い難燃性を示す布帛が得られることを見出した。本発明の1以上の実施形態の難燃性布帛は、GB8965.1-2020で規定のGB/T 5455-2014に基づいた燃焼性試験で測定した炭化長が20mm以下であることが好ましい。本明細書において、GBは、中国国家標準を意味する。
【0010】
本明細書において、数値範囲が「~」で示されている場合、該数値範囲は両端値(上限及び下限)を含む。例えば、「A~B」という数値範囲は、A及びBという両端値を含む範囲であり、「A以上B以下」と同じ範囲である。また、本明細書において、数値範囲が複数記載されている場合、異なる数値範囲の上限及び下限を適宜組み合わせた数値範囲を含むものとする。
【0011】
本発明の1以上の実施形態の難燃性布帛は、シリカ含有セルロース繊維、リン系難燃剤を含有する難燃セルロース繊維、及びアラミド繊維を含む。
【0012】
前記シリカ含有セルロース繊維は、シリカを含有するセルロース繊維であればよく、特に限定されず、シリカ(SiO2)含有天然セルロース繊維でもよく、シリカ含有再生セルロース繊維でもよい。天然セルロース繊維としては、例えば、木綿、麻(亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ、大麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻を含む)、カポック、バナナ、ヤシ等が挙げられる。再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン繊維、キュプラ、リヨセル等が挙げられる。前記シリカ含有セルロース繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0013】
前記シリカ含有セルロース繊維は、例えば、染色の簡便性、難燃性及びコストの観点から、シリカ含有再生セルロース繊維であることが好ましく、シリカ含有レーヨン繊維であることがより好ましい。シリカ含有レーヨン繊維は、例えば、中国海龍繊維社製の「Silica Rayon」、ダイワボウレーヨン社製の「FR CORONA(登録商標)」等の市販の繊維中にシリカを含有するシリカ含有レーヨン繊維を用いてもよい。
【0014】
前記シリカ含有セルロース繊維は、難燃性の観点から、シリカを10質量%以上含むことが好ましく、13質量%以上含むことがより好ましく、15質量%以上含むことがさらに好ましい。前記シリカ含有レーヨン繊維は、繊維強度及び布帛強度の観点から、シリカを30質量%以下含むことが好ましく、25質量%以下含むことがより好ましく、20質量%以下含むことがさらに好ましい。具体的には、前記シリカ含有セルロース繊維は、シリカを10~30質量%、13~25質量%、又は15~20質量%含んでもよい。本明細書において、シリカ含有セルロース繊維におけるシリカの含有量は、SEM-EDS分析にて測定することができる。
【0015】
前記シリカ含有セルロース繊維の単繊維繊度は、特に限定されないが、強度の観点から、好ましくは1~20dtexであり、より好ましくは1.5~15dtexである。また、前記シリカ含有セルロース繊維の繊維長は、特に限定されないが、強度の観点から、好ましくは38~127mmであり、より好ましくは38~76mmである。
【0016】
前記難燃セルロース繊維は、リン系難燃剤を含有するセルロース繊維であればよく、特に限定されず、リン系難燃剤を含有する天然セルロース繊維でもよく、リン系難燃剤を含有する再生セルロース繊維でもよい。天然セルロース繊維及び再生セルロース繊維としては、特に限定されず、上述したものが挙げられる。
【0017】
前記リン系難燃剤は、特に限定されず、リン酸エステル系化合物、ハロゲンリン酸エステル系化合物、縮合リン酸エステル系化合物、ポリリン酸塩系化合物、及びポリリン酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0018】
前記難燃セルロース繊維は、例えば、染色の簡便性、難燃性及びコストの観点から、難燃再生セルロース繊維であることが好ましく、難燃レーヨン繊維であることがより好ましい。難燃レーヨン繊維としては、特に限定されないが、例えば、レンチング社製の「LenzingFR」等の市販品を用いてもよい。
【0019】
前記難燃セルロース繊維の単繊維繊度は、特に限定されないが、強度の観点から、好ましくは1~20dtexであり、より好ましくは1.5~15dtexである。また、前記難燃セルロース繊維の繊維長は、特に限定されないが、強度の観点から、好ましくは38~127mmであり、より好ましくは38~76mmである。
【0020】
前記アラミド繊維は、パラアラミド繊維であってもよく、メタアラミド繊維であってもよい。前記アラミド繊維の単繊維繊度は、特に限定されないが、強度の観点から、好ましくは1~20dtexであり、より好ましくは1.5~15dtexである。また、前記アラミド繊維の繊維長は、特に限定されないが、強度の観点から、好ましくは38~127mmであり、より好ましくは38~76mmである。
【0021】
前記難燃性布帛は、前記シリカ含有セルロース繊維を20質量%以上40質量%未満、前記難燃セルロース繊維を25~55質量%、前記アラミド繊維を10~50質量%含む。シリカ含有セルロース繊維の含有量が20質量%未満であるか、40質量%以上であると、難燃性が劣る。アラミド繊維、難燃セルロース繊維及びシリカ含有セルロース繊維を併用するとともに、シリカ含有セルロース繊維の配合量を所定の範囲に限定することで、難燃性が高い布帛が得られる。前記難燃性布帛は、前記シリカ含有セルロース繊維を20~38質量%、前記難燃セルロース繊維を25~50質量%、アラミド繊維を20~50質量%含むことが好ましく、前記シリカ含有セルロース繊維を20~35質量%、前記難燃セルロース繊維を28~45質量%、アラミド繊維を25~45質量%含むことがより好ましい。
【0022】
前記難燃性布帛は、難燃性及び布帛強度の観点から、シリカを3.0~9.0質量%含むことが好ましく、3.3~8.0質量%含むことがより好ましく、3.6~7.5質量%含むことがさらに好ましい。
【0023】
前記難燃性布帛は、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲内において、他の繊維を含んでもよい。他の繊維としては、例えば、シリカ含有セルロース繊維及び難燃セルロース繊維以外のセルロース繊維、ナイロン繊維等の反応染料で染色可能な繊維が挙げられる。前記難燃性布帛は、他の繊維を10質量%以下含んでもよく、8質量%以下含んでもよく、1質量%以下含んでもよい。
【0024】
前記他の繊維の単繊維繊度は、特に限定されないが、強度の観点から、好ましくは1~20dtexであり、より好ましくは1.5~15dtexである。また、前記他の繊維の繊維長は、特に限定されないが、強度の観点から、好ましくは38~127mmであり、より好ましくは38~76mmである。
【0025】
前記難燃性布帛の形態としては、特に限定されず、例えば織物及び編物等が挙げられる。前記織物の組織については、特に限定されず、平織、綾織、朱子織等の三原組織でもよく、ドビーやジャガー等の特殊織機を用いた柄織物でもよい。また、前記編物の組織も、特に限定されず、丸編、横編、経編のいずれでもよい。耐久性に優れるという観点から、前記難燃性布帛は、織物であることが好ましく、綾織の織物であることがより好ましい。
【0026】
前記難燃性布帛は、特に限定されないが、例えば、風合いや難燃性の観点から、目付が200~400g/m2であることが好ましく、より好ましくは220~380g/m2であり、さらに好ましくは250~350g/m2である。
【0027】
前記難燃性布帛は、難燃性に優れており、GB8965.1-2020で規定のGB/T 5455-2014に基づいた燃焼性試験で測定した炭化長が20mm以下であることが好ましく、18mm以下であることがより好ましい。また、前記難燃性布帛は、難燃性に優れており、GB8965.1-2020で規定のGB/T 5455-2014に基づいた燃焼性試験で測定した残炎時間が2.0秒以下であることが好ましく、1.0秒以下であることがより好ましく、0秒であることがさらに好ましい。また、前記難燃性布帛は、難燃性に優れており、GB8965.1-2020で規定のGB/T 5455-2014に基づいた燃焼性試験で測定した残じん時間が4.0秒以下であることが好ましく、3.0秒以下であることがより好ましく、2.0秒以下であることがさらに好ましく、1.0秒以下であることがさらにより好ましく、0秒であることが特に好ましい。GB8965.1-2020は、難燃防護服に関する中国国家標準である。
【0028】
前記難燃性布帛は、難燃性の洗濯耐久性に優れており、GB/T 17596-1998に従って50回洗濯後に、GB8965.1-2020で規定のGB/T 5455-2014に基づいた燃焼性試験で測定した炭化長が29mm以下であることが好ましく、28mm以下であることがより好ましく、27mm以下であることがさらに好ましく、26mm以下であることがさらにより好ましく、25mm以下であることが特に好ましい。また、前記難燃性布帛は、難燃性の洗濯耐久性に優れており、GB/T 17596-1998に従って50回洗濯後に、GB8965.1-2020で規定のGB/T 5455-2014に基づいた燃焼性試験で測定した残炎時間が2.0秒以下であることが好ましく、1.0秒以下であることがより好ましく、0秒であることがさらに好ましい。また、前記難燃性布帛は、難燃性の洗濯耐久性に優れており、GB/T 17596-1998に従って50回洗濯後に、GB8965.1-2020で規定のGB/T 5455-2014に基づいた燃焼性試験で測定した残じん時間が4.0秒以下であることが好ましく、3.0秒以下であることがより好ましく、2.0秒以下であることがさらに好ましく、1.5秒以下であることがさらにより好ましく、1.0秒以下であることが特に好ましい。GB8965.1-2020は、難燃防護服に関する中国国家標準である。
【0029】
前記難燃性布帛は、反応性染料を用いた1浴染色で染色可能である。
【0030】
反応染料としては公知の反応染料を使用することができる。反応染料の化学構造としては、例えば、ピラゾロンアゾ系、ベンゼンアゾ系、ナフタレンアゾ系、ピリドンアゾ系、アントラキノン系、金属錯塩型モノアゾ系、ホルマザン系、フタロシアニン系、ジスアゾ系、アジン系、ジオキサジン系等が挙げられる。反応染料の反応基としては、例えば、スルファートエチルスルホン基、ビニルスルホン基、ジクロロトリアジン基、モノクロロトリアジン基、モノフロロトリアジン基、トリクロロピリミジン基等が挙げられる。反応基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。反応染料としては、特に限定されないが、例えば、DyStar社製の「Remazol(登録商標)」、HANTSMAN社製の「NOVACRON(登録商標)」等の市販品を用いてもよい。
【0031】
染料液(染色浴)としては、反応染料を含む水混合液を用いることができる。反応染料の含有量としては、特に限定されず、布帛に対して、0.01~10%owfであることが好ましい。染料液は、通常、芒硝及びソ-ダ灰等の染色助剤を含む。染料液における芒硝の含有量としては、特に限定されないが、例えば、50~200g/Lであることが好ましい。染料液におけるソ-ダ灰の含有量としては、特に限定されないが、例えば、5~40g/Lであることが好ましい。
【0032】
反応染料を用いて染色を行う染色工程では、例えば、布帛を、反応染料を含む染色浴中に、40~50℃で、5~10分間浸漬させた後、芒硝を投入し、40~50℃で、5~10分経過後に、60~80℃まで昇温させ、ソーダ灰を投入し、60~80℃で30~90分間染色させることが好ましい。その後、例えば、摩擦堅牢度の向上させるため、30~40℃の水で水洗を5~10分間隔で、1~4回行い、更に60~80℃の熱湯にて、洗浄(ソーピング)を10~15分間隔で、1~3回行い、30~40℃にて酢酸で中和5分行い、30~40℃の水洗を5~10分行い、50~60℃で10~15分色止めを行うことが好ましい。ソーピング剤としては、反応染料用ソーピング剤を適宜用いることができ、特に限定されない。例えば、日華化学社製の「リポトールRK」等の市販のソーピング剤を用いてもよい。
【0033】
<作業服>
本発明の1以上の実施形態において、前記難燃性布帛は、難燃性が求められる作業服用布帛として好適に用いることができる。本発明の1以上の実施形態において、作業服は、前記の難燃性布帛を用い、公知の縫製方法により製造することができる。本発明の1以上の実施形態において、前記難燃性布帛が優れた難燃性を有するため、作業服も、難燃性に優れる。また、前記難燃性布帛を繰り返し洗濯した後においても優れた難燃性及び風合いを有するため、前記作業服は、洗濯を繰り返しても、その難燃性、風合いが維持される。本発明の1以上の実施形態において、前記作業服は、難燃性が求められるあらゆる作業時の作業服として用いることができる。例えば、特に限定されないが、消防員が着用する防護服(消防服)、石油、石化、石炭鉱山、電力及び溶接等の火災が起こり得る作業現場で着用する防護服、並びに金属加工等の粉塵爆発が想定される作業現場で着用する作業服として使用することができる。
【実施例0034】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例及び比較例にて用いた測定・評価方法は下記のとおりである。
【0036】
<シリカの含有量>
SEM-EDS分析(卓上走査電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置 JCM-6000PLUS、日本電子株式会社製)を用いて、下記条件のもと5gの原綿の分析を行い、おおよその元素の質量からシリカ含有量を求めた。
測定条件
加速電圧:15.0kV
PHAモード:T3
エネルギー範囲:0~20keV
【0037】
<難燃性>
GB8965.1-2020で規定に準じ、GB/T 5455-1997に基づいて燃焼性試験を行い、布帛の炭化長、残炎時間及び残じん時間を測定した。
<洗濯後の難燃性>
GB/T 17596-1998に従って50回洗濯後に、GB8965.1-2020で規定に準じ、GB/T 5455-1997に基づいて燃焼性試験を行い、布帛の炭化長、残炎時間及び残じん時間を測定した。
【0038】
<反応染料による染色性>
応染染料であるNOVACRON(登録商標) SUPER Black R(HANTSMAN社製)を含む染料液を用い、布帛を反応染料を含む染料液中に、40℃で、5分間浸漬させた後、芒硝を120g/Lの濃度になるように添加し、3℃/1分で80℃まで昇温させ、5分経過後にソーダ灰を投入しさせ、80℃で、60分間染色させた。反応染料の量は5%owfであった。その後、摩擦堅牢度の向上させるため水洗、ソーピング、酢酸で中和した後、再度水洗を実施した。ソーピング剤として、日華化学社製「リポトールRK」を用いた。目視にて反応染料による1浴染色性を評価した。
可:黒無地
不可:杢
【0039】
実施例及び比較例において、下記の繊維を用いた。
難燃レーヨン繊維:レンチング社製の「LenzingFR」、リン系難燃剤含有、単繊維繊度2.2dtex、繊維長51mm
シリカレーヨン繊維A:中国海龍繊維社製の「Silica Rayon」、単繊維繊度2.2dtex、繊維長51mm、シリカ含有量19.5質量%
シリカレーヨン繊維B:ダイワボウレーヨン社製の「FR CORONA(登録商標)」、単繊維繊度2.2dtex、繊維長51mm、シリカ含有量17.2質量%
メタアラミド繊維:Yantai Tayho Advanced Ma terials社製「Newstar(登録商標)」、単繊維繊度1.7d tex、繊維長51mm
パラアラミド繊維:Yantai Tayho Advanced Ma terials社製「Taparan(登録商標)」、単繊維繊度1.7d tex、繊維長51mm
モダクリル繊維A:カネカ社製、アクリロニトリル49.5質量%、塩化ビニル49.5質量%及びスチレンスルホン酸ナトリウム10質量%からなるアクリル系共重合体で構成され、繊維全体質量に対して三酸化アンチモンを9.1質量%含有するアクリル系繊維、単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm
モダクリル繊維B:カネカ社製、アクリロニトリル49.5質量%、塩化ビニリデン4 9.5質量%及びスチレンスルホン酸ナトリウム1.0質量%からなるアクリル系共重合体で構成され、繊維全体質量に対して三酸化アンチモンを5.1質量%含有するアクリル系繊維、単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm
【0040】
<実施例1~5、比較例1~7>
下記表1に示す繊維を下記表1~2に示す配合量で混合し、下記表1に示す綿番手の紡績糸を製造した。該紡績糸を用いて、通常の製造方法により、下記表1に示す目付の天竺編みの編物を作製した。
【0041】
実施例1~5、比較例1~7で得られた布帛の難燃性、洗濯後の難燃性、及び染色性を上述したとおりに測定し、その結果を下記表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
上記表1から分かるように、実施例の布帛の場合、反応染料による1浴染色が可能である上、GB8965.1-2020で規定に準じ、GB/T 5455-1997に基づいて燃焼性試験にて測定した炭化長が、モダクリル繊維を用いた比較例5~7の布帛より短く、難燃性が高かった。
【0044】
シリカ含有レーヨン繊維の含有量が多い比較例1~3の場合、GB/T 5455-1997に基づいて燃焼性試験にて全焼してしまい、難燃性が極めて悪かった。シリカ含有レーヨン繊維の含有量が少ない比較例4の場合、GB/T 5455-1997に基づいて燃焼性試験にて測定した炭化長が、モダクリル繊維を用いた比較例5~7の布帛と同様であった。
【0045】
本発明は、特に限定されないが、下記の実施形態を含むことが望ましい。
[1]シリカ含有セルロース繊維を20質量%以上40質量%未満、リン系難燃剤を含有する難燃セルロース繊維を25~55質量%、アラミド繊維を10~50質量%含む、難燃性布帛。
[2]前記シリカ含有セルロース繊維は、シリカ含有レーヨン繊維を含む、[1]に記載の難燃性布帛。
[3]前記難燃セルロース繊維は、難燃レーヨン繊維を含む、[1]又は[2]に記載の難燃性布帛。
[4]前記アラミド繊維が、パラアラミド繊維及びメタアラミド繊維からなる群から選ばれる一つ以上を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の難燃性布帛。
[5]GB8965.1-2020で規定のGB/T 5455-2014に基づいた燃焼性試験で測定した炭化長が20mm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の難燃性布帛。
[6]前記シリカ含有セルロース繊維は、シリカを10~30質量%含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の難燃性布帛。
[7]前記難燃性布帛は、シリカを3.0~9.0質量%含む、[1]~[6]のいずれかに記載の難燃性布帛。
[8]前記シリカ含有セルロース繊維、前記難燃セルロース繊維、および前記アラミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維の繊維長が、38~127mmである、[1]~[7]のいずれかに記載の難燃性布帛。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の難燃性布帛を含む、作業服。