(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120418
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】穀粒乾燥機
(51)【国際特許分類】
F26B 17/14 20060101AFI20240829BHJP
F26B 21/10 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F26B17/14 B
F26B21/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027206
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 通和
(72)【発明者】
【氏名】大家 生裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 廉
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸治
(72)【発明者】
【氏名】薬内 裕人
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB02
3L113AC04
3L113BA03
3L113CA08
3L113CB03
3L113DA21
(57)【要約】
【課題】本発明は、穀粒を溜めて加熱循環して穀粒を乾燥する穀粒乾燥機において、内部の異常高温を検出して乾燥を停止しても安全状態を確保しない限りは乾燥再開が出来ないようにすることで乾燥作業の安全を図ることを課題とする。
【解決手段】貯留室1の穀粒を循環させて乾燥室2で乾燥する穀粒乾燥機において、乾燥室2内の温度を計測する加熱温度センサ18を設け、該加熱温度センサ18が所定高温を検出すると燃焼バーナ17を停止すると共に、駆動停止スイッチ19を作動し、加熱温度センサ18が所定の低温度を検出するまで駆動停止スイッチ19の駆動を不可としたことを特徴とする穀粒乾燥機とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留室(1)の穀粒を循環させて乾燥室(2)で乾燥する穀粒乾燥機において、乾燥室(2)内の温度を計測する加熱温度センサ(18)を設け、該加熱温度センサ(18)が所定の高温を検出すると燃焼バーナ(17)を停止すると共に、駆動停止スイッチ(19)を作動し、加熱温度センサ(18)が前記所定の高温より低い所定の低温度を検出するまで駆動停止スイッチ(19)の駆動を不可としたことを特徴とする穀粒乾燥機。
【請求項2】
異常高温停止時に加熱温度センサ(18)が低温になると駆動停止スイッチ(19)の再駆動を可能にするリセットスイッチ(35)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の穀粒乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒を溜めて循環しながら乾燥する穀粒乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
穀粒乾燥機は、穀粒に熱を加えて乾燥させる装置で、加熱によって穀粒が発火して火災となる危険性がある。
【0003】
このために、特開昭63-15081号公報に記載の穀粒乾燥機では、穀粒に与える乾燥風の温度を検出する温度センサを設け、異常高温を検出すると警報を発して周囲に知らせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記穀粒乾燥機では、乾燥風の温度を検出し異常高温を検出すると警報を発して機体周囲に居る作業者に知らせるが、作業者が警報で乾燥室の異常高温を確認して燃焼バーナを消した後に乾燥を再開すると高温になった穀粒が熱風に当たって発火する危険性があった。
【0006】
本発明は、穀粒を溜めて加熱循環して穀粒を乾燥する穀粒乾燥機において、内部の異常高温を検出して乾燥を停止しても、安全状態を確保しない限りは乾燥再開が出来ないようにすることで乾燥作業の安全を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1の発明は、貯留室1の穀粒を循環させて乾燥室2で乾燥する穀粒乾燥機において、乾燥室2内の温度を計測する加熱温度センサ18を設け、該加熱温度センサ18が所定の高温を検出すると燃焼バーナ17を停止すると共に、駆動停止スイッチ19を作動し、加熱温度センサ18が前記所定の高温より低い所定の低温度を検出するまで駆動停止スイッチ19の駆動を不可としたことを特徴とする穀粒乾燥機とする。
【0009】
請求項2の発明は、異常高温停止時に加熱温度センサ18が低温になると駆動停止スイッチ19の再駆動を可能にするリセットスイッチ35を設けたことを特徴とする請求項1に記載の穀粒乾燥機とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明で、穀粒の乾燥作業中に加熱温度センサ18が異常高温を計測して燃焼バーナ17を停止した後は、駆動停止スイッチ19が作動して燃焼バーナ17が消火になるので、作業者が再起動操作を行っても燃焼バーナ17が着火することなく、穀粒の発火作用による穀粒乾燥機の火災とはならない。
【0011】
請求項2の発明で、加熱温度センサ18が低温を測定して駆動停止スイッチ19の作動が可能になるとリセットスイッチ35を入れることで燃焼バーナ17に着火して穀粒乾燥機を再起動可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態にかかる穀粒乾燥機の斜視図である。
【
図2】同上の、側面から見た穀粒乾燥機の内部を説明する図である。
【
図3】同上の、正面から見た穀粒乾燥機の内部を説明する図である。
【
図4】同上の穀粒乾燥機の循環機構を示す図である。
【
図6】同上穀粒乾燥機の昇降機に取り付けられている水分計の内部を説明する図である。
【
図9】同上穀粒乾燥機の燃焼バーナ吸気口の平面図である。
【
図10】同上穀粒乾燥機のエアーノズルの拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態の穀粒乾燥機について説明する。
【0014】
図1乃至
図7に示すように、箱体H内に穀粒を貯留する貯留室1と、穀粒を乾燥する乾燥室2を設ける。乾燥室2は燃焼バーナ17による熱風が通過する熱風室3と、熱風及び穀粒が通過する流下通路4と流下通路4を通過した熱風が排風ファン5で吸引される排風室6を設ける。
【0015】
乾燥室2の下部には、乾燥室2内の穀粒を繰り出すロータリバルブ7を設け、ロータリバルブ7の下方には、穀粒を正面側に移送する下部ラセン8を設ける。箱体Hの正面側には穀粒を揚穀するバケット9a式の昇降機9を設け、箱体Hの上部には昇降機9で揚穀された穀粒を貯留室1へ移送する上部ラセン10を設ける。上部ラセン10の移送終端側には穀粒を貯留室1内に拡散する拡散羽根15を設ける。本実施の形態では下部ラセン8と、昇降機9と、上部ラセン10と、拡散羽根15と、ロータリバルブ7の駆動により穀粒を循環させる循環式の穀粒乾燥機であり、前述の循環させるための部材を総称して循環機構Jと呼ぶ。箱体Hの天井部には上部ラセン10で移送する穀粒に混じる塵埃やわら屑等を吸引して機外に排出する排塵機33を設ける。さらに、熱風室3内には熱風の温度を測定する加熱温度センサ18を設け、制御部Sに計測温度を入力する。
【0016】
昇降機9にはバケット9aから毀れた穀粒を収容し、水分値を測定する水分計11を設ける。水分計11は一対の圧砕ロール11aで穀粒を圧砕して水分を測定する。
【0017】
箱体Hの底部には重量計12を設ける。重量計12は箱体Hの四隅に設け、張込穀粒の張込重量を検出可能に構成する。具体的には例えばロードセルを利用する。
【0018】
箱体Hの内部には張込穀粒の嵩を検出する張込量センサ31を設ける。張込量センサ31は貯留室1の天井部に紐31aと紐31aの下端部に取り付ける錘31bから形成され、張込量センサ駆動モータで紐31aを巻き取り式等で昇降させて、錘31bが張込穀粒の上面Kに当接したことを検出すると、その位置を張込穀粒の嵩とする構成である。
【0019】
箱体Hの正面側には制御部Sを内蔵する操作盤13を設ける。操作盤13には、昇降機9の取り付ける張込ホッパ14に張り込んだ穀粒を昇降機9及び上部ラセン10で貯留室1に移送する張込運転をするための張込スイッチ20と、排風ファン5と循環機構Jを駆動して穀粒を通風しながら循環運転させるための通風スイッチ21と、燃焼バーナ17と排風ファン5と循環機構Jを駆動して穀粒の乾燥運転を行う乾燥スイッチ22と、乾燥運転終了後に循環機構Jを駆動すると共に、昇降機9の上部の排出シャッタ16を排出側に切り換えて張込穀粒を機外に排出する排出運転を行う排出スイッチ23と、リセットスイッチ35を設ける。さらに、張込運転、通風運転、乾燥運転、排出運転を停止させる停止スイッチ24、穀粒乾燥機を再起動させるリセットスイッチ35を設ける。
【0020】
また、目標とする水分値を設定する目標水分設定スイッチ25と、乾燥速度を設定する乾燥速度設定スイッチ26と、穀粒品種を設定する穀粒品種設定スイッチ27を画面28に設ける。重量計12による乾燥運転から水分計11による乾燥運転に切り換る設定水分値を変更するための設定水分値調節スイッチ30また、画面28は、前述の目標水分値等の乾燥運転条件を設定する画面と、乾燥運転中の各種情報を表示する画面に切換え可能に構成している。
【0021】
また、特に乾燥運転中に表示が必要な熱風温度・水分値・残り乾燥運転時間を交互に表示するインジケータ式の表示器29を設ける。
【0022】
【0023】
張込スイッチ20をONすると、下部ラセン8と、昇降機9と上部ラセン10と排塵機33と拡散羽根15が駆動を開始し、張込穀粒が貯留室1に張り込まれる。オペレータはあらかじめ穀粒品種設定スイッチ27で張込穀粒の品種を設定する。張込運転中は重量計12が重量を検知して重量値を画面28に表示している。張込運転中に水分計11が穀粒無を検出すると、張込運転が停止する。このとき、オペレータが次の穀粒の張り込みのために張込スイッチ20をONすると次の張込運転がなされるが、所定時間内に張込スイッチのONがなければ張込量センサ31が検出を開始し、当該時点での張込穀粒の嵩を検出する。この張込量センサ31の嵩の値と重量計12による重量値が、あらかじめ設定している対応関係に無いと制御部Sが判別すると、異常を表示する。特に、重量値に対して嵩の値が設定範囲よりも高いとわら屑や塵埃や未熟米が多いと判別し、ゴミ取りモードへの移行を促す表示を行う。ゴミ取りモードスイッチ34をONすると循環機構Jが駆動を開始し、そのときの張込量に応じた時間、通風運転がなされる。通風運転により、塵埃やわら屑や未熟米が排塵機33で吸引除去することができる。ゴミ取りモードスイッチ34をONすると、制御部Sから通信で例えばコンバインで刈り取り作業をするオペレータの携帯端末Tにその旨を送信することで、コンバイン(図示せず)のオペレータにコンバインにおける脱穀等が不良である旨の注意を促すことができる。コンバインの制御部と穀粒乾燥機の制御部Sを通信で接続し、前述の注意を促すこともできる。
【0024】
張込量センサ31の嵩の値と重量計12による重量値の対応関係は穀粒品種によってあらかじめ制御部Sに設定している。これは、穀粒品種によって嵩密度が異なるためである。
【0025】
また、ゴミ取りモードによる通風運転中に重量計12の重量値が通風運転前よりも増加した場合に異常を表示する。これは、外気湿度が高いために穀粒が吸湿しているために生じるものであり、穀粒の胴割れのリスクが生じる。このリスクを低減することができる。
重量値に対して嵩の値が低い場合には、例えば、品種の誤設定である場合であるか、拡散羽根15の拡散不良による可能性があり、その旨を表示してオペレータに確認を促すことができる。
【0026】
次に、乾燥作業中の安全管理について説明する。
【0027】
熱風室3に設ける加熱温度センサ18が異常高温を計測すると警報器36が警報を発し、燃焼バーナ17を消火すると共に駆動停止スイッチ19をONにする。その後に、加熱温度センサ18が低温になると駆動停止スイッチ19をOFFにしてリセットスイッチ35が作動可能になり、穀粒乾燥機を再駆動できる。
【0028】
再点火の場合、失火(火が消えた)時の燃料流量が所定値(例えば3l/h)以上の場合は、その燃料流量から所定流量(例えば、2割)下げた燃料流量およびその燃料流量に対する風調回転数を所定回転下げた状態で点火行程を行い、安定燃焼(例えば、着火状態が一分以上保持)後、通常の燃焼制御へ移行させるようすることで、着火し易い。
【0029】
図9、
図10は、燃焼バーナ17の吸気管38にバーナの内部を掃除するためのエア注入用エアーノズル39を設けた平面図で、このエアーノズル39に二箇所の切欠き40を設け、差し込みプレート41を何れかの切欠き40に差し込むことでエアの風の流れを規制して燃焼バーナ17の清掃を行える。どちらか一方に風の流れを規制することで圧力を上げ、より清掃することが出来る。差し込みプレート41を使用しない場合は、切欠き40に張り付ける。
【0030】
排塵機33のダクトに作動を検出する圧力スイッチを設け、圧力スイッチとダクトをつなぐホースの中にスポンジなどのインシュレータをさせることで、突発的な圧力変動などによるセンサの誤検出を防止できる。またホース内の圧力変動を抑えることで空気の出入りが少なくなり、塵埃が入り込むことを防止できる。
【0031】
その他の穀粒乾燥機の制御について記載する。
【0032】
排風ファン出口終端に湿度センサを配設し,ヒートリサイクル率によりヒートリサイクル弁をモ-タで駆動調節し,排風を熱風室へ所定量還元させる,ヒートリサイクル装置を有し,水分平均値と水分設定値により乾燥停止する乾燥機において,停止中に該湿度検出値が高い(例えば 80%以上)状態で、乾燥あるいは排出運転操作された場合は、通風運転を行った後に、該当運転を行うよう構成するとともに、乾燥時と排出時で、通風運転時間を変更(例えば 乾燥時:30分 排出時時:10分)するよう構成する。
【0033】
また、排風循環ダクトにヒートリサイクル弁を設け,ヒートリサイクル率によりヒートリサイクル弁をモ-タで駆動調節し,排風を熱風室へ所定量還元させるヒートリサイクル装置を有し,水分平均値と水分設定値により乾燥停止する乾燥機において,乾燥開始後の所定時間経過の間、排風温度の上昇側に変化しない場合(排風温度センサがゴミに埋没していると、低温のままである)は、排風路ゴミ溜まりと判定し、通風運転に移行させるとともに、所定時間(例えば20分)後、所定時間(例えば1時間)に、ヒートリサイクル弁をモ-タを所定時間周期(例えば5分毎)で開→閉駆動調節する、その際、バルブ循環も速い側(例えば8ton→6ton)へ制御するよう構成する。その後再乾燥運転へ移行させるよう構成する。この構成で、排風路ゴミだまり判定により、通風運転へ移行させ、安全性を向上させるとともに、ヒートリサイクル弁の開閉およびバルブ循環速度調節により、排風路のゴミ溜まりを除去し、火災防止とすることができる。
【0034】
また、水分検出装置を有し、乾燥タイマ機能を有した穀物乾燥機において、水分設定値あるいは乾燥タイマ到達により乾燥自動停止する場合、所定冷却循環(パ-ジ:燃焼系の停止)を行った後に、穀物を冷やしながら、タンク内全体の穀物水分をなじます目的として、穀物温度が所定(例えば 籾:30℃ 麦:35℃)未満となるまでは、送風ファンを停止した循環運転を継続するよう構成する。この構成で、過乾燥を防止するとともに、結露発生防止、穀物品質劣化あるいはタンク内への雑挟物付着増幅防止による火災や乾燥ムラの防止が行える。
【0035】
また、遠赤外線放射体を設けた構成で、熱風排出口終端の開口部において、熱風掃き出し時の乾燥機後方への熱風流れを上方,水平,下方と千鳥に分散させるよう構成することで、熱風網の高温に晒される部位が分散する。
【0036】
また、追い乾燥モードにした場合、乾燥終了後、外気温度センサーと穀温センサーの温度差が2℃以下(穀温が十分に下がったら)で自動で起動、通風にて動き、水分の再測定を行い、所定の水分値よりも乾燥できていない場合は、自動で再乾燥を開始する。
【0037】
上部ラセンに穀粒量センサを設け、穀物の排出作業時に一定量以上の穀物循環量が検出されたら、排出量設定を設定値より少なくなるように自動制御することで、詰りの発生を防止できる。
【0038】
乾燥機の過去のエラー履歴を、それ以後の乾燥制御に役立てることも可能である。乾燥機の総風量となる乾燥風量が不足する場合に検出される風量不足のエラー検出があった場合、想定される問題として出口のダクトのつぶれ、ファンベルトのすべり、各風路の点検窓の閉め忘れ等が想定される。この問題の応急対応として、総風量を増加させる必要があり、循環風量であるヒートリサイクルル風量を減少させる(ヒートリサイクル率を低下させる)ことで対応する。
【0039】
こうした過去のエラー履歴より、次回の乾燥で制御内容を変更して対応することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 貯留室
2 乾燥室
17 燃焼バーナ
18 加熱温度センサ
19 駆動停止スイッチ
35 リセットスイッチ