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特開2024-120421窒化物半導体装置および窒化物半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120421
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置および窒化物半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20240829BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240829BHJP
   H01L 21/266 20060101ALI20240829BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20240829BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L29/06 301F
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/06 301D
H01L21/265 M
H01L21/265 F
H01L29/78 658A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027213
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 信也
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝典
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐圧構造部を備える窒化物半導体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】窒化物半導体装置は、低活性化領域24と、低活性化領域よりも活性化率が高い高活性化領域22と、活性部110と近接して設けられた内側領域26と、内側領域よりも外周端に近接して設けられ、内側領域よりも高活性化領域の面内密度が小さい外側領域と、を有する耐圧構造部120を備える。窒化物半導体装置の製造方法において、耐圧構造部を設ける段階は、第2導電型のイオンを注入する段階と、窒素イオンを注入する段階と、半導体基板に熱処理を施す段階とを有する。窒素イオンを注入する段階は、開口部を有するマスクを形成する段階と、開口部を通して窒素イオンを注入する段階と、を含む。内側領域における開口部の面内密度は、内側領域よりも外周端に近接する外側領域における開口部の面内密度よりも大きい。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物からなる第1導電型の半導体基板を備える窒化物半導体装置であって、
主電流が流れる活性部と、
前記活性部の外周に設けられた耐圧構造部と、
を備え、
前記耐圧構造部は、
前記半導体基板の上面に設けられた第2導電型の低活性化領域と、
前記上面に設けられ、前記低活性化領域よりもドーパント元素の活性化率が高い第2導電型の高活性化領域と、
前記低活性化領域および前記高活性化領域を有し、上面視において前記活性部と近接して設けられた内側領域と、
前記低活性化領域および前記高活性化領域を有し、上面視において前記内側領域よりも前記半導体基板の外周端に近接して設けられ、前記内側領域よりも前記高活性化領域の面内密度が小さい外側領域と、
を有する、
窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記高活性化領域は、複数の高活性化領域を含み、
前記耐圧構造部は、予め定められたピッチで前記複数の高活性化領域を繰り返し配置した繰り返し構造を有する、
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記繰り返し構造のピッチは、前記半導体基板の深さ方向における前記低活性化領域の長さ以下である、
請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板の裏面から前記耐圧構造部の上面までの高さは、前記半導体基板の裏面から前記活性部の上面までの高さよりも低い、
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記低活性化領域のドーパントはMg元素である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記高活性化領域のドーパントはMg元素である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記高活性化領域における結晶欠陥の密度は、前記低活性化領域における結晶欠陥の密度よりも大きい、
請求項1から4のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記低活性化領域のドーパント元素の不純物濃度は、1.0E17cm-3以上、1.0E20cm-3以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記高活性化領域のドーパント元素の不純物濃度は、1.0E17cm-3以上、1.0E19cm-3以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記半導体基板は、第1導電型の基底層と、前記基底層の上方に設けられた第1導電型の窒化物エピタキシャル層とを含み、
前記低活性化領域および前記高活性化領域は、前記窒化物エピタキシャル層に設けられる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
窒化物からなる第1導電型の半導体基板を含む窒化物半導体装置の製造方法であって、
主電流が流れる活性部を設ける段階と、
前記活性部の外周に耐圧構造部を設ける段階と、
を備え、
前記耐圧構造部を設ける段階は、
前記半導体基板の上面に第2導電型のイオンを注入する段階と、
前記上面に窒素イオンを注入する段階と、
前記第2導電型のイオンを注入する段階および前記窒素イオンを注入する段階の後に、前記半導体基板に熱処理を施す段階と、
を有し、
前記窒素イオンを注入する段階は、
開口部を有するマスクを前記半導体基板の上方に形成する段階と、
前記開口部を通して窒素イオンを注入する段階と、
を含み、
上面視において前記活性部と近接する内側領域における前記開口部の面内密度は、上面視において前記内側領域よりも前記半導体基板の外周端に近接する外側領域における前記開口部の面内密度よりも大きい、
窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記開口部は、複数の開口部を含み、
前記開口部を有するマスクを形成する段階は、予め定められたピッチで前記複数の開口部を繰り返し配置したマスクを形成する段階を有し、
前記開口部を通して窒素イオンを注入する段階は、前記複数の開口部を通して窒素イオンを注入する段階を含む、
請求項11に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2導電型のイオンを注入する段階は、
複数の開口部を有するマスクを前記半導体基板の上方に形成する段階と、
前記複数の開口部を通して前記第2導電型のイオンを注入する段階と、
を含み、
前記第2導電型のイオンを注入する段階における前記複数の開口部と、前記窒素イオンを注入する段階における前記複数の開口部とは、上面視において異なる領域に設けられる
請求項12に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第2導電型のイオンを注入する段階は、
開口部を有するマスクを前記半導体基板の上方に形成する段階と、
前記開口部を通して前記第2導電型のイオンを注入する段階と、
を含み、
上面視において、前記窒素イオンを注入する段階における前記複数の開口部は、前記第2導電型のイオンを注入する段階における前記開口部の内側に設けられる
請求項12に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記熱処理を施す段階は、前記第2導電型のイオンを窒素イオンが注入された領域に拡散させ、不純物濃度が1.0E17cm-3以上、1.0E19cm-3以下である第2導電型の高活性化領域を窒素イオンが注入された前記領域に形成する段階を含む、
請求項11に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理を施す段階の後に、前記半導体基板の表面をエッチングする段階を備える、
請求項11に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記半導体基板の表面をエッチングする段階は、
前記活性部を覆い、前記耐圧構造部に開口を有するマスクを前記半導体基板の上方に形成する段階と、
前記耐圧構造部の表面をエッチングする段階と、
を含む、
請求項16に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2導電型のイオンを注入する段階は、Mgイオンを注入する段階を含む、
請求項11から17のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記第2導電型のイオンを注入する段階は、ピーク濃度が1.0E19cm-3以上、1.0E20cm-3以下である第2導電型のイオンを注入する段階を含む、
請求項11から17のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記第2導電型のイオンを注入する段階は、10keV以上、1.0MeV以下のエネルギーで第2導電型のイオンを注入する段階を含む、
請求項11から17のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記熱処理を施す段階は、1300℃以上の温度で熱処理を施す段階を含む、
請求項11から17のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体装置および窒化物半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「窒化ガリウム層にp型領域を容易に形成することができる窒化物半導体装置の製造方法及び窒化物半導体装置」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2021-28932号公報
[特許文献2] 国際公開第2014/057700号
[非特許文献1] H.Sakurai,et al.,"Redistribution of Mg and H atoms in Mg-implanted GaN through ultra-high-pressure annealing",Applied Physics Express,2020年7月28日,Vol.13,086501
[非特許文献2] K.Shima,et al.,"Improved minority carrier lifetime in p-type GaN segments prepared by vacancy-guided redistribution of Mg",Applied Physics Letters,(米),2021年11月3日,Vol.119,182106
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、窒化物からなる第1導電型の半導体基板を備える窒化物半導体装置であって、主電流が流れる活性部と、前記活性部の外周に設けられた耐圧構造部と、を備え、前記耐圧構造部は、前記半導体基板の上面に設けられた第2導電型の低活性化領域と、前記上面に設けられ、前記低活性化領域よりもドーパント元素の活性化率が高い第2導電型の高活性化領域と、前記低活性化領域および前記高活性化領域を有し、上面視において前記活性部と近接して設けられた内側領域と、前記低活性化領域および前記高活性化領域を有し、上面視において前記内側領域よりも前記半導体基板の外周端に近接して設けられ、前記内側領域よりも前記高活性化領域の面内密度が小さい外側領域と、を有する、窒化物半導体装置を提供する。
【0004】
上記窒化物半導体装置において、前記高活性化領域は、複数の高活性化領域を含んでよい。前記耐圧構造部は、予め定められたピッチで前記複数の高活性化領域を繰り返し配置した繰り返し構造を有してよい。
【0005】
上記いずれかの窒化物半導体装置において、前記繰り返し構造のピッチは、前記半導体基板の深さ方向における前記低活性化領域の長さ以下であってよい。
【0006】
上記いずれかの窒化物半導体装置において、前記半導体基板の裏面から前記耐圧構造部の上面までの高さは、前記半導体基板の裏面から前記活性部の上面までの高さよりも低くてよい。
【0007】
上記いずれかの窒化物半導体装置において、前記低活性化領域のドーパントはMg元素であってよい。
【0008】
上記いずれかの窒化物半導体装置において、前記高活性化領域のドーパントはMg元素であってよい。
【0009】
上記いずれかの窒化物半導体装置において、前記高活性化領域における結晶欠陥の密度は、前記低活性化領域における結晶欠陥の密度よりも大きくてよい。
【0010】
上記いずれかの窒化物半導体装置において、前記低活性化領域のドーパント元素の不純物濃度は、1.0E17cm-3以上、1.0E20cm-3以下であってよい。
【0011】
上記いずれかの窒化物半導体装置において、前記高活性化領域のドーパント元素の不純物濃度は、1.0E17cm-3以上、1.0E19cm-3以下であってよい。
【0012】
上記いずれかの窒化物半導体装置において、前記半導体基板は、第1導電型の基底層と、前記基底層の上方に設けられた第1導電型の窒化物エピタキシャル層とを含んでよい。前記低活性化領域および前記高活性化領域は、前記窒化物エピタキシャル層に設けられてよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、窒化物からなる第1導電型の半導体基板を含む窒化物半導体装置の製造方法であって、主電流が流れる活性部を設ける段階と、前記活性部の外周に耐圧構造部を設ける段階と、を備え、前記耐圧構造部を設ける段階は、前記半導体基板の上面に第2導電型のイオンを注入する段階と、前記上面に窒素イオンを注入する段階と、前記第2導電型のイオンを注入する段階および前記窒素イオンを注入する段階の後に、前記半導体基板に熱処理を施す段階と、を有し、前記窒素イオンを注入する段階は、
開口部を有するマスクを前記半導体基板の上方に形成する段階と、前記開口部を通して窒素イオンを注入する段階と、を含み、上面視において前記活性部と近接する内側領域における前記開口部の面内密度は、上面視において前記内側領域よりも前記半導体基板の外周端に近接する外側領域における前記開口部の面内密度よりも大きい、窒化物半導体装置の製造方法を提供する。
【0014】
上記窒化物半導体装置の製造方法において、前記開口部は、複数の開口部を含んでよい。前記開口部を有するマスクを形成する段階は、予め定められたピッチで前記複数の開口部を繰り返し配置したマスクを形成する段階を有してよい。前記開口部を通して窒素イオンを注入する段階は、前記複数の開口部を通して窒素イオンを注入する段階を含んでよい。
【0015】
上記いずれかの窒化物半導体装置の製造方法において、前記第2導電型のイオンを注入する段階は、複数の開口部を有するマスクを前記半導体基板の上方に形成する段階と、前記複数の開口部を通して前記第2導電型のイオンを注入する段階と、を含んでよい。前記第2導電型のイオンを注入する段階における前記複数の開口部と、前記窒素イオンを注入する段階における前記複数の開口部とは、上面視において異なる領域に設けられてよい。
【0016】
上記いずれかの窒化物半導体装置の製造方法において、前記第2導電型のイオンを注入する段階は、開口部を有するマスクを前記半導体基板の上方に形成する段階と、前記開口部を通して前記第2導電型のイオンを注入する段階と、を含んでよい。上面視において、前記窒素イオンを注入する段階における前記複数の開口部は、前記第2導電型のイオンを注入する段階における前記開口部の内側に設けられてよい。
【0017】
上記いずれかの窒化物半導体装置の製造方法において、前記熱処理を施す段階は、前記第2導電型のイオンを窒素イオンが注入された領域に拡散させ、不純物濃度が1.0E17cm-3以上、1.0E19cm-3以下である第2導電型の高活性化領域を窒素イオンが注入された前記領域に形成する段階を含んでよい。
【0018】
上記いずれかの窒化物半導体装置の製造方法において、前記熱処理を施す段階の後に、前記半導体基板の表面をエッチングする段階を備えてよい。
【0019】
上記いずれかの窒化物半導体装置の製造方法において、前記半導体基板の表面をエッチングする段階は、前記活性部を覆い、前記耐圧構造部に開口を有するマスクを前記半導体基板の上方に形成する段階と、前記耐圧構造部の表面をエッチングする段階と、を含んでよい。
【0020】
上記いずれかの窒化物半導体装置の製造方法において、前記第2導電型のイオンを注入する段階は、Mgイオンを注入する段階を含んでよい。
【0021】
上記いずれかの窒化物半導体装置の製造方法において、前記第2導電型のイオンを注入する段階は、ピーク濃度が1.0E19cm-3以上、1.0E20cm-3以下である第2導電型のイオンを注入する段階を含んでよい。
【0022】
上記いずれかの窒化物半導体装置の製造方法において、前記第2導電型のイオンを注入する段階は、10keV以上、1.0MeV以下のエネルギーで第2導電型のイオンを注入する段階を含んでよい。
【0023】
上記いずれかの窒化物半導体装置の製造方法において、前記熱処理を施す段階は、1300℃以上の温度で熱処理を施す段階を含んでよい。
【0024】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】窒化物半導体装置100の上面の一例を示す。
図1B図1Aにおける領域PQRSの一例を示す。
図1C図1Bにおけるa-a'断面の一例を示す。
図1D図1Bにおけるb-b'断面の一例を示す。
図2A】窒素イオン注入領域がある場合におけるMgイオンの拡散の一例を示す。
図2B】窒素イオン注入領域がない場合におけるMgイオンの拡散の一例を示す。
図3図1Bにおけるc-c'線上のアクセプタ面内密度の一例を示す。
図4図1Aにおける領域PQRSの変形例を示す。
図5図1Bにおけるa-a'断面の変形例を示す。
図6A】窒化物半導体装置の製造方法の一例を示す。
図6B】ステップS112、S114における領域PQRSのマスク242、222の一例を示す。
図6C】ステップS112、S114における領域PQRSのマスク242、222の変形例を示す。
図7A】窒化物半導体装置100の製造方法の変形例を示す。
図7B】ステップS212、S214における領域PQRSのマスク242、222の一例を示す。
図8A】窒化物半導体装置100の製造方法の変形例を示す。
図8B】窒化物半導体装置100の製造方法の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0028】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0029】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0030】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0031】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0032】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。また、本明細書においてP--型またはN--型と記載した場合には、P-型またはN-型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。
【0033】
図1Aは、窒化物半導体装置100の上面の一例を示す。本例の窒化物半導体装置100は、活性部110と、耐圧構造部120と、を備える。窒化物半導体装置100は、縦型MOSFETであってよく、PiNダイオードであってよい。本例の窒化物半導体装置100は、縦型MOSFETである。
【0034】
活性部110には、主電流が流れる。すなわち、活性部110は、窒化物半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる部位であってよい。活性部110は、縦型MOSFET構造を有してよい。
【0035】
耐圧構造部120は、活性部110の外周に設けられる。耐圧構造部120は、後述する半導体基板10の上面11側の電界集中を緩和してよい。耐圧構造部120は、例えばガードリング、フィールドプレート、接合終端拡張(JTE:Junction Termination Extension)およびこれらを組み合わせた構造を有する。本例の耐圧構造部120は、JTE構造を有する。JTE構造は、電界集中を防いで高い耐圧を得るための構造であり、空乏層の広がりを制御するために、ドーピング濃度を徐々に変化させる構造である。
【0036】
図1Bは、図1Aにおける領域PQRSの一例を示す。窒化物半導体装置100は、窒化物エピタキシャル層20を備える。活性部110は、ソース領域13と、ボディ領域14と、コンタクト領域15と、を含んでよい。活性部110は、半導体基板10の上面11に窒化物エピタキシャル層20が露出した領域を含んでよい。耐圧構造部120は、高活性化領域22と、低活性化領域24と、を含んでよい。耐圧構造部120は、半導体基板10の上面11に窒化物エピタキシャル層20が露出した領域を含んでよい。
【0037】
窒化物エピタキシャル層20は、後述する基底層30の上方に設けられた第1導電型の層である。窒化物エピタキシャル層20は、一例としてN-型である。
【0038】
ボディ領域14は、半導体基板10の上面11側に設けられた第2導電型の領域である。ボディ領域14は、一例としてP-型である。
【0039】
ソース領域13は、半導体基板10の上面11に設けられた第1導電型の領域である。ソース領域13は、一例としてN+型である。
【0040】
コンタクト領域15は、半導体基板10の上面11に設けられ、ボディ領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。コンタクト領域15は、一例としてP+型である。コンタクト領域15は、ソース領域13と接して設けられてよい。
【0041】
低活性化領域24は、半導体基板10の上面11に設けられた第2導電型の領域である。低活性化領域24は、窒化物エピタキシャル層20に設けられてよい。低活性化領域24のドーパント元素の不純物濃度は、1.0E17cm-3以上、1.0E20cm-3以下であってよい。ここで、ドーパント元素の不純物濃度とは、第2導電型の領域を形成するために注入されたドーパント元素の濃度であって、活性化の有無にかかわらず、含まれる元素の濃度を指す。すなわち、第2導電型の領域におけるドーパント元素の不純物濃度とは、アクセプタとして機能しているドーパント元素の濃度と、アクセプタとして機能していないドーパント元素の濃度の総和であってよい。低活性化領域24のドーパント元素は、Mg元素であってよく、Be元素であってよく、Zn元素であってよい。本例の低活性化領域24のドーパント元素はMg元素である。
【0042】
低活性化領域24のドーパント元素の不純物濃度および/またはドーピング濃度は、全領域において均一であってよい。すなわち、低活性化領域24の全体は、同一のプロセスによって形成されてよい。JTE構造は、アクセプタ濃度の勾配を有する構造である。本例の耐圧構造部120においては、後述する高活性化領域22によってアクセプタ濃度の勾配が実現されるので、低活性化領域24のドーパント元素の不純物濃度および/またはドーピング濃度は、全領域において均一であってよい。ただし、低活性化領域24のドーパント元素の不純物濃度および/またはドーピング濃度はこれに限定されず、低活性化領域24のドーパント元素の不純物濃度および/またはドーピング濃度が勾配を有することで、JTE構造が形成されてもよい。
【0043】
高活性化領域22は、半導体基板10の上面11に設けられ、低活性化領域24よりもドーパント元素の活性化率が高い第2導電型の領域である。ここで、ドーパント元素の活性化率とは、第2導電型の領域を形成するために注入されたドーパント元素のうち、アクセプタとして機能しているドーパント元素の割合である。すなわち、ドーパント元素の活性化率とは、ドーパント元素の不純物濃度に対するアクセプタ濃度の比であってよい。高活性化領域22は、窒化物エピタキシャル層20に設けられてよい。高活性化領域22のドーパント元素の不純物濃度は、1.0E17cm-3以上、1.0E19cm-3以下であってよい。高活性化領域22のドーパント元素は、Mg元素であってよく、Be元素であってよく、Zn元素であってよい。本例の高活性化領域22のドーパント元素はMg元素である。
【0044】
高活性化領域22は、窒素イオンを注入して結晶欠陥が形成された領域に、ドーパント元素が熱拡散されて形成された領域であってよい。すなわち、高活性化領域22における結晶欠陥の密度は、低活性化領域24における結晶欠陥の密度よりも大きくてよい。
【0045】
高活性化領域22は、複数の高活性化領域22を含んでよい。複数の高活性化領域22は、予め定められた方向において、予め定められたピッチで配列されてよい。本例の高活性化領域22は、活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向にピッチL1で配列された大きさの異なる7個の高活性化領域22が、活性部110と耐圧構造部120の境界と平行な方向にピッチL2で繰り返し配置されている。すなわち、耐圧構造部120は、予め定められたピッチで複数の高活性化領域22を繰り返し配置した繰り返し構造を有してよい。予め定められたピッチの方向は、X軸方向であってよく、Y軸方向であってよい。図1Bの例においては、予め定められたピッチの方向はY軸方向である。本例の高活性化領域22は、活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向に等しいピッチL1で配置されているが、これに限定されない。高活性化領域22が活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向に配置されるピッチL1は、活性部110に近接するほど短くてよく、半導体基板10の外周端に近接するほど長くてよい。
【0046】
上面視において活性部110と近接する内側領域26における高活性化領域22の面内密度は、上面視において内側領域26よりも半導体基板10の外周端に近接する外側領域28における高活性化領域22の面内密度よりも大きくてよい。ここで、高活性化領域22の面内密度とは、上面視において内側領域26または外側領域28に占める高活性化領域22の割合である。本例の高活性化領域22は、略円形である。活性部110に近い高活性化領域22の半径は、半導体基板10の外周端に近い高活性化領域22の半径よりも大きい。これにより、内側領域26に占める高活性化領域22の面積は外側領域28に占める高活性化領域22の面積よりも大きく、内側領域26における高活性化領域22の面内密度は外側領域28における高活性化領域22の面内密度よりも大きい。
【0047】
内側領域26における高活性化領域22の面内密度を外側領域28における高活性化領域22の面内密度よりも大きくすることで、耐圧構造部120におけるアクセプタ濃度の勾配を実現することができる。高活性化領域22の面内密度に起因するアクセプタ濃度の勾配によって、JTE構造が形成されてよい。耐圧構造部120におけるアクセプタ濃度の勾配は、高活性化領域22の面内密度によって実現されてよく、高活性化領域22の面内密度および低活性化領域24の濃度分布によって実現されてもよい。
【0048】
本例の耐圧構造部120においては、複数の高活性化領域22が活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向に等しいピッチL1で配置され、各高活性化領域22の面積を変更することで、内側領域26における高活性化領域22の面内密度が外側領域28における高活性化領域22の面内密度よりも大きくなっている。高活性化領域22の面内密度は、高活性化領域22を配置するピッチL1によって調整されてもよい。
【0049】
高活性化領域22の面積、高活性化領域22を配置するピッチL1、および/または、繰り返し構造のピッチL2は、予め定められた耐圧に応じて設計されてよい。すなわち、高活性化領域22の面積、高活性化領域22を配置するピッチL1、および/または、繰り返し構造のピッチL2を制御することで、JTE構造のアクセプタ濃度の勾配を制御することができ、JTE構造のアクセプタ濃度の勾配に応じた耐圧を得ることができる。
【0050】
以上のように、耐圧構造部120は、低活性化領域24および高活性化領域22を有し、上面視において活性部110と近接して設けられた内側領域26と、低活性化領域24および高活性化領域22を有し、上面視において内側領域26よりも半導体基板10の外周端に近接して設けられ、内側領域26よりも高活性化領域22の面内密度が小さい外側領域28と、を有してよい。ただし、図1Bにおいて、内側領域26を活性部110から数えて3列目までの半径が大きい高活性化領域22を含む領域として示し、外側領域28を、活性部110から数えて4、5列目の半径が中程度の高活性化領域22を含む外側領域28aと、活性部110から数えて6、7列目の半径が小さい高活性化領域22を含む外側領域28bとして示したが、内側領域26および外側領域28はこれに限定されない。内側領域26と外側領域28とは、高活性化領域22の面内密度を比較するための形式的な領域であり、現実に設けられた領域ではない。
【0051】
内側領域26は、活性部110側から数えて1列目の高活性化領域22を含む領域であってよく、活性部110側から数えて2列目の高活性化領域22を含む領域であってよく、活性部110側から数えて3列目の高活性化領域22を含む領域であってよく、1列目から3列目を含む領域であってよい。内側領域26の活性部110と耐圧構造部120の境界と平行な方向の長さは繰り返し構造のピッチL2以上であってよく、内側領域26の活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向の長さは、高活性化領域22のピッチL1以上であってよい。内側領域26の活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向および活性部110と耐圧構造部120の境界と平行な方向の長さをそれぞれL1以上およびL2以上とすることで、内側領域26における高活性化領域22の面内密度を正確に算出することができる。
【0052】
外側領域28は、活性部110から数えて4、5列目の半径が中程度の高活性化領域22を含む外側領域28aであってよく、活性部110から数えて6、7列目の半径が小さい高活性化領域22を含む外側領域28bであってよく、外側領域28aおよび外側領域28bを含む領域であってよい。外側領域28の活性部110と耐圧構造部120の境界と平行な方向の長さは繰り返し構造のピッチL2以上であってよく、外側領域28の活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向の長さは、高活性化領域22のピッチL1以上であってよい。外側領域28の活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向および活性部110と耐圧構造部120の境界と平行な方向の長さをそれぞれL1以上およびL2以上とすることで、外側領域28における高活性化領域22の面内密度を正確に算出することができる。
【0053】
外側領域28aおよび外側領域28bにおいて例示されるように、外側領域28は高活性化領域22の面内密度が異なる領域を有してよく、高活性化領域22の面内密度は、活性部110から半導体基板10の外周端に向かうにつれて小さくなってよい。本例の外側領域28aにおける高活性化領域22の面内密度は、外側領域28bにおける高活性化領域22の面内密度よりも大きい。したがって、外側領域28aが内側領域であってもよく、外側領域28bが外側領域であってもよい。
【0054】
例えば、耐圧構造部120は、内側領域(内側領域26)と、内側領域(内側領域26)よりも高活性化領域22の面内密度が小さい外側領域(外側領域28a)とを有してよく、内側領域(内側領域26)と、内側領域(内側領域26)よりも高活性化領域22の面内密度が小さい外側領域(外側領域28b)とを有してよく、内側領域(外側領域28a)と、内側領域(外側領域28a)よりも高活性化領域22の面内密度が小さい外側領域(外側領域28b)とを有してよい。すなわち、「内側」および「外側」という語は、相対的な位置関係を示すものであり、その取り方は限定されない。
【0055】
内側領域26の面積および各方向の長さと、外側領域28の面積および各方向の長さとは、同一であってよく、異なっていてよい。内側領域26および外側領域28における高活性化領域22の面内密度を正確に算出することができ、内側領域26および外側領域28における高活性化領域22の面内密度を比較することができれば、内側領域26および外側領域28の面積、形状は特に限定されない。
【0056】
図1Cは、図1Bにおけるa-a'断面の一例を示す。窒化物半導体装置100は、窒化物からなる第1導電型の半導体基板10を備える。窒化物半導体装置100は、絶縁膜38と、ゲート電極40と、ソース電極52と、ドレイン電極54と、を備えてよい。
【0057】
半導体基板10は、基底層30と窒化物エピタキシャル層20と、を含んでよい。基底層30は、第1導電型の層である。基底層30は、一例としてN+型である。
【0058】
ゲート電極40は、絶縁膜38を挟んで、半導体基板10の上面11側の上方に設けられる。ゲート電極40は、金属を含む材料で形成されてよい。ゲート電極40の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)等の金属、または、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよく、不純物をドープしたポリシリコン等の材料で形成されてよい。
【0059】
ソース電極52は、絶縁膜38を挟んで、半導体基板10の上面11側の上方に設けられる。ソース電極52は、金属を含む材料で形成されてよい。ソース電極52の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)等の金属、または、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよい。
【0060】
ドレイン電極54は、半導体基板10の裏面12に形成される。ドレイン電極54は、金属等の導電材料で形成されてよい。
【0061】
高活性化領域22の活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向のピッチL1は、半導体基板10の深さ方向における低活性化領域24の長さd以下であってよい。高活性化領域22のピッチL1を低活性化領域24の長さd以下とすることで、高活性化領域22と低活性化領域24を活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向に一体的に形成し、JTE構造を形成することができる。高活性化領域22と低活性化領域24の形成方法の詳細については後述する。
【0062】
高活性化領域22のピッチL1は、半導体基板10の深さ方向における低活性化領域24の長さdより長くてもよい。高活性化領域22のピッチL1が低活性化領域24の長さdより長い場合、高活性化領域22と低活性化領域24が活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向に一体的に形成されない場合がある。すなわち、高活性化領域22および低活性化領域24の第2導電型の領域が形成されずに第1導電型の窒化物エピタキシャル層20がそのまま残り、第2導電型の領域が活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向に断続的に形成される場合がある。この場合、活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向に断続的に形成された高活性化領域22と低活性化領域24とは、ガードリング構造を形成してもよい。
【0063】
図1Dは、図1Bにおけるb-b'断面の一例を示す。繰り返し構造のピッチL2は、半導体基板10の深さ方向における低活性化領域24の長さd以下であってよい。繰り返し構造のピッチL2を低活性化領域24の長さd以下とすることで、高活性化領域22と低活性化領域24をY軸方向に一体的に形成し、JTE構造を形成することができる。高活性化領域22と低活性化領域24の形成方法の詳細については後述する。
【0064】
図2Aは、窒素イオン注入領域がある場合におけるMgイオンの拡散の一例を示す。すなわち、窒化物からなる半導体基板の上面にMgイオンおよび窒素イオンを注入し、熱拡散した場合の濃度分布の一例を示す。実線は熱拡散後のMg濃度の分布を表し、破線は注入されたMg濃度の分布を表し、一点鎖線は注入された窒素濃度の分布を表す。
【0065】
半導体基板に窒素イオンが注入されることで、半導体基板に結晶欠陥が形成されてよい。注入されたMgイオンは、熱拡散の工程において、窒素イオン注入によって形成された結晶欠陥領域に優先的に拡散してよい。窒素イオンが注入された領域に拡散したMgイオンの活性化率は、窒素イオンが注入されていない領域に拡散したMgイオンの活性化率よりも高くてよい。すなわち、窒素イオンが注入された領域には、活性化率の高い第2導電型の領域が形成されてよい。
【0066】
図2Bは、窒素イオン注入領域がない場合におけるMgイオンの拡散の一例を示す。すなわち、窒化物からなる半導体基板の上面に、窒素イオンを注入せずにMgイオンを注入し、熱拡散した場合の濃度分布の一例を示す。実線は熱拡散後のMg濃度の分布を表し、破線は図2Aの熱拡散後のMg濃度の分布を表す。
【0067】
窒素イオン注入領域がない場合、窒素イオンの注入に起因する結晶欠陥が形成されない。したがって、熱拡散されたMgイオンは、ある領域に優先的に拡散されることはなく、深さ方向になだらかに拡散してよい。
【0068】
本例の窒化物半導体装置100における耐圧構造部120は、図2Aおよび図2Bで説明した原理に基づいて形成されてよい。すなわち、高活性化領域22に相当する領域に窒素イオンを注入し、低活性化領域24に相当する領域に窒素イオンを注入しないことで、Mgイオンを窒素イオン注入領域に優先的に拡散させ、高活性化領域22が形成されてよい。高活性化領域22と低活性化領域24の形成方法の詳細については後述する。
【0069】
図3は、図1Bにおけるc-c'線上のアクセプタ面内密度の一例を示す。内側領域26においては、高活性化領域22の面内密度が外側領域28a、28bにおける高活性化領域22の面内密度と比較して大きいため、アクセプタ面内密度も大きい。外側領域28aにおいては、高活性化領域22の面内密度が、内側領域26における高活性化領域22の面内密度よりも小さく、外側領域28bにおける高活性化領域22の面内密度よりも大きいため、アクセプタ面内密度も内側領域26と外側領域28bにおけるアクセプタ面内密度の中間の値となっている。外側領域28bにおいては、高活性化領域22の面内密度が内側領域26および外側領域28aにおける高活性化領域22の面内密度と比較して小さいため、アクセプタ面内密度も小さい。このように、高活性化領域22の面内密度を調整することで、アクセプタ面内密度を調整することができ、JTE構造のアクセプタ濃度の勾配を実現することができる。
【0070】
図4は、図1Aにおける領域PQRSの変形例を示す。本例の高活性化領域22はひし形形状を有している点で、図1Bの例と相違する。その他の構成は図1Bの例と同一であってよい。すなわち、内側領域26における高活性化領域22の面内密度を外側領域28における高活性化領域22の面内密度よりも大きくできるものであれば、高活性化領域22の形状は特に限定されない。本例の高活性化領域22は、活性部110に近接する位置において、複数の高活性化領域22が部分的に重なるように形成されている。
【0071】
図5は、図1Bにおけるa-a'断面の変形例を示す。本例は、活性部110の高さと耐圧構造部120の高さとが異なる点で、図1Cの例と相違する。その他の構成は図1Cの例と同一であってよい。半導体基板10の裏面12から耐圧構造部120の上面11までの高さTprは、半導体基板10の裏面12から活性部110の上面11までの高さTaよりも低くてよい。
【0072】
図6Aは、窒化物半導体装置100の製造方法の一例を示す。本例は、窒化物半導体装置100の製造方法の一例を示しており、これに限定されない。
【0073】
ステップS100において、活性部110を設ける。活性部110は、当業者によって通常行われる方法により形成されることができる。一例として、ボディ領域14に相当する領域にMgイオンを注入し、ソース領域13に相当する領域にSiを注入し、コンタクト領域15に相当する領域にMgイオンを注入した後で、熱処理を施すことによって、活性部110を設けることができる。
【0074】
ステップ110において、活性部110の外周に耐圧構造部120を設ける。耐圧構造部120を設ける段階の詳細(ステップS112からS116)については後述する。活性部110を設ける段階S100と、耐圧構造部120を設ける段階S110との順序は、これに限定されない。活性部110を設けた後に耐圧構造部120を設けてよく、耐圧構造部120を設けた後に活性部110を設けてよく、活性部110と耐圧構造部120とが共通の工程によって設けられてよい。一例として、活性部110を設けるための熱処理を施す段階と、耐圧構造部120を設けるための後述する熱処理を施す段階とは、共通する熱処理によって行うことができる。
【0075】
ステップ112において、半導体基板10の上面11に第2導電型のイオンを注入する。第2導電型のイオンを注入する段階S112は、複数の開口部240を有するマスク242を半導体基板10の上方に形成する段階と、複数の開口部240を通して第2導電型のイオンを注入する段階と、を含んでよい。第2導電型のイオンが注入されることで、イオン注入領域244が形成されてよい。複数の開口部240は、低活性化領域24に相当する領域の上方に設けられてよい。すなわち、イオン注入領域244は、後述する熱処理後、低活性化領域24の少なくとも一部を形成してよい。
【0076】
第2導電型のイオンを注入する段階S112は、Mgイオンを注入する段階を含んでよい。すなわち、第2導電型のイオンは、Mgイオンを含んでよい。ステップS112において注入される第2導電型のイオンは、ステップS100において、コンタクト領域15を形成するために注入されるイオンと同一であってよく、第2導電型のイオンを注入する段階S112は、ステップS100においてコンタクト領域15を形成するために第2導電型のイオンを注入する段階と共通の段階であってもよい。
【0077】
第2導電型のイオンを注入する段階S112は、ピーク濃度が1.0E19cm-3以上、1.0E20cm-3以下である第2導電型のイオンを注入する段階を含んでよい。すなわち、注入される第2導電型のイオンのピーク濃度が1.0E19cm-3以上、1.0E20cm-3以下であってよく、注入されるMgイオンのピーク濃度が1.0E19cm-3以上、1.0E20cm-3以下であってよい。注入されるMgイオンのピーク濃度を1.0E19cm-3以上とすることで、図2Aで説明した窒素注入領域への優先的な拡散を確実に生じさせることができる。また、注入されるMgイオンのピーク濃度を1.0E20cm-3以下とすることで、半導体基板10に大きなダメージが形成されることを防止することができる。
【0078】
第2導電型のイオンを注入する段階S112は、10keV以上、1.0MeV以下のエネルギーで第2導電型のイオンを注入する段階を含んでよい。すなわち、第2導電型のイオンは、10keV以上、1.0MeV以下のエネルギーで注入されてよい。一例として、第2導電型のイオンの注入エネルギーは10keVである。
【0079】
ステップS114において、半導体基板10の上面11に窒素イオンを注入する。窒素イオンを注入する段階S114は、開口部220を有するマスク222を半導体基板10の上方に形成する段階と、開口部220を通して窒素イオンを注入する段階と、を含んでよい。窒素イオンが注入されることで、窒素イオン注入領域224が形成されてよい。開口部220は、高活性化領域22に相当する領域の上方に設けられてよい。すなわち、窒素イオン注入領域224は、後述する熱処理後、高活性化領域22の少なくとも一部を形成してよい。
【0080】
第2導電型のイオンを注入する段階S112と、窒素イオンを注入する段階S114との順序は、これに限定されない。第2導電型のイオンを注入した後に窒素イオンを注入してよく、窒素イオンを注入した後に第2導電型のイオンを注入してよい。
【0081】
ステップS116において、第2導電型のイオンを注入する段階S112および窒素イオンを注入する段階S114の後に、半導体基板10に熱処理を施す。熱処理を施す段階S116は、ステップS100において活性部110を設けるための熱処理を施す段階と共通の段階であってもよい。
【0082】
熱処理を施す段階S116は、第2導電型のイオンを窒素イオン注入領域224に拡散させ、不純物濃度が1.0E17cm-3以上、1.0E19cm-3以下である第2導電型の高活性化領域22を窒素イオン注入領域224に形成する段階を含んでよい。半導体基板に熱処理を施すことで(S116)、図2Aで説明した原理に基づいて、第2導電型のイオンが、窒素イオン注入領域224に拡散されてよい。窒素イオン注入領域224に拡散された第2導電型のイオンが活性化されることで、高活性化領域22が形成されてよい。形成された高活性化領域22のドーパント元素の不純物濃度は、1.0E17cm-3以上、1.0E19cm-3以下であってよい。ここで、ドーパント元素は、ステップS112において注入された第2導電型のイオンであってよい。
【0083】
熱処理を施す段階S116は、1300℃以上の温度で熱処理を施す段階を含んでよい。1300℃以上の温度で熱処理を施すことで、注入された第2導電型のイオンを窒素イオン注入領域224に確実に拡散することができる。
【0084】
図6Bは、ステップS112、S114における領域PQRSのマスク242、222の一例を示す。マスク242およびマスク222は、それぞれステップS112およびS114で別々に形成されるものであるが、図6Bでは説明のため重ねて示されている。ステップS112におけるマスク242が有する複数の開口部240が点線で表され、ステップS114におけるマスク222が有する開口部220が実線で表されている。
【0085】
ステップS114において、内側領域26における開口部220の面内密度は、外側領域28における開口部220の面内密度よりも大きくてよい。面内密度については、図1Bに関連して説明した通りである。すなわち、窒素イオンを注入する段階S114において、開口部220面内密度が調整されたマスク222を用いて窒素イオンを注入することで、面内密度が調整された高活性化領域22を形成することができる。
【0086】
開口部220は、複数の開口部220を含んでよい。開口部220を有するマスクを形成する段階は、予め定められたピッチで複数の開口部220を繰り返し配置したマスク222を形成する段階を有してよい。開口部220を通して窒素イオンを注入する段階は、複数の開口部220を通して窒素イオンを注入する段階を含んでよい。本例の開口部220は、活性部110から半導体基板10の外周端に向かう方向にピッチL1で配列された大きさの異なる7個の開口部220が、活性部110と耐圧構造部120の境界と平行な方向にピッチL2で繰り返し配置されており、図1Bの高活性化領域22に相当する領域の上方に設けられている。これにより、予め定められたピッチで複数の高活性化領域22を繰り返し配置した繰り返し構造を有する耐圧構造部120が形成されてよい。予め定められたピッチの方向は、X軸方向であってよく、Y軸方向であってよい。図6Bの例においては、予め定められたピッチの方向はY軸方向である。
【0087】
図1Dに関連して説明したように、繰り返し構造のピッチL2は、半導体基板10の深さ方向における低活性化領域24の長さd以下であってよい。低活性化領域24は、半導体基板10の表面に注入された第2導電型のイオンが拡散して形成された領域であってよく、半導体基板10の深さ方向における低活性化領域24の長さdは、第2導電型のイオンの拡散長さに相当してよい。すなわち、繰り返し構造のピッチL2を第2導電型のイオンの拡散長さに相当する長さd以下とすることで、高活性化領域22および低活性化領域24を確実に第2導電型の領域とすることができる。
【0088】
第2導電型のイオンを注入する段階S112における複数の開口部240と、窒素イオンを注入する段階S114における複数の開口部220とは、上面視において異なる領域に設けられてよい。本例の開口部240は、開口部220の間の領域であって、上面視において開口部220とは異なる領域に設けられている。開口部240を開口部220と異なる領域に形成し、第2導電型のイオンと窒素イオンとを異なる領域に注入することで、高活性化領域22となる窒素イオン注入領域に形成される欠陥の量が過多となることを防止することができる。ただし、開口部240と開口部220とは上面視において重複する領域に設けられてもよい。
【0089】
図6Cは、ステップS112、S114における領域PQRSのマスク242、222の変形例を示す。図6Bと同様に、マスク242とマスク222とは説明のため重ねて示してある。本例の開口部220は、ひし形形状を有している点で、図6Bの例と相違する。その他の構成は図6Bの例と同一であってよい。すなわち、内側領域26における開口部220の面内密度を外側領域28における開口部220の面内密度よりも大きくできるものであれば、開口部220の形状は特に限定されない。本例の開口部220は、活性部110に近接する位置において、複数の開口部220が重なるように形成されている。本例の開口部220は、図4の高活性化領域22に相当する領域の上方に設けられている。
【0090】
本例の窒化物半導体装置100の製造方法においては、窒素イオン注入領域224の面内密度を制御することによって、JTE構造のアクセプタ濃度の勾配を実現することができる。したがって、本例の窒化物半導体装置100の製造方法は、第2導電型のイオンの注入濃度を制御する方法と比較して、高い活性化率とアクセプタ濃度の勾配とを容易に実現することができる。また、本例の窒化物半導体装置100の製造方法は、注入領域のパターニングと注入とが複数回繰り返される必要のある第2導電型のイオンの注入濃度を制御する方法と比較して、少ない工程でJTE構造のアクセプタ濃度の勾配を実現することができる。
【0091】
図7Aは、窒化物半導体装置100の製造方法の変形例を示す。本例の製造方法は、第2導電型のイオンを注入する段階S212で形成されるマスク242が有する開口部240が異なる点で、図6Aの例と相違する。本例では、図6Aの例と相違する点について特に説明し、その他の構成は図6Aの例と同一であってよい。
【0092】
第2導電型のイオンを注入する段階S212は、開口部240を有するマスク242を半導体基板10の上方に形成する段階と、開口部240を通して第2導電型のイオンを注入する段階と、を含んでよい。本例のマスク242は、単一の開口部240を有する。
【0093】
図7Bは、ステップS212、S214における領域PQRSのマスク242、222の一例を示す。図6Bおよび図6Cと同様に、マスク242とマスク222とは説明のため重ねて示されている。
【0094】
上面視において、窒素イオンを注入する段階S214における複数の開口部220は、第2導電型のイオンを注入する段階S212における開口部240の内側に設けられてよい。すなわち、開口部240と開口部220とは上面視において重複する領域に設けられてもよい。
【0095】
図8Aは、窒化物半導体装置100の製造方法の変形例を示す。本例の製造方法は、ステップS320を有する点で、図6Aおよび図7Aの例と相違する。本例では、図6Aおよび図7Aの例と相違する点について特に説明し、その他の構成は図6Aおよび/または図7Aの例と同一であってよい。
【0096】
ステップS320において、熱処理を施す段階S316の後に、半導体基板10の表面をエッチングする。半導体基板10の表面をエッチングすることで、拡散されずに表面に残存した高濃度の第2導電型のイオンを除去することができる。表面に残存した高濃度の第2導電型のイオンを除去することで、リーク電流の増大を抑制することができる。
【0097】
図8Bは、窒化物半導体装置100の製造方法の変形例を示す。本例の製造方法は、ステップS420において半導体基板10の表面を部分的にエッチングする点で、図8Aの例と相違する。本例では、図8Aの例と相違する点について特に説明し、その他の構成は図8Aの例と同一であってよい。
【0098】
半導体基板10の表面をエッチングする段階S420は、活性部110を覆い、耐圧構造部120に開口を有するマスク262を半導体基板10の上方に形成する段階と、耐圧構造部120の表面をエッチングする段階と、を含んでよい。すなわち、ステップS420においては、耐圧構造部120の表面のみをエッチングしてよい。耐圧構造部120の表面をエッチングすることで、拡散されずに表面に残存した高濃度の第2導電型のイオンを除去することができ、リーク電流の増大を抑制することができる。
【0099】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0100】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0101】
10 半導体基板、11 上面、12 裏面、13 ソース領域、14 ボディ領域、15 コンタクト領域、20 窒化物エピタキシャル層、22 高活性化領域、24 低活性化領域、26 内側領域、28 外側領域、30 基底層、38 絶縁膜、40 ゲート電極、52 ソース電極、54 ドレイン電極、100 窒化物半導体装置、110 活性部、120 耐圧構造部、220 開口部、222 マスク、224 窒素イオン注入領域、240 開口部、242 マスク、244 イオン注入領域、262 マスク
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B