(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012046
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】測定装置、及び検体の送液方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/1409 20240101AFI20240118BHJP
G01N 15/14 20240101ALI20240118BHJP
G01N 15/1434 20240101ALI20240118BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240118BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G01N15/14 A
G01N15/14 C
G01N15/14 Q
G01N37/00 101
G01N21/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008402
(22)【出願日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2022114271
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 由紀夫
【テーマコード(参考)】
2G057
【Fターム(参考)】
2G057AA20
2G057AB01
2G057AC01
2G057AD01
2G057BA05
2G057BB01
2G057BB06
2G057BC07
2G057BD03
2G057GA06
(57)【要約】
【課題】検体液がシース液と混ざり合うことを抑制しつつ、簡易な構成で検体の鮮明な画像を取得できる測定装置及び検体の送液方法を得る。
【解決手段】検体液及びシース液が流れる合流路と、前記シース液を前記合流路に前記合流路における流体の流れ方向に沿って導入する少なくとも1つのシース液流路と、前記検体液を前記合流路に、前記流れ方向に対して直交する角度で導入する検体流路と、を有するフローセルへの検体の送液方法であって、前記シース液流路の前記合流路へのシース液導入口の開口面積をS1、前記検体流路の前記合流路への検体液導入口の開口面積をS2、前記シース液流路に供給される前記シース液の単位時間当たりの流量をL、前記検体流路に供給される前記検体液の単位時間当たりの流量をJとすると、(L/S1)/(J/S2)≧0.7 の関係を満たす、検体の送液方法。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体液及びシース液が流れる合流路と、
前記シース液を前記合流路に前記合流路における流体の流れ方向に沿って導入する少なくとも1つのシース液流路と、
前記検体液を前記合流路に、前記流れ方向に対して直交する角度で導入する検体流路と、
を有するフローセルと、
前記合流路を流れる前記検体液を撮影する撮影手段と、
前記シース液流路へ前記シース液を供給するシース液供給部と、
前記検体流路へ前記検体液を供給する検体液供給部と、
前記シース液流路の前記合流路へのシース液導入口の開口面積をS1、前記検体流路の前記合流路への検体液導入口の開口面積をS2、前記シース液流路に供給される前記シース液の単位時間当たりの流量をL、前記検体流路に供給される前記検体液の単位時間当たりの流量をJとすると、
(L/S1)/(J/S2)≧0.7
の関係を満たすように、前記検体液供給部及び前記シース液供給部を制御する、制御部と、
を備えた測定装置。
【請求項2】
前記シース液導入口及び前記検体液導入口の少なくとも一方は、矩形状である、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記検体液導入口の前記合流路における流れ方向に対して直交する幅は、0.3mm~1.0mmの範囲内である、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記シース液導入口の前記検体液の導入方向に沿う深さは、0.4mm~0.8mmの範囲内である、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記合流路は、
前記検体流路と前記シース液流路とが合流する合流部と、
前記合流部よりも下流側に配置され、前記合流部の対向する壁面のうち一方の壁面と面一で形成され、前記合流部よりも前記対向する壁面間の距離が短い扁平部と、
前記合流部と前記扁平部とを連絡し、下流に向かって前記対向する壁面間の距離が漸減するテーパー部と、を有する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記一方の壁面に前記検体液導入口が形成されている、
請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記一方の壁面と前記シース液流路の一の壁面は、面一である、
請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記撮影手段は、前記フローセルを挟んで前記合流路の前記検体液が導入される側に配置されている、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項9】
検体液及びシース液が流れる合流路と、
前記シース液を前記合流路に前記合流路における流体の流れ方向に沿って導入する少なくとも1つのシース液流路と、
前記検体液を前記合流路に、前記流れ方向に対して直交する角度で導入する検体流路と、
を有するフローセルへの検体の送液方法であって、
前記シース液流路の前記合流路へのシース液導入口の開口面積をS1、前記検体流路の前記合流路への検体液導入口の開口面積をS2、前記シース液流路に供給される前記シース液の単位時間当たりの流量をL、前記検体流路に供給される前記検体液の単位時間当たりの流量をJとすると、
(L/S1)/(J/S2)≧0.7
の関係を満たす、検体の送液方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体液と共にシース液を流して検体中の粒子を分析する測定装置、及び、検体の送液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、細胞検出装置が開示されている。特許文献1では、フローセルの流路入口からジェットノズルを用いて検体液を測定用の流路へ供給すると共に、シース液も同じ流路入口から測定用の流路へ供給する構成が開示されている。ジェットノズルから流路へ送り出された検体液は、シース液に包まれた状態で下流へ流され、検出位置を通過する。検出位置を通過する検体の粒子を撮像して得られた画像から、調製された検体の粒子が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、検体液がシース液に包まれた状態で検出位置を通過するため、鮮明な撮影画像を得ることが難しい。また、シース液やジェットノズルを用いた検体の供給構成について、具体的な開示がない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、検体液がシース液と混ざり合うことを抑制しつつ、簡易な構成で検体の鮮明な画像を取得できる測定装置及び検体の送液方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測定装置は、検体液及びシース液が流れる合流路と、前記シース液を前記合流路に前記合流路における流体の流れ方向に沿って導入する少なくとも1つのシース液流路と、前記検体液を前記合流路に、前記流れ方向に対して直交する角度で導入する検体流路と、を有するフローセルと、前記合流路を流れる前記検体液を撮影する撮影手段と、前記シース液流路へ前記シース液を供給するシース液供給部と、前記検体流路へ前記検体液を供給する検体液供給部と、前記シース液流路の前記合流路へのシース液導入口の開口面積をS1、前記検体流路の前記合流路への検体液導入口の開口面積をS2、前記シース液流路に供給される前記シース液の単位時間当たりの流量をL、前記検体流路に供給される前記検体液の単位時間当たりの流量をJとすると、(L/S1)/(J/S2)≧0.7 の関係を満たすように、前記検体液供給部及び前記シース液供給部を制御する、制御部と、を備えている。
【0007】
本発明の測定装置は、前記シース液導入口及び前記検体液導入口の少なくとも一方が矩形状とされていてもよい。
【0008】
本発明の測定装置は、前記検体液導入口の前記合流路における流れ方向に対して直交する幅は、0.3mm~1.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0009】
本発明の測定装置は、前記シース液導入口の前記検体液の導入方向に沿う深さは、0.4mm~0.8mmの範囲内であることが好ましい。
【0010】
本発明の測定装置は、前記合流路は、前記検体流路と前記シース液流路とが合流する合流部と、前記合流部よりも下流側に配置され、前記合流部の対向する壁面のうち一方の壁面と面一で形成され、前記合流部よりも前記対向する壁面間の距離が短い扁平部と、前記合流部と前記扁平部とを連絡し、下流に向かって前記対向する壁面間の距離が漸減するテーパー部と、を有していてもよい。
【0011】
本発明の測定装置は、前記一方の壁面に前記検体液導入口が形成されていてもよい。
【0012】
本発明の測定装置は、前記一方の壁面と前記シース液流路の一の壁面は、面一であってもよい。
【0013】
前記撮影手段は、前記フローセルを挟んで前記合流路の前記検体液が導入される側に配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明の検体の送液方法は、検体液及びシース液が流れる合流路と、前記シース液を前記合流路に前記合流路における流体の流れ方向に沿って導入する少なくとも1つのシース液流路と、前記検体液を前記合流路に、前記流れ方向に対して直交する角度で導入する検体流路と、を有するフローセルへの検体の送液方法であって、前記シース液流路の前記合流路へのシース液導入口の開口面積をS1、前記検体流路の前記合流路への検体液導入口の開口面積をS2、前記シース液流路に供給される前記シース液の単位時間当たりの流量をL、前記検体流路に供給される前記検体液の単位時間当たりの流量をJとすると、(L/S1)/(J/S2)≧0.7 の関係を満たす。
【発明の効果】
【0015】
本発明の検体の測定装置及び送液方法によれば、検体液がシース液と混ざり合うことを抑制しつつ、簡易な構成で検体の鮮明な画像を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るフローセルを示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るフローセルを示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るフローセルを示す分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るフローセルの検体液とシース液の合流部付近を示す拡大斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係るフローセルを示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係るフローセルの流路における検体液とシース液の流れ方向、及び測定装置の一部を模式的に示す、流路の長手方向に沿った断面図である。
【
図7】第1実施形態に係るフローセルに供給される検体液を撮影する測定装置の一例を示す斜視図である。
【
図8】第1実施形態に係るフローセルの流路における検体液とシース液の流れ方向、及び測定装置の一部を模式的に示す、流路の長手方向に沿った断面拡大図である。
【
図9】第1実施形態のフローセルに検体液及びシース液を流して、検体液の流れを評価するシミュレーションの評価1の結果を示す表である。
【
図10】第1実施形態のフローセルに検体液及びシース液を流して、検体液の流れを評価するシミュレーションの評価2の結果を示す表である。
【
図11】第2実施形態に係るフローセルを示す分解斜視図である。
【
図12】第2実施形態に係るフローセルの流路における検体液とシース液の流れ方向、及び測定装置の一部を模式的に示す、流路の長手方向に沿った断面図である。
【
図13】第2実施形態に係るフローセルに供給される検体液を撮影する測定装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、図面において適宜示される矢印Hは、フローセルの高さ方向(厚み方向)を示しており、矢印Wは、フローセルの幅方向を示している。また、図面において、矢印Lは、高さ方向および幅方向のそれぞれに
直交するフローセルの長手方向を示している(矢印Lはシース液と検体液の合流後の流路の流れ方向の下流側を指している)。また、図面において適宜示される矢印UPは、測定装置の上下方向の上側を示している。また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲がある場合は、数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0018】
[第1実施形態]
以下、図面を用いて、本発明に係る第1実施形態の測定装置、検体の送液方法について説明する。
【0019】
(フローセルの構成)
図1には、本実施形態の測定装置70(
図7参照)のフローセル10が斜視図にて示されており、
図2には、フローセル10が平面図にて示されている。また、
図3には、フローセル10が分解斜視図にて示されている。なお、
図3では、フローセル10の構成を分かりやすくするため、高さ方向(H方向)、すなわち上下方向を
図1及び
図2とは逆にした状態で図示している。
【0020】
本実施形態のフローセル10は、例えば、シース液と共に検体液の一例としての尿検体を導入することで、尿検体の有形成分を測定装置70の撮影手段で撮影し、撮影された画像の有形成分の形状等から分析を行う尿中有形成分検査に用いるものである。本実施形態では、検体液の一例として、尿検体を用い、尿中有形成分検査を行っているが、血液、細胞、体液などの検体及び用途に使用することも可能である。
【0021】
図1~
図3に示されるように、フローセル10は、略矩形状の板状部材とされている。本実施形態では、フローセル10は、平板状の第1板状体12と平板状の第2板状体14とを面接触状態で貼り合せた構成とされている。第1板状体12と第2板状体14は、平面視で略同一形状とされている。フローセル10は、検体液2とシース液4(
図6参照)が流れる合流路16と、合流路16の上流側に検体液が流れる検体流路18と、を備えている。また、フローセル10は、合流路16の流れ方向(矢印R1方向)の上流側に合流路16が延長されシース液が流れるシース液流路21を備えている。また、フローセル10は、シース液流路21の上流側と連結されシース液が流れる第1シース液流路20、シース液流路21と連結され第1シース液流路20と反対側に配置されシース液が流れる第2シース液流路22、を備えている。
【0022】
第1板状体12には、合流路16、シース液流路21、第1シース液流路20及び第2シース液流路22、が形成されている(
図3参照)。なお、
図3では、上述のように
図1及び
図2とはフローセル10の上下方向を逆にした状態で図示しているため、第1シース液流路20と第2シース液流路22の位置関係が
図1及び
図2とは逆になる。本実施形態では、第1板状体12の片側の面12Aに溝加工を施すことで、合流路16、シース液流路21、第1シース液流路20及び第2シース液流路22、が形成されている(
図3参照)。第2板状体14は、上下の各々にほぼ面一の平面を備えた板材であり、検体流路18が形成されている(
図3参照)。
【0023】
第1シース液流路20は、平面視にてフローセル10の外周に沿って配置された横長の略U字状の経路とされており、略U字状の開口側がフローセル10の幅方向(W方向)を向いている。第1シース液流路20は、フローセル10の幅方向(W方向)の一方側の部位に形成されている。本実施形態では、第1シース液流路20の延在方向に対して直交する方向の断面形状は、略矩形状とされている。
【0024】
第1シース液流路20は、矢印R2方向にシース液4が流れる構成とされている。第1シース液流路20の流れ方向(矢印R2方向)の上流側端部には、高さ方向Hに第1板状体12を貫通させたシース取入口24が形成されている。シース取入口24からシース液
4が供給され、当該シース液4が合流路16の上流側に向かって流れるようになっている。第1シース液流路20には、流れ方向の途中に2つの屈曲部20A、20Bが形成されている。屈曲部20A、20Bは、略90°に屈曲されており、屈曲部分の角部がR状に湾曲した形成とされている。
【0025】
第2シース液流路22は、平面視にてフローセル10の外周に沿って配置された横長の略U字状の経路とされており、略U字状の開口側がフローセル10の幅方向(W方向)であって第1シース液流路20の略U字の形状の開口側を向いている。第2シース液流路22は、フローセル10の幅方向(W方向)の他方側(第1シース液流路20と反対側)の部位に形成されている。本実施形態では、第2シース液流路22の延在方向に対して直交する方向の断面形状は、略矩形状とされている。第1シース液流路20と第2シース液流路22とは、フローセル10の高さ方向Hにおいてほぼ同じ高さで配置されている。第2シース液流路22と第1シース液流路20は、フローセル10の平面視にて幅方向Wにおいて対称に形成されており、一端と他端が連結されている。第2シース液流路22と第1シース液流路20の合流部分におけるシース液流路21と反対側の壁部を側壁26Aとする。
【0026】
第2シース液流路22は、矢印R3方向にシース液4が流れる構成とされている。第2シース液流路22の流れ方向(矢印R3方向)の上流側端部は、シース取入口24に接続されている。第2シース液流路22と第1シース液流路20では、シース取入口24が共通とされており、シース取入口24から導入されたシース液4が第2シース液流路22と第1シース液流路20に分岐する構成とされている。第2シース液流路22と第1シース液流路20は、同じ距離、断面積である。シース取入口24には、シース液4を供給する供給管88(詳細は後述する、
図7参照)が接続されている。第2シース液流路22では、シース取入口24から供給されたシース液4が、合流路16の上流側に向かって流れる。第2シース液流路22には、流れ方向の途中に2つの屈曲部22A、22Bが形成されている。屈曲部22A、22Bは、略90°に屈曲されており、屈曲部分の角部がR状に湾曲した形成とされている。
【0027】
合流路16は、 第1板状体12の幅方向Wの中央に、長手方向Lに沿って形成されている。合流路16の下流端は、第1シース液流路20及び第2シース液流路22の上流端の連結部分よりも第1板状体12の長手方向Lの中央側に形成されている。
【0028】
第1シース液流路20と第2シース液流路22の下流側端部は、互いに連結されると共に、シース液流路21と連結されている。第2シース液流路22と第1シース液流路20からのシース液4の流れは、シース液流路21の上流側で合流し、シース液流路21へ導かれ、矢印R1方向に流れる。シース液流路21の上の壁面は、後述する合流部16Aも構成する上壁部26Cの一部により構成されている。シース液流路21の下の壁面は、後述する合流部16Aも構成する下壁部26Bの一部により構成されている。上壁部26Cは第1板状体12に、下壁部26Bは第2板状体14に、各々形成されており、シース液流路21の上の壁面と下の壁面は互いに平行に対向配置されている。
【0029】
シース液流路21の合流路16への開口部分(以下「シース液導入口21A」という、
図4参照)は、矩形状(長方形状)とされ、深さ(高さ方向Hの長さ)をA、流れ方向(矢印R1方向)と直交する方向の長さを幅B、開口面積をS1とする。シース液流路21は開口面積がS1の柱体形状の流路であり、矩形体形状の流路であるとも言える。深さAは、一般的に使用するシース液4の流量、及び、検体液2の流量を考慮して、0.4mm~0.8mmの範囲であることが好ましい。なお、後述するように、深さAは、検体液2の導入方向(高さH方向)に沿った方向となっている。
【0030】
検体流路18は、開口面積が後述するS2の柱体形状の流路であり、矩形体形状の流路である。検体流路18は、第2板状体14に形成されており、シース液流路21と合流路16との境界部分に対応する位置の幅方向中央に形成されている。言い換えると、連続する同幅のシース液流路21と合流路16は、検体流路18よりも上流側がシース液流路21となり、検体流路18が形成されている位置に対応する部分から下流側が合流路16となる。シース液流路21と合流路16との境界部分がシース液導入口21Aである。合流路16は、断面矩形状(長方形状)とされている。
【0031】
検体流路18は、第2板状体14の板面と直交する方向に第2板状体14を貫通する孔で形成されている。検体流路18は、断面が略矩形状(長方形状)とされ、合流路16における流体の流れ方向(矢印R1方向)に対して、直交する角度で検体液を導入する。なお、直交する角度は、±5°の範囲内を含むものである。すなわち、合流路16における流体の流れ方向(矢印R1方向)に対して、流れの側方から見て、85°~95°の範囲内を含む。合流路16への開口部分を検体液導入口18Bとし、検体液導入口18Bと反対側の開口部分を検体液流入口18Aとする。検体液導入口18Bにおける、合流路16の流れ方向(矢印R1方向)の長さを長さC、流れ方向と直交する方向の長さを幅D、開口面積をS2とする。一般的に使用するシース液4の流量、及び、検体液2の流量を考慮して、幅Dは、0.3mm~1.0mmの範囲であることが好ましい。検体液導入口18Bの開口面積S2は、シース液導入口21Aの開口面積S1よりも小さいことが好ましい。
【0032】
検体流路18の合流路16と反対側の開口部分である検体液流入口18Aは、後述する筐体72に形成された溝72Bに対応する位置に配置され、後述する供給管80と接続される。供給管80は溝72Bに配設され、供給管80から検体液流入口18Aへ検体液2が導入されるようになっている。
【0033】
合流路16の流れ方向(矢印R1方向)の上流側端部は、検体流路18から導入される検体液2とシース液流路21から導入されるシース液4とが合流される合流部16Aが形成される。(
図1参照)。すなわち、合流部16Aは、合流路16の一部である。
【0034】
合流部16Aは、検体流路18が形成されている位置に対応する部分から下流側に設けられた矩形体形状の流路であり検体流路18と直交する流路である。合流部16Aの開口面積はS1である。合流部16Aの上流端はシース液流路21の下流端と接続している。シース液流路21と合流部16Aとの境界部分がシース液導入口21Aである。合流部16Aとシース液流路21は、シース液が流れる開口面積S1の柱体形状(具体的には矩形体形状)の一つの流路を構成しているとも言える。合流部16Aとシース液流路21によって構成される当該流路は検体流路18と直交する。
【0035】
検体液2が導入される検体液導入口18Bは、合流部16Aの深さ方向(矢印H方向)の一方側の壁面に形成されている(
図5参照)。より具体的には、合流部16Aは、深さ方向(矢印H方向)で対向する一対の壁面としての下壁部26Bと上壁部26Cを備えており、検体流路18は、合流部16Aの対向する一方側の一方の壁面としての下壁部26Bに開口するように設けられている。下壁部26Bは、第2板状体14の一方側の面で構成されており、検体液2は、検体液導入口18Bから合流部16Aに導入されるようになっている。言い換えると、検体流路18は、合流部16Aの対向する一方側の下壁部26Bから、合流路16の流れ方向(矢印R1方向)に90°(±5°)の角度で、検体液2を導入するようになっている。上壁部26C及び下壁部26Bは、合流部16Aからシース液流路21を経て第1シース液流路20と第2シース液流路22の連結部分まで延出されている。したがって、合流部16Aからシース液流路21を経て第1シース液流路20と第2シース液流路22の連結部分までは、上面が上壁部26Cで面一となり、下面が下
壁部26Bで面一となっている。
【0036】
シース液4が導入されるシース液導入口21Aは、下壁部26B、上壁部26C、及び、幅方向Wに対向する一対の側壁部で囲まれた部分で形成されている。シース液4は、シース液流路21から合流部16Aへ矢印R1方向に導入され、検体液2は、シース液4により下壁部26Bに沿って矢印R1方向に流される。
【0037】
合流路16の合流部16Aより流れ方向(矢印R1方向)の下流側には、合流路16の上壁部26Cに、下流に向かって深さを徐々に浅くするテーパー部16Bが設けられている(
図5、6参照)。テーパー部16Bは、合流路16の上壁部26Cのみに形成されている。下壁部26Bは、合流路16の全域に渡って面一とされている。本実施形態では、テーパー部16Bは、下壁部26Bと上壁部26Cの間隔が徐々に狭まる形状とされている。テーパー部16Bは、フローセル10の面方向(本実施形態では、下壁部26Bの面方向)に対する傾斜角度が、例えば、2°~15°とされている。
【0038】
合流路16のテーパー部16Bより流れ方向(矢印R1方向)の下流側には、合流部16Aより深さが浅い扁平部16Cが形成されている。テーパー部16Bは、合流部16Aの上壁部26Cと扁平部16Cとを繋ぐ構成とされている。
【0039】
フローセル10の外部における扁平部16Cと対向する位置には、検体液2を撮影する撮影手段としてのカメラ74が配置されている(
図5、
図6参照)。カメラ74は、フローセル10を挟んで合流路16の検体液2が導入される側、すなわち、第2板状体14側に配置されている。
【0040】
図1~
図3に示されるように、合流路16の流れ方向(矢印R1方向)の下流側端部には、流体(検体液2及びシース液4)が排出される排出口16Dが形成されている。排出口16Dには、図示しない排出管が接続されており、排出口16Dから排出管に流体(検体液2及びシース液4)が排出されるようになっている。
【0041】
本実施形態のフローセル10では、検体液2の単位時間当たりの流量Jとシース液4の単位時間当たりの流量Lが、以下の式(1)関係が満たされるように制御される。なお、前述のように、S1はシース液導入口21Aの合流部16Aへの開口面積であり、S2は検体液導入口18Bの合流路16への開口面積である。
(L/S1)/(J/S2)≧0.7 (1)
【0042】
なお、本実施形態において、
図4に示すように、シース液導入口21Aは、矩形状(長方形状)であるため、開口面積S1は、深さA×幅Bで表すことができる。また、検体液導入口18Bも、矩形状(長方形状)であるため、開口面積S2は、幅D×長さCで表すことができる。
【0043】
式(1)の関係を満たすように検体液2の流量Jとシース液4の流量Lを制御することにより、合流路16を流れる検体液2が、下壁部26Bに沿って流れ、下壁部26Bの壁面と検体液2との間へのシース液4の混入が抑制される。
【0044】
フローセル10は、ほぼ透明であり、例えば、樹脂で形成されている。フローセル10の材質は、例えば、PMMA、COP,PDMS、PP、硝子等の約90%以上の可視光透過性のある材料などが選択される。第1板状体12には、レーザ加工等により、合流路16、検体流路18、第1シース液流路20、及び第2シース液流路22等が形成されている。第1板状体12と第2板状体14とを貼り合せることによりフローセル10を形成する。本実施形態では、一例として、熱圧着により第1板状体12と第2板状体14とを
貼り合せている。フローセル10は小型で、容易に製造することができる。そのため、必要な検体液量およびシース液量が少なくなる。また、フローセル10に支障が生じたときには、新しいものに交換をすることで迅速に対応することができる。
【0045】
(測定装置の構成)
図7には、本実施形態の測定装置70が斜視図にて示されている。測定装置70は、カメラ74を用いて、フローセル10を流れる検体液2を撮影するものである。
【0046】
測定装置70は、フローセル10が配置される筐体72を備えている。筐体72は、フローセル10が挿入される凹部72Aを備えており、さらに、検体流路18へ検体液2を供給する供給管80を配置する溝72Bを備えている。筐体72の凹部72Aを含む位置は、透明な部材(例えば、ガラス等)で形成されている。筐体72の内部には、フローセル10と対向する位置に設けられた撮影手段としてのカメラ74が設けられている。筐体72の上側には、カメラ74とフローセル10を挟んで対向する位置に光源76が設けられている。カメラ74は、フローセル10の合流路16の扁平部16Cと対向する位置に配置されている。
【0047】
測定装置70は、検体液供給部としての第1供給装置78を備えている。第1供給装置78は、検体液流入口18Aに一端部が接続される供給管80と、供給管80に途中に設けられるポンプ82と、供給管80の他端部に接続されると共に検体液2が貯留される検体貯留部84と、を備えている。第1供給装置78から検体流路18へ検体液2が供給される。
【0048】
測定装置70は、シース供給部としての第2供給装置86を備えている。第2供給装置86は、シース取入口24に一端部が接続される供給管88と、供給管88に途中に設けられるポンプ90と、供給管88の他端部に接続されると共にシース液4が貯留されるタンク92と、を備えている。第2供給装置86から第1シース液流路20及び第2シース液流路22を介してシース液流路21へシース液4が供給される。
【0049】
測定装置70は、制御部94を備えている。制御部94は、図示しない、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージを有している。ストレージには、測定装置7を駆動させる各種プログラム、データ等が格納されている。制御部94は、カメラ74、光源76、ポンプ82、ポンプ90と電気的に接続されており、これら各部をそれぞれ制御する。
【0050】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0051】
測定装置70では、ポンプ90を駆動することで、タンク92からフローセル10へシース液4が供給される。本実施形態では、フローセル10にシース液4を先に供給し、合流路16の合流部16Aにシース液4が導入された後に、検体液2の供給を開始する。なお、本実施形態では、シース液4を先に供給したが、検体液2を先に供給してもよいし、同時に供給してもよい。
【0052】
シース液4は、シース取入口24から分岐された第1シース液流路20及び第2シース液流路22にそれぞれ分岐される。第1シース液流路20では、シース液4がシース液流路21に向かって矢印R2方向に流れる。第2シース液流路22では、シース液4がシース液流路21に向かって矢印R3方向に流れる。シース液4が屈曲部20A、20Bを流れることで、圧力損失が大きくなる。
【0053】
シース液流路21の上流側で、第1シース液流路20のシース液4と、第2シース液流路22のシース液4とが合流され、合流後のシース液4は、略直角に流れ方向を変えて、シース液流路21へ流入する。シース液流路21へ流入したシース液4は、矢印R1方向へ流れ、シース液導入口21Aを経て合流路16の合流部16Aへ導入される。
【0054】
一方、検体液2は、ポンプ82を駆動することで、検体貯留部84からフローセル10の検体液流入口18Aを通じて検体流路18に供給される。検体液流入口18Aから供給された検体液2は、検体流路18を流れて、検体液導入口18Bから合流路16の合流部16Aへ導入される。
【0055】
制御部94でのポンプ90の出力を制御することにより、前述の式(1)の関係が満たされるように、シース液4は単位時間当たり流量Lで供給され、検体液2は単位時間当たり流量Jで供給される。
【0056】
合流部16Aへ導入された検体液2は、シース液4と合流される。検体液2は、シース液4の流れ方向(矢印R1方向)に対して直交方向Hに導入される。検体液2は、下壁部26Bに接触しつつ合流路16を矢印R1方向へ流れる(
図6参照)。
【0057】
合流部16Aに導入されたシース液4は、テーパー部16Bによって検体液2を下壁部26Bに押し付けるように矢印R1方向に流れ、検体液2は下壁部26Bと接触している(
図6矢印F1部分参照)。下流側へ進むにつれて、合流路16のテーパー部16Bでは、検体液2は、下壁部26Bに沿って扁平状に引き伸ばされ、検体液4の厚みが徐々に薄くなる。そして、合流路16の扁平部16Cの上流部(
図6の矢印F2部分)では、検体液2の厚みが薄くなった状態、且つ、検体液2が下壁部26Bと接触して流れている。
【0058】
このため、合流路16の扁平部16Cの上流部(一例として、本実施形態では、扁平部16Cの開始位置から約2mmの範囲)で、検体液2を、カメラ74で撮影することで、検体液2を被写界深度内に収めることができる。また、カメラ74と検体液2の間にシース液4が介在していないので、シース液4による乱反射による影響を受けず、鮮明な画像を取得することができる。
【0059】
合流路16の扁平部16Cより下流側では、検体液2及びシース液4が排出口16Dから排出管(図示省略)に排出される。
【0060】
本実施形態のフローセル10は、第2板状体14を板面と直交する方向に貫通する孔で検体流路18を単独で形成するので、他の流路が形成されている第1板状体12へ検体流路を形成する場合と比較して、簡易な構成にすることができ、容易に製造することができる。
【0061】
また、本実施形態のフローセル10では、検体液2の単位時間当たりの流量Jとシース液4の単位時間当たりの流量Lを、前述の式(1)の関係が満たされるように制御するので、シース液4と検体液2とが混ざり合うことが抑制され、シース液4は、検体液2と下壁部26Bの間に流入し難くなる。これにより、検体液2を、下壁部26Bに接触させつつ合流路16を矢印R1方向へ流すことができる。
【0062】
また、本実施形態では、シース液導入口21Aは矩形状(長方形状)である。したがって、平坦面である下壁部26Bの一部によりシース液導入口21Aを容易に形成することができる。また、検体液導入口18Bも矩形状(長方形状)であり、一辺が幅方向Wと同方向に配置され、シース液流路21からのシース液4の流れに対して幅方向Wにおいて同一長さ(流れ方向R1の長さ)で検体液2が導入される。したがって、検体液2はシース液4の流れに対し幅方向Wにおいて均等な抵抗力を作用させるため、検体液2は均等の厚みの層流を形成し、合流部16Aを流れる。そのため、シース液4と混合されることが抑制される。
【0063】
また、本実施形態のフローセル10では、テーパー部16Bによって、検体液2がシース液4に下壁部26Bへ押し付けられることで、検体流路18が下壁部26Bに沿って厚みが薄くなるように扁平状に引き伸ばされる。フローセル10の扁平部16Cと対向する位置にカメラ74を配置して、扁平部16Cを流れる検体液2を撮影することにより、シース液4と混ざり合うことを抑制された、検体液2の鮮明な画像を取得することができる。
【0064】
また、シース液流路21の下面は、合流部16Aの下面も形成する面一の下壁部26Bの一部で形成されているので、シース液4をスムーズに合流路16へ導入することができ、検体液2とシース液4との混合を抑制することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、シース液導入口21A及び検体液導入口18Bを矩形状としたが、これらは、他の形状、例えば円形や楕円形であってもよい。
【0066】
また、本実施形態では、テーパー部16B、扁平部16Cを設けたが、必ずしもこれらを設ける必要はなく、合流路16の深さを一定にしてもよい。この場合でも、合流路16の上流側における、検体液2が下壁部26Bに接触した部分で、シース液4と混ざり合うことを抑制された、検体液2の鮮明な画像を取得することができる。
【0067】
また、本実施形態では、第1シース液流路20と第2シース液流路22にわけてシース液4を供給したが、必ずしもこのように構成する必要はなく、例えば、側壁26Aにシース液4を供給する貫通孔を設けて、供給管88からシース液4を供給してもよい。
【0068】
また、本実施形態では、カメラ74をフローセル10を挟んで合流路16の検体液2が導入される側に配置したが、カメラ74をフローセル10を挟んで反対側(第1板状体12側)に配置して、撮影してもよい。
【0069】
また、本実施形態では、測定装置70に設けられた、制御部94により、流量L、流量Jを制御したが、流量L、流量Jを、手動で制御してもよい。例えば、前述の式(1)が満たされるように、ポンプ80、90の出力を手動で調整して、検体液2、シース液4を送液する方法を採用することができる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態の測定装置、検体の送液方法について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して図示し、その詳細な説明は省略する。
【0071】
図11には、本実施形態の測定装置70-2(
図13参照)のフローセル10-2が分解斜視図にて示されている。なお、
図11では、フローセル10-2の上下方向は、
図13の上下方向と一致した状態で図示している。
【0072】
本実施形態のフローセル10-2は、略矩形状の板状部材とされている。フローセル10-2は、平板状の第1板状体12-2と平板状の第2板状体14-2とを面接触状態で貼り合せた構成とされている。本実施形態では、第1板状体12-2が下側に、第2板状体14-2が上側になるように配置され、第1実施形態の第1板状体12と第2板状体14の配置と上下が逆となっている。
【0073】
第1板状体12-2は、第1実施形態の第1板状体12に排出口16D、及び、シース取入口24が形成されていない点を除き、第1実施形態の第1板状体12と同様の形状とされている。第2板状体14-2は、第1実施形態の第2板状体14に、排出口14D、及び、シース取入口14Aが形成されている点を除き、第1実施形態の第2板状体14と同様の形状とされている。
【0074】
排出口14Dは、合流路16の流れ方向(矢印R1方向)の下流側端部に、第2板状体14-2を厚み方向に貫通するように形成されている。排出口14Dには、図示しない排出管が接続されており、排出口14Dから排出管に流体(検体液2及びシース液4)が排出されるようになっている。
【0075】
シース取入口14Aは、第1シース液流路20の流れ方向(矢印R2方向)の上流側端部に、第2板状体14-2を厚み方向に貫通するように形成されている。シース取入口14Aには、シース液4を供給する供給管88(
図13参照)が接続されている。シース取入口14Aからシース液4が供給され、当該シース液4が合流路16の上流側に向かって流れるようになっている。
【0076】
検体流路18の合流路16と反対側の開口部分である検体液流入口18Aは、供給管80と接続され、供給管80から検体液流入口18Aへ検体液2が導入されるようになっている。
【0077】
本実施形態の測定装置70-2の筐体72-2は、第1実施形態の筐体72に凹部72Aが形成されていない点を除き、第1実施形態の筐体72と同様の形状とされている(
図13参照)。本実施形態では、検体液2及びシース液4の供給と排出が、フローセル10-2の上側(第2板状体14-2側)から行われる。
【0078】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0079】
測定装置70-2では、ポンプ90を駆動することで、タンク92からフローセル10-2へシース液4が供給される。シース液4は、シース取入口14Aから供給され、第1実施形態と同様に、第1シース液流路20及び第2シース液流路22にそれぞれ分岐されて、第1実施形態と同様の経路で、シース液導入口21Aを経て合流路16の合流部16Aへ導入される。
【0080】
一方、検体液2は、ポンプ82を駆動することで、検体貯留部84からフローセル10-2の検体液流入口18Aを通じて検体流路18に供給される。検体液流入口18Aから供給された検体液2は、検体流路18を流れて、検体液導入口18Bから合流路16の合流部16Aへ導入される。
【0081】
第1実施形態と同様に、制御部94でのポンプ90の出力を制御することにより、式(1)の関係が満たされるように、シース液4は単位時間当たり流量Lで供給され、検体液2は単位時間当たり流量Jで供給される。
【0082】
合流部16Aへ導入された検体液2は、シース液4と合流される。検体液2は、シース液4の流れ方向(矢印R1方向)に対して直交方向Hに導入される。検体液2は、下壁部26B(本実施形態では、上下方向の上側に配置されている壁面)に接触しつつ合流路16を矢印R1方向へ流れる(
図12参照)。
【0083】
合流部16Aに導入されたシース液4は、テーパー部16Bによって検体液2を下壁部26Bに押し付けるように矢印R1方向に流れ、検体液2は下壁部26Bと接触している(
図12矢印F1部分参照)。下流側へ進むにつれて、合流路16のテーパー部16Bでは、検体液2は、下壁部26Bに沿って扁平状に引き伸ばされ、検体液4の厚みが徐々に薄くなる。そして、合流路16の扁平部16Cの上流部(
図12の矢印F2部分)では、検体液2の厚みが薄くなった状態、且つ、検体液2が下壁部26Bと接触して流れている。
【0084】
このため、合流路16の扁平部16Cの上流部(一例として、本実施形態では、扁平部16Cの開始位置から約2mmの範囲)で、検体液2を、カメラ74で撮影することで、検体液2を被写界深度内に収めることができる。
【0085】
合流路16の扁平部16Cより下流側では、検体液2及びシース液4が排出口14Dから排出管(図示省略)に排出される。
【0086】
本実施形態のフローセル10-2は、第2板状体14-2を板面と直交する方向に貫通する孔で検体流路18、排出口14D、シース取入口14Aを形成するので、他の流路が形成されている第1板状体12-2へ検体流路を形成する場合と比較して、簡易な構成にすることができ、容易に製造することができる。
【0087】
また、本実施形態のフローセル10-2では、検体液2の単位時間当たりの流量Jとシース液4の単位時間当たりの流量Lを、前述の式(1)の関係が満たされるように制御するので、シース液4と検体液2とが混ざり合うことが抑制され、シース液4は、検体液2と下壁部26Bの間に流入し難くなる。これにより、検体液2を、下壁部26Bに接触させつつ合流路16を矢印R1方向へ流すことができる。
【0088】
また、本実施形態では、シース液導入口21Aは矩形状(長方形状)である。したがって、平坦面である下壁部26Bの一部によりシース液導入口21Aを容易に形成することができる。また、検体液導入口18Bも矩形状(長方形状)であり、一辺が幅方向Wと同方向に配置され、シース液流路21からのシース液4の流れに対して幅方向Wにおいて同一長さ(流れ方向R1の長さ)で検体液2が導入される。したがって、検体液2はシース液4の流れに対し幅方向Wにおいて均等な抵抗力を作用させるため、検体液2は均等の厚みの層流を形成し、合流部16Aを流れる。そのため、シース液4と混合されることが抑制される。
【0089】
また、本実施形態のフローセル10-2では、テーパー部16Bによって、検体液2がシース液4に下壁部26Bへ押し付けられることで、検体流路18が下壁部26Bに沿って厚みが薄くなるように扁平状に引き伸ばされる。フローセル10の扁平部16Cと対向する位置にカメラ74を配置して、扁平部16Cを流れる検体液2を撮影することにより、シース液4と混ざり合うことを抑制された、検体液2の鮮明な画像を取得することができる。
【0090】
また、シース液流路21の上面は、合流部16Aの上面も形成する面一の下壁部26Bの一部で形成されているので、シース液4をスムーズに合流路16へ導入することができ、検体液2とシース液4との混合を抑制することができる。
【0091】
なお、本実施形態では、シース液導入口21A及び検体液導入口18Bを矩形状としたが、これらは、他の形状、例えば円形や楕円形であってもよい。
【0092】
また、本実施形態では、テーパー部16B、扁平部16Cを設けたが、必ずしもこれらを設ける必要はなく、合流路16の深さを一定にしてもよい。この場合でも、合流路16の上流側における、検体液2が下壁部26Bに接触した部分で、シース液4と混ざり合うことを抑制された、検体液2の鮮明な画像を取得することができる。
【0093】
また、本実施形態では、第1シース液流路20と第2シース液流路22にわけてシース液4を供給したが、必ずしもこのように構成する必要はなく、例えば、側壁26Aにシース液4を供給する貫通孔を設けて、供給管88からシース液4を供給してもよい。
【0094】
また、本実施形態では、カメラ74をフローセル10-2を挟んで合流路16の第1板状体12側に配置したが、カメラ74をフローセル10-2を挟んで反対側(第2板状体14側)に配置して、撮影してもよい。
【0095】
また、本実施形態では、測定装置70-2に設けられた、制御部94により、流量L、流量Jを制御したが、流量L、流量Jを、手動で制御してもよい。例えば、前述の式(1)が満たされるように、ポンプ80、90の出力を手動で調整して、検体液2、シース液4を送液する方法を採用することができる。
【0096】
なお、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0097】
[シミュレーションの評価結果]
第1実施形態のフローセル10を用い、検体液とシース液を流して、合流部16Aから扁平部16Cに至るまで、検体液2が下壁部26Bと接触して流れるかどうかをシミュレーションで評価した。評価結果の「○」は、合流部16Aから扁平部16Cに至るまで検体液2が下壁部26Bと接触して流れたことを意味し、「×」は、合流部16Aから扁平部16Cに至るまでに検体液が下壁部26Bと離れて流れたことを意味する。
【0098】
評価1と評価2では、シース液導入口21Aの寸法(シース液導入口21Aの寸法は、シース液流路21の開口の寸法、合流部16Aの開口の寸法と同じ)、及びシース液の単位時間当たりの流量Lを変えている。評価1、評価2の各々の条件は以下の通りである。(各部の寸法記号については、
図4、
図8を参照。)
【0099】
(評価1)
シース液導入口 →深さA:0.6mm、幅B:1.5mm
検体液導入口 →長さC:0.5mm、幅D:0.3mm~1.0mm
扁平部の流路長 →長さF:3mm、深さH:0.09mm
テーパー部 →長さG:8mm
シース液流路長 →長さI:3.63mm
シース液流路の上流端から合流路のテーパー部手前までの長さ →長さE:13mm
シース液の流量 →流量L:4000uL/min
検体液の流量 →流量J:170uL/min~1720uL/min
【0100】
(評価2)
シース液導入口 →深さA:0.6mm、幅B:4.0mm
検体液導入口 →長さC:0.5mm、幅D:0.3mm~1.0mm
扁平部の流路長 →長さF:3mm、深さH:0.24mm
テーパー部 →長さG:8mm
シース液流路長 →長さI:4.05mm
シース液流路の上流端から合流路のテーパー部手前までの長さ →長さE:13mm
シース液の流量 →流量L:1500uL/min
検体液の流量 →流量J:170uL/min~1720uL/min
【0101】
図9の表は、評価1の条件でのシミュレーション結果である。式(1)を満たす場合、即ち、(L/S1)/(J/S2)≧0.7、を満たす場合には、幅Dを0.3mm~1.0mmの範囲で変えても、合流部16Aから扁平部16Cに至るまで、検体液は下壁部26Bと接触して流れる評価を得た。一方、流量Jの値が大きく、式(1)を満たさない場合には、幅Dの値に係わらず、合流部16Aから扁平部16Cに至るまでに検体液が下壁部26Bと離れて流れる評価を得た。
【0102】
図10の表は、評価2の条件でのシミュレーション結果である。式(1)を満たす場合、即ち、(L/S1)/(J/S2)≧0.7、を満たす場合には、幅Dを0.3mm~1.0mmの範囲で変えても、合流部16Aから扁平部16Cに至るまで、検体液は下壁部26Bと接触して流れる評価を得た。また、式(1)を満たさない、(L/S1)/(J/S2)=0.6481、の場合で、幅Dが0.7mm、1.0mmの場合には、合流部16Aから扁平部16Cに至るまで、検体液は下壁部26Bと接触して流れる評価を得、幅Dが0.3mm、0.5mmの場合には、合流部16Aから扁平部16Cに至るまでに検体液が下壁部26Bと離れて流れる評価を得た。一方、流量Jの値が大きく、式(1)を満たさない場合で、(L/S1)/(J/S2)≦0.6、の場合には、幅Dの値に係わらず、合流部16Aから扁平部16Cに至るまでに検体液が下壁部26Bと離れて流れる評価を得た。
【0103】
評価1、評価2の結果から、第1実施形態のフローセル10を用い、式(1)を満たすように、シース液4の単位時間当たりの流量L、検体液2の単位時間当たりの流量Jを供給することにより、検体液2がシース液4と混ざり合うことを抑制しつつ、合流部16Aから扁平部16Cへ送液できることを確認できた。
【0104】
また、第2実施形態のフローセル10-2を用い、第1実施形態のフローセル10と同様の条件で、検体液2が下壁部26Bと接触して流れるかどうかをシミュレーションで評価した。その結果、第1実施形態のフローセル10の評価1(
図9)、評価2(
図10)と同様の結果が得られた。これにより、第2実施形態のフローセル10-2を用い、式(1)を満たすように、シース液4の単位時間当たりの流量L、検体液2の単位時間当たりの流量Jを供給することにより、検体液2がシース液4と混ざり合うことを抑制しつつ、合流部16Aから扁平部16Cへ送液できることを確認できた。
【符号の説明】
【0105】
2 検体液
4 シース液
10、10-2 フローセル
16 合流路
16A 合流部
16B テーパー部
16C 扁平部
18B 検体液導入口
21 シース液流路
21A シース液導入口
26B 下壁部(一方の壁面)
70、70-2 測定装置
74 カメラ(撮像手段)
78 第1供給装置(検体液供給部)
86 第2供給装置(シース液供給部)
94 制御部
A 深さ
D 幅
J 検体液の単位時間当たりの流量
L シース液の単位時間当たりの流量
S1 シース液導入口の開口面積
S2 検体液導入口の開口面積