(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120467
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/629 20060101AFI20240829BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01R13/629
H01R13/639 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027283
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増本 拓也
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC09
5E021FC36
5E021HB04
5E021HB05
5E021HC11
(57)【要約】
【課題】ハウジングに対してレバーを仮係止位置に留め置く信頼性を向上させることが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】レバー40は、相手コネクタ90と係合し、相手コネクタ90との嵌合を進める板状のカム板部42を有している。カム板部42は、板厚方向の一端部57から板厚方向に突出し、仮係止位置でハウジング20に係止される係止部54と、板厚方向の中間部に設けられ、板厚方向の一端部57を挟んで係止部54と反対側に位置する孔形状の肉抜き部56,56A,56B,56Cと、を有している、
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタに嵌合可能なハウジングと、
前記ハウジングに対して仮係止位置と本係止位置との間を変位可能に配置されるレバーと、を備え、
前記レバーは、前記相手コネクタと係合し、前記仮係止位置から前記本係止位置への変位過程で前記相手コネクタとの嵌合を進める板状のカム板部を有し、
前記カム板部は、
前記カム板部の板厚方向の一端部から前記板厚方向に突出し、前記仮係止位置で前記ハウジングに係止される係止部と、
前記板厚方向の中間部において、前記板厚方向の一端部を挟んで前記係止部と反対側に配置される孔形状の肉抜き部と、を有している、コネクタ。
【請求項2】
前記肉抜き部は、前記板厚方向の中間部を延び、延び方向の一端が前記カム板部の外周の板厚面に開口している、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記レバーは、前記本係止位置において、前記ハウジングまたは前記相手コネクタに係止されるロックアームを有し、
前記ロックアームは、前記肉抜き部の前記延び方向と平行な方向に延びる形状になっている、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記カム板部は、前記カム板部の外周の板厚面に開口する入口から延びるカム溝を有し、
前記カム溝は、前記仮係止位置において前記入口から前記相手コネクタのカムピンを受容し、前記変位過程で前記カムピンを溝面に係合させるものであり、
前記カム板部の前記板厚方向の一端部は、前記カム溝の前記入口側を区画しており、
前記肉抜き部の前記延び方向の他端は、前記カム溝の前記溝面の前記入口側に開口している、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記肉抜き部の前記延び方向の他端側は、前記延び方向の一端側よりも前記延び方向および前記板厚方向と直交する幅方向の寸法を大きくしている、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、ハウジングと、ハウジングに対して仮係止位置(初期位置)と本係止位置(嵌合完了位置)とに回動可能に配置されるレバーと、を備えている。レバーは、板状のカム板部(アーム板)を有している。カム板部は、相手コネクタと係合し、仮係止位置から本係止位置への回動過程で相手コネクタとの嵌合を進めるカム機能を有している。カム板部は、U字形状にスリットの内側に、板厚方向に弾性変形可能な片持ち状の弾性片を有している。弾性片は、初期位置においてハウジングに係止され、レバーの本係止位置への回動を規制する。ハウジングに対してレバーを仮係止位置に留め置く手段は、特許文献2および特許文献3にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-126714号公報
【特許文献2】特開2003-36926号公報
【特許文献3】特開2022-154811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、例えば、レバーがハウジングに装着される前の単体状態にあるときに、仮に、弾性片に異物等が引っ掛かり、弾性片が意図せず反転方向に弾性変形すると、弾性片の弾性力が減退する懸念があった。その結果、弾性片が仮係止位置でハウジングを係止する本来の係止機能を適正に発揮できないおそれがあった。
【0005】
そこで、本開示は、ハウジングに対してレバーを仮係止位置に留め置く信頼性を向上させることが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、相手コネクタに嵌合可能なハウジングと、前記ハウジングに対して仮係止位置と本係止位置との間を変位可能に配置されるレバーと、を備え、前記レバーは、前記相手コネクタと係合し、前記仮係止位置から前記本係止位置への変位過程で前記相手コネクタとの嵌合を進める板状のカム板部を有し、前記カム板部は、前記カム板部の板厚方向の一端部から前記板厚方向に突出し、前記仮係止位置で前記ハウジングに係止される係止部と、前記板厚方向の中間部において、前記板厚方向の一端部を挟んで前記係止部と反対側に配置される孔形状の肉抜き部と、を有している、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ハウジングに対してレバーを仮係止位置に留め置く信頼性を向上させることが可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態1において、相手コネクタと嵌合状態にあるコネクタの側断面図である。
【
図11】
図11は、レバーが仮係止位置でハウジングに係止された状態を示す部分拡大斜視図である。
【
図12】
図12は、相手ハウジングとの嵌合開始時に、カム溝の導入部にカムピンが入り込み、相手ハウジングの解除部が係止部と接触した状態を示す部分拡大斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)相手コネクタに嵌合可能なハウジングと、前記ハウジングに対して仮係止位置と本係止位置との間を変位可能に配置されるレバーと、を備え、前記レバーは、前記相手コネクタと係合し、前記仮係止位置から前記本係止位置への変位過程で前記相手コネクタとの嵌合を進める板状のカム板部を有し、前記カム板部は、前記カム板部の板厚方向の一端部から前記板厚方向に突出し、前記仮係止位置で前記ハウジングに係止される係止部と、前記板厚方向の中間部において、前記板厚方向の一端部を挟んで前記係止部と反対側に配置される孔形状の肉抜き部と、を有している。
【0010】
上記構成は、カム板部の板厚方向の一端部が肉抜き部側に弾性変形する動作を伴うことにより、係止部をハウジングに係止させ、レバーを仮係止位置に留め置くことができる。肉抜き部が断面閉ループ形状をなすため、カム板部の板厚方向の一端部が過度に弾性変形する事態を回避できる。よって、上記構成は、ハウジングに対してレバーを仮係止位置に留め置く信頼性を向上させることができる。なお、孔形状とは、周方向に閉じられた断面閉ループ形状の孔のことを言う。
【0011】
(2)上記(1)に記載のコネクタにおいて、前記肉抜き部は、前記板厚方向の中間部を延び、延び方向の一端が前記カム板部の外周の板厚面に開口していることが好ましい。
【0012】
上記構成は、肉抜き部を金型で成形する際に、カム板部の外周の板厚面に開口する、延び方向の一端を、型抜き開口とし、型抜き開口から金型を引き抜くことができる。よって、上記構成は、肉抜き部を金型成形によって容易に形成することができる。
【0013】
(3)上記(2)に記載のコネクタにおいて、 前記レバーは、前記本係止位置において、前記ハウジングまたは前記相手コネクタに係止されるロックアームを有し、前記ロックアームは、前記肉抜き部の前記延び方向と平行な方向に延びる形状になっていることが好ましい。
【0014】
上記構成は、肉抜き部を成形する金型と、同じ方向に引き抜かれる金型、好ましくは同じ金型によって、ロックアームを成形することができる。よって、上記構成は、複雑なスライド金型を用いることなく、レバーを形成することができる。
【0015】
(4)上記(2)または(3)に記載のコネクタにおいて、前記カム板部は、前記カム板部の外周の板厚面に開口する入口から延びるカム溝を有し、前記カム溝は、前記仮係止位置において前記入口から前記相手コネクタのカムピンを受容し、前記変位過程で前記カムピンを溝面に係合させるものであり、前記カム板部の前記板厚方向の一端部は、前記カム溝の前記入口側を区画しており、前記肉抜き部の前記延び方向の他端は、前記カム溝の前記溝面の前記入口側に開口していることが好ましい。
【0016】
上記構成は、係止部を突出させるカム板部の板厚方向の一端部がカム溝の入口側を区画しているため、この一端部の弾性力を、カム溝を利用して、容易に調整することができる。また、肉抜き部の延び方向の他端がカム溝の溝面の入口側に開口しているため、溝面の剛性を下げることができ、カムピンがカム溝の入口側に受容される際の安定性(座り)を良くすることができる。
【0017】
(5)上記(2)から(4)のいずれかに記載のコネクタにおいて、前記肉抜き部の前記延び方向の他端側は、前記延び方向の一端側よりも前記延び方向および前記板厚方向と直交する幅方向の寸法を大きくしていることが好ましい。
【0018】
上記構成は、肉抜き部を金型で成形する際に、カム板部の外周の板厚面に開口する、延び方向の一端から金型を容易に引き抜くことができ、離型性を向上させることができる。また、上記構成は、肉抜き部を精度良く形成することができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
<実施形態1>
実施形態1に係るコネクタ10は、
図1に示すように、ハウジング20と、ハウジング20に対して仮係止位置と本係止位置との間を回動可能に支持されるレバー40と、ハウジング20に収容される複数の端子金具80と、を備えている。ハウジング20は、相手コネクタ90に嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向は、コネクタ10と相手コネクタ90が嵌合開始時に互いに向き合う面側を前側とする。左右方向は、
図3-
図5の左右方向を基準とする。上下方向は、
図1-
図5の上下方向を基準とする。コネクタ10の場合、符号Xが前側になり、符号Yが右側になり、符号Zが上側になる。これらの方向は、コネクタ10が図示しない車両等に搭載された状態における方向とは必ずしも一致しない。
【0021】
(相手コネクタ90)
相手コネクタ90は、合成樹脂製の相手ハウジング91と、相手ハウジング91に装着される導電金属製の複数の相手端子金具92と、を有している。
図1および
図2に示すように、相手ハウジング91は、前方に開口する筒状のフード部93を有している。相手端子金具92は、フード部93の内側にタブ94を突出させている。
【0022】
図2に示すように、フード部93は、左右の側壁の外面に、それぞれカムピン95を突設させている。カムピン95は円柱状をなし、レバー40の後述するカム溝49の溝面と係合する(
図12を参照)。フード部93は、左右の側壁の外面に、それぞれ解除部96を突設させている。解除部96は、カムピン95よりも低背のリブ形状をなし、カムピン95の基端部に連結されている。解除部96は、レバー40の後述する係止部54と接触し、係止部54の係止状態を解除する。
【0023】
(ハウジング20および端子金具80等)
ハウジング20は合成樹脂製であって、
図1および
図3に示すように、ハウジング本体21と、ハウジング本体21の外周を包囲する嵌合筒部22と、を有している。ハウジング本体21と嵌合筒部22との間には、嵌合空間23が形成されている。
【0024】
図1に示すように、フード部93は、ハウジング20の嵌合空間23に挿入されて嵌合される。ハウジング本体21の外周面にはシールリング30が装着されている。シールリング30はハウジング本体21とフード部93との間に圧縮状態に配置される。これにより、コネクタ10と相手コネクタ90との間が液密にシールされる。
【0025】
ハウジング本体21は、複数のキャビティ24を有している。端子金具80は、キャビティ24に挿入されて収容される。端子金具80は、ハウジング本体21の前面側に装着されるフロントマスク25によって前方への抜け出しが規制される。また、端子金具80は、ハウジング本体21の側面側に装着されるリテーナ26によって後方への抜け出しが規制される。
【0026】
端子金具80は導電金属製であって、相手端子金具92のタブ94を挿入して接続可能な接続部81を有している。端子金具80は、接続部81よりも後方で電線100の芯線に圧着されて電気的に接続されている。また、端子金具80は電線100に嵌め付けられたゴム栓85に圧着される。ゴム栓85は、端子金具80とともにキャビティ24に挿入され、電線100とハウジング20との間を液密にシールする。
【0027】
図3に示すように、嵌合筒部22は、左右両側の側壁の外面に、それぞれ軸部27を突設させている。軸部27は、円柱状をなし、レバー40を回動可能に支持する。また、嵌合筒部22は、左右両側の側壁に、それぞれ挿入部28を有している。
図11に示すように、挿入部28は、前後方向に延びる溝状(凹状)をなし、側壁の前端に開口している。挿入部28は、上側の溝面に、レバー40の後述する係止部54を係止可能な被係止部29を有している。
図3に示すように、被係止部29は、左右方向に対し、ハウジング本体21の左右中央側に向けて少し上傾している。
【0028】
図1に示すように、ハウジング20は、ハウジング本体21の後面を覆うように嵌合筒部22に取り付けられる電線カバー31を有している。詳細は図示しないが、電線カバー31は、キャップ状をなし、ハウジング本体21から延びる各電線100を収容し、各電線100の外部への引き出し方向を規定する。電線カバー31は、本係止位置に至ったレバー40を係止するロック突起32を有している。
【0029】
(レバー40)
レバー40は合成樹脂製であって、
図4および
図5に示すように、左右方向に延びる連結部41と、連結部41の左右両側の端部からそれぞれ突出するカム板部42と、を有し、全体として門型板状をなしている。なお、以下のレバー40の構造説明において、方向の基準となる
図4および
図5の状態は、レバー40がハウジング20に対して仮係止位置に配置された状態に相当する。
【0030】
連結部41は、前後方向に板面を向けて配置される。連結部41は、左右方向の中央部に、
図4および
図7に示すように、前後方向に貫通するロック空間43と、ロック空間43の上下を仕切る上部44および下部45と、下部45の前端から後方に上傾して延びるロックアーム46と、を有している。ロックアーム46は、下部45側の前端部分を支点として弾性変形可能とされている。
図7に示すように、ロックアーム46は、斜め下前方を向いて配置されるロック面47を有している。ロックアーム46の弾性変形後、
図1に示すように、ロックアーム46のロック面47がロック突起32に対向して係止可能に配置されることにより、レバー40がハウジング20に対して本係止位置に保持される。
【0031】
図4および
図5に示すように、カム板部42は、左右方向に板面を向けて配置される。なお、後述するカム板部42の板厚方向は、本実施形態1の左右方向(
図4および
図5の左右方向)に相当する。
図7に示すように、カム板部42は、後端寄りの部分に、左右方向に貫通する軸受部48を有している。レバー40は、軸受部48に嵌合された軸部27を中心として仮係止位置と本係止位置との間を回動可能とされている。レバー40は、仮係止位置では連結部41が上端に位置する起立姿勢で配置され、
図1に示すように、本係止位置では連結部41が後方に位置する倒れ姿勢で配置される。
【0032】
各カム板部42は、
図4に示すように、左右中央側を向く内面(板厚方向の一端側の面)に、軸受部48の近傍位置から前方に曲がって延びるカム溝49を有している。カム溝49は、断面有底の凹状をなしている。
図11に示すように、カム溝49は、前端部に、前後方向に短く延びる導入部51を有している。導入部51は、カム板部42の外周前端の板厚面に開口する入口52を有している。なお、入口52側は、導入部51を含む概念である。
図12に示すように、カムピン95は、入口52から導入部51に導入され、レバー40の回動によってカム溝49の溝面を摺動する。
図4および
図5に示すように、導入部51は、下側の溝面に、突起53を有している。図示はしないが、突起53は、導入部51に導入されたカムピン95と接触して、カムピン95の動きを一時的に規制する。
【0033】
図7に示すように、カム板部42は、内面に、係止部54を突設させている。係止部54は、前後方向に延びるリブ状をなし、入口52の近くにおいて導入部51の上縁に沿って形成されている。
図6および
図10に示すように、係止部54は、前端側に向けて厚み(板厚方向の厚み)が大きくなるように形成されている。
図9に示すように、係止部54の上面は、左右方向に対して逆テーパ状をなし、突出方向(カム板部42の板厚方向)の先端に向けて少し上傾している。係止部54の上面は、挿入部28の被係止部29の傾斜方向に沿って対向して係止可能に配置される(
図11を参照)。これにより、係止部54と被係止部29との係止状態が安定に維持される。
【0034】
図4に示すように、各カム板部42は、左右外側を向く外面(板厚方向の他端側の面)に、軸部27の先端部を逃がす凹所55を有している。凹所55は、軸受部48側から後方へ上傾してカム板部42の外周後端の板厚面に開口している。
【0035】
カム板部42は、板厚方向の中間部に、孔状の肉抜き部56を有している。
図10および
図11に示すように、肉抜き部56は、板厚方向に関して、板厚方向の一端側の端部(カム板部42の内面側の端部であって、以下、「一端部57」と称する)を挟んで、係止部54とは反対側の位置に配置される。つまり、一端部57は、肉抜き部56の板厚方向の一端側を区画(閉塞)している。係止部54は、一端部57から板厚方向(レバー40の左右方向中央側)に突出している。係止部54が被係止部29に接触したときに、一端部57が肉抜き部56側に弾性変形し、肉抜き部56の板厚方向の孔径が小さくなる。
【0036】
図10に示すように、肉抜き部56は、カム板部42の板厚方向の内側寄りの中間部において、前後方向に長い矩形の閉ループ形状の断面を有している。
図7および
図8に示すように、肉抜き部56は、カム板部42の板厚方向の中間部をカム板部42の板面に沿うようにして延び、一端58がカム板部42の外周後端の板厚面に開口し、他端59がカム溝49の導入部51の溝面(上側の溝面)に開口している。肉抜き部56は、カム板部42の板厚方向の中間部において、他端59から一端58にかけて全体として後方へ上傾している。肉抜き部56は、ロックアーム46の形成方向と平行な方向に延びている。また、肉抜き部56は、凹所55の形成方向と平行な方向に延びている。
【0037】
図7および
図8に示すように、肉抜き部56は、板厚方向および延び方向と直交する幅方向の寸法(以下、幅寸法という。
図8の符号Wを参照)に関して、一端58側の幅寸法を、他端59側の幅寸法よりも大きくしている。具体的には、肉抜き部56は、延び方向の一端58から係止部54と板厚方向で重なる位置まで凹所55と並びつつ一定の幅寸法で延び、カム溝49の導入部51の溝面に開口する部分で幅寸法を小さくしている。
【0038】
(コネクタ10の作用)
レバー40は、図示しない金型で成形される。このとき、ロックアーム46、肉抜き部56および凹所55は、いずれも斜め上後方に抜き方向が設定された金型、好ましくは同じ金型によって成形される。肉抜き部56の場合、カム板部42の外周後端の板厚面に開口する一端58を型抜き開口とし、一端58から金型を引き抜くことができる。このため、肉抜き部56を形成する際に複雑なスライド構造が必要とされることはない。
【0039】
図11に示すように、レバー40は、係止部54をハウジング20の被係止部29に係止させることで、ハウジング20に対して仮係止位置に保持される。このとき、レバー40のカム溝49の導入部51がハウジング20の挿入部28に連通し、係止部54が挿入部28に進入する。
【0040】
この状態で、ハウジング20の嵌合空間23にフード部93が嵌合される。
図12に示すように、嵌合開始時、カムピン95が挿入部28および導入部51に挿入される。具体的にはカムピン95の基端部が挿入部28に挿入され、カムピン95の先端部が導入部51に嵌合状態で挿入される。
【0041】
カムピン95の先端部の周面は導入部51の上下両側の溝面間に挟まるように配置される。ここで、導入部51の上側の溝面は肉抜き部56の開口によって剛性(硬さ)が低下している。よって、カムピン95は、導入部51の上側の溝面に強固に接触するのを回避でき、導入部51に対して座り良く安定して挿入される。
【0042】
カムピン95の基端部が挿入部28に挿入されるのに伴い、カムピン95の基端部に連なる解除部96も挿入部28に挿入され、係止部54に接触する。一端部57は、挿入部28に押圧されて肉抜き部56側(左右外側)に弾性変形する。係止部54は、一端部57とともに肉抜き部56側に変位して被係止部29との係止を解除する。
【0043】
上記の状態からレバー40が本係止位置に向けて回動される。回動の過程で、カムピン95がカム溝49の溝面を摺動し、フード部93がハウジング20の嵌合空間23に深く挿入されて行く。レバー40が本係止位置に到達すると、ロックアーム46がロック突起32を弾性的に係止し、ハウジング20に対するレバー40の回動が規制され、同時にハウジング20が相手コネクタ90に嵌合状態に保持される。カムピン95はカム溝49の奥端側(入口52側と反対側)に至る。端子金具80は相手端子金具92に電気的に接続される。
【0044】
本実施形態1によれば、レバー40、係止部54が肉抜き部56側に変位して被係止部29との係止を解除し、レバー40が仮係止位置から本係止位置に回動可能な状態になる。肉抜き部56は、カム板部42の板厚方向の中間部において孔形状(周方向にループ状に閉じた断面形状)をなしている。このため、係止部54および一端部57が異物等と引っ掛かりにくい構造になり、一端部57が過度に弾性変形する事態を回避できる。したがって、本実施形態1の構成は、ハウジング20に対してレバー40を仮係止位置に留め置く信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、肉抜き部56は、一端58がカム板部42の外周後端の板厚面に開口しており、この一端58を型抜きの開口とし、金型を引き抜くことができる。特に、肉抜き部56がロックアーム46を成形する金型の引き抜き方向と同じ方向に延びる形状になっているため、肉抜き部56の成形に際し、複雑なスライド金型を用いる必要がない。
【0046】
また、係止部54を突出させる一端部57がカム溝49の入口52側を区画しているため、この一端部57の弾性力を調整し易くなる。さらに、肉抜き部56の延び方向の他端59がカム溝49の導入部51の溝面に開口しているため、溝面の剛性を下げることができ、導入部51に配置されたカムピン95の安定性(座り)を良くすることができる。
【0047】
また、肉抜き部56が延び方向の一端58側の幅寸法を他端59側の幅寸法よりも大きくしているため、延び方向の一端58から金型を容易に引き抜くことができ、離型性を向上させることができる。
【0048】
さらに、肉抜き部56がカム板部42の板厚方向の中間部に断面閉ループ形状をなしているため、肉抜き部56をカム板部42の範囲内で幅方向の寸法等を容易に変更することができ、以下に示す実施形態2-4のように、形状の自由度を高めることができる。
【0049】
<実施形態2>
実施形態2のレバー40は、
図13に示すように、肉抜き部56Aの形状を実施形態1のものと異ならせている。その他は、実施形態1と同様である。
肉抜き部56Aは、延び方向の他端59から一端58に向かう過程で複数段階(
図13の場合は2段階)に幅寸法(
図13の符号W)を大きくしている。肉抜き部56Aの延び方向の一端58は、カム板部42の外周後端の板厚面に開口し、型抜き開口になり得る。肉抜き部56Aは、一端58から引き抜かれる金型によって成形される。したがって、本実施形態2の構成は、肉抜き部56Aを成形する金型も段階的に幅寸法を大きくでき、金型の強度を確保し易くなる。
【0050】
<実施形態3>
実施形態3のレバー40は、
図14に示すように、肉抜き部56Bの形状を実施形態1のものと異ならせている。その他は、実施形態1と同様である。
肉抜き部56Bは、延び方向の他端59から一端58に向かう過程で複数段階(
図14は2段階)で幅寸法(
図14の符号W)を大きくしている。肉抜き部56Bの延び方向の一端58側および他端59側は、一定の幅寸法で形成されている。これに対し、肉抜き部56Bの延び方向の中間側は、他端59側から一端58側にかけて徐々に幅寸法を大きくしている。実施形態3の場合、実施形態2と同様、金型の強度を確保し易くなるとともに、肉抜き部56Bと凹所55との間に距離を調整することができ、カム板部42の強度を距離し易くなる。
【0051】
<実施形態4>
実施形態4のレバー40は、
図15に示すように、肉抜き部56Cの形状を実施形態1のものと異ならせている。その他は、実施形態1と同様である。
肉抜き部56Cは、延び方向の他端59から一端58にかけて全体として徐々に幅寸法(
図15の符号W)を大きくしている。実施形態4によれば、レバー40、肉抜き部56Cを成形する金型の構造を容易にできるのに加え、離型性をより向上させることができる。
【0052】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1-4はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
実施形態1-4の場合、レバー40は、ハウジング20に対して仮係止位置と本係止位置との間を回動する回動式レバーであった。これに対し、他の実施形態によれば、レバーは、ハウジングに対して仮係止位置と本係止位置との間を直線状にスライド移動するスライド式レバーであっても良い。
実施形態1-4の場合、レバー40は、連結部41と一対のカム板部42とを有する門型板状をなしていた(実施形態2-4は図示略)。これに対し、他の実施形態によれば、レバーは、一枚のカム板部で構成される一枚板状をなしていても良い。
実施形態1-4の場合、肉抜き部56,56A,56B,56Cは、カム板部42の板厚方向の中間部において、断面矩形の閉ループ形状をなしていた(実施形態2-4は図示略)。これに対し、他の実施形態によれば、肉抜き部は、カム板部の板厚方向の中間部において、断面円形、好ましくは板面方向に断面長円形の閉ループ形状をなしていても良い。
実施形態1-4の場合、カム溝49は、カム板部42の内面に開口し、カム板部42の外面側に閉塞されていた。これに対し、他の実施形態によれば、カム溝は、カム板部の内外両面に開口し、カム板部を厚み方向に貫通する形状であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…コネクタ
20…ハウジング
21…ハウジング本体
22…嵌合筒部
23…嵌合空間
24…キャビティ
25…フロントマスク
26…リテーナ
27…軸部
28…挿入部
29…被係止部
30…シールリング
31…電線カバー
32…ロック突起
40…レバー
41…連結部
42…カム板部
43…ロック空間
44…上部
45…下部
46…ロックアーム
47…ロック面
48…軸受部
49…カム溝
51…導入部
52…入口
53…突起
54…係止部
55…凹所
56,56A,56B,56C…肉抜き部
57…板厚方向の一端部
58…延び方向の一端
59…延び方向の他端
80…端子金具
81…接続部
85…ゴム栓
90…相手コネクタ
91…相手ハウジング
92…相手端子金具
93…フード部
94…タブ
95…カムピン
96…解除部
100…電線
W…幅寸法